特許第6559689号(P6559689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559689液化可能な物質の容器のためのアクセス・デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559689
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】液化可能な物質の容器のためのアクセス・デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   A61J1/20 314C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-550588(P2016-550588)
(86)(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公表番号】特表2017-505201(P2017-505201A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】IB2015050713
(87)【国際公開番号】WO2015118432
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2018年1月4日
(31)【優先権主張番号】TO2014A000099
(32)【優先日】2014年2月7日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】507028619
【氏名又は名称】インドゥストリー・ボルラ・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】Industrie Borla S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100138874
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】ジャンニ・グアラ
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−514641(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/025946(WO,A1)
【文献】 特表2012−511940(JP,A)
【文献】 特開2012−228332(JP,A)
【文献】 特開平07−256005(JP,A)
【文献】 特表2012−518471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化可能な物質の容器のためのアクセス・デバイスであって、当該デバイスが備える本体(1)は、
液化可能な物質の容器(F)に挿入されるよう設計されていて、軸方向に延びる流体通路(5)および容器(F)を通気させるためのベント通路(6)を有している、中空スパイク(4)と、
本体(1)の横方向通路(7)を通してスパイク(4)のベント通路(6)に接続されている拡張可能チャンバ(14)と、
横方向通路(7)から拡張可能チャンバ(14)への一方向連通を可能とする、第1逆止弁(24)と、
通気口(25)からスパイク(4)のベント通路(6)への一方向連通を可能とする、第2逆止弁(23)と、を備えており、
液体が拡張可能チャンバ(14)内に入るのを防ぐ不透過性の第1フィルタ膜(22a)と、通気口(25)から液体が失われるのを防ぐ不透過性の第2フィルタ膜(22b)と、が提供されており、
当該第1フィルタ膜(22a)および第2フィルタ膜(22b)は、前記スパイク(4)のベント通路(6)と連通する中間チャンバ(26)を定めるように互いに平行で隣接しているとともに、第1逆止弁(24)と第2逆止弁(23)との間に配置されている点を特徴とする、アクセス・デバイス。
【請求項2】
前記拡張可能チャンバ(14)は、ハーフシェルのハウジング(15)と、当該ハウジング(15)に固定されたフレキシブルな薄膜(19)とを備えており、
当該薄膜(19)は、ハウジング(15)と同時型成形されたものであることを特徴とする、請求項1記載のアクセス・デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化可能な物質の容器のためのアクセス・デバイスに関する。容器は、例えば、粉末の薬剤を収容するバイアルである。薬剤は、例えば、化学療法その他の治療において管理されるタイプの抗生物質および有毒薬である。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7,743,799号(出願人はそれに所有者である)で開示されたアクセス・デバイスが備える本体は中空スパイクを備えていて、この中空スパイクは、液化可能な物質の容器に挿入されるよう設計されていて、軸方向に延びる流体通路および容器を通気させるためのベント通路を有している。拡張可能なチャンバが、本体の横方向通路を通してスパイクのベント通路に接続されている。アクセス・デバイスは、さらに、横方向通路から拡張可能チャンバへの一方向連通を可能とする第1逆止弁と、通気口からスパイクのベント通路への一方向連通を可能とする第2逆止弁(23)と、を備えている。
【0003】
そのようなデバイスは、例えば、バイアルに収容された乾燥薬剤に希釈液を加えるのに使用されて、それに続いて、当該(液化した)薬剤は、例えば注入バッグを用いて、バイアルから患者へ運ことができる。
【0004】
スパイク(通常は、バイアルの貫通可能な弾力性キャップを通してシール可能な態様で挿入されている)の流体通路を通して液体をバイアル内に導入する際に、薬剤を稀釈することによって生じた気相は、本体の横方向通路および第1逆止弁を通して、拡張可能なチャンバ内へと加圧下で運ばれて、その内部に捕らえられる。このようにすることで、これら気相は、周囲空気を汚さない。したがって、アクセス・デバイスを操作するオペレーターによる吸引および接触を防止し、それに伴う健康被害のリスクを防止する。
【0005】
このように希釈された薬剤が、スパイクの流体通路を通した吸引によって、バイアルから取り出されるとき、第2逆止弁は、バイアル内の圧力のリバランス(rebalancing)を可能にする。
【0006】
米国特許第7,743,799号に開示されたアクセス・デバイスの第1実施形態においては、2つの逆止弁の各々について、その上流側にフィルタが配置されている。米国特許第7,743,799号で例証された他の実施形態では、その代りに、液体を通さない材料で形成されたフィルタ膜が1つだけ設けられている。この不透過性のフィルタ膜は、スパイクと同軸状に配置されていて、スパイクをシール状態で通すことができる中央孔を有している。この不透過性のフィルタ膜に対して同じ側に、第1および第2の逆止弁が配置されており、これにより、2つの機能が果たされる。すなわち、第2逆止弁を通ってバイアル内に導入される空気をフィルタリングし、第1逆止弁を通って拡張可能チャンバ内へと、液体(あるいは、希釈された薬剤)が侵入するのを防ぐバリアを構成する。
【0007】
類似の解決策が、米国特許第8,523,838号で説明されている。当該特許では、両方の逆止弁は、本体の横方向通路内に配置されていて、さらにこの場合は、拡張可能チャンバの入口に直接設けられた不透過性フィルタ膜に対して同じ側に存在している。それ故、希釈された薬剤の取出しステップにおいてバイアルを通気させることは、拡張可能チャンバ内に含まれていた汚れた大気を使用することとなり、問題を生じさせるであろう。さらに、この文献では2つの逆止弁を開口させるための特定の圧力が規定されているが、おそらく拡張可能チャンバ内へ侵入したであろうエアロゾル化された薬剤の粒子がフィルタ膜を詰まらせて、バイアルの通気流をブロックするか、受け入れ難い程に低減させる。その結果、後でバイアルから薬剤を取り出すことが困難になる。
【0008】
文献WO−2013/025946でも、同様に2つの逆止弁が提供されていて、フィルタが、2つの逆止弁とスパイクのベント通路との間に位置している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述の欠点を除去することであって、上に説明した米国特許第7,743,799号で説明されているアクセス・デバイスを完全なものとすることである。さらには、このデバイスを使用する間に、バイアルから取り出した薬剤が周囲に拡散するリスクに対する安全性を改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
本発明により、この目的は、請求項1の特徴記載部よりも前段部分で特定されたアクセス・デバイスによって主として達成される。当該特徴記載部では、不透過性のフィルタ膜手段が、第1逆止弁と第2逆止弁との間に配置されている点が記載されている。
【0011】
この解決案によって、不透過性のフィルタ膜手段は、バイアルの通気エアをフィルタリングする機能、および希釈された薬剤が拡張可能チャンバ内に侵入するのを防ぐ機能を実行する。また、それだけでなく、第1逆止弁(場合によっては、第2逆止弁と両方)に不具合が生じた場合、あるいは効果的に閉じなかった場合に、おそらく拡張可能チャンバ内に侵入したであろうエアロゾル化された薬剤の粒子に対する効果的なバリアを提供することができる。確かに、そのような不測の事態において、不透過性のフィルタ膜手段は、第1逆止弁の下流側と第2逆止弁の上流側の両方において、エアロゾル化された粒子が拡張可能なチャンバから逆流するのをブロック可能とする。それによって、これら粒子が拡張可能チャンバ内に安全に隔離される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、スパイクのベント通路と連通する中間チャンバを定めるように、互いに平行で隣接している2つの不透過性のフィルタ膜が設けられる。
【0013】
拡張可能チャンバは、既に知られているように、フレキシブルな薄膜の周縁が内部に固定された封入ハウジングを備えている。本発明のさらに有利な特徴によれば、このフレキシブルな薄膜は、封入ハウジング内に積層型成形(over-molded)されている。これによって、前述の米国特許第7,743,799号の場合と比較して、アクセス・デバイスの製造方法が単純になる。米国特許第7,743,799号では、フレキシブルな薄膜は、別個に作られ、その後、接着または溶着によって封入ハウジングに接合される。
【0014】
本発明は、次にどの中に、添付図面に単に非限定的例として提供されたように詳細に説明されるだろう:
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るアクセス・デバイスの概略斜視図(第1作動状態)。
図2図1と同様の図であって、第2作動状態にあるアクセス・デバイスを示している。
図3図1の鉛直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照すると、本発明に係る医薬物質の容器のためのアクセス・デバイスを構成する本体は、プラスチック材料から型成形されていて、その全体が参照数字1で示されている。本体1は、フランジ2を備え、その上部には、管状コネクタ3が突出している。管状コネクタ3は、例えば、ルアー(luer)・タイプ、またはルアーロック・タイプのものである。フランジ2の下方には、管状コネクタ3と同心円状に配置された中空スパイク4が延在している。
【0017】
図3から分かるように、中空スパイク4は、横並びに2つの軸方向通路を有する。一方は、その頂部で管状コネクタ3と連通する流体通路5であり、他方は、横方向通路7と連通するベント通路6である。
【0018】
フランジ2の下方には、弾性変形可能な部分を備える環状スカート8が延在している。この弾性変形可能な部分は、相補的な形状に作られたバイアルFのネックと係合する。バイアルFは、例えば乾燥粉末を含んでいる。乾燥粉末は、例えば薬であって、以下に説明する方法で管理され、液化されるものである。図1および2に示したように、環状スカート8がバイアルFのネックに係合するとき、バイアルFは、スパイク4で突き刺すことが可能なエラストマー材料からなるキャップTを用いて従来方式でシールされる。
【0019】
次に、管状コネクタ3は、(例えばバルブ式の)コネクタCと結合するように構成されている。このコネクタCは、本件出願人によって製造され、B-Siteの名称で市場に出ている。
【0020】
横方向通路7は、本体1と一体的に構成することができる。あるいは、図示した例のように、横方向通路7は、本体1に対して横方向に固定された個別の中間要素12の一部であってもよい。中間要素12は、外部の半径方向フランジ9と、内部の環状壁10とを備えて構成されている。
【0021】
フランジ9は、全体が14で示された拡張可能なチャンバの相補的なフランジ13に固定される。チャンバ14は、カップ状のハーフシェル15を備えている。フランジ13とは反対側において、ハーフシェル15の周縁は、フレキシブルな薄膜19の周縁18の閉込めリング16に固定されている。薄膜19は、ハーフシェル15と同時型成形された(co-molded)であって、これにより、拡張可能チャンバ14の容積を定めている。
図1、3は最小容積の状態を示していて、そこでは、薄膜19はハーフシェル15内に引っ込んでいる。一方、図2は最大容積の状態を示していて、そこでは、薄膜19はハーフシェル15の外部に突出している。拡張可能なチャンバ14および関連するフランジ13は、異なる形態の本体1に対しても適用可能であることに留意すべきである。
【0022】
フランジ13(中間要素12へ向かってハーフシェル15から軸方向に突出している)の内部には、ラビリンス壁20が形成されている。ラビリンス壁20は、拡張可能チャンバ14の内部に連通する貫通孔21を中央に有している。この壁20に、液体を通さない材料のディスクから作られた第1フィルタ膜22aが固定される。第1フィルタ膜22aは、熱可塑性材料でコーティングされた面を有していて、この面が壁20に溶着されている。
【0023】
第2フィルタ膜22bは、同様に液体を通さない材料のディスクから作られていて、熱可塑性材料でコーティングされた面を有する。この面が、環状壁10に溶着されている。
【0024】
2つのフィルタ膜22a、22bは、互いに平行で僅かな間隔をおいて配置され、中間チャンバ26を定めている。中間チャンバ26は、制限された通路27および中間要素12の横方向通路7を介して、スパイク4のベント通路6と連通している。
【0025】
参照数字23、24は、2つの一方向逆止弁を示している。一方の逆止弁23は、中間要素12の中央に形成された通気口25と機能的に関連している。他方の逆止弁24は、壁20の貫通孔21と関連している。
【0026】
逆止弁24(以下、第1逆止弁)は、横方向通路7、制限通路27、チャンバ26、フィルタ膜22a、および孔21を通しての、スパイク4の軸方向ベント通路6から拡張可能なチャンバ14への一方向連通を可能にする。
【0027】
逆止弁23(以下、第2逆止弁)は、第2フィルタ膜22b、チャンバ26、制限通路27、および横方向通路7を介しての、通気口25とスパイク4のベント通路6間の一方向連通を可能にする。
【0028】
上に説明した独特の構成によって、不透過性のフィルタ膜22a、22bがダブルで逆止弁23と24の間に配置され、それによって、本発明のアクセス・デバイスの改善された操作上の安全が保証される。その操作は、以下のとおりである。
【0029】
初めに、乾燥物質(例えば、パウダーまたは粒状の医薬)を含むバイアルFを、環状スカート8に係合させることで、本体1に連結する。これによって、キャップTにスパイク4が突き刺さる。これによって、管状コネクタCと結合される結果として、バイアルF内に液体が導入され、薬剤の稀釈および液化が達成される。液体は、例えば管状コネクタCに結合された注射器によって導入され、スパイク4の流体通路5を通して、バイアルF内部に至る。稀釈化の際薬剤によって生成された気相は、スパイク4のベント通路6へ導かれ、そして、横方向通路7、制限通路27、チャンバ26、フィルタ膜22a、孔21を通過する。第1逆止弁24が開き、したがって、当該気相は、拡張可能チャンバ14内に入ることができる。このステップの終わりでは、フィルタ膜22aおよび場合によってはフィルタ膜22bを通過してエアロゾル化された薬剤のすべての小滴は、逆止弁23が閉じているが故に、保持される。
【0030】
その後、アクセス・デバイスを上下逆さにして、スパイク4の流体通路5を通して吸引することで、液化した薬剤をバイアルFから取り出す。もし、このステップにおいて、オペレーターが誤って、吸引する代わりに加圧下の空気をバイアルFに押し込んだ場合、スパイク4のベント通路6を通して拡張可能チャンバ14に向かうよう押される液体は、2つのフィルタ膜22a、22bで機能するバリアに突き当たり、拡張可能チャンバ14に達することはできず、外部環境に置かれたままとなる。
【0031】
液体が正しく吸引された場合、補填のための空気は、通気口25および開いた逆止弁23を通して、バイアルF内へと導入される。このステップの間、通気口25から入る空気は、薄膜22aを通過する際にフィルタリングされる。その一方で、逆止弁24は、拡張可能チャンバ14内の圧力によって閉止状態が維持される。このようにフィルタリングされた空気は、チャンバ26、制限通路27、横方向通路7、およびスパイク4のベント通路6を通って、バイアルFの内部に達する。したがって、逆止弁23と24の間にフィルタ膜22aを配置することで、バイアルF内に導入される補填用の空気を最適にフィルタリングできることが明らかである。
【0032】
さらに、本発明による不透過性フィルタ膜22a、22bの独特の配置によって、バイアルFから取り出された液化薬剤による周囲汚染のリスク影響に関して、逆止弁24の不具合の場合(および、逆止弁23もが不具合の場合)であっても、デバイスの操作上の安全性をさらに改善することが可能となる。実際のところ、その場合、薬剤のエアロゾル粒子は、おそらく拡張可能チャンバ14内に捕らえられ、フィルタ膜22a、22bによって依然としてブロックおよび保持されて、通気口25には到達できないであろう。
【0033】
さらなる利点は、バイアルF内の圧力が過剰となったことに起因する不適正使用の場合でも、デバイスの操作上の安全性が向上している点にある。実際のところ、デバイスを上下逆さまに保持している際に誤ってバイアルFに液体が押し入れられた場合、あるいはスパイク4が上向きになっている場合に、当該液体は、通路6および制限通路27を通ってチャンバ26に達するであろうが、その場合でも、フィルタ膜22bによってブロックされ、通気口25には到達できないであろう。
【0034】
もちろん、実施形態の構造および形態の詳細は、添付の請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなしに、ここに説明し図示したものから大きく変更することが可能である。
図1
図2
図3