(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559707
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】症例の難しさに基づくコンピュータ支援患者層別化のためのシステムの作動方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
A61B5/00 G
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-567211(P2016-567211)
(86)(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公表番号】特表2017-515574(P2017-515574A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】IB2015052775
(87)【国際公開番号】WO2015173675
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2018年4月12日
(31)【優先権主張番号】61/991,646
(32)【優先日】2014年5月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ボロツキー リラ
(72)【発明者】
【氏名】リー ミカエル チュン‐チー
【審査官】
増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−157527(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/111288(WO,A1)
【文献】
特表2011−508350(JP,A)
【文献】
特開2014−039852(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0141639(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0095331(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/01
G16H 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断の難しさレベルに従って患者症例にランク付けを行うシステムの作動方法であって、前記システムのプロセッサが、
複数の患者症例の各々について、
データベースから患者の画像調査を検索することと、
前記画像調査に含まれる患者画像において異常を識別することと、
患者の人口統計学的情報及び臨床情報を分析することと、
識別した前記異常並びに前記患者の人口統計学的情報及び臨床情報に応じて前記患者症例のコンピュータ支援層別化スコアを算出することと、
各患者症例に割り当てられた各コンピュータ支援層別化スコアに従った前記患者症例のランク付きリストを出力することと、
を備え、前記プロセッサが、
前記データベースに複数の以前診断された患者症例を記憶することと、
前記複数の以前診断された患者症例の履歴診断精度を評価することと、
複数の患者症例タイプの各々について前記診断精度を示す精度スコアを分類部が生成することを実行することと、
現在の患者症例タイプを記述する情報を受信することと、
前記現在の患者症例タイプと前記現在の患者症例タイプの前記精度スコアとに基づいて、前記現在の患者症例のコンピュータ支援層別化スコアを生成することと、
前記プロセッサが、各患者症例について、
前記患者画像における病変の病変タイプ及び病変位置の情報を受信することと、
前記病変位置で前記画像をセグメント化して第1の病変アウトラインを生成することと、
前記第1の病変アウトラインから1つ以上の病変パラメータを計算することと、
1つ以上の代替的な病変アウトラインを計算することと、
前記1つ以上の代替的な病変アウトラインから1つ以上の病変パラメータを計算することと、
前記病変アウトラインと前記1つ以上の代替的な病変アウトラインとの間の病変パラメータ不一致に応じて前記コンピュータ支援層別化スコアを計算することと、
を更に備える、システムの作動方法。
【請求項2】
前記プロセッサが、各患者症例をコンピュータ支援層別化スコア及び臨床経験に応じて臨床医に割り当てる、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記1つ以上の代替的な病変アウトラインを計算することが、
前記病変位置について設定された分布の近傍からの画像データをランダムサンプリングすることと、
複数の異なるセグメント化アルゴリズムを用いて前記病変位置で前記画像をセグメント化することと、
のうち1つを備える、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項4】
前記病変パラメータが、
病変表面積と、
病変体積と、
前記病変の長軸と、
前記病変の短軸と、
のうち1つ以上を備える、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項5】
前記プロセッサが、各患者症例について、
前記患者画像における病変の病変タイプ及び位置情報を受信することと、
前記患者画像における前記病変並びに患者の人口統計学的情報及び臨床情報のうち1つ以上に対してコンピュータ支援診断(CADx)技法を実行し、前記病変の悪性の確率を決定することと、
前記悪性の確率から前記患者症例の前記コンピュータ支援層別化スコアを導出することと、
前記複数の患者症例のコンピュータ支援層別化スコアに応じて臨床医ワークフローを調整することと、
を更に備える、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項6】
前記プロセッサが、少なくとも1つの患者症例の前記コンピュータ支援層別化スコアに応じて、少なくとも二人の再検討者による再検討の候補として、前記少なくとも1つの患者症例にフラグを付けることを更に備える、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項7】
前記プロセッサが、少なくとも1つの患者症例の前記層別化スコアに応じて、教育用の症例としての学問的な使用の候補として、前記少なくとも1つの患者症例にフラグを付けることを更に備える、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項8】
診断の難しさレベルに従った患者症例のランク付けを容易にするシステムであって、前記システムが、
複数の患者症例の各々について、
データベースから患者の画像調査を検索することと、
前記画像調査に含まれる患者画像において異常を識別することと、
患者の人口統計学的情報及び臨床情報を分析することと、
識別した前記異常並びに前記患者の人口統計学的情報及び臨床情報に応じて前記患者症例のコンピュータ支援層別化スコアを算出することと、
各患者症例に割り当てた各コンピュータ支援層別化スコアに従った前記患者症例のランク付きリストを出力することと、
を行うプロセッサを備えるコンピュータ支援層別化モジュールを備え、前記システムが、
複数の以前診断された患者症例を記憶するコンピュータ読み取り可能媒体を更に備え、
前記プロセッサが更に、
前記複数の以前診断された患者症例の履歴診断精度を評価することと、
複数の患者症例タイプの各々について前記診断精度を示す精度スコアを分類部が生成することを実行することと、
現在の患者症例タイプを記述する情報を受信することと、
前記現在の患者症例タイプと前記現在の患者症例タイプの前記精度スコアとに基づいて、前記現在の患者症例のコンピュータ支援層別化スコアを生成することと、
前記プロセッサが更に、各患者症例について、
前記患者画像における病変の病変タイプ及び病変位置の情報を受信することと、
前記病変位置で前記画像をセグメント化して第1の病変アウトラインを生成することと、
前記第1の病変アウトラインから1つ以上の病変パラメータを計算することと、
1つ以上の代替的な病変アウトラインを計算することと、
前記1つ以上の代替的な病変アウトラインから1つ以上の病変パラメータを計算することと、
前記病変アウトラインと前記1つ以上の代替的な病変アウトラインとの間の病変パラメータ不一致に応じて前記コンピュータ支援層別化スコアを計算することと、
を行う、システム。
【請求項9】
前記異常が病変であり、前記層別化スコアの算出が少なくとも部分的に、前記病変の画像をセグメント化することによって行われる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
1つ以上の代替的な病変アウトラインを計算することが、
前記病変位置について設定された分布の近傍からの画像データをランダムサンプリングすることと、
複数の異なるセグメント化アルゴリズムを用いて前記病変位置で前記画像をセグメント化することと、
のうち1つを備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記病変パラメータが、
病変表面積と、
病変体積と、
前記病変の長軸と、
前記病変の短軸と、
のうち1つ以上を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサが更に、各患者症例について、
前記患者画像における病変の病変タイプ及び位置情報を受信することと、
前記患者画像における前記病変並びに患者の人口統計学的情報及び臨床情報のうち1つ以上に対してコンピュータ支援診断(CADx)技法を実行し、前記病変の悪性の確率を決定することと、
前記悪性の確率から前記患者症例の前記コンピュータ支援層別化スコアを導出することと、
前記複数の患者症例のコンピュータ支援層別化スコアに応じて臨床医ワークフローを調整することと、
を行う、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
診断の難しさレベルに従って患者症例にランク付けを行うためのコンピュータ実行可能命令が記憶されているコンピュータ読み取り可能媒体であって、前記命令が、
複数の患者症例の各々について、
データベースから患者の画像調査を検索することと、
前記画像調査に含まれる患者画像において異常を識別することと、
患者の人口統計学的情報及び臨床情報を分析することと、
前記異常のアイデンティティ並びに前記患者の人口統計学的情報及び臨床情報に応じて前記患者症例のコンピュータ支援層別化スコアを算出し割り当てることと、
各患者症例に割り当てた各コンピュータ支援層別化スコアに従った前記患者症例のランク付きリストを出力することと、
を備え、前記命令が、
前記データベースに複数の以前診断された患者症例を記憶することと、
前記複数の以前診断された患者症例の履歴診断精度を評価することと、
複数の患者症例タイプの各々について前記診断精度を示す精度スコアを分類部が生成することを実行することと、
現在の患者症例タイプを記述する情報を受信することと、
前記現在の患者症例タイプと前記現在の患者症例タイプの前記精度スコアとに基づいて、前記現在の患者症例のコンピュータ支援層別化スコアを生成することと、
各患者症例について、
前記患者画像における病変の病変タイプ及び病変位置の情報を受信することと、
前記病変位置で前記画像をセグメント化して第1の病変アウトラインを生成することと、
前記第1の病変アウトラインから1つ以上の病変パラメータを計算することと、
1つ以上の代替的な病変アウトラインを計算することと、
前記1つ以上の代替的な病変アウトラインから1つ以上の病変パラメータを計算することと、
前記病変アウトラインと前記1つ以上の代替的な病変アウトラインとの間の病変パラメータ不一致に応じて前記コンピュータ支援層別化スコアを計算することと、
を更に備える、コンピュータ読み取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この革新的技術(innovation)は、特にコンピュータ支援診断に関する医療診断技術に適用される。しかしながら、記載される技法は、他の患者診断システム、他の診断状況、他の層別化(stratification)技法等においても適用され得ることは認められよう。
【背景技術】
【0002】
患者の疾病管理及び治療のためには正確な診断が重要である。正確な診断に至るため、医師は、「難しい」症例すなわち普通でない症例又は複雑な症例では、読影(reading)、検討、及び助言の生成に長い時間を費やすことが多い。一方、診断がもっと容易な症例では、医師の診断及び次のステップについての助言は極めて短時間で生成される可能性がある。これは、若手の医師の場合に特に当てはまる。若手の医師は難しい症例に遭遇すると、多くの場合、年長の医師のセカンドオピニオンを求める必要があるからである。すなわち、医師が難しい症例と容易な症例を評価するために必要な時間及び労力の量には著しい差があり得る。その一例として、放射線専門医は、病変が明らかに可視的であり明らかに悪性である画像と、病変が見えにくく悪性と良性の特徴を併せ持つ症例とを評価するように求められることがある。
【0003】
病院の放射線科の実務において、放射線専門医は通常、放射線医学情報システム(RIS:radiology information system)又は画像保管通信システム(PACS:picture archiving and communication system)に記憶された、最近撮像された患者から構成される1日ごとのワークリストに従って仕事をする。これらのシステムは通常、症例の「難しさ」は考慮せず、患者は診察のタイプのみに基づいて分類され、特定の症例の診断が難しいか否かの意見は用いられない。従来のシステムは、撮像モダリティ(imaging modality)及び専門分野によって症例を分類して提示するインテリジェンスのみを有し得る。例えば従来のシステムは、臓器(例えば胸部、肝臓等)及び/又は撮像モダリティ(CT、X線、超音波、DCE−MRI等)のみに基づいて症例を分類することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、上述の問題や他の問題を克服する、潜在的な診断の難しさレベルに従って患者症例を層別化することを容易にする新規の及び改良されたシステム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様によれば、難しさレベルに従って患者症例にランク付けを行う方法は、複数の患者症例の各々について、データベースから患者の画像調査(image study)を検索することと、画像調査に含まれる患者画像において異常を識別することと、患者の人口統計学的情報及び臨床情報を分析することと、識別した異常並びに患者の人口統計学的情報及び臨床情報に応じて患者症例のコンピュータ支援層別化スコアを算出することと、各患者症例に割り当てた各層別化スコアに従った患者症例のランク付きリストを出力することと、を備える。
【0006】
別の態様によれば、難しさレベルに従った患者症例のランク付けを容易にするシステムは、複数の患者症例の各々について、データベースから患者の画像調査を検索することと、画像調査に含まれる患者画像において異常を識別することと、患者の人口統計学的情報及び臨床情報を分析することと、識別した異常並びに患者の人口統計学的情報及び臨床情報に応じて患者症例のコンピュータ支援層別化スコアを算出することと、を行うように適合されたプロセッサを備えるコンピュータ支援層別化モジュールを備える。プロセッサは更に、各患者症例に割り当てた各層別化スコアに従った患者症例のランク付きリストを(例えばユーザインタフェース、プリンタ等に)出力するように構成されている。
【0007】
別の態様によれば、コンピュータ読み取り可能媒体は、難しさレベルに従って患者症例にランク付けを行うためのコンピュータ実行可能命令が記憶されている。この命令は、複数の患者症例の各々について、データベースから患者の画像調査を検索することと、画像調査に含まれる患者画像において異常を識別することと、患者の人口統計学的情報及び臨床情報を分析することと、異常のアイデンティティ(identity)並びに患者の人口統計学的情報及び臨床情報に応じて患者症例のコンピュータ支援層別化スコアを算出し割り当てることと、を備える。命令は更に、各患者症例に割り当てた各層別化スコアに従った患者症例のランク付きリストを出力することを備える。
【0008】
1つの利点は、医師の作業量のバランスが改善されることである。
【0009】
別の利点は、追加の精査のために難しい症例を識別できることである。
【0010】
主題の革新的技術の更に別の利点は、当業者が以下の詳細な説明を読んで理解することによって認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面は様々な態様を説明する目的のためだけのものであり、限定として解釈するべきではない。
【0012】
【
図1】本明細書に記載される1つ以上の態様による、症例の難しさに従って患者を分類するためのコンピュータ支援患者層別化の実行を容易にするシステムを示す。
【
図2】本明細書に記載される1つ以上の態様による、履歴診断精度データを用いて複数の患者症例について診断難しさレベルのコンピュータ支援層別化を実行するための方法を示す。
【
図3】本明細書に記載される1つ以上の態様による、病変パラメータ分析に応じて複数の患者症例について診断難しさレベルのコンピュータ支援層別化を実行するための方法を示す。
【
図4】本明細書に記載される1つ以上の態様による、コンピュータ支援診断(CADx)を用いて複数の患者症例について診断難しさレベルのコンピュータ支援層別化を実行するための方法を示す。
【
図5】本明細書に記載される1つ以上の態様による、複数の患者症例について診断難しさレベルのコンピュータ支援層別化を実行するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
記載されるシステム及び方法は、患者の診断に関する難しさレベルに従って患者症例を層別化することによって、上述の問題を克服する。例えば、効率及び精度を最大にするため、医師のワークリストに対する症例の割り当ては、難しさをファクタとして含む。例えば、より容易な症例を若手の医師に割り当てると共に、より複雑な症例を年長の職員に予約することができる。別の例では、様々な症例を別々の医師に等しく分配することができる。従って、この革新的技術は、症例の難しさを評価すること、及びこの評価の結果を用いて臨床ワークフローを調整することを容易にする。例えば患者症例は、臓器のタイプ又は撮像モダリティだけでなく診断の難しさレベルにも基づいて特定の医師に割り当てることができる。別の実施形態では、症例が極めて複雑であると判定された場合、例えば別の医師による再検討を勧める及び/又はその症例が有益な教育用の症例となることを示すアラート等のアラートが発生される。
【0014】
図1は、本明細書に記載する1つ以上の態様による、症例の難しさに従って患者を分類するコンピュータ支援患者層別化の実行を容易にするシステム10を示す。このシステムは、入力として、特定の臨床上の問題について評価対象となる現在の患者の臨床症例を取得する。臨床症例は、患者の人口統計学的情報、臨床情報、現在の撮像検査等を含む患者の情報又はデータを含む。データベース12は、限定ではないが、例えば性別、年齢、民族等の人口統計学的情報を含む患者情報を記憶する。また、データベースは、複数の患者の各々について、例えば家族歴、病歴、撮像検査の理由、現在の状態、症状、現在の治療、危険因子等を含む臨床情報も記憶する。また、データベースには、例えばCTスキャン、MRIスキャン、PETスキャン、SPECTスキャン、超音波スキャン、x線等を含む、一人以上の患者について取得された撮像検査も記憶される。
【0015】
臨床上の問題は、スクリーニングタスク(例えば異常の検出等)、診断タスク(例えば異常の性質及び/又は悪性度の特徴付け)、又は評価タスク(例えば疾患の進行及び/又は治療の有効性の測定、評価)として広く記述することができる。臨床上の問題は、例えば異常が検索されている臓器(例えば胸部病変の検索)、又は評価対象の特定の腫瘍等、評価のために画像内で位置(複数の位置)を特定することによって更に絞り込むことができる。この情報は、患者又は画像情報に関連付けたメタデータに含めることができる(プライベートのDICOMフィールド内で、又は臨床記録のコンピュータ解釈可能セグメントとして等)。
【0016】
システムは更に、本明細書に記載される様々な機能、方法、技法、適用等を遂行するためのコンピュータ実行可能命令を実行するプロセッサ14と、これらの命令を記憶するメモリ16と、を備えている。メモリ16は、ディスクやハードドライブ等、制御プログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能媒体とすればよい。コンピュータ読み取り可能媒体の一般的な形態は、例えばフロッピーディスク、可撓性ディスク、ハードディスク、磁気テープ、又は他のいずれかの磁気記憶媒体、CD−ROM、DCD、又は他のいずれかの光媒体、RAM、ROM、PROM、EPROM、FLASH−EPROM、それらの変形、他のメモリチップ又はカートリッジ、又はプロセッサ14が読み取って実行することができる他の任意の有形の媒体を含む。この文脈において、システム10は、1つ以上の汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ(複数の特殊用途コンピュータ)、プログラムされたマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラ及び周辺集積回路要素、ASIC又は他の集積回路、デジタル信号プロセッサ、ディスクリート要素回路等のハードワイヤード電子回路又は論理回路、又はPLD、PLA、FPGA、グラフィック処理ユニット(GPU)、もしくはPAL等のプログラマブル論理デバイス等において実施され得るか又はそれらとして実施され得る。
【0017】
臨床症例データ12に対して、コンピュータ支援層別化(CAS:computer−aided stratification)モジュール18を実行して、層別化スコア20を発生する。スコアは、数値(0〜100等)、又はカテゴリ(「容易」、「中程度」、及び「難しい」等)とすればよい。一実施形態では、CASモジュールは撮像データを用いて層別化スコアを発生させる。他の実施形態では、CASモジュールは上述のような人口統計学的情報及び他の非撮像情報も用いる。コンピュータ支援層別化モジュール18が発生させる層別化スコアは、臨床上の問題に関して予想される症例の難しさに基づいて患者症例を分類するために用いられる。別の実施形態では、CASモジュール18は、所与の病変を特徴付ける難しさを評価する層別化スコアを計算する。
【0018】
CASモジュール18はランク付き患者リスト21を出力する。このリストは、それぞれの患者症例に関連付けた層別化スコア(例えば診断の難しさレベル)に従ってランク付けすることができる。患者リストは、例えば指定された患者症例について別の医師の再検討(例えばセカンドオピニオン)を勧めるアラート、特定の症例を教育用の症例として用いることを勧めるアラート等を含むことができる。層別化スコア又は各患者症例のランク付けを用いて、例えば難しい症例を年長の医師に割り当てることを保証し、(医師の間で仕事量のバランスをとるため)過剰な数の難しい症例がいずれか一人の医師に割り当てられないことを保証することができる。
【0019】
図1も引き続き参照するが、
図2は、本明細書に記載される1つ以上の態様による、複数の患者症例について診断の難しさレベルのコンピュータ支援層別化を実行するための方法を示す。50では、多数の症例について、例えば患者の人口統計学的情報、臨床情報、撮像検査情報等を含むデータベースを収集する(例えば推測的に(a priori))。データベースは、例えば指定された病変が悪性であるか又は良性であるかに関して、読影(reading)(診断)放射線専門医の診断評価も含む。データベースは更に、病理学や、経時的な安定性(良性のプロセスを示唆する)のような他の付加的な尺度によって判定された実際の診断も含む。従ってデータベースは、放射線専門医の評価及び放射線専門医の評価が正しかったか否かの双方を示すデータを含む。52では、機械学習技法を用いて、コンピュータ分類部22が数学的な変換を実行することで、データベース内のデータを、医師の診断評価(例えば腫瘍が悪性であるか又は良性であるか)が、真実(すなわち病理学等によって判定された実際の正しい診断)に合致する可能性を決定する数値尺度に変える。すなわち、CASモジュールは、放射線専門医が症例を正しく評価するか又は間違って評価するかを予測する。一例では、多数の患者症例の履歴診断精度を用いて、現在の患者症例に層別化スコアを割り当てる。例えばCASモジュールは、特定のタイプの病変が所定の閾値よりも高い率で誤診されるか否かを判定し、その特定のタイプの病変に「難しい」格付け又はスコアを割り当てる。この例を更に進めると、放射線専門医は、特定の腫瘍又は腫瘍位置が悪性であると正式に判定し、生検手順を命令する場合がある。生検によって腫瘍が良性であると正式に示された場合、その特定の腫瘍タイプ又は位置(又は他の腫瘍の測定基準(metric))を、「難しい」という層別化スコアに関連付けることができる。前述の例は、層別化スコアを割り当てるための測定基準として誤診に限定されず、例えば画像の特徴や、放射線レポートに記載される不確かさレベルを示す計算された測定基準のような、他の測定基準も用い得ることは認められよう。54では、特定の病変位置(又はタイプ又は他の測定基準)が予め指定されている新しい症例に適用されると、前述のように、分類部によって発生したスコアは層別化スコアになる。一実施形態では、CASアルゴリズムは、特定の医師の診断精度に基づいて、それぞれの放射線専門医に層別化スコアを提供することができる。
【0020】
図1も引き続き参照するが、
図3は、本明細書に記載される1つ以上の態様による、複数の患者症例について診断の難しさレベルのコンピュータ支援層別化を実行するための方法を示す。例えばCASモジュール18は、所与の病変の測定の難しさを評価する層別化スコアを計算する。測定対象の特定の病変が予め指定されている場合、60では、病変の位置を入力パラメータとして取得する。62では、プロセッサによって、画像上の病変をセグメント化するためのセグメント化アルゴリズム24を、指定された病変位置に対して実行する。これにより、64では、病変アウトライン又はマスク26が生成される。これを用いて、表面積、体積、長軸、短軸、又は同様の一般的な臨床測定値等の病変パラメータ28を計算することができる。66では、例えば以下のように、複数の代替的な病変アウトラインを(更に、その結果として代替的なマスクも)計算することができる。すなわち、例えば、1mm又は2mmの標準偏差のような設定された分布の近傍からのランダムサンプリングによって、入力位置に摂動を与えることができる。あるいは、複数の異なるセグメント化アルゴリズムを同一の入力に実行することで、この場合も多種多様な測定値を得ることができる。68では、異なる測定値間の不一致(variance)から層別化スコアを直接導出する。層別化スコアは、異なる放射線専門医又はアルゴリズムが特定の病変の評価においてどのくらい相違するかの推定値を示す。例えば、1つ以上の入力パラメータの小さい変化がセグメント化の結果に大きい変化を引き起こす場合、この症例に「難しい」層別化スコアを割り当てることができる。一方、入力値の大きい不一致が出力値に最小限の差を引き起こす場合、この症例に「容易」層別化スコアを割り当てることができる。一実施形態では、実際の放射線専門医のワークフローは全体的に手作業であり得る。別の実施形態では、自動化セグメント化を用いて不確かさを推定すると共に層別化スコアを計算する。
【0021】
図1も引き続き参照するが、
図4は、本明細書に記載される1つ以上の態様による、複数の患者症例について診断の難しさレベルのコンピュータ支援層別化を実行するための方法を示す。CASモジュール18は、所与の病変を特徴付ける難しさを評価する層別化スコアを計算する。80では、特徴付ける特定の病変が予め指定され、病変の位置が入力パラメータとして取得される。82では、プロセッサによって、コンピュータ支援診断(CADx:computer−aided diagnosis)アルゴリズム30を実行し、画像情報に基づいて病変の悪性の確率を計算する。別の実施形態では、82で病変の悪性の確率を判定する場合、CADxアルゴリズムは、83で与えられる画像情報並びに患者の人口統計学的情報及び臨床情報を用いることができる。CADxの技法は、例えば0〜100までのスコアを生成し、100が悪性の最大の確率を示すものを含む。84では、直接CADxスコアに基づいて層別化スコアを導出することができる。極めて高い(又は極めて低い)CADxスコア(例えば<20又は>80)は、「容易」症例に対応させることができる。同様に、「中程度」及び「難しい」症例もマッピングすることができる。
【0022】
86では、CASモジュールの層別化スコア出力を用いて、様々な手法で臨床医による症例読影ワークフローに影響を与える。例えば、症例を更に分類し、医師の経験に基づいて医師に割り当てることができる。例えば、最も難しい症例を一定年数の経験を持つ年長の医師に割り当てると共に、中程度の難しさの症例をもっと経験の少ない医師に割り当てることができる。別の実施形態では、医師の間での難しさレベルのばらつきを低減するために症例を分類して医師に割り当てることができる。すなわち、各医師について、1日に与えられる医師の全ての症例の層別化スコアの合計を計算することによって作業量測定基準を規定し、次いでこの作業量測定基準の医師間での不一致を最小限に抑える配分を選択すればよい。
【0023】
別の実施形態では、1日を通して難しい症例を均一に配分するため、一人の医師のワークリスト内で症例を分類することができる。この場合も、例えば、作業量測定基準を規定し、次いで一人の医師についてこの作業量測定基準の1時間ごとの(又は他の時間尺度の)不一致を最小限に抑える配分を選択すればよい。別の実施形態では、ワークリスト内で患者の隣に、各患者症例の複雑さを示すインジケータを配置することができる(例えばRIS上)。インジケータは、閾値に基づくフラグ、すなわち一定レベルの複雑さを超えた症例のためのもの、又は数値、又はその数値を示すカラーフラグ、グラフィックライン等の視覚的インジケータとすればよい。
【0024】
別の例によれば、例外的に難しい症例には、自動二重読影すなわち別の放射線専門医による読影のためのフラグを付けることができる。これは、このイベントがトリガされる閾値を超える閾値を設定することによって実施可能である。別の実施形態では、難しい症例に、教育用ファイルに含める可能性を示すため又はケーススタディとして、フラグを付けることができる。
【0025】
図5は、本明細書に記載される1つ以上の態様による、複数の患者症例について診断の難しさレベルのコンピュータ支援層別化を実行するための方法を示す。100では、特定の患者のデータベースから撮像検査を生成又は検索する。撮像検査は、MRI、CT、超音波、x線、核等、任意の適切な撮像モダリティである。102では、異常(例えば病変)を識別する。一実施形態では、異常はコンピュータ支援検出を用いて識別される。別の実施形態では、異常は手作業で注釈を付けるか又は識別される。104では、患者の人口統計学的情報及び/又は臨床情報を検索する。106では、患者の人口統計学的情報、臨床情報、及び病変のアイデンティティ、又は前述の情報の任意の組み合わせに応じて、コンピュータ支援層別化スコアを計算する。すなわち、CADxを用いて、画像セグメント化データに基づいて等により、スコアを計算することができる。動作100、102、104、及び106は、複数の患者症例の各々に対して繰り返し実行される。108では、層別化スコアに従って患者症例を分類する。
【0026】
一例に従って、43歳の女性に対して胸部ダイナミック造影(DCE)−磁気共鳴画像法(MRI)スクリーニング検査を行う。患者の家族歴は、乳がんのため45歳で死亡した母親を含む。病院のPACSシステムでDCE−MRI検査が利用可能になるとすぐ、バックグラウンドで症例に対してCASアルゴリズムを実行する。コンピュータ支援検出アルゴリズムが、患者の左乳房に乳房病変を識別する。次いで、コンピュータ支援診断(CADx)アルゴリズムを実行して、悪性の可能性スコア(例えば0〜100)を導出する。この可能性スコアが高くなればなるほど悪性の確率が高くなる。可能性スコアが、例えば0から20の間、又は80から100の間である場合、層別化スコアは「容易」である。可能性スコアが20から30の間、又は70から80の間である場合、層別化スコアは「中程度」である。CADxアルゴリズム出力が30から70である場合、層別化スコアは「難しい」である。コンピュータ支援検出及びコンピュータ支援診断アルゴリズムの双方を用いることができる(例えば病変のセグメント化、画像及びセグメント化境界に基づくフィーチャ抽出、及び分類部による可能性スコアの算出を実行することによって)。
【0027】
この例を更に進めると、CASアルゴリズムは、患者に関する人口統計学的情報及びその他の非画像ベースの情報も用いる。例えば上記の例では、女性は乳がんの家族歴を有するので、たとえ層別化スコアが「容易」であっても、この追加の臨床情報のためにスコアを「中程度」に引き上げてもよい。結果としてこの症例は、より経験豊富な医師に割り当てられるか、又は二重読影を行うことができる。
【0028】
いくつかの実施形態を参照して、この革新的技術について説明した。前述の詳細な説明を読んで理解すれば、他にも変形及び変更が想起され得る。全てのそのような変形及び変更が添付の特許請求の範囲又はその均等物の範囲内にある限り、この革新的技術は、全てのそのような変形及び変更を含むと解釈されることが意図される。