特許第6559737号(P6559737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559737
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】無給電中継装置及び無線中継システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/145 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   H04B7/145
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-121602(P2017-121602)
(22)【出願日】2017年6月21日
(65)【公開番号】特開2019-9531(P2019-9531A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年2月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成29年2月9日に、電子情報通信学会技術研究報告,Vol.116,No.454,AP2016−160(一般社団法人電子情報通信学会)にて公開 (2)平成29年2月16日に、電子情報通信学会 アンテナ・伝播研究会(AP),栃木県総合文化センター(栃木県宇都宮市本町1−8)にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】山口 良
(72)【発明者】
【氏名】吉野 仁
(72)【発明者】
【氏名】中島 潤一
(72)【発明者】
【氏名】宮下 真行
(72)【発明者】
【氏名】豊見本 和馬
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−154320(JP,A)
【文献】 特開2000−244236(JP,A)
【文献】 特開2012−205306(JP,A)
【文献】 特開平05−191134(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0226729(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と予め決められた中継サービス対象の特定エリア内に存在する移動局との間の無線通信を中継する無給電中継装置であって、
前記無線通信に用いられる電波を反射する反射部材を有し、
前記反射部材の反射面は、前記反射面で反射された反射波がカバーするカバーエリアの電界強度分布が前記特定エリアの形状に対応した特定の電界強度分布となるように、前記特定エリアの外部エリアに対応することになる反射面部分が該特定エリア内の地点に対応するように当該反射面部分の三次元形状が調整されたものであることを特徴とする無給電中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無給電中継装置において、
前記反射面の三次元形状を変更する反射面形状変更手段を有することを特徴とする無給電中継装置。
【請求項3】
請求項2に記載の無給電中継装置において、
入力情報に従って前記反射面形状変更手段を駆動し、該入力情報に応じた三次元形状となるように前記反射面の三次元形状を変更させる制御手段を有することを特徴とする無給電中継装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無給電中継装置において、
前記反射面の鉛直方向形状は、凹形状であることを特徴とする無給電中継装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の無給電中継装置において、
前記反射面の水平方向形状は、凸形状であることを特徴とする無給電中継装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の無給電中継装置において、
前記反射面は、鉛直方向に長尺な縦長面であることを特徴とする無給電中継装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無給電中継装置において、
前記反射面は、前記カバーエリア内における前記無線通信の頻度の高いエリア部分に向かう反射波の反射面部分の反射率が相対的に高くなるように構成されていることを特徴とする無給電中継装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の無給電中継装置において、
前記反射面は、前記カバーエリア内における前記無線通信の頻度の低いエリア部分に向かう反射波の反射面部分の反射率が相対的に低くなるように構成されていることを特徴とする無給電中継装置。
【請求項9】
基地局と予め決められた中継サービス対象の特定エリア内に存在する移動局との間の無線通信を無給電中継装置により中継する無線中継システムであって、
前記無給電中継装置は、前記基地局と前記特定エリアの両方に対して前記電波の見通し伝搬の障害になる障害物が存在しない地上の互いに異なる場所に複数配置され、
前記無給電中継装置として、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の無給電中継装置を用いたことを特徴とする無線中継システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無給電中継装置及び無線中継システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基地局のアンテナとの間に電波の見通し伝搬の障害になる障害物が存在する災害地、不感地、山岳エリア、海上エリアなどの弱電界エリアにおいて、移動局による無線通信ができるように無線中継を行う無線中継装置が知られている。例えば、中継用アンテナ及び対移動局用アンテナを有する中継局を係留気球に搭載したシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。また、マイクロ波の無線中継装置として、反射板を固定配置したものが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、中継局を係留気球に搭載した従来のシステムでは、係留気球に搭載される中継局に中継信号処理用の電源が必要である。
また、反射板を固定配置した従来のマイクロ波無線中継システムは、マイクロ波の送信機と受信機との間を1対1で中継するもので、高い指向性をもった電波を反射板で反射させるものであり、移動通信のような複数の移動局が分布する広いエリア内を適切にカバーする電界強度分布を得ることができない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る無給電中継装置は、基地局と予め決められた中継サービス対象の特定エリア内に存在する移動局との間の無線通信を中継する無給電中継装置であって、前記無線通信に用いられる電波を反射する反射部材を有し、前記反射部材の反射面は、前記反射面で反射された反射波がカバーするカバーエリアの電界強度分布が、前記特定エリアの形状に対応した特定の電界強度分布となるように、構成されていることを特徴とする。
ここで、前記反射面は、前記カバーエリアの電界強度分布を前記特定の電界強度分布にする三次元形状を有するものであってもよい。
また、前記反射面の三次元形状を変更する反射面形状変更手段を有してもよい。
また、入力情報に従って前記反射面形状変更手段を駆動し、該入力情報に応じた三次元形状となるように前記反射面の三次元形状を変更させる制御手段を有してもよい。
また、前記反射面の鉛直方向形状は、凹形状であってもよい。
また、前記反射面の水平方向形状は、凸形状であってもよい。
また、前記反射面は、鉛直方向に長尺な縦長面であってもよい。
また、前記反射面は、前記カバーエリア内における前記無線通信の頻度の高いエリア部分に向かう反射波の反射面部分の反射率が相対的に高くなるように構成されていてもよい。
また、前記反射面は、前記カバーエリア内における前記無線通信の頻度の低いエリア部分に向かう反射波の反射面部分の反射率が相対的に低くなるように構成されていてもよい。
【0005】
また、本発明の他の態様に係る無線中継システムは、基地局と予め決められた中継サービス対象の特定エリア内に存在する移動局との間の無線通信を無給電中継装置により中継する無線中継システムであって、前記無給電中継装置は、前記基地局と前記特定エリアの両方に対して前記電波の見通し伝搬の障害になる障害物が存在しない地上の互いに異なる場所に複数配置され、前記無給電中継装置として、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の無給電中継装置を用いたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、中継信号処理用の電源が不要である。更に、本発明によれば、基地局との間に電波の見通し伝搬の障害になる障害物が存在する弱電界エリア等の特定エリアにおいて、従来のマイクロ波無線中継システムマイクロ波の反射板を用いたのでは得ることのできない電界強度分布を得ることができ、当該特定エリア内に存在する移動局と基地局との間の適切な無線通信を実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る無給電中継装置を備えた移動通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図。
図2】反射面が正方形状で平坦である反射板11’を用いた場合におけるカバーエリア60の電界強度分布の一例を示す説明図。
図3】実施形態の反射板を用いた場合におけるカバーエリア60の電界強度分布(特定の電界強度分布)の一例を示す説明図。
図4】実施形態の反射板を用いた場合におけるカバーエリア60の電界強度分布(特定の電界強度分布)の他の例を示す説明図。
図5】実施形態の反射板を用いた場合におけるカバーエリア60の電界強度分布(特定の電界強度分布)の更に他の例を示す説明図。
図6】実施形態の反射板を用いた場合における対象エリアの電界強度分布(特定の電界強度分布)の更に他の例を示す説明図。
図7】実施形態の反射板を用いた場合における対象エリアの電界強度分布(特定の電界強度分布)の更に他の例を示す説明図。
図8】実施形態の反射板を用いた場合における対象エリアの電界強度分布(特定の電界強度分布)の更に他の例を示す説明図。
図9】(a)〜(d)は、それぞれ、反射板の反射面における断面構造の一例を示す断面図。
図10】他の実施形態に係る無給電中継装置を備えた移動通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図。
図11】更に他の実施形態に係る無給電中継装置の一例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る無給電中継装置を備えた移動通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図である。
図1において、本実施形態に係る移動通信システムは、マクロセル基地局などの基地局20と移動局30との間の無線通信を中継する受動反射型の無給電中継装置(パッシブレピータ)10を備える。無給電中継装置10は、基地局20と移動局30との間の無線通信に用いられる電波を反射する導電性材料からなる反射面を備えた反射部材としての反射板11を備えている。
【0009】
反射板11は、基地局20のアンテナ20aとの間に無線通信の電波の見通し伝搬の障害になる山90や高層ビルディングなどの障害物が存在する災害地、不感地、山岳エリア、海上エリアなどの弱電界エリア等の中継サービス対象となる対象エリアと、基地局20のアンテナ20aとの両方に対し、電波の見通し伝搬の障害になる障害物が存在しない地上の場所に配置されている。本実施形態の例では、山90を含む山岳エリア内に存在する村の村民生活地域等の対象エリア50と基地局20のアンテナ20aとの両方に対して障害物が存在しない山91の山腹に、反射板11が配置されている。なお、反射板11の設置場所は、地上の場所であれば、地面に直接設置されていてもよいし、鉄塔やビルディングなどの地上建造物に設置されていてもよいし、地上に係留されている気球などの物体に設置されていてもよい。
【0010】
図1において、基地局20と対象エリア50内に位置する移動局30との間では、山90が障害物となって電波の見通し伝搬による無線通信することができないが、反射板11による電波の反射(再放射)を介した無線通信が可能である。例えば、基地局20のアンテナ20aから送信された移動通信のダウンリンクの電波(周波数:F)は、山91の山腹に到達すると、反射板11の反射面により対象エリア50に向けて反射され、対象エリア50に位置する移動局30に届く。また、対象エリア50の移動局30から送信された移動通信のアップリンクの電波(周波数:f)は、反射板11の反射面により基地局20の方向へ反射され、基地局20のアンテナ20aに届く。このように、本実施形態の無給電中継装置(パッシブレピータ)10は、中継信号処理用の電源が不要であり、原理的に送受信双方向(ダウンリンク、アップリンク)の回線に同時に適用できる。
【0011】
本実施形態における反射板11の反射面12は、その反射面12で反射された反射波がカバーするカバーエリア60の電界強度分布が、対象エリア50の形状に対応した特定の電界強度分布となるように、構成されている。具体的には、反射面12は、カバーエリア60の電界強度分布を対象エリア50の形状に対応した特定の電界強度分布にする三次元形状を有する。特定の電界強度分布は、対象エリア50の形状のほか、必要に応じて、対象エリア50内で電界強度を強めたい箇所や弱めたい箇所の分布状況に応じて適宜に設定される。
【0012】
図2は、反射面が正方形状で平坦である反射板11’を用いた場合におけるカバーエリア60の電界強度分布の一例を示す説明図である。
図2は、説明のため、反射板11’を斜視で図示し、対象エリア50及びカバーエリア60は鉛直方向真上から見た状態を図示したものである。基地局20と反射板11’との間は、距離が十分に長く、かつ、電波が直接届く関係となっているため、反射板11’に入射する電波は実質的には並行ビームをなす。したがって、正方形状の平面鏡である反射板11’の反射面で反射された反射波がカバーするカバーエリア60の電界強度分布の外形形状は、図2に示すように、反射板11’の反射面の外形形状に対応した矩形状となる。
【0013】
ただし、反射板11’が設置される場所は地上から比較的低い位置であるため、反射板11’の反射波が届くカバーエリア60の電界強度分布の外形形状は、図2に示すように、その反射波の進行方向に伸びた(拡大された)形状となる。一方、反射波の進行方向に対して直交する方向については、その反射波の高い指向性により、カバーエリア60の電界強度分布の外形形状が拡大されることはない。その結果、正方形状の平面鏡である反射板11’からの反射波が届くカバーエリア60の電界強度分布の外形は、図2に示すように、反射波の進行方向(図2の紙面上下方向)については反射板11’の鉛直方向寸法よりも拡大され、反射波の進行方向に対して直交する方向(図2の紙面左右方向)ついては反射板11’の水平方向寸法とほぼ同等の寸法となった矩形状となる。
【0014】
図3は、本実施形態の反射板11を用いた場合におけるカバーエリア60の電界強度分布(特定の電界強度分布)の一例を示す説明図である。
本例の反射板11の反射面12は、カバーエリア60の電界強度分布が、図3に示すような特定の電界強度分布となるように設計された三次元形状をもつ。具体的には、本例の反射板11は、当該反射板11を予め決められた設置場所(図1に示す山91の山腹)に設置した場合に、予め決められた基地局20から送信される電波を反射することで、その反射波のカバーエリア60内に対象エリア50が含まれるように、反射面12の水平方向形状が凸形状となるように構成されている。このようにカバーエリア60内に対象エリア50を含ませる反射面12の凸形状の曲率(水平方向の曲率)は、反射面12への電波の入射方向(入射角)、反射面12からの電波の出射方向(出射角)、反射面12と対象エリア50との距離、電波(ビーム)の広がり角などのパラメータによって決定される。
【0015】
図3に示す例では、一定の電界強度以上となるカバーエリア60の形状が対象エリア50を含むように、反射板11からのビーム(電波)を成形した例である。この例では、対象エリア50の全体に電波を行き渡らせることができる。
【0016】
また、図3に示す例によれば、反射板11の水平方向寸法を過剰に大きくすることなく、カバーエリア60が対象エリア50を含むようにすることができる。反射板11の設置スペースとの関係では、反射板11の水平方向寸法を大きくすることが困難な場合が多いことから、図3に示す例は、反射板11の設置場所の自由度を向上させるメリットがある。
【0017】
図4は、本実施形態の反射板11を用いた場合におけるカバーエリア60の電界強度分布(特定の電界強度分布)の他の例を示す説明図である。
上述したとおり、反射板11が設置されている場所は地上から比較的低い位置であるため、反射板11から対象エリア50(実質的には地上の2次元平面エリア)を見たときの対象エリア50の概略形状は、水平方向に長く鉛直方向に短い横長形状となる。そのため、このような横長形状の対象エリア50に対して反射板11で反射させた電波を集約するためには、基地局20からの電波を反射板11で反射するにあたり、電波を鉛直方向に絞ることが有効である。
【0018】
そこで、本例の反射板11の反射面12は、カバーエリア60の電界強度分布が、図4に示すような特定の電界強度分布となるように設計された三次元形状をもつ。具体的には、本例の反射板11は、反射波の進行方向(図2の紙面上下方向)におけるカバーエリア60の長さ(距離)を短くして、カバーエリア60内において対象エリア50の外部エリアが占める割合を少なくするように、反射面12の鉛直方向形状を凹形状としている。なお、このような反射面12の凹形状の曲率(鉛直方向の曲率)は、反射面12への電波の入射方向(入射角)、反射面12からの電波の出射方向(出射角)、反射面12と対象エリア50との距離、電波(ビーム)の広がり角などのパラメータによって決定される。
【0019】
また、図4に示す例では、図3に示す例と同様、反射面12の水平方向形状を凸形状とし、電波を水平方向に拡げることで、反射波のカバーエリア60に対象エリア50の外縁がおよそ内接するようにしている。そのため、反射面12の三次元形状は、鞍型形状をなしている。ただし、反射面12の水平方向形状を凸形状としなくても、反射波のカバーエリア60内に対象エリア50が含まれるようであれば、反射面12の水平方向形状を凸形状とする必要はない。
【0020】
また、本例の反射板11は、対象エリア50内に電波をより多く集約させるために、図4に示すように、反射面12が鉛直方向に長尺な縦長面となっている。反射面12を鉛直方向に長尺な縦長面としたことで、鉛直方向においてより多くの電波を対象エリア50に集約できる。本例の場合、反射板11が鉛直方向に長尺な形状となるが、反射板11が屋外に設置される場合、その設置場所の上方スペースには比較的余裕があるので、反射板11が鉛直方向に長尺な形状であっても設置スペース上はあまり問題とならない。すなわち、反射板11を設置されるにあたっては水平方向に設置スペースを確保することが難しい場合が多いところ、本例のように反射板11を水平方向には短尺な形状とし、鉛直方向には長尺な形状とすることで、電波の集約(カバーエリア60の電界強度の向上)と設置スペースの問題とを両立することができる。
【0021】
図5は、本実施形態の反射板11を用いた場合におけるカバーエリア60の電界強度分布(特定の電界強度分布)の更に他の例を示す説明図である。
本例の反射板11の反射面12は、カバーエリア60の電界強度分布が、図5に示すような特定の電界強度分布となるように設計された三次元形状をもつ。具体的には、本例の反射板11は、反射波のカバーエリア60の外縁が対象エリア50の外形に沿うように、反射面12の三次元形状が決められている。
【0022】
移動通信に用いられる電波は、一般に指向性が高いため、反射面12上の各部分と、対象エリア50上の各地点とを対応づけすることが可能である。図5に示す例では、本例の反射面12の三次元形状の概形を図4に示した鞍型形状にして、図4に示すように反射波のカバーエリア60に対象エリア50の外縁がおよそ内接するようにし、更に、そのカバーエリア60内で対象エリア50の外部エリアとなっているエリア部分に届く反射波が対象エリア50内に届くように、反射面12上の対応部分の三次元形状(傾斜角度や凹凸パターンなど)を調整してある。これにより、図5に示す例では、対象エリア50内の電界強度をより高めることができ、また、電波の利用効率をより高めることができる。
【0023】
図5に示すようなカバーエリア60の電界強度分布を得る他の方法としては、例えば、そのカバーエリア60内で対象エリア50の外部エリアとなっているエリア部分に届く反射波を反射する反射面12上の対応部分の反射率を、他の部分よりも相対的に低くする方法も挙げられる。反射面12上の反射率を部分的に低くする方法としては、例えば、反射面の材質を変えたり、低反射率部材を貼り付けたりする方法が挙げられる。
【0024】
また、図5に示すようなカバーエリア60の電界強度分布を得る他の方法としては、例えば、反射面12の外縁形状を対象エリア50の外形に対応する形状に調整する方法も挙げられる。
【0025】
なお、図5に示す例では、本例の反射面12の三次元形状の概形が鞍型形状となっているが、必ずしも鞍型形状にする必要はなく、反射面12上の各部分と対象エリア50上の各地点との対応関係から決定される反射面12全体の三次元形状パターン(凹凸パターン)によって、図5に示すようなカバーエリア60を形成してもよい。
【0026】
図6は、本実施形態の反射板11を用いた場合におけるカバーエリア60の電界強度分布(特定の電界強度分布)の更に他の例を示す説明図である。
本例の反射板11の反射面12は、カバーエリア60の電界強度分布が、図6に示すような特定の電界強度分布となるように設計された三次元形状をもつ。具体的には、本例の反射板11は、対象エリア50内で、無線通信の頻度の高いエリア部分(例えば移動局30が集まりやすい地域など)のように高い電界強度が望まれるエリア部分51(例えば、山岳エリア内に存在する村の村役場、公民館、学校施設など)で、高い電界強度が得られるように、反射板11からのビーム(電波)を成形した例である。この例によれば、移動局30との安定した無線通信を確保しやすいメリットがある。
【0027】
図6に示すように、カバーエリア60内の一部分(エリア部分51)について電界強度を相対的に高める方法としては、例えば、カバーエリア60内で対象エリア50の外部エリアに届く反射波が当該エリア部分51に届くように、反射面12上の対応部分の三次元形状(傾斜角度や凹凸パターンなど)を調整する方法が挙げられる。また、カバーエリア60内の当該エリア部分51に届く反射波を反射する反射面12上の対応部分の反射率を、他の部分よりも相対的に高める方法も挙げられる。反射面12上の反射率を部分的に高める方法としては、例えば、反射面の材質を変えたり、高反射率部材を貼り付けたりする方法が挙げられる。
【0028】
図7は、本実施形態の反射板11を用いた場合におけるカバーエリア60の電界強度分布(特定の電界強度分布)の更に他の例を示す説明図である。
本例の反射板11の反射面12は、カバーエリア60の電界強度分布が、図7に示すような特定の電界強度分布となるように設計された三次元形状をもつ。具体的には、本例の反射板11は、移動局30が集まりやすい地域などの特に高い電界強度が望まれるエリア部分51,52が対象エリア50内で離れて分布している場合に、それらの各エリア部分51,52で高い電界強度が得られるように、反射板11からのビーム(電波)を成形した例である。この例によれば、移動局30との安定した無線通信を確保しやすいメリットがある。
【0029】
図7に示すような電界強度分布を得る方法としては、例えば、カバーエリア60内で対象エリア50の外部エリアに届く反射波が当該エリア部分51,52に届くように、反射面12上の対応部分の三次元形状(傾斜角度や凹凸パターンなど)を調整する方法が挙げられる。また、カバーエリア60内の当該エリア部分51,52に届く反射波を反射する反射面12上の対応部分の反射率を、他の部分よりも相対的に高める方法も挙げられる。反射面12上の反射率を部分的に高める方法としては、例えば、反射面の材質を変えたり、高反射率部材を貼り付けたりする方法が挙げられる。
【0030】
図8は、本実施形態の反射板11を用いた場合におけるカバーエリア60の電界強度分布(特定の電界強度分布)の更に他の例を示す説明図である。
本例の反射板11の反射面12は、カバーエリア60の電界強度分布が、図8に示すような特定の電界強度分布となるように設計された三次元形状をもつ。具体的には、本例の反射板11は、移動局30が位置することが少ない地域などの高い電界強度を望まないエリア部分53(例えば、池、湖、人の立ち入らない場所など)で、電界強度が低くなるように、反射板11からのビーム(電波)を成形した例である。この例によれば、対象エリア50内における高い電界強度を望まないエリア部分53に到達する電波を減らすことで、電波の利用効率が高められる。
【0031】
図8に示すような電界強度分布を得る方法としては、例えば、カバーエリア60内で対象エリア50の当該エリア部分53に届く反射波が対象エリア50内の他のエリア部分(特に電波強度を高めたいエリア部分51であるのが好ましい。)に届くように、反射面12上の対応部分の三次元形状(傾斜角度や凹凸パターンなど)を調整する方法が挙げられる。また、カバーエリア60内の当該エリア部分53に届く反射波を反射する反射面12上の対応部分の反射率を、他の部分よりも相対的に低くする方法も挙げられる。反射面12上の反射率を部分的に低くする方法としては、例えば、反射面の材質を変えたり、低反射率部材を貼り付けたりする方法が挙げられる。
【0032】
図9(a)〜(d)は、それぞれ反射板11の反射面12における断面構造の一例を示す断面図である。
図9(a)は、必要な強度を確保するための材料からなるベース層11aと、そのベース層11aの外面側に設けられた反射面12を構成する導電性層11bとを有する反射板11の構成例である。導電性層11bは、例えば、ベース層11aの外面に金属製箔を貼り付けたり、導電性塗料を塗布したりすることにより形成することができる。
図9(b)は、ベース層11aの外面側に導電性層11bを設け、その導電性層11bの腐食などの劣化を防止する保護膜層11cを導電性層11bの外面側に設けた反射板11の構成例である。
図9(c)は、ベース層11aの内面側に導電性層11bを設けた反射板11の構成例である。
図9(d)は、ベース層11aの内面側に導電性層11bを設け、その導電性層11bの内面側に保護膜層11cを設けた反射板11の構成例である。
【0033】
なお、図9(a)〜(d)の反射板11の導電性層11bは、基地局20や移動局30からの電波を受けたときに、その電波を再放射して実質的に電波の反射・散乱の効果を高めるスロット状又はスリット状の開口を有してもよい。
また、図9(a)〜(d)の反射板11は、ベース層11aとは別に導電性層11bを設けた構成例であるが、ベース層11a自体が電波を反射させる特性を有する導電性カーボン材料などの材料で形成されていれば、ベース層11aとは別に導電性層11bを設ける必要はない。
【0034】
以上、実施形態に係る無給電中継装置によれば、中継信号処理用の電源が不要であり、基地局20のアンテナ20aとの間に電波の見通し伝搬の障害になる山90等の障害物が存在する対象エリア50において、対象エリア50の外部に届く電波を減らしたり、対象エリア50の外部に届く電波を対象エリア50内へ届かせて電波の利用効率を高めたり、あるいは、必要なエリア部分51,52に高い電界強度を割り当てたり、不必要なエリア部分53の電界強度を下げたりするなど、対象エリア50における電波利用状況に応じた適切な電界強度分布(従来の反射板を用いた場合では実現できない電界強度分布)を形成することができる。
【0035】
また、反射板11により直接反射された電波がそのまま基地局20や移動局30に到達するので、移動局30が加入している移動通信事業者(オペレータ)の通信方式及び周波数にかかわらず、移動通信システムの無線通信を反射板11の反射により中継することができる。
また、本実施形態の反射板11は、ビームフォーミング技術を利用した通信方式など、電波の指向性を利用した技術にも対応することができる。
【0036】
また、本実施形態では、基地局20からの電波を単一の反射板11で対象エリア50に向けて反射する例を示したが、基地局20からの電波を複数の反射板11で対象エリア50に向けて反射するように構成してもよい。例えば図10に例示するように、基地局20からの電波を互いに異なる複数の場所(図10の例では2箇所)に反射板11をそれぞれ設置する。これにより、複数の反射板11によるMIMO(Multiple-Input and Multiple Output)効果、あるいは、ダイバーシティ効果を持たせることができ、対象エリア50内の移動局30と基地局20との間の通信品質を高めることができる。このとき、基地局20のアンテナ20aから見て複数の反射板11が互いに重ならないように配置し、複数の反射板11のいずれかと基地局20のアンテナ20aとの間の電波の伝搬を他の反射板11が遮らないようにするのが好ましい。
【0037】
また、本実施形態では、設置された反射板11における反射面12の三次元形状は固定されているが、反射板11における反射面12の三次元形状を変更できるように構成してもよい。例えば、図11に示すように、反射面12の各部を反射面形状変更手段としてのアクチュエータ13によって個別に変位させて、反射面12の三次元形状を変更するように構成してもよい。反射面形状変更手段としては、図11に例示の構成のように、制御手段としての制御部14によって駆動制御されるアクチュエータ13であるのが好ましいが、作業者が手操作する調整ネジなどを用いて反射面12の各部を変位させて反射面12の三次元形状を変更するような構成であってもよい。
【0038】
図11に例示の構成では、制御部14は、入力情報に従って各アクチュエータ13を駆動することで、その入力情報に応じた三次元形状となるように反射面12の三次元形状が変更される。入力情報は、反射面12の三次元形状を決定するための情報であればよく、例えば、各アクチュエータ13の駆動制御情報を入力情報としてもよい。また、例えば、特定の電界強度分布から予め計算しておいた反射面12の三次元形状情報を入力情報としてもよく、この場合には、制御部14において当該三次元形状情報から各アクチュエータ13の駆動制御情報を算出して各アクチュエータ13の駆動制御を行う。また、例えば、特定の電界強度分布の情報を入力情報としてもよく、この場合には、制御部14において当該特定の電界強度分布の情報から各アクチュエータ13の駆動制御情報を算出して各アクチュエータ13の駆動制御を行う。
【0039】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに無給電中継装置及び基地局における基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0040】
ハードウェア実装については、実体(例えば、基地局装置、無給電中継装置、移動局、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0041】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0042】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0043】
10 無給電中継装置
11 反射板
11a ベース層
11b 導電性層
11c 保護膜層
12 反射面
13 アクチュエータ
14 制御部
20 基地局
20a アンテナ
30 移動局
50 対象エリア
51,52 高電界強度エリア部分
53 低電界強度エリア部分
60 カバーエリア
90,91 山
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【特許文献1】特開2016−002973号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11