特許第6559744号(P6559744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社金融エンジニアリング・グループの特許一覧

特許6559744情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
<>
  • 特許6559744-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図000008
  • 特許6559744-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図000009
  • 特許6559744-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図000010
  • 特許6559744-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図000011
  • 特許6559744-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図000012
  • 特許6559744-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図000013
  • 特許6559744-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図000014
  • 特許6559744-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図000015
  • 特許6559744-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図000016
  • 特許6559744-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図000017
  • 特許6559744-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図000018
  • 特許6559744-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図000019
  • 特許6559744-情報処理装置、情報処理方法及びプログラム 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559744
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/02 20120101AFI20190805BHJP
【FI】
   G06Q40/02 300
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-155973(P2017-155973)
(22)【出願日】2017年8月10日
(62)【分割の表示】特願2017-40832(P2017-40832)の分割
【原出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-60527(P2018-60527A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2017年8月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-191781(P2016-191781)
(32)【優先日】2016年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501091866
【氏名又は名称】株式会社金融エンジニアリング・グループ
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】甲田 恵
(72)【発明者】
【氏名】日野 裕太
(72)【発明者】
【氏名】本木 裕介
【審査官】 海江田 章裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−090689(JP,A)
【文献】 特開2014−071532(JP,A)
【文献】 特開2009−123017(JP,A)
【文献】 特開2002−024539(JP,A)
【文献】 特開2017−182284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人を特定できる情報である特定情報を受信する受信手段と、
外部装置からの要求に応じて前記要求に対応する個人信用情報を前記外部装置に送信する個人信用情報管理装置から受信した前記個人信用情報であって、前記受信手段によって受信された前記特定情報に対応する前記個人の前記個人信用情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記個人信用情報に基づいて、予め定められたモデルの入力データを決定する入力データ決定手段と、
前記入力データ決定手段によって決定された前記入力データ、及び、前記モデルに基づいて、デフォルト確率を決定するデフォルト確率決定手段と、
を有し、
前記入力データ決定手段は、前記取得手段によって取得された前記個人信用情報に基づいて、前記モデルの前記入力データとして、前記個人の前記個人信用情報に対する照会に関する変数であって、取引の形態ごとの照会に関する情報に基づいて決定された変数である1又は2以上の照会関連変数の入力データを決定する情報処理装置。
【請求項2】
前記入力データ決定手段は、少なくとも1つの前記照会関連変数の入力データとして、所定の期間における前記個人の前記個人信用情報に対する所定の照会の件数又は照会の日数の合計数を決定する請求項記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記入力データ決定手段は、少なくとも1つの前記照会関連変数の入力データとして、所定の期間における前記個人の前記個人信用情報に対する照会の件数のうち、所定の照会の件数を除いた特定照会件数を決定する請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記入力データ決定手段は、少なくとも1つの前記照会関連変数の入力データとして、所定の期間における前記個人の前記個人信用情報に対する照会の日数のうち、所定の日数を除いた特定照会日数を決定する請求項1乃至何れか1項記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記受信手段は、特定情報として氏名、生年月日、及び、電話番号を受信し、
前記取得手段は、前記受信手段によって受信された氏名、生年月日、及び、電話番号を、前記個人信用情報を管理する前記個人信用情報管理装置に送信し、前記個人信用情報管理装置から前記個人信用情報を受信することで、前記個人信用情報を取得する請求項1乃至何れか1項記載の情報処理装置。
【請求項6】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
個人を特定できる情報である特定情報を受信する受信ステップと、
外部装置からの要求に応じて前記要求に対応する個人信用情報を前記外部装置に送信する個人信用情報管理装置から受信した前記個人信用情報であって、前記受信ステップによって受信された前記特定情報に対応する前記個人の前記個人信用情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップによって取得された前記個人信用情報に基づいて、予め定められたモデルの入力データを決定する入力データ決定ステップと、
前記入力データ決定ステップによって決定された前記入力データ、及び、前記モデルに基づいて、デフォルト確率を決定するデフォルト確率決定ステップと、
を有し、
前記入力データ決定ステップでは、前記取得ステップによって取得された前記個人信用情報に基づいて、前記モデルの前記入力データとして、前記個人の前記個人信用情報に対する照会に関する変数であって、取引の形態ごとの照会に関する情報に基づいて決定された変数である1又は2以上の照会関連変数の入力データを決定する情報処理方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1乃至何れか1項記載の情報処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
氏名、生年月日、電話番号、及び、個人の所定の情報である本人確認情報を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された氏名、生年月日、及び、電話番号を、個人信用情報を管理する個人信用情報管理装置に送信し、前記個人信用情報管理装置から前記個人信用情報を受信することで、前記個人の前記個人信用情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記個人信用情報に基づいて、予め定められたモデルの入力データを決定する入力データ決定手段と、
前記入力データ決定手段によって決定された前記入力データ、及び、前記モデルに基づいて、デフォルト確率を決定するデフォルト確率決定手段と、
前記デフォルト確率決定手段によって決定されたデフォルト確率に基づいて、審査を行う第1審査手段と、
前記第1審査手段によって承諾されたとき、前記本人確認情報を証明可能な本人証明情報と、前記受信手段によって受信される前記本人確認情報とに基づいて、審査を行う第2審査手段と、
を有し、
前記入力データ決定手段は、前記取得手段によって取得された前記個人信用情報に基づいて、前記モデルの前記入力データとして、前記個人の前記個人信用情報に対する照会に関する変数であって、取引の形態ごとの照会に関する情報に基づいて決定された変数である1又は2以上の照会関連変数の入力データを決定する情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
与信の判断に関連する技術として特許文献1には、次のようなローン与信判断システムが記載されている。特許文献1のローン与信判断システムでは、顧客情報に基づいて属性分類に対する属性情報、不動産情報、資金情報等のファクターの選択を行い、更にファクター別の回帰係数の設定を行い、適正レートを算出し、顧客提示レートが上記算出された適正レートを超える場合、貸し出しの承認を行う。さらに、特許文献1のローン与信判断システムでは、貸し出し後、返済状況等を考慮した許諾判断基準の修正処理を行い、最近の情報に基づいて行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−90689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、属性情報、不動産情報、資金情報等が必要になる。金融機関がこれらの情報を取得するために、顧客がローン申込書等に様々な情報を記入する必要がある。属性情報等を利用すれば、デフォルトを予測する精度が向上するため、金融機関としてはデフォルトリスクを低減できる。しかしながら、ローン申込書等に様々な情報を記入することは煩雑である。また、ローン申込書等には、年収等のように記入に心理的な負荷のある項目もある。このため、顧客がローン等の申し込みの作業を中断して手続から離脱する離脱率が高くなる傾向にある。
【0005】
本発明は、デフォルトの発生を抑制しつつ、離脱率を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の情報処理装置は、個人を特定できる情報である特定情報を受信する受信手段と、外部装置からの要求に応じて前記要求に対応する個人信用情報を前記外部装置に送信する個人信用情報管理装置から受信した前記個人信用情報であって、前記受信手段によって受信された前記特定情報に対応する前記個人の前記個人信用情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記個人信用情報に基づいて、予め定められたモデルの入力データを決定する入力データ決定手段と、前記入力データ決定手段によって決定された前記入力データ、及び、前記モデルに基づいて、デフォルト確率を決定するデフォルト確率決定手段と、を有し、前記入力データ決定手段は、前記取得手段によって取得された前記個人信用情報に基づいて、前記モデルの前記入力データとして、前記個人の前記個人信用情報に対する照会に関する変数であって、取引の形態ごとの照会に関する情報に基づいて決定された変数である1又は2以上の照会関連変数の入力データを決定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、デフォルトの発生を抑制しつつ、離脱率を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、与信システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
図2図2は、与信サーバのソフトウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、顧客端末に表示される画面の一例を示す図である。
図4図4は、与信システムの処理シーケンスの一例を示す図である。
図5図5は、個人信用情報の一例を示す図である。
図6図6は、変換テーブルの一例を示す図である。
図7図7は、説明変数の重要度を説明する図である。
図8図8は、モデルごとのARの一例を示す図である。
図9図9は、与信処理のフローチャートの一例を示す図である。
図10図10は、CAP曲線を示す図である。
図11図11は、ARの定義を説明するための図である。
図12図12は、決定木により表現されるモデルのイメージを示す図である。
図13図13は、第2クレジット情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
[与信システムの全体構成]
まず、図1を参照して、与信システム1の全体構成について説明する。図1は、与信システム1の構成の一例を示す図である。与信システム1は、顧客からの入力データに基づいてローン等の与信判断を行うシステムであり、与信サーバ100と、顧客端末200と、個人信用情報サーバ300とを備える。
【0010】
与信サーバ100は、顧客からの入力データに基づいてローン等の与信判断を行う情報処理装置である。
顧客端末200は、顧客がローン等を申し込むために使用する情報処理装置である。顧客端末200として、スマートフォンを含む携帯電話、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等が使われるが、これらに限定されるものではない。
個人信用情報サーバ300は、個人信用情報を管理する情報処理装置であり、外部の情報処理装置からの要求に応じて、要求に対応する個人信用情報を外部の情報処理装置に送信する。
与信サーバ100と、顧客端末200と、個人信用情報サーバ300とは、ネットワーク10を介してデータ通信が可能である。ネットワーク10には、インターネット等が使われる。
【0011】
[ハードウェア構成]
次に、図1を参照して、与信システム1を構成する情報処理装置のハードウェア構成について説明する。
まず、与信サーバ100のハードウェア構成について説明する。与信サーバ100は、ハードウェアとして、CPU101と、記憶装置102と、通信インタフェース103と、これらを接続するバス104とを備える。
CPU101は、与信サーバ100の全体を制御する。CPU101が記憶装置102等に記憶されているプログラムに基づき処理を実行することによって与信サーバ100のソフトウェア構成及び後述の図4図9に示す与信サーバ100の処理が実現される。
記憶装置102は、RAM、ROM、HDD等の記憶装置であって、プログラムを記憶したり、CPU101がプログラムに基づき処理を実行する際に利用するデータ等を記憶したりする。また、記憶装置102は、与信サーバ100が個人信用情報サーバ300から取得する個人信用情報を記憶する。
通信インタフェース103は、与信サーバ100と、顧客端末200及び個人信用情報サーバ300等の外部装置との通信の制御を司る。
【0012】
次に、顧客端末200のハードウェア構成について説明する。顧客端末200は、ハードウェアとして、CPU201と、記憶装置202と、通信インタフェース203と、入力装置204と、表示装置205と、これらを接続するバス206とを備える。
CPU201は、顧客端末200の全体を制御する。CPU201が記憶装置202等に記憶されているプログラムに基づき処理を実行することによって後述の図4に示す顧客端末200の処理が実現される。
【0013】
記憶装置202は、RAM、ROM、HDD等の記憶装置であって、プログラムを記憶したり、CPU201がプログラムに基づき処理を実行する際に利用するデータ等を記憶したりする。
通信インタフェース203は、顧客端末200と、与信サーバ100等の外部装置との通信の制御を司る。
入力装置204は、タッチパネル、マウス、又は、キーボード等であり、ユーザの指示を受け付ける。
表示装置205は、液晶モニタ等であって画像を表示できる。
【0014】
次に、個人信用情報サーバ300のハードウェア構成について説明する。個人信用情報サーバ300は、ハードウェアとして、CPU301と、記憶装置302と、通信インタフェース303と、これらを接続するバス304とを備える。
CPU301、記憶装置302、及び、通信インタフェース303は、与信サーバ100の同名称のものと同様であるため、説明を省略する。CPU301が記憶装置302等に記憶されているプログラムに基づき処理を実行することによって後述の図4に示す個人信用情報サーバ300の処理が実現される。
【0015】
[ソフトウェア構成]
次に、図2を参照して、与信サーバ100の機能を実現するソフトウェア構成について説明する。図2は、与信サーバ100のソフトウェア構成の一例を示す図である。与信サーバ100は、受信部110と、取得部111と、入力データ決定部112と、デフォルト確率決定部113と、第1審査部114と、第2審査部115とを備える。
【0016】
受信部110は、顧客端末200から、特定情報を受信する。特定情報は個人を特定できる情報であり、氏名、生年月日、及び、電話番号を含む。氏名には、カナで表されたカナ氏名が使われる。本実施形態では、特定情報は、更に、個人の所定の本人確認情報を含む。本人確認情報は、本人証明情報との照合に使われる情報であり、本実施形態では住所が使われる。本人証明情報は、本人確認情報を証明可能な情報であり、例えば、運転免許証やパスポートの画像データが使われる。なお、個人を特定する情報としては、与信システムにおいて採用される認証方法に応じて、例えば、信頼性の高い所定のSNSのアカウント情報や生体情報(指紋情報等)などを利用する構成であってもよい。
取得部111は、受信部110によって受信された特定情報に基づいて、個人信用情報サーバ300から個人信用情報を取得する。本実施形態の取得部111は、受信部110によって受信された氏名、生年月日、及び、電話番号を、個人信用情報を管理する個人信用情報サーバ300に送信し、個人信用情報サーバ300から個人信用情報を受信することで、個人信用情報を取得する。
入力データ決定部112は、取得部111によって取得された個人信用情報に基づいて、後述の個人信用情報明細モデルの入力データを決定する。
デフォルト確率決定部113は、入力データ決定部112によって決定された入力データ、及び、個人信用情報明細モデルに基づいて、デフォルト確率を決定する。
第1審査部114は、デフォルト確率決定部113によって決定されたデフォルト確率に基づいて、第1審査を行う。第1審査は、ローン等の諾否の仮審査である。
第2審査部115は、第1審査部114によって承諾されたとき、本人証明情報と、受信部110によって受信される本人確認情報とに基づいて、第2審査を行う。第2審査は、ローン等の諾否の本審査である。本実施形態の第2審査部115は、本人確認情報として住所を使う。
【0017】
[申込画面]
次に、図3を参照して申込画面400について説明する。図3は、申込画面400の一例を示す図である。申込画面400は、顧客端末200の表示装置205に表示される画面であり、顧客が与信システム1を使用してローン等の申し込みを行うために使われる。申込画面400での顧客の入力により、顧客端末200は、特定情報を受け付ける。
申込画面400は、カナ氏名を入力するためのカナ氏名入力部401と、生年月日を入力するための生年月日入力部402と、電話番号を入力するための電話番号入力部403と、住所を入力するための住所入力部404と、申し込みを実行するための申込ボタン405と、申し込みをキャンセルするためのキャンセルボタン406とを備える。
顧客端末200のCPU201は、記憶装置202に記憶されたアプリケーションを実行して申込画面400を表示してもよい。また、顧客端末200のCPU201は、WEBブラウザを実行し、与信サーバ100等から申込画面400のデータを取得して、WEBブラウザに申込画面400を表示してもよい。
【0018】
[処理シーケンス]
次に、図4を参照して、与信システム1の処理シーケンスについて説明する。図4は、与信システム1の処理シーケンスの一例を示す図である。
顧客端末200は、予め図3の申込画面400を表示しているものとする。
SQ100において、顧客端末200は、申込画面400に入力された特定情報を受け付ける。より具体的には、顧客端末200は、カナ氏名、生年月日、電話番号、及び、住所を受け付ける。
SQ101において、顧客端末200は、申込画面400の申込ボタン405が押下されると、SQ100で受け付けた特定情報を与信サーバ100に送信する。与信サーバ100は、特定情報を受信する。
SQ102において、与信サーバ100は、カナ氏名、生年月日、及び、電話番号を個人信用情報サーバ300に送信する。与信サーバ100は、カナ氏名、生年月日、及び、電話番号を受信する。
【0019】
SQ103において、個人信用情報サーバ300は、SQ102で受信したカナ氏名、生年月日、及び、電話番号に対応する個人信用情報を、与信サーバ100に送信する。与信サーバ100は、個人信用情報を受信する。
SQ104において、与信サーバ100は、仮審査を行う。本シーケンスでは、与信サーバ100は、仮審査の結果が仮承諾であったものとする。
SQ105において、与信サーバ100は、仮審査の結果(仮承諾)を、顧客端末200に送信する。顧客端末200は、仮審査の結果を受信する。
SQ106において、顧客端末200は、仮審査の結果を表示する。また、顧客端末200は、本人証明情報を受け付ける。本人証明情報は、本人確認情報を証明できる情報であり、本人証明情報として、例えば、運転免許証の画像データやパスポートの画像データが使用できる。顧客端末200がカメラを備えるとき、顧客端末200は、顧客の操作によって顧客端末200のカメラで運転免許証等を撮影して、本人証明情報を取得することで、本人証明情報を受け付ける。顧客端末200は、他の装置から本人証明情報を受信する等、他の方法で本人証明情報を受け付けてもよい。
【0020】
SQ107において、顧客端末200は、SQ106で受け付けた本人証明情報を与信サーバ100に送信する。与信サーバ100は、本人証明情報を受信する。
SQ108において、与信サーバ100は、本審査を行う。本シーケンスでは、与信サーバ100は、本審査の結果が本承諾であったものとする。
SQ109において、与信サーバ100は、本審査の結果(本承諾)を、顧客端末200に送信する。顧客端末200は、本審査の結果を受信して表示する。
【0021】
[個人信用情報]
次に、図5を参照して、個人信用情報サーバ300で管理される個人信用情報について説明する。図5は、個人信用情報の例を示す図である。個人信用情報は、ローン等の契約内容や支払い状況等を表す情報である。
個人信用情報には、本人情報500、借入情報510、クレジット情報520、照会履歴530、及び、借入残高履歴540が含まれる。
本人情報500は、本人に関する情報であり、氏名、生年月日、性別、住所、電話番号、及び、勤務先等の情報が含まれる。本人情報500の氏名には、カナで表されたカナ氏名が含まれる。
【0022】
借入情報510は、貸金債権に関する情報であり、日本においては貸金業法に対応する情報である。借入情報510は、複数のレコードを含むことができる。借入情報510のそれぞれのレコードは、会社コード、残高、及び、入金状況等を含む。借入情報510の1件のレコードが、1つの債権を表す。
借入情報510の会社コードは、本人情報500で特定される個人の契約先の会社を識別できる記号である。会社コードの1文字目は会社の種別を表す。特に会社コードの1文字目が「S」のとき、この会社コードに対応する会社は貸金専業者であることを表す。
借入情報510の残高は、本人情報500で特定される個人が、借入情報510の会社コードで識別される会社から借入れしている金額の残高である。
借入情報510の入金状況は、過去の所定回の入金状況を表す。入金状況の数値は延滞日数である。例えば、「前回」が「0」のとき、前回の入金では延滞が発生していないことを表す。また、「3回前」が「10」のとき、3回前の入金で10日の延滞が発生したことを表す。
【0023】
クレジット情報520は、クレジットに関する情報等の、貸金債権以外の債権情報であり、日本においては割賦販売法に対応する情報である。クレジット情報520は、複数のレコードを含むことができる。クレジットに関する情報にはクレジットカードを使ったショッピングの取引の情報が含まれる。クレジット情報520の1件のレコードが、顧客が契約しているクレジットカードの1枚を表す。クレジット情報520のそれぞれのレコードは、契約終了日、契約額、保証額、及び、残高等を含む。
クレジット情報520の契約終了日は、返済が終わった完済日、又は、契約の解約日である。
クレジット情報520の契約額は、個別契約の場合は契約の金額であり、包括契約の場合は限度額である。限度額は、キャッシングとショッピングの合算額である。
クレジット情報520の保証額は、契約時の保証金額である。
クレジット情報520の残高は、割賦残高とキャッシング残高との合計である。クレジット情報520の残高は、割賦残高であってもよい。
【0024】
照会履歴530は、個人信用情報へのアクセス(個人信用情報の照会)の履歴であり、複数のレコードを含むことができる。照会履歴530の1件のレコードが、個人信用情報への1回のアクセスを表す。照会履歴530は、照会日時、及び、取引形態等を含む。
クレジット情報520の照会日時は、個人信用情報へのアクセスが行われた日時である。
クレジット情報520の取引形態は、個人信用情報へのアクセスを行う会社と本人情報500で特定される個人との取引形態である。
【0025】
借入残高履歴540は、借入残高の履歴であり、借入残高履歴540には通常履歴550と最大借入残高履歴560とが含まれる。
通常履歴550は、直近月から直近月の10カ月前の月までの1カ月ごとの借入残高の履歴である。各月の履歴には、当該月の基準日における総量規制対象となる借入の件数及び借入残高と総量規制対象以外の借入の件数及び借入残高とが含まれる。借入の件数は、債権の件数を表す。基準日は、1日、又は、月の末日等である。直近月は、通常履歴550における最も新しい月である。
最大借入残高履歴560は、個人信用情報サーバ300が管理している範囲での借入残高が最大だった月の基準日における借入残高の履歴である。最大借入残高履歴560は、借入残高履歴540の各月のデータと同じ形式のデータであり、最大借入残高履歴560には借入残高が最大だった月が年月の形式で記録される。
【0026】
[個人信用情報明細モデル]
次に、個人信用情報明細モデルについて説明する。個人信用情報明細モデルは、本発明の予め定められたモデルの一例であり、個人信用情報に含まれる情報に基づくデータを入力データとし、デフォルト確率を出力データとするモデルである。個人信用情報明細モデルは、予め蓄積された複数の個人信用情報に対して統計処理等を施すことで得ることができる。本実施形態の個人信用情報明細モデルは、ロジスティック回帰分析を用いて構築されたものであり、次の式1、及び、式2で表される。
Z=α+β1×x1+β2×x2+…+β17×x17 ・・・ (式1)
PD=1/(1+exp(−Z)) ・・・ (式2)
式1のZはZスコアであり、αは切片、x1からx17までは説明変数、β1からβ17まではロジスティック回帰分析によって予め決定されているパラメータである。式2のPDはデフォルト確率であり、expはe(自然対数の底)を底とする指数関数を表す。
説明変数x1からx17までが個人信用情報明細モデルの入力データであり、デフォルト確率PDが個人信用情報明細モデルの出力データである。デフォルト確率PDは、説明変数x1からx17の基となる個人信用情報が表す顧客のデフォルト確率である。デフォルト確率とは、貸し倒れや延滞、あるいは債務者区分変更や条件変更など、当初契約していた条件での貸出先からの返済が滞る確率、すなわち、貸出先が将来的に債務不履行の状態に陥る確率である。
【0027】
切片α、及び、パラメータβ1からβ17までは、例えば、予め与信サーバ100が蓄積した個人信用情報である基礎情報を用いて、与信サーバ100がロジスティック回帰分析を行うことで決定する。切片α、及び、パラメータβ1からβ17までは、与信サーバ100以外の情報処理装置が決定してもよい。
基礎情報は、金融機関等で与信された個人の個人信用情報であってもよい。
また、基礎情報は、金融機関等で与信された個人の個人信用情報に、金融機関等で与信されなかった個人の個人信用情報を含めてもよい。この場合、金融機関等で与信されなかった個人は、デフォルトが発生したものとして扱う。
【0028】
次に、入力データである説明変数について説明する。ここでは、後述の重要度が5%以上の説明変数について説明する。
説明変数x1は、顧客の年齢である。入力データ決定部112は、図5の本人情報500に含まれる生年月日から年齢を算出することで、年齢を決定する。なお、顧客とは、個人信用情報が表す個人のことである。
説明変数x2は、照会関連変数である。照会関連変数は、顧客の個人信用情報に対する照会に関する変数である。照会関連変数には、顧客の個人信用情報に対する照会の件数に関するものや日数に関するものが含まれる。なお、照会の日数は、同一日に2以上の照会があった場合でも「1」とカウントする。
【0029】
本実施形態では、照会関連変数として、顧客の個人信用情報に対する照会の件数のうち、一部の照会件数(以下、特定照会件数)が用いられる。本実施形態における特定照会件数は、顧客の個人信用情報に対する照会の件数のうち、住宅ローン照会の件数を除いた件数である。住宅ローン照会は、顧客との取引形態が住宅ローンである会社が、住宅ローンに関する調査のために行う照会である。特定照会件数は、図5の照会履歴530から決定できる。入力データ決定部112は、図5の照会履歴530に含まれるレコードのうち、取引形態が住宅ローンのレコードを除いたレコードの数を特定照会件数と決定する。
なお、照会関連変数としては、上述した例に限定されるものではなく、下表に示すような変数が想定される。また、件数や日数のカウントは過去の全ての履歴を対象としてもよいし、予め定められた特定の期間のみ(すなわち、所定の照会の件数や日数)を対象としてもよく、特に限定はされない。入力データ決定部112は、図5の照会履歴530に基づいて、照会関連変数を決定する。
【0030】
【表1】
【0031】
説明変数x3は、ショッピング関連変数である。ショッピング関連変数は、顧客のショッピングによるローンに関する変数である。本実施形態では、ショッピング関連変数として、ショッピング枠消化率が使われる。ショッピング関連変数のうち、ショッピング枠消化率は、クレジットカードのショッピング枠の消化率であり、図5のクレジット情報520から決定できる。ショッピング枠消化率は、次の式3で表される。
(ショッピング枠消化率)=(クレジットカードのショッピング枠の使用済み残高の合計)/(クレジットカードのショッピング枠の合計) ・・・ (式3)
【0032】
入力データ決定部112は、次の手順でショッピング枠消化率を決定する。
第1ステップにおいて、入力データ決定部112は、クレジット情報520が表すクレジットカードのうち、契約が終了していないクレジットカードを抽出する。契約が終了していないクレジットカードとは、契約終了日の記載がないクレジットカードである。
第2ステップにおいて、入力データ決定部112は、第1ステップで抽出されたクレジットカードのそれぞれについて、ショッピング枠を決定する。ショッピング枠は、クレジットカードのショッピングの限度額であり、契約額、及び、保証額のいずれか大きい方である。
第3ステップにおいて、入力データ決定部112は、第1ステップで抽出されたクレジットカードのショッピング枠の合計を算出して、式3の「クレジットカードのショッピング枠の合計」とする。
第4ステップにおいて、入力データ決定部112は、第1ステップ抽出されたクレジットカードの残高の合計を算出して、式3の「クレジットカードのショッピング枠の使用済み残高の合計」とする。ショッピング枠の使用済み残高は、クレジットカード利用によるショッピング支払債務の残高である。
第5ステップにおいて、入力データ決定部112は、第3、第4ステップで算出した「クレジットカードのショッピング枠の合計」及び「クレジットカードのショッピング枠の使用済み残高の合計」と式3とから、ショッピング枠消化率を算出することで、ショッピング枠消化率を決定する。
【0033】
なお、ショッピング関連変数としては、上述した例に限定されるものではなく、下表に示すような変数が想定される。
【0034】
【表2】
【0035】
上表において、ショッピング枠のあるクレジットカードとは、契約が終了していないクレジットカードのうち、ショッピング枠が0ではないクレジットカードである。ショッピング枠を利用しているクレジットカードとは、契約が終了していないクレジットカードのうち、クレジット情報520の残高が0ではないクレジットカードである。ショッピング関連変数の計算に使われるクレジットカードは顧客が契約しているクレジットカードである。また、上表においては、全てのクレジットカード等を対象として各変数の値を算出する例について挙げているが、所定のクレジットカード(例えば使用中のクレジットカードのみ)を対象として各変数の値を算出する構成であってもよく、特に限定されない。そして、上表に例示した変数は、個人信用情報のうち、各クレジットカードの契約状況、クレジットカードごとのショッピング枠、又は当該ショッピング枠の残高等に基づいて算出されるショッピングの利用の程度を評価可能な指標値といえる。
【0036】
説明変数x4は、借入履歴関連変数である。借入履歴関連変数は、借入の履歴に関する変数である。本実施形態の説明変数x4には、借入履歴関連変数である借入残高変化情報が使われる。借入残高変化情報は、所定時の借入残高と、所定時より前の借入残高との差に基づく情報であり、図5の借入残高履歴540から決定できる。本実施形態の借入残高変化情報は、例えば次の式4で定義される。
(借入残高変化情報)=((直近月の総量規制対象の借入残高)−(直近月の10カ月前の総量規制対象の借入残高))/10 ・・・ (式4)
直近月の総量規制対象の借入残高、及び、直近月の10カ月前の総量規制対象の借入残高は、通常履歴550に含まれる情報である。入力データ決定部112は、借入残高履歴540の通常履歴550、及び、式4に基づいて借入残高変化情報を算出することで、借入残高変化情報を決定する。なお、上記残高変化情報は一例であって、直近月の10ヶ月前の総量規制対象の借入残高を用いるものに限定されない。
【0037】
説明変数x5は、借入履歴関連変数である。本実施形態の説明変数x5には、借入履歴関連変数である最大残高経過情報が使われる。最大残高経過情報は、借入残高が最大のときからの経過時間に基づく情報であり、借入残高履歴540から決定できる。
ここで、図6を参照して、最大残高経過情報の決定に使われる変換テーブルについて説明する。図6は、変換テーブルの一例を示す図である。変換テーブルは、最大残高経過時間の範囲と、最大残高経過時間対数オッズとを対応付ける。変換テーブルは、与信サーバ100の記憶装置102に記憶される。最大残高経過時間は、図5の通常履歴550の直近月の1日から、最大借入残高履歴560に記録された月の1日までの日数であり、借入残高が最大のときからの経過時間を表す。最大残高経過時間対数オッズは、最大残高経過時間デフォルト確率の対数オッズである。最大残高経過時間デフォルト確率は、予め用意された複数の個人信用情報から決定される最大残高経過時間と、予め用意された複数の個人信用情報のそれぞれから判別できるデフォルト発生の有無とから、統計処理等によって決定されるデフォルト確率である。より具体的には、最大残高経過時間デフォルト確率は、予め用意された複数の個人信用情報のうち、予め用意された個人信用情報から決定される最大残高経過時間が最大残高経過時間の範囲に含まれる個人信用情報から、統計処理等によって決定されるデフォルト確率である。
【0038】
最大残高経過時間デフォルト確率は、例えば与信サーバ100が、予め蓄積された複数の個人信用情報に基づいて、予め次のように決定する。与信サーバ100は、予め蓄積された複数の個人信用情報を、最大残高経過時間の範囲ごとに複数のグループに分類し、最大残高経過時間の範囲のグループごとに、対応する個人信用情報の件数を取得し、最大残高経過時間の範囲のグループごとの総件数Aとする。また、与信サーバ100は、最大残高経過時間の範囲のグループのそれぞれに対応する個人信用情報のうち、デフォルトが発生したことを示す個人信用情報の件数を、最大残高経過時間の範囲のグループごとのデフォルト件数Bとする。そして、与信サーバ100は、最大残高経過時間の範囲のグループのそれぞれにおける「A/B」を、最大残高経過時間の範囲に対応する最大残高経過時間デフォルト確率と決定する。
【0039】
入力データ決定部112は、次のように最大残高経過情報を決定する。まず、入力データ決定部112は、通常履歴550、及び、最大借入残高履歴560に基づいて、最大残高経過時間を決定する。次に、入力データ決定部112は、決定した最大経過残高経過時間に対応する最大残高経過時間対数オッズを、変換テーブルから取得し、取得した最大残高経過時間対数オッズを最大残高経過情報と決定する。
このように、説明変数x5には、最大残高経過情報として最大残高経過時間対数オッズが使われる。
【0040】
なお、変換テーブルには、最大残高経過時間対数オッズの代わりに最大残高経過時間デフォルト確率を格納し、変換テーブルは、最大残高経過時間をグループ化し、それぞれの最大残高経過時間のグループと最大残高経過時間デフォルト確率とを対応づけてもよい。このとき、入力データ決定部112は、最大残高経過時間デフォルト確率を最大残高経過情報と決定し、説明変数x5には、最大残高経過情報として最大残高経過時間デフォルト確率が使われる。また、入力データ決定部112は、最大残高経過時間を最大残高経過情報と決定してもよい。このとき、説明変数x5には、最大残高経過時間が使われる。また、入力データ決定部112は、最大残高経過時間を月数で表した最大残高経過月数を最大残高経過情報と決定してもよい。
【0041】
なお、借入履歴関連変数としては、上述した例に限定されるものではなく、下表に示すような変数が想定される。そして、下表に例示した変数は、所定期間ごとの借入の件数又は当該借入の残高の少なくともいずれかに基づいて算出される借入状況を評価可能な指標値といえる。
【0042】
【表3】
【0043】
借入残高増加額は、上表の通り、個人信用情報の範囲内での総量規制対象の借入残高の増加額である。入力データ決定部112は、図5の通常履歴550を参照し、直近月の総量規制対象の借入残高から、最も古い月である直近月の10カ月前の総量規制対象の借入残高を減算して、借入残高増加額とする。図5の通常履歴550の例では、直近月の総量規制対象の借入残高は「100000」であり、近月の10カ月前の総量規制対象の借入残高は「0」である。したがって、入力データ決定部112は、借入残高増加額を「100000」(=100000−0)とする。
【0044】
借入件数増加件数は、上表の通り、直近での総量規制対象の債権数の増加数である。入力データ決定部112は、図5の通常履歴550を参照し、直近月の総量規制対象の債権数から直近月の1カ月前の総量規制対象の債権数を減算して借入件数増加件数とする。図5の通常履歴550の例では、直近月の総量規制対象の債権数は「1」である。また、直近月の1カ月前の総量規制対象の債権数は「1」である。よって、直近での総量規制対象の債権数の増加数は「0」(=1−1)である。したがって、入力データ決定部112は、借入件数増加件数を「0」とする。
【0045】
借入残高減少回数は、上表の通り、個人信用情報の範囲内での総量規制対象の借入残高が減少した回数である。入力データ決定部112は、図5の通常履歴550を参照し、総量規制対象の借入残高が前月より減っている月の数をカウントして、借入残高減少回数とする。図5の通常履歴550の例では、直近月、直近月の3カ月前、直近月の4カ月前、直近月の5カ月前、及び、直近月の6カ月前で、総量規制対象の借入残高が前月より減っている。したがって、入力データ決定部112は、借入残高減少回数を「5」とする。
【0046】
借入履歴の情報は、顧客のデフォルト確率と一定の相関関係があると考えられる。したがって、説明変数に借入履歴関連変数を使うことで、借入履歴に基づいてデフォルト確率を決定することが可能となり、デフォルト確率の精度を上げることができる。
【0047】
説明変数x6は、総残高である。総残高は、借入の残高の合計であり、借入情報510から決定できる。入力データ決定部112は、借入情報510に含まれるレコードの残高の合計を算出して、総残高と決定する。
説明変数x7は、専業契約件数である。専業契約件数は、顧客が行っている借入の契約のうち、顧客が貸金専業者と行っている契約の件数であり、借入情報510から決定できる。入力データ決定部112は、借入情報510に含まれるレコードのうち、会社コードが貸金専業者のレコードの数を専業契約件数と決定する。上記の通り、会社コードの1文字目が「S」のとき、この会社コードに対応する会社は貸金専業者である。
【0048】
次に、図7を参照して、説明変数の重要度について説明する。図7は、説明変数の重要度を説明する図の一例である。図7には、説明変数と、説明変数が表す内容と、標準化パラメータと、重要度とが示される。
標準化パラメータは、説明変数に対応する式1のパラメータを標準化した値であり、例えば標準偏回帰係数である。なお、説明変数xi(iは自然数)に対応するパラメータは、パラメータβiである。
説明変数xiの重要度は、次の式5で算出される値であり、大きいほど説明変数がデフォルト確率PDに寄与していることを表す。
(説明変数xiの重要度)=|パラメータβiを標準化した値|/(|パラメータβ1を標準化した値|+|パラメータβ2を標準化した値|+…+|パラメータβ17を標準化した値|) ・・・ (式5)
図7から分かるように説明変数x1からx7までが、重要度が5%以上の説明変数である。
【0049】
[モデルの比較]
次に、図8を参照して、個人信用情報明細モデルの精度と、その他のモデルの精度とを比較する。図8は、モデルごとのAR(accuracy ratio)の一例を示す図である。
ここで、図10図11を参照してARについて説明する。図10はCAP曲線を示す図である。CAP曲線は次の手順で描かれる。
(1)対象データをPDの大きい順(リスクが高いと予測される順番)に並び替える。
(2)並び替えた先が正常先であるか、DF先(デフォルト先)であるかを順に判別していく。
(3)「判別した件数÷全件数」の全体累積構成比を横軸にとる。
このとき、「判別した不良件数÷全不良件数」を縦軸としてプロットした曲線が不良累積構成比曲線(CAP曲線)となる。また、「判別した正常件数÷全正常件数」を縦軸としてプロットした曲線が正常累積構成比曲線となる。
仮に完全な精度を持つパーフェクトモデルでCAP曲線をプロットした場合、CAP曲線は、図10の破線で示すように「全不良件数÷全件数」横軸点で縦軸100%まで直線が引かれ、その後は上底に沿って真っ直ぐ右に引かれる。逆に無判別モデルの場合、CAP曲線は図10のプロットなしの実線で示すように対角線となる。CAP曲線がパーフェクトモデルのラインに近づくほどモデルの判別力が高い。
【0050】
図11は、ARの定義を説明するための図である。無判別モデルCAP曲線(対角線)と実際にモデルが描くCAP曲線とで囲まれる面積をA、パーフェクトモデルCAP曲線と実際にモデルが描くCAP曲線とで囲まれる面積をBとする。
このとき、A/A+Bとして定義される値がAR(accuracy ratio)である。モデルの精度が低ければCAP曲線は対角線に近づき、分子のAは0に近づく。逆に精度が高ければCAP曲線はパーフェクトモデルの物に近づき、分子のAと分母のA+Bが近づいていく。すなわち、ARの取り得る範囲は0≦AR≦1であり、1に近いほどモデルの精度は高いということになる。
【0051】
以下、個人信用情報明細モデルと比較するモデルについて説明する。ここでは、個人信用情報明細モデルと比較するモデルとして、属性モデル、及び、属性個人信用情報明細モデルを挙げる。
属性モデルが個人信用情報明細モデルと異なるのは、説明変数として属性データのみが使われる点である。属性データは、顧客がローン等の契約の申込書に記入したデータである。属性モデルでは、属性データとして、職種、従業員数、勤続年数、業種、住居形態、勤務形態、未既婚、就職時年齢、子供人数、同居家族数、年齢、性別、業種と規模、家族状況、年収、及び、借入に関する情報が使われる。
属性個人信用情報明細モデルが個人信用情報明細モデルと異なるのは、説明変数として、個人信用情報明細モデルの説明変数に加えて、属性データが使われる点である。属性個人信用情報明細モデルでは、属性データとして、住居形態、勤続年数、及び、年収に関する情報が使われる。
【0052】
図8には、モデルごとに、構築、及び、検証のARが示される。構築のARは、モデルの構築に用いた個人信用情報、及び、属性データを使ったときのARである。検証のARは、モデルの構築に用いなかった個人信用情報、及び、属性データを使った場合のARである。
図8から分かるように、個人信用情報明細モデルでは、構築のARと検証のARとは近似した値であるため、過学習は行われてない。また、個人信用情報明細モデルは、属性モデルと比べて精度が高い。また、個人信用情報明細モデルは、属性個人信用情報明細モデルと比べて実質的には同程度の精度を備えるといえる。すなわち、個人信用情報明細モデルによれば、様々な属性情報を用いなくとも、高精度な与信リスクの判断が可能となる。
【0053】
[与信処理]
次に、図9を参照して、与信処理について説明する。図9は、与信処理のフローチャートの一例を示す図である。与信処理は、図4に示す処理シーケンスにおいて、与信サーバ100が行う処理である。
S100において、受信部110は、顧客端末200から特定情報を受信する。受信部110は、特定情報として、カナ氏名、生年月日、電話番号、及び、住所を受信する。
S101において、取得部111は、S100で受信された特定情報を個人信用情報サーバ300に送信して、個人信用情報サーバ300に対して、S100で受信された特定情報に対応する個人信用情報を要求する。取得部111は、特定情報として、カナ氏名、生年月日、及び、電話番号を送信する。
S102において、取得部111は、個人信用情報サーバ300から個人信用情報を受信して、S100で受信された特定情報に対応する個人信用情報を取得する。
【0054】
S103において、入力データ決定部112は、S102で受信された個人信用情報に基づいて、個人信用情報明細モデルの入力データである説明変数x1からx17までを決定する。なお、説明変数x1からx7までの決定方法は既に説明した通りである。
S104において、デフォルト確率決定部113は、S103で決定された説明変数x1からx17まで、及び、個人信用情報明細モデルに基づいて、デフォルト確率を決定する。より具体的には、デフォルト確率決定部113は、S103で決定された説明変数x1からx17までを式1に代入してZスコアを算出し、算出したZスコアを式2に代入してデフォルト確率PDを算出することで、デフォルト確率PDを決定する。
【0055】
S105において、第1審査部114は、S104で決定されたデフォルト確率に基づいてローン等の契約の諾否の仮審査を行う。より具体的には、第1審査部114は、予め定められたローン等の契約の金利から、S104で決定されたデフォルト確率、及び、予め定められた経費等を表す金利を減算した値が、予め定められた値以上のとき、仮承諾するものと判定し、予め定められた値未満のとき、仮承諾せず拒否するものと判定する。
S106において、第1審査部114は、S105で仮承諾したか否かを判定する。第1審査部114は、S105で仮承諾したとき処理をS107に進め、仮承諾していないとき処理をS108に進める。
【0056】
S107において、第1審査部114は、顧客端末200に、仮審査の結果として仮承諾である旨を送信する。
S108において、第1審査部114は、顧客端末200に、仮審査の結果として拒否である旨を送信する。
S109において、第2審査部115は、顧客端末200から、本人証明情報を受信する。
【0057】
S110において、第2審査部115は、S109で受信された本人証明情報と、S100で受信された本人確認情報である住所とに基づいて、ローン等の諾否の本審査を行う。より具体的には、第2審査部115は、S109で受信された本人証明情報から、本人確認情報である住所を抽出する。第2審査部115は、本人証明情報から抽出した住所と、S100で受信された住所とが一致するとき、本人確認が成功し、本承諾するものと判定する。第2審査部115は、本人証明情報から抽出した住所と、S100で受信された住所とが一致しないとき、本人確認に失敗し、本承諾せずに拒否するものと判定する。
S111において、第2審査部115は、S110で本承諾したか否かを判定する。第2審査部115は、S110で本承諾したとき処理をS112に進め、本承諾していないとき処理をS113に進める。
S112において、第2審査部115は、顧客端末200に、本審査の結果として本承諾である旨を送信する。
S113において、第2審査部115は、顧客端末200に、本審査の結果として拒否である旨を送信する。
【0058】
[効果]
以上説明したように、与信サーバ100は、顧客端末200から特定情報を受信し、受信した特定情報に基づいて個人信用情報を取得し、取得した個人信用情報に基づいてデフォルト確率を決定する。よって、所定の精度でデフォルト確率を決定できる。また、特定情報からデフォルト確率を決定でき、契約の諾否等の判断が可能になる。したがって、顧客は、ローン申込書等のように様々な情報を記入する必要がなくなる。また、顧客は、年収等のように記入に心理的な負荷のある項目を入力する必要がない。このため、デフォルトの発生を抑制しつつ、離脱率を低減させることができる。
また、与信サーバ100は、顧客端末200から、特定情報として、氏名、生年月日、及び、電話番号を受信する。与信サーバ100は、氏名、生年月日、及び、電話番号を個人信用情報サーバに送信して、個人信用情報サーバから個人信用情報を受信して、デフォルト確率を決定する。したがって、顧客は、少ない情報の入力のみでローン等を申し込むことができるため、離脱率を低減させることができる。
【0059】
また、与信サーバ100は、個人信用情報に基づいて、個人信用情報明細モデルの入力データを決定する。したがって、個人信用情報に含まれるデータをそのまま使う場合と比べて、デフォルト確率の精度の向上に寄与する入力データを使うことができるため、与信サーバ100が決定するデフォルト確率の精度を確保できる。
特に、与信サーバ100は、個人信用情報に基づいて、個人信用情報明細モデルの入力データとして、特定照会件数、ショッピング枠消化率、借入残高変化情報、最大残高経過情報、総残高、及び、専業契約件数を決定する。これらは、図7に示すように重要度が高いデータであり、与信サーバ100が決定するデフォルト確率の精度を確保できる。
【0060】
特定照会件数は、顧客の個人信用情報に対する照会の件数のうち、住宅ローン照会の件数を除いた件数である。よって、特定照会件数は、住宅ローンと比べてデフォルトの発生率が高いと考えられる取引形態に関する照会の件数を表す。したがって、特定照会件数は、デフォルト確率を高精度に決定することに寄与する。
ショッピング枠消化率は、クレジットカードのショッピング枠の消化率であり、デフォルト確率との相関が強いと考えられる。したがって、ショッピング枠消化率は、デフォルト確率を高精度に決定することに寄与する。
借入残高変化情報は、所定時の借入残高と、所定時より前の借入残高との差に基づく情報であり、借入残高の変化の傾向を表す。このような借入残高は、デフォルト確率との相関が強いと考えられる。したがって、借入残高変化情報は、デフォルト確率を高精度に決定することに寄与する。
【0061】
最大残高経過情報は、借入残高が最大のときからの経過時間に基づく情報であり、デフォルト確率との相関が強いと考えられる。したがって、最大残高経過情報は、デフォルト確率を高精度に決定することに寄与する。
総残高は、借入の残高の合計であり、借入の残高が多いほどデフォルト確率が高いと考えられる。すなわち、総残高は、デフォルト確率との相関が強いと考えられる。したがって、総残高は、デフォルト確率を高精度に決定することに寄与する。
専業契約件数は、顧客が行っている借入の契約のうち、顧客が貸金専業者と行っている契約の件数である。専業契約件数が多いほどデフォルト確率が高いと考えられる。すなわち、専業契約件数は、デフォルト確率との相関が強いと考えられる。したがって、専業契約件数は、デフォルト確率を高精度に決定することに寄与する。
【0062】
<その他の実施形態>
上記の実施形態の個人信用情報明細モデルは、入力データとなる説明変数はx1からx17までの17個ある。しかし、入力データは17個に限定されるものではない。例えば、入力データに、借入情報510から決定される借入総残高、及び、専業契約件数が含まれなくてもよい。この場合でも、離脱率を低減させることができ、与信サーバ100が決定するデフォルト確率の精度を確保できる。
なお、説明変数の組合せは任意であるが、上述した重要度の説明からもわかるとおり、照会関連変数を含めた場合、与信サーバ100が決定するデフォルトの予測精度が高くなる。また、照会関連変数に加え、ショッピング関連変数を含めた場合、与信サーバ100が決定するデフォルト確率の精度はさらに高くなる。
なお、さらに他の種類の説明変数を加えてもよく限定はされない。
【0063】
また、個人信用情報サーバ300が管理する個人信用情報は、図13に示す第2クレジット情報570を含んでいてもよい。第2クレジット情報570は、顧客が契約しているクレジットカードに関する情報である。クレジット情報520の1件のレコードが、顧客が契約しているクレジットカードの1枚を表す。第2クレジット情報520のそれぞれのレコードは、照会日、契約日、キャッシング枠、キャッシング枠の使用済み残高、残債額、及び、入金額等を含む。
【0064】
第2クレジット情報520の照会日は、与信サーバ100が個人信用情報サーバ300から個人信用情報を取得した日である。
第2クレジット情報520の契約日は、顧客がクレジットカードの契約をした日である。
第2クレジット情報520のキャッシング枠は、キャッシング利用可能金額である。
第2クレジット情報520のキャッシング枠の使用済み残高は、クレジットカード利用によるキャッシング支払債務の残高である。
第2クレジット情報520の残債額は、顧客がクレジット会社等に支払わなければならない総額である。
第2クレジット情報520の入金額は、顧客がクレジット会社等に入金した金額である。
【0065】
また、上記の実施形態では、説明変数x3に、ショッピング関連変数が使われた。しかし、説明変数には、ショッピング関連変数以外のクレジット関連変数を使ってもよい。クレジット関連変数は、顧客が契約しているクレジットカードに関する変数である。クレジット関連変数には、上記のショッピング関連変数が含まれる。また、クレジット関連変数として、下表に示す変数も想定される。
【0066】
【表4】
【0067】
クレジット利用期間は、上表の通り、クレジットカードごとに算出した利用期間の最大値である。利用期間は、例えば年単位で表す。入力データ決定部112は、図13の第2クレジット情報570を参照し、クレジットカードごとに、照会日と契約日とから利用期間を算出する。利用期間は、例えば「照会日の年−契約日の年」で算出する。次に、入力データ決定部112は、算出した利用期間の最大値をクレジット利用期間とする。図13の例では、第3カードの利用期間の8年が最大値である。したがって、入力データ決定部112は、クレジット利用期間を「8」とする。
【0068】
クレジット残支払い合計値は、上表の通り、クレジットカードごとに算出した「残債額/入金額」の合計値である。また、クレジット残支払い最大値は、上表の通り、クレジットカードごとに算出した「残債額/入金額」の最大値である。入力データ決定部112は、図13の第2クレジット情報570に基づいて、クレジット残支払い合計値、及び、クレジット残支払い最大値を決定できる。
【0069】
キャッシング関連変数は、上表の通り、顧客が契約しているクレジットカードのキャッシングに関する変数であり、より具体的として、下表の変数が挙げられる。なお、下表においては、全てのクレジットカード等を対象として各変数の値を算出する例について挙げているが、所定のクレジットカード(例えば使用中のクレジットカードのみ)を対象として各変数の値を算出する構成であってもよく、特に限定されない。そして、下表に例示した変数は、個人信用情報のうち、各クレジットカードの契約状況、クレジットカードごとのキャッシング枠、当該キャッシング枠の残高等に基づいて算出されるキャッシングの利用の程度を評価可能な指標値といえる。
【0070】
【表5】
【0071】
入力データ決定部112は、図13の第2クレジット情報570に基づいて、キャッシング関連変数を決定できる。なお、キャッシング枠を利用しているクレジットカードは、第2クレジット情報570のキャッシング枠の使用済み残高が0ではないクレジットカードである。キャッシング枠のあるクレジットカードは、第2クレジット情報570のキャッシング枠が0ではないクレジットカードである。
【0072】
顧客のクレジットカードのショッピングの情報やキャッシングの情報を含むクレジットカードの情報は、顧客のデフォルト確率と一定の相関関係があると考えられる。したがって、説明変数にクレジット関連変数を使うことで、顧客のクレジットカードの情報に基づいてデフォルト確率を決定することが可能となり、デフォルト確率の精度を上げることができる。
【0073】
また、説明変数に、延滞関連変数を使ってもよい。延滞関連変数は、入金の延滞に関する変数であり、より具体的として、下表の変数が挙げられる。そして、下表に例示した変数は、債権別の返済期限ごとの入金状況に基づいて算出される延滞状況を評価可能な指標値といえる。
【0074】
【表6】
【0075】
連続延滞回数は、上表の通り、過去の所定回(例えば6回、又は12回)の入金の範囲で発生した連続延滞の回数の最大値である。入力データ決定部112は、図5の借入情報510の入金状況を参照して、入金の遅延が連続して発生した回数を取得する。次に、入力データ決定部112は、取得した回数の最大値を、連続延滞回数とする。
図5の借入情報510では、過去6回の入金の範囲では、第1債権、及び、第3債権について、前回、2回前、及び、3回前に、3回連続して延滞が発生している。また、過去6回の入金の範囲では、4回前以前に延滞は発生していない。したがって、入力データ決定部112は、過去6回の入金の範囲では、連続延滞回数を3とする。
また、過去12回の入金の範囲では、さらに、第1債権、第2債権、及び、第3債権について、7回前から11回前まで5回連続して延滞が発生している。したがって、入力データ決定部112は、過去12回の入金の範囲では、連続延滞回数を5とする。
【0076】
回別最大延滞日数は、上表の通り、過去の所定回(例えば6回、又は12回)の入金の範囲で、債権別、かつ、回別に延滞日数を集計したときの最大値である。入力データ決定部112は、図5の借入情報510の入金状況を参照して、債権別、かつ、回別に延滞日数を集計したときの最大値を、回別最大延滞日数とする。
図5の借入情報510では、入金状況において、予め、債権別、かつ、回別に延滞日数が集計されている。図5の借入情報510では、過去6回の入金の範囲では、第3債権の前回の入金の延滞日数15が最大である。したがって、入力データ決定部112は、過去6回の入金の範囲では、回別最大延滞日数を15とする。
また、過去12回の入金の範囲では、第1債権の10回前の入金の延滞日数30が最大である。したがって、入力データ決定部112は、過去12回の入金の範囲では、回別最大延滞日数を30とする。
【0077】
回別延滞債権件数は、上表の通り、過去の所定回(例えば6回、又は、12回)の入金の範囲で延滞が発生した債権の件数である。入力データ決定部112は、図5の借入情報510の入金状況を参照して、過去の所定回の入金の範囲で延滞が発生した債権の件数を回別延滞債権件数とする。
図5の借入情報510では、過去6回の入金の範囲では、第1債権、及び、第3債権で入金の延滞が発生している。したがって、入力データ決定部112は、過去6回の入金の範囲では、回別延滞債権件数を2とする。
図5の借入情報510では、過去12回の入金の範囲では、第1債権、第2債権、及び、第3債権で入金の延滞が発生している。したがって、入力データ決定部112は、過去12回の入金の範囲では、回別延滞債権件数を3とする。
【0078】
借入情報510の入金状況が、図5に示すような回別ではなく、月別で表されているとき、入力データ決定部112は、月別に表された借入情報510の入金状況を参照して、連続延滞月数、月別最大延滞日数、及び、月別延滞債権件数を、それぞれ、連続延滞回数、回別最大延滞日数、及び、回別延滞債権件数と同様に決定できる。
【0079】
顧客の過去の入金の延滞の情報は、今後の入金の延滞を予測する上で重要な情報である。金融機関等で与信を行う審査官も入金の延滞の情報を重要視するのが一般的である。したがって、説明変数に延滞関連変数を使うことで、顧客の過去の入金の延滞の情報に基づいてデフォルト確率を決定することが可能となり、デフォルト確率の精度を上げることができる。
【0080】
上記の実施形態の個人信用情報明細モデルは、ロジスティック回帰分析を用いるものである。しかし、個人信用情報明細モデルは、決定木、サポートベクターマシン、集団学習、又は、ニューラルネットワーク等を使うものであってもよい。
【0081】
なお、ロジスティック回帰分析モデルでは、モデル全体として1つのデフォルト率を算出する数式で表わされるが、本発明を適用可能なモデルは、個人信用情報から決定される種々の変数とデフォルト確率との関係を一般化して表現したものであればよく、モデルは全体として一つの数式で表現されるものに限定されない。
図12は決定木により表現されるモデルのイメージを示す図である。図12に示すとおり、決定木は、各入力変数の値と入力変数間の関係に基づいてデフォルト確率PDを決定するものであり、全体として一つの数式により表わされるわけではない。すなわち、決定木によりデフォルト確率PDを決定する場合、変数ごとの分岐の条件や分岐の結果次に判断対象となる変数が予め定められており、このような条件分岐等の判断を行うためのプログラムやデータベース(あるいはデータファイル)などが用いられる。
【0082】
また、上記の実施形態では、与信サーバ100は、個人信用情報に基づいて、個人信用情報明細モデルの入力データの年齢を決定する。しかし、与信サーバ100は、顧客端末200から受信する生年月日に基づいて、個人信用情報明細モデルの入力データの年齢を決定してもよい。
また、上記の実施形態では、与信サーバ100は、図9のS110で、本人証明情報から住所を抽出する。しかし、与信システム1のオペレータが本人証明情報を参照して、本人証明情報に記載された住所を与信サーバ100に入力してもよい。このとき、与信サーバ100は、図9のS110で、オペレータにより入力された住所を使って本審査を行う。
また、与信サーバ100は、本審査は行わず、仮審査までの処理を行うようにしてもよい。このとき、図3の申込画面400には住所入力部404は無くてもよく、与信サーバ100は顧客端末200から住所を受信しなくてもよい。
【0083】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 与信システム
100 与信サーバ
200 顧客端末
300 個人信用情報サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13