【実施例】
【0283】
実施例1
図1に示すように、水酸化リチウムは、例えば、かかる方法を使用することにより、予備浸出させたリチウム含有材料を出発物質として使用することにより得られ得る。例えば、酸焙焼β−スポジュメンなどの種々の鉱石浸出物が使用され得る。
図1に示す方法は炭酸リチウムを生成させるためにも使用され得る。別の実施形態によれば、出発物質はリチウム化合物、例えば、硫酸リチウム、塩化リチウムまたはフッ化リチウムであり得る。かかる場合、該方法は、より短いものとなり得、タイトルが「膜電解」のボックスから開始され得る。
酸焙焼β−スポジュメン(ARβ−スポジュメン)
【0284】
ARβ−スポジュメンの2種類の異なるブレンドを試験した。サンプルは、浮揚精鉱と重液選別(DMS)精鉱の比が異なるもので構成した。サンプルは75/25および50/50として識別した。前者のサンプルは約75重量%の浮揚精鉱と約25重量%のDMS精鉱を含有するものにした。後者のサンプルは、2種類の精鉱を質量基準で実質的に等しく含有するものにした。供給原料サンプルのアッセイデータを表1にまとめる。この2つのサンプルは非常に類似した分析プロフィールを有していた。75/25サンプルは50/50サンプルよりも高レベルのFe、Mn、Mg、CaおよびKを有していた。どちらのサンプルもARβ−スポジュメンの典型的な組成を有するものであった。
表1.ARβ−スポジュメンサンプルのアッセイデータ
【表1】
精鉱浸出(CL)および一次不純物除去(PIR)
【0285】
精鉱浸出(CL)および一次不純物除去(PIR)の目的は1)ARβ−スポジュメン中に含まれた硫酸リチウムを溶解させること、および2)供給原料固形分からリチウムとともに共浸出される主要不純物をプロセス溶液から除去することであった。
【0286】
4槽カスケードを一体型CL/PIRプロセス回路に使用した(
図2参照)。ARβ−スポジュメンを、振動フィーダに備え付けた供給原料ホッパーを用いて添加した。各反応器には、以下のもの:オーバーヘッドミキサーモータ(0.5hp)(4−ブレードピッチインペラーが取り付けられている)、pHおよびORP(酸化還元電位)用プローブを備え付けた。PIR反応器にはまた、インペラーの真下にエアスパージャーも配置した。プロセススラリーを1つの反応器から次の反応器にオーバーフローポートを介して重力により流動させた。CL反応器のオーバーフローポートは槽の有効容積が約32Lとなるように設定した。PIR反応器は各々、約14Lの有効容積を有していた。PIR Tank 3(槽列の最後の反応器)からのオーバーフローを濾過ステーションにポンプ輸送した。
【0287】
約1,200kgの75/25および約1,400kgの50/50のARβ−スポジュメンサンプルを約85時間の操作で浸出させた。一方の供給原料から他方の供給原料への切換えは操作の37時間目に行なった。ポンプがCL反応器からオーバーフローし始めたときを操作の時間点ゼロとした。
【0288】
CL工程では、水と固形分を撹拌槽内で50:50の重量比で合わせ、周囲条件下で約30〜約45分間混合した。リチウムが、所望でない脈石金属、例えば、鉄、アルミニウム、ケイ素、マンガンおよびマグネシウムなどとともに抽出された。したがって、得られたスラリー(CLスラリー)には、可溶化Li
+(リチウムイオン)が含有された固形分組成物および水性(液状)組成物ならびに上記の金属の可溶化イオンが含まれていた。CLスラリーのpHとORPをモニタリングしたが制御しなかった。あるいはまた、pHを、いくらかの塩基、いくらかの酸をさらに添加することにより、または希釈することにより最後に制御してもよい。また、ORPも、空気のスパージングで先に示したようにして制御してもよい。CLスラリーを重力によりPIR Tank 1に流動させた。択一的に、PIR Tank 1内に導入する前に、水性組成物を固形分組成物と分離してもよい。かかる場合、水性組成物(本実施例の場合のように完全CLスラリーではなく)がTank 1内に挿入され得る。
【0289】
9時間の操作後、CLに戻して再利用するのに充分な容量のWash 1画分(一体型CL/PIR固形分残渣を洗浄したときに得られた第1洗浄排液画分)が存在していた。Wash 1の初期再利用率を、CLに必要な水添加量の約50%に設定した。37時間の操作後、この量は、プロセスへの水添加量の60%を構成するまで増大した。この洗浄液流には平均で約12g/LのLi(約95g/LのLi
2SO
4)が含有されていた。
【0290】
一次不純物除去(PIR)は、例えば、リチウム(あれば)は実質的に沈殿させないで水性組成物からFe、AlおよびSiを実質的に除去するために行なった。このプロセスにおいて、精鉱浸出スラリー(水性組成物と固形分組成物を含む)のpHを、3つのPIR槽への石灰スラリーの添加によって約5.6まで上げた。石灰は、約20wt%の濃度を有するスラリーとして添加した。CLスラリーを、かくして沈殿物と水性組成物に変換させた。Fe、AlおよびSiなどの不純物は不溶性の金属水酸化物として少なくとも実質的に沈殿し、沈殿物中にみられたが、リチウムイオンは水性組成物中に実質的にみられた。PIR回路の保持時間は約45〜約60分間であった。プロセススラリーの酸化電位を約350mVまたはそれより上に維持するために空気をPIR槽内にスパージングした。このレベルで、第一鉄(Fe
2+)形態で存在する鉄が、かかるpHでの沈殿に適した形態である第二鉄(Fe
3+)に酸化され易くなり得る。かくして、例えばFe、AlおよびSiの金属水酸化物を含む沈殿物を得、最後に、リチウムイオンを含む水性組成物と分離した。PIRでは、pHが、このように、いくらかの塩基、いくらかの酸をさらに添加することにより、または希釈することにより制御され得る。ORPは、空気のスパージングで先に示したようにして制御され得る。
【0291】
得られたスラリー(水性組成物と固形分組成物(沈殿物を含む)を含む)をパンフィルターで濾過した。濾液(リチウムイオンを含んでおり、低減された含量の上記の金属(Fe、AlおよびSiなど)を有する水性組成物)を二次不純物除去(SIR)に進めた。PIR濾過ケークで3回分の洗浄排液を得た。最初の洗浄液画分は、2回目以降の2回分の洗浄液とは別に収集した。最初の洗浄液流は、含有されたリチウムを回収するための供給原料水流の一部としてCLプロセスに再利用した。Wash 2および3画分を合わせ、溶液として保存した。この溶液が、リチウム単位を回収するための石灰スラリー構成に使用され得る。
【0292】
CLおよびPIRでのリチウム含有量を
図3に示す。9時間目、PIRによる最初の洗浄液画分を再利用してCL槽に戻し、浸出のための水添加量の半分を構成した。結果としてリチウム含有量は、回路全体を通して約18g/L(約142.6g/LのLi
2SO
4)まで増加した。37.5時間目、再利用率は、浸出のための水の60%を構成するまで増大し、リチウム含有量は約25g/L(約198g/LのLi
2SO
4)まで増大した。PIRの最初の洗浄液のリチウム含有量は約12〜約15g/L(約95g/L〜約118.8g/LのLi
2SO
4)の範囲であった。
【0293】
いったん処理量が低下すると、pHは操作全体を通して実質的に安定していた。PIR槽3内のスラリーのORPは、操作中、実質的に安定であり、約350mVより上であった。CLおよびPIRの鉄含有量を
図4に示す。10時間目および54時間目、PIR3のpHは約5.6の値付近であったが、まだPIR3液中の鉄含有量は増大した。
【0294】
鉄およびアルミニウムのプロフィールを
図4および5に示す。鉄とアルミニウムはどちらも、実行全体を通してCL槽内において漸増レベルを示した。鉄レベルは、PIR3では実行の大部分で、CLで観察された増大に関係なく約5mg/Lより下に維持された。PIR3におけるアルミニウムは、最初の40時間で約10mg/L未満であり、次いで、残りの操作時間では約20〜約65mg/Lの範囲であった。
【0295】
CL回路およびPIR回路の物質収支を表2に示す。リチウム抽出率および不純物沈殿率は、固形分アッセイに基づいて計算している。この物質収支は、ARβ−スポジュメン供給原料中に存在するリチウム全体の約82%が二次不純物除去(SIR)に進められたことを示す。具体的には、約79%のリチウム抽出率が75/25ブレンドで得られ、50/50ブレンドでは約86%であった。浸出されなかったか、または沈殿したかのいずれかであるアルミニウム部分および鉄部分は、それぞれ合計で約96%および約99%であった。他の試験では、ARβ−スポジュメンから約95%の抽出収率が得られ得ることが示されている。
表2.CL回路およびPIR回路の物質収支
【表2】
二次不純物除去
【0296】
二次不純物除去(SIR)を、PIR濾液(リチウムイオンを含んでおり、低減された含量の上記の金属(Fe、AlおよびSiなど)を有する水性組成物)に対して行ない、Ca、MgおよびMn不純物を実質的に沈殿させて除去した。SIR回路への供給原料の添加は、操作6時間目(CL槽からのオーバーフローの6時間後)に開始した。4つの処理槽をカスケード状に配列する(
図2参照)。槽容積は、実行中、槽のオーバーフローポートを変えることにより約11.8〜約17.5Lに調整され得る。槽はすべて、バッフル付きであり、オーバーヘッドミキサーによって撹拌する。すべての槽においてpH、ORPおよび温度をモニタリングした。
【0297】
最初の2つの撹拌槽で、約2Mの水酸化ナトリウム(NaOH)(別の塩基)を用いてpHを約10まで上げた。このpH調整後、供給原料中の標的不純物レベルに対して過剰の炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)を第3槽に添加し、残留している二価の不純物を不溶性炭酸塩に変換した。第3槽からのスラリーを清澄器にポンプ輸送した。アンダーフロー固形分を濾過によって取り出して回収し、一方、オーバーフロー溶液は1000L容トート内に収集した。
【0298】
精鉱浸出段階から二次不純物除去の最後の槽までの溶液の平均不純物含有量を表3および
図6に示す。
表3.選択不純物のプロフィール
【表3】
【0299】
浸出段階で導入された不純物には、鉄、アルミニウム、クロム、亜鉛、マグネシウム、マンガンおよびカルシウムが含まれていた。実質的にすべてのクロムならびに約98%を超える鉄およびアルミニウムが最初のPIR槽(PIR1)内に実質的に沈殿した。PIRの次の2つの槽(PIR2およびPIR3)で起こった沈殿は最小限であった。SIRの最初の槽(SIR1)により、溶液中に実質的に残留している唯一の不純物はマグネシウムとカルシウムであった。他のすべての元素は約1mg/L未満であった。ほとんどの沈殿はSIR1内で起こったが、SIR2でのさらなる保持時間によりマグネシウム含有量が約40から約20mg/Lまで低下した。SIR2からSIR4までで、マグネシウム含有量およびカルシウム含有量は、さらなる保持時間とともに着実な低下を示した。SIR4の不純物レベルは、パイロットプラント実行中、平均すると約1mg/L Mn、約14mg/L Mgおよび約241mg/L Caであった。しかしながら、主要パラメータの最適化により、約200mg/L Caおよび約2mg/L Mgという低レベルが達成された。
【0300】
操作全体を通してpHとORPをモニタリングした。最初の2つの槽ではpHのみを制御した。最初に、SIR2に対して選択したpHは約10であった。操作の30時間目、SIR2におけるpHを約10.5まで上げた。SIR2におけるpHが約10に低下した50時間目における2時間を除き、残りの実行ではpHは約10.5のままであった。2つの期間で得られた平均pH値は約10.1および約10.5であり、得られた水酸化ナトリウム消費量は、それぞれ1時間あたり約0.022および約0.024kg水酸化ナトリウムであった。全水酸化ナトリウム消費量は、約1000kgの炭酸リチウム当量(LCE)あたり約10キログラムの水酸化ナトリウム溶液であった。
【0301】
SIR2溶液の不純物含有量を、
図7において時間に対してプロットする。これらの溶液は水酸化ナトリウムによって10より上にpH調整されているが、炭酸ナトリウムはまだ投与されていない。マグネシウム含有量は調整後の方が低いが、そのレベルは緩徐な下降傾向を示し、この傾向は設定ポイントの変更前に始まるようである。後にパイロットプラントにおいて、すべてのSIR槽で保持時間を長くしており、このこともまた沈殿成績の改善に寄与したかもしれないことに注意されたい。
【0302】
SIR4から排出された溶液中のカルシウム含有量およびマグネシウム含有量を
図8および9にプロットする。これらの図は、不純物含有量(MgとCaのみ)を、サンプルを採取した時点で使用された炭酸ナトリウムの投与量と関連付けている。さらに、データを各サンプルの時間点における全SIR回路の保持時間に対してプロットする。試験した範囲内では、炭酸ナトリウムが増加するにつれて、金属含有量が減少した。最低不純物含有量もまた、長い回路保持時間に対応していたことに注意されたい。炭酸ナトリウムの投与量を、炭酸ナトリウムの添加前に存在していたカルシウム不純物のモル過剰分として示す(SIR2によるアッセイを使用)。データにより、溶液中のCa含有量は約200mg/Lより下に低減され得ることが示された。
【0303】
SIR回路からの排出物を4時間毎に、最後の槽(SIR4)(
図2参照)から排出されたときにアッセイした。SIR4排出物を100L容清澄器内にポンプ輸送し、清澄器からのオーバーフローを0.5μmの渦巻形カートリッジフィルターに通して濾過し、次いで1000L容プラスチックトート内に収集した。これらのトートを、バルク供給原料のカルシウム含有量のイオン交換(IX)を確認するために再度アッセイした。トートをサンプル採取したとき、明褐色固形物が各トートの底に観察された。アッセイにより、回路の最後の槽(SIR4)から排出された溶液からトート内で未混合の状態で存在している溶液までで、カルシウム含有量の有意な低下が明らかになった。両方の流れの平均アッセイの比較を以下の表4に示す。
表4.SIR排出物に対するエージングの効果
【表4】
【0304】
SIR回路の物質収支を表5に示す。この物質収支は、全体的に約92%のマグネシウムおよびすべてのマンガンが固形分に報告されたことを示す。リチウムの固形分への分配は、全SIRリチウム回収率が約99.1%であることから約0.9%である。
表5.SIR回路の物質収支
【表5】
イオン交換
【0305】
SIR排出物をイオン交換(IX)回路内で処理し、リチウム生成物の生成前にCaおよびMgの含有量をさらに低減させる。IX回路は、二価および三価の金属イオンに選択的であるナトリウム形態で使用され得るカチオン樹脂であるPurolite(商標)S950が充填された3つのカラムを含む。Purolite(商標)S950は、アミノホスホン酸系樹脂担持マクロ多孔質架橋ポリマーを含むものである。これは、重金属カチオンの除去に使用され得る。高pHでは、これは第2族の金属カチオン(Mg、CaおよびBa)ならびにCd、NiおよびCoの除去に活性であり得る。高pHでは、二価の金属カチオンは一価の金属カチオン(例えば、Li、Na、K)よりも優先的に吸収される。二価の金属カチオン(Ca
2+およびMg
2+など)および/または三価の金属カチオンを実質的に選択的に除去するのに好適であり得る任意のイオン交換樹脂が本開示において択一的に使用され得る。あるいはまた、1種類より多くの型の樹脂を使用して種々の金属カチオンを選択的に除去してもよい。したがって、異なる金属カチオンに対して異なるイオン交換樹脂を使用してもよい。
【0306】
IX回路に使用した操作理念は進み−遅れ再生(Lead−Lag Regeneration)プロセス(
図2および10参照)であった。回路のIXカラムのうちの2つをCaとMgの除去に関与させ、一方、3番目のカラムでは樹脂再生サイクルを実施する。IX回路内の溶液フローおよび進み−遅れ再生操作の模式図を
図10に示す。CaおよびMgの負荷は進みおよび遅れと表示した2つのカラムで行なわれ、CaおよびMgの溶液中含有量がともに約10mg/Lより下になった排出液をもたらす。負荷されたカラムはストリッピング段階と再生段階を受けた後、次の負荷サイクルの遅れカラムとして再導入される。カラムは透明なPVC管で構築した。各カラムは約15cmの直径および約76cmの高さを有するものであった。各カラムのベッド体積は約10Lであった。
【0307】
IX操作のパラメータを表6にまとめる。これらのパラメータは、実験室の試験結果をもとにしており、進み−遅れカラム構成は、遅れ排出液中のCaおよびMgの含有量が各カチオンに対して確立された約10mg/Lである確立された上限を超える前に75ベッド体積(BV)の供給原料溶液を処理するように設計した。75BVの供給原料溶液を処理した後、進みカラムと遅れカラム内の樹脂の合計吸収能は、CaおよびMgの含有量が各々約10mg/Lより下である最終排出液をもたらすのには充分でないかもしれなかった。この時点で負荷サイクルは終了する。進みカラムは再生段階に進展する。遅れカラムは進みポジションを取る。再生されたカラムは遅れカラムとなる。
【0308】
再生段階は、カラム内のLi高含有溶液を流し出すための逆浸透(RO)水での進みカラムの洗浄を伴った。この溶液は遅れカラムに送られる。供給原料洗浄段階に続いて、約2MのHClを用いた酸ストリッピングを行なう。これにより、吸収されたCa、Mg、Liおよび他の金属カチオンが樹脂から除去される。樹脂はこのとき酸形態である。続いて、残留HCl(水性)をカラムからすすぎ洗浄するための酸洗浄段階が行なわれる。次いで、カラムに約2MのNaOHを通過させることにより樹脂をNa形態に変換する(再生段階)。最終工程は、逆浸透(RO)水を用いてカラムから過剰のNaOHを洗い流すことを伴う。樹脂はこのとき再生され、次の負荷サイクルの遅れポジションに進展する準備ができた状態である。酸ストリッピングサイクルからの排出液は別途収集した。酸洗浄、再生および再生液洗浄サイクルからの排出液はすべて、同じドラム内に捕集した。
【0309】
酸ストリッピング段階により、Li、CaおよびMgを含む溶液がもたらされる。データにより、Liがカラムから最初に溶出された後、CaおよびMgが溶出されることが示された。Li画分を別途に捕集することが可能であり得、その結果、塩化リチウム溶液が生成する。
表6.IXパイロット操作パラメータ
【表6】
【0310】
合計で約2154LのSIR排出物溶液をIX回路内で4サイクルで処理した。各サイクルでの供給原料溶液の平均Li、CaおよびMg含有量を表7にまとめる。
表7.IX−平均供給原料溶液中Li、CaおよびMg含有量
【表7】
【0311】
サイクルは最初に、負荷段階が75BVで操作されるように設計した。平均負荷流速は約832mL/分(約49.9L/時)であった。サイクル1は、75BVの供給原料溶液が進み−遅れカラムを通過した唯一のサイクルであった。
【0312】
進みカラムおよび遅れカラムからの排出液のCa含有量を累積ベッド処理体積に対してプロットしたサイクル1のCa負荷曲線を
図11に示す。また、このプロットには、供給原料溶液中の平均Ca含有量および本実施例の遅れ排出液中のCa含有量について選択した限界(約10mg/L)もプロットしている。進みカラムのCaの貫流点は7.5BVの時点に存在した。進み排出液のCa含有量は、75BV後で約82.3mg/Lであり、進みカラムがCaの負荷容量に達していないことを示した。遅れカラムのCaの貫流点は約35BVの時点に存在した。遅れ排出液中のCa含有量は60BV目と65BV目の間で約10mg/Lより上に増加した。遅れ排出液が約10mg/L Caより上ではあるが、サイクル1の負荷段階を75BV目の時点まで継続することを決定した。65から75BV目の時点までの排出液を200L容ドラムに転送し、サイクル1の主生成物溶液とは別に維持した。転送した溶液は、後で、得られた併合溶液中のCa含有量が約10mg/Lを超えていない可能性があると判定された場合に、サイクル1の主生成物と合わせた。
【0313】
サイクル1でのMgの同様の負荷プロフィールを
図12に示す。また、供給原料溶液中の平均Mg含有量および例えば、遅れ排出液中のMg含有量の上限(約10mg/L)もこのプロットに含めている。進みカラムのMgの貫流点は7.5BV目に存在した。75BV後、進み排出液のMg含有量は約9.5mg/Lであった。遅れカラムのMgの貫流点は52.5BV目に存在した。75BV後、遅れ排出液のMg含有量は、この実施例によれば、IX生成物溶液中Mgについて選択した限界レベルより充分下の約0.8mg/Lであった。
【0314】
サイクル2および3は、75BVの供給原料溶液がカラムを通過して処理され得る前に終了しなければならなかった。
図13に、各IXサイクルでの遅れ排出液のCa含有量を累積BVに対してプロットしている。サイクル2の場合、進みカラムおよび遅れカラムのCaの貫流点は、それぞれ<約7.5BVおよび約23BVに存在した。約68BV後、サイクル2を終了した。遅れ排出液中のCaは、約60BV後に約13mg/Lに達した。サイクル3の遅れカラムでのCaの貫流点は最初の5BV以内に存在した。サイクル3は約30BV後に終了した。30BV目の時点における遅れ排出液中のCaの含有量は約7.7mg/Lであった。
【0315】
サイクル3の供給原料溶液の残りをサイクル4で約36.4BVにわたって処理した。このサイクルでの進みカラムおよび遅れカラムでのCaの貫流点は、それぞれ<約7.5BVおよび約7.5BVに存在した。サイクル4の遅れ排出液のCa含有量データの外挿により、生成物溶液が、60BV後、>約10mg/LのCa含有量を有し得ることが示された。
【0316】
図14に、各IXサイクルでの遅れ排出液のMg含有量を累積BVに対してプロットしている。遅れ排出液中のMg含有量は約10mg/Lのレベルに近いレベルに決して近づかなかったことが明白である。
【0317】
図15に、各IXサイクルでの進み排出液の平均Li含有量を累積BVに対してプロットしている。また、このプロットには、供給原料溶液の平均Li含有量も含めている。データにより、実質的にLiは樹脂に負荷されていないことが示された。
【0318】
図16に、サイクル1および2の酸ストリッピング排出液中のLi、CaおよびMgの含有量を累積BVに対してプロットしている。データは、Liが最初に樹脂からストリッピングされ、例えば約0.5〜約1.5BVの範囲で上限含有量に達することを示す。樹脂からのCaおよびMgの溶出は1BVあたりで始まり、ともに、例えば約2BVで上限含有量に達する。3種類の金属は3BV後に樹脂から溶出する。サイクル3および4でのCaおよびMgのプロフィールは同様であった。
【0319】
生成LCEに対する試薬の消費をkg/約1000kgベースで報告する。イオン交換により生成した硫酸リチウム流には約39.1kgのLiが含有されていた(これは、SIRおよびIXを受けなかったPIR PLSサンプル中の100%のリチウム単位を含む)。下流プロセスでロスがないと仮定して生成され得る炭酸リチウムの相当質量は約187.7kgであり得る。
【0320】
IX回路では約2006Lの生成物溶液が生成した。IX生成物溶液のアッセイデータを表8にまとめる。Li含有量は約15.7〜約21.9g/Lの範囲であった。CaおよびMgの含有量の範囲はそれぞれ約2.4〜約5.7mg/Lおよび<約0.07〜約0.2mg/Lであった。注目すべき他の構成成分は、それぞれ平均約3.5g/Lおよび約0.1g/LのNaおよびKであった。また、アッセイした元素で、分析手法の検出限界未満のものも表8に記載している。
表8.IX生成物溶液アッセイ
【表8】
【0321】
IX回路の物質収支を表9に示す。Liについて充分なアカウンタビリティが得られた。約2.7%のLiがストリッピング/再生のプロセス溶液中で損なわれた。このプロセスで、供給原料溶液中に含有されていたCaの約97.6%およびMgの約99.0%が除去された。
【0322】
IX回路は、生成物溶液中のCaおよびMgの含有量を、各金属カチオンについて約10mg/Lより下まで低減させることにより、プロセスの目的を果たしていた。さらに、高品質の硫酸リチウム溶液が生成された。
表9.IXの物質収支
【表9】
【0323】
CL/PIR残渣の複合サンプルの半定量的x線回折(SQ−XRD)データの検討により、各サンプルにα−スポジュメンとβ−スポジュメンの両方が含まれていることが示された。2つの供給原料サンプル(75/25および50/50)の各々で生じたCL/PIR残渣のSQ−XRDデータを表10にまとめる。α−スポジュメンの存在は、第三者の供給元によって実施された相転移工程(α−スポジュメンの酸焙焼)が100%効率的でなかったことを示す。この形態で存在するLi(あれば)は、したがって、湿式製錬プロセスに化学的に利用され得ない。相転移工程(α−スポジュメンからβ−スポジュメンへの変換)の効率は100%ではなく、したがって、湿式製錬プロセスへの供給原料中の含有Liのパーセンテージはα−スポジュメンとしてのものであることに注意されたい。
表10.2つのCL/PIR残渣型のSQ−XRDデータ
【表10】
【0324】
CL/PIR残渣中にβ−スポジュメンとして存在するLi単位は決して該プロセスに利用可能ではなく、その結果、偽低Li回収率値がもたらされる。
【0325】
CL/PIR残渣中にβ−スポジュメンとして関連するLi単位を考慮しない調整Li回収率を計算した。この計算のデータを表11にまとめる。すべての排出プロセス流中の全Liは約63.2kgであった。これには、β−スポジュメンとして存在するCL/PIR残渣中の約11.7kgのLiが含まれていた。したがって、調整全排出Li値は約51.6kgになる。プロセス全体で回収可能な全Liは約46.9kgであった。そのため、調整全Li回収率は約95.8%と計算される。
表11.調整全Li回収率
【表11】
【0326】
高グレード硫酸リチウム溶液が、かくして生成された。
図1によれば、この溶液は、例えば、高品質水酸化リチウムおよび/または高品質炭酸リチウムの溶液の作製におけるリチウム源として使用され得る。また、この高グレード硫酸リチウム溶液は、他の高グレードリチウム生成物の生成における供給原料としても使用され得る。
実施例2
電気分解:Li
2SO
4のLiOHへの変換.
I.序論
【0327】
Nafion(商標)324陽イオン交換膜を使用した。この膜は、例えばヒドロキシド基の逆移動が低減される(高電流効率がもたらされる)ように設計されたスルホン酸交換基を有する強化過フッ素化二層膜である。これは、高当量ポリマー層を陰極に対向して配置することにより行なわれ得る。また、これは高温で使用され得る。例えばあまり高価でない一部の択一的な陽イオン交換膜、例えば、Nafion 902、Fumatech FKBおよびNeosepta CMBもまた、本開示の方法に好適であり得る。
【0328】
2つの異なる陰イオン交換膜を本明細書において試験した。Asahi(商標)AAV陰イオン交換膜は、例えば酸濃縮用途に使用される、弱塩基性のプロトン阻止膜である。この膜は約40℃で試験した。本明細書において試験した第2の陰イオン交換膜はFumatech FAB膜であった。この膜は、優れた機械的安定性を有する酸安定性プロトン阻止膜であり、高温に耐え得るものである。これは約60℃で試験した。高い操作温度では、例えば、電解法に進める前に必要とされるプロセス供給原料溶液の冷却が少なくてよいとともに、溶液および膜の導電率が上がることにより全体エネルギー消費が少なくなり得る。また、これにより、例えば、晶出ループ内の水酸化リチウム流に必要とされる加熱量および溶解工程に戻される供給原料に必要とされる加熱量が低減され得る。
II.実験
【0329】
本実験は、DSA−O
2陽極、ステンレス鋼陰極および1対の陰イオン/陽イオン交換膜を備え付けたElectrocell MPセルにおいて行なった。供給原料ループは、周囲を600ワットテープヒーターで覆われた約5リットル容断熱ガラス製レザーバからなるものであった。溶液を、Iwaki(商標)WMD−30LFX遠心循環ポンプで循環させた。溶液のpH、流速、温度、および供給口圧力(セルへの)をすべてモニタリングし、制御した。また、溶液の導電率もモニタリングした。必要な場合は酸(または塩基)を供給原料溶液にpH制御のために、蠕動ポンプおよびレザーバとしてメスシリンダーを用いて添加した。
【0330】
陽極液ループは、周囲を300ワット加熱テープで覆われた約2リットル容断熱ガラス製レザーバを備えたものであった。溶液を、上記のものと同様のポンプで循環させた。溶液の流速、温度および供給口圧力もモニタリングし、制御した。希釈用水(濃度調整のため)をレザーバに直接、流速調整可能な蠕動ポンプを用いて添加した。このレザーバでは、より大型のポリプロピレン製捕集レザーバ内へのオーバーフローを許容し、次いで、ここから溶液を蠕動ポンプによって循環させてガラス製レザーバに戻した。陰極液ループは陽極液ループと実質的に同様にした。
【0331】
電極反応は以下のとおりである:
陰極: H
2O+e
−→1/2H
2+OH
−
陽極: H
2O→1/2O
2+2H
++2e
−
【0332】
セル構成の略図を
図17に示す。
【0333】
電極で生成する水素および酸素の適正な通気を助長するため、電気分解セットアップ全体をヒュームフード内に入れた。
【0334】
サンプルを実験中に採取し、酸性度とアルカリ度について、単純な酸/塩基滴定を用いて分析した。また、選択サンプルを陰イオン(スルフェート)および陽イオン(リチウムとナトリウム)について、イオンクロマトグラフィーによって分析した。
III.結果および考察
Nafion 324/Asahi AAV膜を約40℃で用いた実験.
【0335】
2つの実験(856−04および856−11)をこの構成において実施した。表12に、この実験で使用したパラメータをまとめる。両実験では、一定の約6.8ボルトを印加した。この電圧は最初に、これらの膜の操作条件に関する先の経験に基づいて選択した。
表12:AAVでの結果のまとめ.
*IC分析の前に、添加されたNaをサンプルの中和に使用したKOHによって補正。
【表12】
【0336】
最初の実験(#856−04)では、酸濃度および塩基濃度は、ともにおよそ0.5N(約0.25M硫酸)で開始し、電気分解中、上昇した。酸強度は、約1Mに達した後、希釈用水の添加によってこの値で一定に保持したが、塩基濃度は上昇させ続けた。濃度および得られた電流効率のグラフを
図18に示す。
【0337】
最終塩基濃度は、約82%の全体電流効率で約3.13Mに達した。酸の全体電流効率は約62%であり、最終酸強度は約0.97Mであった。
【0338】
供給原料のpHは、最初、実験中、酸の添加によりおよそ4まで下がり、次いでこれが維持された。これにはpH制御下での水酸化リチウムの定量が必要とされ、また、これは、陽イオン交換膜が陰イオン交換膜よりも効率的に機能を果たしていたことを示す。このpHを維持するために必要とされる水酸化リチウムの量は投入量の約18%を占め、予測どおり、塩基の電流効率と酸の電流効率の差に近い。全体電流密度は、理論リチウム取り出しの約33%で約108mA/cm
2であった。
【0339】
水移動(これは、イオンとともに膜を越えて移動する水の量の尺度である)は、約7.4モル/モルLi+Na(Nafion 324膜を越えて塩基コンパートメント内)および約1.6モル/モルスルフェート(Asahi AAV膜を越えて酸コンパートメント内)と測定した。
【0340】
この膜構成での第2の実験(#856−11)では、酸強度は約0.5Mの低濃度で一定に維持され、塩基濃度は、最初は高値(約2.85M)が使用され、約3.63Mまで上昇した。また、使用される出発供給原料がより少なく、そのため、より高度な枯渇が起こり得た。このような条件下では、供給原料のpHを約4.0に維持するために必要とされる水酸化リチウムはより少なく(電流の約6%に相当)、両方の膜の効率は互いに近かったが、Nafion 324膜の効率はAAV膜よりも高い状態が維持されていたことを示す。濃度および得られた電流効率のグラフを
図19に示す。
【0341】
塩基の全体電流効率は約73%であり、酸の電流効率は約65%であった。効率の差は、この場合も、供給原料のpHを維持するために必要とされる水酸化リチウムの量(約6%)に充分に相当する。この実験での全体電流密度は、理論リチウム取り出しの約62%で約105mA/cm
2の先の実行と非常に類似していた。Nafion 324を越える水移動率は約7.0モル/モルLi+Naで同様であった。Asahi AAVを越える水移動は約−2.7モル/モルスルフェートと測定された(すなわち、水移動は、使用した低酸濃度のため、酸から供給原料にであった)。
Nafion324/Fumatech FAB膜を約60℃で用いた実験.
初期ベースライン試験
【0342】
合計で6つの実験(#856−22〜#856−63)をこの構成において実施した。表13に、プロセスの可変量を操作したときの種々の効果を調べるために使用した最初の3つの実験の結果をまとめる。
表13:FABでの結果のまとめ.
*IC分析の前に、添加されたNaをサンプルの中和に使用したKOHによって補正。
【表13】
【0343】
最初の実験(#856−22)では、酸強度は最初、約0.46Mであり、およそ1Mまで上昇させた後、希釈用水の添加によって一定に保持した。初期水酸化リチウム強度は約3.08Mであり、およそ3.5Mまで上昇した後、同様に希釈用水の添加によって一定に保持した。濃度および得られた電流効率のグラフを
図20に示す。
【0344】
供給原料のpHを事前に約4.0に調整し、次いでこれを保持した。これは、最初は酸の添加が必要とされた(FAB膜はNafion 324よりも効率的であった)が、後に、酸強度が約2倍に増大し、供給原料コンパートメント内へのプロトン逆移動が増大したため、水酸化リチウムの添加が必要とされた(Nafion 324がより効率的になった)。セルは、Asahi AAV膜での実験と同じ定電圧(セルにおいて約6.8V)下で実行した。酸の全体電流効率は約65%および塩基の電流効率は約70%と測定された。
【0345】
得られた平均電流密度は約102mA/cm
2であった。電流密度、pHおよび導電率のプロフィールのグラフを
図21に示す。
【0346】
約123mA/cm
2までの電流密度の突然の増大が実験の最初の部分中に観察された後、残りの実験の間にわたって緩徐な低下がみられた。理論によって制限されることを望まないが、この増大は、FAB膜の抵抗の低下が補助される期間中での硫酸強度の増大と関連していると考えられる。FAB膜の導電率は、そのpHに依存性であり得(例えば、FAB膜は、ほぼ中性の硫酸ナトリウム溶液中で約50Ωcm
2の抵抗を有し得るが、約0.5Mの硫酸溶液中では約16Ωcm
2まで低下し得(どちらも約25℃での測定値)、これは該膜によって分けられた2つの溶液の関数である、すなわち、供給原料のpHと酸の濃度の両方の関数である。実験中の中間点に存在する電流密度および導電率のピークは、2日間の実験の2日目の開始時に溶液温度が設定ポイント約60℃を超えたことによるものであり、その後、落ち着いた。
【0347】
この実行におけるリチウム取り出し量は約56%と低く、これは、最低限の容量の供給原料を処理するために必要とされた時間の長さのためであった。一晩連続して実行され得、より大容量が終了まで処理されることが可能となり得るように装置を改良した。次の実験はこの様式で実行し、例えば電流密度と効率を上げようと試みて他の変形を行なった。酸濃度および塩基濃度は、大部分の時間、高効率を伴う低濃度で実行することを目的として低濃度で開始され、次いで、水の添加を停止することにより、両濃度を所望の値まで上げた。行なったその他の変更は、FAB膜の抵抗を下げようと試みて低pH(pH約3またはそれより下)の供給原料で実行することであった。
【0348】
図22に示すように、有意に異なる低電流密度プロフィールが観察された。低い酸濃度および塩基濃度は、導電率が低くなり得、低電流密度に寄与し得るが、観察されたすべての低減の説明となるのに充分大きなものではない。理論によって制限されることを望まないが、後の実行後のセルの解体における観察結果は、主な寄与がNafion N324膜の表面の汚損であり得ることを示唆する。この汚損は、膜表面(供給原料側)におけるカーボネート形成と思われ、おそらく、システムが実行されていない時間中に形成されている。作業中に後で取り出した膜は少量の白色沈殿物を有しており、これは、酸で容易に除去された(ガスが形成された)。これが、高pHの供給原料で実行したときに形成されたのかどうか、またはセルを排液し、空気中の二酸化炭素が膜表面(高pHを有する)で反応したときに形成されたのかどうかは不明である。いずれの場合も、システムを低pHで実行した場合、低電流密度は問題であるようにはみえなかった。
【0349】
電流密度は、いったん供給原料のpHが約2に達すると、かなり改善された(pHメータの設定により、約2より下のpHは記録されなかった)。実験は、夜間、推定電荷量で止まるように設定した。しかしながら、プロセスの効率が推定していたよりもわずかに良好であったため、セルでの実行を継続し、供給原料はほぼ完全に枯渇した(約99.7%のLi取り出し)。ほぼ完全な枯渇が可能であったが、電流密度は急落した。また、完全な枯渇は、システム内の不純物(あれば)が無理に膜を通過して移動するため、膜に対して有害であり得る。また、リチウム/ナトリウム濃度がプロトン移動と同等になったため、実験終了時のpHも劇的に上昇した。この時点で、スルフェート濃度は約18mMであり、ほとんどがビスルフェートとして存在していた。
【0350】
最終の酸濃度および塩基濃度は、先の実行よりも低く、それぞれ約0.8Mおよび約2.6Mであった。低濃度により、酸生成では約77%および塩基生成では約73%の高い全体電流効率がもたらされた。実行過程で計算された濃度および電流効率を
図23に示す。
【0351】
水酸化リチウム生成の電流効率は、主にその濃度に依存性であり、また、供給原料溶液のpHにも依存性である。高濃度の水酸化リチウムでは、陽イオン膜を越えるヒドロキシル種の高度な逆移動がもたらされ、したがって低電流効率がもたらされる。同様に、供給原料溶液のpHが低いほど、より多くのプロトンが、陰極液コンパートメント内への移動に関してリチウムイオンとの競合に利用可能となり、同様に低電流効率がもたらされる。また、水酸化リチウム濃度は、供給原料を終了まで実行することによっても影響された。低電流の期間中、低濃度供給原料から塩基への大量の浸透水シフトとともに低電流効率が存在したであろう。この効果は、約8.3mol水/mol移動リチウム/ナトリウムと測定された比較的高い水移動に反映される。
【0352】
また、供給原料コンパートメントのpHも、生成する酸の濃度に非常に依存性である。酸生成物の濃度が高いほど、より多くのプロトンが陰イオン膜を越えて供給原料コンパートメント内に移動し、酸の電流効率の低下ならびに供給原料のpHの低下がもたらされる(これは、上記に論考した苛性ソーダ電流効率に影響を及ぼす)。
【0353】
新たな膜を有するセルを再構築し、高い開始酸濃度および塩基濃度を使用したこと以外、先の実験を繰り返して行なった。
図24は、酸濃度が実験全体を通して約0.9〜約1.0Mに維持されたことを示す。塩基は約2.4Mから開始し、実行全体を通してほぼ約3Mまで上昇させた。酸生成および塩基生成の電流効率は、それぞれ約77%および約75%であった。
【0354】
図25は、この実行での電流密度が、最初の実行(856−22)と比べると、なお比較的低いことを示す。電流密度は2回目の実行(856−34)とより類似していたが、この実行を856−34より早く終了したため(約99.7%ではなく約91%のリチウム取り出し)、平均電流密度はかなり高くなり、約83mA/cm
2であった。
【0355】
溶液の終了時pHは、プロトンの逆移動の量のため約1.8であった。このpHでは、スルフェートの約60%が溶液中でビスルフェートとして存在し、溶液中のプロトンは約0.015Mだけである。
低供給原料pHでのN324/FABでの実行(生成実行)
【0356】
最後の組の3つの実験は、晶出試験における使用のための生成物を作製するために使用した。試験の概要を表14に示す。大容量を使用し、システムを定酸濃度および低供給原料pHで実行することにより先の実行の電流密度を増大させる試みを行なった。低供給原料pHで実行することにより、高pH(>約3)の供給原料で実行した場合にみられたような実行間でなんら膜汚損の問題はなかった。しかしながら、酸の電流効率および塩基の電流効率はどちらも低下した。これらの実行におけるその他の違いは、さらなる電圧をセルに印加したことであった:約6.8Vではなく約7.8V。この変更は856−49中の早期に行ない、約55mA/cm
2から約95mA/cm
2への電流密度の増大がもたらされた。電力消費の詳細の測定には、より高値の電圧が使用される。
表14:FABでの生成実行の概要.
*IC分析の前に、添加されたNaをサンプルの中和に使用したKOHによって補正。
【表14】
【0357】
濃度と電流効率を示すグラフを
図26〜31に示す。システムを低pHで開始し、供給原料のpHを低下させることは、プロセスの電流効率に有害であった。供給原料のpHは、商業プラントの状況の方がこのような実験室の実験よりも良好に制御され得る。より長時間の実行では、実験の開始前に、硫酸を供給原料に添加してそのpHを約10から約3に下げた。これは、全容量の供給原料に対して行ない、次いで、供給原料のpHは、操作中、低下し続けた。しかしながら、プラントでは、実験が継続されるにつれて、より少量(smaller heal)の供給原料溶液が酸性化され得、pH約10の供給原料がより多く添加され得る。プロセスをバッチ様式ではなく連続的に実行した場合、同様の有益性が得られる。このような実験から、実験終了時の供給原料中の酸の過半量は酸での前処理によるものであったことが推定される。供給原料を連続的に添加することによりプロトン濃度は約0.15Mから約0.075Mまで低下され得、これにより、測定される電流効率が増大し得る。
【0358】
最後の3つの実行において、得られ得る電流密度を増大させるために少しの変更を行なったが、得られた結果は非常に一貫しており、再現可能であった。塩基の電流効率および水移動におけるわずかな変化は、供給原料のpHの変更によるものである。試験中、約25Lの水酸化リチウムと約45Lの硫酸が生成した。
III.結論
【0359】
水酸化リチウムは、硫酸リチウムプロセス流から約40℃または約60℃の温度で、Nafion 324陽イオン交換膜とAsahi AAVまたはFumatech FABのいずれかの陰イオン交換膜を用いた電気分解を使用して、高効率で成功裡に回収され得ることが示された。どちらの陰イオン膜も酸生成では効率的であったが、FAB膜は、同様の電流効率で、より高い酸濃度が許容された。また、FAB膜は高温(約60℃)での実行が可能であり、したがって、これにより、例えば、必要とされる冷却量が低減され得る。このような考察に基づき、N324とFABの組合せを使用する以下のプロセスを規定した。
N324/FAB膜を使用するプロセス
【0360】
行なった試験に基づくと、該プロセスは以下の特徴:
・ 硫酸は約0.75Mの濃度で生成
・ 水酸化リチウムは約3.2Mの濃度で生成
・ 平均電流密度は約100mA/cm
2
・ 電流効率は約75%
・ セル電圧は約6V(計算については以下を参照)
・ 供給原料から塩基への水移動は約8mol水/molカチオン
・ 供給原料から酸への水移動は<約1mol水/molカチオン
を有すると予測され得る。
【0361】
MPセルでのプロセスのセル電圧は約7.8Vであった。しかしながら、ラボ用セルは、電極と膜の間に非常に大きなフロー間隙(約10mm)を有しており、これは、より大型のプラントセルではかなり縮小され得る。間隙は典型的には約2mmまで縮小され得、これにより全セル電圧から約1.8Vが除かれる(それぞれ、酸、塩基および供給原料の導電率、約275mS/cm、約400mS/cmおよび約70mS/cmに基づいて)。この低減セル電圧および予測電流効率を使用すると、プロセスに必要とされ得る電力消費は約8.9kWh/kg LiOHであり得る(約3.2Mの溶液中)。約3メートルトン/時のLiOHを生産するプラントでは、プラントは約4500m
2のセル面積を含むものであり得、これは、中程度のサイズの塩素アルカリプラントに匹敵する大型の電気化学的プラントであり得る。高pHで実行する場合以外、膜または電極について安定性の問題はみられなかった。
概要
【0362】
本開示の試験において、水酸化リチウムが、硫酸リチウムプロセス流から約40℃または約60℃の温度で、Nafion 324陽イオン交換膜とAsahi AAVまたはFumatech FABのいずれかの陰イオン交換膜を用いた電気分解を使用して、高効率で成功裡に回収され得ることが示された。どちらの場合も、硫酸が共生成物として生成された。
【0363】
Nafion 324膜を、試験した両電気分解構成において使用した。陽イオン膜はリチウム生成に対して非常に良好な効率を有し、約70%を超える電流効率で約3.6Mまでのヒドロキシドを作製した。低濃度での高効率が可能であることが示されたが、陰イオン膜の非効率性によってこのニーズが制限される。理論によって制限されることを望まないが、低酸効率によって供給原料溶液のpHが有効に低下し、生成した一部の水酸化リチウムがpHを維持するのに使用されること、または陽イオン膜を越えるプロトンとリチウム/ナトリウムとの競合のいずれかがもたらされる。これにより、プロセスの効率が有効に2つの膜の最低効率に等しくなる。
【0364】
硫酸リチウム供給原料には大量数濃度のナトリウムイオンが含有されている。陽イオン膜は選択的ではなく、したがって、生成する塩基には、供給原料中にみられるものとほぼ同じ比のナトリウムイオンが含有されている。また、塩基には、約2mM(約200ppm)のスルフェートも含有されていた。
【0365】
Asahi AAV(約40℃で)とFumatech FAB膜(約60℃で)の両方の組み込みでも同様の電流密度の約100mA/cm
2を得ることが可能であった。しかしながら、AAV膜では、酸濃度が約0.5Mより上である場合、得られた電流効率は約65%未満であった。FAB酸効率の方が、より酸濃度に依存性であり、約0.9Mの酸濃度で約75%の電流効率が得られた。酸効率はこの値よりかなり上で低下した。
【0366】
FAB膜を使用した場合に得られた電流密度は、供給原料溶液のpHに非常に依存性であった(高pHでのその高抵抗のため)。AAV膜のものと同様の電流密度を得るためには、低供給原料pHを維持することが必要であった。これは、生成される酸の強度を増大させ、したがって陰イオン膜を越えて供給原料コンパートメント内へのプロトンの逆移動も増大させること、または低供給原料pHで実行することのいずれかによって行なった。どちらの条件でも、供給原料中のプロトン/Li比が増大し、したがって陰極液コンパートメント内へのプロトン競合も増大することにより、酸生成ならびに水酸化リチウムの生成について低電流効率がもたらされることがわかった。
【0367】
本開示の試験で行なった試験に基づくと、該プロセスは以下の特徴:
・ 硫酸は約0.75Mの濃度で生成
・ 水酸化リチウムは約3.2Mの濃度で生成
・ 平均電流密度は約100mA/cm
2
・ 電流効率は約75%
・ セル電圧は約6V(該プロセス用に設計されたセル内)
・ 供給原料から塩基への水移動は約8mol水/molカチオン
・ 供給原料から酸への水移動は<約1mol水/molカチオン
を有すると予測され得る。
【0368】
上記のプロセスは有望性を示すが、硫酸の代わりに硫酸アンモニウムが生成される択一的なプロセスもまた使用され得、該プロセスの詳細を少なくとも一部の有益性とともに以下に示す。
実施例3
LiOHのLi
2CO
3への変換
【0369】
炭酸リチウム生成のミニパイロットプラントは、2つの回路−水酸化リチウム炭素化回路(LC)と重炭酸リチウム分解回路(DC)を備えたものであった。プロセス溶液と接触する設備はすべて、ガラス、プラスチックまたはテフロン(登録商標)のいずれかで作製されたものにした。該流体の高い腐食性および品質に敏感な性質のため、該プロセスに金属は導入しなかった。
【0370】
実施例2で生成された水酸化リチウム溶液を炭酸リチウム生成のための供給原料として使用した。供給原料中の選択金属の含有量を表15に示す。Li含有量は、このように約14g/L〜約15.5g/Lの範囲であった(またはLiOHの含有量が約48.3g/L〜約53.5g/Lの範囲であった)。
表15
水酸化リチウム溶液の選択アッセイデータ
【表15】
【0371】
LC回路のスキームを
図323に示す。水酸化リチウム炭素化(LC)プロセスは、閉鎖型4L容Pyrex(登録商標)反応器内で実施した。反応器には、オーバーヘッドインペラー、スパージャー、レベル制御装置、pHプローブおよび熱電対を備え付けた。例えば、バープ型スパージャーがCO
2の添加に使用され得る。スパージャーはインペラーの下方に配置した。例えば、このスパージャーの下方設置により、ガスの充分な分散が確実となり得る。CO
2フローは、ソレノイドバルブを用いて反応スラリーのpHによって制御した。
【0372】
溶液およびスラリーの移送には蠕動ポンプを使用した。LCからのプロセススラリーはLC清澄器まで連続的にポンプ輸送され、清澄器で固形分が沈降し、溶液相は、連続的にオーバーフローさせてLC反応器内に戻され得る。清澄器の固形分は清澄器のアンダーフローからシフトベースで収集され、Whatman(登録商標)#3ろ紙に通して濾過された。濾過ケークは3連で、高温の大量の逆浸透水で洗浄され、次いで、約105〜約110℃に設定した炉内のPyrex(登録商標)トレイ上で乾燥された。回収された濾液はLC回路に戻された。
【0373】
LC反応器のレベルは、DC回路へのブリードポンプを制御するレベルセンサーによって約3Lの一定容量に維持された。LC回路のブリードラインにより、LC清澄器オーバーフローはDC反応器に進められた。DC回路のスキームを
図334に示す。DCプロセスは閉鎖型4L容Pyrex(登録商標)反応器内で実施した。反応器は電熱マントル内に入れ、オーバーヘッドインペラー、pHプローブおよび熱電対を備え付けた。DC反応器内の溶液は、重炭酸リチウムを分解するため、および溶液の残りの炭酸リチウムを推進させるために約95℃まで加熱された。得られたスラリーは、加熱した清澄器にポンプ輸送された。ブリード液は清澄器の上部から取り出され、DC濾液ドラム内に収集された。DC反応器内のスラリーレベルは、DCブリード管供給口を清澄器内に固定レベルで配置し、ブリードポンプをDC反応器への供給原料のものより大きな流速に設定することにより維持した。粘りが生じたポンプはシフトベースで回収した。濾過ケークは、LC反応器の固形分と同じ様式で処理された。得られた固形分により二次炭酸リチウム生成物が提示された。このDC固形分流を一次カーボネート流とは別に維持し、独立して特性評価した。
パイロットプラント操作
【0374】
炭酸リチウム生成パイロットプラントでは、1日24時間、各8時間の3回シフトで3日間連続して実行した。毎時間、示度を読み取り、LC反応器およびDC反応器内の温度およびpHならびに供給原料、CO
2および消費溶液の投入速度および排出速度をモニタリングした。LC回路のブリード液およびDC回路のブリード液のグラブサンプルを4時間毎に収集し、リチウム分析のための原子吸光分光分析(Li−AASと称する)に供した。これらのアッセイにより、プロセスの性能に関する速やかなフィードバックが示された。複合サンプルをLCブリード流およびDCブリード流から4時間毎に収集し、12時間目の複合サンプルに合わせた。複合サンプルをLi−AASに関して分析し、一連の他の元素は誘導結合プラズマ(ICPスキャン)を用いて分析した。供給原料のグラブサンプルは毎日採取し、Li−AASおよびICPスキャンアッセイに供した。
【0375】
パイロットプラントの操作中、LC反応器への供給原料フローを約30mL/分から約60mL/分に増加させ、LiOHの炭素化効率に対する保持時間の効果を観察した。パイロットプラントの操作条件を表16に示す。
表16:パイロットプラントの操作条件
【表16】
【0376】
3日間のパイロットプラントの動作中、約12.5kgの炭酸リチウムが生成し;約9.9kgの生成物がLC反応器から、および約2.6kgがDC反応器から収集された。パイロットプラント実行中に生成したLi
2CO
3固形分の質量を表17および18にまとめる。
表17 LC回路から収集された炭酸リチウム固形分
【表17】
表18 DC回路から収集された炭酸リチウム固形分
【表18】
【0377】
約14.7g/Lのリチウムを含有する約184リットルの水酸化リチウム溶液を処理し(または約50.8g/Lの水酸化リチウム)、約1.39g/Lのリチウムを含有する約161リットルの消費Li
2CO
3溶液が生成した(または約7.39g/Lの炭酸リチウム)。毎日使用した材料の質量および容量を表19にまとめる。
表19 パイロットプラント操作に使用した材料
【表19】
結果および考察
【0378】
試験の開始時、LC反応器に水酸化リチウム溶液を仕込み、撹拌した。二酸化炭素フローを開始し、1時間半以内に反応スラリーのpHが約12.6から設定ポイントの約pH11.0まで低下した。
【0379】
目標pHが近づいたら、連続様式のパイロットプラント操作を開始した。LC反応器への新鮮水酸化リチウム溶液の添加を開始し、反応スラリーのpHを、CO
2(ガス)の制御添加によって約pH11.0の値に維持した。
【0380】
約2.5時間の操作後、LC清澄器からのオーバーフローを開始し、LC回路のブリード液をDC反応器に進めた。LC反応器からのブリード溶液には約3.5〜約4g/LのLiが炭酸リチウムとして含有されているであろうことが予測された。LC回路のオーバーフロー中のLi含有量は4g/Lあたりで上下した。
図34に、含有量値を経過時間に対してプロットしている。
【0381】
LC回路からの複合溶液の分析検出限界を超える濃度を有する金属の分析データを表20にまとめる。LCブリード液中含有量と、LC供給原料溶液中のもの(表15)との比較により、NaとKの含有量のLCプロセスによる影響は最小限にすぎないことが示された。
表20:LC回路ブリード液の複合サンプル中の選択金属の含有量
【表20】
【0382】
DCブリード液中のリチウム含有量は、パイロットプラント中、約1240から約1490mg/Lであった。DCプロセスでは、炭酸リチウム溶液中のLi含有量の相当な枯渇が観察された(LCブリード中では約2800〜約4760mg/LのLiと比べて)。DC回路からのブリード液中の選択金属についてのアッセイ結果を表21にまとめる。LCプロセスと同様、DCプロセスにおいて観察されたNaとKの含有量の変化は最小限であった(表20および表21のLCブリード液とDCブリード液を比べて)。
表21:DC回路からのブリード液の複合サンプル中の選択金属の含有量
【表21】
【0383】
図35に、DC回路からのブリード中のリチウム含有量を操作時間に対してプロットしている。
【0384】
表22に、パイロットプラント操作の各12時間の期間でのLiOH供給原料溶液および二酸化炭素ガス使用量に関するデータをまとめる。また、バッチ期間または連続様式期間で使用された物質および供給原料の流速の漸増を伴った試験で使用された物質に関するデータも表22に含めている。二酸化炭素は、パイロットプラント全体で約90.2%の効率で利用された。LC反応器への供給原料の流速を約30から約60mL/分に上げることは、CO
2利用効率に対してほとんど影響はなかった。
表22:二酸化炭素の利用に関するデータ
【表22】
【0385】
パイロットプラント中に生成した炭酸リチウム固形分のアッセイデータを表23と24にまとめる。
【0386】
「LC固形分バッチ13R」(表23)を除くすべてのバッチの炭酸リチウムサンプルは、炭酸リチウムに必要とされる約99.9%純度の規格を満たしていた。バッチ「LC固形分バッチ12」および「LC固形分バッチ13R」のLi
2CO
3固形分は、該固形分のNaとKの含量を低減させようと試みてリパルプ(re−pulped)し、再洗浄した。乾燥生成物をアッセイに供した。リパルプした炭酸リチウムに含有されていたNaとKの量は有意に下がっていた。この洗浄試験から、NaとKは、さらに洗浄することによって炭酸リチウム固形分から除去することができるということになる。
表23 LC回路から収集されたLi
2CO
3固形分のアッセイ結果
【表23】
表24:DC回路から収集されたLi
2CO
3固形分のアッセイ結果
【表24】
表25:複合Li
2CO
3生成物のアッセイデータ
【表25】
【0387】
さらに、DC回路生成物は、LC回路の固形分よりも微細な粒径を有する:DC生成物中の粒子の約80%が約57μmより小さいものであるのに対して、LC生成物では約80%が約104μmより小さいものである。
【0388】
パイロットプラント全体の物質収支を表26にまとめる。表に示されたデータから、リチウムの約88%が炭酸リチウム固形分に変換されたことが明白である。ナトリウムおよびカリウムは、炭酸リチウムとともには沈殿しない。
表26 物質収支の概要:
【表26】
【0389】
このように、水酸化リチウム溶液に二酸化炭素ガスをスパージングすることが、水酸化リチウムを高純度で高品質の炭酸リチウムに変換するのに有効な方法であることが実証された。実際、プロセスの平均二酸化炭素利用効率は約90%であった。また、水酸化リチウムからの炭酸リチウム生成は連続様式で操作され得ることも実証された。i)水酸化リチウムの炭素化とii)重炭酸リチウムの分解および沈殿を含む炭酸リチウム生成プロセスは効率的であることが示された。(i)および(ii)では、ともに高グレードの炭酸リチウム生成物が生成された。パイロットプラントでは、>99.9%のLi
2CO
3グレードを有する約12.5kgの炭酸リチウム固形分が生成された。LiOHからLi
2CO
3で得られたLi変換は約88%であった。ナトリウムとカリウムはLi
2CO
3と共沈殿しなかった。
実施例4
酸を中和するためにアンモニアを使用する択一的方法.
【0390】
本出願人は、以前に
国際公開2014/138933号(引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)において、水酸化リチウムが、硫酸リチウムプロセス流から約40℃または約60℃の温度で、Nafion 324陽イオン交換膜とAsahi AAVまたはFumatech FABのいずれかの陰イオン交換膜を用いた電気分解を使用して、高効率で成功裡に回収され得ることを示した。どちらの場合も、硫酸が共生成物として生成された。硫酸ではなく硫酸アンモニウムが生成される択一的方法も有用であり得、本開示において、その実行可能性を実証する作業を詳述する。試験は、高抵抗性プロトン阻止Fumatech(商標)FAB膜をNeosepta(商標)AHA膜に置き換えたこと以外は
国際公開2014/138933号の場合と同様の電解セルを用いて行なった。AHA膜は、Astom(商標)(日本)で製造され、高温安定性(約80℃)を有し、スルフェート移動に対して良好な電気抵抗を有する陰イオン膜である。
【0391】
ヒドロキシド生成の電流効率(約3Mで約80%)は、供給原料をほぼ中性pHに維持した場合、先の試験で得られた最高値と適合した。非常に高効率での塩生成が最初は可能であった。しかしながら、バッチ処理が進むにつれて、ヒドロキシドの非効率性(約20%)により供給原料のpHの上昇が引き起こされ、供給原料中のヒドロキシドが、AHA膜を越えるスルフェート移動と競合した。
【0392】
本試験で行なった試験に基づくと、Nafion 324膜とAHA膜を約60℃で使用する連続プロセスは以下の特徴を有することが予測され得、以下の表27に、既知の硫酸法での結果と比較する。
表27.硫酸法と硫酸アンモニウム法の比較
【表27】
【0393】
先の試験(US61/788292)では、水酸化リチウムが、硫酸リチウムプロセス流から約40℃または約60℃の温度で、Nafion 324陽イオン交換膜とAsahi AAVまたはFumatech FABのいずれかの陰イオン交換膜を用いた電気分解を使用して、高効率で成功裡に回収され得ることが示されていた。どちらの場合も、硫酸が共生成物として生成された。硫酸の生成により、例えば、システムにおける陰イオン膜の選択、得られ得る酸濃度および操作温度が限定され得る。
【0394】
一部の特定の陰イオン交換膜、例えば、特にスルフェート移動に対して高い抵抗を有するプロトン阻止膜、例えば、Fumatech FAB膜または同様の膜では、例えば、水酸化リチウムの調製方法で得られる電流密度が限定され得る。しかしながら、このような膜は、約60℃の温度に限定され得る。
【0395】
図36に示すように、同様の電解セルで、高度に富化された硫酸アンモニウム(>約2M)を生成させることができ、例えば、ビスルフェートの緩衝能および溶液中へのアンモニアの溶解能のため、陽極液溶液を非酸性にすることが可能である。この様式では、例えばプロトン阻止陰イオン交換膜が必要とされ得ず、約80℃の温度で実行することが可能であり、かつ低抵抗を有するべきである択一的な膜、例えば、Neosepta AHA膜を使用することができる。
【0396】
かかる方法では、例えば高抵抗FAB膜が除かれ、おそらく、高電流密度(それにより膜面積が縮小される)、低電圧(それにより電力消費が低減される)またはこの2つの組合せのいずれかでの操作が可能となり得る。また、該方法では、例えば、別の市販物質を生成させることができる。硫酸アンモニウムは、肥料の一成分として販売することができ、硫酸よりも高い価値を有するはずである。また、該方法では、例えば、電気分解中に供給原料からより多くの水が除去され、それにより、より広範な供給原料変換でより効率的な操作が可能になることが予測される。また、該方法により、例えば、溶液の冷却があまり必要とされない高温でのプロセスの操作が可能になり得る。また、溶液および膜も、このような高温では抵抗性が低く、電力消費が低減される。
【0397】
先の方法で使用した陰イオン膜(Fumatech FAB)をNeosepata AHA(Astom Corp.)膜に置き換え、セルの「酸」コンパートメントのpHを制御するためにアンモニアを使用する、このシステムで行なった試験を以下にまとめる。
【0398】
実験は、先の試験(
国際公開2014/138933号)で使用したものと同様のものが備え付けられているが、陰イオン膜をNeosepta AHA(Astom Corp.)膜で置き換えたElectrocell MPセルで行なった。
【0399】
種々の電解液回路は、陽極液(酸/塩)回路にpH制御を加えたこと以外は先の試験(US61/788292)で使用したものと同様にした。pH制御装置によりソレノイドバルブを作動させ、このバルブにより、陽極液レザーバへのアンモニアガスの直接添加が可能であった。DSA−O
2コーティングは高pHでは除去される場合があり得るため、陽極液のpHが約5より上に上がらないように注意した。先に行なった分析に加え、アンモニウムイオンも、陽イオンイオンクロマトグラフィーによって分析した。実験設定の他のすべての態様は、既報のものと同じにした。
【0400】
本試験過程中、さまざまな持続期間の実験を行なった。これらの実験では、電流効率、電圧および水移動に対する温度、電流密度、供給原料の交換、酸/塩濃度、塩基濃度およびpH制御ストラテジーの効果を評価した。濃度範囲および電流効率を表28にまとめる。最初の2つの実験では、塩基と酸/塩の濃度をその開始値から上昇させた。2つ目の実験は2日間にわたって実行し、より多くのスルフェート除去量が得られた。この場合、セットアップの容量制限のため、約90%より多くの除去を得るためには供給原料に水を添加しなければならなかった。残りの実験では、ほぼ一定の塩濃度および塩基濃度を維持しようと試みて(連続生成のシミュレーション)、水は、酸コンパートメントと塩基コンパートメントのみに添加した。実験856−81〜856−86は、ほぼ一定の酸(約2.5〜3Mのスルフェート)および塩基(約2.8〜3.1Mのヒドロキシド)下で実行し、さまざまな温度および電流密度の効果を調べた。最後の2つの実験では、得られる供給原料のpHの問題を解決しようと試みて、酸コンパートメントの制御pHをさまざまに変えた。
表28:硫酸アンモニウム生成の結果のまとめ.スルフェート電流効率(CE)は各生成物流について報告.
【表28】
【0401】
典型的には、供給原料におけるスルフェート電流効率は酸におけるスルフェート電流効率と等しいはずである。表28に示すように、一部の実験では約8%までの不一致がみられる。理論によって制限されることを望まないが、この誤差の大部分は、おそらく、例えば、高濃度の溶液を取り扱った場合にセットアップ内に保持されることによる容量測定誤差によるものである。
【0402】
図37〜43は、表28にまとめた実験に関するプロットである:
図37A〜Dは実験856−71に関するものであり;
図38A〜Gは実験856−78に関するものであり;
図39A〜Gは実験856−81に関するものであり;
図40A〜Fは実験856−84に関するものであり、
図41A〜Gは実験856−86に関するものであり;
図42A〜Gは実験856−88に関するものであり;
図43は、実験856−90に関するものである。以下のセクションで、本試験およびプロセス態様の結果をさらに論考する。
水酸化リチウムの生成
【0403】
このプロセスでは、水酸化リチウムが約3Mのヒドロキシド濃度で生成した。効率は、試験全体を通してかなり一貫性があり、約150mA/cm
2で約80%よりわずかに下の数値が得られ、高電流密度では約80%を超えるまで上昇した。最後の実験では、水酸化リチウム濃度を約3.5Mまで上昇させると電流効率が約7%低下した。これらの実験では、先の試験とは異なり、供給原料のpHが常に約7より大きく、プロトン移動(あれば)が排除されたため、効率は主にヒドロキシドの逆移動である。しかしながら、アンモニウム移動に付随するいくらかの非効率性がみられ得る。
図39Dに示すように、水酸化物の組成は大部分が水酸化リチウム/水酸化ナトリウムであり、リチウムとナトリウムの比は供給原料中にみられるものと同様であった。
硫酸アンモニウムの生成
【0404】
図39Eに示すように、実験の大部分において、硫酸アンモニウム濃度は約2.5〜約3Mのスルフェートに維持され、これにより約90%の電流効率がもたらされた。効率の低下はアンモニウムの逆移動では説明され得なかった。硫酸アンモニウムを低濃度にした最初の実験では、供給原料中にアンモニウムはごくわずかしかみられず(<約20mM)、これは約1%未満の電荷量の説明となる。アンモニウム濃度を上げた場合、アンモニウム濃度は約100mMまで上がり、これは、なお約2%未満の電荷量である。さらなる分析により、残りの電荷量が、供給原料から酸へのヒドロキシド移動によるものであったことが示唆される。N324膜を越えるヒドロキシドの逆移動により供給原料のpHの増大が引き起こされた。実験856−78は除去パーセントがより大きくなるまで実行したため、実験は、より高いヒドロキシド濃度でより長時間実行され、それにより、AHA膜を越えるスルフェートの電流効率が低下した。この効果のさらなる詳細およびその結果を次のセクションで論考する。
硫酸リチウム供給原料の枯渇
【0405】
ほとんどの実験では(856−78以外)、供給原料に水を添加しなかった。セットアップの制限(および大型バッチに必要とされる時間)のため、ほとんどの実験は約80%変換後に終了した。
図39Gに示すように、硫酸リチウム濃度は、水移動の量のため、試験終了時において依然として高かった。水移動が起こらなかったら、この最終スルフェート濃度は約0.35Mになっていたであろう。
【0406】
図39Gはまた、通過電荷量の関数としての供給原料中のヒドロキシド濃度も示す。図示のように、実験終了時であっても、ヒドロキシドが塩基からN324膜を越えて逆移動するため、ヒドロキシド濃度が上がりつつある。実験終了時までには、ヒドロキシド濃度がスルフェート濃度と同様になり、これによってプロセスの効率が低下した。最終的に、供給原料から酸コンパートメントに移動するヒドロキシドの量は、塩基から移動する量と等しくなり、ヒドロキシド濃度は安定状態に達する。この濃度は約1Mのヒドロキシド濃度に近くなり得る。
低い酸pH(陽極液pH)での実験的試行
【0407】
例えば、本試験の一部の実験では、供給原料中のヒドロキシドの逆移動のため、供給原料のpHが上昇した。この問題を回避するために使用され得る制御方法の一例は、硫酸を供給原料に添加してそのpHを約7〜10に維持することである。ヒドロキシド生成効率が約80%であるため、約20%の電荷量に相当する酸が必要とされ得る。
【0408】
あるいはまた、いくらかのプロトンの逆移動が可能になるように酸/塩に対するpHの設定ポイントを修正することもできよう。この場合、供給原料のpHが特定の測定設定ポイント(例えば、約9.5、約9.7または約10)より上になったら、酸へのアンモニアの添加が停止される。酸側のpHが低下すると、供給原料のpHが必要とされる設定ポイントより下に下がるまでプロトンの逆移動が可能になる。次いで、アンモニアを酸に添加してpHを上げ、プロセスを繰り返す。上記の方法によりプロセスの自己補正が可能になり、外添の硫酸が全く必要でない。高塩濃度の溶液のpH測定は、ナトリウム(およびリチウム)イオンが例えばpH測定値を妨害することがあり得るため、不正確な場合がある得ることは認識されよう。典型的には、pH測定値は、実際のpHとは異なる;典型的にはアルカリ塩溶液では低く、酸では高いいくつかのpH単位であってもよい。例えば、制御アルゴリズムとしてpHを使用する場合は、この効果が較正および相殺されるように注意を払わなければならないことは認識されよう。本開示に示すグラフは、そのように測定したものである。
【0409】
最後の2つの実験では、この型の制御を使用した。856−88は、約3.5のpHで約2.5M硫酸アンモニウムを用いて開始し、さらなるアンモニアの添加なしで実行した。
図42Bに示すように、供給原料中のヒドロキシド濃度は、実行のほぼ半分過ぎまでは上がり続け、次いで、濃度はわずかに下がり始めた。これは、
図42Cに示すように、供給原料のpH測定値が約10および酸のpH測定値が約0.5で起こった。しかしながら、依然として、供給原料のpHの上昇が排除されるのに充分なプロトン移動はなかった。また、いくらかの変換が起こった時点は、供給原料中のすべてのスルフェートがビスルフェートに変換され、それによりいくらかの遊離酸が生成する時点に対応する。
図42Eに示すように、アンモニウム濃度は、約1.9molの電荷量(約2.5M(NH
4)HSO
4)のときにスルフェート濃度と等しくなった。
【0410】
最後の実験856−90は、新たな供給原料溶液を使用したこと以外、先の実験を継続した。
図43に示すように、供給原料のpHはわずかに上昇し、次いで安定した後、約7のpHまで低下したが、酸のpHは下がり続けた。記録された酸の−0.25のpHあたりで、供給原料のpHが急速に下がり始め、アンモニアの添加を再開した。酸のpHは、プロトンの逆移動が限界になり、供給原料のpHが上がり始める時点まで再び上昇した。アンモニアの添加再開する直前および再開を終了した後の酸のサンプルを採取した。添加前のサンプルは、約0.6Mのプロトンを有する約3.4Mのスルフェートと分析された(約3.1MのNH
4HSO
4+約0.3MのH
2SO
4を示す)。アンモニアの添加後、溶液は再度、約3.4Mのスルフェートになったが、約3.3Mビスルフェートおよび約0.1Mのスルフェートを含有しており、遊離のプロトンが中和されたことが示された。
【0411】
本試験により、このようにしてプロセスを実行することが可能であることが実証された。ヒドロキシド生成、供給原料のスルフェート除去および酸性スルフェート生成の電流効率(表28に示す)は、より密接に釣り合っていた。しかしながら、苛性ソーダ強度は、この実行ではわずかに高く、全体電流効率は約73%に近くなった。
【0412】
約ゼロのpH測定値で実行した塩中のアンモニウムの濃度は、約3.5のpHで実行した同じスルフェート濃度の溶液の濃度のほぼ半分であり(すなわち、(NH
4)
2SO
4ではなくNH
4HSO
4)、これによりアンモニウムの逆移動の量が低減され得、したがって塩基へのアンモニウム移動の量が低減され得る。
セル電圧および水移動
【0413】
硫酸システムと比べて硫酸アンモニウムシステムの利点は、プロセスから高抵抗性Fumatech FAB膜を除いたときに得られ得る潜在的に高い電流密度および低いセル電圧であった。
【0414】
表29は、約150mA/cm
2で約6Vおよび約200mA/cm
2で約6.5Vが必要とされる電流作業で得られたセル電圧範囲を示す。先の作業では、約7.8Vの一定のセル電圧を使用し、約100mA/cm
2の平均電流密度が得られた。したがって、低電圧で高電流密度が得られた。約2mmの溶液間隙を有するセルでの実行は約60℃で約4.6Vと低かった。供給原料が高導電率で実行され得るため、Prodcellから市販のセルへの変更は少ないことは認識されよう。セルを約80℃で実行することにより、約200mA/cm
2で実行した場合、セル電圧は約0.6V下がった。しかしながら、主な改善が溶液の導電率にあり、市販のセルが有する溶液間隙はより狭いため、この影響は市販のセルでは少ないかもしれない。
表29:セル電圧範囲および水移動の数値.
【表29】
【0415】
このシステムでの水移動はかなり高く、平均で約10molの水移動/mol電荷量(約22molの水/mol硫酸リチウム移動)であった。これは、一定の供給原料濃度を維持し、したがってシステムが完全連続プロセスで実行されることを可能にするために必要とされる水のほぼ半分である。供給原料流に対して逆浸透ユニットを組み込んで残りの水を除去し、それにより供給原料が充分に変換されるようにすることが可能であり得る。低酸pHで実行した実験では、随伴する水移動は少なかった。理論によって制限されることを望まないが、この効果は、おそらく、プロトンの逆移動に随伴するいくらかの水移動および酸への低浸透によるものである。スルフェート濃度は2つの溶液においてほぼ同じであったが、最後の2つの実験ではアンモニウムはずっと少なかった。
【0416】
水移動の数値は1モルの電荷量に対して示す。塩基中の陽イオン1モル数に対してでは、この数値を電流効率で除算する必要がある。酸中のスルフェート1モル数に対してでは、この数値は、2を乗算し、電流効率で除算する必要がある。
【0417】
本試験で行なった試験に基づくと、該方法は、例えば、低pH制御を使用した場合に硫酸アンモニウムを約3Mまたはそれより高い濃度で生成させ得る、水酸化リチウムを約3Mの濃度で生成させ得る、約150mA/cm
2の平均電流密度を有するものであり得る、ヒドロキシド生成について約80%の電流効率を有するものであり得る、カスタム設計セルでは約4.6Vのセル電圧を有するものであり得る、約8molの水/mol陽イオンの供給原料から塩基への水移動を有するものであり得る、および例えば酸に関して低pHを使用した場合は約12molまたはそれより少ない水/molスルフェートの供給原料から酸/塩への水移動を有するものであり得る。
【0418】
先の硫酸法と比べた場合、このような条件により、例えば、約3メートルトン/時のLiOHを生産するプラントに必要とされるセル面積が約35%より大きく低減され得る。また、例えば、約8.9kWh/kg LiOH〜約6.4kWh/kg LiOH(約3M溶液中)の商業的設計のセルの電力消費が低減され得る。また、例えば、供給原料のpH制御レジメン(regime)によっては約8〜10メートルトン/時の硫酸アンモニウム(乾燥重量ベース)が生成され得る。
【0419】
N324膜を越えるヒドロキシド逆移動により供給原料のpHが増大する。この移動はプロセス全体に影響する場合があり得、安定な操作をもたらすために異なる制御ストラテジーを使用してもよい。例えば、3つの異なる制御ストラテジーが使用され得る:
【0420】
例えば、硫酸が、供給原料のpHを中性あたりからわずかに塩基性のpH(約7〜9)に制御するために使用され得る。この方法には、例えばさらなる制御回路が必要とされ、例えば硫酸の購入が必要とされ得る。購入したさらなる硫酸を硫酸アンモニウムに変換する。水酸化リチウムの生成はなお約80%の電流効率であり得、硫酸アンモニウムは約90%〜100%であり得る。非効率性は、AHAを越えるアンモニウムの逆移動であり得る。この選択肢は、例えば、適当な硫酸供給元および生成する硫酸アンモニウムの販路が存在する場合に有用であり得る。
【0421】
例えば、対策を行なわなくてもよく、AHAを越えるヒドロキシドの非効率性がN324を越えるヒドロキシドのものと適合するまで供給原料のpHを上昇させてもよい。これにより、例えば、水酸化リチウム効率と硫酸アンモニウム効率の両方が同じになり得る。実施するのは最も簡単であり得るが、例えば、高pH溶液中および高温での陰イオン交換膜の安定性を考慮することが必要であり得る。例えば、塩基安定性の陰イオン交換膜が使用され得る。
【0422】
例えば、硫酸アンモニウムのpHの変動を、いくらかのプロトンの逆移動が許容されるようなものにしてもよい。供給原料のpHが上昇したら、酸/塩に添加するアンモニアの量を止めて、充分なプロトンがAHAを越えて移動し、供給原料のpHの低下がもたらされるまで陽極でプロトンを生成させ、次いで、再度アンモニアの添加を行なう。この方法の場合も、水酸化リチウムの生成と硫酸アンモニウムの生成が適合するが、AHAにおけるpHが低く維持され得る。また、これは、例えば、低アンモニウム濃度で酸/塩が実行されるという利点を有する。例えば、約3Mのスルフェート溶液は、約ゼロのpHでは約2.5Mの重硫酸アンモニウムを有する約0.5Mの硫酸を含むものであり得るが、約4のpHでは、ほとんど約6Mの硫酸アンモニウムを含むものであり得る。これにより、例えば、AHA膜でのアンモニウムの逆移動の量が低減され得る。次いで、例えば、酸/塩溶液をアンモニアで後中和し、必要とされる約3Mの(NH
4)
2SO
4溶液を作製してもよい。また、例えば、高スルフェート濃度も使用され得る。
実施例5
Li
2SO
4のLiOHへのさらなる関連変換
実施例
【0423】
本開示の方法の例示的な流れ図を
図44に示す。これに例示した方法10は水酸化リチウムを調製するためのものである。
図44を参照されたい。これに例示した方法では、リチウム化合物、例えば硫酸リチウムおよび/または重硫酸リチウムを含む水性組成物を、水酸化リチウムを調製するためのリチウム化合物、例えば硫酸リチウムおよび/または重硫酸リチウムの消費に好適な条件下で、第1のエレクトロメンブレンプロセス、例えば2コンパートメントモノポーラ膜電解プロセスなどの2コンパートメントメンブレンプロセスを含む第1のエレクトロメンブレンプロセスに供し、任意選択で、このとき、水酸化リチウムを調製するためのリチウム化合物、例えば硫酸リチウムおよび/または重硫酸リチウムの消費を所定の程度まで進行させる。
図44を参照されたい。2コンパートメントモノポーラ膜電解プロセスなどの2コンパートメントメンブレンプロセスは、陽イオン交換膜18などの膜によって陰極液コンパートメント16と隔てられた陽極液コンパートメント14を備えた第1の電気化学セル12内で行なわれ得る。
【0424】
用語「消費」は、リチウム化合物、例えば硫酸リチウムおよび/または重硫酸リチウムに関して本明細書で用いる場合、水性組成物中に存在しているリチウム化合物、例えば硫酸リチウムおよび/または重硫酸リチウムの量の低減をいうことは認識されよう。例えば、当業者であれば、
図44に示したものなどの2コンパートメントモノポーラ膜電解プロセス中、陽極20では水(H
2O)がプロトン(H
+)と酸素ガス(O
2)に変換され得、陰極22では水がヒドロキシドイオン(OH
−)と水素ガス(H
2)に変換され得、リチウム化合物、例えば硫酸リチウムおよび/または重硫酸リチウムを含む水性組成物中に最初に存在していたリチウムイオン(Li
+)が、電位差により陽極液コンパートメント14から陽イオン交換膜18などの膜を越えて陰極液コンパートメント16内に推進され得ることが容易に理解され得よう。第1のリチウム低減水性流24および第1の水酸化リチウム富化水性流26がそれにより得られ、これらは、
図44に示すように、それぞれ、第1の電気化学セル12の陽極液コンパートメント14および陰極液コンパートメント16から取り出され得る。Li
+イオンが電流のため膜18を通り抜けて移動し、それによりLi
2SO
4がLiOHに変換される。
【0425】
第1の酸素含有流27および第1の水素含有流28もまた得られ得、これらは、
図44に示すように、それぞれ第1の電気化学セル12の陽極液コンパートメント14および陰極液コンパートメント16から取り出され得る。あるいはまた、電気分解反応の生成物として生成した酸素および/または水素ガスを、例えば水溶液中に残留させ、それぞれ第1の電気化学セル12の陽極液コンパートメント14および陰極液コンパートメント16から、それぞれ第1のリチウム低減水性流24および第1の水酸化リチウム富化水性流26の一成分として取り出してもよい。
【0426】
図44に示すように、リチウム化合物、例えば硫酸リチウムおよび/または重硫酸リチウムを含む水性流29は、リチウム化合物、例えば硫酸リチウムおよび/または重硫酸リチウムを第1の電気化学セル12の陽極液コンパートメント14に導入するために使用され得る。
【0427】
図44に示すように、第1のリチウム低減水性流24は次いで、少なくともさらに一部の水酸化リチウムが調製されるのに好適な条件下で、第2のエレクトロメンブレンプロセス、例えば3コンパートメント膜電解プロセスなどの3コンパートメントメンブレンプロセスを含む第2のエレクトロメンブレンプロセスに供され得る。
図44に示すように、3コンパートメント膜電解プロセスなどの3コンパートメントメンブレンプロセスは、陰イオン交換膜36などの膜によって中央コンパートメント34と隔てられた陽極液コンパートメント32および陽イオン交換膜40などの膜によって中央コンパートメント34と隔てられた陰極液コンパートメント38を備えた第2の電気化学セル30内で行なわれ得る。
【0428】
例えば、当業者であれば、
図44に示したものなどの3コンパートメントモノポーラ膜電解プロセス中、陽極42では水(H
2O)がプロトン(H
+)と酸素ガス(O
2)に変換され得、陰極44では水がヒドロキシドイオン(OH
−)と水素ガス(H
2)に変換され得、第1のリチウム低減水性流24中に最初に存在していたリチウムイオン(Li
+)が、電位差により中央コンパートメント34から陽イオン交換膜40などの膜を越えて陰極液コンパートメント38内に推進され得、第1のリチウム低減水性流24中に最初に存在していた硫酸イオン(SO
42−)が、電位差により中央コンパートメント34から陰イオン交換膜36などの膜を越えて陽極液コンパートメント32内に推進され得ることが容易に理解され得よう。第2のリチウム低減水性流46および第2の水酸化リチウム富化水性流48がそれにより得られ、これらは、
図44に示すように、それぞれ第2の電気化学セル30の中央コンパートメント34および陰極液コンパートメント38から取り出してもよい。実際、第2のリチウム低減水性流46は陽極液コンパートメント14内に搬送され得るが、第2の水酸化リチウム富化水性流48は陰極液コンパートメント16内に搬送され得る。
【0429】
図44に示すように、3コンパートメントモノポーラ膜電解プロセス中、第1のリチウム低減水性流は第2の電気化学セル30の中央コンパートメント34内に導入され得、第2のリチウム低減水性流46は第2の電気化学セル30の中央コンパートメント34から取り出され得、第2の水酸化リチウム富化水性流48は第2の電気化学セル30の陰極液コンパートメント38から取り出され得る。
【0430】
本開示の方法において、3コンパートメントモノポーラ膜電解プロセスはさらに、陽極液コンパートメント32内で硫酸を生成させることを含むものであり得る。
図44に示すように、硫酸含有水性流である流れ50が、かくして第2の電気化学セル30の陽極液コンパートメント32から取り出され得る。
【0431】
あるいはまた、3コンパートメントモノポーラ膜電解プロセスはさらに、アンモニアを第2の電気化学セル30の陽極液コンパートメント32内に、例えば流れ52から導入し、第2の電気化学セル30の陽極液コンパートメント32内で硫酸アンモニウムを生成させることを含むものであり得る。
図44に示すように、硫酸アンモニウム含有水性流である流れ50が、かくして第2の電気化学セル30の陽極液コンパートメント32から取り出され得る。
【0432】
第2の酸素含有流54および第2の水素含有流56もまた得られ得、これらは、
図44に示すように、それぞれ第2の電気化学セル30の陽極液コンパートメント32および陰極液コンパートメント38から取り出され得る。あるいはまた、電気分解反応の生成物として生成した酸素および/または水素ガスを、例えば水溶液中に残留させ、それぞれ第2の電気化学セル30の陽極液コンパートメント32および陰極液コンパートメント38から、それぞれ流れ50および第2の水酸化リチウム富化水性流48の一成分として取り出してもよい。
【0433】
当業者には、例えば、他の試薬および/または溶媒を第1の電気化学セル12の陰極液コンパートメント16、第2の電気化学セル30の陰極液コンパートメント38および/または第2の電気化学セル30の陽極液コンパートメント62内に導入するために流れ58、流れ60および流れ62などの他の流れが使用され得ることが認識されよう。例えば、かかる流れは、例えばpHを維持するため、もしくは変化させるために酸(例えば、H
2SO
4)および/または塩基(例えば、LiOH)を添加するため、および/または例えば方法10の電気化学セル12、30のコンパートメント内の濃度を維持するため、もしくは変化させるために水を添加するために使用され得る。また、当業者には、かかる試薬および/または溶媒を、
図44に示す電気化学セル12、30の種々のコンパートメント内に、
図44に図示しているものまたは図示していないもののいずれかである他の流れの一成分として、電気化学セル12、30のコンパートメント内の反応体(例えば、Li
2SO4、LiHSO4、LiOH、NH
3、NH
4HSO
4、(NH
4)
2SO
4)のpHおよび/または濃度などのパラメータが維持されるように、または変化するように導入してもよいことも認識されよう。
【0434】
図44に示すように、本開示の方法はさらに、少なくとも一部の第2のリチウム低減水性流46を第1のエレクトロメンブレンプロセスに再利用することを含むものであり得る。例えば、
図44に示すように、第2のリチウム低減水性流46は、第1の電気化学セル12の陽極液コンパートメント14内に導入され得る。例えば、該少なくとも一部の第2のリチウム低減水性流46は、第2の電気化学セル30から第1の電気化学セル12に適当な導管を経由してポンプによって送られ得る。
【0435】
図44に示すように、本開示の方法はまた、さらに、少なくとも一部の第2の水酸化リチウム富化水性流48を第1のエレクトロメンブレンプロセスに再利用することを含むものであり得る。例えば、
図44に示すように、少なくとも一部の第2の水酸化リチウム富化水性流48は、第1の電気化学セル12の陰極液コンパートメント16内に流れ58の一成分として導入され得る。当業者には、該少なくとも一部の第2の水酸化リチウム富化水性流48を第1の電気化学セル12の陰極液コンパートメント16内に導入する択一的な様式が可能であることが認識されよう。例えば、該少なくとも一部の第2の水酸化リチウム富化水性流48を、別個の流れとして陰極液コンパートメント16内に導入してもよい。例えば、該少なくとも一部の第2の水酸化リチウム富化水性流48は、第2の電気化学セル30から第1の電気化学セル12に適当な導管を経由してポンプによって搬送され得る。
【0436】
例えば、セル12内のLi
2SO
4および/またはLiHSO
4の電気分解が、Li
2SO
4および/またはLiHSO
4の消費に関して所定の一定の程度に達した場合(例えば、電流効率の低下によって観察される)、あるいは陽極液コンパートメント14内の陽極液のpH(例えば、pHメータによって測定されるpH)が所定の値より下になった場合、陽極液コンパートメント14の内容物(流れ24)はセル30の中央コンパートメント34に搬送され得る。セル12内では、陽極液コンパートメント14におけるpHは下がる傾向を有し得、したがって反応の効率が下がるか、またはそれ以上効率的でなくなると、流れ24はコンパートメント34内に移送され、そこでは、pHは、電気分解の効率が下がるか、またはそれ以上効率的でなくなる一定点に達するまで上がる傾向を有し得ることが観察された。かかる場合、流れ46はコンパートメント14内に搬送され得、そこではpHは下がる。コンパートメント14と34間でのLi
2SO
4および/またはLiHSO
4の移送は、同じ搬送手段で行なっても異なる搬送手段で行なってもよい。かかる手段は、ポンプを結合した導管であり得る。当業者であれば、本開示の方法では、出発溶液(または供給原料溶液)(例えば、Li
2SO
4および/またはLiHSO
4の水溶液)のpHに応じて、出発溶液が、まず2コンパートメントモノポーラ膜電解プロセスセル内で(例えば、pHが中性または塩基性である場合)、次いで3コンパートメントモノポーラ膜電解プロセスで処理され得ることが理解され得よう。あるいはまた、出発溶液は、まず3コンパートメントモノポーラ膜電解プロセスセル内で(例えば、pHが中性または酸性である場合)、次いで2コンパートメントモノポーラ膜電解プロセスセル内で処理され得る。
【0437】
コンパートメント38内で一定のLiOH濃度に達したら、流れ48はコンパートメント16に搬送され得、そこでLiOHがさらに富化され得る。
【0438】
本開示の方法は、例えばバッチプロセスとして操作され得る。あるいはまた、本開示の方法を半連続プロセスまたは連続プロセスとして操作してもよい。
【0439】
当業者には、本開示の方法の1つまたはそれより多くのパラメータ、例えば限定されないが、pH、温度、電流密度、電圧、電流効率および濃度が、例えば、当該技術分野で知られた手段によってモニタリングされ得ることは認識されよう。本開示の方法における具体的なパラメータをモニタリングするための好適な手段の選択は、当業者によってなされ得よう。かかるパラメータもまた、当業者によって、例えば、自身の共通一般知識に鑑みて、および本開示を参照することにより維持および/または変更され得る。
【0440】
一部の特定の既知の方法では、例えば3コンパートメントセルの使用が組み込まれており、それは、
図45に示す2コンパートメント構成では、陽極反応により酸素とプロトンが生成し、これが陽極液溶液のpHの低下をもたらすためである。陽イオン膜を通過する電荷移動に関してプロトンがリチウムイオン移動と競合するため、2コンパートメントセルを使用する場合の陽イオンの充分な除去は非効率的となり得る。とはいえ、硫酸リチウムなどのリチウム化合物の重硫酸リチウムへの部分変換は2コンパートメント膜電解セルで可能であるのがよい。
【0441】
ビスルフェートは1.9のpKaを有し、したがって、スルフェートは硫酸リチウム水溶液のpHを、半分までのスルフェートのビスルフェートへの変換(すなわち、25%変換)時にプロトン濃度が約0.01Mとなるように緩衝する。この濃度の時点で、Nafion 324(N324)膜でのプロトンによる非効率性は無視してよいものになる。
【0442】
これまでの研究により、ビスルフェートに充分に変換(すなわち、50%変換)された溶液のpHは約0.9または0.1Mよりほんの少し上のプロトン濃度であることが示されている。この場合、プロトンはリチウムイオンよりも可動性であるため、N324膜を通過するプロトン移動はおそらく有意であり、これにより、例えば水酸化リチウム生成の電流効率が低下し得る。そのため、硫酸リチウムの完全な変換は可能ではなく、本開示にまとめた試験作業では、変換の関数としての効率を測定することに焦点を当てた。
【0443】
本開示の方法において、水溶液中の硫酸リチウムは、2コンパートメント膜電解プロセスを用いて部分変換された後(さらなるリチウムを水酸化リチウムに変換するため)、この溶液は次いで、3コンパートメント膜電解プロセスに送られ得る。本明細書では、供給原料溶液がより低いpHを有する場合のプロセスの操作を検討するため、2コンパートメント作業で生成する溶液を両方のプロセスによって処理する試験も報告する。
一般的な実験の詳細
【0444】
2コンパートメント実験は、DSA−O
2陽極、ステンレス鋼(SS316)陰極およびNafion 324膜を備え付けたICI FM−01ラボ用電解セル(64cm
2,ICI Chemicals,UK)において行なった。3コンパートメント作業は、先の試験で使用した3コンパートメント膜電解セルに同様に備え付けたElectrocell MPセル(100cm
2)において行ない、実験設定の他の態様は、他の出願(
国際公開2013/159194号および国際公開2014/138933号)に既報のものと同じにした。
実施例5A:2コンパートメント膜電解セル試行
【0445】
試験は、2コンパートメント構成を使用し、硫酸リチウムを含む水溶液を供給原料溶液として用いて行なった。この実行の主目的は、変換(ビスルフェート/スルフェート)の関数としての電流効率を評価することであったため、試験を、陰極液コンパートメント内で約2M LiOHを用いて行なった。これは、先の作業で得られた約3M濃度よりも低い。しかしながら、約3M濃度では、ヒドロキシド濃度における少しの変動が水酸化リチウムの電流効率をかなり低下させ得る。対照的に、約2Mの濃度付近でのヒドロキシド濃度における少しの変動は水酸化リチウム電流効率に大きく影響せず、したがって、効率の変化(あれば)は一般的に、供給原料からのプロトン移動に起因するものであり得る。
【0446】
種々の実行を2コンパートメントセルを用いて、さまざまな電流密度で行なった。
図46〜48は、表30にまとめた実験に関するプロットである:
図46A〜46Dは実験番号856−96に関するものであり;
図47A〜47Dは実験番号856−99に関するものであり;
図48A〜48Dは実験番号879−1に関するものである。2コンパートメントセルを使用した実験の結果およびこれらの実行のプロセスの態様を以下に論考する。
【0447】
各実行が進行するにつれて、リチウムイオンとナトリウムイオンが、例えば
図46Aに示されるように供給原料から除去された。水が供給原料から除去されるにつれて、硫酸イオン濃度は約1.7Mから約2.3Mまで富化され、これにより、供給原料からのリチウムイオン移動とともに、供給原料中の硫酸イオンに対するリチウムイオンの比が電気分解開始時の約2強から終了時の約1未満まで変化する。この実行では、約50%よりわずかに多くの変換が行なわれ、そのため、最終陽極液溶液には重亜硫酸リチウムのみと少量の硫酸が含有されている。
【0448】
2つのコンパートメント内のサンプルを実行中、定期的に採取し、電流効率について評価した。
図46Bは、陰極液中のヒドロキシド生成の累積電流効率および供給原料からの陽イオン減少を示す。図示のように、電流効率は、サンプル採取時に約35%変換と約45%変換の間で低下し始める。累積電流効率の変化は小さいように見えるが、増分電流効率の変化(図示せず)はかなりである。この変化は、測定した供給原料のpHが約0.6に達すると起こるようである。
【0449】
高電流密度での実行も同様の傾向を有していた。表30は、約3kA/m
2(実験番号856−96)、約4kA/m
2(実験番号856−99)および約5kA/m
2(実験番号879−1)の電流密度で行なった3回の実行の結果を示す。これらの実行でのヒドロキシドの電流効率は、実行の初期段階では約80%に近かった。電流効率が下がり始める時点は、高電流密度を使用して行なった実行の方がわずかに遅く(すなわち、より高率変換時)に存在するようであった。
表30:硫酸リチウム供給原料を用いた2コンパートメント実行の特徴。
【表30】
【0450】
4kA/m
2の電流密度を使用した実行の電圧プロフィールを
図47Aに示す。ほとんどの実行での電圧は高値から始まり、実行が進行するにつれて低下した。
図47Aにおいて、ヒドロキシド濃度は実行過程で約1.9Mから約2.4Mまで上がり、これにより、陰極液コンパートメント内では電圧降下が低減された。
【0451】
構築時のICI FM−01セルは約7mmの電極/膜間隙を有するものであった。間隙を約2mmまで狭くできるより大型の市販のセルでは、水酸化リチウムを含む約3M水溶液である陰極液溶液を使用した場合、全体セル電圧は約4.5〜5Vとなり得ることが推定される。したがって、約4kA/m
2の電流密度で実行される2コンパートメント膜電解プロセスの電力消費は約7kWh/kg(LiOH含有3M溶液)であり得る。これは、プロセスが約1.5kA/m
2の電流密度で実行されることだけを除いて、硫酸アンモニウムを共生成させる3コンパートメントセルに必要とされることが観察される電力と同等である。
【0452】
2コンパートメントセルを用いて約40%の硫酸リチウムを約3メートルトン/時のLiOHプラントで変換させた場合、約400mA/cm
2の電流密度で実行されるセル面積は約430m
2であり得る。残りの約60%の硫酸リチウムは次いで、本明細書において論考しているように3コンパートメントセルによって処理され得る。セル面積の推定値は、以下、本明細書において3コンパートメント作業の論考の後に、さらに論考する。
実施例5B:硫酸リチウム/重硫酸リチウムの変換を伴う3コンパートメント膜電解セル試行
【0453】
2コンパートメント作業は、硫酸リチウム溶液から約40%変換までの水酸化リチウムの生成に有用である。利用可能なプロセス溶液の量が少ないため、試験の条件を適正に規定するために、2つの初期実行を、合成的に作製した重硫酸リチウム/硫酸リチウム溶液を用いて行なった。2コンパートメント作業による最終溶液を再混合し、いくらかの水酸化リチウムの添加によって約42%変換溶液に調整した。起こり得るヒドロキシド濃度効果を排除するため、水酸化リチウム濃度を約2Mに低下させた。
A.硫酸アンモニウムを生成させるためのN324/AHA3コンパートメントセル
【0454】
先の試験(
国際公開2013/159194号および国際公開2014/138933号)で使用した3コンパートメントセルを本試験の試験作業に再利用し、Nafion N324陽イオン交換膜とAstom AHA陰イオン交換膜を含めた。
図49A〜Dは、この実験に関するプロットである。3コンパートメントセルを使用し、硫酸アンモニウムを共生成させた実験の結果およびこのプロセスの態様をこのセクションで論考する。
【0455】
約1.64M LiHSO
4と約0.2M Li2SO4(すなわち、約85%のビスルフェート)を含有する開始溶液をセル内で約200mA/cm
2の電流密度で実行し、硫酸リチウムの除去により水酸化リチウム/水酸化ナトリウムが陰極液中に、硫酸アンモニウムが陽極液中に生成した(アンモニアは供給原料にpH制御下で添加した)。水は供給原料から移動したが、
図49Aに示した濃度を実質的に維持するため、さらなる水を陽極液と陰極液に添加した。実験は、供給原料からのスルフェートの約93%除去を伴って実行された。
【0456】
実行過程中、供給原料のpH(これは、約0.6から開始)は増大し(これは、スルフェートがリチウムよりも効率的に除去されるためである)、
図49Bに示すように、実験終了時までに約2よりほんの少し上に達した。そのため、供給原料中のビスルフェートのパーセンテージは実行全体を通して、溶液の大部分がスルフェートとして存在するまで低下した。セル電圧は、ほぼ実行終了時(供給原料が枯渇し始めたとき)まで約7Vで相当に一定であった。
【0457】
種々のコンパートメントについて測定した電流効率を
図49Cに示す。これにより、より効率的なスルフェート除去が確認される。ヒドロキシド生成の効率は約72%であったが、スルフェート除去は約114%であった。100%より高いスルフェート除去は、「スルフェート」がスルフェート(SO
42−)として膜を通過して移動するが、このようなpHでは一部の移動がビスルフェート(HSO
4−)としてのはずであると仮定した計算のためである。
B.硫酸を生成させるためのN324/FAB3コンパートメントセル
【0458】
3コンパートメント電気化学セルを、Astom AHA膜を新たなFumatech
FAB膜要素に置き換えて再構築し、硫酸を陽極液中に生成させる同様の試験を行なった。
図50A〜Dは、この実験に関するプロットである。3コンパートメントセルを使用し、硫酸を共生成させた実験の結果およびこのプロセスの態様をこのセクションで論考する。
【0459】
この実験では、
図50Aに示すように、硫酸強度を約0.8Mより下に維持するため、より多くの水を陽極液に添加した。電流効率(
図50B)および供給原料のpH(
図50C)において同様の傾向が観察された。この場合、低電流密度(約100mA/cm
2)を使用したためスルフェートは約73%しか除去されず、実験実行全体にわたって起こった変換は実施例5B、セクションAで論考した実験よりも少なかった。
【0460】
この試験での電流密度は先の試験のものの半分であったが、同様のセル電圧が得られた。理論によって制限されることを望まないが、これは、おそらくFAB膜の高い抵抗のためであった。
【0461】
これらの試験におけるヒドロキシド電流効率は、先の試験(
国際公開2013/159194号および国際公開2014/138933号)と比べて約10%〜15%低かった。セルを解体し、N324膜内に破れが観察された。この破れはガスケット領域に存在し、問題が引き起こされたはずはなかった。理論によって制限されることを望まないが、この破れは、プラスチックフレームの(高温での)わずかな変形が何度も復元したことによって形成されたのかもしれない。新たな実行を新たなN324膜要素を用いて行ない、電流効率はわずかに改善された。最終実行は、重硫酸リチウム/硫酸リチウム溶液をより高pHの硫酸リチウム溶液に置き換えて行ない、電流効率が正常近くまで改善された。理論によって制限されることを望まないが、供給原料の低pHは3コンパートメントでの生成に影響するようである。電流効率は、供給原料のpHが上昇したため目立って上がらず、これは予測され得たことであった。
【0462】
理論によって制限されることを望まないが、例えば、塩素アルカリ業界で知られているように、供給原料中のカルシウムもまた効率の低下を引き起こし得る。
【0463】
かくして、2コンパートメント膜電解セルと3コンパートメント膜電解セルの組合せを組み込んだ方法は、硫酸リチウムを水酸化リチウムに変換するために有用であることが示された。2コンパートメントセルは、約40%変換までの水酸化物の生成において効率的である。また、本試験により、残りの溶液を3コンパートメントセルで処理した場合、ヒドロキシド生成で約10〜15%の電流効率の低下が起こることも示された。硫酸アンモニウムまたは硫酸のいずれかを共生成させるプロセスは、ヒドロキシド形成と同様に挙動することが観察された。
【0464】
2コンパートメントセルにおけるリチウム値の約40%の処理は、1時間あたり3メートルトンのLiOHの生成に必要とされるセル総面積を有意に減少させる。2コンパートメントセルは約400mA/cm
2の高電流密度で操作されるため、このプロセスの電力コストは同様であり得る。当業者であれば、低電流密度の使用により電力量は低減され得るが、必要とされるセル面積は増大し得ることが認識され得よう。
表31:種々のプロセスのセル面積および電力
【表31】
【0465】
本システムの有益性は、例えば、2コンパートメントセルにおいて使用される高い電流密度のために得られる。しかしながら、当業者には、このような電流密度ではDSA−O
2陽極の寿命が短くなることが認識されよう。
【0466】
本試験のプロセスで得られるヒドロキシド生成の低電流効率により、3コンパートメントプロセスのためのセル面積がわずかに増大し得る。しかしながら、この非効率性は、溶液が2コンパートメントシステムから、3コンパートメントセルを実行する別個のシステムに供給される溶液の逐次処理を前提としている。あるいはまた、両方の型のセルを同じ溶液で実行してもよく、したがって、プロセスは、必要とされる任意のpHで実行され得、溶液のpHは、例えば、一方または他方のセルで処理するパーセンテージを変更することにより上下され得る。例えば、pHを下げる必要がある場合、2コンパートメントセルの電流密度が上げられ得る、および/または3コンパートメントセルの電流密度が下げられ得る。Fumatech FAB膜を用いて硫酸を生成させる場合、例えば、FAB膜を導電性に維持してプロトン移動を最小限にするために、pHは1.5あたりに制御され得る。
【0467】
Astom AHAを用いて硫酸アンモニウムを生成させる場合、先の試験で報告された問題点の1つは、苛性ソーダ電流効率がスルフェート除去よりもずっと低いために供給原料のpHの上昇が停止することであった。本発明の方法において使用される2コンパートメントセルは、供給原料全体のpHをもっと低いpHに維持するために使用され得るものである。
【0468】
また、2つのプロセス(すなわち、2コンパートメントプロセスと3コンパートメントプロセス)の併用により、大量の水が供給原料から除去されるため、より良好な供給原料溶液の利用が可能となり得、より連続的な操作が許容される可能性がある。
【0469】
本開示を具体的な実施例に関して記載してきた。本記載は、本開示の範囲を限定するのではなく、その理解を補助することを意図した。当業者には、本開示に対して、本明細書に記載の開示内容の範囲から逸脱することなく種々の変形を行なうことができ、かかる変形は本文書に包含されることが意図されていることが自明であろう。
【0470】
このように、本開示の方法およびシステムは、高電流効率を使用することおよび、必要とされるセル総面積が小さいことにより、低コストでLi
2SO
4および/またはLiHSO
4をLiOHに変換するために有効であることが観察された。2コンパートメントモノポーラまたはバイポーラ膜電解プロセスと2コンパートメントモノポーラまたはバイポーラ膜電解プロセスを併用することにより、かかる高電流効率が可能になり、それにより、電流および空間の観点においてかかる経済性がもたらされることがわかった。
【0471】
具体的な実施形態に特に関連して記載したが、該実施形態に対して数多くの変形が当業者に自明であることは理解されよう。したがって、上記の記載および添付の図面は具体例として限定しない意味で解釈されたい。