【実施例】
【0084】
実施例1.合成戦略
一般的方法
使用した溶媒はすべて市販されており、更に精製することなく使用した。典型的には、反応物を窒素の不活性雰囲気下で無水溶媒を用いて流した。化合物はケムドロー7、リアクシス、または市販されているならばカタログ名で指定した。
【0085】
1H及び
13C NMRスペクトルは、バリアン400 ATB PFGプローブを備えたオックスフォードAS400分光計を有するバリアン300マーキュリープラスステーションでプロトンに対して400MHzで、炭素13に対して100MHzで記録した。すべての重水素化溶媒は典型的には参照シグナル(
1H及び
13Cに対してδ 0.00に設定)として使用した0.03%〜0.05%v/v テトラメチルシランを含有していた。
13Cの場合、シフトはδδ 39.50のDMSO−d6帰属と比べた。
【0086】
質量スペクトルは、120℃でアライアンス2795(LC)及びウォーターズ・マイクロマスZQ検出器から構成されているウォーターズMSに記録した。質量分析計はポジティブまたはネガティブモードで操作するエレクトロスプレーイオン源(ES)を備えていた。質量分析計は0.3sの走査時間で100〜1000m/zの範囲で走査した。
【0087】
C、H及びN組成の元素分析は、100mL/分のヘリウム流(14psi)、20mL/分の酸素(10psi)、空気25psi及び50mL/分(N42)のパージでコステック計器元素燃焼システムECS4010を用いて、またはアルバータ大学の分析機器ラボラトリー(N39)で実施した。
【0088】
高速液体クロマトグラフィー(UPLC)分析は、ウォーターズ717プラス・オートサンプラー及びウォーターズ2996フォトダイオードアレイ検出器を備えたウォーター600コントローラーシステムを用いて実施した。使用したカラムはアトランティスT3 d18 4.6×150mm 3μmであり、100% A(A:水中に0.1% H
3PO
4)から始め、10分間かけて30%(B:MeCN)で終わる勾配を適用し、その後95% Bに増加させ、2分間維持した。次いで、カラムを20分間の残りの間100% Aに再平衡化した。カラム温度は周囲温度で、流速は0.9〜1.2mL/分であった。ダイオードアレイ検出器は200〜400nmでスキャンした。
【0089】
薄層クロマトグラフィー(“TLC”)は、アルグラム(R)(シリカゲル60 F
254;アルグラムはMacherey,Nagel & Co.の登録商標である)を用いて実施し、典型的にはスポットを可視化するために紫外光(“UV”)を使用した。幾つかの場合には追加の可視化方法も使用した。例えば、化合物を可視化するためにTLCプレートをヨウ素(約1gのI
2を10gのシリカゲルに添加し、十分に混合することにより生成)、バニリン(約1gのバニリンを100mLの10% H
2SO
4中に溶解することにより生成)、ニンヒドリン(Aldrichから市販されている)、またはマジックステイン(25gの(NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2O、5g(NH
4)
2Ce(IV)(NO
3)
6を450mLの水及び50mLの濃H
2SO
4中に十分に混合することにより生成)を用いて展開し得る。中圧クロマトグラフィーはSNAP(TM)シリカゲルカートリッジまたはテレダイン・イスコカートリッジを用いてバイオタージSP4(R)(バイオタージはBiotage ABの登録商標である)で実施した。フラッシュクロマトグラフィーはStillら(Still,W.C.;Kahn,M.;and Mitra,M.,Journal of Organic Chemistry,1978,43,2923−2925)に開示されているものに類似の技術に従ってシリサイクルの典型的には40〜63μm(230〜400メッシュ)シリカゲルを用いて実施した。バイオタージ(R)、フラッシュクロマトグラフィー、または薄層クロマトグラフィーのために使用される典型的な溶媒はクロロホルム/メタノール、ジクロロメタン/メタノール、酢酸エチル/メタノール及びヘキサン/酢酸エチルの混合物であった。
【0090】
旋光度はエドモントンのアルバータ大学のアルバータ分析機器ラボにて10.002cmの光路長を有するパーキンエルマー241旋光計を用いて実施した。
【0091】
融点はエレクトロサーマル社デジタル式融点測定装置(S.No.2345,カタログ番号IA8101)を用いて測定し、補正しなかった。
【0092】
以下の略号が使用されている:
aq. 水性;
DMSO ジメチルスルホキシド;
EtOAc 酢酸エチル;
HOAc 酢酸;
MeOH メタノール;
NMM 4−メチルモルホリン;
ON 一晩;
r.t. 室温;
TFA トリフルオロ酢酸;及び
THF テトラヒドロフラン。
【0093】
使用した出発物質は商業ソースから入手し、受領したままの状態で使用した。
【0094】
N42:(2R)−2−アセチルアミノ−3−[(4R)−2−オキソ−チアゾリジン−4−カルボニルスルファニル]−プロピオン酸の合成
【0095】
【化11】
【0096】
次の手順をKatritzky,A.R.;Tala,S.R.;Abo−Dya,N.E.;Ibrahim,T.S.;El−Feky,S.A.;Gyanda,K.;Pandya,K.M.,J.Org.Chem.,2011,76,85−96に報告されているチオエステル形成条件に基づいて実施した。
【0097】
(2R)−2−アセチルアミノ−3−[(4R)−2−オキソ−チアゾリジン−4−カルボニルスルファニル]−プロピオン酸(N42,Ref.10−015−161)
1H−ベンゾトリアゾール(19.4g,163mmol)をTHF(180mL)中に含む溶液にチオニルクロリド(2.96mL,40.8mmol)を添加した。溶液を氷浴で冷却し、0.5時間後(4R)−2−オキソ−チアゾリジン−4−カルボン酸(
OTZ、6.00g,40.8mmol)を添加した。溶液を1時間かけて周囲温度までゆっくり加温した。室温で1.25時間後、生じた固体を真空濾過により除去した。固体及びフラスコを洗浄するためにTHF(60mL)を用いて、濾液を(2R)−2−アセチルアミノ−3−メルカプト−プロピオン酸(
NAC,6.00g,36.7mmol)及びNMM(4.04mL,36.7mmol)をTHF(30mL)中に含む氷冷溶液に移した。氷浴を外した。30分後、反応は
1HNMRにより完了したと見られた。混合物にTFAを添加し、生じた溶液を2つに分け、酢酸エチルで予め洗浄した2つの330gのシリカゲルイスコカラムに適用した。2つのカラムのバイオタージクロマトグラフィー(EtOAc−20% メタノール(0.5% AcOH))により、EtOAcと摩砕し、真空中で乾燥した後、2.36g(HPLC純度:97.35%)の標記化合物が生じた。速く流れるUV活性画分を濃縮し、EtOAcと摩砕することにより更に化合物を得た。次いで、固体を水中に溶解し、濾過し、凍結乾燥させると、標記化合物が白色凍結乾燥物として生じた。この物質をEtOAc母液からのバッチと合わせ、〜1:1 EtOAc−MeOHを用いて25gのシリカゲルに吸着させた。バイオタージ精製(330gのイスコ,EtOAc−20% メタノール(0.5% AcOH)、カラムをEtOAcで予め湿らす)すると、水中に溶解し、濾過し、凍結乾燥させた後、0.84g(淡黄色凍結乾燥物,HPLC純度:94.70%)及び3.74g(白色凍結乾燥物,HPLC純度:96.88%)が生じた。収量:6.94g(65%)。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6) δ 13.01(br.s,1H),8.95(d,J=2.0Hz,1H),8.33(d,J=8.2Hz,1H),4.61−4.57(m,1H),4.39−4.33(m,1H),3.81(dd,J=11.7,9.0Hz,1H),3.43(dd,J=11.7,2.3Hz,1H),3.39(dd,J=13.3,4.7Hz,1H),3.08(dd,J=13.7,8.6Hz,1H),1.84(s,3H);
13C NMR(100.6MHz,DMSO−d
6) 200.9,173.5,171.6,169.4,61.7,51.2,32.7,30.0,22.3ppm;MS(ES) m/z:293(M+H)
+;HPLC:96.88%(マックスプロット220〜400nm);元素分析(C
9H
12N
2O
5S
2):計算値:C,36.98%;H,4.14%;N,9.58% 実測値:C,36.80%;H,4.24%;N,9.63%;[α]
D25 −71.58(c 1.0,水)。
【0098】
N50:(2R)−2−アセチルアミノ−3−(2−メトキシ−ベンゾイルスルファニル)−プロピオン酸の合成
【0099】
【化12】
【0100】
次の手順をKatritzky,A.R.;Tala,S.R.;Abo−Dya,N.E.;Ibrahim,T.S.;El−Feky,S.A.;Gyanda,K.;Pandya,K.M.,J.Org.Chem.,2011,76,85−96に報告されているチオエステル形成条件に基づいて実施した。
【0101】
(2R)−2−アセチルアミノ−3−(2−メトキシ−ベンゾイルスルファニル)−プロピオン酸(
N50,Ref.10−015−179−7)
1H−ベンゾトリアゾール(7.68g,64.4mmol)をTHF(60mL)中に含む溶液に2−メトキシ−ベンゾイルクロリド(4.36mL,29.3mmol)を添加した。15分後、生じた溶液は曇り、混合物を1.75時間以上撹拌した。生じた固体を真空濾過により除去し、15mLのTHFで洗浄した。15mLのTHFを含む生じた濾液を(2R)−2−アセチルアミノ−3−メルカプト−プロピオン酸(NAC、3.83g,23.4mmol)及びNMM(2.57mL,23.4mmol)をTHF(30mL)中に含む予冷溶液に添加した。氷浴を外した。一晩室温に置いたが、反応は
1H NMRにより完了していなかった。さらにNMM(2.57mL,23.4mmol)を添加し、混合物を55℃に一晩加熱した。混合物にTFA(4mL)を添加し、溶液を真空中で濃縮した。残渣をMeOH及びEtOAc中に溶解し、〜80gのシリカゲルに吸着させた。バイオタージシリカゲルクロマトグラフィー(330gのイスコカラム,120mLの1:2 EtOAc−ヘキサン、次いで120mLの1:1 EtOAc−20% MeOH(1% AcOH)勾配)にかけて精製した後、温MeCN/水 1:1混合物(100mL)中に溶解し,真空中でMeCNを除去し、周囲温度で一晩放置した後、沈殿を吸引濾過し、水で洗浄することにより精製した。標記化合物を白色固体として単離した。収量:2.29g(33%)。Mp 179〜181℃;
1H NMR(399.7MHz,DMSO−d
6) δ 12.89(br.s,1H),8.31(d,J=8.2Hz,1H),7.65(dd,J=7.8,1.6Hz,1H),7.59−7.54(m,1H),7.18(d,J=8.6Hz,1H),7.06−7.02(m,1H),4.42−4.36(m,1H),3.85(s,3H),3.47(dd,J=13.7,5.1Hz,1H),3.11(dd,J=13.7,9.0Hz,1H),1.82(s,3H);
13C NMR(100.5MHz,DMSO−d
6) 189.4,171.8,169.3,157.4,134.3,129.0,125.9,120.4,113.8,55.9,51.4,30.3,22.3ppm;MS(ES) m/z:298(M+H)
+;HPLC:97.72%(マックスプロット220〜400nm);元素分析(C
13H
15NO
5S):計算値:C,52.51%;H,5.09%;N,4.71%;S,10.78% 実測値:C,52.58%;H,5.07%;N,4.82%;S,10.55%;[α]
D25 −21.49(c 1.014,DMSO)。
【0102】
N51:(2R)−2−アセチルアミノ−3−(4−メチル−ベンゾイルスルファニル)−プロピオン酸(Pro−2023)の合成
【0103】
【化13】
【0104】
次の手順をKatritzky,A.R.;Tala,S.R.;Abo−Dya,N.E.;Ibrahim,T.S.;El−Feky,S.A.;Gyanda,K.;Pandya,K.M.,J.Org.Chem.,2011,76,85−96に報告されているチオエステル形成条件に基づいて実施した。
【0105】
(2R)−2−アセチルアミノ−3−(4−メチル−ベンゾイルスルファニル)−プロピオン酸(
N51,Ref.10−015−177−7)
1H−ベンゾトリアゾール(9.91g,83.2mmol)をTHF(80mL)中に含む溶液に4−メチル−ベンゾイルクロリド(5.00mL,37.8mmol)を添加した。2時間後、生じた固体を真空濾過により除去し、25mLのTHFで洗浄した。25mLのTHF洗浄液を含む生じた濾液を(2R)−2−アセチルアミノ−3−メルカプト−プロピオン酸(
NAC,5.55g,34.0mmol)及びNMM(3.74mL,34.0mmol)をTHF(50mL)中に含む予冷溶液に添加した。氷浴を外した。一晩室温に置いたが、反応は
1H NMRにより完了していなかった。混合物を55℃に1時間加熱した。混合物にTFA(3.6mL)及び水(100mL)を添加した。溶液を真空中で濃縮して、THFの殆どを除去した。さらに水(80mL)及びジクロロメタン(180mL)を添加し、層を分離した。水性層をジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせ、Na
2SO
4で乾燥し、酢酸エチル(100mL)を添加し、真空中で濃縮してジクロロメタンを除去した。結晶化を開始するために残存する酢酸エチル溶液を冷凍庫中に短時間置いた後、周囲温度で一晩放置した。得られた固体を真空濾過により集め、乾燥後3.28gが生じた。添加した若干のメタノールを含む濾液を85gのシリカゲルに吸着させた。バイオタージカラムクロマトグラフィー(330gのイスコ,ヘキサン−酢酸エチル 1:1(0.5CV)、次いでEtOAc−20% MeOH(1%AcOH)勾配)にかけると、2.62gの物質が生じた。EtOAc沈殿由来の固体及びカラムからの物質を合わせ、温MeCN/水 1:1混合物中に溶解した。MeCNを真空中で除去し、周囲温度で一晩放置した後に形成された沈殿を吸引濾過により集めた。標記化合物を白色固体として単離した。収量:4.81g(50%)。Mp 182〜184℃;
1H NMR(399.7MHz,DMSO−d
6) 12.98(br.s,1H),8.38(d,J=7.8Hz,1H),7.82(d,J=8.0Hz,2H),7.37(d,J=8.0Hz,2H),4.47−4.42(m,1H),3.55(dd,J=13.7,5.1Hz,1H),3.23(dd,J=13.7,8.6Hz,1H),2.89(s,3H),1.84(s,3H);
13C NMR(100.5MHz,DMSO−d
6) 189.9,171.7,169.3,144.6,133.6,129.6,127.0,51.4,29.9,22.3,21.2ppm;MS(ES) m/z:282(M+H)
+;HPLC:94.77%(マックスプロット220〜400nm);元素分析(C
13H
15NO
4S):計算値:C,55.50%;H,5.37%;N,4.98%;S,11.40% 実測値:C,55.46%;H,5.33%;N,5.08%;S,11.66%;[α]
D25 −23.74(c 1.0,DMSO)。
【0106】
N53:(2R)−2−アセチルアミノ−3−ベンジルオキシカルボニルスルファニル−プロピオン酸の合成
【0107】
【化14】
【0108】
次の手順をCrankshaw,D.L.;Berkely,L.I.;Cohen,J.F.;Shirota,F.N.;Nagasawa,H.T.,Journal of Biochemical and Molecular Toxicology,2002,16,235−244に報告されているチオカーボネート形成条件に基づいて実施した。
【0109】
(2R)−2−アセチルアミノ−3−ベンジルオキシカルボニルスルファニル−プロピオン酸(
N53,Ref.10−015−183−7)
(2R)−2−アセチルアミノ−3−メルカプト−プロピオン酸(
NAC、4.02g,24.6mmol)を水(30mL)中に含む溶液に炭酸ナトリウム(2.64g,24.9mmol)、次いでTHF(30mL)を添加した。次いで、クロロギ酸ベンジル(7.73mL,54.1mmol)を添加した。1時間後、pHを〜8に調節するためにさらに炭酸ナトリウムを添加した。更に0.5時間後、真空中で部分的に濃縮した。水性層をEtOAc(3×)で抽出した後、水性層を2N HClを用いてpH〜3に酸性化した。エーテルを添加し、層を分離した。水性層をEtOAc(2×)で抽出し、有機層を合わせ、Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。バイオタージカラムクロマトグラフィー(330gのイスコ,1:1 hex/EtOAc(120mL)、次いでEtOAc−20% MeOH(1% AcOH)勾配,サンプルを若干のヘキサンを含むEtOAc中に充填)により精製して、標記化合物を白色固体として得た。収量:2.18g(30%)。Mp 146〜148℃;
1H NMR(399.7MHz,DMSO−d
6) δ 12.98(br.s,1H),8.33(d,J=8.2Hz,1H),7.40−7.32(m,5H),5.27−5.20(m,2H),4.44−4.38(m,1H),3.35−3.30(dd,H
2Oにより部分的に隠れている,1H),3.05(dd,J=14.0,8.6Hz,1H),1.81(s,3H);
13C NMR(100.5MHz,DMSO−d
6) 171.6,169.6,169.4,135.2,128.5
4,128.4
7,128.3
8,68.9,51.5,32.1,22.3ppm;MS(ES) m/z:298(M+H)
+;HPLC:98.22%(マックスプロット220〜400nm);元素分析(C
13H
15NO
5S):計算値:C,52.51%;H,5.09%;N,4.71%;S,10.78% 実測値:C,ペンディング%;H,ペンディング%;N,ペンディング%;S,ペンディング%;[α]
D25 ペンディング(c,)。
【0110】
具体的方法
1H−NMRスペクトルはバリアン・マーキュリー300MHz NMRで獲得した。純度(%)は210〜400nmの2996ダイオードアレイ検出器を備えているウォーターズ・アライアンス2695 HPLC(ウォーターズ・シンメトリーC18,4.6×75mm,3.5μm)を用いて測定した。
【0111】
エチル(2R)−2−アセトアミド−3−(4−メチルベンゾイルスルファニル)プロパノエート(Pro−4051)の合成
【0112】
【化15】
2−アセチルアミノ−3−(4−メチル−ベンゾイルスルファニル)−プロピオン酸
【0113】
ベンゾトリアゾール(9.91g,83.2mmol)をテトラヒドロフラン(80mL)中に含む溶液に4−メチルベンゾイルクロリド(5.0mL,37.8mmol)(5g,95%)を添加した。2時間後、生じたスラリーを濾過し、固体をテトラヒドロフラン(25mL)で濯いだ。濾液を合わせ、0℃でN−アセチル−L−システイン(5.55g,34.0mmol)及びN−メチルモルホリン(3.74mL,34.0mmol)をテトラヒドロフラン(50mL)中に含む溶液に添加した。生じた混合物を16時間かけて周囲温度に加温した。混合物に水性塩酸(1M,100mL)を添加し、生じた混合物を減圧下で約125mLの容量に濃縮した。追加の水性塩酸(80mL)を添加し、混合物をジクロロメタン(180mL、次いで80mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。酢酸エチル(100mL)を添加し、生じたスラリーを2時間撹拌した。生じたスラリーを濾過し、乾燥させて、白色固体(5.7g,60%)を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO) δ=12.94(s,1H),8.34(d,J=7.9Hz,1H),7.86−7.74(m,2H),7.35(d,J=8.5Hz,2H),4.43(dt,J=5.0,8.4Hz,1H),3.53(dd,J=5.0,13.8Hz,1H),3.21(dd,J=8.5,13.8Hz,1H),2.37(s,3H),1.83(s,3H);MS(ESI) m/z 282(M+1)
+。
【0114】
【化16】
エチル(2R)−2−アセトアミド−3−(4−メチルベンゾイルスルファニル)プロパノエート
【0115】
2−アセチルアミノ−3−(4−メチル−ベンゾイルスルファニル)−プロピオン酸(1.1g,3.91mmol)及びトリエチルアミン(0.68mL,4.89mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)中に含む溶液にヨードエタン(0.39mL,4.89mmol)を添加し、生じた溶液を周囲温度で18時間撹拌した。反応混合物を急速に撹拌しながら水(50mL)にゆっくり添加した。2時間撹拌した後、生じたスラリーを濾過し、固体を水で濯ぎ、真空下で乾燥して、生成物を白色固体(780mg,60%)として得た。
1H NMR(300MHz,DMSO) δ=8.47(d,J=7.9Hz,1H),7.81(s,1H),7.80−7.78(m,1H),7.35(d,J=7.6Hz,2H),4.46(dt,J=5.3,8.1Hz,1H),4.09(q,J=6.8Hz,2H),3.50(dd,J=5.4,13.6Hz,1H),3.24(dd,J=8.2,13.8Hz,1H),2.37(s,3H),1.83(s,3H),1.16(t,J=7.0Hz,3H);MS(ESI) m/z 310(M+1)
+。
【0116】
(2R)−2−アセトアミド−3−(4−メチルベンゾイルスルファニル)プロパンアミド(Pro−4051A)の合成
【0117】
【化17】
【0118】
2−アセチルアミノ−3−(4−メチル−ベンゾイルスルファニル)−プロピオン酸(500mg,1.78mmol)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(686mg,3.58mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(483mg,3.58mmol)及びトリエチルアミン(0.50mL,3.58mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)中に含む溶液に塩化アンモニウム(191mg,3.58mmol)を添加し、生じたスラリーを周囲温度で18時間撹拌し、その後溶液が形成された。混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、塩酸(0.1M,50mL)、飽和水性炭酸水素ナトリウム(50mL)で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮すると、油状物が生じた。この粗な生成物をヘキサン中50〜100% 酢酸エチルで溶離させるシリカゲル(12g)クロマトグラフィーにより精製した。精製画分を合わせ、減圧下で濃縮して、生成物を白色固体(55mg,11%)として得た。
1H NMR(300MHz,DMSO) δ=8.16(d,J=8.5Hz,1H),7.79(d,J=8.2Hz,2H),7.47(br.s.,1H),7.35(d,J=8.2Hz,2H),7.19(br.s.,1H),4.43(dt,J=5.4,8.3Hz,1H),3.42(dd,J=5.4,13.3Hz,1H),3.16(dd,J=8.4,13.3Hz,1H),2.32(s,3H),1.85(s,3H);MS(ESI) m/z 281(M+1)
+。
【0119】
(2R)−2−アセトアミド−3−[(2−フェニルプロパン−2−イル)スルファニル]プロパンアミド(Pro−4006)の合成
【0120】
【化18】
(2R)−2−アミノ−3−(1−メチル−1−フェニル−エチルスルファニル)−プロピオン酸塩酸塩
【0121】
L−システイン塩酸塩(2g,12.7mmol)を水性塩酸(2M,30mL)中に含む溶液に2−フェニル−プロパン−2−オール(1.78mL,12.7mmol)を添加し、生じた混合物を油浴において65〜75℃に18時間加熱した。反応混合物を冷却し、濾過し、水性塩酸(1M,10mL)で濯いで、白色固体(2.2g,63%)を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO) δ=8.62(br.s,3H),7.55−7.43(m,2H),7.37−7.19(m,3H),7.23−7.17(m,1H),3.80(m,1H),2.70−2.64(m,2H),1.64(s,6H)。
【0122】
【化19】
(2R)−2−アセチルアミノ−3−(1−メチル−1−フェニル−エチルスルファニル)−プロピオン酸
【0123】
(2R)−2−アミノ−3−(1−メチル−1−フェニル−エチルスルファニル)−プロピオン酸塩酸塩(1.0g,3.63mmol)を水(5mL)及び1,4−ジオキサン(5mL)中に含む混合物に0℃でpH10まで水性水酸化ナトリウム(2M)を添加し、次いで無水酢酸(0.34mL,3.63mmol)を一滴ずつ添加した。反応混合物を16時間かけて周囲温度まで加温した。反応混合物を水性塩酸(1M)を用いてpH2に酸性化し、酢酸エチル(60mL×2)で抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、粗な生成物を得た。これを更に精製することなく次ステップで使用した。
【0124】
【化20】
(2R)−2−アセトアミド−3−[(2−フェニルプロパン−2−イル)スルファニル]プロパンアミド
【0125】
(2R)−2−アセチルアミノ−3−(1−メチル−1−フェニル−エチルスルファニル)−プロピオン酸(400mg,1.42mmol)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(545mg,2.84mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(384mg,2.84mmol)及びトリエチルアミン(0.40mL,2.84mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(2mL)中に含む溶液に塩化アンモニウム(152mg,2.84mmol)を添加し、生じたスラリーを周囲温度で18時間撹拌し、その後溶液が形成された。混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、塩酸(0.1M,50mL)、飽和水性炭酸水素ナトリウム(50mL)で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮すると、油状物が生じた。この粗な生成物をヘキサン中50〜100% 酢酸エチルで溶離させるシリカゲル(12g)クロマトグラフィーにより精製した。精製した画分を合わせ、減圧下で濃縮して、生成物を白色固体(145mg,36%)として得た。
1H NMR(300MHz,DMSO) δ=7.92(d,J=8.2Hz,1H),7.52−7.46(m,2H),7.37−7.28(m,3H),7.23−7.17(m,1H),7.04(s,1H),4.21(dt,J=6.0,8.1Hz,1H),2.47−2.32(m,2H),1.79(s,3H),1.62(d,J=4.1Hz,6H);MS(ESI) m/z 281(M+1)
+。
【0126】
エチル(2R)−2−アセトアミド−3−(2−オキソ−1,3−チアゾリジン−4−カルボニルスルファニル)プロパノエート(Pro−4047)の合成
【0127】
【化21】
【0128】
L−2−オキソチアゾリジン−4−カルボン酸(6.0g,40.8mmol)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(9.03g,47.1mmol)及びヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(6.4g,47.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)中に含む溶液に2−アセチルアミノ−3−メルカプト−プロピオン酸エチルエステル(6.0g,31.4mmol)を添加し、生じたスラリーを周囲温度で72時間撹拌した。この間に溶液が形成された。混合物を水性塩酸(0.2M,300mL)で希釈し、酢酸エチル(4×200mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和水性炭酸水素ナトリウム(150mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。この粗な生成物をヘキサン中30〜100% 酢酸エチルで溶離させるシリカゲル(120g)クロマトグラフィーにより精製した。精製画分を合わせ、減圧下で濃縮した。生じた固体を酢酸エチル/ヘキサン(1:1,100mL)と摩砕し、濾過し、乾燥させて、生成物を白色固体(3.1g,31%)として得た。
1H NMR(300MHz,CDCl
3) δ=6.33−6.20(m,2H),4.87(ddd,J=4.7,5.9,7.5Hz,1H),4.43(ddd,J=1.8,3.5,8.5Hz,1H),4.22(dq,J=2.3,7.1Hz,2H),3.79(dd,J=8.5,11.4Hz,1H),3.62−3.51(m,2H),3.40−3.31(m,1H),2.05−2.02(m,3H),1.60(s,2H),1.31(t,J=7.2Hz,3H);MS(ESI) m/z 321(M+1)
+。
【0129】
(6R)−1−ベンジル−6−(スルファニルメチル)ピペラジン−2,5−ジオンの合成
【0130】
【化22】
(2R)−2−ベンジルアミノ−3−トリチルスルファニル−プロピオン酸メチルエステル
【0131】
(2R)−2−アミノ−3−トリチルスルファニル−プロピオン酸メチルエステル(41g,109mmol)をメタノール(570mL)中に含む溶液にベンズアルデヒド(13.3mL,131mmol)を添加した。1.5時間後、反応混合物を氷浴を用いて冷却し、ホウ水素化ナトリウム(8.25g,218mmol)を20分間かけて少しずつ添加した。添加が完了したら、氷浴を外し、反応物を1時間かけて周囲温度まで加温した。次いで、生じた混合物を減圧下で濃縮した。生じた油状物を水(300mL)及び酢酸エチル(500mL)で希釈し、層を分離した。有機層を再び水(200mL)で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。粗な生成物をヘキサン中0〜20% 酢酸エチルで溶離させるシリカゲル(330g)クロマトグラフィーにより精製した。精製画分を合わせ、減圧下で濃縮して、生成物を無色油状物(30.5g,60%)として得た。
1H NMR(300MHz,CDCl
3) δ=7.44−7.37(m,6H),7.31−7.17(m,14H),3.69−3.62(m,4H),3.60−3.51(m,1H),3.14−3.07(m,1H),2.50(d,J=6.4Hz,2H)。
【0132】
【化23】
(6R)−1−ベンジル−6−{[(トリフェニルメチル)スルファニル]メチル}ピペラジン−2,5−ジオン
【0133】
(2R)−2−ベンジルアミノ−3−トリチルスルファニル−プロピオン酸メチルエステル(30.2g,64.6mmol)及びジイソプロピルエチルイミン(12.4mL,71mmol)をジクロロメタン(400mL)中に含む溶液に0℃でジクロロメタン(30mL)中のブロモアセチルブロミド(6.2mL,71mmol)を滴下漏斗を介して1滴ずつ添加した。反応混合物を2時間かけて周囲温度まで加温した。反応物をジクロロメタン(300mL)で希釈し、水性塩酸(0.5N,400mL)で抽出した。水性層をジクロロメタン(100mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。この粗な生成物にアンモニアをメタノール中に含む溶液(7M,200mL)を添加し、生じた溶液を周囲温度で64時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。生じた混合物を水性塩酸(200mL)と3時間激しく摩砕し、濾過した。固体をジクロロメタン中に溶解し、ヘキサン中0〜70% 酢酸エチルで溶離させるシリカゲル(330g)クロマトグラフィーにより精製した。精製画分を合わせ、減圧下で濃縮して、生成物を白色固体(2ステップで14.1g,44%)として得た。
1H NMR(300MHz,CDCl
3) δ=7.42−7.37(m,6H),7.33−7.21(m,12H),7.02(dd,J=2.8,6.6Hz,2H),6.64(d,J=2.6Hz,1H),5.26(d,J=15.0Hz,1H),4.27(d,J=17.3Hz,1H),3.98−3.83(m,2H),3.20(d,J=15.0Hz,1H),2.94(dd,J=3.7,12.5Hz,1H),2.55(dd,J=5.0,12.6Hz,1H);MS(ESI) m/z 493(M+1)
+。
【0134】
【化24】
(6R)−1−ベンジル−6−(スルファニルメチル)ピペラジン−2,5−ジオン
【0135】
(6R)−1−ベンジル−6−{[(トリフェニルメチル)スルファニル]メチル}ピペラジン−2,5−ジオン(13g,26.4mmol)をトリフルオロ酢酸(100mL)及びジクロロメタン(200mL)中に含む溶液に0℃でトリイソプロピルシラン(21.6mL,106mmol)を一滴ずつ添加した。添加が完了したら、反応混合物を2時間かけて周囲温度まで加温した。ヘプタン(100mL)を添加し、混合物を減圧下で濃縮した。粗な生成物をヘキサン中0〜100% 酢酸エチルで溶離させるシリカゲル(120g)クロマトグラフィーにより精製した。精製画分を合わせ、減圧下で濃縮した。固体を酢酸エチル(50mL)と摩砕して、生成物をオフホワイト色固体(6.0g,90%)として得た。
1H NMR(300MHz,CDCl
3) δ=7.38−7.26(m,5H),6.63(br.s.,1H),5.20(d,J=15.0Hz,1H),4.43(d,J=17.3Hz,1H),4.16−4.05(m,3H),4.01(d,J=2.9Hz,1H),3.12(ddd,J=2.3,10.2,14.7Hz,1H),2.96(ddd,J=4.1,8.4,14.8Hz,1H),1.65(s,1H),1.41(dd,J=8.4,10.1Hz,1H);MS(ESI) m/z 251(M+1)
+。
【0136】
【化25】
(6R)−6−[(ベンゾイルスルファニル)メチル]−1−ベンジルピペラジン−2,5−ジオン(Pro−4011)の合成
【0137】
(6R)−1−ベンジル−6−(スルファニルメチル)ピペラジン−2,5−ジオン(200mg,0.79mmol)をピリジン(3mL)中に含む撹拌溶液に0℃でベンゾイルクロリド(0.23mL,1.98mmol)を1滴ずつ添加し、添加が完了したら反応混合物を周囲温度まで加温し、24時間撹拌した。反応物を減圧下で濃縮し、ジクロロメタン(100mL)で希釈し、飽和水性炭酸水素ナトリウム(30mL)、次いで水性塩酸(0.1N,40mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。粗な生成物をヘキサン中20〜100% 酢酸エチルで溶離させるシリカゲル(20g)クロマトグラフィーにより精製した。精製画分を合わせ、減圧下で濃縮した。固体を酢酸エチル/ヘキサン(1:1,10mL)と摩砕して、生成物を白色固体(77mg,27%)として得た。
1H NMR(300MHz,DMSO) δ=8.37(d,J=3.5Hz,1H),7.92(d,J=7.8Hz,2H),7.74−7.67(m,1H),7.60−7.53(m,2H),7.37−7.24(m,5H),5.06(d,J=15.0Hz,1H),4.21−4.10(m,2H),4.04(dd,J=4.0,5.7Hz,1H),3.81−3.71(m,2H),3.55(dd,J=3.8,14.1Hz,1H),3.40−3.34(m,1H),3.32−3.25(m,1H);MS(ESI) m/z 355(M+1)
+。
【0138】
実施例2.インビトロ研究
本発明の化合物による14C摂取
これらの実験の目的は、
14C−シスチン摂取を調べることであった。
【0139】
実験は次のように実施した。
【0140】
化合物のスクリーニングは脳星状膠細胞腫由来のヒトグリア細胞(1321N1)のインビトロ細胞系を用いて実施した。細胞をポリ−D−リシン及びラミニンを被覆した24ウェルプレートで平板培養し、5% 熱不活化ウマ血清、5% ウシ胎児血清、2mM グルタミン及びグルコース(合計21mM)を補充した平衡塩溶液において増殖させた。実験を実施する前3〜4日間培養物を加湿5% CO
2インキュベーター中に37℃で維持した。この時点で培養物は単一コンフルエント層を形成した。実験のために、培養物をNaフリーHEPES及びHCO
3−緩衝平衡塩溶液に3回洗浄した。1時間後、試験化合物を添加した。3時間インキュベートした後、
14C−シスチン(0.025mCi/mL)を20分間添加した。
14C−シスチンに曝した後、培養物を氷冷HEPES緩衝生理食塩溶液を用いて3回洗浄し、250μlのナトリウムドデシルスルフェート(0.1%)中に溶解した。アリコート(200μl)を取り出し、カウンティング用シンチレーション流体に添加した。値を同一実験プレートの未処理対照における
14C−シスチン摂取に対して正規化した。
【0141】
本発明の化合物による3H−グルタメート放出
本アッセイも上記した脳星状膠細胞腫由来のヒトグリア細胞(1321N1)の細胞培養系を用いる。初めに、細胞をHBBSSで洗浄し、
3H−グルタメートを添加する(パーキンエルマー:1mCi/mLストック溶液を希釈し(30μL+500μL HBBSS)、各ウェルに10μLの希釈した放射標識を添加する)。細胞に標識したグルタメートを充填するために1時間インキュベートした後、細胞を再びHBBSSで洗浄し、薬物を添加する。30、90及び180分目に、各ウェルから50μLの細胞外培地をサンプリングし、ベックマンLS 6500シンチレーションカウンターを用いて測定する。
【0142】
異なる濃度のPro−2022、Pro−2023、Pro−4006、Pro−4011、Pro−4047、Pro−4051及びPro−4051aで処理した星状膠細胞による
14C−シスチン摂取及び
3H−グルタメート放出の結果をそれぞれ
図1、2及び5〜9に未処理対照のパーセンテージとして表す。Pro−2024及びPro−3010については
14C−シスチン摂取データのみ得た。放射標識したシスチン摂取に関するPro−2022の最も有効な濃度は、驚くことに未処理対照に比して約50%の増加を示している300μMであった。このデータから、思いもよらず標的(システムxc−)との相互作用が示唆される。グルタメート放出に関するPro−2022の最も有効な濃度は、約60%の増加を生じた100μMで3時間のインキュベーションであった。放射標識したシスチン摂取に関するPro−2023の最も有効な濃度は、
14C−シスチン摂取において約45%の減少を生じた1000μMであり、代替基質、シスチン−グルタメートアンチポーター阻害剤及び有効なプロドラッグに限定されないプロセスによる
14C−シスチン摂取の抑制を立証している。グルタメート放出に関するPro−2023の最も有効な濃度は、3時間目に約135%の増加を生じた300μMであり、
14C−シスチン摂取がPro−2023からの直接競合により抑制される証拠である。放射標識したシスチン摂取に関するPro−2024の最も有効な濃度は、驚くことに増加を示した100μMであった。300及び1000μMの濃度では、放射標識したシスチン摂取のそれぞれ約30%及び35%の抑制を生じた。Pro−3010の最も有効な濃度は、放射標識したシスチン摂取において約75%の減少を生じた1000μMであった。Pro−4006の最も有効な濃度は、
14C−シスチン摂取において約45%の減少を生じた30μMであり、対応して30分目での
3H−グルタメート放出が35%増加した。関連するアナログを用いる以前の溶解性研究に基づいて、1000μM用量は多分溶解していないと推論される。にもかかわらず、我々は本データ組においてこの高濃度のPro−4006を含めた。Pro−4011の最も有効な濃度は、
14C−シスチン摂取において約75%の増加を生じた100μMであり、対応して驚くことに3時間目の
3H−グルタメート放出は75%増加した。300及び1000μMデータポイントはアッセイ媒体中に沈殿が現れたために異常であり得、化合物は溶解していなかったと示唆される。Pro−4047は
14C−シスチン摂取において約20〜60%の減少を生じ、用量依存性の減少を示している。グルタメート放出に関するPro 4047の最も有効な濃度は、3時間目に約40%の増加を生じた100μMであった。Pro−4051の最も有効な濃度は、
14C−シスチン摂取において約28%の減少を生じた100μMであった。このグラフは3回の実験ランの平均を表す。Pro−4051は溶解性データに従って316μM以上で溶解していない。
3H−グルタメート放出に関するPro−4051の最も有効な濃度は、3時間目に約100%の上昇を生じた300μMであった。Pro−4051aは
14C−シスチン摂取の実質的抑制を生じなかった。これは、多分3時間インキュベーションはこの化合物の有効性の範囲内に入らないようである。
3H−グルタメート放出に関するPro−4051aの最も有効な濃度は、30分目に約180%の上昇を生じた1000μMであった。
【0143】
インビトロチオール実験
どのようなプロセスで
14C−シスチン摂取の抑制が生ずるかを更に解明するために、細胞内システインレベルを測定する。
【0144】
実験は次のように実施した。
【0145】
グリア細胞及びニューロン細胞を含有している混合皮質細胞培養物を既に記載されているように胎児(妊娠15〜16日目)マウスから作成した(Lobner D,Comparison of the LDH and MTT assays for quantifying cell death:validity for neuronal apoptosis?J.Neurosci Methods,2000,Mar.15,96(2),147−152)。解離させた皮質細胞をポリ−D−リシン及びラミニンを被覆した24ウェルプレートにおいて5% 熱不活化ウマ血清、5% ウシ胎児血清、2mM グルタミン及びグルコース(合計21mM)を補充したイーグル最小必須培地(MEM,アール塩、供給したグルタミンフリー)中で平板培養した。培養物を加湿5% CO
2インキュベーターにおいて37℃で維持した。マウスを我々の動物管理委員会が認可したプロトコルに従って、実験動物の人道的管理と使用に関する公衆衛生サービスポリシーに従って取り扱った。
【0146】
インビトロで14日間の混合皮質細胞培養物(これにより、星状膠細胞のコンフルエント層が形成され、ニューロンは軸索と樹状突起の複雑なネットワークを生ずる)を重炭酸塩緩衝塩溶液で洗浄した。1時間後、3、10、30、100μMのPro−4047またはPro−4051を添加し、細胞を30または90分間インキュベートし、その後細胞を十分に洗浄し、250μLの水性移動相(50mM クエン酸,10mM オクタンスルホン酸,pH2.8)を添加し、37℃で10分後細胞をプレートからこすり取り、分析用1.5mLチューブに移した。
【0147】
次いで、サンプルをフィッシャー・サイエンティフィック60音波切断装置を用いて音波処理した。このホモジネートの1つの画分をピアースBCA(ビシンコニン酸)方法を用いて分析して、タンパク質濃度を測定した。他の画分を3K分子量カットオフ,ポリエーテルスルホン遠心タンパク質フィルターを用いて濾過し、チオール含量をHPLC(ALF−115カラム,150×1.0mm,3μM C18[Pro−2023分析はフェノメネクス・キネテクス2.6μM,C18,100A,150×2.1mmを使用し、Pro−4047分析はフェノメネクス・キネテクスX−B,C18,100A,2.6μM,150×4.4mmを使用した];移動相:50mM クエン酸,10mM オクタンスルホン酸,2% アセトニトリル,pH2.8,流速50μL/分[Pro−2023分析は流速100μL/分を使用し、Pro−4047分析は1% アセトニトリル及び流速0.4mL/分を使用した]、電気化学検出(デカードII,Au作用電極,フレックスセルHyREF,0.55V,オランダ国のAntec Leyden[Pro−4047分析はマジックダイアモンド作用電極及び1.8Vを使用した])を用いて分析した。
【0148】
細胞内チオールアッセイを開始した場合、データはすべてタンパク質濃度に正規化した。しかしながら、タンパク質方法は対照サンプルにおいて一致した結果を生じなかったので、この正規化方法をあきらめた。本明細書中に提示したデータは集めたサンプルの生システイン濃度を表す。結果は、Pro−2023を100μMで投与すると30分目に細胞内システイン濃度が0.16μM(対照の約1.6倍;
図10)に上昇することを立証している。10μMのPro−4006は30分目に細胞内システイン濃度を0.07μM(対照の約3.5倍;
図11)に上昇させる。10μMのPro−4011は30分目に細胞内システイン濃度を0.138μM(対照の約1.16倍;
図12)に上昇させる。300μMのPro−4047は90分目に細胞内システイン濃度を0.74μM(対照の約4.9倍;
図13)に上昇させる。
図14は、100μMでPro−4051を投与すると90分目に細胞内システイン濃度0.36μM(対照の約4倍)に上昇させることを立証している。最後に、
図15は、100μMでPro−4051aを投与すると30分目に細胞内システイン濃度を0.21μM(対照の約3倍)に上昇させることを立証している。これらの結果は、Pro−2023、Pro−4006、Pro−4011、Pro−4047、Pro−4051及びPro−4051aが効果的に開裂して、細胞内システインを上昇させることを立証している。よって、3つのインビトロ実験に基づいて、Pro−2023、Pro−4006、Pro−4011、Pro−4047、Pro−4051及びPro−4051aは有効なシステインプロドラッグとして働いているようである。
【0149】
実施例4.インビボ研究
プレパルス抑制実験
本実験の目的は、統合失調症の予測動物モデルにおいて試験化合物の有効性を立証することであった。
【0150】
実験は次のように実施した。
【0151】
動作検知プレート上に載せた消音チャンバ(10.875”×14”×19.5”;カリフォルニア州のハミルトン・キンダー)内のプラットフォームにラットを置いた。すべてのセッション中、バックグラウンドノイズは60dBに一定に保った。マッチングセッションは各ラットの平均驚愕応答の大きさを測定するために実施した。このセッションは、5分間の馴化期間、次いで1回の聴覚刺激(パルス刺激;バックグラウンドノイズより50dB上)を提示する17回のトライアル;及びパルス聴覚刺激前にプレパルス刺激(バックグラウンドノイズより12db上)を100ms提示する3回のトライアル;の20回のトライアルから構成されていた。次いで、驚愕応答の大きさがすべての群にわたって均等であるようにラットを各種処置群に割り当てた。2日後、感覚運動ゲーティングを評価するために試験セッションを実施した。試験の1時間前にラットにプロドラッグ(0〜100mg/kg,P.O.)、55分後に急性MK−801マレエート(0.1mg/kg,SC)を与えた。試験セッションは5分間の馴化期間から構成され、その後ラットにパルス刺激(バックグラウンドより50db上)のみを提示する26回のトライアル;それぞれプレパルス刺激(バックグラウンドより5,10または15db上)がパルス刺激に先行する8回のトライアル;及びパルスなしの8回のバックグラウンドトライアル(刺激なし;バックグラウンドノイズのみ);の58回の別々のトライアルを与えた。最初の6回のパルス単独トライアルは、それぞれ驚愕反応性の比較的安定なレベルを達成するための平均驚愕刺激に含めなかった。すべての驚愕応答はビヒクル対照に正規化し、プレパルス抑制のパーセントを100−(平均プレパルス驚愕応答/平均驚愕刺激のみ)*100として調べた。
【0152】
図16はPro−2023についての平均プレパルス抑制を示す。棒グラフが示すように、10mg/kg濃度でのプレパルス抑制%は、MK−801及びビヒクルの両方を受けた対照群の場合の約16%と対照的に、約30%であった。このアッセイ(クロザピンを含む)における類似の用量−応答曲線と一致して、化合物は高用量で逆U字型用量応答を生じた。臨床的に使用されている神経遮断薬の効果と一致するこれらのデータから、統合失調症の齧歯類モデルにおいて抗精神病薬様活性が示唆される。
【0153】
図17はPro−4047についての平均プレパルス抑制を示す。棒グラフが示すように、3mg/kg濃度でのプレパルス抑制%は、MK−801及びビヒクルの両方を受けた対照群の約16%と対照的に、約23%であった。初代細胞をベースとするアッセイにおける活性にもかかわらず、このモデルにおける有効性の一般的低下は、多分治療ウィンドウが試験した1つの時点を外したような薬物動態パラメーターに起因している。加えて、これは高用量(例えば、30または60mg/kg)が効果を生じ得る試験した用量範囲のためであり得る。
【0154】
図18はPro−4051についての実験の結果を示す。棒グラフが示すように、10mg/kg濃度でのプレパルス抑制%は、MK−801及びビヒクルの両方を受けた対照群の約16%と比較して、約46%であった。
【0155】
これらの結果は、この化合物がプレパルス抑制において統合失調症様MK−801誘発性欠乏を大きく改善することを意味している。
【0156】
高架式十字迷路
本実験の目的は、試験化合物がCNSに浸透する能力を立証することであった。
【0157】
実験は次のように実施した。
【0158】
ラットを標準の高架式十字迷路で試験した。試験は迷路上に載せた2つのライトのみを使用して薄暗い照明の部屋において行った。動物は処置前少なくとも1時間部屋に慣らした。試験前1時間、ラットに本発明の化合物(0〜30mg/kg,P.O.)を与えた。試験のために、ラットをオープンアームに面する出発位置とクローズドアームに面する出発位置を交互にして高架式十字迷路に5分間置いた。セッションを記録し、処置が伏せられているオブザーバーが探索回数、進入及びオープンアーム中の滞在時間を記録した。探索はラットがオープンアームに完全に進入することなく該アームに2つの足を置くことと規定される。進入はラットがオープンアームに4つすべての足を置くことと規定される。オープンアーム中の滞在時間はラットの足の2つがオープンスクエアに戻るまでラットが4つの足をオープンアームに置いた時間から記録した。
【0159】
本発明の化合物を投与した後、ラットは迷路のオープンアーム上に滞在した時間が増え、少ない不安及び統合失調症に関連する症状の効果的緩和が立証された。具体的には、
図19に示すように、10または30mg/kg,PO(経口)のPro−2023で処置したラットはオープンアーム上に27秒くらい滞在した。これは、オープンアーム上に滞在した時間の約100%の延長に相当する。
図20に示すように、10mg/kg,PO(経口)のPro−4047で処置したラットはオープンアーム上に22秒くらい滞在し、これは対照と比較して有意な延長ではない。これは、治療ウィンドウが試験した1つの時点を外したような薬物動態のためであり得る。加えて、これは試験した用量範囲が閾値下用量であり得、サンプルサイズが統計上有意を達成するには小さすぎているためであり得る。
図21に示すように、10mg/kg,PO(経口)のPro−4051で処置したラットはオープンアーム上に48秒くらい滞在し、すなわち対照に比して約150%の延長であった。
図22に示すように、10mg/kg,PO(経口)のPro−4051aで処置したラットはオープンアーム上に22秒くらい滞在し、これは対照に比して有意な延長ではない。よって、Pro−2023及びPro−4051はインビボで統合失調症に関連する症状を緩和する能力を立証している。
【0160】
経口投与後のNAC及びグルタチオンの脳レベル
本実験の目的は、C57BL/6マウスの脳における試験化合物の薬物動態特性を立証することであった。
【0161】
実験は次のように実施した。
【0162】
本発明の化合物を10または100mg/kgでC57BL/6マウスに経口投与した。経口投与から0.25、0.50、1、2及び4時間後に脳サンプルを集めた。脳サンプル中のNAC及びグルタチオンのレベルを液体クロマトグラフィー−質量分光法(LC−MS/MS)を用いて定量した。
【0163】
図23はPro−2023を経口投与後の脳中に存在しているNACのレベルを示す。100mg/kgのPro−2023を経口投与すると、0.5時間目に約2,000pmol/gの脳組織、またはビヒクル(約1,600pmol/g)の約1.25倍のNACが脳中に存在していた。驚くことに、1時間目、NACは脳中に約1,900pmol/gで残存しているのに対して、対照は約1,400pmol/gに戻った。この結果はNACと対照間の1.35倍の差に相当する。
【0164】
図24はPro−2024の経口投与後の脳中に存在しているNACのレベルを示す。100mg/kgのPro−2024を経口投与すると、1.0時間目に約1,800pmol/gの脳組織、またはビヒクル(約1,400pmol/g)の約1.29倍のNACが脳中に存在していた。
【0165】
図25はPro−4051を経口投与後の脳中に存在しているNACのレベルを示す。Pro−4051を経口投与すると、0.25時間目に約4,500pmol/gの脳組織、またはビヒクル(約750pmol/g)の約6倍のNACが存在していた。驚くことに、同じ時点で、Pro−4051を経口投与すると、NACはNACそれ自体(約1,500pmol/g)の経口投与よりも約3倍以上で脳中に存在していた。
【0166】
図26はPro−2023を経口投与後の脳中に存在しているグルタチオンのレベルを示す。NACがグルタチオンの細胞内レベルを上昇させることは知られている。100mg/kgのPro−2023を経口投与すると、4時間目に約200nmol/gの脳組織、またはビヒクル(約95nmol/g)の約2倍のグルタチオンが脳中に存在していた。
【0167】
図27はPro−2024を経口投与後の脳中に存在しているグルタチオンのレベルを示す。10mg/kgのPro−2024を経口投与すると、4.0時間目に約190nmol/gの脳組織、またはビヒクル(約95nmol/g)の約2倍のグルタチオンが脳中に存在していた。
【0168】
図28はPro−3010を経口投与後の脳中に存在しているグルタチオンのレベルを示す。100mg/kgのPro−3010を経口投与すると、4.0時間目に約195nmol/gの脳組織、またはビヒクルの約2倍(約95nmol/g)のグルタチオンが脳中に存在していた。
【0169】
図29は、Pro−4051を経口投与後の脳中に存在しているグルタチオンのレベルを示す。100mg/kgのPro−4051を経口投与すると、4.0時間目に約1960nmol/gの脳組織、またはビヒクル(約1870nmol/g)の約1.05倍のグルタチオンが脳中に存在していた。
【0170】
これらの結果は、Pro−2023またはPro−4051、多分Pro−2024の経口投与はNACそれ自体の経口投与よりも脳中のNACレベルをより効果的に上昇させることができ、よって現在高用量のNACに応答しているCNS疾患、例えば統合失調症の治療のためにNACよりもより有効であり得ることを立証している。加えて、Pro−3010と共にこれらの化合物は脳中のグルタチオンを上昇させ得ることを示した。