【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1の構成要件を備える対象物によって解決される。
【0010】
本発明によると、内視鏡外科のための医療用器具において、遠位端および近位端を備えたシャフト管と、シャフト管の近位端の領域に配置された結合体とを有し、シャフト管と結合体は長尺状に延びる操作部材を挿通するために軸方向で共通の通路により貫通され、および、結合体に連結可能な端部体およびこれに取り付けられた医療用器具を操作するためのハンドグリップと、通路に対して角度をなしてアライメントされたシャフトの中に結合体の内部でスライド可能に支承されるロックスライダとを有し、ロックスライダは操作領域をもって結合体から突出するとともに、操作領域に対する指の圧力によりロック位置およびリリース位置へ操作可能であり、それにより結合体に連結された端部体がロック位置で形状接合式に結合体にロックされるとともに、リリース位置では結合体から取外し可能であるようになっていて、ロックスライダはばね部材のばね力によりロック位置で保持され、本発明によると、ばね部材はシャフトの中で操作領域と通路との間に配置されることが意図される。
【0011】
通路の下方に配置されるばね部材の場合、比較的厚い材料層が、結合体の周囲に位置する壁部領域に設けられていなくてはならず、このことは全体として幅広く重い結合体をもたらし、それに伴って器具の取扱性の欠点をもたらす。このような種類の構成は、ドイツ特許出願公開第102006038517A1号明細書から公知である。すなわち、たとえばコイルばねとして構成されるばね部材がロックスライダの下方に配置されると、典型的な場合、結合体の内壁に平坦な載置面を穿設することが必要になる。そのためには、外側で面取りされた結合体のジオメトリーの場合、相応の壁厚が前提条件となる。さらにロックスライダの下方に、ばね部材を収容して十分なばねストロークを許容するために、十分に広い空き容積が設けられていなくてはならない。
【0012】
ロックスライダの操作領域と、特に軸方向に結合体を通って延びる通路との間へのばね部材の配置は、結合体の内部のスペースを最善に活用する可能性を提供する。この施工形態では、ロックスライダの下方でシャフトの中に少しの空いた容積しか必要なく、すなわちそれは、ロックスライダの希望されるスライドストロークがちょうど許容される程度の広さである。ロックスライダの下方のスペースを、スライドの際に全面的に活用することができる。
【0013】
原則として、ロックスライダシャフトは通路に対して角度をなして延び、すなわち、特に結合体の長軸に対して斜めに延びることが考えられる。それにより、ハンドグリップを支持する端部体をロックするためのロック機構の構成が簡素化される。すなわちロックスライダには、ロックスライダの動きに強制案内式に従い、ロックのために端部体の環状溝に係合するフックが単純な施工形態で配置されていてよい。ロックスライダを支承するためのシャフトは、シャフト管の長軸に対して横向きに製作されることが考えられるのが好ましい。
【0014】
ロック機構の良好な操作可能性のために、ロックスライダは操作領域をもって結合体の開口部から突出することが意図される。操作領域はロックスライダと一体的に構成されるのが好ましい。別案として、操作領域がロックスライダに取外し可能に取り付けられることも考えられる。
【0015】
本発明による1つの構成では、ばね部材は、ばね方向で見て操作領域と反対を向く第1の端部をもって、通路の領域に配置された支持面に支持されるとともに、ばね方向で見て操作領域のほうを向く第2の端部をもって、ロックスライダの突合せ面に支持されることが考えられる。
【0016】
ばね部材の形状に依存して、ばね部材はたとえばワッシャ、ウェブなどの支持部材を介して、ロックスライダの突合せ面に操作領域の下方で支持され、および/または支持面に通路の領域で支持されることが考えられる。支持面は、たとえばシャフト壁部に刻設された環状溝であってよい。これに準じて突合せ面は、ロックスライダの円周にある環状溝であってよい。別案として、支持面は結合体の別個に製作されるコンポーネントに設けられていてよい。たとえば支持面は、結合体へ軸方向に差し込み可能なスリーブに設けられていてよい。このような種類のコンポーネントは、たとえば結合体へ連結可能な端部体を案内するための案内部材であってよい。スリーブ状のコンポーネントの場合、スリーブの軸方向の貫通部が操作部材のための通路を含んでいることが考えられる。このとき支持面はスリーブの外壁に設けられる。支持面を有するスリーブ状のコンポーネントは、器具へ入力結合される電圧を導通するためにも施工されていてよい。そのために、このコンポーネントはたとえば導電性の材料で製作されていてよい。
【0017】
1つの好ましい実施形態では、ばね部材はロックスライダの破断部に配置されることが考えられる。ロックスライダはこの破断部をもって、特にシャフト方向に対して横向きに、トンネル状に貫通されているのが好ましい。破断部は通路方向に対して横向きにロックスライダに刻設されるのが特別に好ましい。すなわち破断部は結合体の軸方向で、ロックスライダの壁面により遠位と近位で区切られていてよい。
【0018】
ロックスライダの破断部にばね部材を組み込むことは、2つの利点を同時にもたらす。一方では、劣った洗浄可能性ないし結合体の外面での追加のエッジや隙間の形成といった上記の欠点が回避され、他方では、結合体の内部のスペースが最善に活用される。
【0019】
医療用器具の1つの特別な変形例では、シャフト管および/またはシャフト管により案内される操作部材へ電圧を入力結合するために、端部体にターミナル個所が配置されることが意図される。前述した通り、操作部材は通路によって案内される引張/押圧ロッドであってよい。
【0020】
電圧として、たとえば高周波発生器の高周波信号および/または直流電圧ないし一般に交流電圧が意図されていてよい。さらに、医療用器具はモノポーラ式またはバイポーラ式に施工されることが意図されていてよい。すなわち、好ましくは差し込み接点として構成されるターミナル個所に、電圧信号のための1つまたは2つの接続接点が設けられていてよい。
【0021】
結合体に差し込み結合される端部体の場合、少なくとも1つの電圧が、端部体の導電性の経路を介して、結合体の内部にある少なくとも1つの導電性のコンポーネントに伝達されることが考えられる。さらに、電圧が結合体の内部にある導電性のコンポーネントを介して、ロックスライダシャフトの領域で、シャフト管の導電性の経路に伝達されることが考えられる。シャフト管の導電性の経路を介して、シャフト管の遠位端の領域に配置されたエンドエフェクタへ電圧を送ることができる。さらに導電性のコンポーネントは、ばねを支持するための本発明による支持面を有していることが考えられる。このことは、器具のコンポーネント個数ないしコンポーネント複雑性を引き下げることができる。
【0022】
器具の1つの好ましい変形例では、ロックスライダは操作部材を通過させる開口部を有することが意図される。ばね部材はこの開口部の上方に配置されるのが好ましい。開口部の上方かつロックスライダの操作領域の下方へのばね部材の配置は、ロックスライダシャフトの内部の、ないしは結合体の内部の改善されたスペース活用をもたらす。
【0023】
ロックスライダの開口部は、シャフト管および結合体によって案内される操作部材とともに回り止めを成立させることが可能な内側輪郭を有するのが好ましい。そのために、開口部が通過領域と捕捉領域とを有し、ロックスライダはリリース位置のときには通路によって案内される操作部材の近位区域を通過領域を通して自由に通過させ、ロック位置のときには操作部材の係合領域を回転形状接合式に捕捉領域で包囲することが考えられる。回り止めの詳細は、たとえばここに明文をもって引用する特許文献1のように製作されていてよい。
【0024】
設計的に特別に好ましい器具の実施形態では、ばね部材はコイルばねとして製作されることが意図される。コイルばねとして構成されるばね部材の断面積は、第1の端部から第2の端部に向かって先細になることが意図されるのがさらに好ましい。特にテーパ状のばね、特に円錐台ばねが使用されることが考えられる。特にばね部材の半径方向対称の施工形態の場合、ばね部材は、ロックスライダと同軸にシャフトの中に配置されることが考えられる。
【0025】
コイルばねのテーパ状の施工形態は、ロックスライダの設計的な構造を簡素化する。特にロックスライダの横断面よりも細く構成される、コイルばねの先細になった端部は、そのために簡単な仕方により、ロックスライダの操作領域の下方で突合せ面に支持されていてよい。特にロックスライダの断面から側方へ突出する、コイルばねの広いほうの端部は、そのために通路の領域で支持面に支持されていてよい。ばねの下側端部および/または上側端部の支持手段、たとえばワッシャ、ウェブなどをこの実施形態では省略することができる。このことは、連結機構のコンポーネント複雑性と故障しやすさを低減する。
【0026】
モノポーラ式ないしバイポーラ式の器具が使用される場合、前述したように、そのために構成されたコンポーネントを介して電圧が結合体の内部で器具のシャフト管に伝達されることが意図されていてよい。上述した通り、ばね部材を支持するための支持面は、結合体の内部で電圧を通すコンポーネントに配置されていてよい。1つの単純な実施形態では、このコンポーネントは導電性の中実材料、たとえば特殊鋼などの金属で構成することができる。ばね部材も同じく特殊鋼などの導電性材料でできていれば、このコンポーネントに支持されるばねが同じく電圧で負荷される。
【0027】
このような種類の設計では、器具の電気的な安全性に関わる規格の遵守を考慮すべきである。コイルばねの上側端部がロックスライダの操作領域の下方で直接終わるので、結合体の内部の、特にロックスライダシャフトの内部の導電性のある点と、結合体の外面との間の間隔が縮小される。このような設計では、医療用器具の操作者の身体部分に電圧がフラッシオーバないし伝達される危険が生じる可能性がある。特にこの危険性は、操作領域に対する指の圧力でロックスライダを操作するときに生じる。
【0028】
電気信号は、特に、ロックスライダと、ロックスライダシャフトの内壁との間の間隙を通じて操作者の身体部分へ伝わることがある。この危険性は、たとえばロックスライダとロックスライダシャフトの内壁との間の間隙に、液体ないし水分が浸入した場合にいっそう強くなる。
【0029】
円錐ばねないし円錐台ばねとしてのコイルばねの設計的な施工形態により、操作者へ電圧が飛ぶ危険が少なくなる。このとき、操作領域の下方でロックスライダの突合せ面に支持される上側端部が、通路の領域で支持面に支持される下側端部に比べて先細になっていることが考えられる。
【0030】
テーパ状に施工されたコイルばねは、機械的な視点からも電気的な視点からも器具の機能安全性を改善する。
【0031】
1つの好ましい実施形態では、ロックスライダは少なくともばね部材のために設けられる操作領域と通路との間の区域で、ばね部材の第1の端部の横断面よりも、第1の方向では細く第2の方向では広い横断面を有することが意図されていてよい。この点に関して、ばね部材は少なくともそのために設けられるロックスライダの区域で、その第1の端部においてロックスライダの横断面から少なくとも部分領域で突出することが意図されることができる。
【0032】
ロックスライダは実質的に長方形の横断面を有することが考えられるのが好ましい。ロックスライダの横断面は、シャフト管の軸方向で、これに対して横向きの方向よりも長く構成されるのが特別に好ましい。すなわち、ロックスライダの横断面は長尺状に構成されるのが好ましく、ロックスライダは使用位置にあるときにシャフトの内部でその長辺をもって、結合体の長手方向に対して横向きに構成されるのが好ましい。このことは、ロックスライダの軸方向を向く開口部での操作部材のロックにとって設計上の利点を有している。
【0033】
本発明では、テーパ状に成形されたコイルばねを側方からロックスライダの破断部へ差し込み可能であることが意図されていてよい。特にコイルばねは、破断部を区切っているロックスライダの2つの向かい合う壁面で取り囲まれ、少なくとも第1の下側端部で、ロックスライダの向かい合う壁部の間で横向きに、破断部の縁部から突出することが意図される。このときばねは、破断部の縁部から突出する領域をもって、ロックスライダに対して定置に結合体に支承されるコンポーネントに対して支持される。このコンポーネントは、−前述したように−導電性のコンポーネントであってよい。ばねと接触する支持面は、電気信号ないし電圧で負荷されていてよい。
【0034】
医療用器具の良好な操作可能性のために、端部体は、結合体に連結されてロックスライダに保持される使用位置のときに、結合体に回転可能に支承されることが考えられる。このことは、シャフト管に対する、ないしはシャフト管および/または結合体と相対回転不能に結合されたエンドエフェクタに対する、ハンドグリップの回転を可能にする。
【0035】
図面には本発明の実施例が模式的に示されている。図面は次のものを示す: