特許第6559782号(P6559782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559782硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559782
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/64 20060101AFI20190805BHJP
   C08H 7/00 20110101ALI20190805BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20190805BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20190805BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20190805BHJP
【FI】
   C08G18/64 092
   C08H7/00
   C08G18/00 F
   C08G18/40 081
   C08G101:00
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-528099(P2017-528099)
(86)(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公表番号】特表2017-537194(P2017-537194A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(86)【国際出願番号】KR2015011828
(87)【国際公開番号】WO2016085145
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2017年5月25日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0165485
(32)【優先日】2014年11月25日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムン,スン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ダ ユン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジェウン イル
(72)【発明者】
【氏名】リ,サン モク
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン ラン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュン ミン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジン ファ
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/044234(WO,A1)
【文献】 特開平01−045440(JP,A)
【文献】 特開2011−184643(JP,A)
【文献】 特開2003−064147(JP,A)
【文献】 中国特許第101362818(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08H
C09H
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH4〜7の濃酸加水分解リグニン粉末、20〜500mgKOH/gの水酸基価を有するポリオール、及びイソシアネートを含む組成物の重合生成物である硬質ポリウレタンフォームであって、
前記濃酸加水分解リグニン粉末の含量が、前記ポリオールと濃酸加水分解リグニン粉末との混合物の総重量の1重量%ないし40重量%であり、
前記濃酸が、塩酸、硫酸、硝酸、及びルイス酸からなる群から選択され
前記ポリオールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、アジペート系ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−プロパンジオール、リン含有ポリオール、ハロゲン含有ポリオール、フェノール系ポリオール、ひまし油由来ポリオール、大豆油由来ポリオール、及びパーム油由来ポリオールからなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記濃酸加水分解リグニン粉末が、木質系バイオマスを濃酸で加水分解して得られる加水分解物から分離されたリグニンである、
硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記濃酸加水分解リグニン粉末の含量が、前記ポリオールと濃酸加水分解リグニン粉末との混合物の総重量の10重量%ないし30重量%であることを特徴とする請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記濃酸加水分解リグニン粉末の水酸基価が、前記ポリオールの水酸基価の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
前記濃酸加水分解リグニン粉末の水酸基価が、300mgKOH/gないし500mgKOH/gであることを特徴とする請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォームを含む物品。
【請求項6】
pH4〜7の濃酸加水分解リグニン粉末、20〜500mgKOH/gの水酸基価を有するポリオール、及びイソシアネートを、整泡剤、触媒、及び発泡剤の存在下で反応させる段階を含む、硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記濃酸加水分解リグニン粉末の含量が、前記ポリオールと濃酸加水分解リグニン粉末との混合物の総重量の1重量%ないし40重量%であり、
前記濃酸が、塩酸、硫酸、硝酸、及びルイス酸からなる群から選択され
前記ポリオールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、アジペート系ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−プロパンジオール、リン含有ポリオール、ハロゲン含有ポリオール、フェノール系ポリオール、ひまし油由来ポリオール、大豆油由来ポリオール、及びパーム油由来ポリオールからなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記濃酸加水分解リグニン粉末が、木質系バイオマスを濃酸で加水分解して得られる加水分解物から分離されたリグニンである、
硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項7】
前記濃酸加水分解リグニン粉末、ポリオール、及びイソシアネートを反応させる段階が、
濃酸加水分解リグニン粉末、ポリオール、整泡剤、触媒、及び発泡剤を含むプリミックスを準備する段階と、
前記プリミックスとイソシアネートとを反応させる段階と、を含むことを特徴とする請求項に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項8】
前記プリミックスを準備する段階の前に、濃酸加水分解リグニン粉末とポリオールとを混合して混合物を準備する段階を追加して含むことを特徴とする請求項に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項9】
前記濃酸加水分解リグニン粉末とポリオールとの混合が50℃ないし85℃の温度で、0.5ないし2時間行われることを特徴とする請求項に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業原料として、石油、石炭のような化石資源は、枯渇が予想されるので、永続的に使用されるバイオマス(biomass)への関心が高まっている。バイオマスのうち木質系バイオマスは、食糧資源のような他の競争関係の用途がないので、活用度が高い。木質系バイオマスは、セルロースなどの炭水化物とリグニンとからなる。リグニンは、木質系バイオマスの15〜20%を占める天然フェノール性高分子である。
【0003】
一方、硬質ポリウレタンフォームは、優秀な断熱特性及び難燃性を有する。従って、冷蔵庫、冷凍庫、一般建造物の断熱材、断熱パネルなどに汎用されている。硬質ポリウレタンフォームは、一般的に、ポリオールとイソシアネートとを触媒下で反応させて製造することができる。
【0004】
最近、硬質ポリウレタンフォームの製造に、バイオマスに由来するリグニンを使用する方法が試みられている。例えば、亜硫酸塩パルプ工程で得られるリグニンスルホン酸塩、ソーダパルプ工程で得られるアルカリリグニン、クラフト紙製造過程で得られるクラフトリグニンなどを利用することができる。
【0005】
しかし、前記リグニンは、ポリオールに溶解され難いか、あるいは過度な架橋結合を起こし、硬質ポリウレタンフォームの物性を低下させる。かような問題を解決するために、アセチル化またはエステル化など化学的改質を介して、リグニンの水酸基価を低くすることにより、ポリウレタン製造に利用されている。従って、化学的ポリオールの一部を代替しながらも、別途の化学的改質なしにリグニンを使用した硬質ポリウレタンフォームが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、新たな硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面によって、濃酸加水分解リグニン、ポリオール及びイソシアネートを含む組成物の重合生成物である硬質ポリウレタンフォーム、及び当該硬質ポリウレタンフォームを含む物品が提供される。
【0008】
他の一側面によって、濃酸加水分解リグニン、ポリオール及びイソシアネートを、整泡剤、触媒及び発泡剤の存在下で反応させる段階を含む硬質ポリウレタンフォームの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
バイオマスに由来する材料であるリグニンを使用し、さらなる化学的改質なしにも、優秀な物性を有する硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的な一具現例による硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法について、さらに詳しく説明する。
【0011】
一具現例による硬質ポリウレタンフォームは、濃酸加水分解リグニン、ポリオール及びイソシアネートを含む組成物を反応させて得られる重合生成物である。前記硬質ポリウレタンフォームは、一般リグニンを使用して硬質ポリウレタンフォームを製造するときに必要であったさらなる化学的改質なしにも、優秀な物性の硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。具体的には、前記硬質ポリウレタンフォームは、濃酸加水分解リグニンを使用することにより、従来の他の一般的なリグニンを使用して製造された硬質ポリウレタンフォームに比べて、製造工程が短縮され、密度、圧縮強度、難燃性などが向上する。
【0012】
前記硬質ポリウレタンフォームに使用される濃酸加水分解リグニンは、木質系バイオマスを濃酸によって加水分解して得られる、加水分解物から分離したリグニンを意味する。例えば、前記濃酸加水分解リグニンは、次のような方法で準備することができる。まず、木質系バイオマスを濃酸と混合する。次に、前記混合物に過量の水を添加して希釈した後、残留物を濾過する。次に、前記残留物を水で洗浄し、pHが中性である残留物を得る。前記中性残留物を乾燥させ、リグニン乾燥粉末を得る。
【0013】
例えば、前記乾燥粉末状に得られる濃酸加水分解リグニンのpHは、4ないし7でもある。前記範囲のpHを有する濃酸加水分解リグニンを使用することにより、向上した物性を有する硬質ポリウレタンフォームが得られる。前記濃酸加水分解リグニンのpHが3未満であるならば、製造された硬質ポリウレタンフォームが鉄筋保護用として使用されるとき、腐食の問題が起こりうる。
【0014】
前記濃酸加水分解リグニンの製造に使用される濃酸は、塩酸でもあるが、必ずしもそれに限定されるものではなく、硫酸、硝酸、リン酸、ルイス酸などの他の酸であって、当該技術分野で使用することができるものであり、硬質ポリウレタンフォームの物性を低下させないものであるならば、いずれも可能である。
【0015】
前記硬質ポリウレタンフォームの製造に使用される濃酸加水分解リグニンの含量は、添加されるポリオールと濃酸加水分解リグニンとの混合物総重量対比で、1重量%ないし40重量%でもある。具体的には、前記ポリオールと濃酸加水分解リグニンとの混合物において、濃酸加水分解リグニンの含量は、前記ポリオールと濃酸加水分解リグニンとの混合物総重量の10重量%ないし35重量%でもある。さらに具体的には、前記ポリオールと濃酸加水分解リグニンとの混合物において、濃酸加水分解リグニンの含量は、前記ポリオールと濃酸加水分解リグニンとの混合物総重量の10重量%ないし30重量%でもある。一層具体的には、前記ポリオールと濃酸加水分解リグニンとの混合物において、濃酸加水分解リグニンの含量は、前記ポリオールと濃酸加水分解リグニンとの混合物総重量の10重量%ないし20重量%でもある。前記濃酸加水分解リグニンの含量が40重量%を超えば、ポリオールと濃酸加水分解リグニンとの混合物の粘度が過度に上昇して固くなるので、硬質ポリウレタンフォームの製造が困難になる。
【0016】
前記硬質ポリウレタンフォームに使用される濃酸加水分解リグニンの水酸基価は、前記ポリオールの水酸基価範囲に含まれる。すなわち、前記濃酸加水分解リグニンは、硬質ポリウレタンフォームの製造に使用されるポリオールと同一範囲の水酸基価を有することができる。前記濃酸加水分解リグニンがポリオールと同一範囲の水酸基価を有することにより、濃酸加水分解リグニンの使用による硬質ポリウレタンフォームの物性低下を防止することができる。
【0017】
前記硬質ポリウレタンフォームに使用される濃酸加水分解リグニンの水酸基価は、500mgKOH/g以下でもある。具体的には、前記硬質ポリウレタンフォームに使用される濃酸加水分解リグニンの水酸基価は、300mgKOH/gないし500mgKOH/gでもある。前記濃酸加水分解リグニンの水酸基価が300mgKOH/g未満であるならば、濃酸加水分解リグニンとポリオールとの混合物粘度が過度に上昇するか、あるいは硬質ポリウレタンフォームの機械的強度が低下してしまう。前記濃酸加水分解リグニンの水酸基価が500mgKOH/g超過であるならば、未反応アルコールが多い分子量分布を有することになるので、ポリウレタンの脆性が弱化され、濃酸加水分解リグニンとポリオールとの混合物と反応するイソシアネートの使用量が増加し、ポリオールとイソシアネートとのモル比が滴定範囲を超えてしまう。
【0018】
例えば、前記濃酸加水分解リグニン、ポリオール及びイソシアネートを利用して製造される硬質ポリウレタンフォームの密度は、25.0kg/m以上でもある。例えば、硬質ポリウレタンフォームの密度は、25.0kg/mないし70kg/mでもある。前記硬質ポリウレタンフォームの密度が25.0kg/m未満であるならば、難燃性または機械的強度が低下してしまう。前記硬質ポリウレタンフォームの密度が70kg/m以上であるならば、費用が過度にかさんでしまう。
【0019】
前記濃酸加水分解リグニン、ポリオール及びイソシアネートを含む組成物を使用して製造される硬質ポリウレタンフォームの圧縮強度は、0.005kgf/mm以上でもある。望ましくは、0.005kgf/mmないし0.05kgf/mmでもある。前記硬質ポリウレタンフォームの圧縮強度が0.005kgf/mm未満であるならば、難燃性または機械的強度が低下してしまう。前記硬質ポリウレタンフォームの圧縮強度が0.05kgf/mm超過であるならば、費用が過度にかさんでしまう。
【0020】
他の具現例による、前記硬質ポリウレタンフォームを含む物品が提供される。前記物品は、ポリウレタン発泡成形品でもある。前記成形品は、自動車部品、機械部品、産業部品、電線、ケーブル、ロール、ホース、チューブ、ベルト、フィルム、シート、ラミネート物品、コーティング、接着剤、シーリング材、スポーツ用品、レジャー用品、靴関連部品、雑貨、看護用品物、住宅用品、医療、建材、土木関連、防水材、包装材、保温材、保冷材、スラリーパウダーなどでもある。また、前記ポリウレタンフォームの一面または両面に、適当な面材を設けることができる。前記面材は、例えば、紙、木材、石膏ボード、樹脂、アルミニウムホイル、鋼板などでもある。
【0021】
他の具現例による硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、濃酸加水分解リグニン、ポリオール及びイソシアネートを、整泡剤、触媒及び発泡剤の存在下で反応させる段階を含む。前記製造方法によって、向上した密度、圧縮強度などの物性を有する硬質ポリウレタンフォームが製造される。
【0022】
前記製造方法において、濃酸加水分解リグニン、ポリオール及びイソシアネートを反応させる段階が、濃酸加水分解リグニン、ポリオール、整泡剤、触媒及び発泡剤を含むプリミックスを準備する段階と、前記プリミックスとイソシアネートとを反応させる段階と、を含んでもよい。
【0023】
前記製造方法において、プリミックスを準備する段階前、濃酸加水分解リグニンとポリオールとを混合して混合物を準備する段階を追加して含んでもよい。
【0024】
前記製造方法において、濃酸加水分解リグニンとポリオールとの混合が、50℃ないし85℃の温度で、0.5ないし2時間行われる。前記温度で混合することにより、ポリオールの粘度が低下し、濃酸加水分解リグニンとポリオールとの混合が容易になる。濃酸加水分解リグニンとポリオールとが完全に混合された後には、添加される他の物質の揮発を抑制するために、45℃以下に冷却させることができる。
【0025】
前記製造方法において、濃酸加水分解リグニンの含量は、前述の通りである。
【0026】
前記製造方法に使用されるポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、低分子ポリオール、難燃性ポリオール、アクリルポリオール、植物由来ポリオールなどが使用されるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で硬質ポリウレタンフォームの製造に使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0027】
例えば、ポリエーテルポリオールとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが使用される。例えば、ポリエステルポリオールとして、アジペート系ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、芳香族ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールなどが使用される。前記アジペート系ポリオールとして、エチレングリコールアジペート、ジエチレンアジペートグリコール、ブチレングリコールアジペート、トリメチロールプロパン/ジエチレングリコールアジペートなどが使用される。例えば、ポリオレフィン系ポリオールとして、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、水素添加イソプレンポリオールなどが使用される。低分子ポリオールとして、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−プロパンジオールなどが使用される。難燃性ポリオールとして、リン含有ポリオール、ハロゲン含有ポリオール、フェノール系ポリオールなどが使用される。植物由来ポリオールとして、ひまし油、大豆油(soybean oil)、パーム油(palm oil)などに由来したポリオールが使用される。前記ポリオールは、単独、あるいは二種以上の混合物でもっても使用される。
【0028】
前記ポリオールの分子量は、400〜8,000でもある。具体的には、前記ポリオールの分子量は、450〜5,000でもある。さらに具体的には、前記ポリオールの分子量は、500〜3,000でもある。前記ポリオールの分子量が400未満であるならば、ポリウレタンの柔軟性や耐熱性が低下してしまう。前記ポリオールの分子量が8,000超過であるならば、他のポリオールやイソシアネートとの相溶性が低下し、均一なポリウレタンを得ることができない。
【0029】
前記ポリオールの水酸基価は、20〜500mgKOH/gでもあり、ポリオール1分子当たり官能基数が2.0ないし8.0でもある。
【0030】
前記製造方法において、イソシアネートのイソシアネートインデックスが50ないし500でもある。
【0031】
イソシアネートインデックス=100x(使用されたNCOの実際含量)/(要求される理論的NCO含量)
【0032】
具体的には、50ないし300でもある。さらに望ましくは、50ないし200でもある。前記インデックスが500を超えば、硬質ポリウレタンフォームの脆性が高くなり、接着強度が低下してしまう。前記インデックスが50未満であるならば、硬質ポリウレタンの難燃性及び圧縮強度が低下してしまう。
【0033】
前記製造方法に使用されるイソシアネートは、1分子内に、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートであるならば、特別に限定されるものではない。例えば、該ポリイソシアネートは、脂肪族系イソシアネート、脂環族系イソシアネート、芳香族系イソシアネート、またはそれらの変性体などでもある。脂肪族系イソシアネートとして、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネートなどが使用される。脂環族系イソシアネートとして、例えば、イソホロンジイソシアネートが使用される。芳香族系イソシアネートとして、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェートなどが使用される。イソシアネート変性体として、例えば、ウレタンプレポリマー、ヘキサメチレンジイソシアネートビューレット、ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー、イソホロンジイソシアネートトリマーなどが使用される。また、ひまし油などの植物由来イソシアネートも使用される。前記イソシアネートは、単独あるいは2種以上の混合物でもっても使用される。
【0034】
前記製造方法に使用される触媒は、ウレタン化触媒であって、第3級アミンが使用される。また、三量化(trimerization)反応促進触媒としては、金属塩及び/または第4級アンモニウム塩が使用される。イソシアネートを使用する場合、ウレタン化触媒と、三量化反応促進触媒とを併用して使用することができる。例えば、第3級アミンと、金属塩及び/または第4級アンモニウム塩を併用して使用することができる。
【0035】
第3級アミンとして、例えばN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノ−プロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール、N−メチル−N−(N,N−ジメチルアミノエチル)エチルアルコールアミンなどが使用される。しかし、それらに限定されるものではなく、当該技術分野でアミン触媒として使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0036】
前記金属塩としては、カリウム塩、スズ塩、鉛塩などが使用される。例えば、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、二ブチルスズジラウレート、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、2−エチルヘキサン酸ビスマスなどが使用される。しかし、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、金属触媒として使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0037】
第4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化テトラメチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物;水酸化テトラメチルアンモニウム塩などのテトラアルキルアンモニウム水酸化物;テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩などのテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類;N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミンなどの第3級アミンと、炭酸ジエステル類とを反応させて得られる4級アンモニウム炭酸塩を、2−エチルヘキサンと陰イオン交換反応させることによって得られる4級アンモニウム化合物などが使用される。
【0038】
触媒の使用量は、濃酸加水分解リグニンとポリオールとの混合物100重量部に対して、0.1ないし5重量部でもあるが、必ずしもそれに限定されるものではなく、向上した物性の硬質ポリウレタンフォームを製造することができる範囲内で適切に調節される。前記触媒の使用量によって、濃酸加水分解リグニンとポリオールとの混合物と、イソシアネートとの反応性を制御することができる。すなわち、それらの混合開始時から肉眼で発泡が終わるまでの時間を調節することができる。
【0039】
前記製造方法に使用される発泡剤は、例えば、HCFC−141 b、HCFC−142 b、HCFC−124、HCFC−22などのHCFC系発泡剤;1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(HFE−236pc)、1,1,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル(HFE−254pc)、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロプロピルメチルエーテル(HFE−347mcc)などのHFC系発泡剤;ブタン、ヘキサン、シクロヘキサン、n−ペンタン、iso−ペンタン、シクロペンタンなどの炭化水素系発泡剤;水;空気、窒素、炭酸ガスなどの不活性ガスなどでもある。しかし、それらに限定されるものではなく、当該技術分野で発泡剤として使用されるものであるならば、いずれも可能である。不活性ガスの添加状態は、液体状態、超臨界状態、亜臨界状態のうちいずれでもよい。水以外の発泡剤を使用する場合、一種単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用することもできる。
【0040】
発泡剤として水を使用する場合、水の含量は、濃酸加水分解リグニン及びポリオールの混合物100重量部に対して、0.5ないし10重量部でもある。具体的には、0.5ないし7重量部でもある。そして、発泡剤としてペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタン及び/またはシクロペンタン)を使用する場合、ペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタン及び/またはシクロペンタン)の含量は、濃酸加水分解リグニン及びポリオールの混合物100重量部に対して、0.5ないし60重量部でもある。具体的には、0.5ないし50重量部でもある。
【0041】
前記製造方法に使用される整泡剤(界面活性剤)として、例えば、シリコン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤などを使用することができる。しかし、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、整泡剤として使用することができるものであるならば、いずれも可能である。具体的には、良好な気泡を形成するために、シリコン系整泡剤を使用することができる。
【0042】
シリコン系整泡剤としては、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとのブロックコポリマーを含む化合物を使用することができる。例えば、東レ・ダウコーニング社製のSZ−1671、SZ−1718、SH−193、SZ−1642など、モメンティブ社製のL−6884、L−5440、L−5420など、エボニック社製のB8443、B8490、B8460などを使用することができる。
【0043】
整泡剤の含量は、濃酸加水分解リグニン及びポリオールの混合物100重量部に対して、0.1ないし10重量部でもある。例えば、整泡剤含量は、濃酸加水分解リグニン及びポリオールの混合物100重量部に対して、0.3ないし5重量部でもある。
【0044】
前記製造方法において、難燃剤を選択的に使用することができる。
【0045】
使用される難燃剤は、例えば、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスクロロプロピルホスフェート(略称、TCPP)、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、ポリリン酸などのリン酸エステル、亜リン酸エステルなどのリン酸化合物、塩素化パラフィンなどでもある。
【0046】
難燃剤の使用量は、得られる硬質フォームにおいて、優秀な機械物性と難燃性とをいずれも確かに備えるために、濃酸加水分解リグニン及びポリオールの混合物100重量部に対して、10ないし60重量部でもある。例えば、難燃剤の含量は、濃酸加水分解リグニン及びポリオールの混合物100重量部に比して、20ないし40重量部でもある。
【0047】
前記製造方法において、その他配合剤を追加して使用することができる。
【0048】
前記製造方法において、濃酸加水分解リグニン、ポリオール、イソシアネート、触媒、発泡剤、整泡剤以外に、任意の配合剤を追加して使用することができる。該配合剤として、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの充填剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤などの老化防止剤;可塑剤、着色剤、抗カビ剤、消泡剤、分散剤、変色防止剤などを使用することができる。
【実施例】
【0049】
以下の実施例及び比較例を介して、本発明についてさらに詳細に説明する。ただし、実施例は、本発明を例示するためのものであり、それらだけによって、本発明の範囲が限定されるものではない。
【0050】
(硬質ポリウレタンフォームの製造)
【0051】
実施例1:松の木由来の濃酸加水分解リグニン
【0052】
(濃酸加水分解リグニンの製造)
【0053】
松の木を、木質系バイオマス(lignocellulosic biomass)として使用した。松の木を、直径0.8mm以下に粉砕した原料に、42%塩酸を1:5(w/v)の重量比で混合した後、20℃で5時間撹拌した後、過量の水を投入して塩酸を希釈した。次に、前記希釈液をステンレススチールシーブ(sieve)(325−ASTM)を使用して、残留物を濾過した。濾過された残留物がpH4以上の中性になるまで水で洗浄した後、70℃オーブンで乾燥させ、塩酸リグニン(hydrochloric acid-hydrolyticlignin)を得た。前記塩酸リグニンに含まれた糖成分は、5重量%未満であり、塩素含量は、1重量%以下であった。
【0054】
(プリミックス製造)
【0055】
反応器に、前述のところで製造された濃酸加水分解リグニン10gと、商用液状ポリオール(Lupranol(登録商標)3422、ポリプロピレングリコール、Mw=600、BASF)90gを投入した。前記濃酸加水分解リグニンと商用ポリオールとを、85℃で1時間300rpmで撹拌し、濃酸加水分解リグニンとポリオールとの混合物を準備した。前記混合物の温度を45℃に冷却させた。前記混合物100gに、シリコン整泡剤(TEGOSTAB(登録商標)B−8409、Evonik Industries)1.5g、主触媒としてアミン触媒(Dabco(登録商標)33−LV、Air Products and Chemicals, Inc.)2.0g、補助触媒としてスズ触媒(DBTDL(dibutyltin dilaurate)Sigma)0.3gを混合した後、発泡剤としてn−ペンタン28.5gを添加し、プリミックスを準備した。それらの具体的な組成は、下記表1に開示する。
【0056】
(硬質ポリウレタンフォームの製造)
【0057】
前記プリミックスに、イソシアネート(polymeric MDI、Suprasec 5005、NISCHEM)119gを添加し、硬質ポリウレタンフォームを製造した。イソシアネートの添加量は、イソシアネートインデックスが100になるように、プリミックスの水酸基及び発泡剤添加量によって決定した。
【0058】
プリミックスとイソシアネートとを、常温にあるポリエチレン容器に迅速に投入し、3,000rpmで3秒間撹拌し、1L容器中で発泡させ、硬質ポリウレタンフォームを製造した。
【0059】
実施例2〜10
【0060】
硬質ポリウレタンフォームに使用される成分の組成を変更したことを除いては、実施例1と同一方法で硬質ポリウレタンフォームを製造した。具体的な組成は、下記表1に示した。
【0061】
比較例1
【0062】
濃酸加水分解リグニンを含まず、商用液状ポリオール100gを使用したことを除いては、実施例1と同一方法で硬質ポリウレタンフォームを製造した。
【0063】
比較例2
【0064】
濃酸加水分解リグニン含量を50gに変更したことを除いては、実施例1と同一方法で硬質ポリウレタンフォームを製造した。
【0065】
【表1】
【0066】
前記表1において、各成分の単位は、gである。実施例3,7,10においては、発泡剤として、n−ペンタンの代わりに水を使用した。
【0067】
評価例1:水酸基価測定
【0068】
ASTM D−4274−99方法によって、濃酸加水分解リグニンの水酸基を測定した。水酸基価は、ポリオール1gから得られたアセチル化合物に結合されている酢酸の中和に必要なKOHの重量(mgKOH/g)と定義される。
【0069】
濃酸加水分解リグニン0.2g及びブランク(blank)に、それぞれピリジン10mlと無水酢酸1.3mlとを添加した後、98±2℃の水槽で2時間反応させた後、常温に冷却させた。蒸溜水30mlを添加しながら、反応液をコニカルチューブ(conical tube)に移し入れ、45.5mlになるように、蒸溜水をさらに添加した後、上澄み液を回収し、さらに沈殿物に蒸溜水40mlを添加して遠心分離した後、上澄み液をさらに回収し、回収された上澄み液を集めた。前記上澄み液に、1%フェノールフタレイン溶液1mlを添加した後、撹拌しながら、0.5N NaOH溶液で滴定しながら、溶液が薄いピンク色になるまで、添加されたNaOHの量を測定した。前記NaOHの添加量から、下記数式2を使用して、水酸基価を計算した。
【0070】
(数式2)
水酸基価(mgKOH/g)=[(ブランクのNaOH投入量(ml)−リグニンのNaOH投入量(ml))×NaOH溶液の濃度(N)×56.1]/リグニンの添加量(g)
【0071】
実施例1の松の木由来の濃酸加水分解リグニンの水酸基価は、350mgKOH/gであり、実施例13のアカシア由来の濃酸加水分解リグニンの水酸基価は、419mgKOH/gであって。硬質ポリウレタンフォーム製造に使用される商用ポリオールの水酸基価は、350−560mgKOH/gレベルであり、前記濃酸加水分解リグニンの水酸基価は、商用ポリオールの水酸基価範囲内である。
【0072】
評価例2:反応性
【0073】
プリミックスとイソシアネートとの混合開始時刻を0秒にし、発泡原液組成物で泡が起き始めるまでの時間をクリームタイム(cream time)と定め、発泡原液組成物が発泡し始め、硬質フォームの上昇が停止する時間をゲルタ(gel time)と定めた。測定結果を下記表2に示した。クリームタイム及びゲルタイムが短いほど、反応性が良好であるということを示す。
【0074】
評価例3:密度(カップフリー密度)測定
【0075】
得られた硬質フォームのコア部を、縦70mm×横70mm×厚み70mmである立方体に切断し、重量及び体積から、密度(単位:kg/m)を計算して下記表2に示した。
【0076】
評価例4:圧縮強度測定
【0077】
JIS K−6400に準する方法で測定し、試験片厚が25%圧縮された時点の値を示した。
【0078】
【表2】
【0079】
前記表2から分かるように、実施例の硬質ポリウレタンフォームは、比較例1のリグニンを含まない硬質ポリウレタンフォームと類似した物性を示し、反応性は、向上した。
【0080】
比較例2においては、プリミックスの粘度が上昇し、硬質ポリウレタンフォームが思うように形成されなかった。
【0081】
従って、濃酸加水分解リグニンに対するさらなる化学的改質なしにも、ポリオールの一部を代替し、硬質ポリウレタンフォーム製造が可能であるということを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0082】
バイオマスに由来する材料であるリグニンを使用して、さらなる化学的改質なしにも、優秀な物性を有する硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。