【文献】
LONG, Yong and FESSLER, Jeffrey A.,“Multi-Material Decomposition Using Statistical Image Reconstruction For Spectral CT”,IEEE Transactions on Medical Imaging,米国,2014年 8月,Vol. 33, No. 8,p. 1614 - 1626,URL,http://dx.doi.org/10.1109/TMI.2014.2320284
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも第1の物質及び第2の物質を含む検体と相互作用するX線放射の異なるエネルギー値に対応する、イメージャによって取得された少なくとも2つの投影画像を受け取る入力ポートと、
前記少なくとも2つの投影画像を、前記検体の前記第1の物質の分布又は前記第2の物質の分布を表す再構成された少なくとも1つの画像に再構成する画像再構成器と
を備える画像処理システムであって、
前記画像再構成器の動作は、レギュラライザ関数を含む正則化付きのオブジェクト関数によって駆動され、
前記レギュラライザ関数は、前記検体の少なくとも一部の中の少なくとも前記第1の物質の所定の量を表す物質パラメータを持つ少なくとも1つの物質項を含む
画像処理システム。
前記画像再構成器は、反復再構成アルゴリズムを実施し、前記第1の物質又は前記第2の物質の推定量は、前記画像再構成器によって、1回又は数回の反復で計算される、請求項2に記載の画像処理システム。
少なくとも第1の物質及び第2の物質を含む検体と相互作用するX線放射の異なるエネルギー値に対応する、イメージャによって取得された少なくとも2つの投影画像を受け取るステップと、
前記少なくとも2つの投影画像を、前記検体の前記第1の物質の分布又は前記第2の物質の分布を表す再構成された少なくとも1つの画像に再構成する再構成動作を実行するステップと
を含む画像処理方法であって、
前記再構成動作は、レギュラライザ関数を含む正則化付きのオブジェクト関数によって駆動され、
前記レギュラライザ関数は、前記検体の少なくとも一部の中の少なくとも前記第1の物質の所定の量を表す物質パラメータを持つ少なくとも1つの物質項を含む
画像処理方法。
処理ユニットによって実行される場合、請求項13に記載の画像処理方法のステップを実行する、請求項1乃至12の何れか一項に記載の画像処理システムを制御するためのコンピュータプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のとおり、スペクトルX線断層撮影法を使用すれば、物体の物理特性を再構成することが可能である。このコンテキストにおいて、例えば、いわゆる物質マップを構築するためのある関心の物質の空間分布は大きな関心事である。非限定的な例は例えば、「ヨウ素マップ」などの「造影剤マップ」である。このような造影剤は、例えば軟組織の画像コントラストを増大させるために画像化の前又は画像化中に投与される。しかしながら、反復再構成を使用しても、再構成されたこのような物質マップの品質が比較可能なほどに不良であることが依然としてある。
【0004】
したがって、当技術分野では、代替の画像処理法又は関連システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のこの目的は、独立請求項の主題によって解決され、従属請求項には追加の実施形態が含まれている。
【0006】
以下で説明する本発明の態様は、画像処理法、コンピュータプログラム製品及びコンピュータ可読媒体にも等しく適用されることに留意すべきである。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、
少なくとも第1の物質を含む検体(specimen)のイメージャ(imager)によって取得された少なくとも1つの入力画像を受け取る入力ポートと、
少なくとも1つの入力画像を、検体の前記第1の物質の分布又は第2の物質の分布を表す再構成された少なくとも1つの画像に再構成するように構成された画像再構成器(image reconstructor)と
を備え、
画像再構成器の動作が、レギュラライザ関数を含む正則化付きのオブジェクト関数(objective function)によって駆動され、
レギュラライザ関数が、検体の少なくとも一部の中の少なくとも前記第1の物質の量を表すパラメータを持つ少なくとも1つの物質項を含む
画像処理システムが提供される。
【0008】
言い換えると、本明細書で提案されるレギュラライザ関数は、再構成された画像ごとの物質の再構成された量を正則化若しくは「制御」し、又は少なくとも物質の再構成された量に影響を与えて、使用された画像化モダリティ(imaging modality)の視野の中に画像取得時に存在する既知の物質量又は予め定められた物質量との一致(conformity)を「強化する」ように機能する。
【0009】
一実施形態では、複数の異なる関心の物質タイプ(すなわち第1、第2、第3など)が検体中に存在する。レギュラライザ関数は、この多物質ケースにおいて、ある物質タイプ又はそれぞれの物質タイプに対して1つ又は複数の、複数の異なる物質項を含むことができるため、提案のシステムはこのケースに対して適合可能である。
【0010】
一般に、全ての関心の物質が正則化される(すなわち、関心の物質の量は、レギュラライザ関数の対応するそれぞれの物質項の制約条件として含まれる)が、このことが全ての実施形態で必ず達成されるとは限らない。例えば、いくつかの実施形態では、関心の物質の部分集合だけが正則化される。さらに、いくつかの実施形態では、1つの物質、例えば第1の物質の正則化を希望するが、実際の関心の物質が第2の物質であり、このシステムによって再構成及び/又は出力されるのは第2の物質である。しかしながら、一般に、正則化された全ての物質に対して再構成することが有益である。
【0011】
一実施形態によれば、物質項が、前記第1の物質の推定される量(以後、推定量)の前記物質パラメータからの偏差を表す。
【0012】
一実施形態によれば、検体の少なくとも1つの入力画像が視野の中で取得され、レギュラライザ関数の物質項が、前記検体の一部だけを表す画像要素に制限される。この制限は、例えば、再構成する物質画像中にクロストーク信号を誘起することが知られており、したがって造影剤の再構成された量の任意の画像ベースの測定をゆがめる可能性がある物質又は組織タイプを表すあるボクセル領域をマスクすることによって達成することができる。
【0013】
一実施形態によれば、画像再構成器が、反復再構成アルゴリズムを実施するように構成されており、前記1種又は数種の材料の推定量が、画像再構成器によって、1回又は数回の反復で計算される。
【0014】
一実施形態によれば、イメージャが、エネルギー分解検出器(energy resolving detector)を有するスペクトルイメージャであり、少なくとも1つの入力画像が、前記エネルギー分解検出器において検出された画像信号から得られたものである。
【0015】
一実施形態によれば、イメージャが、異なる電圧で動作可能なX線源を含み、少なくとも1つの入力画像が、前記イメージャの検出器において検出された前記異なる電圧に対する画像信号から得られたものである。
【0016】
一実施形態によれば、少なくとも1つの入力画像が検体の投影画像である。
【0017】
一実施形態によれば、イメージャが、コンピュータ連動断層撮影スキャナ又はCアームX線システムである。
【0018】
一実施形態によれば、第1の物質が、前記イメージャの視野の中の前記検体の一部分に限局されている。
【0019】
一実施形態によれば、第1の物質が画像化造影剤である。
【0020】
一実施形態によれば、造影剤が、検体中にある1つ又は複数の薬物溶出非天然体(drug−eluting non−native body)に含まれる。
【0021】
一実施形態によれば、造影剤が、検体中にあるステント構造体に含まれる。
【0022】
一実施形態によれば、画像処理システムが、少なくとも1つのパラメータをユーザが指定することを可能にするように構成されたユーザインタフェースを備える。
【0023】
次に、以下の図面を参照して、本発明の例示的な実施形態を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、画像化装置の略ブロック図を示す。この装置は、画像化モダリティIM及び画像処理システム構成要素IPSを含む。
【0026】
画像化モダリティIMは、検体(例えば人間若しくは動物の患者又は手荷物などの無生物)の取得された入力画像を供給し、後により詳細に説明する画像処理システム構成要素IPSによって前記入力画像を処理することができる。本明細書で予見される画像化モダリティIMのタイプは、CTスキャナ、インターベンショナルCアームイメージャなどのX線画像化モダリティを含む。X線ベースの画像化モダリティはX線源XR及び検出器Dを含む。画像取得中、検体(図示せず)は、画像化モダリティのX線源と検出器Dとの間の検査領域にある。源XRからX線放射が発射され、このX線放射は、検体と相互作用し(例えば検体によって減衰し)、次いで検出器Dにおいて電気信号として検出される。次いで、変換回路が前記電気信号を入力画像に変換する。本明細書では、他の非X線画像化モダリティ、例えばPET(陽電子断層撮影)イメージャ及び/又はMR(磁気共鳴)イメージャも同様に予見される。
【0027】
検体の入力画像は、少なくとも1つのある関心の領域(region of interest:ROI)を画像化するために、1つ又は複数の視野(field−of−view:FOV)において取得される。医療のコンテキストでは、このような入力画像の取得が、医療介入(medical intervention)中などに実施される。例示的な介入は、TACE(trans−catheter arterial chemoembolization:肝動脈化学塞栓術)又はPCI(percutaneous coronary intervention:経皮的冠状動脈形成術)である。少なくともROIは普通、水、脂肪などの異なる物質タイプからなる。画像取得中のROI内にはしばしば、画像コントラストを高めるために予め投与された1種又は数種の画像化造影剤(例えばヨウ素及び/又はガドリニウム)などの1種又は数種の異物も存在する。
【0028】
ROI内のこれらの関心の物質(具体的には、限定はされないが、1種又は数種の画像化造影剤)の対応するそれぞれの分布をより良好に画像化することができるように、一実施形態では、画像化モダリティIMが、スペクトル画像化用に構成される。スペクトル画像化の例は、スペクトルCT/Cアーム又はCT/Cアームデュアル/マルチエネルギー画像化である。
【0029】
スペクトル(又はマルチエネルギー)Cアーム又はCTでは、スキャンされた物体の異なるX線スペクトルに関する減衰特性を表す多数の投影画像が取得される。スペクトル画像化はさまざまな方式で達成することができ、それらの方式は全て本明細書において予見されている。例えば、CT又はCアームモダリティ(又は「イメージャ」)の検出器Dは、所与の投影方向の1回の照射(exposure)でエネルギー値ごとの投影画像を取得することを可能にする光子計数型の検出器とすることができる。光子計数検出器のコンテキストでは、これらのエネルギー値がしばしば「ビン(bin)」と呼ばれる。或いは、イメージャIMが、異なる電圧で動作可能なX線源を含み、投影方向ごとに多数回の照射(異なる電圧ごとに1回又は数回)で、それに応じてX線管を切り換えることによって、物質投影画像が取得される。X線管電圧を切り換えるCT又はCアーム画像化では、異なる投影方向から多数のエネルギー画像が取得される。光子計数検出器を使用するCT又はCアーム画像化では、複数の入力画像、すなわち異なる投影方向に対する1つ又は複数の画像が存在し、投影方向ごとに、異なるエネルギー値又は間隔に対して2つ以上のエネルギー画像が存在する。
【0030】
使用するスペクトル画像化技法に関わらず、これらの多数の投影入力画像に基づいて、物体の物理特性を再構成することができる。例えば、光電効果散乱若しくはコンプトン散乱の寄与、又は含水量、骨含量、ヨウ素含量などの異なる物質を知るために、断面画像を再構成したいことがある。ビン又は異なる管電圧の数は、再構成したい基礎物質又は物理特性の最大数に対応する。普通は、2つのビン又は2つの異なる電圧が使用されるが(そのため時に「デュアル」エネルギー画像化と呼ばれる)、本明細書では、3、4、5など任意の数のビン/電圧、又は実際には任意の整数個のエネルギービン/電圧が予見されている。
【0031】
画像再構成は、画像処理システムIPSによって実行される。そのために、画像処理システムIPSは、画像再構成構成要素(image reconstruction component)RECONを含み、一実施形態では、画像再構成構成要素RECONの動作が、適当なオブジェクト関数Lによって駆動される数値最適化スキームに基づく。
【0032】
このオブジェクト関数は正則化を含む。すなわち、このオブジェクト関数は、正則化関数又はペナルティ(penalty)関数Rを関数成分として含む。正則化関数(「レギュラライザ(regularizer)」とも呼ばれる)は、得られる解(solution)(すなわち再構成された1つ又は複数の画像)の1つ又は複数の望ましい特性を強化するために使用される。レギュラライザRの構造及び強化される特性については後により詳細に説明する。
【0033】
動作時、画像処理システムIPSは、その入力ポートINで、1つ又は複数の入力画像を受け取る。本明細書ではこの1つ又は複数の入力画像をひとまとめにして「測定データ」yと表現する。次いで、変換器(transformer)Tが、適当な解法アルゴリズム(solution algorithm)を使用して動作して、一実施形態では、3D「画像ドメイン」内で解(すなわち物体の物理特性の空間分布を表す画像)を反復的に探索する。この探索アルゴリズムは、オブジェクト関数Lを改良する解を返すように構成される。言い換えると、Lがこの最適化を「駆動する」。一実施形態では、この探索動作が、1つ又は複数の中間画像μ
iを経て反復することを含むが、本明細書では、正則化を含む反復なしの1ステップ解法アルゴリズムも予見されている。下付き添字iは反復回数を表す。この再構成動作の終わり(例えば1回又は数回の反復の終わり)に、物質mごとの再構成された1つ又は複数の画像μ
m(例えばそれぞれ水分布画像μ
w及び造影剤分布画像μ
I)が、出力ポートOUTに出力される。
【0034】
この再構成動作によって得られた(時に「物質マップ」、例えばヨウ素マップと呼ばれる)対応するそれぞれの1つ又は複数の物質画像μ
mは、ROI内の対応するそれぞれの物質の空間分布についての手がかりを、ユーザ(例えばインターベンショナルラジオロジーの専門医(interventional radiologist))に提供する。次いで、例えばステントの適切な展開を確認するための介入中に、出力された3Dボリューム再構成(又はそれを横切る断面図)を、表示ユニット上に、所望の1種類の物質mについて別々に表示し、又は一緒に表示することができる。或いは、再検討又は教育目的で、それらの3Dボリューム再構成を介入後に表示してもよい。
【0035】
本出願の出願人は、高忠実度(high fidelity)出力画像を与えることが観察された新たな種類の正則化関数Rを見出した。本明細書では、再構成器RECONの基礎をなすオブジェクト関数の中に、以前の知識をモデル化することが提案される。具体的には、ペナライザ(penalizer)又はレギュラライザRの構造中に以前の知識をモデル化する。より具体的には、本明細書では、この再構成操作に、再構成するボリューム内の1種又は数種の関心の物質のアプリオリな既知量を組み込むことが提案される。この新しく提案された正則化関数は、ある関心の物質(例えば造影剤)の再構成された量と、入力画像の取得中にイメージャのFOV内に存在することが分かっている前記物質の既知量との差にペナルティを課すように構成されている。
【0036】
次に、
図2の流れ図で、提案の画像処理システムIPSの動作をより詳細に説明する。
【0037】
ステップS210で、エネルギー分解された(投影画像などの)入力画像yを受け取る。それらの入力画像は、上の
図1で説明した適当なスペクトル画像化モダリティによって取得されたものである。
【0038】
次いで、ステップS220で、異なるエネルギーに対するそれらの入力画像(したがって関心の物質)を反復再構成アルゴリズムを使用して再構成する。この再構成アルゴリズムは、正則化を含む費用(cost)関数又はオブジェクト関数Lを最適化することに基づく。
【0039】
次いで、ステップS230で、このようにして再構成された物質画像又はマップを出力する。
【0040】
本明細書で使用されるとき、用語「再構成」は、投影ドメイン(検出器ピクセルによって形成される2D空間)から3D画像ドメインへの変換を指す。この3D画像ドメインは、本質的に、画像化システムのX線源と検出器の間の空間の仮想の3D格子(grid)である。再構成は、本質的に、投影画像を説明する値を有するこの格子の点(ボクセル)の集団に相当する。
【0041】
この反復変換は、更新(update)関数を含む。この更新関数は、(ニュートン−ラフソン(Newton−Raphson)、共役勾配(conjugate gradients)などの)適当な解法アルゴリズムを、正則化項Rを含むオブジェクト関数F(このコンテキストでは、普通、費用関数と呼ばれる)に適用することによって導出される。
【0042】
スペクトルX線断層撮影法における反復再構成のための正則化を含む典型的な費用関数Lを、水画像及びヨウ素画像の再構成のための例として下式に示す(この式に限定されるわけではない)。
L=−log(P(μ
w,μ
I|y))+R(μ
w,μ
I) (1)
【0043】
(1)で、Lは、いわゆるペナルティ付きの対数尤度(penalized log−likelihood)関数である。P(.)は、測定されたX線強度y、すなわち入力画像が与えられた場合の画像μ
w及びμ
Iの確率測度(probability measure)である。この確率測度は一般に、検出器の詳細及び画像化したい物理効果の詳細に依存する。例えば光子計数検出器を用いる透過画像化(transmission imaging)のために、Pはさらに雑音モデルを含んでもよい。ポアソン密度を有するようにPをとってもよい。
【0044】
関数R(.)は正則化関数を表す。この正則化関数自体がいくつかの正則化項を含んでもよい。反復再構成は、この費用関数を、3D物質画像μ
w及びμ
Iに対して最適化することによって実行される。
【0045】
μ
Iは、画像空間内のそれぞれのボクセルjのヨウ素濃度μ
Ijを含むベクトルである。水画像μ
wについても同様である。
【0046】
反復設定では、使用される解法アルゴリズムの詳細に関係するある関数表現f
updateについて
【0047】
【数1】
と書くことができる対応する反復更新関数がある。この場合も、添字iは反復ステップを表す。更新関数f
updateの演算による1つ又は複数の中間画像
【0049】
【数3】
を経る入力画像yの反復処理は、それぞれの関心の物質についてLを同時に最適化することに相当する。このオブジェクト関数Lが分離可能である場合には、その代わりに、この最適化を、(物質チャネルmごとに1つの)2つ以上の別個の最適化問題として実行してもよい。
【0050】
次に、レギュラライザRに含まれるレギュラライザ項の構造をより詳細に説明する。再構成された物質の総量、例えば造影剤I(非限定的な例として例えばヨウ素)の総量は、下式のとおりに計算することができる。
【0051】
【数4】
a
Iは、再構成された造影剤の総量、V
jは、ボクセルjのボリュームである。F
Cは、造影剤を潜在的に含むことが知られている一組のボクセルである。言い換えると、この量は、ボリューム要素と(局所)濃度との積の和である。この和は、造影剤を潜在的に含むことが知られている位置だけについてとることが好ましいが、本明細書ではボリューム全体にわたる求和も排除されない。
【0052】
一実施形態によれば、クロストーク信号を潜在的に含むことが知られているボクセル領域をマスクして、(2)の求和から排除することができる。例えば、一例では、骨減衰寄与を示すボクセルがマスクされる。これは、それらのボクセルが、ヨウ素−水分離に関してヨウ素マップ中でクロストークを生成することが知られているためである。コンテキストによっては他のボクセル信号がマスクされることもあるため、「骨のマスキング」は単なる例であることが理解される。しかしながら、このマスキング操作は任意であり、別の実施形態では、(3)の求和が、再構成可能なボリューム内の全てのボクセル(すなわちその投影がFOVに含まれるボクセル)に及び、そのためボクセルのマスキングが実施されない。例えば、測定された投影yから得られる従来のフィルタ補正逆投影(filtered−backprojection:FBP)ボリューム再構成に対して実行されるグレイ値をしきい値としたセグメント化を使用することによって、マスクされる一組のボクセル(すなわちF
Cの理論的補集合)を確立することができる。
【0053】
ヨウ素の(モル又はミリグラム、グラムなどの適当な質量単位で測定された)既知量が、物質パラメータb
Iによって指定される場合、物質α(この例示的なケースでは=ヨウ素)に対する可能な正則化項は、下式として実施することができる。
【0054】
【数5】
ここで、pは、調整可能な指数であり、好ましい場合には、費用関数の凸性(convexity)を保証するため区間[1,2]内にセットされる。βは、この正則化項の影響を制御する調整可能なパラメータである(本明細書では「1」とすることが排除されない)。レギュラライザ項R
αを、レギュラライザ関数R()の残りの項に追加し、それによって関心の物質の既知量についての知識を反復再構成プロセスに組み込むことができることが理解される。所与の物質αについて、このレギュラライザ項のアルゴリズム実施態様は、物質(例えば造影剤)の既知量とその物質の既知量に対する推定量との間の差を形成することを含む。この推定量は、前記(2)のとおりに、濃度とボリューム要素との積の和を求めることによって構築することができる。この求和は、再構成するボリュームの全体又は一部にわたって及ぶことができる。具体的には、計算効率のため、この和を、造影剤を実際に含むと予想される位置F
Cだけについて求めてもよい。
【0055】
式(3)による物質正則化項は、(1回又は数回の反復iの間に計算された)関心の物質mの推定量μ
miの対応するそれぞれの物質の既知量からの偏差を効果的に定量化することが分かる。別の言い方をすれば、物質正則化項(3)は、式(1)による最適化問題の、予め定められた量bの対応するそれぞれの物質を表す解に向かっての収束挙動を誘起し又は容易にする。この意味で、物質項(3)は、再構成可能な出力画像中の再構成された物質の量を制御又は正則化する。例えば、通常ならば(すなわちレギュラライザR寄与を無視する場合には)正則化されていない同じ費用を返すであろう2つの解画像から、この反復最適化は、本明細書に提案されたレギュラライザRの効果により、既知の造影剤付着物に数値的により近い方に精確に収束する。
【0056】
物質量パラメータb
m(例えば上記の例の場合のようにヨウ素に対してはb
I)は、いずれもユーザによってアプリオリに知られており、ユーザによってIPSに手動で供給される。一実施形態では、このシステムが、対応するそれぞれの関心の物質の1つ又は複数の対応するそれぞれの物質量パラメータb
mをそれによってユーザが供給することができるユーザインタフェースUIを提供する。例えば、このユーザインタフェースUIは、スライダ、テキストボックス、ドロップダウンメニューなどの適当なウィジェット(widget)を有するグラフィカルユーザインタフェースとして提供され、ユーザはそこで、対応するそれぞれの量を(前述のように適当な単位で)指定することができる。そのように指定されたパラメータは次いで再構成器RECONに送られ、それに応じてオブジェクト関数Lのレギュラライザ項をデータ設定する。別の実施形態では、造影剤を投与するために使用される注入装置の電子回路とIPSがインタフェースすることによって、物質量パラメータb
mが獲得される。
【0057】
上で簡単に示したとおり、レギュラライザRは一般に、異なる関心の物質αに対する2つ以上の物質項(3)を含む。また、ヨウ素及び/若しくは水の物質は単なる例であり、水及び/若しくはヨウ素に加えて、又は水及び/若しくはヨウ素の代わりに、他の関心の物質を使用することもできる。具体的には、いくつかの実施形態では、上式(3)に似た対応するそれぞれのレギュラライザ項をそれぞれが有する2種類以上の造影剤(例えばヨウ素及びガドリニウム)がある。しかしながら、全ての関心の物質について、レギュラライザRに物質量レギュラライザ項(3)を組み込む必要は必ずしもない。例えば、その造影剤以外の物質に興味があっても例えば項(3)によって正則化された造影剤量だけを有することが有益であることがある。例えば、含水量/水分布のために再構成したいことがあるが、(3)に従って正則化されるのはヨウ素だけである。ある状況では、(複数の物質のうちの)1種類の物質だけに関する正則化で十分である。これは、他方の物質量の正則化に起因する再構成のより高い忠実度が、残りの物質の再構成に依然として波及するためである。言い換えると、単に全てではないいくつか(例えば1つ)の関心の物質に対して正則化しても、反復再構成アルゴリズムは、全ての関心の物質について良好な解に向かって収束することができる。
【0058】
さらに、レギュラライザRは、物質量項(3)に加えて、別のレギュラライザ項を含むことができることが理解される。例えば、別の項を、他の形態のアプリオリ知識を捕捉する、適当なメトリックによって定量化される、例えば(縁などの)画像フィーチャなどに対するある所望の滑らかさ特性を強化するように構成することができる。
【0059】
さらに、対数尤度表現に関するレギュラライザの定式化も一実施形態であり、本明細書では非統計的アプローチも同様に予見されることが理解される。
【0060】
上述のX線ベースのシステムでは、入力画像が、さまざまなエネルギービン及び物質分解モデルに対する投影画像であり、再構成中に、物質分布画像の計算が達成される。これの変形実施形態として、最初に、測定された投影画像を物質分解アルゴリズムによって変換して、1つ又は複数の物質投影画像を得、その後に、その1つ又は複数の物質投影画像を、上述の再構成のための入力画像として使用することもできる。
【0061】
提案の方法を、X線ベースの透過画像化モダリティ(特にCT)に関して説明したが、本明細書に記載された原理は、PET画像化又はMR画像化のような放射(emission)再構成アルゴリズムにも容易に適用することができる。PET/MR再構成では、入力画像yが、患者の体内の放射性トレーサの分布の投影及び患者の陽子密度(又は陽子に関係した他の量)のフーリエ変換である。再構成される画像は、患者の体内の放射性トレーサ及び陽子の空間分布である。
【0062】
提案された方法及びシステムは、画像取得の間、関心の物質が、イメージャの画像ドメイン内の既知のボリューム部分に限局されているときに特に有益であることが分かっている。例えば、液体の造影剤を患者の血管系に注入するのではなしに、ROI内の所定の位置にある固体担体に造影剤を結合させる用途もある。例えば、TACE手法では、いわゆる画像化可能ビーズが使用される。一実施形態では、それらのビーズが、比較的小さな球形の構造体として形成され、それらをカテーテルを介して腫瘍に適用して腫瘍に塞栓を形成する。それらのビーズは、X線下でビーズを見えるようにするためのヨウ素などの造影剤物質を含み(例えば造影剤物質でコーティングされており)、さらに腫瘍を治療するための化学療法剤を含む。或いは、造影剤がビーズ物質に埋め込まれ(又はビーズ全体が造影剤物質から形成され)、ビーズの外表面が化学療法剤でコーティングされる。そのサイズのため、球形のビーズは、血流と一緒に毛細管から流出することができないため、造影剤の全量が腫瘍に集中し、したがって3DコーンビームCアームCTスキャンを実行しているときに視野の中に入る。例えばモデルベースの骨除去アルゴリズムを使用することによって、骨領域を表すボクセルを排除することができる。さらに、この場合には、腫瘍組織のセグメント化によって、マスクされたボクセルの画定を達成することができ、このセグメント化は、スカウト再構成ボリューム上において手動で又は自動的に実行することができる。
【0063】
代替用途はPCIである。PCIでは、ヨウ素がドープされた生体吸収性のスカフォルド(scaffold)又はステントが患者の動脈内にある間に、患者の3D CアームCT画像化又はスペクトルCT画像化を実行する。
図3のX線投影は、スカフォルド又はステント構造体のフットプリント305が示されたこの状況を示す。このステントは、(例えばその外表面及び又は内部に)明確に決められた既知量のヨウ素を含む。エネルギー分解型CT又はCアームCT画像データからの3D再構成において上で説明した物質量正則化に関して、この特性を都合よく使用することができる。全ての実施形態において必須というわけではないが、このステントは生体吸収性物質から形成されていることが好ましい。画像化可能なビーズを使用するTACEと生体吸収性ステントを使用するPCIの両方の用途に対して、同じ正則化原理を適用して、デュアルエネルギー投影の反復投影分解を実施することができる。前述のとおり、投影入力画像yは、管電圧(kV)の切換え又はエネルギー分解検出器を使用するCアームシステム又はCTシステムによって取得することができる。
【0064】
上で使用した用語「最適化」又は「オプティマイザ(optimizer)」は、数値最適化スキームを意味することを理解すべきである。このことは、絶対的な意味で出力画像が最適であることを必ずしも含意しない。1つの理由は、使用される解法アルゴリズムは、反復の間に大域的な最小に必ず収束するわけではなく、極小に収束することもあるためである。第2の理由は、たとえ反復が大域的な最小に収束するとしても、資源を節約するために又は何らかの理由で、数回の反復の後に本明細書では反復が打ち切られることがあるためである。例えば、1つの打切り条件は、予め定められた回数の反復ステップの後に出力に大きな変化がない場合には反復が停止することになっていることである。別の言い方をすると、提案の画像処理システムの出力において又は記載された方法によって生成された再構成された物質画像μ
mは、必ずしも可能な最良の解ではなく、物質画像μ
mが、その可能な最良の解の、関連コンテキスト又は状況において受入れ可能な近似であることがある。
【0065】
物質量が正則化されるため、再構成結果は一般に、指定された物質量パラメータb
mに依存することも理解される。言い換えると、1つ又は複数の物質量パラメータb
mの変動は、再構成された1つ又は複数の物質画像の変動を引き起こす。
【0066】
画像処理システムIPSは、(入力ポートIN、出力ポートOUTなどの)適当なインタフェースを備えるソフトウェアモジュール又はソフトウェアルーチンとして構成することができ、汎用コンピューティングユニット又は専用コンピューティングユニット上で実行することができる。例えば、画像処理システムIPSは、この画像化モダリティIM又は別の画像化モダリティIMに関連づけられたワークステーション上又はオペレータコンソール上で実行することができる。画像処理システムIPSは、その一部若しくは全部の構成要素が、(汎用コンピュータ、ワークステーション、コンソールなどの)実行機構上にあってもよく、又は、その実行機構によって、分散アーキテクチャをとる適当な通信ネットワークを介して遠隔/中央でアクセスされてもよい。それらの構成要素は、C++などの適当なプログラミング言語で実施することができる。
【0067】
一実施形態では、画像処理システムIPSの構成要素が、専用FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)として、又は同様の独立型コンピューティングチップ若しくはデバイスとして構成される。本発明の別の例示的な実施形態では、上記の実施形態のうちの1つの実施形態に基づく方法の方法ステップを適切なシステム上で実行するように適合されていることを特徴とする、コンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が提供される。
【0068】
したがって、そのコンピュータプログラム要素は、コンピュータユニット上に記憶されていてもよく、このコンピュータユニットは、本発明の実施形態の部分であってもよい。このコンピューティングユニットは、上述の方法の諸ステップを実行するように適合されていてもよく、又は上述の方法の諸ステップの実行を誘起するように適合させていてもよい。さらに、このコンピューティングユニットは、上述の装置の構成要素を動作させるように適合されていてもよい。このコンピューティングユニットを、自動的に動作するように適合させることができ、且つ/又はユーザの命令を実行するように適合させることができる。データプロセッサの作業メモリにコンピュータプログラムをロードすることができる。したがって、本発明の方法を実行するように、このデータプロセッサを装備することができる。
【0069】
本発明のこの例示的な実施形態は、最初から本発明を使用するコンピュータプログラムと、更新によって既存のプログラムを本発明を使用するプログラムに変えるコンピュータプログラムとの両方をカバーする。
【0070】
さらに、このコンピュータプログラム要素は、上述の方法の例示的な実施形態の手順を履行するのに必要な全てのステップを提供することができる。
【0071】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、CD−ROMなどのコンピュータ可読媒体が提示され、このコンピュータ可読媒体は、前のセクションで説明したコンピュータプログラム要素を記憶している。
【0072】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又は他のハードウェアの一部として供給される光学記憶媒体、固体媒体などの適当な媒体上に記憶且つ/又は分散させることができるが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介して分散させるなど、別の形態で分散させることもできる。
【0073】
しかしながら、このコンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブのようなネットワークを介して提示することもでき、このようなネットワークからデータプロセッサの作業メモリにダウンロードすることができる。本発明の別の例示的な実施形態によれば、以上に記載した本発明の実施形態のうちの1つに基づく方法を実行するように構成されたコンピュータプログラム要素をダウンロードできるようにする媒体が提供される。
【0074】
本発明の実施形態は、異なる主題に関して説明されていることに留意しなければならない。具体的には、いくつかの実施形態は、方法型の請求項に関して説明されており、別の実施形態は、装置型の請求項に関して説明されている。しかしながら、当業者は、以上の説明及び以下の説明から、特段の通知がない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の任意の組合せに加えて、異なる主題に関する特徴間の任意の組合せも、本出願とともに開示されているとみなされることを理解するであろう。しかしながら、全ての特徴を組み合わせて、それらの特徴の単純な総和を超える相乗効果を提供することができる。
【0075】
図面及び上記の説明で、本発明を詳細に図解し説明したが、そのような図解及び説明は、例証的又は例示的であるとみなされ、制限的であるとはみなされない。本発明は、開示された実施形態だけに限定されない。請求の発明を実施する際に、当業者は、図面、開示及び従属請求項を検討することによって、開示された実施形態の他の変形実施形態を理解し実施することができる。
【0076】
請求項においては、語「備える(comprising)」が、他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「a」又は「an」が複数を排除しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に挙げられたいくつかのアイテムの機能を履行することができる。互いに異なる従属請求項にある種の方策が挙げられているという単なる事実は、それらの方策の組合せを有利に使用することができないことを示しているのではない。請求項中の参照符号を、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。