(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記監視対象歩行者の特徴量として、複数人での歩行であるかを示す人数特徴量と、視線の向きの特徴を示す視線特徴量と、首振りを行っているかの特徴を示す首振り挙動特徴量とを取得する物体認識部を、更に備え、
前記行動予測部は、前記行動指標に含まれる前記歩行挙動を、前記人数特徴量、前記視線特徴量及び前記首振り挙動特徴量の少なくとも1つの特徴量に基づき認識する、請求項1に記載の走行制御装置。
前記走行パラメータ設定部は、前記対象距離が前記近距離監視範囲に属する場合、前記自動走行車の前記走行パラメータとして前記走行速度をゼロに設定し、前記自動走行車の走行を停止させる指令信号を出力する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の走行制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される技術は、主として車両が走行する道路上での自動走行車の走行制御に関する技術であって、自動走行中に検出された全ての障害物等を回避することを前提としたものである。このような走行制御技術を、例えば歩行者が通行する公道やコンパクトシティー内の歩道などのように、主として歩行者が通行する通行領域内で自動走行する自動走行車の走行制御に適用した場合、次のような課題がある。
【0005】
すなわち、自動走行車の自動走行中において障害物等として歩行者を検出した場合、当該歩行者を回避するような走行制御が実行される。この走行制御による歩行者を回避する回避動作は、歩行者にとっては予測がつき難いものである。このため、歩行者が自動走行中の自動走行車を認識した場合、当該自動走行車を回避する行動を取ればよいのか、歩行停止の行動を取ればよいのかなど、どのような行動を取ればよいのかを理解することができず、困惑してしまう。この結果、歩行者は、通行領域内に自動走行車が存在するというだけで、ストレスを感じてしまう。従って、現状では、歩行者が通行する所定の通行領域内で当該歩行者のストレスを可及的に低減可能であって、歩行者との共存が可能な自動走行車の走行制御を実現するには至っていない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、歩行者が通行する所定の通行領域内で当該歩行者のストレスを可及的に低減可能であって、歩行者との共存が可能な自動走行車の走行制御を実現するができる走行制御装置及び走行制御方法、並びにそれを使用する自動走行車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、障害物等を認識すると無意識にそれを回避する回避行動を取るという人間の習性に着目し、歩行者の行動に応じて自動走行車の走行制御を行うことにより、歩行者が通行する所定の通行領域内で当該歩行者との共存が可能な自動走行車の走行制御を実現することができることを見出して、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0008】
本発明の一の局面に係る走行制御装置は、歩行者が通行する所定の通行領域内における自動走行車の自動走行を制御する装置である。この走行制御装置は、前記通行領域内において前記自動走行車が自動走行する基準のルートとなる基準走行ルートを予め記憶する記憶部と、前記基準走行ルート上において前記自動走行車の走行方向前方側の監視領域を通行する歩行者である監視対象歩行者の存否と、前記自動走行車から前記監視対象歩行者までの距離を示す対象距離とを含む、前記監視対象歩行者の位置に関する位置指標を認識する位置認識部と、前記監視対象歩行者の行動を特定するための指標として、歩行速度及び歩行方向と、前記監視対象歩行者の歩行時の挙動に関する所定の歩行挙動と、を含む行動指標を認識する行動予測部と、前記監視領域を、前記自動走行車からの距離が遠い順に遠距離監視範囲、中間距離監視範囲及び近距離監視範囲に区画し、前記位置指標に含まれる前記対象距離が前記遠距離監視範囲、前記中間距離監視範囲及び前記近距離監視範囲のいずれの監視範囲に属するかによって、前記自動走行車の走行制御に関するパラメータとして、走行速度及び走行方向を含む、前記行動指標に応じた走行パラメータを設定する走行パラメータ設定部と、を備える。前記走行パラメータ設定部は、前記対象距離が前記遠距離監視範囲に属する場合、
前記行動指標に含まれる前記歩行方向に基づいて、前記監視対象歩行者が前記自動走行車の走行方向と同一方向に歩行する並行歩行者であるか否かを判定し、前記監視対象歩行者が前記並行歩行者の場合には、前記自動走行車の前記走行パラメータとして、前記走行速度を基準の第1速度に設定すると共に、前記走行方向を前記基準走行ルートに沿った方向に設定し、前記監視対象歩行者が前記並行歩行者ではない場合には、前記監視対象歩行者が前記自動走行車の走行方向に対して逆方向に歩行する対向歩行者であると認識して、前記行動指標に含まれる前記歩行挙動に基づいて、前記監視対象歩行者が、前記監視領域外への回避行動を取る可能性があることを示唆する所定の条件を満たす回避適格者であるか否かを判定し、前記監視対象歩行者が前記回避適格者の場合には、前記自動走行車の前記走行パラメータとして、前記走行速度を
前記第1速度に設定すると共に、前記走行方向を前記基準走行ルートに沿った方向に設定し、前記監視対象歩行者が前記回避適格者ではない場合には、前記自動走行車の前記走行パラメータとして、前記走行速度を前記第1速度に設定すると共に、前記走行方向を前記基準走行ルートから外れて前記監視対象歩行者を回避可能な回避ルートに沿った方向に設定する。
【0009】
この走行制御装置によれば、自動走行車の前方側の監視領域を通行する監視対象歩行者の位置に関する位置指標が位置認識部によって認識され、監視対象歩行者の行動を特定するための行動指標が行動予測部によって認識される。そして、走行制御装置において、走行パラメータ設定部は、前記位置指標に基づいて、自動走行車の走行制御に関するパラメータとして、走行速度及び走行方向を含む、前記行動指標に応じた走行パラメータを設定する。つまり、走行制御装置においては、前記行動指標に含まれる監視対象歩行者の歩行速度及び歩行方向に応じて、自動走行車の走行制御に関する走行パラメータが設定される。
【0010】
走行パラメータに基づく自動走行車の走行制御は、監視対象歩行者の行動に応答するような制御となる。例えば、監視対象歩行者が自動走行車を認識し、人間の習性として無意識に当該自動走行車を回避するような回避行動を取った場合には、その歩行者の回避行動に応じた走行制御が実行される。このため、歩行者は、自動走行車の走行動作を予測して、自動走行車を意識した受動的な行動を取る必要はなく、自身の意図した通りに能動的な行動を取ればよい。歩行者が自身の意図した通りに能動的な行動を取ったとしても、自動走行車が歩行者の行動に応じて走行するよう制御される。これにより、歩行者が自動走行中の自動走行車を認識した場合、どのような行動を取ればよいのか困惑してしまうことはなく、歩行者のストレスを可及的に低減可能となる。従って、歩行者が通行する所定の通行領域内において、好適に歩行者との共存が可能な自動走行車の走行制御を実現するができる。
【0012】
この態様では、自動走行車の前方側の監視領域において、遠距離監視範囲、中間距離監視範囲及び近距離監視範囲のいずれの監視範囲を監視対象歩行者が通行しているかに基づいて、その監視対象歩行者の行動に応じた走行パラメータを設定することができる。
【0014】
この態様では、自動走行車の前方側の監視領域における遠距離監視範囲を通行する監視対象歩行者が、自動走行車を回避する回避行動を取る可能性がある回避適格者であるか否かに応じて、自動走行車の走行制御に関する走行パラメータが設定される。監視対象歩行者が、例えば一人で前方を向いて直進歩行するような回避適格者である場合には、走行パラメータに基づく自動走行車の走行制御は、基準走行ルート上を基準の第1速度で自動走行車を走行させる制御である。この場合、自動走行車の走行制御は、遠距離監視範囲を通行する監視対象歩行者の能動的な回避行動を待ちながら自動走行車が走行するような制御となる。
【0015】
一方、監視対象歩行者が、例えば複数人での歩行や下方等の前方ではない方向を向いて蛇行したり、或いは首振りが多い等の、回避適格者ではない回避欠格者である場合には、走行パラメータに基づく自動走行車の走行制御は、回避ルート上を第1速度で自動走行車を走行させる制御である。この場合、自動走行車の走行制御は、遠距離監視範囲を通行する監視対象歩行者を自動走行車が回避して走行するような制御となる。
また、上記の走行制御装置は、前記監視対象歩行者の特徴量として、複数人での歩行であるかを示す人数特徴量と、視線の向きの特徴を示す視線特徴量と、首振りを行っているかの特徴を示す首振り挙動特徴量とを取得する物体認識部を、更に備える構成であってもよい。そして、前記行動予測部は、前記行動指標に含まれる前記歩行挙動を、前記人数特徴量、前記視線特徴量及び前記首振り挙動特徴量の少なくとも1つの特徴量に基づき認識する。
【0016】
上記の走行制御装置において、前記走行パラメータ設定部は、前記対象距離が前記中間距離監視範囲に属する場合、前記行動指標に含まれる前記歩行方向に基づいて、前記監視対象歩行者
が前記対向歩行者であるか否かを判定する構成であってもよい。そして、前記走行パラメータ設定部は、前記監視対象歩行者が前記対向歩行者の場合には、前記自動走行車の前記走行パラメータとして、前記走行速度を基準の第1速度に対して減速した所定の第2速度に設定すると共に、前記走行方向を前記基準走行ルートに沿った方向に設定し、更には、前記通行領域内における前記監視領域の位置を前記監視対象歩行者に報知する制御に関する指令信号を出力する。
【0017】
この態様では、自動走行車の前方側の監視領域における中間距離監視範囲を通行する監視対象歩行者が対向歩行者である場合には、走行パラメータに基づく自動走行車の走行制御は、基準走行ルート上を基準の第1速度に対して減速した第2速度で自動走行車を走行させつつ、通行領域内における監視領域の位置を報知させる制御である。この場合、自動走行車の走行制御は、中間距離監視範囲を対向歩行する監視対象歩行者が前記報知を認識することにより、能動的な回避行動を取ることを待ちながら、自動走行車が走行するような制御となる。
【0018】
上記の走行制御装置において、前記走行パラメータ設定部は、前記対象距離が前記中間距離監視範囲に属する場合、前記行動指標に含まれる前記歩行方向に基づいて、前記監視対象歩行者
が前記並行歩行者であるか否かを判定する構成であってもよい。前記走行パラメータ設定部は、前記監視対象歩行者が前記並行歩行者の場合において、前記行動指標に含まれる前記歩行速度が前記第2速度以上であるときには、前記自動走行車の前記走行パラメータとして、前記走行速度を、前記第1速度を超えない範囲で前記歩行速度と同速度に設定すると共に、前記走行方向を前記基準走行ルートに沿った方向に設定し、前記行動指標に含まれる前記歩行速度が前記第2速度未満であるときには、前記自動走行車の前記走行パラメータとして、前記走行速度を前記第1速度に設定すると共に、前記走行方向を前記基準走行ルートから外れて前記並行歩行者を回避可能な回避ルートに沿った方向に設定する。
【0019】
この態様では、自動走行車の前方側の監視領域における中間距離監視範囲を通行する監視対象歩行者が並行歩行者である場合には、当該監視対象歩行者の歩行速度に応じて、自動走行車の走行制御に関する走行パラメータが設定される。監視対象歩行者の歩行速度が前記第2速度以上であるときには、走行パラメータに基づく自動走行車の走行制御は、基準走行ルート上を監視対象歩行者の歩行速度と同速度で自動走行車を走行させる制御である。この場合、自動走行車の走行制御は、中間距離監視範囲を前記第2速度以上で並行歩行する監視対象歩行者を自動走行車が追従して走行するような制御となる。
【0020】
一方、監視対象歩行者の歩行速度が前記第2速度未満であるときには、走行パラメータに基づく自動走行車の走行制御は、回避ルート上を基準の第1速度で自動走行車を走行させる制御である。この場合、自動走行車の走行制御は、中間距離監視範囲を前記第2速度未満で並行歩行する監視対象歩行者を自動走行車が回避して走行するような制御となる。
【0021】
上記の走行制御装置において、前記走行パラメータ設定部は、前記対象距離が前記近距離監視範囲に属する場合、前記自動走行車の前記走行パラメータとして前記走行速度をゼロに設定し、前記自動走行車の走行を停止させる指令信号を出力する構成であってもよい。
【0022】
この態様では、自動走行車の前方側の監視領域における近距離監視範囲に監視対象歩行者が存在していた場合には、走行パラメータに基づく自動走行車の走行制御は、自動走行車の走行を停止させる制御である。これにより、近距離監視範囲に歩行者が存在していた場合に、自動走行車を緊急停止させることができる。
【0023】
本発明の他の局面に係る走行制御方法は、歩行者が通行する所定の通行領域内における自動走行車の自動走行を制御する方法である。この走行制御方法は、前記通行領域内において前記自動走行車が自動走行する基準のルートとなる基準走行ルートを設定するルート設定ステップと、前記基準走行ルート上において前記自動走行車の走行方向前方側の監視領域を通行する歩行者である監視対象歩行者の存否と、前記自動走行車から前記監視対象歩行者までの距離を示す対象距離とを含む、前記監視対象歩行者の位置に関する位置指標を認識する位置認識ステップと、前記監視対象歩行者の行動を特定するための指標として、歩行速度及び歩行方向と、前記監視対象歩行者の歩行時の挙動に関する所定の歩行挙動と、を含む行動指標を認識する行動予測ステップと、前記監視領域を、前記自動走行車からの距離が遠い順に遠距離監視範囲、中間距離監視範囲及び近距離監視範囲に区画し、前記位置指標に含まれる前記対象距離が前記遠距離監視範囲、前記中間距離監視範囲及び前記近距離監視範囲のいずれの監視範囲に属するかによって、前記自動走行車の走行制御に関するパラメータとして、走行速度及び走行方向を含む、前記行動指標に応じた走行パラメータを設定する走行パラメータ設定ステップと、を含む。前記走行パラメータ設定ステップでは、前記対象距離が前記遠距離監視範囲に属する場合、
前記行動指標に含まれる前記歩行方向に基づいて、前記監視対象歩行者が前記自動走行車の走行方向と同一方向に歩行する並行歩行者であるか否かを判定し、前記監視対象歩行者が前記並行歩行者の場合には、前記自動走行車の前記走行パラメータとして、前記走行速度を基準の第1速度に設定すると共に、前記走行方向を前記基準走行ルートに沿った方向に設定し、前記監視対象歩行者が前記並行歩行者ではない場合には、前記監視対象歩行者が前記自動走行車の走行方向に対して逆方向に歩行する対向歩行者であると認識して、前記行動指標に含まれる前記歩行挙動に基づいて、前記監視対象歩行者が、前記監視領域外への回避行動を取る可能性があることを示唆する所定の条件を満たす回避適格者であるか否かを判定し、前記監視対象歩行者が前記回避適格者の場合には、前記自動走行車の前記走行パラメータとして、前記走行速度を
前記第1速度に設定すると共に、前記走行方向を前記基準走行ルートに沿った方向に設定し、前記監視対象歩行者が前記回避適格者ではない場合には、前記自動走行車の前記走行パラメータとして、前記走行速度を前記第1速度に設定すると共に、前記走行方向を前記基準走行ルートから外れて前記監視対象歩行者を回避可能な回避ルートに沿った方向に設定する。
【0024】
この走行制御方法によれば、自動走行車の前方側の監視領域を通行する監視対象歩行者の位置に関する位置指標が位置認識ステップにおいて認識され、監視対象歩行者の行動を特定するための行動指標が行動予測ステップにおいて認識される。そして、走行パラメータ設定ステップでは、前記位置指標に基づいて、自動走行車の走行制御に関するパラメータとして、走行速度及び走行方向を含む、前記行動指標に応じた走行パラメータを設定する。つまり、走行制御方法においては、前記行動指標に含まれる監視対象歩行者の歩行速度及び歩行方向に応じて、自動走行車の走行制御に関する走行パラメータが設定される。
【0025】
走行パラメータに基づく自動走行車の走行制御は、監視対象歩行者の行動に応答するような制御となる。このため、歩行者は、自動走行車の走行動作を予測して、自動走行車を意識した受動的な行動を取る必要はなく、自身の意図した通りに能動的な行動を取ればよい。歩行者が自身の意図した通りに能動的な行動を取ったとしても、自動走行車が歩行者の行動に応じて走行するよう制御される。これにより、歩行者が自動走行中の自動走行車を認識した場合、どのような行動を取ればよいのか困惑してしまうことはなく、歩行者のストレスを可及的に低減可能となる。従って、歩行者が通行する所定の通行領域内において、好適に歩行者との共存が可能な自動走行車の走行制御を実現するができる。
【0026】
本発明の他の局面に係る自動走行車は、歩行者が通行する所定の通行領域内を自動走行する自動走行車であって、車体と、前記車体に搭載され、当該車体を走行させるための走行機構と、前記車体に搭載され、前記走行機構を制御することにより前記自動走行車の自動走行を制御する、上記の走行制御装置と、を備える。
【0027】
この自動走行車によれば、歩行者が通行する通行領域内での走行が、上記の走行制御装置によって制御される。これにより、歩行者が自動走行中の自動走行車を認識した場合、どのような行動を取ればよいのか困惑してしまうことはなく、歩行者のストレスを可及的に低減可能となる。従って、歩行者が通行する所定の通行領域内において、好適に歩行者との共存が可能な自動走行車を実現するができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、歩行者が通行する所定の通行領域内で当該歩行者のストレスを可及的に低減可能であって、歩行者との共存が可能な自動走行車の走行制御を実現するができる走行制御装置及び走行制御方法、並びにそれを使用する自動走行車を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る走行制御装置及び走行制御方法、並びに自動走行車について説明する。
【0031】
[自動走行車について]
図1は、本発明の一実施形態に係る走行制御装置6が搭載された自動走行車1の構成を概略的に示す図であり、
図2は、自動走行車1の側面図である。
図3は、自動走行車1の自動走行の様子を示す図である。
【0032】
自動走行車1は、例えば、商店街や観光地等における歩行者が通行する公道、コンパクトシティー内の歩道、或いは商業施設内などのように、主として歩行者Wが通行する通行領域PA内で自動走行する、自動運転時代の新しい電動モビリティーである。自動走行車1は、歩行者Wの歩行速度と同程度の走行速度で通行領域PA内を自動走行し、「エスカレーター」や「動く歩道」を利用する感覚で利用者が自由に乗降できる。自動走行車1の走行速度は、基準の第1速度と、この第1速度に対して減速した所定の第2速度との間の速度範囲に設定されている。基準の第1速度は例えば時速5kmであり、第2速度は例えば時速3kmである。自動走行車1に乗ることにより利用者は、歩くことに割かれていた意識が解放され、歩く際には目に入らなかった店舗等を発見することができる。
【0033】
図3に示すように、歩行者Wが通行する通行領域PA内には、自動走行車1が自動走行する基準のルートとなる基準走行ルートRSが設定されており、その基準走行ルートRS上において自動走行車1の走行方向DH前方側には監視領域MRが設定されている。基準走行ルートRS及び監視領域MRの詳細については、後述する。
【0034】
自動走行車1は、車体2と、車体2に搭載された走行機構3、報知部4、物体監視部5、及び走行制御装置6と、を備える。車体2は、自動走行車1の基本構造体であり、利用者が乗車する乗車部21(
図2)を有している。
【0035】
走行機構3は、車体2を走行させるための機構であり、電力が供給されることにより駆動する駆動モーター31と、自動走行車1の走行方向を操作するための操舵部32と、を含む。駆動モーター31には駆動輪311が連結されている。駆動モーター31の駆動力が伝達されて駆動輪311が回転することにより自動走行車1は走行し、駆動モーター31の停止に伴って駆動輪311の回転が停止することにより自動走行車1は停止する。操舵部32には操舵輪321が連結されている。操舵部32によって操舵輪321が操作されることにより、自動走行車1の走行方向を変えることができる。走行機構3を構成する駆動モーター31及び操舵部32は、走行制御装置6によって制御される。
【0036】
なお、
図1では、自動走行車1の走行方向DH前方側の前輪が操舵輪321であり、後輪が駆動輪311である例が示されているが、このような構成に限定されるものではない。例えば、前輪に駆動モーター31及び操舵部32が連結されることにより当該前輪が駆動輪及び操舵輪としての機能を果たし、後輪を従動輪とする構成であってもよい。また、前輪及び後輪の双方に駆動モーター31及び操舵部32が連結されることにより、前輪及び後輪の双方が駆動輪及び操舵輪としての機能を果たすような構成であってもよい。
【0037】
報知部4は、車体2において走行方向DHの前方側に配置されている。報知部4は、詳細については後述するが、通行領域PA内における、自動走行車1が走行する基準走行ルートRS上の監視領域MRの位置を、監視領域MRを通行する歩行者である監視対象歩行者WMに報知するための光や音を発信する。光を発信する報知部4としては、レーザー光を監視領域MRに照射する光源や、プロジェクションマッピング(Projection Mapping)の技術により所定の映像を監視領域MRに映す機器などが挙げられる。音を発信する報知部4としては、パラメトリックスピーカー(指向性スピーカー)などが挙げられる。パラメトリックスピーカーは、指向性を有する超音波を発信し、監視領域MR内を通行する監視対象歩行者WMに対して選択的に音を流すことができる。なお、報知部4は、光と音とを同期させて双方を発信するように構成されていてもよい。報知部4は、走行制御装置6によって制御される。
【0038】
物体監視部5は、車体2において走行方向DHの前方側に配置されている。物体監視部5は、自動走行車1の周囲において、歩行者Wも含めた物体の存在を監視する。物体監視部5は、カメラ51と測域センサ52とを含む。カメラ51は、自動走行車1の走行方向DH前方側の領域を所定の周期ごとに撮像して画像を取得し、その撮像した画像に応じた画像データを出力する。カメラ51から出力された画像データは、走行制御装置6に入力される。
【0039】
測域センサ52は、自動走行車1の走行方向DH前方側における、歩行者Wも含めた物体の有無を検出すると共に、自動走行車1から当該物体までの距離を検出するセンサである。測域センサ52は、例えば、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)によって構成される。
図4は、測域センサ52の動作を説明するための図である。測域センサ52は、所定の角度ごとにレーザー光521を所定の周期ごとに照射し、反射光が戻るまでの時間を計測することにより、センサの位置(自動走行車1の位置)からレーザー光521が反射した点522までの距離を測定する。測域センサ52は、物体の有無の検出結果と、自動走行車1から物体までの距離の検出結果とを含む測域データを出力する。測域センサ52から出力された測域データは、走行制御装置6に入力される。
【0040】
[走行制御装置について]
走行制御装置6は、カメラ51からの画像データと測域センサ52からの測域データとに基づいて、走行機構3を構成する駆動モーター31及び操舵部32を制御すると共に、報知部4を制御することにより、自動走行車1の自動走行を制御する装置である。走行制御装置6は、例えば制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)や一時的にデータを記憶するフラッシュメモリ等の記憶装置が内蔵されたマイクロコンピュータからなる。走行制御装置6は、前記制御プログラムが読み出されることにより、自動走行車1の駆動モーター31及び操舵部32を制御すると共に、報知部4を制御する。
【0041】
走行制御装置6は、
図5のブロック図に示されるように、データ処理部71、解析部72、走行パラメータ設定部73及び制御信号生成部74を有した処理領域7と、地図データ格納部81及び走行ルート格納部82を有した記憶領域8と、を備える。走行制御装置6の構成について、
図5に加えて
図6〜
図8を参照して説明する。
図6は、走行制御装置6のデータ処理部71におけるデータの入出力の状態を示す図である。
図7は、走行制御装置6の解析部72におけるデータの入出力の状態を示す図である。
図8は、走行制御装置6の走行パラメータ設定部73及び制御信号生成部74におけるデータの入出力の状態を示す図である。
【0042】
記憶領域8の地図データ格納部81は、歩行者Wが通行する通行領域PAの3次元の地図情報を表す地図データD3を記憶する。地図データ格納部81に記憶された地図データD3は、データ処理部71の車体位置推定部713と、解析部72のルート計画部723とによって読み出される(
図6及び
図7参照)。記憶領域8の走行ルート格納部82は、通行領域PA内において自動走行車1が自動走行する基準走行ルートRSを表す走行ルートデータD4を記憶する。走行ルート格納部82に記憶された走行ルートデータD4は、解析部72の位置認識部721とルート計画部723とによって読み出される(
図7参照)。
【0043】
データ処理部71は、処理領域7において、走行制御装置6に入力された、カメラ51からの画像データD1と測域センサ52からの測域データD2とを処理する部分である(
図6参照)。データ処理部71は、物体認識部711と、物体検出部712と、車体位置推定部713とを含む。
【0044】
物体認識部711は、カメラ51からの画像データD1に所定の画像処理を施すことにより、自動走行車1の走行方向DH前方側に存在する歩行者Wを含めた物体を認識し、その認識結果を表す物体認識データD11を出力する。物体認識データD11には、通行領域PAの周囲に存在する構造物等の障害物の特徴量を表す障害物特徴データや、歩行者Wの特徴量を表す歩行者特徴データなどが含まれる。
【0045】
物体検出部712は、測域センサ52からの測域データD2に基づいて、自動走行車1の走行方向DH前方側に存在する歩行者Wを含めた物体と自動走行車1との間の距離を検出し、その検出結果を表す距離データD21を出力する。距離データD21としては、通行領域PAの周囲に存在する構造物等の障害物と自動走行車1との間の距離を表す障害物距離データや、歩行者Wと自動走行車1との間の距離を表す歩行者距離データなどが含まれる。
【0046】
車体位置推定部713は、測域センサ52からの測域データD2と地図データ格納部81に記憶されている地図データD3とに基づいて、通行領域PA内での自動走行車1の位置を推定し、その推定結果を表す車体位置データD31を出力する。車体位置推定部713は、測域データD2にて表される、
図4に示す複数の点522(点群)の形状と、地図データD3にて表される通行領域PAの地図の形状とを一致させることにより、通行領域PA内での自動走行車1の位置を推定する。
【0047】
解析部72は、処理領域7において、データ処理部71の物体認識部711、物体検出部712及び車体位置推定部713から出力された各データ(物体認識データD11、距離データD21、車体位置データD31)を解析する部分である(
図7参照)。解析部72は、位置認識部721と、行動予測部722と、ルート計画部723とを含む。
【0048】
位置認識部721には、物体認識部711から出力された物体認識データD11と、物体検出部712から出力された距離データD21と、走行ルート格納部82に記憶されている基準走行ルートRSの走行ルートデータD4とが入力される。位置認識部721は、物体認識データD11、距離データD21及び走行ルートデータD4に基づいて、自動走行車1の走行方向DH前方側の、基準走行ルートRS上の監視領域MRを通行する監視対象歩行者WMの位置に関する位置指標を認識する。
図3を参照して説明すると、監視対象歩行者WMの位置に関する位置指標は、監視領域MR内における監視対象歩行者WMの存否と、自動走行車1から監視対象歩行者WMまでの距離を示す対象距離TDとを含む。
【0049】
位置認識部721は、物体認識データD11に含まれる歩行者Wの特徴量を表す歩行者特徴データを、当該物体認識データD11から抽出することにより、位置指標を構成する、監視領域MR内における監視対象歩行者WMの存否を認識する。位置認識部721は、物体認識データD11から歩行者特徴データが抽出されたときに、監視領域MR内に監視対象歩行者WMが存在することを認識する。一方、物体認識データD11から歩行者特徴データが抽出されなかったときには、位置認識部721は、監視領域MR内に監視対象歩行者WMが存在していないことを認識する。
【0050】
また、位置認識部721は、監視領域MR内における監視対象歩行者WMの存在を認識したときに、当該監視対象歩行者WMに対応した距離データD21を把握することにより、位置指標を構成する、自動走行車1から監視対象歩行者WMまでの対象距離TDを認識する。
【0051】
位置認識部721は、監視対象歩行者WMの位置に関する位置指標の認識結果を表す位置指標データDD1を行動予測部722に向けて出力する。位置指標データDD1には、監視対象歩行者WMの存否及び対象距離TDに関する位置指標に加えて、物体認識データD11に基づく、監視対象歩行者WMにおいて特徴的な特徴量が含まれている。監視対象歩行者WMの特徴量としては、監視対象歩行者WMが自動走行車1と対向した前向きの姿勢であるか或いは後向きの姿勢であるかを示す姿勢特徴量と、監視対象歩行者WMが複数人であるかを示す人数特徴量と、監視対象歩行者WMが前方を向いているか或いは下方等の前方ではない方向を向いているかを示す視線特徴量と、監視対象歩行者WMが首振りを行っているかを示す首振り挙動特徴量と、を挙げることができる。
【0052】
行動予測部722には、位置認識部721から出力された位置指標データDD1が入力されると共に、物体検出部712から出力された距離データD21が入力される。行動予測部722は、位置指標データDD1と距離データD21とに基づいて、監視対象歩行者WMの行動を特定するための指標として歩行速度、歩行方向及び歩行挙動を含む行動指標を認識する。なお、行動予測部722が認識する行動指標に含まれる歩行挙動は、監視対象歩行者WMの歩行時の所定の挙動である。監視対象歩行者WMの歩行挙動は、位置指標データDD1に含まれる前記人数特徴量、前記視線特徴量、及び前記首振り挙動特徴量に基づくものである。
【0053】
行動予測部722は、測域センサ52からの所定の周期ごとの測域データD2に応じて、前記周期ごとに物体検出部712から出力される距離データD21に基づいて、行動指標を構成する、監視対象歩行者WMの歩行速度を認識する。また、行動予測部722は、位置指標データDD1に含まれる前記姿勢特徴量に基づいて、行動指標を構成する、監視対象歩行者WMの歩行方向を認識する。行動予測部722は、位置指標データDD1に含まれる前記姿勢特徴量が前向きの姿勢を示す場合には、監視対象歩行者WMの歩行方向が自動走行車1の走行方向DHに対して逆方向であることを認識する。一方、位置指標データDD1に含まれる前記姿勢特徴量が後向きの姿勢を示す場合には、監視対象歩行者WMの歩行方向が自動走行車1の走行方向DHと同一方向であることを認識する。また、行動予測部722は、位置指標データDD1に含まれる前記人数特徴量、前記視線特徴量、及び前記首振り挙動特徴量に基づいて、行動指標を構成する、監視対象歩行者WMの歩行挙動を認識する。
【0054】
行動予測部722は、監視対象歩行者WMの行動を特定するための行動指標の認識結果を表す行動指標データDD2を、位置認識部721から入力された位置指標データDD1と共に、走行パラメータ設定部73に向けて出力する。
【0055】
ルート計画部723には、車体位置推定部713から出力された車体位置データD31と、地図データ格納部81に記憶されている地図データD3と、走行ルート格納部82に記憶されている基準走行ルートRSの走行ルートデータD4とが入力される。ルート計画部723は、走行ルート格納部82に記憶されている走行ルートデータD4を読み出し、その走行ルートデータD4に車体位置データD31を付加することにより、歩行者Wが通行する通行領域PA内において自動走行車1が自動走行する基準走行ルートRSを車体位置データD31が付加された状態で設定する。また、ルート計画部723は、詳細については後述するが、車体位置データD31と地図データD3とに基づいて、基準走行ルートRSから外れて監視領域MR内の監視対象歩行者WMを回避可能な、車体位置データD31が付加された回避ルートを生成する。ルート計画部723は、基準走行ルートRS及び回避ルートを表す、車体位置データD31が付加されたルート計画データDD3を走行パラメータ設定部73に向けて出力する。
【0056】
図8に示すように、走行パラメータ設定部73には、行動予測部722から出力された位置指標データDD1及び行動指標データDD2と、ルート計画部723から出力されたルート計画データDD3とが入力される。走行パラメータ設定部73は、位置指標データDD1、行動指標データDD2及びルート計画データDD3に基づいて、自動走行車1の走行制御に関するパラメータとして走行パラメータPを設定する。走行パラメータ設定部73は、ルート計画データDD3にて表される走行ルート上における、位置指標データDD1にて表される監視対象歩行者WMの位置に関する位置指標に基づいて、行動指標データDD2にて表される監視対象歩行者WMの行動を特定する行動指標に応じた走行パラメータPを設定する。走行パラメータ設定部73により設定される走行パラメータPは、自動走行車1の走行制御に関するパラメータとして、自動走行車1の走行速度及び走行方向を含む。
【0057】
走行パラメータ設定部73は、設定した走行パラメータPを制御信号生成部74に向けて出力する。また、走行パラメータ設定部73は、報知部4の制御を指令する指令信号S1を制御信号生成部74に向けて出力する。
【0058】
図8に示すように、制御信号生成部74は、走行パラメータ設定部73から出力された走行パラメータPに基づいて、駆動モーター31を制御するための駆動制御信号SS1を生成すると共に、操舵部32を制御するための操舵制御信号SS2を生成する。制御信号生成部74により生成された駆動制御信号SS1は駆動モーター31に入力され、操舵制御信号SS2は操舵部32に入力される。駆動制御信号SS1が入力された駆動モーター31は、自動走行車1が走行パラメータPに含まれる走行速度に従って走行するように駆動輪311を駆動する。操舵制御信号SS2が入力された操舵部32は、自動走行車1が走行パラメータPに含まれる走行方向に沿って走行するように操舵輪321を操作する。
【0059】
また、制御信号生成部74は、走行パラメータ設定部73から出力された指令信号S1に基づいて、報知部4を制御するための報知制御信号SS3を生成する。制御信号生成部74により生成された報知制御信号SS3は、報知部4に入力される。報知制御信号SS3が入力された報知部4は、通行領域PA内における、自動走行車1が走行する基準走行ルートRS上の監視領域MRの位置を、監視領域MRを通行する監視対象歩行者WMに報知するための光や音を発信する。
【0060】
以上説明したように、走行制御装置6では、自動走行車1の前方側の監視領域MRを通行する監視対象歩行者WMの位置に関する位置指標が位置認識部721によって認識され、監視対象歩行者WMの行動を特定するための行動指標が行動予測部722によって認識される。そして、走行制御装置6において、走行パラメータ設定部73は、前記位置指標を表す位置指標データDD1に基づいて、自動走行車1の走行制御に関するパラメータとして、走行速度及び走行方向を含む、前記行動指標を表す行動指標データDD2に応じた走行パラメータPを設定する。つまり、走行制御装置6においては、行動指標データDD2に含まれる監視対象歩行者WMの歩行速度、歩行方向及び歩行挙動に応じて、自動走行車1の走行制御に関する走行パラメータPが設定される。
【0061】
走行パラメータPに基づく自動走行車1の走行制御は、監視対象歩行者WMの行動に応答するような制御となる。例えば、監視対象歩行者WMが自動走行車1を認識し、人間の習性として無意識に当該自動走行車1を回避するような回避行動を取った場合には、その歩行者の回避行動に応じた走行制御が実行される。このため、監視対象歩行者WMは、自動走行車1の走行動作を予測して、自動走行車1を意識した受動的な行動を取る必要はなく、自身の意図した通りに能動的な行動を取ればよい。監視対象歩行者WMが自身の意図した通りに能動的な行動を取ったとしても、自動走行車1が監視対象歩行者WMの行動に応じて走行するよう制御される。これにより、監視対象歩行者WMが自動走行中の自動走行車1を認識した場合、どのような行動を取ればよいのか困惑してしまうことはなく、監視対象歩行者WMのストレスを可及的に低減可能となる。従って、歩行者Wが通行する所定の通行領域PA内において、好適に歩行者Wとの共存が可能な自動走行車1の走行制御を実現するができる。
【0062】
<走行パラメータ設定部の動作の具体例>
上記の走行制御装置6において、走行パラメータ設定部73は、
図3に示すように、自動走行車1の走行方向DH前方側の監視領域MRを、自動走行車1からの距離が遠い順に遠距離監視範囲MRL、中間距離監視範囲MRM及び近距離監視範囲MRSに区画する。遠距離監視範囲MRLは自動走行車1からの距離が例えば5〜10mに設定された範囲であり、中間距離監視範囲MRMは自動走行車1からの距離が例えば1〜5mに設定された範囲であり、近距離監視範囲MRSは自動走行車1からの距離が例えば1m以内に設定された範囲である。
【0063】
そして、走行パラメータ設定部73は、位置指標データDD1に含まれる、自動走行車1から監視対象歩行者WMまでの距離を示す対象距離TDが遠距離監視範囲MRL、中間距離監視範囲MRM及び近距離監視範囲MRSのいずれの監視範囲に属するかによって、行動指標データDD2に応じた走行パラメータPを設定する。これにより、自動走行車1の前方側の監視領域MRにおいて、遠距離監視範囲MRL、中間距離監視範囲MRM及び近距離監視範囲MRSのいずれの監視範囲を監視対象歩行者WMが通行しているかに基づいて、その監視対象歩行者WMの行動に応じた走行パラメータPを設定することができる。
【0064】
(対象距離が遠距離監視範囲に属する場合)
走行パラメータ設定部73は、自動走行車1から監視対象歩行者WMまでの距離を示す対象距離TDが遠距離監視範囲MRLに属する場合、行動指標データDD2に含まれる監視対象歩行者WMの歩行挙動に基づいて、監視対象歩行者WMが、監視領域MR外への回避行動を取る可能性があることを示唆する所定の条件を満たす回避適格者であるか否かを判定する。そして、走行パラメータ設定部73は、監視対象歩行者WMが前記回避適格者の場合には、自動走行車1の走行パラメータPとして、走行速度を基準の第1速度(例えば時速5km)に設定すると共に、走行方向を基準走行ルートRSに沿った方向に設定する。また、走行パラメータ設定部73は、監視対象歩行者WMが前記回避適格者ではない場合には、自動走行車1の走行パラメータPとして、走行速度を前記第1速度に設定すると共に、走行方向を基準走行ルートRSから外れて監視対象歩行者WMを回避可能な回避ルートに沿った方向に設定する。
【0065】
このように、自動走行車1の前方側の監視領域MRにおける遠距離監視範囲MRLを通行する監視対象歩行者WMが、自動走行車1を回避する回避行動を取る可能性がある回避適格者であるか否かに応じて、自動走行車1の走行制御に関する走行パラメータPが設定される。監視対象歩行者WMが、例えば一人で前方を向いて直進歩行するような回避適格者である場合には、走行パラメータPに基づく自動走行車1の走行制御は、基準走行ルートRS上を基準の第1速度で自動走行車1を走行させる制御である。この場合、自動走行車1の走行制御は、遠距離監視範囲MRLを通行する監視対象歩行者WMの能動的な回避行動を待ちながら自動走行車1が走行するような制御となる。
【0066】
一方、監視対象歩行者WMが、例えば複数人での歩行や下方等の前方ではない方向を向いて蛇行したり、或いは首振りが多い等の、回避適格者ではない回避欠格者である場合には、走行パラメータPに基づく自動走行車1の走行制御は、回避ルート上を第1速度で自動走行車1を走行させる制御である。この場合、自動走行車1の走行制御は、遠距離監視範囲MRLを通行する監視対象歩行者WMを自動走行車1が回避して走行するような制御となる。
【0067】
(対象距離が中間距離監視範囲に属する場合)
走行パラメータ設定部73は、自動走行車1から監視対象歩行者WMまでの距離を示す対象距離TDが中間距離監視範囲MRMに属する場合、行動指標データDD2に含まれる監視対象歩行者WMの歩行方向に基づいて、監視対象歩行者WMが、自動走行車1の走行方向DHに対して逆方向に歩行する対向歩行者であるか、又は同一方向に歩行する並行歩行者であるかを判定する。
【0068】
走行パラメータ設定部73は、中間距離監視範囲MRMを通行する監視対象歩行者WMが対向歩行者の場合には、自動走行車1の走行パラメータPとして、走行速度を基準の第1速度に対して減速した所定の第2速度(例えば時速3km)に設定すると共に、走行方向を基準走行ルートRSに沿った方向に設定する。更に、走行パラメータ設定部73は、通行領域PA内における監視領域MRの位置を監視対象歩行者WMに報知する制御に関する指令信号S1を制御信号生成部74に向けて出力する。
【0069】
このように、自動走行車1の前方側の監視領域MRにおける中間距離監視範囲MRMを通行する監視対象歩行者WMが対向歩行者である場合には、走行パラメータPに基づく自動走行車1の走行制御は、基準走行ルートRS上を基準の第1速度に対して減速した第2速度で自動走行車1を走行させつつ、通行領域PA内における監視領域MRの位置を報知させる制御である。この場合、自動走行車1の走行制御は、中間距離監視範囲MRMを対向歩行する監視対象歩行者WMが前記報知を認識することにより、能動的な回避行動を取ることを待ちながら、自動走行車1が走行するような制御となる。
【0070】
走行パラメータ設定部73は、中間距離監視範囲MRMを通行する監視対象歩行者WMが並行歩行者の場合、行動指標データDD2に含まれる監視対象歩行者WMの歩行速度が前記第2速度以上であるときには、自動走行車1の走行パラメータPとして、走行速度を、前記第1速度を超えない範囲で歩行速度と同速度に設定すると共に、走行方向を基準走行ルートRSに沿った方向に設定する。走行パラメータ設定部73は、中間距離監視範囲MRMを通行する監視対象歩行者WMが並行歩行者であって、行動指標データDD2に含まれる歩行速度が前記第2速度未満であるときには、自動走行車1の走行パラメータPとして、走行速度を第1速度に設定すると共に、走行方向を基準走行ルートRSから外れて並行歩行者を回避可能な回避ルートに沿った方向に設定する。
【0071】
このように、自動走行車1の前方側の監視領域MRにおける中間距離監視範囲MRMを通行する監視対象歩行者WMが並行歩行者である場合には、当該監視対象歩行者WMの歩行速度に応じて、自動走行車1の走行制御に関する走行パラメータPが設定される。監視対象歩行者WMの歩行速度が前記第2速度以上であるときには、走行パラメータPに基づく自動走行車1の走行制御は、基準走行ルートRS上を監視対象歩行者WMの歩行速度と同速度で自動走行車1を走行させる制御である。この場合、自動走行車1の走行制御は、中間距離監視範囲MRMを前記第2速度以上で並行歩行する監視対象歩行者WMを自動走行車1が追従して走行するような制御となる。
【0072】
一方、監視対象歩行者WMの歩行速度が前記第2速度未満であるときには、走行パラメータPに基づく自動走行車1の走行制御は、回避ルート上を基準の第1速度で自動走行車1を走行させる制御である。この場合、自動走行車1の走行制御は、中間距離監視範囲MRMを前記第2速度未満で並行歩行する監視対象歩行者WMを自動走行車1が回避して走行するような制御となる。
【0073】
(対象距離が近距離監視範囲に属する場合)
走行パラメータ設定部73は、自動走行車1から監視対象歩行者WMまでの距離を示す対象距離TDが近距離監視範囲MRSに属する場合、自動走行車1の走行パラメータPとして走行速度をゼロに設定し、自動走行車1の走行を停止させる指令信号を出力する。自動走行車1の前方側の監視領域MRにおける近距離監視範囲MRSに監視対象歩行者WMが存在していた場合には、走行パラメータPに基づく自動走行車1の走行制御は、自動走行車1の走行を停止させる制御である。これにより、近距離監視範囲MRSに歩行者Wが存在していた場合に、自動走行車1を緊急停止させることができる。
【0074】
[走行制御方法について]
自動走行車1の自動走行を制御する走行制御方法は、上記の走行制御装置6の自動走行車1に対する制御により実現される。走行制御方法は、ルート設定ステップと、データ処理ステップと、位置認識ステップと、行動予測ステップと、ルート計画ステップと、走行パラメータ設定ステップと、制御信号生成ステップとを含む。
【0075】
ルート設定ステップは、歩行者Wが通行する通行領域PA内において自動走行車1が自動走行する基準のルートとなる基準走行ルートRSを設定するステップであって、上記のルート計画部723によって実行される。データ処理ステップは、カメラ51からの画像データD1と測域センサ52からの測域データD2とを処理するステップであって、上記の物体認識部711、物体検出部712及び車体位置推定部713によって実行される。
【0076】
位置認識ステップは、基準走行ルートRS上において自動走行車1の走行方向DH前方側の監視領域MRを通行する監視対象歩行者WMの位置に関する位置指標を認識するステップであって、上記の位置認識部721によって実行される。行動予測ステップは、監視対象歩行者WMの行動を特定するための指標として歩行速度、歩行方向及び歩行挙動を含む行動指標を認識するステップであって、上記の行動予測部722によって実行される。ルート計画ステップは、監視領域MR内を通行する監視対象歩行者WMを回避可能な回避ルートを生成して計画するステップであって、上記のルート計画部723によって実行される。
【0077】
走行パラメータ設定ステップは、位置指標データDD1に基づいて、自動走行車1の走行制御に関するパラメータとして、走行速度及び走行方向を含む、行動指標データDD2に応じた走行パラメータPを設定するステップであって、上記の走行パラメータ設定部73によって実行される。制御信号生成ステップは、走行パラメータPに基づき駆動モーター31、操舵部32及び報知部4を制御するための制御信号を生成するステップであって、上記の制御信号生成部74によって実行される。
【0078】
上記の走行制御装置6によって実行される走行制御方法について、
図9のフローチャートを参照して説明する。
【0079】
歩行者Wが通行する通行領域PAに自動走行車1が配置された状態において、自動走行車1の自動走行を制御する走行制御が開始される。なお、この状態では、走行制御装置6の地図データ格納部81には通行領域PAの地図データD3が予め記憶され、走行ルート格納部82には自動走行車1の基準走行ルートRSを表す走行ルートデータD4が予め記憶されている。
【0080】
まず、ルート計画部723は、走行ルート格納部82に記憶されている走行ルートデータD4を読み出すことにより、通行領域PA内において自動走行車1が自動走行する基準走行ルートRSを設定する(ステップa1、ルート設定ステップ)。基準走行ルートRSが設定されると、走行パラメータ設定部73は、自動走行車1の基準の走行パラメータPとして、走行速度を基準の第1速度(例えば時速5km)に設定すると共に、走行方向を基準走行ルートRSに沿った方向に設定する(走行パラメータ設定ステップ)。走行パラメータPが設定されると、制御信号生成部74は、その走行パラメータPに基づいて、駆動モーター31を制御するための駆動制御信号SS1を生成すると共に、操舵部32を制御するための操舵制御信号SS2を生成する(制御信号生成ステップ)。
【0081】
駆動制御信号SS1が駆動モーター31に入力されると共に、操舵制御信号SS2が操舵部32に入力されることにより、自動走行車1は、基準走行ルートRS上を第1速度で自動走行を開始する(ステップa2)。自動走行車1の自動走行が開始されると、所定の周期ごとに、カメラ51から画像データD1が出力されると共に、測域センサ52から測域データD2が出力される(ステップa3)。カメラ51からの画像データD1と測域センサ52からの測域データD2とは、データ処理部71によって処理される(データ処理ステップ)。このデータ処理ステップでは、物体認識部711が画像データD1に基づいて自動走行車1の前方側に存在する物体を認識して物体認識データD11を出力する。更に、データ処理ステップでは、物体検出部712が測域データD2に基づいて自動走行車1と物体との間の距離を検出して距離データD21を出力する。また、データ処理ステップでは、車体位置推定部713が測域データD2と地図データ格納部81に記憶されている地図データD3とに基づいて、通行領域PA内での自動走行車1の位置を推定して車体位置データD31を出力する。
【0082】
物体認識部711、物体検出部712及び車体位置推定部713から出力された各データは、解析部72によって解析される。具体的には、位置認識部721は、物体認識データD11、距離データD21及び走行ルートデータD4に基づいて、自動走行車1の前方側の監視領域MR内における監視対象歩行者WMの存否と、自動走行車1から監視対象歩行者WMまでの対象距離TDとを含む位置指標を認識し、位置指標データDD1を行動予測部722に向けて出力する(位置認識ステップ)。また、行動予測部722は、位置指標データDD1と距離データD21とに基づいて、監視対象歩行者WMの行動を特定するための行動指標を認識し、行動指標データDD2を位置指標データDD1と共に走行パラメータ設定部73に向けて出力する(行動予測ステップ)。
【0083】
自動走行車1の自動走行中において、走行パラメータ設定部73には、行動予測部722から出力された位置指標データDD1及び行動指標データDD2と、ルート計画部723から出力された車体位置データD31が付加されたルート計画データDD3とが、所定の周期ごとに入力される。位置指標データDD1、行動指標データDD2及びルート計画データDD3が走行パラメータ設定部73に入力される周期は、カメラ51及び測域センサ52からのデータの出力周期と略一致している。
【0084】
走行パラメータ設定部73は、位置指標データDD1に基づいて、監視領域MR内の近距離監視範囲MRSにおける監視対象歩行者WMの存否を判定する(ステップa4)。つまり、走行パラメータ設定部73は、位置指標データDD1に含まれる対象距離TDが近距離監視範囲MRSに属するか否かを判定する。対象距離TDが近距離監視範囲MRSに属する場合には、走行制御装置6は「近距離走行制御b1」を実行する。この「近距離走行制御b1」の詳細については後述する。
【0085】
対象距離TDが近距離監視範囲MRSに属さない場合には、走行パラメータ設定部73は、位置指標データDD1に基づいて、監視領域MR内の中間距離監視範囲MRMにおける監視対象歩行者WMの存否を判定する(ステップa5)。つまり、走行パラメータ設定部73は、位置指標データDD1に含まれる対象距離TDが中間距離監視範囲MRMに属するか否かを判定する。
【0086】
対象距離TDが中間距離監視範囲MRMに属する場合には、走行パラメータ設定部73は、行動指標データDD2に含まれる監視対象歩行者WMの歩行方向に基づいて、監視対象歩行者WMが並行歩行者であるか否かを判定する(ステップa51)。監視対象歩行者WMが並行歩行者である場合には、走行制御装置6は「第1中間距離走行制御c1」を実行する。この「第1中間距離走行制御c1」の詳細については後述する。
【0087】
一方、対象距離TDが中間距離監視範囲MRMに属する場合において、監視対象歩行者WMが並行歩行者ではないときには、走行パラメータ設定部73は、監視対象歩行者WMが対向歩行者であると認識する(ステップa52)。監視対象歩行者WMが対向歩行者であると認識されると、走行制御装置6は「第2中間距離走行制御d1」を実行する。この「第2中間距離走行制御d1」の詳細については後述する。
【0088】
対象距離TDが中間距離監視範囲MRMに属さない場合には、走行パラメータ設定部73は、位置指標データDD1に基づいて、監視領域MR内の遠距離監視範囲MRLにおける監視対象歩行者WMの存否を判定する(ステップa6)。つまり、走行パラメータ設定部73は、位置指標データDD1に含まれる対象距離TDが遠距離監視範囲MRLに属するか否かを判定する。
【0089】
対象距離TDが遠距離監視範囲MRLに属する場合には、走行パラメータ設定部73は、行動指標データDD2に含まれる監視対象歩行者WMの歩行方向に基づいて、監視対象歩行者WMが並行歩行者であるか否かを判定する(ステップa61)。監視対象歩行者WMが並行歩行者である場合には、後記のステップa7に処理が移行される。
【0090】
対象距離TDが遠距離監視範囲MRLに属する場合において、監視対象歩行者WMが並行歩行者ではないときには、走行パラメータ設定部73は、監視対象歩行者WMが対向歩行者であると認識する(ステップa62)。監視対象歩行者WMが対向歩行者であると認識されると、走行制御装置6は「遠距離走行制御e1」を実行する。この「遠距離走行制御e1」の詳細については後述する。
【0091】
対象距離TDが遠距離監視範囲MRLに属さない場合には、走行パラメータ設定部73は、自動走行車1の走行パラメータPを変更しない。このため、自動走行車1は、基準の第1速度での基準走行ルートRS上の自動走行を継続する(ステップa7)。
【0092】
自動走行車1の自動走行中において、走行パラメータ設定部73は、所定の周期ごとに入力されるルート計画データDD3に付加された車体位置データD31に基づいて、自動走行車1が基準走行ルートRS上の目的地に到着したか否かを判定する(ステップa8)。自動走行車1が目的地に到着した場合には、走行パラメータ設定部73は、走行速度がゼロに設定された走行パラメータPを制御信号生成部74に向けて出力する。これにより、自動走行車1の走行は停止されて、自動走行車1の走行制御が終了する。一方、自動走行車1が目的地に到着していない場合には、上記のステップa3に処理が戻されて、上記の走行制御が繰り返される。
【0093】
<近距離走行制御について>
上述したように、走行パラメータ設定部73が、自動走行車1から監視対象歩行者WMまでの距離を示す対象距離TDが近距離監視範囲MRSに属すると判定した場合、走行制御装置6により近距離走行制御b1が実行される。
図10は、走行制御装置6により実行される近距離走行制御b1の流れを示すフローチャートである。
図11は、走行制御装置6により実行される近距離走行制御b1を説明するための図である。
【0094】
近距離走行制御b1において、走行パラメータ設定部73は、走行速度がゼロの走行パラメータPを設定し、その走行パラメータPを制御信号生成部74に向けて出力する(ステップb11、走行パラメータ設定ステップ)。制御信号生成部74は、走行速度がゼロに設定された走行パラメータPに基づいて駆動制御信号SS1を生成し、その駆動制御信号SS1を駆動モーター31に向けて出力する(ステップb12、制御信号生成ステップ)。駆動制御信号SS1が入力された駆動モーター31は駆動を停止し、これに伴って駆動輪311が停止する。これにより、近距離監視範囲MRSに歩行者Wが存在していた場合に、
図11(A)に示すように、自動走行車1を緊急停止させることができる(ステップb13)。
【0095】
自動走行車1の緊急停止後において、走行パラメータ設定部73は、所定の周期ごとに入力される位置指標データDD1に基づいて、近距離監視範囲MRSにおける監視対象歩行者WMの存否を判定する(ステップb14)。つまり、走行パラメータ設定部73は、監視対象歩行者WMが近距離監視範囲MRS外へ立ち去ったか否かを判定する。
【0096】
図11(B)に示すように、近距離監視範囲MRSに監視対象歩行者WMが継続して存在していた場合、ルート計画部723は、車体位置データD31と地図データD3とに基づいて、基準走行ルートRSから外れて近距離監視範囲MRS内の監視対象歩行者WMを回避可能な回避ルートRAを生成する(ステップb15、ルート計画ステップ)。ルート計画部723は、生成した回避ルートRAを表すルート計画データDD3を走行パラメータ設定部73に向けて出力する。
【0097】
回避ルートRAを表すルート計画データDD3が入力されると、走行パラメータ設定部73は、走行速度を基準の第1速度とし、走行方向を回避ルートRAに沿った方向とした回避用の走行パラメータPを設定する(ステップb16、走行パラメータ設定ステップ)。走行パラメータ設定部73は、設定した回避用の走行パラメータPを制御信号生成部74に向けて出力する。制御信号生成部74は、回避用の走行パラメータPに基づいて駆動制御信号SS1及び操舵制御信号SS2を生成する(ステップb17、制御信号生成ステップ)。制御信号生成部74は、駆動制御信号SS1を駆動モーター31に向けて出力し、操舵制御信号SS2を操舵部32に向けて出力する。
【0098】
駆動制御信号SS1が入力された駆動モーター31は、自動走行車1が回避用の走行パラメータPに含まれる走行速度(第1速度)に従って走行するように駆動輪311を駆動する。操舵制御信号SS2が入力された操舵部32は、自動走行車1が回避用の走行パラメータPに含まれる回避ルートRAに沿った方向に走行するように操舵輪321を操作する。これにより、自動走行車1は、回避ルートRAの走行後、基準走行ルートRSへ戻るように自動走行する(ステップb18)。
【0099】
自動走行車1の緊急停止後において、
図11(C)に示すように、監視対象歩行者WMが近距離監視範囲MRS外へ立ち去った場合、走行パラメータ設定部73は、走行速度を基準の第1速度とし、走行方向を基準走行ルートRSに沿った方向とした走行再開用の走行パラメータPを設定する(ステップb141、走行パラメータ設定ステップ)。走行パラメータ設定部73は、設定した走行再開用の走行パラメータPを制御信号生成部74に向けて出力する。制御信号生成部74は、走行再開用の走行パラメータPに基づいて駆動制御信号SS1及び操舵制御信号SS2を生成する(ステップb142、制御信号生成ステップ)。制御信号生成部74は、駆動制御信号SS1を駆動モーター31に向けて出力し、操舵制御信号SS2を操舵部32に向けて出力する。
【0100】
駆動制御信号SS1が入力された駆動モーター31は、自動走行車1が走行再開用の走行パラメータPに含まれる走行速度(第1速度)に従って走行するように駆動輪311を駆動する。操舵制御信号SS2が入力された操舵部32は、自動走行車1が走行再開用の走行パラメータPに含まれる基準走行ルートRSに沿った方向に走行するように操舵輪321を操作する。これにより、自動走行車1は、基準走行ルートRS上での自動走行を再開する(ステップb143)。
【0101】
<第1中間距離走行制御について>
上述したように、走行パラメータ設定部73が、自動走行車1から監視対象歩行者WMまでの距離を示す対象距離TDが中間距離監視範囲MRMに属し、その監視対象歩行者WMが並行歩行者であると判定した場合、走行制御装置6により第1中間距離走行制御c1が実行される。
図12は、走行制御装置6により実行される第1中間距離走行制御c1の流れを示すフローチャートである。
図13は、走行制御装置6により実行される第1中間距離走行制御c1を説明するための図である。
【0102】
図13(A)に示すように、中間距離監視範囲MRM内において、自動走行車1の走行方向DHと同一方向の方向WHに並行歩行する監視対象歩行者WMが存在していた場合、第1中間距離走行制御c1が実行される。第1中間距離走行制御c1において、走行パラメータ設定部73は、行動指標データDD2に含まれる監視対象歩行者WMの歩行速度に基づいて、並行歩行者である監視対象歩行者WMの歩行速度が第2速度(例えば時速3km)以上であるか否かを判定する(ステップc11)。
【0103】
図13(B)に示すように、監視対象歩行者WM(並行歩行者)の歩行速度が第2速度以上である場合、走行パラメータ設定部73は、走行速度を、基準の第1速度(例えば時速5km)を超えない範囲で歩行速度と同速度とし、走行方向を基準走行ルートRSに沿った方向とした追従走行用の走行パラメータPを設定する(ステップc12、走行パラメータ設定ステップ)。走行パラメータ設定部73は、設定した追従走行用の走行パラメータPを制御信号生成部74に向けて出力する。制御信号生成部74は、追従走行用の走行パラメータPに基づいて駆動制御信号SS1及び操舵制御信号SS2を生成する(ステップc13、制御信号生成ステップ)。制御信号生成部74は、駆動制御信号SS1を駆動モーター31に向けて出力し、操舵制御信号SS2を操舵部32に向けて出力する。
【0104】
駆動制御信号SS1が入力された駆動モーター31は、自動走行車1が追従走行用の走行パラメータPに含まれる走行速度(歩行速度と同速度)に従って走行するように駆動輪311を駆動する。操舵制御信号SS2が入力された操舵部32は、自動走行車1が追従走行用の走行パラメータPに含まれる基準走行ルートRSに沿った方向に走行するように操舵輪321を操作する。これにより、自動走行車1は、基準走行ルートRS上で監視対象歩行者WM(並行歩行者)に追従するように自動走行する(ステップc14)。
【0105】
図13(C)に示すように、監視対象歩行者WM(並行歩行者)の歩行速度が第2速度未満である場合、ルート計画部723は、車体位置データD31と地図データD3とに基づいて、基準走行ルートRSから外れて中間距離監視範囲MRM内の監視対象歩行者WMを回避可能な回避ルートRAを生成する(ステップc111、ルート計画ステップ)。ルート計画部723は、生成した回避ルートRAを表すルート計画データDD3を走行パラメータ設定部73に向けて出力する。
【0106】
回避ルートRAを表すルート計画データDD3が入力されると、走行パラメータ設定部73は、走行速度を基準の第1速度とし、走行方向を回避ルートRAに沿った方向とした回避用の走行パラメータPを設定する(ステップc112、走行パラメータ設定ステップ)。走行パラメータ設定部73は、設定した回避用の走行パラメータPを制御信号生成部74に向けて出力する。制御信号生成部74は、回避用の走行パラメータPに基づいて駆動制御信号SS1及び操舵制御信号SS2を生成する(ステップc113、制御信号生成ステップ)。制御信号生成部74は、駆動制御信号SS1を駆動モーター31に向けて出力し、操舵制御信号SS2を操舵部32に向けて出力する。
【0107】
駆動制御信号SS1が入力された駆動モーター31は、自動走行車1が回避用の走行パラメータPに含まれる走行速度(第1速度)に従って走行するように駆動輪311を駆動する。操舵制御信号SS2が入力された操舵部32は、自動走行車1が回避用の走行パラメータPに含まれる回避ルートRAに沿った方向に走行するように操舵輪321を操作する。これにより、自動走行車1は、回避ルートRAの走行後、基準走行ルートRSへ戻るように自動走行する(ステップc114)。
【0108】
<第2中間距離走行制御について>
上述したように、走行パラメータ設定部73が、自動走行車1から監視対象歩行者WMまでの距離を示す対象距離TDが中間距離監視範囲MRMに属し、その監視対象歩行者WMが対向歩行者であると判定した場合、走行制御装置6により第2中間距離走行制御d1が実行される。
図14は、走行制御装置6により実行される第2中間距離走行制御d1の流れを示すフローチャートである。
図15は、走行制御装置6により実行される第2中間距離走行制御d1を説明するための図である。
【0109】
図15(A)に示すように、中間距離監視範囲MRM内において、自動走行車1の走行方向DHと逆方向の方向WHに対向歩行する監視対象歩行者WMが存在していた場合、第2中間距離走行制御d1が実行される。第2中間距離走行制御d1において、走行パラメータ設定部73は、走行速度を基準の第1速度に対して減速した所定の第2速度(例えば時速3km)とし、走行方向を基準走行ルートRSに沿った方向とした減速走行用の走行パラメータPを設定する(ステップd11、走行パラメータ設定ステップ)。走行パラメータ設定部73は、設定した減速走行用の走行パラメータPを制御信号生成部74に向けて出力する。更に、走行パラメータ設定部73は、通行領域PA内における監視領域MRの位置を監視対象歩行者WMに報知するためのルート表示報知用の指令信号S1を制御信号生成部74に向けて出力する(ステップd12)。
【0110】
制御信号生成部74は、減速走行用の走行パラメータPに基づいて駆動制御信号SS1及び操舵制御信号SS2を生成すると共に、ルート表示報知用の指令信号S1に基づいて報知制御信号SS3を生成する(ステップd13、制御信号生成ステップ)。制御信号生成部74は、駆動制御信号SS1を駆動モーター31に向けて出力し、操舵制御信号SS2を操舵部32に向けて出力し、報知制御信号SS3を報知部4に向けて出力する。
【0111】
駆動制御信号SS1が入力された駆動モーター31は、自動走行車1が減速走行用の走行パラメータPに含まれる走行速度(第2速度)に従って走行するように駆動輪311を駆動する。操舵制御信号SS2が入力された操舵部32は、自動走行車1が減速走行用の走行パラメータPに含まれる基準走行ルートRSに沿った方向に走行するように操舵輪321を操作する。報知制御信号SS3が入力された報知部4は、通行領域PA内における監視領域MRの位置を監視対象歩行者WMに報知するための、光や音のルート表示報知情報J1を発信する。これにより、
図15(B)に示すように、自動走行車1は、基準走行ルートRS上を、ルート表示報知情報J1を発信しながら第2速度で自動走行する(ステップd14)。
【0112】
ルート表示報知情報J1を発信しながらの自動走行車1の自動走行中において、走行パラメータ設定部73は、所定の周期ごとに入力される位置指標データDD1に基づいて、中間距離監視範囲MRMにおける監視対象歩行者WMの存否を判定する(ステップd15)。つまり、走行パラメータ設定部73は、監視対象歩行者WMが中間距離監視範囲MRS外へ立ち去ったか否かを判定する。
【0113】
中間距離監視範囲MRMに監視対象歩行者WMが継続して存在していた場合、走行パラメータ設定部73は、所定の周期ごとに入力される位置指標データDD1に基づいて、近距離監視範囲MRSにおける監視対象歩行者WMの存否を判定する(ステップd16)。近距離監視範囲MRSに監視対象歩行者WMが存在している場合には、上記の「近距離走行制御b1」に処理を移行し、近距離監視範囲MRSに監視対象歩行者WMが存在しない場合には、上記のステップd15に処理を移行してステップd15以降の各ステップで示される処理が繰り返される。
【0114】
ルート表示報知情報J1を発信しながらの自動走行車1の自動走行中において、
図15(C)に示すように、監視対象歩行者WMが中間距離監視範囲MRM外へ立ち去った場合、走行パラメータ設定部73は、その監視対象歩行者WMへの感謝の意思を報知するための感謝報知用の指令信号S1を制御信号生成部74に向けて出力する(ステップd151)。制御信号生成部74は、感謝報知用の指令信号S1に基づいて報知制御信号SS3を生成し、その報知制御信号SS3を報知部4に向けて出力する(ステップd152)。報知制御信号SS3が入力された報知部4は、監視対象歩行者WMへの感謝の意思を報知するための、光や音の感謝報知情報J2を発信する。これにより、
図15(C)に示すように、自動走行車1は、基準走行ルートRS上を、感謝報知情報J2を発信しながら第2速度で自動走行する(ステップd153)。
【0115】
<遠距離走行制御について>
上述したように、走行パラメータ設定部73が、自動走行車1から監視対象歩行者WMまでの距離を示す対象距離TDが遠距離監視範囲MRLに属し、その監視対象歩行者WMが対向歩行者であると判定した場合、走行制御装置6により遠距離走行制御e1が実行される。
図16は、走行制御装置6により実行される遠距離走行制御e1の流れを示すフローチャートである。
図17は、走行制御装置6により実行される遠距離走行制御e1を説明するための図である。
【0116】
図17(A)及び
図17(B)に示すように、遠距離監視範囲MRL内において、自動走行車1の走行方向DHと逆方向の方向WHに対向歩行する監視対象歩行者WMが存在していた場合、遠距離走行制御e1が実行される。遠距離走行制御e1において、走行パラメータ設定部73は、行動指標データDD2に含まれる監視対象歩行者WMの歩行挙動に基づいて、対向歩行する監視対象歩行者WMが、監視領域MR外への回避行動を取る可能性があることを示唆する所定の条件を満たす回避適格者であるか否かを判定する。
【0117】
図17(A)に示すように、監視対象歩行者WMの歩行挙動が、一人で前方を向いて直進歩行するような挙動である場合には、走行パラメータ設定部73は、当該監視対象歩行者WMが回避適格者であると判定する。監視対象歩行者WMが回避適格者である場合、走行パラメータ設定部73は、所定の周期ごとに入力される位置指標データDD1に基づいて、遠距離監視範囲MRLにおける監視対象歩行者WMの存否を判定する(ステップe12)。つまり、走行パラメータ設定部73は、監視対象歩行者WM(回避適格者)が遠距離監視範囲MRL外へ立ち去ったか否かを判定する。
【0118】
監視対象歩行者WM(回避適格者)が遠距離監視範囲MRL外へ立ち去った場合、
図9に示すステップa3に処理を移行し、ステップa3以降の各ステップで示される処理が繰り返される。
【0119】
一方、遠距離監視範囲MRLに監視対象歩行者WM(回避適格者)が継続して存在していた場合、走行パラメータ設定部73は、走行速度を基準の第1速度とし、走行方向を基準走行ルートRSに沿った方向とした基準の走行パラメータPを設定する(ステップe13、走行パラメータ設定ステップ)。走行パラメータ設定部73は、設定した基準の走行パラメータPを制御信号生成部74に向けて出力する。制御信号生成部74は、基準の走行パラメータPに基づいて駆動制御信号SS1及び操舵制御信号SS2を生成する(ステップe14、制御信号生成ステップ)。制御信号生成部74は、駆動制御信号SS1を駆動モーター31に向けて出力し、操舵制御信号SS2を操舵部32に向けて出力する。
【0120】
駆動制御信号SS1が入力された駆動モーター31は、自動走行車1が基準の走行パラメータPに含まれる走行速度(第1速度)に従って走行するように駆動輪311を駆動する。操舵制御信号SS2が入力された操舵部32は、自動走行車1が基準の走行パラメータPに含まれる基準走行ルートRSに沿った方向に走行するように操舵輪321を操作する。これにより、自動走行車1は、基準走行ルートRS上における基準の第1速度での自動走行を継続する(ステップe15)。この場合、自動走行車1の走行制御は、遠距離監視範囲MRLを通行する監視対象歩行者WM(回避適格者)の能動的な回避行動を待ちながら自動走行車1が走行するような制御となる。
【0121】
自動走行車1の自動走行の継続中において、走行パラメータ設定部73は、所定の周期ごとに入力される位置指標データDD1に基づいて、中間距離監視範囲MRMにおける監視対象歩行者WM(回避適格者)の存否を判定する(ステップe16)。中間距離監視範囲MRSに監視対象歩行者WM(回避適格者)が存在している場合には、上記の「第2中間距離走行制御d1」に処理を移行し、中間距離監視範囲MRSに監視対象歩行者WM(回避適格者)が存在しない場合には、上記のステップe12に処理を移行してステップe12以降の各ステップで示される処理が繰り返される。
【0122】
図17(B)に示すように、監視対象歩行者WMの歩行挙動が、複数人での歩行や下方等の前方ではない方向を向いて蛇行したり、或いは首振りが多い等の挙動である場合には、走行パラメータ設定部73は、当該監視対象歩行者WMが回避適格者ではない回避欠格者であると判定する。監視対象歩行者WMが回避欠格者である場合、ルート計画部723は、車体位置データD31と地図データD3とに基づいて、基準走行ルートRSから外れて遠距離監視範囲MRL内の監視対象歩行者WM(回避欠格者)を回避可能な回避ルートRAを生成する(ステップe111、ルート計画ステップ)。ルート計画部723は、生成した回避ルートRAを表すルート計画データDD3を走行パラメータ設定部73に向けて出力する。
【0123】
回避ルートRAを表すルート計画データDD3が入力されると、走行パラメータ設定部73は、走行速度を基準の第1速度とし、走行方向を回避ルートRAに沿った方向とした回避用の走行パラメータPを設定する(ステップe112、走行パラメータ設定ステップ)。走行パラメータ設定部73は、設定した回避用の走行パラメータPを制御信号生成部74に向けて出力する。制御信号生成部74は、回避用の走行パラメータPに基づいて駆動制御信号SS1及び操舵制御信号SS2を生成する(ステップe113、制御信号生成ステップ)。制御信号生成部74は、駆動制御信号SS1を駆動モーター31に向けて出力し、操舵制御信号SS2を操舵部32に向けて出力する。
【0124】
駆動制御信号SS1が入力された駆動モーター31は、自動走行車1が回避用の走行パラメータPに含まれる走行速度(第1速度)に従って走行するように駆動輪311を駆動する。操舵制御信号SS2が入力された操舵部32は、自動走行車1が回避用の走行パラメータPに含まれる回避ルートRAに沿った方向に走行するように操舵輪321を操作する。これにより、自動走行車1は、回避ルートRAの走行後、基準走行ルートRSへ戻るように自動走行する(ステップe114)。この場合、自動走行車1の走行制御は、遠距離監視範囲MRLを通行する監視対象歩行者WM(回避欠格者)を自動走行車1が回避して走行するような制御となる。監視対象歩行者WM(回避欠格者)の回避後に自動走行車1が基準走行ルートRSへ戻ると、
図9に示すステップa3に処理を移行し、ステップa3以降の各ステップで示される処理が繰り返される。
【0125】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取り得る。
【0126】
上記実施形態では、走行制御装置6の制御に基づいて、自動走行車1が自動走行する構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。自動走行車1は、自動走行モードと運転者操作モードとの間で走行モードの切り替えが可能に構成されていてもよい。自動走行モードに設定された場合、上記のように走行制御装置6の制御に基づき自動走行車1が自動走行する。運転者操作モードに設定された場合、運転者による自動走行車1の運転操作が可能となる。運転者は、走行機構3を操作することにより、自動走行車1を走行させることができる。
【課題】歩行者が通行する所定の通行領域内で当該歩行者のストレスを可及的に低減可能であって、歩行者との共存が可能な自動走行車の走行制御を実現するができる走行制御装置及び走行制御方法、並びにそれを使用する自動走行車を提供する。
【解決手段】走行制御装置6は、位置認識部721と行動予測部722と走行パラメータ設定部73とを備える。位置認識部721は、基準走行ルートRS上において自動走行車1の前方側の監視領域MRを通行する監視対象歩行者WMの位置に関する位置指標を認識する。行動予測部722は、監視対象歩行者WMの行動を特定するための指標として歩行速度及び歩行方向を含む行動指標を認識する。そして、走行パラメータ設定部73は、前記位置指標に基づいて、自動走行車1の走行制御に関するパラメータとして、走行速度及び走行方向を含む、前記行動指標に応じた走行パラメータPを設定する。