(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
物性が互いに異なる板状または膜状の複数の構成体が積層された積層体の表面に電気信号を供給した状態で当該表面における測定対象部位の電位を測定する電位測定処理を実行する測定部と、
前記電位測定処理によって測定された前記電位の測定値を用いて予め決められた計算処理を実行し、前記積層体における前記各構成体間の界面の界面抵抗値を求める処理部とを備え、
前記処理部は、複数の前記測定対象部位における各前記測定値を元とするベクトル量である測定電位ベクトルを特定し、前記複数の構成体の各抵抗率の逆数である各導電率と前記界面抵抗値の逆数である界面コンダクタンスとをパラメータとして含む数式に、前記各導電率の初期値として設定された各初期導電率と前記界面コンダクタンスの初期値として設定された初期界面コンダクタンスとを元とするベクトル量である初期値ベクトルを代入して前記各測定対象部位における前記各電位の計算値を算出すると共に当該各計算値を元とするベクトル量である計算値ベクトルを特定し、前記測定電位ベクトル、前記計算値ベクトルおよび前記初期値ベクトルに基づいて前記初期値ベクトルを修正するための修正値ベクトルを算出し、当該修正値ベクトルで前記初期値ベクトルを修正した修正後ベクトルを算出し、当該修正後ベクトルを構成する元としての前記導電率および前記界面コンダクタンスを求め、当該導電率から前記抵抗率を算出すると共に当該界面コンダクタンスから前記界面抵抗値を算出する処理を前記計算処理として実行する測定装置。
物性が互いに異なる板状または膜状の複数の構成体が積層された積層体の表面に電気信号を供給した状態で当該表面における測定対象部位の電位を測定する電位測定処理を実行し、
前記電位測定処理によって測定した前記電位の測定値を用いて予め決められた計算処理を実行し、前記積層体における前記各構成体間の界面の界面抵抗値を求める際に、
複数の前記測定対象部位における各前記測定値を元とするベクトル量である測定電位ベクトルを特定し、前記複数の構成体の各抵抗率の逆数である各導電率と前記界面抵抗値の逆数である界面コンダクタンスとをパラメータとして含む数式に、前記各導電率の初期値として設定された各初期導電率と前記界面コンダクタンスの初期値として設定された初期界面コンダクタンスとを元とするベクトル量である初期値ベクトルを代入して前記各測定対象部位における前記各電位の計算値を算出すると共に当該各計算値を元とするベクトル量である計算値ベクトルを特定し、前記測定電位ベクトル、前記計算値ベクトルおよび前記初期値ベクトルに基づいて前記初期値ベクトルを修正するための修正値ベクトルを算出し、当該修正値ベクトルで前記初期値ベクトルを修正した修正後ベクトルを算出し、当該修正後ベクトルを構成する元としての前記導電率および前記界面コンダクタンスを求め、当該導電率から前記抵抗率を算出すると共に当該界面コンダクタンスから前記界面抵抗値を算出する処理を前記計算処理として実行する測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、測定装置および測定方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0033】
最初に、測定装置の一例としての
図1に示す測定装置1の構成について説明する。測定装置1は、例えば、
図2に示すリチウムイオン電池200の正極100aおよび負極100b(いずれも「積層体」に相当する)を構成する各構成体間の界面の界面抵抗値、および各構成体の抵抗率を測定可能に構成されている。
【0034】
ここで、リチウムイオン電池200は、
図2に示すように、一例として、正極100aと負極100b(以下、正極100aおよび負極100bを区別しないときには「電極100」ともいう)とを、各電極100間にセパレータ110を挟んで重ね合わせて構成されている。なお、同図では、リチウムイオン電池200の構成を概略的に図示しているため、各電極100や各セパレータ110が収容される筐体等の図示を省略している。
【0035】
正極100aおよび負極100bは、物性が互いに異なる板状または膜状の複数の構成体が積層されてそれぞれ構成されている。具体的には、正極100aは、
図2に示すように、一例として、アルミニウムで膜状に形成された構成体としての金属箔101aと、金属箔101aの一面または両面(この例では、一面)に活物質としてのコバルト酸リチウムを塗布することで膜状に形成された構成体としての活物質層102aとを備えて構成されている。この場合、金属箔101aと活物質層102aとが密着しているほど高機能であることが知られている。また、金属箔101aと活物質層102aの界面103aの界面抵抗値Rsが低いほど密着状態が良好である(密着が高い)ことが発明者らの研究結果から明らかとなっている。
【0036】
負極100bは、
図2に示すように、一例として、銅で膜状に形成された構成体としての金属箔101b(以下、上記した正極100aの金属箔101aと金属箔101bとを区別しないときには「金属箔101」ともいう)と、金属箔101bの一面または両面(この例では、一面)に活物質としてのカーボンを塗布することで膜状に形成された構成体としての活物質層102b(以下、上記した正極100aの活物質層102aと活物質層102bとを区別しないときには「活物質層102」ともいう)とを備えて構成されている。この負極100bにおいても、正極100aと同様にして、金属箔101bと活物質層102bとが密着しているほど高機能であり、金属箔101bと活物質層102bとの界面103b(以下、正極100aの活物質層102aと界面103bとを区別しないときには「界面103」ともいう)の界面抵抗値Rsが低いほど密着状態が良好である(密着が高い)ことが発明者らの研究結果から明らかとなっている。
【0037】
セパレータ110は、正極100aおよび負極100bを隔離して短絡を防止すると共に、空孔内に電解液を保持して電極100間におけるリチウムイオンの通路を形成する機能を有する部材であって、一例として、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂で形成された多孔質膜 (フィルム)で構成されている。
【0038】
一方、測定装置1は、
図1に示すように、測定部11、処理部12、プローブユニット13、記憶部14および表示部15を備えて構成されている。
【0039】
測定部11は、図外の電源部および電圧検出部を備えて構成され、電極100(活物質層102)の表面Sにおける信号入力部位Ps1,Ps2(
図3参照)にプローブユニット13を介して測定用の電気信号(一例として、直流定電流)を供給した状態で、表面SにおけるN箇所(この例では、3箇所)の測定対象部位Pv1〜Pv3(同図参照:以下、区別しないときには「測定対象部位Pv」ともいう)の電位(同図に示すグランド電位Gとの電位差)を測定する電位測定処理を実行する。ここで、測定対象部位Pvの箇所数Nは、測定装置1を用いて測定しようとしている界面抵抗値や抵抗率の数(つまり、未知の値の数)をnとしたときに、「N≧n」に規定されている。この場合、この例では、界面103の界面抵抗値Rs、金属箔101の抵抗率ρ1および活物質層102の抵抗率ρ2の3つの値を測定装置1を用いて測定しようとしており(n=3であり)、N≧nの一例として、N=n(つまり、Nが3)に規定されている。なお、同図では、電極100(活物質層102)の表面Sを図外のケーブルを介してグランド電位Gに接続しているが、プローブユニット13における後述する各プローブ31のうちの、測定対象部位Pvの電位の測定に用いるプローブ31を除くプローブ31を介してグランド電位Gに接続することもできる。この場合、グランド電位Gに接続するためのプローブ31が接触している表面S上の部位は、上記した箇所数Nにはカウントされない。
【0040】
処理部12は、測定部11を制御して電位測定処理を実行させる。また、処理部12は、記憶部14を制御して測定部11によって測定された測定値Vmを記憶させる。また、処理部12は、後述する界面抵抗測定処理50(
図5参照)を実行して、測定部11によって測定された電位の測定値Vmに基づき、電極100における金属箔101と活物質層102との界面103の界面抵抗値Rs、金属箔101の抵抗率ρ1、および活物質層102の抵抗率ρ2を測定する。また、処理部12は、測定した抵抗率ρ1,ρ2および界面抵抗値Rsを表示部15に表示させる。
【0041】
プローブユニット13は、複数のプローブ31と、プローブ31を支持する支持部32とを備えて構成されている。この場合、プローブユニット13は、一例として、各信号入力部位Ps1,Ps2に接触させる2本のプローブ31、および各測定対象部位Pv1〜Pv3に接触させる3本のプローブ31の合計5本のプローブ31を備えている。
【0042】
記憶部14は、処理部12の制御に従い、測定部11によって測定された測定値Vm、並びに処理部12によって測定された抵抗率ρ1,ρ2および界面抵抗値Rsを記憶する。また、記憶部14は、処理部12によって実行される界面抵抗測定処理50において用いられる閾値ε(予め規定された規定値)を記憶する。この場合、閾値εは、界面抵抗測定処理50において算出される後述する評価関数J(ρ1,Rs,ρ2)と比較されて、評価関数J(ρ1,Rs,ρ2)が収束に向かっているか否かを判断するための値であって、この閾値εが「0」に近いほど高い精度の界面抵抗値Rsの測定が求められていることを意味している。表示部15は、処理部12の制御に従い、処理部12によって測定された抵抗率ρ1,ρ2および界面抵抗値Rsを表示する。
【0043】
次に、測定装置1を用いて、
図2に示すリチウムイオン電池200の各電極100を構成する構成体としての金属箔101の抵抗率ρ1、活物質層102の抵抗率ρ2、および金属箔101と活物質層102との界面103の界面抵抗値Rsを測定する測定方法について説明する。
【0044】
まず、正極100aを測定対象とするときには、
図3に示すように、活物質層102aを上向きにした状態の正極100aを載置台300の上に載置する。次いで、各プローブ31の先端部を下向きにした状態のプローブユニット13を正極100aにおける活物質層102aの上に載置する。この際に、同図に示すように、活物質層102aの表面Sにおける信号入力部位Ps1,Ps2および測定対象部位Pv1〜Pv3に各プローブ31の先端部がそれぞれ接触する。
【0045】
続いて、図外の操作部を操作して測定の開始を指示する。これに応じて、処理部12が、
図5に示す界面抵抗測定処理50を実行する。この界面抵抗測定処理50では、処理部12は、測定部11に対して電位測定処理の実行を指示する(ステップ51)。
【0046】
この電位測定処理では、測定部11は、図外の電源部から測定用の電気信号(一例として、直流定電流)を出力させる。この際に、プローブユニット13のプローブ31を介して電気信号が正極100a(活物質層102a)の表面Sにおける信号入力部位Ps1,Ps2間に供給される。次いで、測定部11は、表面Sにおける各測定対象部位Pv1〜Pv3の電位(
図3に示すグランド電位Gを0Vとしたときのグランド電位Gと各測定対象部位Pvとの間の電位差)を電圧検出部によって検出し、その測定値Vm(測定値Vmを示すデータ)を処理部12に出力する。続いて、処理部12は、測定値Vmを記憶部14に記憶させる。
【0047】
次いで、処理部12は、正極100aの各測定対象部位Pvにおける電位の計算値Vtを算出する。具体的には、処理部12は、予め決められたアルゴリズムに従い、
図4に概念的に示すように、マトリクス状に配列したモデル抵抗Rmで構成されて、正極100a内の各部位の電位を示す等価回路を作成するモデル化を行う。また、処理部12は、作成した等価回路から測定対象部位Pv1〜Pv3における電位の計算値Vtを算出する数式(界面抵抗値Rsおよび抵抗率ρ1,ρ2をパラメータ(変数)として含む数式であって、以下、この数式を「Vt(ρ1,Rs,ρ2)」と表す)を作成する(ステップ52)。なお、等価回路や数式を予め記憶部14に記憶させておき、処理部12が、等価回路を記憶部14から読み出して数式を作成したり、数式を記憶部14から読み出したりする構成を採用することもできる。
【0048】
次に、処理部12は、上記の数式Vt(ρ1,Rs,ρ2)に代入する抵抗率ρ1の代入抵抗率ρp1、抵抗率ρ2の代入抵抗率ρp2、および界面抵抗値Rsの代入抵抗値Rpの各初期値を設定する(ステップ53)。この場合、初期値として設定する代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp1,ρp2の値は、任意の値に設定することができる。一例として、金属箔101aや活物質層102aの材質から想定される一般的な値を採用することができる。
【0049】
続いて、処理部12は、代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp1,ρp2を数式Vt(ρ1,Rs,ρ2)に代入して、各測定対象部位Pv1〜Pv3における各計算値Vtを算出する(ステップ54)。
【0050】
次いで、処理部12は、測定部11によって測定された(記憶部14に記憶されている)電位の測定値Vmと算出した計算値Vtとの差分値を測定対象部位Pv毎に算出する。この場合、差分値を算出する処理が比較処理に相当し、算出した差分値が比較結果に相当する。また、処理部12は、算出した各差分値の二乗和を算出し、さらに、算出した二乗和の平均値(二乗和を測定対象部位Pv数で除した値)を算出する。ここで、このようにして算出した値(差分値を用いて統計的手法の一例としての最小二乗法で算出した値)は、代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp1,ρp2によって変化する関数ということができ、以下、この関数を評価関数J(ρ1,Rs,ρ2)、または単に評価関数Jと表す(ステップ55)。なお、評価関数J(ρ1,Rs,ρ2)、および測定対象部位Pv毎に算出した測定値Vmと計算値Vtとの差分値の二乗和の関係は次の式(1)で表される。
J(ρ1,R2,ρ2)=Σ[i∈Surface]{Vmi−Vti(ρ1,R2,ρ2)}
2/N・・・式(1)
この場合、式(1)において、「i」は、各測定対象部位Pvに対して1から順番に付された番号(上記例では、1〜3)を意味し、「Σ[i∈Surface]」は、電極100(活物質層102)の表面Sに設定されている全ての測定対象部位Pvについての{Vmi−Vti(ρ1,R2,ρ2)}
2を加算することを意味する。また、「N」は、上記したように表面Sに設定されている測定対象部位Pvの箇所数を意味する。
【0051】
続いて、処理部12は、記憶部14から閾値εを読み出して、算出した評価関数Jと閾値εとを比較し、評価関数Jが閾値ε未満か否か(比較結果が予め規定された規定条件を満たしているか否か)を判別する(ステップ56)。この場合、処理部12は、評価関数Jが閾値ε以上(評価関数Jが閾値ε未満ではない)と判別したときには、代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp1,ρp2を変更して(ステップ57)、上記したステップ54〜ステップ56を実行する。以下、処理部12は、ステップ56において、評価関数Jが閾値ε以上と判別したときには、ステップ54〜ステップ56を繰り返して実行する。
【0052】
一方、処理部12は、ステップ56において、評価関数Jが閾値ε未満である(比較結果が予め規定された規定条件を満たしている)と判別したときには、その時点において数式Vt(ρ1,Rs,ρ2)に代入した代入抵抗率ρp1を抵抗率ρ1とし、代入抵抗率ρp2を抵抗率ρ2とし、代入抵抗値Rpを界面抵抗値Rsとして決定する(ステップ58)。次いで、処理部12は、決定した抵抗率ρ1,ρ2および界面抵抗値Rs(つまり、測定結果)を表示部15に表示させて(ステップ59)、界面抵抗測定処理50を終了する。なお、上記したステップ52〜ステップ58が予め決められた計算処理に相当する。
【0053】
次に、負極100bを測定対象とするときには、活物質層102bを上向きにした状態の負極100bを載置台300の上に載置する。続いて、正極100aを測定対象とした上記の測定手順と同様にして、負極100bの上にプローブユニット13を載置し、次いで、図外の操作部を操作して測定の開始を指示する。これに応じて、処理部12が、上記した界面抵抗測定処理50を実行する。この際に、処理部12は、上記した各処理(各ステップ)を実行して抵抗率ρ1,ρ2および界面抵抗値Rsを決定し、その結果を表示部15に表示させる。
【0054】
このように、この測定装置1および測定方法では、物性が互いに異なる金属箔101と活物質層102とが積層された電極100の表面Sにおける測定対象部位Pvの電位を測定する電位測定処理を実行し、電位測定処理によって測定した電位の測定値Vmを用いて予め決められた計算処理を実行して電極100における金属箔101と活物質層102との界面103の界面抵抗値Rsを求める。このため、この測定装置1および測定方法によれば、煩雑な作業を伴う剥離試験や碁盤目試験とは異なり、金属箔101と活物質層102との密着状態の良否を、測定された界面抵抗値Rsに基づいて確実かつ容易に判定することができる。また、この測定装置1および測定方法によれば、単一の材料で形成された測定対象の抵抗を測定することを前提とする四探針法とは全く異なる測定原理で抵抗を測定することで、物性が互いに異なる複数の構成体を積層した積層体における界面の抵抗を正確に測定することができる。したがって、この測定装置1および測定方法によれば、物性が互いに異なる金属箔101および活物質層102が積層されて構成された電極100における金属箔101と活物質層102との密着状態の良否を正確かつ容易に判定することができる。
【0055】
また、この測定装置1および測定方法では、界面抵抗値Rsをパラメータとして含む数式に代入抵抗値Rpを代入して算出した計算値Vtと測定値Vmとを比較する比較処理を、代入抵抗値Rpを変更しつつ実行し、比較処理における比較結果が予め規定された規定条件を満たしたときの代入抵抗値Rpを界面抵抗値Rsとする。このため、この測定装置1および測定方法によれば、界面抵抗値Rsを求めることの目的に応じて、規定条件を厳しく規定して界面抵抗値Rsの精度を向上させたり、界面抵抗値Rsの精度向上に優先して処理時間の短縮を図るために規定条件を緩和したりする調整を任意に行うことができる。
【0056】
また、この測定装置1および測定方法では、数式に代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp1,ρp2を代入して算出した各測定対象部位Pvにおける電位の計算値Vtと測定値Vmとを比較する比較処理を代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp1,ρp2を変更しつつ実行し、比較処理における比較結果が規定条件を満たしたときの代入抵抗値Rpを界面抵抗値Rsとすると共に、比較結果が規定条件を満たしたときの代入抵抗率ρp1,ρp2を抵抗率ρ1,ρ2とする。このため、この測定装置1および測定方法では、金属箔101の抵抗率ρ1および活物質層102抵抗率ρ2が未知の場合において、抵抗率ρ1,ρ2を界面抵抗値Rsと共に測定することができる。したがって、この測定装置1および測定方法によれば、電極100における金属箔101と活物質層102との密着状態の良否を正確かつ容易に判定することができることに加えて、例えば、金属箔101や活物質層102が規定通りの物性を有しているか否かを正確かつ容易に判定することができる結果、電極100の良否を詳細に判定することができる。
【0057】
また、この測定装置1および測定方法では、測定値Vmと計算値Vtとの差分値を用いて統計的手法で算出した値が閾値ε(規定値)未満のときに規定条件を満たしたとする。このため、この測定装置1および測定方法によれば、例えば、測定対象部位Pvの箇所数Nが2以上のときには、統計的手法として最小二乗法を用いることで、界面抵抗値Rsや抵抗率ρ1,ρ2の測定精度を十分に向上させることができる結果、電極100における金属箔101と活物質層102との密着状態の良否をより正確に判定することができると共に、金属箔101や活物質層102が規定通りの物性を有しているか否かをより正確に判定することができる。
【0058】
なお、測定装置、測定方法および測定対象は、上記の構成、方法および測定対象に限定されない。例えば、上記の例では、膜状または板状の一例としての膜状に形成された金属箔101を有する電極100を測定対象としているが、膜状の金属箔101に代えて、板状の金属板を用いた電極を測定対象とすることもできる。また、上記の例では、膜状または板状の一例としての膜状に形成された活物質層102を有する電極100を測定対象としているが、膜状の活物質層102に代えて、板状の活物質層を有する電極を測定対象とすることもできる。また、上記したリチウムイオン電池200の電極100以外に、物性が互いに異なる板状または膜状の複数の構成体が積層された各種の積層体を測定対象とすることができる。また、2つの構成体(金属箔101および活物質層102)を積層した積層体(電極100)に限定されず、3つ以上の構成体を積層した積層体(つまり、2つ以上の界面が存在する積層体)を測定対象とすることもできる。この場合、2つ以上の各界面の界面抵抗値Rsをパラメータ(変数)として含む数式を用いて界面抵抗測定処理50を実行することで、上記した例と同様にして、物性が互いに異なる3つ以上の構成体を積層した積層体における各界面の界面抵抗値Rsを正確に測定することができる。
【0059】
また、比較処理として測定値Vmと計算値Vtとの差分値を算出し、その差分値を用いて統計的手法としての最小二乗法で算出した値が閾値ε未満との規定条件を満たしたときの代入抵抗値Rpを界面抵抗値Rsとする例について上記したが、この手法は一例であって、他の手法を用いることができる。例えば、最小二乗法で算出した値(評価関数J)が閾値ε以下(未満ではなく)のときを規定条件を満たしたときとすることができる。また、各測定対象部位Pvにおける測定値Vmと計算値Vtとの差分値を単純平均した値(統計的手法で算出した値)が規定値未満(若しくは、規定値以下)との規定条件を満たしたときの代入抵抗値Rpを界面抵抗値Rsとする手法を採用することもできる。また、測定値Vmと計算値Vtとの比率を比較結果として算出する処理を比較処理として実行し、その比率が規定値以下との規定条件を満たしたときの代入抵抗値Rpを界面抵抗値Rsとする手法を採用することもできる。
【0060】
また、抵抗率ρ1,ρ2および界面抵抗値Rsの3つのパラメータ(変数)を含む数式Vt(ρ1,Rs,ρ2)に代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp1,ρp2を代入して抵抗率ρ1,ρ2および界面抵抗値Rsを測定する例について上記したが、抵抗率ρ1や抵抗率ρ2が既知のときには、これらを定数とし、界面抵抗値Rsだけをパラメータとする数式Vt(Rs)に代入抵抗値Rpを代入して界面抵抗値Rsを測定することもできる。この場合、測定装置1を用いて測定しようとしているのが界面抵抗値だけ(未知の値nが1つだけ)となるため、測定対象部位Pvの箇所数Nを1(つまり、N=n)に規定することができる。
【0061】
また、上記の例では、測定しようとしている界面抵抗値や抵抗率の数(未知の値の数)をnとしたときの測定対象部位Pvの箇所数NをN=n(上記例ではN=3)に規定したが、測定対象部位Pvの箇所数Nはn+1以上(4以上)の任意の数に規定することもできる。また、測定用の電気信号として直流定電流を用いる例について上記したが、電流測定部を備えて電流値を測定可能な構成および方法を採用するときには、直流定電流に代えて直流電流を用いることもできる。また、直流電流に代えて、交流電流(一例として、交流定電流)を用いる構成および方法を採用することもできる。
【0062】
また、上記の例では、数式Vt(ρ1,Rs,ρ2)に代入する代入抵抗率ρp1、代入抵抗率ρp2および代入抵抗値Rpの各初期値を任意の値に設定しているが、これらの初期値によっては、上記した界面抵抗測定処理50において、評価関数Jと閾値εとが大きくかけ離れて、評価関数Jが閾値ε未満となるまでに計算値Vtの算出、評価関数Jの算出、および評価関数Jが閾値ε未満か否かの判別の各処理(上記したステップ54〜57)を数多く繰り返す必要があり、界面抵抗値Rsの測定に要する時間が長くなることがある。この場合、次のような方法(以下、「初期値算出方法」ともいう)で算出した各初期値を用いることで、界面抵抗値Rsの測定に要する時間を短縮することが可能となる。
【0063】
この初期値算出方法では、
図6,7に示すように、測定用の電気信号を供給する信号入力部位Ps11,Ps12が、積層体としての正極100aを構成する各構成体(金属箔101aおよび活物質層102a)のうちの抵抗率が高い方の構成体である活物質層102aの表面Sに設定されている。また、
図7に示すように、3つ(複数の一例)の測定対象部位Pv11〜Pv13(以下、区別しないときには「測定対象部位Pv」ともいう)が、信号入力部位Ps11,Ps12を結ぶ線分Laに直交しかつ信号入力部位Ps11,Ps12をそれぞれ通る2本の直線Ls1,Ls2で挟んで区画した表面S上の区画領域T1内に設定されている。具体的には、各測定対象部位Pv11〜Pv13は、区画領域T1内の部位であって、信号入力部位Ps11(信号入力部位Ps11,Ps12のいずれか一方の一例としてのソース側(正極側)の信号入力部位)との間の離間距離(直線距離)Da1〜Da3(以下、区別しないときには「離間距離Da」ともいう)が互いに異なる部位に設定されている。なお、測定対象部位Pv11が基準部位(信号入力部位Ps11との間の離間距離が最も短い測定対象部位Pv)に相当し、測定対象部位Pv12が第1の測定対象部位に相当し、測定対象部位Pv13が第2の測定対象部位に相当する。
【0064】
この場合、測定対象部位Pv11〜Pv13は、
図7に示すように、一例として、上記した線分La上に設定されている。また、この初期値算出方法では、測定対象部位Pv11〜Pv13は、隣接する測定対象部位Pv同士の間隔Db1,Db2(以下、区別しないときには「間隔Db」ともいう)が互いに等しくなるように設定されている。
【0065】
また、この初期値算出方法では、測定対象部位Pv11が信号入力部位Ps11の近傍に規定されている。また、この例では、測定対象部位Pv13が、線分Laの中心部に設定されている。
【0066】
また、この初期値算出方法では、測定部11が、上記した電位測定処理において、信号入力部位Ps11,Ps12に測定用の電気信号を供給した状態で、各測定対象部位Pv11〜Pv13における電位V11〜V13を測定する。また、処理部12が、測定部11によって測定された電位V11〜V13に基づいて代入抵抗率ρp1、代入抵抗率ρp2および代入抵抗値Rpのうちの代入抵抗率ρp2および代入抵抗値Rpの各初期値を算出する。
【0067】
具体的には、処理部12は、次の式(2),(3)から代入抵抗率ρp2および代入抵抗値Rpの各初期値を算出する。
2(R2+Rp)I=2・M2 ・・・式(2)
R2/Rp=α(M1/M2)・・・式(3)
【0068】
式(2),(3)において、M1は、基準部位としての測定対象部位Pv11における電位V11(その測定値Vm)と測定対象部位Pv12における電位V12(その測定値Vm)との差分値(V11−V12)を示し(
図8参照)、M2は、電位V11と測定対象部位Pv13における電位V13(その測定値Vm)との差分値(V11−V13)を示している(同図参照)。また、Iは、信号入力部位Ps11,Ps12間に流れる測定用の電気信号の電流値を示している。
【0069】
また、式(2),(3)において、R2は、活物質層102aにおける信号入力部位Ps11を中心とする予め規定された規定領域T2(
図7参照)の抵抗値であって、次の式(4)で定義される。
R2=ρp2(d2/S2)・・・式(4)
式(4)において、d2は、活物質層102aの厚みを示し、S2は、上記した規定領域T2の面積を示している。この場合、規定領域T2は、
図7に示すように、一例として、信号入力部位Ps11を中心として、一辺の長さが線分Laの1/2の長さの正方形の面積に規定されている。
【0070】
また、式(3)において、αは、「R2/Rp」の値のオーダー(桁数)と「M1/M2」の値のオーダーとを整合させるための係数であって、任意(例えば、0.5〜1程度の正の値)に規定することができる。
【0071】
ここで、上記の式(2),(3)について、
図8を参照して説明する。同図に示すように、信号入力部位Ps11から供給された測定用の電気信号は、信号入力部位Ps11の近傍の活物質層102aおよび界面103aを通って金属箔101a内を流れ、信号入力部位Ps12の近傍の界面103aおよび活物質層102aを通って信号入力部位Ps12に流れる。この場合、信号入力部位Ps11,Ps12間に流れる測定用の電気信号の電流値をIとすると、信号入力部位Ps11の近傍である測定対象部位Pv11と信号入力部位Ps12の近傍である部位Pv14(同図参照)との間の電位差M0は、信号入力部位Ps12の近傍における活物質層102aの抵抗および界面103aの抵抗をそれぞれR2,Rpとすると、次の式(5)で表される。
M0=2(R2+Rp)I・・・式(5)
また、電位差M0は、上記したM2の2倍、つまり、次の式(6)で表される。
M0=2・M2・・・式(6)
これらの式(5),(6)から、上記した式(2)が導かれる。
【0072】
一方、例えば、界面103aの界面抵抗値Rsが大きいときには、活物質層102aから金属箔101aには電気信号が流れにくく、抵抗値が大きい活物質層102aに電気信号が流れ易いため、信号入力部位Ps11からの離間距離Daの変化に対する電位Vの変化の比率が大きくは変わらない(電位Vの変化が小さい)状態で離間距離Daの増加に応じて電位Vが徐々に低くなる。これに対して、界面103aの界面抵抗値Rsが小さいときには、界面103aを介して活物質層102aから金属箔101aに電気信号が流れ易いため、信号入力部位Ps11の近傍においては、離間距離Daの変化に対して電位Vが大きく変化し(電位Vの変化が大きい)、測定対象部位Pv13の近傍においては、離間距離Daの変化に対する電位Vの変化が小さい状態となる。
【0073】
このことから、界面103aの界面抵抗値Rsが大きいほど差分値M2に対する差分値M1の比率が小さくなり(電位Vの変化が小さい)、界面抵抗値Rsが小さいほど差分値M2に対する差分値M1の比率が大きくなる(電位Vの変化が大きい)ことが理解される。この場合、界面抵抗値Rsが大きいほど界面抵抗値Rsに対する活物質層102aの抵抗値R2の比率が小さくなり、界面抵抗値Rsが小さいほど界面抵抗値Rsに対する活物質層102aの抵抗値R2の比率が大きくなる。したがって、界面抵抗値Rsの代入抵抗値Rpに対する活物質層102aの抵抗値R2の比率(つまり、R2/Rp)が小さいほど、差分値M2に対する差分値M1の比率(つまり、M1/M2)が小さくなり、界面抵抗値Rsの代入抵抗値Rpに対する活物質層102aの抵抗値R2の比率(R2/Rp)が大きいほど、差分値M2に対する差分値M1の比率(M1/M2)が大きくなること、つまり、(R2/Rp)と(M1/M2)とが比例関係にあり、このことから上記の式(3)が導かれることが理解される。そして、上記したように、上記の式(3)は、2組の測定対象部位Pv11,Pv13および測定対象部位Pv11,Pv12における各電位Vの差分値M1,M2同士の比率(第1の比率)と抵抗率ρ2から特定される抵抗値R2および界面抵抗値Rsの比率(第2の比率)との関係を規定した関係式であることが理解される。
【0074】
上記の式(2),(3),(4)を用いてρp2およびRpを解くと、次の式(7),(8)が導かれる。
ρp2=M2・S2/(I(1+((2・M2)/(α・M1)))d2)・・・(7)
Rp=M2/(I(1+(α・M1)/(2・M2)))・・・・・・・・(8)
【0075】
上記の式(7),(8)に電位V11〜V13から算出される差分値M1,M2を代入することにより、代入抵抗率ρp2および代入抵抗値Rpの各初期値が算出される。なお、金属箔101aは、アルミニウムで形成されているため、アルミニウムについての既知の抵抗率ρ1を代入抵抗率ρp1の初期値として用いることができる。
【0076】
界面抵抗測定処理50において、上記の初期値算出方法で算出した代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp2の各初期値を用いることで、評価関数Jの最初の算出において、評価関数Jと閾値εとをある程度近い状態とさせることができる。このため、この構成および方法によれば、代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp2の各初期値を任意に規定する構成および方法と比較して、評価関数Jが閾値ε未満となるまでに計算値Vtの算出、評価関数Jの算出、および評価関数Jが閾値ε未満か否かの判別の各処理の実行回数を少なくすることができる。したがって、この構成および方法によれば、界面抵抗値Rsの測定に要する時間を十分に短縮することができる。
【0077】
また、この構成および方法では、2つの積層体が積層された電極100における界面抵抗値を測定する際に、信号入力部位Ps11との間の離間距離が互いに異なる3つの測定対象部位Pv11〜Pv13における電位Vを測定し、2組についての第1の比率と第2の比率との関係を規定した関係式に基づいて代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp2の初期値を算出する。このため、この構成および方法では、3つ以上の測定対象部位Pvにおける電位Vを測定して3組以上の各組についての第1の比率と第2の比率との関係を規定した関係式に基づいて代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp2の初期値を算出する構成および方法と比較して、各初期値の算出が容易となるため、界面抵抗値Rsの測定に要する時間をさらに短縮することができる。
【0078】
また、この構成および方法では、一方の信号入力部位Ps11との間の離間距離が最も短い測定対象部位Pv11を基準部位として基準部位を2組における一対の測定対象部位Pvの一方として初期値を算出する。このため、この構成および方法によれば、例えば、隣接する測定対象部位Pv同士を各組として求めた差分値Mを用いて各初期値を算出する構成および方法と比較して、各組の差分値Mが明確に異なるため、それらの差分値Mを関係式に代入して算出した代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp2の初期値をより適正な値とすることができる。
【0079】
また、この構成および方法では、基準部位としての測定対象部位Pv11との間の離間距離Daが短い測定対象部位Pv12と基準部位とを第1の組とすると共に、基準部位との間の離間距離Daが長い測定対象部位Pv13と基準部位とを第2の組とし、第2の組についての差分値Mに対する第1の組についての差分値Mの比率を第1の比率とすると共に、界面抵抗値Rsに対する活物質層102の抵抗値R2の比率を第2の比率とする関係式に基づいて初期値を算出する。このため、この構成および方法によれば、各組を構成する測定対象部位Pvをこのように規定して標準化しておくことで、第1の比率と第2の比率との関係式を作成する際に、第1の比率と第2の比率とを関係付ける適正な係数を標準化することができ、これによって関係式の作成が容易となる結果、代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp2の初期値を一層容易に算出することができる。
【0080】
また、この構成および方法によれば、各信号入力部位Ps11,Ps12を結ぶ線分La上に各測定対象部位Pv11〜Pv13を設定したことにより、例えば、各測定対象部位Pvが1つの直線上に位置していない構成および方法と比較して、信号入力部位Ps1からの離間距離Daに応じた電位Vの変化が明確に現れる。このため、この構成および方法によれば、第1の比率と第2の比率との関係を規定した関係式(上記の式(3))に各電位Vから導かれる差分値M1,M2を代入して算出した代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp2の初期値をより適正な値とすることができる。
【0081】
また、この構成および方法では、第2の測定対象部位としての測定対象部位Pv13が線分Laの中心部に設定されている。この場合、線分La上の各部位の電位Vは、一般的に、線分Laの中心部を中心として、極性が反転して同じ大きさとなる。このため、この構成および方法によれば、一方の信号入力部位Ps11から測定対象部位Pv13(線分Laの中心部)までの間に設定した測定対象部位Pvの電位Vの差分値Mだけで第1の比率を規定することができるため、第1の比率と第2の比率との関係を規定した関係式(上記の式(3))を簡略化することができる結果、代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp2の初期値をより一層容易に算出することができる。
【0082】
また、この構成および方法では、隣接する測定対象部位Pv同士の間隔Dbが互いに等しくなるように各測定対象部位Pvを設定したことにより、隣接する測定対象部位Pv同士の間隔Dbが互いに異なる構成および方法と比較して、第1の比率と第2の比率との関係を規定した関係式(上記の式(3))をより簡略化することができるため、代入抵抗値Rpおよび代入抵抗率ρp2の初期値をさらに容易に算出することができる。
【0083】
なお、上記の初期値算出方法では、3つの測定対象部位Pv11〜Pv13を設定して、2つの組の差分値Mについての第1の比率を求めているが、4つ以上の測定対象部位Pvを設定して3つ以上の組の差分値Mについての比率第1の比率を求める構成および方法を採用することもできる。
【0084】
また、一方の信号入力部位Ps11との間の離間距離が最も短い測定対象部位Pv11を基準部位として規定した例について上記したが、測定対象部位Pv11以外の測定対象部位Pvを基準部位として規定する構成および方法を採用することもできる。また、基準部位との間の離間距離Daが短い測定対象部位Pv12と基準部位とを第1の組とすると共に、基準部位との間の離間距離Daが長い測定対象部位Pv13と基準部位とを第2の組とする例について上記したが、第1の組および第2の組とする測定対象部位Pvの組み合わせは、任意に変更することができる。
【0085】
また、信号入力部位Ps1,Ps2を結ぶ線分La上に各測定対象部位Pvを設定した例について上記したが、線分La以外の直線上に各測定対象部位Pvを設定する構成および方法や、区画領域T1内の任意の部位に各測定対象部位Pvを設定する構成および方法を採用することもできる。また、測定対象部位Pv13を線分Laの中心部に設定した例について上記したが、線分La上における中心部以外の部位、または線分La以外の部位に測定対象部位Pv13を設定する構成および方法を採用することもできる。さらに、隣接する測定対象部位Pv同士の間隔Dbが互いに等しくなるように各測定対象部位Pvを設定した例について上記したが、間隔Dbが異なるように各測定対象部位Pvを設定する構成および方法を採用することもできる。
【0086】
また、測定対象部位Pv11を信号入力部位Ps11の近傍に規定した例について上記したが、測定対象部位Pv11と信号入力部位Ps11とを同じ部位(測定対象部位Pv11と信号入力部位Ps11との間の離間距離Daを「0」)に規定する構成および方法を採用することもできる。また、この構成および方法を採用するときには、信号入力部位Ps11に接触して測定用の電気信号を供給するプローブ31を測定対象部位Pv11の電位を測定するためのプローブ31として用いる(両プローブ31を兼用する)構成および方法を採用することもできる。
【0087】
また、上記した界面抵抗測定処理50に代えて、
図9に示す界面抵抗測定処理60を処理部12が実行することにより、測定部11によって測定された電位の測定値Vmに基づいて抵抗率ρ1,ρ2および界面抵抗値Rsを測定する構成および方法を採用することもできる。以下、この界面抵抗測定処理60を実行して、抵抗率ρ1,ρ2および界面抵抗値Rsを求める例について説明する。なお、以下の説明において、界面抵抗測定処理50と同じ内容については、重複する説明を省略する。
【0088】
この界面抵抗測定処理60では、処理部12は、測定部11に対して電位測定処理の実行を指示する(ステップ61)。これに応じて、測定部11が、電極100の表面Sにおける各測定対象部位Pv1〜Pv3(
図3参照)の電位を測定して、各測定値Vm1〜Vm3を処理部12に出力する。次いで、処理部12は、各測定値Vm1〜Vm3を1つの集合として扱うために、各測定値Vm1〜Vm3を元とするベクトル量(以下、このベクトル量を「測定電位ベクトルVm↑」ともいう)を特定し(ステップ62)、その測定電位ベクトルVm↑を記憶部14に記憶させる。
【0089】
続いて、処理部12は、マトリクス状に配列したモデル抵抗Rmで構成された電極100内の各部位の電位を示す等価回路(
図4参照)を作成するモデル化を行うと共に、作成した等価回路から各測定対象部位Pv1〜Pv3における電位の計算値Vt1〜Vt3を算出する数式を作成する(ステップ63)。この場合、処理部12は、この数式として、金属箔101の導電率σ1(抵抗率ρ1の逆数、すなわち、σ1=1/ρ1)、活物質層102の導電率σ2(抵抗率ρ2の逆数、すなわち、σ2=1/ρ2)、および金属箔101と活物質層102との間の界面コンダクタンスGs(界面抵抗値Rsの逆数、すなわち、Gs=1/Rs)をパラメータとして含む数式Vt(σ1,Gs,σ2)を作成する。なお、等価回路や数式Vt(σ1,Gs,σ2)を予め記憶部14に記憶させておくこともできる。
【0090】
続いて、処理部12は、導電率σ1,σ2および界面コンダクタンスGsを任意の値にそれぞれ設定した初期導電率σp1,σp2および初期界面コンダクタンスGpを元とするベクトル量(以下、このベクトル量を「初期値ベクトルσp↑」ともいう)を特定する(ステップ64)。
【0091】
次いで、処理部12は、上記した数式Vt(σ1,Gs,σ2)に初期値ベクトルσp↑を代入して、上記した等価回路の各測定対象部位Pv1〜Pv3における電位の各計算値Vt1〜Vt3を算出すると共に、各計算値Vt1〜Vt3を元とするベクトル量(以下、このベクトル量を「計算値ベクトルVt↑」ともいう)を特定する(ステップ65)。
【0092】
次いで、処理部12は、測定電位ベクトルVm↑、計算値ベクトルVt↑および初期値ベクトルσp↑と、上記した等価回路における各物理量(電位、電流およびコンダクタンス等)を特定する等価回路方程式(例えば、コンダクタンス行列)とに基づき、初期値ベクトルσp↑を修正するための修正値ベクトルΔσ↑を算出する(ステップ66)。
【0093】
次いで、処理部12は、算出した修正値ベクトルΔσ↑で初期値ベクトルσp↑を修正して、修正後ベクトルσ↑(σ↑=σp↑+Δσ↑)を算出する(ステップ67)。次いで、処理部12は、修正後ベクトルσ↑を構成する元としての導電率σ1,σ2および界面コンダクタンスGsを求める。続いて、処理部12は、導電率σ1から抵抗率ρ1(導電率σ1の逆数、すなわち、ρ1=1/σ1)を算出すると共に、導電率σ2から活物質層102
の抵抗率ρ2(導電率σ2の逆数、すなわち、ρ2=1/σ2)を算出する。また、処理部12は、界面コンダクタンスGsから金属箔101と活物質層102との間の界面抵抗値Rs(界面コンダクタンスGsの逆数、すなわち、Rs=1/Gs)を算出する(ステップ68)。次いで、処理部12は、算出した抵抗率ρ1,ρ2および界面抵抗値Rs(つまり、測定結果)を表示部15に表示させて(ステップ69)、界面抵抗測定処理60を終了する。なお、上記したステップ62〜ステップ68が予め決められた計算処理に相当する。
【0094】
この界面抵抗測定処理60を実行する構成および方法においても、上記した測定装置1および測定方法と同様にして、煩雑な作業を行うことなく、物性が互いに異なる金属箔101および活物質層102が積層されて構成された電極100における金属箔101と活物質層102との密着状態の良否を正確かつ容易に判定することができる。また、この構成および方法によれば、最初に設定した初期導電率σp1,σp2および初期界面コンダクタンスGpを元とする初期値ベクトルσp↑を修正する処理を1回だけ行って算出した修正後ベクトルσ↑から界面抵抗値Rsを求めることができるため、計算値Vtと測定値Vmとを比較する比較処理を、比較結果が規定条件を満たすまで繰り返して実行して界面抵抗値Rsを求める構成および方法と比較して、界面抵抗値Rsを短時間で求めることができる。