(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559875
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】成形されたエラストマー性注入ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/152 20060101AFI20190805BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
A61M5/152
A61M5/142 520
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-501191(P2018-501191)
(86)(22)【出願日】2015年7月21日
(65)【公表番号】特表2018-520784(P2018-520784A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】US2015041247
(87)【国際公開番号】WO2017014750
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2018年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】514300557
【氏名又は名称】アヴェント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロテッラ、ジョン、アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】モンティジョ、アンジェラ・クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】ロウ、コートニー
(72)【発明者】
【氏名】ケノウスキー、マイケル・エー
【審査官】
芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0025039(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0183135(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0171987(US,A1)
【文献】
特開昭62−011465(JP,A)
【文献】
特開2002−159572(JP,A)
【文献】
特開昭64−070069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/14 − 5/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧力下で実質的に一定の流量で所定の期間に渡ってディスペンスするための携帯型装置であって、
応従性エラストマー材料から少なくとも部分的に構成された膨張可能な内側ブラダと、
非応従性エラストマー材料から少なくとも部分的に構成され、前記内側ブラダを取り囲むように配置された外側ハウジングとを含み、
前記内側ブラダは、第1の端部及びその反対側の第2の端部を有する支持部材と、前記支持部材を取り囲むように配置された弾性スリーブとを含み、
前記外側ハウジングは、その全容量まで治療流体が充填されたときに、所定の3次元形状を有し、
前記3次元形状は、単一の一体的な材料片から形成された複数の側壁部を含み、
前記内側ブラダは、全容量まで前記治療流体が充填されたときに、前記外側ハウジングの前記3次元形状に対応する形状を有し、
動作中は、
前記内側ブラダに前記治療流体が充填されたときには、前記外側ハウジングによって前記内側ブラダの形状が画定され、かつ
前記内側ブラダから前記治療流体が排出されたときには、外側ハウジングは収縮するように構成したことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記支持部材の前記第1の端部及び第2の端部の少なくとも一方は、流体送出装置と流体連通するように構成された充填ポートを有し、かつ
前記第1の端部及び第2の端部の少なくとも一方は、患者と流体連通するように構成された出口ポートを有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の端部が前記充填ポートを有し、前記第2の端部が前記出口ポートを有することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記内側ブラダの前記支持部材は、前記第1の端部及び前記第2の端部間に延在する流体通路を画定する中央ボアを有することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記出口ポートは、実質的に一定の流量を所定の期間に渡って提供するように構成された流量制限器を含み、
前記流量は、0.1〜250mL/時間の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記内側ブラダの前記応従性エラストマー材料は、シリコーンまたはラテックスの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記外側ハウジングの前記非応従性エラストマー材料は、ナイロン、ケプラー(登録商標)、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、または他の熱可塑性エラストマーのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記複数の側壁部は、0.01〜0.15mmの範囲の厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記外側ハウジングの前記3次元形状は、略矩形状を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記内側ブラダの前記弾性スリーブは、全容量まで前記治療流体が充填されたときに、前記外側ハウジングの前記3次元形状に対応する形状を有することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
流体を圧力下で実質的に一定の流量で所定の期間に渡ってディスペンスするための携帯型装置を製造する方法であって、
応従性エラストマー材料から膨張可能な内側ブラダを形成するステップと、
非応従性エラストマー材料から外側ハウジングを形成するステップと、
前記外側ハウジング内に前記内側ブラダを配置するステップとを有し、
前記内側ブラダを形成する前記ステップは、
第1の端部及びその反対側の第2の端部を有する支持部材、及び弾性スリーブを形成するステップと、
前記弾性スリーブを、前記支持部材を取り囲むように配置するステップとをさらに含み、
動作中は、
前記内側ブラダに治療流体が充填されたときには、前記外側ハウジングによって前記内側ブラダの形状が画定され、
前記内側ブラダから前記治療流体が排出されたときには、外側ハウジングは収縮するようにし、
前記方法は、さらに
前記外側ハウジングを、その全容量まで前記治療流体が充填されたときに、単一の一体的な材料片から形成された複数の側壁部を含む所定の3次元形状を有するように形成するステップと、
前記内側ブラダを、全容量まで前記治療流体が充填されたときに、前記外側ハウジングの前記3次元形状に対応する形状を有するように形成するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記第1の端部及び第2の端部の少なくとも一方は、流体送出装置と流体連通するように構成された充填ポートを有し、
前記第1の端部及び第2の端部の少なくとも一方は、患者と流体連通するように構成された出口ポートを有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の端部が前記充填ポートを有し、前記第2の端部が前記出口ポートを有することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記内側ブラダを形成する前記ステップは、
前記支持部材内に、前記第1の端部及び前記第2の端部間に延在する流体通路を画定する中央ボアを形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記内側ブラダの前記応従性エラストマー材料は、シリコーンまたはラテックスの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記外側ハウジングの前記非応従性エラストマー材料は、ナイロン、ケプラー(登録商標)、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、または他の熱可塑性エラストマーのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記出口ポートは、実質的に一定の流量を所定の期間に渡って提供するように構成された流量制限器を含み、
前記流量は、0.1〜250mL/時間の範囲であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記外側ハウジングの前記3次元形状は、略矩形状を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、静注薬物を送達するための液体ディスペンス装置に関し、より具体的には、患者の快適さを向上させる成形されたエラストマー性注入ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
薬学的に活性な液体を、患者の静脈内に、制御された流量で長期間に渡って供給することがしばしば必要とされる。このことは、患者が歩行可能な状態で実現されることが望ましい。この目的を達成するために、過去、いくつかの装置が開発されてきた。
【0003】
従来の装置は一般的に、液体容器を形成する膨張可能なエラストマー性のブラダ(bladder)、流量制御バルブまたはデバイス、及び患者に液体を供給するためのチューブを含む。ブラダの壁部は、ブラダに液体が充填されたときに伸張し、ブラダから液体を排出するための圧力を提供する。このような従来の装置では一般的に、シリンジによって手動で液体を充填するが、このためには、しばしば非常に大きな力が必要とされるという問題があった。
【0004】
従来の装置の別の問題は、従来の膨張可能なエラストマー性ブラダは、ブラダ内の流体の量に応じて、ブラダから提供される圧力及び流量が大きく変化することである。そのため、従来の装置は、適度に安定した圧力及び流量を注入期間に渡って保つことができなかった。加えて、このような従来のブラダは、注入期間が終わるまでに実質的に全ての流体をディスペンスするのがしばしば困難であった。ブラダ内に液体が残ることは望ましくない。
【0005】
膨張可能なエラストマー性ブラダを作製するために、様々な材料が使用される。例えば、天然ゴムがよく使用される。ブラダの作製に、複数層の材料が必要とされることもある。注入目的のために加圧液体容器として機能させるために、チューブ状のシリコーンを使用することが、特許文献1に記載されている。この特許文献1には、マンドレル支持体に取り付けられたチューブ状のブラダと、均一の流量で送出するために下流側に配置される流量制限器とを含む注入装置が開示されている。別の例として、特許文献2に、注入システム用のシリコーンチューブから作製された加圧流体容器が記載されている。上記の特許文献には、シリコーン、構造寸法、充填圧力、動作圧力、及び充填量の様々な可能な組み合わせが挙げられている。しかしながら、特許文献2に開示されているシリコーンチューブは、少なくとも、注入期間中の流量及び圧力にばらつきがあり、かつ注入期間が終わるまでに実質的に全ての液体をディスペンスするのが困難であるという理由により、使用を容認することができない。
【0006】
加えて、多くの注入ポンプ(輸液ポンプ)は、硬いケース(例えば、ポリカーボネイトなどから構成された)を、その内側に配置されるエラストマー性のブラダ(例えば、ラテックス、シリコーンなどから構成された)と共に含んでおり、この硬いケースは、患者にとって、とりわけ睡眠時には、装着することが不快であり得る。あるいは、柔軟なケース(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)から構成された)を、その内側に配置されるエラストマー性のブラダと共に含む注入ポンプも存在する。しかし、このような注入ポンプは球状に膨張するため、これも患者にとって不快であり得る。このように、エラストマー性ブラダの形状は、ブラダに液体が充填されたときに、調節または制御するのが困難であった。
【0007】
したがって、本開示は、上述の問題点を解決する成形されたエラストマー性注入ポンプに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,909,790号明細書
【特許文献1】米国特許第7,704,230号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的及び利点は、その一部が以下の説明に記載されており、あるいは以下の説明から明らかであり、あるいは本発明の実施により学ぶことができるであろう。
【0010】
一態様では、本開示は、流体を圧力下で実質的に一定の流速で所定の期間に渡ってディスペンスするための携帯型装置に関する。本開示に係る携帯型装置は、応従性エラストマー材料から構成された膨張可能な内側ブラダ(bladder)と、前記内側ブラダを取り囲むように配置された外側ハウジングとを含む。さらに、前記外側ハウジングは、非応従性エラストマー材料から構成されている。したがって、動作中は、前記内側ブラダに治療流体が充填されたときには、前記外側ハウジングによって前記内側ブラダの形状が画定(shape)され、前記内側ブラダから治療流体が排出されたときには、前記外側ハウジングは収縮する。
【0011】
一実施形態では、前記内側ブラダは、支持部材と、前記支持部材を取り囲むように配置された弾性スリーブとを含む。さらに、前記支持部材は、第1の端部と、その反対側の第2の端部とを有する。さらなる実施形態では、前記第1の端部及び第2の端部の少なくとも一方は、流体送出装置と流体連通するように構成された充填ポートを有し、前記両端部の他方は、患者と流体連通するように構成された出口ポートを有する。より具体的には、一実施形態では、前記第1の端部が前記充填ポートを有し、前記第2の端部が前記出口ポートを有する。前記出口ポートは、カテーテルに接続され得る。したがって、いくつかの実施形態では、前記内側ブラダの前記支持部材は、前記第1の端部及び前記第2の端部間に延在する流体通路を画定する中央ボアを有する。
【0012】
別の実施形態では、前記出口ポートは、実質的に一定の流量を所定の期間に渡って提供するように構成された流量制限器を含む。例えば、いくつかの実施形態では、前記流量は、0.1〜250mL/時間の範囲である。さらなる実施形態では、前記流量は、流量は、0.1mL/時間未満の範囲、または250mL/時間を超える範囲に制御される。
【0013】
特定の実施形態では、前記内側ブラダの前記応従性エラストマー材料は、シリコーンまたはラテックスの少なくとも一方を含む。また、特定の実施形態では、前記外側ハウジングの前記非応従性エラストマー材料は、ナイロン、ケプラー(登録商標)、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、または他の熱可塑性エラストマーのうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
加えて、前記外側ハウジングは、その全容量まで治療流体等が充填されたときに、所定の3次元形状を有する。より具体的には、前記3次元形状は、複数の側壁部を含む。さらに、前記複数の側壁部は、所定の厚さを有する単一の一体的な材料片から形成される。さらに、特定の実施形態では、前記厚さは、0.01〜0.15mmの範囲である。より具体的には、前記厚さは、0.04〜0.12mmの範囲である。
【0015】
別の実施形態では、前記外側ハウジングの前記3次元形状は、略矩形状を含む。したがって、いくつかの実施形態では、前記外側ハウジングは、単一部材から構成され、薄い壁部を有する非弾性のバックである。さらなる実施形態では、前記内側ブラダの前記弾性スリーブは、全容量まで治療流体が充填されたときに、前記外側ハウジングの前記3次元形状に対応する形状を有する。したがって、本開示に係る携帯型装置に液体が充填されたときには、前記外側ハウジングによって前記内側ブラダの形状が画定される。加えて、前記内側ブラダから前記治療流体が排出されたときには、外側ハウジングは収縮する。
【0016】
ならなる別の態様では、本開示は、体を圧力下で実質的に一定の流量で所定の期間に渡ってディスペンスするための携帯型装置を製造する方法に関する。本開示に係る方法は、応従性エラストマー材料から膨張可能な内側ブラダを形成するステップを有する。また、本開示に係る方法は、非応従性エラストマー材料から外側ハウジングを形成するステップを有する。また、本開示に係る方法は、外側ハウジング内に内側ブラダを配置するステップを有する。したがって、本開示に係る方法によって製造された携帯型装置は、動作中は、内側ブラダに治療流体が充填されたときには、外側ハウジングによって内側ブラダの形状が画定され、内側ブラダから治療流体が排出されたときには、外側ハウジングは収縮するように構成されている。
【0017】
一実施形態では、内側ブラダを形成する前記ステップは、支持部材及び弾性スリーブを形成し、弾性スリーブを、支持部材を取り囲むように配置するステップをさらに含む。さらに、支持部材は、第1の端部と、その反対側の第2の端部とを有する。したがって、第1の端部及び第2の端部の少なくとも一方が、流体送出装置と流体連通するように構成された充填ポートを有し、かつ前記両端部の他方が、患者と流体連通するように構成された出口ポートを有する。例えば、いくつかの実施形態では、第1の端部が充填ポートを有し、第2の端部が出口ポートを有する。別の実施形態では、内側ブラダを形成する前記ステップは、支持部材内に、第1の端部及び第2の端部間に延在する流体通路を画定する中央ボアを形成するステップをさらに含む。
【0018】
別の実施形態では、本開示に係る方法は、外側ハウジングを、その全容量まで治療流体が充填されたときに、所定の3次元形状を有するように形成するステップをさらに含む。さらに、前記3次元形状は、単一の一体的な材料片から形成された複数の側壁部を含む。また、本開示に係る方法は、内側ブラダを、外側ハウジングの3次元形状に対応する形状を有するように形成するステップをさらに含む。したがって、内側ブラダの形状は、第1の端部及び第2の端部間に延在する流体通路を含む。加えて、外側ハウジングの3次元形状は、略矩形状を含む。
【0019】
本発明の上記及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明及び添付された特許請求の範囲を参照することにより、より良く理解できるであろう。添付図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、本発明の実施形態を図示し、本明細書と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0020】
当業者を対象にした本開示の完全かつ実現可能な開示(ベストモードを含む)が、添付図面を参照して、本明細書の残りの部分により詳細に説明される。
【0021】
【
図1】本開示に係る、治療流体をディスペンスするための携帯型装置の一実施形態の斜視図であり、全容量まで充填された状態の携帯型装置の外側ハウジングを特に示す。
【
図2】本開示に係る、治療流体をディスペンスするための携帯型装置の一実施形態の正面図であり、全容量まで充填された状態の携帯型装置の外側ハウジングを特に示す。
【
図3】本開示に係る、治療流体をディスペンスするための携帯型装置の一実施形態の正面図であり、収縮した状態の携帯型装置を特に示す。
【
図4】本開示に係る、治療流体をディスペンスするための携帯型装置の一実施形態の正面図であり、全容量まで充填された状態の携帯型装置の内側ブラダを特に示す。
【
図6】
図1に示した携帯型装置を6−6線に沿って切断した断面図。
【
図8】
図4に示した携帯型装置の部分詳細図であり、流量制限器を有する、内側ブラダの出口ポートを特に示す。
【
図9】本開示に係る、治療流体を圧力下で実質的に一定の流速で所定の期間に渡ってディスペンスするための携帯型装置の製造方法の一実施形態を説明するためのフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に示された本発明の1以上の実施形態及び実施例を詳細に説明する。実施例及び実施形態の各々は、本発明を説明するために提示されたものであり、本発明を限定することを意図したものではない。例えば、ある実施形態の一部として例示または説明された特徴を、別の実施形態と組み合わせて、さらなる実施形態を創出することもできる。本発明は、本発明の範囲及び精神を逸脱しない限り、これらの及び他の改変形態及び変更形態を包含することを意図している。
【0023】
概して、本開示は、流体を圧力下で実質的に一定の流速で所定の期間に渡ってディスペンスするための携帯型装置(例えば、注入ポンプ)に関する。本開示に係る携帯型装置は、応従性エラストマー材料から構成された膨張可能な内側ブラダ(bladder)と、内側ブラダを取り囲むように配置された外側ハウジングとを含む。さらに、外側ハウジングは、非応従性エラストマー材料から構成されている。したがって、動作中は、内側ブラダに治療流体が充填され、内側ブラダが外側ハウジングの形状に一致するまで膨張したときには、外側ハウジングによって内側ブラダの形状が画定(shape)される。加えて、内側ブラダから治療流体が排出されたときには、外側ハウジングは収縮することができ、これにより、患者の快適さが向上する。
【0024】
添付図面を参照して、
図1−8は、本開示に係る、治療流体をディスペンスするために携帯型装置10(例えば注入ポンプ)の様々な図を示している。図示のように、携帯型装置10は、外側ハウジング14と、外側ハウジング14内に収容された膨張可能な内側ブラダ12とを含む。より具体的には、
図3及び4に示すように、内側ブラダ12は、細長い支持部材34と、支持部材34の周りに配置された弾性スリーブ35とを有する本体部16を含む。例えば、図示のように、支持部材34は、外側ハウジング14内に配置された細長い略円筒状のマンドレル(mandrel)であり得、外側ハウジング14の外側に露出する両端部(例えば、第1の端部18及び第2の端部20)を有する。加えて、弾性スリーブ35は、その両端が、支持部材34の両端部18、20の周りに密閉的に固定される。さらに、図示のように、支持部材34は、第1の端部18及び第2の端部20間に延在する流体通路37を画定する中央ボア36を含む。別の実施形態では、第1の端部18及び第2の端部20の少なくとも一方は、流体送出装置(図示せず)と流体連通するように構成された充填ポート22を有する。したがって、第1の端部18及び第2の端部20の他方は、患者と流体連通するように構成された出口ポート24を有する。例えば、図面に概略的に示すように、第1の端部18が充填ポート22を有し、第2の端部20が出口ポート24を有する。なお、充填ポート22及び出口ポート24は、携帯型装置10の任意の適切な位置に配置することができ、例えば、図示のように前記両端部の両方に配置するのではなく、前記両端部の一方に配置してもよいことを理解されたい。別の実施形態では、
図8に示すように、出口ポート24は、実質的に一定の流量を所定の期間に渡って提供するように構成された流量制限器30を含む。例えば、いくつかの実施形態では、流量は、約0.1〜250mL/時間の範囲である。特定の実施形態では、流量は、0.1mL/時間未満の範囲、または250mL/時間を超える範囲に制御される。
【0025】
図1−2、及び4−7を参照して、外側ハウジング14は、その全容量まで治療流体が充填されたときに、所定の3次元形状を有する。外側ハウジング14の3次元形状は、携帯型装置10を装着した患者が快適に感じるような任意の適切な形状であり得ることを理解されたい。例えば、図示した実施形態では、外側ハウジング14の3次元形状は、略矩形状である。したがって、このような実施形態では、略矩形状の外側ハウジング14は、携帯型装置10を患者(例えば患者の腹部)に対して容易に平らに配置することができるように、(例えば幅または厚さが)比較的薄くなるように形成される。このように、外側ハウジング14の形状は、患者への装着時(例えば睡眠時)の快適さを最大化させるように構成される。
【0026】
加えて、
図6に示すように、3次元矩形形状は、複数の側壁部38を有する。いくつかの実施形態では、外側ハウジング14の側壁部38は、所定の厚さ40を有する単一の一体的な材料片から形成される。例えば、特定の実施形態では、側壁部38の厚さ40は、約0.01〜0.15mmの範囲である。より具体的には、いくつかの実施形態では、側壁部38の厚さ40は、約0.04〜0.12mmの範囲である。したがって、いくつかの実施形態では、外側ハウジング14は、単一部材から構成され、薄い壁部を有する非弾性のバッグである。加えて、
図5及び7に示すように、1または複数の側壁部38は、内側ブラダ12の充填ポート22及び/または出口ポート24を受容するように構成された1または複数の開口部(例えば、第1の開口部26及び第2の開口部28)を有する。したがって、充填ポート22及び出口ポート24は、外側ハウジング14の外側から容易にアクセス可能である。さらなる実施形態では、内側ブラダ12は、(全容量まで治療流体が充填されたときに)外側ハウジング14の略矩形状に対応する略矩形状の本体部を有する。
【0027】
加えて、内側ブラダ12またはバルーンは、応従性エラストマー材料から構成される。例えば、特定の実施形態では、応従性の内側ブラダ12は、シリコーン、ラテックス、または同様のものから構成される。さらに、本明細書に記載された材料を説明するのに使用するとき、「応従性(compliant)」という用語は、例えば、使用時にその元のサイズまで何回も膨張することが可能な形状を有する低圧ブラダまたはバルーンを包含すると一般的に理解される。したがって、応従性バルーンは、一般的に、正確な寸法まで膨張することはできず、また、明確に画定された形状及び/または高い圧力を維持することはできない。
【0028】
対照的に、外側ハウジング14は、非応従性エラストマー材料から構成される。したがって、非応従性の外側ハウジング14は、該ハウジング14によって応従性の内側ブラダ12の形状を画定することができるように、所望の形状に構成することができる。例えば、特定の実施形態では、外側ハウジング14の非応従性エラストマー材料は、ナイロン、ケプラー(登録商標)、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、または他の熱可塑性エラストマーを含む。本明細書で使用される「非応従性(non-compliant)」バルーンまたはハウジングは、高圧力下であってもそれの設計されたサイズまたは形状を保つことができるように、非応従性または低応従性材料からそれの膨張形状に成形されたハウジングを包含すると一般的に理解される。したがって、非応従性の外側ハウジング14は、一般的に、薄い壁部を有し、高い引っ張り強さ及び比較的低い伸張率を示す。
【0029】
応従性の内側ブラダ12を非応従性の外側ハウジング14で取り囲むことにより、内側ブラダ12に治療流体が充填されたときに、外側ハウジング14によって、内側ブラダ12の形状を画定することができる。加えて、外側ハウジング14は、内側ブラダ12から治療流体が排出されたときに収縮するように構成される。したがって、応従性の内側ブラダ12を取り囲む非応従性の外側ハウジング14により、様々な形状に変化することができる注入ポンプが提供され、これにより、患者の快適さが向上する。
【0030】
図9を参照して、流体を圧力下で実質的に一定の流量で所定の期間に渡ってディスペンスするための携帯型装置10を製造する方法100を説明するためのフロー図が示されている。本方法100は、応従性エラストマー材料から膨張可能な内側ブラダ12を形成するステップ102を有する。また、本方法100は、非応従性エラストマー材料から外側ハウジング14を形成するステップ104を有する。また、本方法100は、外側ハウジング14内に内側ブラダ12を配置するステップ106を有する。例えば、一実施形態では、内側ブラダ12は、該ブラダを収縮させて、外側ハウジング14の第1の開口部26及び第2の開口部28の一方から挿入することができるように、フレキシブルさを有し得る。したがって、本開示に係る携帯型装置10は、動作中は、内側ブラダに治療流体が充填されたときには、外側ハウジング14によって内側ブラダ12の形状が画定されるように構成されている。さらに、本開示に係る携帯型装置10は、内側ブラダ12から治療流体が排出されたときには、外側ハウジング14は収縮するように構成されている。
【0031】
さらなる実施形態では、内側ブラダ12を形成する前記ステップは、第1の端部18と、その反対側の第2の端部20とを有する本体部16(支持部材34)を形成するステップをさらに含む。第1の端部18及び第2の端部20の少なくとも一方が、流体送出装置と流体連通するように構成された充填ポート22を有し、かつ前記両端部の他方が、患者と流体連通するように構成された出口ポート24を有する。例えば、いくつかの実施形態では、第1の端部18が充填ポート22を有し、第2の端部20が出口ポート24を有する。別の実施形態では、内側ブラダ12を形成する前記ステップは、本体部16(支持部材34)内に、第1の端部18及び第2の端部20間に延在する流体通路37を画定する中央ボア36を形成するステップをさらに含む。
【0032】
別の実施形態では、本方法100は、外側ハウジング14を、その全容量まで治療流体が充填されたときに、所定の3次元形状を有するように形成するステップをさらに含む。さらに、上述したように、前記3次元形状は、単一の一体的な材料片から形成された複数の側壁部38を含む。したがって、本方法100は、内側ブラダ12を、外側ハウジング14の3次元形状に対応する形状を有するように形成するステップをさらに含む。加えて、内側ブラダ12の形状は、第1の端部18及び第2の端部20間に延在する流体通路37を含む。加えて、外側ハウジング14の3次元形状は、(添付図面に概略的に示したような)略矩形状、または、携帯型装置10を装着した患者の快適さを最大化させることができる任意の他の適切な形状を含む。
【0033】
以上、本発明をいくつかの好適な実施形態に関連して説明したが、本発明に包含される本発明の主題はこれらの特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。それどころか、本発明の主題は、特許請求の範囲の精神及び範囲に含まれる限り、全ての代替形態、及び均等形態を含むことを意図している。