特許第6559886号(P6559886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559886
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】めっき鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/46 20060101AFI20190805BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20190805BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   C21D9/46 J
   C22C38/00 301T
   C22C38/38
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-511409(P2018-511409)
(86)(22)【出願日】2016年1月14日
(65)【公表番号】特表2018-529844(P2018-529844A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】KR2016000393
(87)【国際公開番号】WO2017051998
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2018年3月1日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0133839
(32)【優先日】2015年9月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510307299
【氏名又は名称】ヒュンダイ スチール カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジン、ソン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、スン、ファン
【審査官】 静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−307325(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/092025(WO,A1)
【文献】 特開2013−227653(JP,A)
【文献】 特開2011−168816(JP,A)
【文献】 特開2010−255094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/46−9/48
C22C 38/00−38/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素(C):0.15〜0.25重量%、シリコン(Si):0重量%超過〜1.5重量%以下、マンガン(Mn):1.5重量%以上〜2.5重量%未満、アルミニウム(Al):0重量%超過〜1.8重量%以下、クロム(Cr):0.3〜2.0重量%、チタン(Ti):0重量%超過〜0.03重量%以下、ニオブ(Nb):0重量%超過〜0.03重量%以下、および残部鉄(Fe)と不可避不純物からなる鋼スラブを再加熱するステップと、
(b)前記鋼スラブを熱間圧延、冷却および巻取って熱延鋼板を製造するステップと、
(c)前記熱延鋼板を酸洗後、冷間圧延するステップと、
(d)前記冷間圧延された鋼板を820℃〜870℃の温度で焼鈍熱処理後、350℃〜450℃の冷却終了温度に冷却するステップと、
(e)前記冷却された鋼板を450℃〜550℃の温度で再熱処理するステップと、
(f)前記再熱処理された鋼板を溶融亜鉛めっきするステップと、を含むことを特徴とするめっき鋼板の製造方法であって、
前記めっき鋼板は、
炭素(C):0.15〜0.25重量%、シリコン(Si):0重量%超過〜1.5重量%以下、マンガン(Mn):1.5重量%以上〜2.5重量%未満、アルミニウム(Al):0重量%超過〜1.8重量%以下、クロム(Cr):0.3〜2.0重量%、チタン(Ti):0重量%超過〜0.03重量%以下、ニオブ(Nb):0重量%超過〜0.03重量%以下、および残部鉄(Fe)と不可避不純物を含む鋼板と、
溶融亜鉛めっきによる層と、
を含み、
前記鋼板は、断面組織面積率で、ベイナイト(bainite)50〜70体積%、フェライト(ferrite)10〜25体積%、マルテンサイト(martensite)5〜20%、および残留オーステナイト(retained austenite)5〜15%を含む複合組織を有し、かつ
前記鋼板は、降伏強度(YS):850〜950MPa、引張強度(TS):1180〜1350MPa、および延伸率(EL):10〜20%を有する、方法
【請求項2】
(c)ステップの冷間圧延は、50%〜80%の圧下率で行われることを特徴とする請求項1に記載のめっき鋼板の製造方法。
【請求項3】
(d)ステップの焼鈍熱処理後、前記鋼板は、10〜50℃/secの冷却速度で冷却されることを特徴とする請求項1に記載のめっき鋼板の製造方法。
【請求項4】
前記シリコン(Si)およびアルミニウム(Al)は、下記式1を満足して含有されることを特徴とする請求項1に記載のめっき鋼板の製造方法:
[式1]
1.5≦(Si)+(Al)≦3.0(重量%)
(上記式1中、前記SiおよびAlはそれぞれ、前記鋼スラブに含まれるシリコン(Si)およびアルミニウム(Al)の含有量(重量%)である)。
【請求項5】
前記チタン(Ti)およびニオブ(Nb)は、下記式2を満足して含有されることを特徴とする請求項1に記載のめっき鋼板の製造方法:
[式2]
0.01≦(Ti)+(Nb)≦0.02(重量%)
(上記式2中、前記TiおよびNbはそれぞれ、前記鋼スラブに含まれるチタン(Ti)およびニオブ(Nb)の含有量(重量%)である)。
【請求項6】
炭素(C):0.15〜0.25重量%、シリコン(Si):0重量%超過〜1.5重量%以下、マンガン(Mn):1.5重量%以上〜2.5重量%未満、アルミニウム(Al):0重量%超過〜1.8重量%以下、クロム(Cr):0.3〜2.0重量%、チタン(Ti):0重量%超過〜0.03重量%以下、ニオブ(Nb):0重量%超過〜0.03重量%以下、および残部鉄(Fe)と不可避不純物からなる鋼板と、
溶融亜鉛めっきによる層と、
を含むめっき鋼板であって、
み、
前記鋼板は、断面組織面積率で、ベイナイト(bainite)50〜70体積%、フェライト(ferrite)10〜25体積%、マルテンサイト(martensite)5〜20%、および残留オーステナイト(retained austenite)5〜15%を含む複合組織を有し、かつ
前記鋼板は、降伏強度(YS):850〜950MPa、引張強度(TS):1180〜1350MPa、および延伸率(EL):10〜20%を有する、めっき鋼板
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき鋼板およびその製造方法に関する。より詳細には、衝突特性および成形性に優れためっき鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、自動車の安定性向上および軽量化の傾向に伴い、自動車車体に適用される素材を高強度化するための努力が進められている。ただし、一般的に、鋼板は強度の増加に伴って伸び率が低くなることにより、所定強度以上では引き抜き(Draw)部品の成形が限界に達する。したがって、上述した高強度化の努力とともに、鋼板の伸び率を向上させようとする努力も同時に進められている。このような伸び率の向上は引き抜き用部品の適用を拡大させることができ、衝撃吸収エネルギー能(TS*El)を向上させて、自動車車体に適用される時の衝突特性を向上させることができる。
【0003】
関連する先行技術としては、大韓民国公開特許公報第2015−0025952号(2015.03.11.公開、発明の名称:高強度熱延めっき鋼板およびその製造方法)がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施例によれば、衝突特性などの機械的強度に優れためっき鋼板の製造方法を提供する。
【0005】
本発明の一実施例によれば、成形性に優れためっき鋼板の製造方法を提供する。
【0006】
本発明の一実施例によれば、前記めっき鋼板の製造方法により製造されためっき鋼板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの観点は、めっき鋼板の製造方法に関する。一具体例において、前記めっき鋼板の製造方法は、炭素(C):0.15〜0.25重量%、シリコン(Si):0重量%超過〜1.5重量%以下、マンガン(Mn):1.5〜2.5重量%、アルミニウム(Al):0重量%超過〜1.8重量%以下、クロム(Cr):0.3〜1.0重量%、チタン(Ti):0重量%超過〜0.03重量%以下、ニオブ(Nb):0重量%超過〜0.03重量%以下、および残部鉄(Fe)と不可避不純物からなる鋼スラブを再加熱するステップと、前記鋼スラブを熱間圧延、冷却および巻取って熱延鋼板を製造するステップと、前記熱延鋼板を酸洗後、冷間圧延するステップと、前記冷間圧延された鋼板を820℃〜870℃の温度で焼鈍熱処理後、350℃〜450℃の冷却終了温度に冷却するステップと、前記冷却された鋼板を450℃〜550℃の温度で再熱処理するステップと、前記再熱処理された鋼板を溶融亜鉛めっきするステップと、を含む。
【0008】
一具体例において、前記冷間圧延は、50%〜80%の圧下率で行われる。
【0009】
一具体例において、前記焼鈍熱処理後、前記鋼板は、10〜50℃/secの冷却速度で冷却される。
【0010】
一具体例において、前記シリコン(Si)およびアルミニウム(Al)は、下記式1を満足して含有される:
[式1]
1.5≦(Si)+(Al)≦3.0
(上記式1中、前記SiおよびAlはそれぞれ、前記鋼スラブに含まれるシリコン(Si)およびアルミニウム(Al)の含有量(重量%)である)。
【0011】
一具体例において、前記チタン(Ti)およびニオブ(Nb)は、下記式2を満足して含有される:
[式2]
0.01≦(Ti)+(Nb)≦0.02
(上記式2中、前記TiおよびNbはそれぞれ、前記鋼スラブに含まれるチタン(Ti)およびニオブ(Nb)の含有量(重量%)である)。
【0012】
本発明の他の観点は、前記めっき鋼板の製造方法により製造されためっき鋼板に関する。一具体例において、前記めっき鋼板は、炭素(C):0.15〜0.25重量%、シリコン(Si):0重量%超過〜1.5重量%以下、マンガン(Mn):1.5〜2.5重量%、アルミニウム(Al):0重量%超過〜1.8重量%以下、クロム(Cr):0.3〜1.0重量%、チタン(Ti):0重量%超過〜0.03重量%以下、ニオブ(Nb):0重量%超過〜0.03重量%以下、および残部鉄(Fe)と不可避不純物からなる。
【0013】
一具体例において、前記めっき鋼板は、断面組織面積率で、ベイナイト(bainite)50〜70体積%、フェライト(ferrite)10〜25体積%、マルテンサイト(martensite)5〜20%、および残留オーステナイト(retained austenite)5〜15%を含む複合組織を有することができる。
【0014】
一具体例において、前記めっき鋼板は、降伏強度(YS):850〜950MPa、引張強度(TS):1180〜1350MPa、および延伸率(EL):10〜20%を有することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のめっき鋼板の製造方法を適用して製造されためっき鋼板は、衝突特性および機械的強度に優れ、ベンディング特性およびドローイング特性などの成形性に優れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一具体例によるめっき鋼板の製造方法を示すものである。
図2】本発明の一具体例による一次加熱スケジュールを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。この時、本発明を説明するにあたり、かかる公知の技術または構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにし得ると判断された場合には、その詳細な説明を省略する。
【0018】
そして、後述する用語は、本発明における機能を考慮して定義された用語であって、これは使用者、運用者の意図または慣例などによって異なり得るので、その定義は本発明を説明する本明細書全般にわたる内容に基づいて行われなければならない。
【0019】
本発明の一つの観点は、めっき鋼板の製造方法に関する。
【0020】
図1は、本発明の一具体例によるめっき鋼板の製造方法を示すものである。前記図1を参照すれば、一具体例において、前記めっき鋼板の製造方法は、(S10)鋼スラブの再加熱ステップと、(S20)熱間圧延ステップと、(S30)巻取ステップと、(S40)冷間圧延ステップと、(S50)焼鈍ステップと、(S60)溶融亜鉛めっきステップと、を含む。
【0021】
より具体的には、前記めっき鋼板の製造方法は、(S10)ステップにおいて、炭素(C):0.15〜0.25重量%、シリコン(Si):0重量%超過〜1.5重量%以下、マンガン(Mn):1.5〜2.5重量%、アルミニウム(Al):0重量%超過〜1.8重量%以下、クロム(Cr):0.3〜2.0重量%、チタン(Ti):0重量%超過〜0.03重量%以下、ニオブ(Nb):0重量%超過〜0.03重量%以下、および残部鉄(Fe)と不可避不純物からなる鋼スラブを再加熱する工程を行う。
【0022】
(S20)ステップにおいて、前記鋼スラブをAr3〜Ar3+100℃の仕上げ圧延温度で熱間圧延する工程を行う。
【0023】
(S30)ステップにおいて、前記熱間圧延された鋼スラブを巻取って熱延コイルを製造する工程を行う。
【0024】
(S40)ステップにおいて、前記熱延コイルをアンコイリングし、冷間圧延して冷延鋼板を製造する工程を行う。
【0025】
(S50)ステップにおいて、前記冷延鋼板を焼鈍熱処理し、冷却後に再熱処理を行う。具体的な例において、前記焼鈍熱処理は、AC1温度とAC3温度との間の二相域で行われ、以後、前記焼鈍熱処理された鋼板は、一例として、10℃/s〜50℃/sの冷却速度で冷却される。この時、冷却の終了温度は、Ms温度以上であることの条件を満足する。以後、450℃〜550℃の温度で再熱処理される。
【0026】
(S60)ステップにおいて、前記焼鈍された冷延鋼板を溶融亜鉛めっきする工程を行う。
【0027】
以下、本発明によるめっき鋼板の製造方法をステップごとに詳細に説明する。
【0028】
(S10)鋼スラブの再加熱ステップ
前記ステップは、鋼スラブを再加熱するステップである。より具体的には、前記ステップは、炭素(C):0.15〜0.25重量%、シリコン(Si):0重量%超過〜1.5重量%以下、マンガン(Mn):1.5〜2.5重量%、アルミニウム(Al):0重量%超過〜1.8重量%以下、クロム(Cr):0.3〜2.0重量%、チタン(Ti):0重量%超過〜0.03重量%以下、ニオブ(Nb):0重量%超過〜0.03重量%以下、および残部鉄(Fe)と不可避不純物からなる鋼スラブを再加熱するステップである。
【0029】
以下、前記鋼スラブに含まれる各成分の役割およびその含有量について詳細に説明する。
【0030】
炭素(C)
炭素(C)は、侵入型固溶元素であって、本発明において、残留オーステナイト中のC濃化度を確保(Cret:0.6〜0.7重量%)して、オーステナイト安定化元素として作用する。前記炭素は、前記鋼スラブの全体重量に対して、0.15〜0.25重量%含まれる。前記範囲で含まれる時、オーステナイト安定化効果に優れることができる。前記炭素を0.15重量%未満で含む時、オーステナイト内部の炭素濃化度の低減によって、合金化熱処理後、最終常温に冷却時、残留オーステナイトの形成が抑制されることがあり、0.25重量%を超えて含む時、強度および靭性が低下したり、溶接性が低下することがある。
【0031】
シリコン(Si)
前記シリコン(Si)は、前記めっき鋼板中のフェライト安定化元素として作用する。フェライトを清浄にすることで延性を向上させ、低温域の炭化物の形成を抑制することにより、オーステナイト中の炭素濃化度を向上させる機能を行うことができる。
【0032】
前記シリコンは、前記鋼スラブの全体重量に対して、0重量%超過1.5重量%以下で含まれる。前記範囲で含まれる時、オーステナイト中の炭素濃化度が向上し、フェライト安定化効果に優れることができる。前記シリコンを1.5重量%を超えて含む時、シリコン酸化物系の酸化物を鋼板表面に形成することにより、亜鉛めっき時のめっき濡れ性を阻害することがある。例えば、0.5〜1.0重量%含まれるとよい。
【0033】
マンガン(Mn)
前記マンガン(Mn)は、オーステナイト安定化元素として作用して、冷却中の高温域のフェライトおよび低温域のベイナイト変態を抑制することにより、冷却中のマルテンサイト変態分率を増加させる役割を果たすことができる。
【0034】
前記マンガンは、前記鋼スラブの全体重量に対して、1.5〜2.5重量%含まれる。前記範囲で含まれる時、前記めっき鋼板の強度および成形性が同時に優れることができる。前記マンガンを1.5重量%未満で含む時、マルテンサイト変態分率の未確保による強度の低下が発生することがあり、2.5重量%を超えて含む時、強度の過度な上向きによる伸び率の低下が発生することがある。
【0035】
アルミニウム(Al)
前記アルミニウム(Al)は、フェライト安定化元素であって、フェライトを清浄にすることで延性を向上させる役割を果たすことができる。また、低温域の炭化物の形成を抑制することにより、オーステナイト中の炭素濃化度を向上させる機能を行うことができる。
【0036】
前記アルミニウムは、前記鋼スラブの全体重量に対して、0重量%超過〜1.8重量%以下で含まれる。前記範囲で含まれる時、本発明の延性に優れることができる。前記アルミニウムを含まない場合、焼鈍中の二相域温度区間でオーステナイト分率が急激に増加して材質ばらつきが増加し、オーステナイト中の炭素濃化度をむしろ減少させることがある。前記アルミニウムの含有量が1.8重量%を超える場合、AC3変態点が増加して一次加熱温度が必要以上に増加する問題が発生し、フェライト粒界のAlNの形成を促進させることでスラブ脆化が発生し得る問題がある。例えば、0.5〜1.0重量%含まれるとよい。
【0037】
クロム(Cr)
前記クロム(Cr)は、低温域上部のベイナイト領域拡大元素であって、本発明のめっき鋼板においてラス(Lath)形態のベイナイト組織の発達を誘導し、本発明による一次加熱、冷却および二次加熱工程時、安定化された残留オーステナイトの形成を促進する目的で含まれる。
【0038】
前記クロムは、前記鋼スラブの全体重量に対して、0.3〜2.0重量%含まれる。前記範囲で含まれる時、強度および成形性が同時に優れることができる。前記クロムを0.3重量%未満で含む時、残留オーステナイトおよび強度の確保が難しく、2.0重量%を超えて添加する時、低温域の炭化物を安定化することで延性を阻害する効果が現れることがある。
【0039】
チタン(Ti)およびニオブ(Nb)
前記チタン(Ti)およびニオブ(Nb)は、TiNbC析出物を形成し、二相域熱処理時、結晶粒を微細化することで曲げ性を向上させる役割を果たすことができる。
【0040】
前記ニオブ(Nb)およびチタン(Ti)は、前記鋼スラブの全体重量に対して、それぞれ0重量%超過〜0.03重量%以下で含まれる。前記範囲で含まれる時、結晶粒の微細化効果および成形性に優れることができる。前記ニオブおよびチタンを含まない場合、析出物による結晶粒の微細化効果が微弱で曲げ性の向上効果が低下し、前記ニオブおよびチタンをそれぞれ0.03重量%を超えて含む場合、析出物による伸び率低下の問題が発生することがある。
【0041】
リン(P)および硫黄(S)
前記リン(P)および硫黄(S)は、本発明において不可避不純物として含まれる。前記リン(P)は、固溶強化によって強度の強度を高め、炭化物の形成を抑制する機能を行うことができる。
【0042】
一具体例において、前記リンは、前記鋼スラブの全体重量に対して、0.015重量%以下で含まれる。前記範囲で含まれる時、溶接性および耐腐食性に優れることができる。例えば、0重量%超過0.015重量%以下で含まれるとよい。
【0043】
前記硫黄(S)は、微細MnSの析出物を形成して加工性を向上させることができる。一具体例において、前記硫黄は、前記鋼スラブの全体重量に対して、0.002重量%以下で含まれる。前記範囲で含まれる時、曲げ性に優れることができる。例えば、0重量%超過0.002重量%以下で含まれるとよい。
【0044】
窒素(N)
前記窒素(N)は、不可避不純物として含まれる。前記窒素は、ニオブなどと結合して炭窒化物を形成することで結晶粒を微細化させることができる。ただし、窒素の含有量が0.004重量%以下で含まれる。前記範囲で含まれる時、衝撃特性および延伸率の低下を防止することができる。例えば、0重量%超過0.004重量%以下で含まれるとよい。
【0045】
本発明の一具体例において、前記鋼スラブに含まれるシリコン(Si)およびアルミニウム(Al)は、下記式1を満足して含有される:
[式1]
1.5≦(Si)+(Al)≦3.0(重量%)
(上記式1中、前記SiおよびAlはそれぞれ、前記鋼スラブに含まれるシリコン(Si)およびアルミニウム(Al)の含有量(重量%)である)。
【0046】
上記式1を満足して含む時、二相域焼鈍時、オーステナイト分率の確保が容易で材質特性に優れることができる。一具体例において、めっき性を確保するために、前記アルミニウムの含有量は、前記シリコンの含有量より高いとよい。
【0047】
一具体例において、前記鋼スラブに含まれる前記チタン(Ti)およびニオブ(Nb)は、下記式2を満足して含有される:
[式2]
0.01≦(Ti)+(Nb)≦0.02(重量%)
(上記式2中、前記TiおよびNbはそれぞれ、前記鋼スラブに含まれるチタン(Ti)およびニオブ(Nb)の含有量(重量%)である)。
【0048】
上記式2の範囲を満足して含む時、二相域焼鈍熱処理時、結晶粒を微細化することで水素脆性の改善効果および曲げ性の向上効果に優れることができる。
【0049】
一具体例において、前記鋼スラブは、スラブの再加熱温度(Slab Reheating Temperature、SRT):1150℃〜1250℃で再加熱する。前記鋼スラブの再加熱温度で、鋳造時に偏析した成分が十分に再固溶し、強度の確保が容易であり得る。
【0050】
(S20)熱間圧延ステップ
前記ステップは、前記鋼スラブをAr3〜Ar3+100℃の仕上げ圧延温度(Finish Rolling Temperature:FRT)で熱間圧延するステップである。前記仕上げ圧延温度をAr3未満で熱間圧延を実施する場合、二相域で圧延が行われることで混粒組織が発生することがあり、Ar3+100℃を超える場合、結晶粒の粗大化で鋼板の物性が低下することがある。
【0051】
一具体例において、前記鋼スラブを、仕上げ圧延温度850℃〜950℃で熱間圧延することができる。前記仕上げ圧延温度で熱間圧延時、めっき鋼板の剛性および成形性が同時に優れることができる。
【0052】
(S30)巻取ステップ
前記ステップは、熱間圧延された鋼スラブを巻取って熱延コイルを製造するステップである。一具体例において、前記巻取は、熱間圧延された鋼スラブを冷却して巻取って行われる。
【0053】
この時、前記鋼スラブに含まれたマンガンおよびケイ素などの成分の表面濃化および炭化物の粗大化を防止するために仕上げ熱間圧延された鋼スラブ材を、剪断急冷方式で冷却して巻取って熱延コイルを製造することができる。具体例では、前記熱間圧延された鋼スラブを冷却速度5℃/s〜100℃/sの速度で冷却して、400℃〜550℃の巻取温度(Coiling Temperature、CT)で実施することができる。前記温度で巻取時、過度な結晶粒子の成長が阻害され、延性および成形性に優れることができる。
【0054】
(S40)冷間圧延ステップ
前記ステップは、熱延コイルをアンコイリングして酸洗処理した後、冷間圧延して冷延鋼板を製造するステップである。前記酸洗は、前記巻取られた熱延コイル、すなわち、上記の熱延過程により製造された熱延コイルのスケールを除去するための目的で実施する。
【0055】
前記冷間圧延は、50%〜80%の圧下率で行われる。前記圧下率を適用して冷間圧延時、熱延組織の変形効果が少なく、塑性変形比(r−value)の面内異方性指数(Δr)値の確保および延伸率に優れ、成形性に優れることができる。
【0056】
(S50)焼鈍ステップ
前記ステップは、前記冷延鋼板に対して焼鈍熱処理、およびクエンチング後、再熱処理を行うステップである。図2は、本発明の一具体例による熱処理スケジュールを示すグラフである。前記図2を参照すれば、前記冷延鋼板をAC1およびAC3の間の二相域温度に一次加熱して焼鈍熱処理を進行させる。次に、前記焼鈍熱処理された冷延鋼板をMs直上の温度までクエンチング冷却した後に、前記冷却された冷延鋼板を450℃〜550℃に二次加熱して再熱処理を進行させる。
【0057】
前記焼鈍熱処理は、820〜870℃の温度で二相域熱処理により行われる。前記焼鈍熱処理温度が820℃未満の場合、初期オーステナイト分率を十分に確保することができない。一方、焼鈍熱処理温度が870℃を超える場合、必要以上の熱処理温度の設定で経済性が低下することがある。
【0058】
前記焼鈍熱処理後、前記冷延鋼板をMs(マルテンサイト変態開始温度)直上の温度まで冷却する。具体例において、焼鈍熱処理後、前記冷延鋼板は、350℃〜450℃の冷却終了温度に冷却する。この時、前記温度に冷却時、微細組織が成長して強度の低下を防止することができる。前記冷却終了温度が350℃未満の場合、前記鋼板の強度が上昇し、加工性が減少し、450℃を超える場合、本発明の引張強度の確保が難しいことがある。
【0059】
一具体例において、前記焼鈍熱処理された冷延鋼板を10℃/s〜50℃/sの冷却速度で冷却することができる。前記範囲で前記鋼板材質の均一性に優れ、本発明の剛性および成形性がすべて優れることができる。
【0060】
前記冷却された冷延鋼板は二次加熱されて、450℃〜550℃で再熱処理される。前記再熱処理時、残留オーステナイト分率が増加し、組織安定化によって機械的強度および成形性が同時に優れることができる。前記再熱処理温度が450℃未満の時、ベイナイトおよび残留オーステナイト組織を得にくく、550℃を超えて再熱処理時、本発明の成形性が低下することがある。
【0061】
(S60)溶融亜鉛めっきステップ
前記ステップは、前記焼鈍熱処理および再熱処理された冷延鋼板を溶融亜鉛めっきするステップである。一具体例において、前記溶融亜鉛めっきは、前記冷延鋼板を450〜510℃の亜鉛浴に浸漬して実施することができる。
【0062】
一具体例において、前記亜鉛めっきした冷延鋼板は、合金化熱処理される。前記合金化熱処理は、475℃〜560℃の範囲で行われる。前記範囲で合金化熱処理時、溶融亜鉛めっき層の安定的成長がなされ、めっき密着性に優れることができる。
【0063】
本発明の他の観点は、前記めっき鋼板の製造方法により製造されためっき鋼板に関する。前記めっき鋼板は、めっき鋼板の全体重量に対して、炭素(C):0.15〜0.25重量%、シリコン(Si):0重量%超過〜1.5重量%以下、マンガン(Mn):1.5〜2.5重量%、アルミニウム(Al):0重量%超過〜1.8重量%以下、クロム(Cr):0.3〜2.0重量%、チタン(Ti):0重量%超過〜0.03重量%以下、ニオブ(Nb):0重量%超過〜0.03重量%以下、および残部鉄(Fe)と不可避不純物からなる。
【0064】
本発明の一具体例において、前記めっき鋼板に含まれるシリコン(Si)およびアルミニウム(Al)は、下記式1を満足して含有される:
[式1]
1.5≦(Si)+(Al)≦3.0(重量%)
(上記式1中、前記SiおよびAlはそれぞれ、前記鋼スラブに含まれるシリコン(Si)およびアルミニウム(Al)の含有量(重量%)である)。
【0065】
上記式1を満足して含まれる時、めっき鋼板の材質特性に優れることができる。一具体例において、前記アルミニウムの含有量は、前記シリコンの含有量より高いとよい。上記の条件において、めっき鋼板のめっき密着性に優れることができる。
【0066】
一具体例において、前記めっき鋼板に含まれる前記チタン(Ti)およびニオブ(Nb)は、下記式2を満足して含有される:
[式2]
0.01≦(Ti)+(Nb)≦0.02(重量%)
(上記式2中、前記TiおよびNbはそれぞれ、前記鋼スラブに含まれるチタン(Ti)およびニオブ(Nb)の含有量(重量%)である)。
【0067】
上記式2の範囲を満足して含まれる時、前記めっき鋼板の曲げ性の向上効果に優れることができる。
【0068】
一具体例において、前記めっき鋼板は、安定的な残留オーステナイト分率を確保して、強度および伸び率を確保することができる。前記めっき鋼板は、針状形(Acicular)フェライトおよびベイナイトを含むことができる。
【0069】
一具体例において、前記めっき鋼板は、断面組織面積率で、ベイナイト(bainite)50〜70体積%、フェライト(ferrite)10〜25体積%、マルテンサイト(martensite)5〜20%、および残留オーステナイト(retained austenite)5〜15%を含む複合組織を有することができる。
【0070】
前記鋼スラブに含まれる上述した組成のクロム(Cr)、上述した条件の焼鈍熱処理および再熱処理を適用して製造されるめっき鋼板は、前記ベイナイトの内部に前記残留オーステナイトがラミナー(Laminar)形態に形成される。また、前記クロムによるベイナイト(Bainite)領域の拡大効果によって、前記ベイナイトの変態分率は増加し、前記残留オーステナイトの形状も次第にフィルム形態に変わりながら濃化度が向上して伸び率に優れることができる。
【0071】
一具体例において、前記めっき鋼板は、降伏強度(YS):850〜950MPa、引張強度(TS):1180〜1350MPa、延伸率(EL):10〜20%、および降伏比(YR):65〜75%であるとよい。前記範囲で、衝突特性、成形性および剛性が同時に優れることができる。
【0072】
本発明のめっき鋼板の製造方法を適用して製造されためっき鋼板は、衝突特性および機械的強度に優れ、曲げ性に優れ、ベンディング特性およびドローイング特性などの成形性に優れることができる。
【0073】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をより詳細に説明する。ただし、これは本発明の好ましい例として提示されたものであり、いかなる意味であれ、これによって本発明が制限されると解釈されない。
【0074】
実施例1
下記表1による含有量を有する成分と、残部の鉄および不純物を含む鋼スラブを1200℃で再加熱した。次に、前記再加熱された鋼スラブを860℃の仕上げ圧延温度で熱間圧延し、450℃に冷却して巻取って熱延コイルを製造した。次に、前記熱延コイルをアンコイリングして酸洗後、圧下率70%で冷間圧延を実施して冷延鋼板を製造した。次に、前記冷延鋼板を下記表2の条件で焼鈍熱処理、冷却および再熱処理し、溶融亜鉛めっきしてめっき鋼板を製造した。
【0075】
実施例2
下記表1による含有量を有する成分の鋼スラブを適用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法でめっき鋼板を製造した。
【0076】
比較例1〜3
下記表1による含有量を有する成分の鋼スラブを適用し、製造された冷延鋼板について、比較例1〜3に対して、表2により焼鈍熱処理を進行させた後、冷却した。比較例2に対してのみ、再熱処理を進行させた。以後、比較例1〜3に対して、前記実施例1と同様の方法で溶融亜鉛めっきしてめっき鋼板を製造した。
【0077】
比較例4
下記表1による含有量を有する成分の鋼スラブを適用し、製造された冷延鋼板について、表2により焼鈍熱処理を進行させた後、冷却した。以後、580℃の温度で再熱処理を進行させた。以後、前記実施例1と同様の方法で溶融亜鉛めっきしてめっき鋼板を製造した。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
前記製造された実施例1〜2および比較例1〜4のめっき鋼板の微細組織分布と、引張強度(MPa)、降伏強度(MPa)、延伸率(%)、降伏比(%)および曲げ性を測定した結果を下記表3に示した。
【0081】
【表3】
【0082】
前記表3の結果を参照すれば、本発明による実施例1〜2の場合、ベイナイト(bainite)50〜70%、フェライト(ferrite)10〜25%、マルテンサイト(martensite)5〜20%、および残留オーステナイト(retained austenite)5〜15%を含む微細組織を有し、890MPa以上の引張強度および16%以上の延伸率を確保して、衝撃強度および成形性が同時に優れていることが分かった。反面、本発明のクロムを含まない比較例1の場合、実施例1〜2に比べて曲げ性などの成形性が低下し、引張強度が低下し、本発明の焼鈍時、二次加熱工程を適用しない比較例3と、本発明の焼鈍時、二次加熱温度範囲を外れた比較例4の場合、成形性および剛性が低下していることが分かった。
【0083】
本発明の単純な変形乃至変更は、この分野における通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更はすべて本発明の領域に含まれると見なすことができる。
図1
図2