特許第6559920号(P6559920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6559920
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】管路更生方法および更生管
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/32 20060101AFI20190805BHJP
   B29C 63/26 20060101ALI20190805BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20190805BHJP
   E03F 7/00 20060101ALI20190805BHJP
   F16L 55/16 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   B29C63/32
   B29C63/26
   E03F3/04
   E03F7/00
   F16L55/16
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-34222(P2019-34222)
(22)【出願日】2019年2月27日
【審査請求日】2019年2月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000149206
【氏名又は名称】株式会社大阪防水建設社
(73)【特許権者】
【識別番号】507157676
【氏名又は名称】株式会社クボタ工建
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】中村 良一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晃介
(72)【発明者】
【氏名】谷川 伸一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 仁
(72)【発明者】
【氏名】三山 和孝
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−285760(JP,A)
【文献】 特開2015−074965(JP,A)
【文献】 特開2013−104204(JP,A)
【文献】 特開2018−083386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00 − 63/48
E03F 1/00 − 11/00
F16L 51/00 − 55/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管とライニング管とが充填材によって一体化された更生管を形成する管路更生方法であって、
(a)前記既設管の内周面の所定位置に周方向に延びる環状溝を形成し、
(b)前記ステップ(a)の後、前記環状溝内への前記充填材の入り込みを阻止する封止部材を前記環状溝に設け、
(c)前記ステップ(b)の後、前記既設管の内周面に沿うようにライニング部材を施工して、伸長性を有する前記ライニング管を形成し、
(d)前記ステップ(c)の後、前記既設管の内周面と前記ライニング管の外周面との間に前記充填材を充填する、管路更生方法。
【請求項2】
前記ステップ(c)では、伸長可能部を有するライニング管を形成する、請求項1記載の管路更生方法。
【請求項3】
前記ステップ(c)では、前記既設管の管軸方向において前記環状溝と重なり合う位置に前記伸長可能部が配置されるように前記ライニング管を形成する、請求項2記載の管路更生方法。
【請求項4】
前記ステップ(c)では、前記ライニング部材として帯板状のライニング部材を用い、螺旋状に巻き回した前記帯板状のライニング部材の隣り合う側縁部同士を連結することで前記ライニング管を形成する、請求項1から3のいずれかに記載の管路更生方法。
【請求項5】
前記ステップ(c)では、前記ライニング部材として伸長可能部を有するライニング部材を用いる、請求項1から4のいずれかに記載の管路更生方法。
【請求項6】
既設管とライニング管とが充填材によって一体化された更生管であって、
前記既設管の内周面の所定位置において周方向に延びるように形成された環状溝、
前記環状溝に設けられ、当該環状溝内への前記充填材の入り込みを阻止する封止部材、
伸長性を有し、前記既設管の内周面に沿うように形成された前記ライニング管、および、
前記既設管の内周面と前記ライニング管の外周面との間に充填された前記充填材を備え
前記ライニング管は、前記環状溝と重なり合う位置において切断されることなく連続した状態で、前記既設管の内周面および前記環状溝の内面を覆っている、更生管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は管路更生方法および更生管に関し、特にたとえば、既設管とライニング管とが充填材によって一体化された更生管を形成する、管路更生方法および更生管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の管路更生方法の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の技術では、既設管の内周面に沿って螺旋状に巻回した帯板部材(帯状ストリップ)の幅方向縁部同士を接続部材(ジョイナ)で連結することによってライニング管(内管)を形成した後、既設管とライニング管との間に充填材を注入することで、既設管とライニング管とが一体化された更生管を形成する。特許文献1の技術で用いられるジョイナは、フレキシブル部および切欠部によって構成される伸長可能部を有しており、地震等によってストリップのピッチが大きく広がる場合でも、ジョイナが切欠部の箇所で破断することによってストリップのピッチの広がりが許容される。また、切欠部の破断によって形成された隙間は、フレキシブル部によって水密封止される。
【0003】
特許文献1の技術によれば、伸張可能部を有するライニング管が形成されるので、地震等があった場合でも、ライニング管はそれに追従して水密性を確保することができる。しかし、既設管自体は柔軟性を有さないので、地震時にたとえば既設管とマンホールとの接続部が破損して、この破損箇所から地下水および土砂などが管路内に浸入してしまう可能性がある。このため、よりフレキシブルな構造を有し、耐震性により優れる更生管を形成できる管路更生方法が求められる。
【0004】
これに対して、特許文献2には、内周面にライニング層が形成された既設管に誘導目地を形成して耐震化する方法(耐震止水構造)が開示されている。特許文献2の技術では、既設管の所定位置に、既設管の内周面の全周に亘って形成されたライニング層を厚さ方向に横断する溝からなる誘導目地を形成し、この誘導目地の側面に開放されたライニング層の隙間を閉塞部材によって閉塞する。その後、誘導目地を閉鎖する閉鎖部材を誘導目地に対向して配置し、閉鎖部材をライニング層に押圧して支持する支持部材を設けることによって、内周面にライニング層が形成された既設管の耐震止水処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004‐251340号公報
【特許文献2】特開2010‐285760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の技術では、既設管にライニング層(ライニング管および充填材)を設けて更生管を形成する管路更生処理と、形成された更生管の耐震止水処理との2段階での施工になるため、工期が長期化し、施工コストが増加してしまう。また、特許文献2の技術では、誘導目地を形成する際にライニング層を切断するので、誘導目地に対向する閉鎖部材を設ける必要がある上、誘導目地の側面に開放されたライニング層の隙間を閉塞部材によって閉塞する必要があるので、手間が掛かる。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、管路更生方法および更生管を提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、耐震性に優れる更生管を短工期および低コストで形成することができる、管路更生方法および更生管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、既設管とライニング管とが充填材によって一体化された更生管を形成する管路更生方法であって、(a)既設管の内周面の所定位置に周方向に延びる環状溝を形成し、(b)ステップ(a)の後、環状溝内への充填材の入り込みを阻止する封止部材を環状溝に設け、(c)ステップ(b)の後、既設管の内周面に沿うようにライニング部材を施工して、伸長性を有するライニング管を形成し、(d)ステップ(c)の後、既設管の内周面とライニング管の外周面との間に充填材を充填する、管路更生方法である。
【0010】
第1の発明では、既設管とライニング管とが充填材によって一体化された更生管を形成する。先ず、ステップ(a)において、既設管の内周面の所定位置に周方向に延びる環状溝を形成する。次に、ステップ(b)において、環状溝に封止部材を設ける。この封止部材は、環状溝内への充填材の入り込みを阻止するものであり、充填材によって環状溝が埋められてしまうことを防止する。続いて、ステップ(c)において、既設管の内周面に沿うようにライニング部材を施工して、伸長性を有するライニング管を既設管内に形成する。その後、ステップ(d)において、既設管の内周面とライニング管の外周面との間に充填材を充填することで、既設管とライニング管とが充填材によって一体化された更生管を形成する。
【0011】
このように形成された更生管では、地震等があった場合に、既設管が破損する部位を環状溝の部分に誘発することができる。このため、既設管(延いては更生管)の他の部位の破損を防ぐことができ、更生管の非管理状態での破損を防ぐことができる。言い換えると、既設管に環状溝を形成することで、更生管をフレキシブルな構造にすることができ、更生管の耐震性を向上させることができる。また、環状溝部分で既設管に変形が発生すると、その変形はライニング管に伝わるが、ライニング管は伸長性を有するので、水密性を保持したまま既設管の変形に追従する。
【0012】
第1の発明によれば、管路更生方法の工程内に環状溝の形成工程を組み込み、既設管に環状溝を形成した後にライニング管を施工するので、耐震性に優れる更生管を短工期および低コストで形成することができる。また、環状溝を形成する際にライニング管を切断しないので、切断部分からの浸水は発生し得ない。このため、水密性を確保するために切断部分に閉鎖部材などを別途施工する必要がなく、地震時などに既設管が環状溝の部分で破断しても、ライニング管によって更生管の水密性が適切に確保される。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に従属し、ステップ(c)では、伸長可能部を有するライニング管を形成する。
【0014】
第3の発明は、第2の発明に従属し、ステップ(c)では、既設管の管軸方向において環状溝と重なり合う位置に伸長可能部が配置されるようにライニング管を形成する。
【0015】
第3の発明によれば、既設管が環状溝の部分で破断した際に、伸長可能部がこの破断に連動して伸長し易く(追従し易く)なる。したがって、ライニング管の他の部分に掛かる負荷が軽減されて、ライニング管の破損がより適切に防止される。
【0016】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明に従属し、ステップ(c)では、ライニング部材として帯板状のライニング部材を用い、螺旋状に巻き回した帯板状のライニング部材の隣り合う側縁部同士を連結することでライニング管を形成する。
【0017】
第4の発明では、帯板状のライニング部材を螺旋状に巻き回し、その隣り合う側縁部同士を連結することでライニング管を形成する。この際には、2種類以上の帯板状のライニング部材を組み合わせて用いてもよいし、1種類の帯板状のライニング部材を単独で用いてもよい。
【0018】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明に従属し、ステップ(c)では、ライニング部材として伸長可能部を有するライニング部材を用いる。
【0019】
第6の発明は、既設管とライニング管とが充填材によって一体化された更生管であって、既設管の内周面の所定位置において周方向に延びるように形成された環状溝、環状溝に設けられ、当該環状溝内への充填材の入り込みを阻止する封止部材、伸長性を有し、既設管の内周面に沿うように形成されたライニング管、および、既設管の内周面とライニング管の外周面との間に充填された充填材を備え、ライニング管は、環状溝と重なり合う位置において切断されることなく連続した状態で、既設管の内周面および環状溝の内面を覆っている、更生管である。
【0020】
第6の発明では、地震等があった場合に、既設管が破損する部位を環状溝の部分に誘発することができる。このため、既設管(延いては更生管)の他の部位の破損を防ぐことができ、更生管の非管理状態での破損を防ぐことができる。言い換えると、既設管に環状溝を形成することで、更生管をフレキシブルな構造にすることができ、更生管の耐震性を向上させることができる。また、環状溝部分で既設管に変形が発生すると、その変形はライニング管に伝わるが、ライニング管は伸長性を有するので、水密性を保持したまま既設管の変形に追従する。
【0021】
第6の発明によれば、耐震性に優れる更生管を短工期および低コストで提供できる。また、環状溝によってライニング管が切断されていないので、更生管の水密性を確保するために閉鎖部材などを別途施工する必要がない。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、管路更生方法の工程内に環状溝の形成工程を組み込み、既設管に環状溝を形成した後にライニング管を施工するので、耐震性に優れる更生管を短工期および低コストで形成することができる。また、環状溝を形成する際にライニング管を切断しないので、切断部分からの浸水は発生し得ない。このため、水密性を確保するために切断部分に閉鎖部材などを別途施工する必要がなく、地震時などに既設管が環状溝の部分で破断しても、ライニング管によって更生管の水密性が適切に確保される。
【0023】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明の一実施例である管路更生方法において既設管内にライニング管を形成するときの様子を模式的に示す図解図である。
図2】帯板部材の一例を示す断面図である。
図3】接続部材の一例を示す断面図である。
図4】帯板部材の側縁部同士を接続部材で連結した様子を示す断面図である。
図5】管路更生方法の一連の工程を示す図解図である。
図6】管路更生方法によって形成した更生管を示す断面図である。
図7】地震時などに環状溝部分が破断したときの更生管の様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照して、この発明の一実施例である管路更生方法は、地下に埋設された既設管12を更生するものであり、既設管12とライニング管14とが充填材16によって一体化された更生管(複合管)10を形成する。詳細は後述するように、この実施例では、帯板部材20を既設管12の内面に沿って螺旋状に巻き回し、その帯板部材20の隣り合う側縁部同士を接続部材22で連結することによって、ライニング管14を既設管12内で製管する。
【0026】
なお、この発明に係る管路更生方法は、鉄筋コンクリート管(ヒューム管)、コンクリート管、陶管および合成樹脂管などを更生するものであり、更生する既設管12の口径、形状および用途などは、特に限定されない。この実施例では、中大口径の断面円形の下水管を更生することを想定して説明する。
【0027】
先ず、ライニング管14を構成する帯板状のライニング部材(管更生部材)である帯板部材(ストリップ)20および接続部材(ジョイナ)22の一例について説明する。ただし、以下に示す帯板部材20および接続部材22の具体的構成ないし形状は、単なる一例であり、適宜変更可能である。
【0028】
図2に示すように、帯板部材20は、ライニング管14の主構成要素となる長尺の部材であって、帯板状の基体30を含む。基体30の内面30aは、ライニング管14の内面を構成する面であり、平滑面となっている。また、基体30の外面30b側には、幅方向に所定間隔で配置されて、長手方向に延びる複数のリブ32が形成される。リブ32は、略T字状の第1リブ32aと基体30の両側縁部に配置される略L字状の第2リブ32bとを含み、後述する充填材(裏込材)に埋め込まれることでアンカ機能を発揮する。
【0029】
また、基体30の両側縁部には、後述する接続部材22の第2嵌合部42と嵌め合わされる第1嵌合部34が形成される。第1嵌合部34は、基体30の内面30a側に向かって開口する略U字状に形成されており、幅方向外側に配置される縦片34aには、幅方向内側および外側に向かって突出する2つの係止爪が形成される。
【0030】
帯板部材20は、たとえば、硬質塩化ビニル等の合成樹脂の押出成形によって一体成形され、リブ32および第1嵌合部34は、基体30の長手方向の全長に亘って形成される。帯板部材20の幅は、たとえば250mmであり、その高さは、たとえば17.5mmである。
【0031】
図3に示すように、接続部材22は、帯板部材20の側縁部同士を連結するための長尺の部材であって、帯板状の基板40を備える。基板40の内面40aは、帯板部材20の内面30aと共にライニング管14の内面を構成する。また、基板40の両側縁部には、帯板部材20の第1嵌合部34と嵌め合わされる第2嵌合部42が形成される。第2嵌合部42は、基板40の外面40bから突出して長手方向に延びる2つの突条42aを含み、各突条42aの先端部には、係止爪が形成される。また、2つの突条42aの間には、止水材44が設けられる。
【0032】
また、基板40の中央部には、接続部材22の幅方向、つまりライニング管14の管軸方向に伸長可能な伸長可能部46が形成される。伸長可能部46は、外面40bから突出するU字状の溝部48と、溝部48全体を覆うように外面40b同士を連結する波形状のフレキシブル部50とを含む。このような伸長可能部46は、溝部48の変形に応じて伸縮可能であると共に、溝部48が幅方向に破断(分割)することで、フレキシブル部50の変形に応じた大きな伸長が可能となる。
【0033】
接続部材22の基板40、第2嵌合部42および溝部48は、たとえば、硬質塩化ビニル等の合成樹脂の押出成形によって一体成形される。また、フレキシブル部50は、たとえば、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂などによって形成されて、基板40に固着される。第2嵌合部42、止水材44および伸長可能部46は、基板40の長手方向の全長に亘って形成される。接続部材22の幅は、たとえば55mmである。
【0034】
図4に示すように、螺旋状に巻き回した帯板部材20の隣り合う側縁部同士を接続部材22によって連結する際には、帯板部材20の第1嵌合部34と接続部材22の第2嵌合部42とを嵌め合わせる。すると、第2嵌合部42の各係止爪が第1嵌合部34の各係止爪に係止されて、帯板部材20に対して接続部材22が抜け止め固定された状態で、帯板部材20の側縁部同士が接続部材22によって連結される。また、止水材44と第1嵌合部34の縦片34aの先端部とが接触することで、この連結部分の止水性が確保される。さらに、伸長可能部46を有する接続部材22を用いてライニング管14を形成することで、螺旋状に延びる伸長可能部46を有するライニング管14が形成され、形成されたライニング管14は、管軸方向に伸長性を有するものとなる。
【0035】
続いて、図1および図5を参照して、既設管12とライニング管14とが充填材16で一体化された更生管10を形成することによって、既設管12を更生する管路更生方法の一例について説明する。
【0036】
既設管12を更生するときには、先ず、既設管12の更生区間近傍の地上に、帯板部材20、接続部材22、スペーサ18および封止部材62等の必要な部材、並びにカッタ装置および製管機などの必要な装置を適宜用意しておく。帯板部材20および接続部材22は、それぞれ個別にロール状に巻き取ったものを用意し、更生区間の開始位置および終了位置の地上に設置する。また、既設管12の内周面は、高圧洗浄機などを用いて適宜洗浄しておく。
【0037】
次に、図5(A)に示すように、既設管12の内周面の所定位置に、周方向に延びる環状溝60を形成する。環状溝60の形成には、コンクリートおよび鉄筋を同時に切断可能な、専用のカッタ装置を用いるとよい。
【0038】
環状溝60の大きさおよび形状などは、既設管12の材質および口径などの条件に応じて適宜設定されて特に限定されないが、環状溝60の幅は、たとえば5mm〜10mmが好ましい。また、環状溝60の深さは、既設管12の残存厚さがたとえば20mm〜30mmとなる深さが好ましく、既設管12の残存部分に鉄筋が存在しないように、環状溝60の底面が鉄筋の配筋位置よりも外周面側に位置する深さが好ましい。また、環状溝60の断面形状としては、矩形状、三角形状および半円状などを採用でき、この実施例では矩形状を採用している。
【0039】
また、既設管12の管軸方向における環状溝60の形成位置は、特に限定されないが、既設管12とマンホール70との接続部72の近傍に形成することが好ましい。たとえば、接続部72から500mm程度の位置に環状溝60を形成することが好ましい。さらに、環状溝60は、既設管12の周方向の全長に亘って形成することが好ましいが、必ずしも周方向の全長に亘って連続して形成される必要はなく、既設管12の周方向の一部を残した状態で環状溝60が形成されても構わない。
【0040】
既設管12の内周面に環状溝60を形成すると、続いて、図5(B)に示すように、この環状溝60に対して封止部材62を設ける。この封止部材62は、環状溝60内への充填材16の入り込みを阻止するものであり、充填材16が環状溝60内で既設管12と一体化することを防止する、つまり充填材16によって環状溝60が埋められてしまうことを防止する。
【0041】
封止部材62としては、ポリスチレンフォーム等の発泡材およびシリコーン系コーキング材などのコーキング材を用いることができる。このような封止部材62を環状溝60内に充填しておくことで、環状溝60内への充填材16の入り込みを阻止するとよい。ただし、封止部材62は、環状溝60内への充填材16の入り込みを阻止可能なものであれば、必ずしも環状溝60内に充填される必要はない。たとえば、環状溝60の開口を覆うように帯状(テープ状)または短円筒状の封止部材を環状溝60に取り付けるようにしてもよい。
【0042】
封止部材62によって環状溝60を封止すると、続いて、既設管12の内面頂部に、管軸方向に沿ってスペーサ18を設置する(図1参照)。スペーサ18は、既設管12とライニング管14との間に充填材16の注入ホースを導入するための案内通路を形成する。また、スペーサ18は、注入した充填材16によってライニング管14が浮上してしまうことを防止すると共に、形成した更生管10の強度を向上させる。
【0043】
既設管12の内面頂部にスペーサ18を設置すると、続いて、図1および図5(C)に示すように、製管機を用いて既設管12内にライニング管14を施工する。ここでは先ず、既設管12内に帯板部材20を引き込みながら、既設管12の内周面に沿って帯板部材20を螺旋状に巻き回して螺旋管を仮製管していく。この際、帯板部材20の隣り合う側縁部間には、接続部材22の嵌め込み代に相当する隙間をあけておく。また、この仮製管作業を進めつつ、仮製管した螺旋管においては、製管機を用いて開始位置から順に、帯板部材20の隣り合う側縁部同士を接続部材22によって連結していく。すなわち、帯板部材20の第1嵌合部34と接続部材22の第2嵌合部42とを順次嵌め合わせていくことで、既設管12の内周面に沿うライニング管14を製管する。
【0044】
ここで、既設管12内にライニング管14を形成する際には、既設管12の管軸方向において、環状溝60と重なり合う位置に伸長可能部46が配置されるようにライニング管14を形成することが好ましい。後述のように既設管12が環状溝60の部分で破断した際に、伸長可能部46がこの破断に連動して伸長し易い(追従し易い)からである。この実施例では、螺旋状に延びる伸長可能部46を有するライニング管14を形成するので、環状溝60がどの管軸方向位置に形成されていても、環状溝60と伸長可能部46とが管軸方向において重なり合う(交差する)こととなる。すなわち、この実施例によれば、施工作業者は、伸長可能部46の位置を特に気にすることなく、従来通り帯板部材20および接続部材22を用いてライニング管14を形成するだけで、環状溝60と重なり合う位置に伸長可能部46を配置することができる。
【0045】
既設管12内にライニング管14を形成すると、続いて、既設管12の内周面とライニング管14の外周面との間にセメントミルク系の充填材16を注入する。充填材16が固化することで、図6に示すような、既設管12とライニング管14とが充填材16によって一体化された更生管10が形成される。その後、片付け作業などを適宜実施することによって、既設管12の更生作業が終了する。
【0046】
上述のように形成された更生管10は、図6に示すように、既設管12と、既設管12の内周面に形成された環状溝60と、環状溝60に設けられた封止部材62と、伸長可能部46を有し、既設管の内周面に沿うように形成されたライニング管14と、既設管12の内周面とライニング管14の外周面との間に充填された充填材16とを備えている。
【0047】
このような更生管10では、既設管12が環状溝60を有している、つまり既設管12に強度の小さい部位を故意に設けているため、図7に示すように、地震等によって大きな力が更生管10に作用すると、既設管12の環状溝60の部分が他の部分よりも先にひび割れて、環状溝60の部分で既設管12に伸長および曲げが発生する。つまり、既設管12の破損部位を環状溝60の部分に誘発することができるので、既設管12(延いては更生管10)の他の部位の破損を防ぐことができ、更生管10の非管理状態での破損を防ぐことができる。このように、既設管12に環状溝60を形成することで、更生管10をフレキシブルな構造にすることができ、更生管10の耐震性を向上させることができる。
【0048】
また、環状溝60の部分で既設管12に伸長および曲げなどの変形が発生すると、その変形はライニング管14に伝わる。ライニング管14は、溝部48が幅方向に破断すると共にフレキシブル部50が大きく伸長することで、水密性を保持したまま既設管12の変形に追従する。つまり、この実施例では、環状溝60を形成する際にライニング管14を切断しないので、ライニング管14が本来有する耐震機能を損なうことなくそのまま更生管10に生かすことができる。
【0049】
さらに、環状溝60を既設管12とマンホール70との接続部72の近傍に形成しておくことで、既設管12が環状溝60の部分でひび割れた際には、既設管12は、マンホール70との接続部72を含む部分とその他の部分とが分離して、互いに独立して挙動するようになる。つまり、地震時には環状溝60の部分で変位が吸収されて、接続部72にかかる負担が軽減されるので、接続部72の破損が防止される。
【0050】
以上のように、この実施例によれば、管路更生方法の工程内に環状溝60の形成工程を組み込み、既設管12に環状溝60を形成した後にライニング管14を施工するので、耐震性に優れる更生管10を短工期および低コストで形成することができる。また、環状溝60を形成する際にライニング管14を切断しないので、切断部分からの浸水は発生し得ない。このため、水密性を確保するために切断部分に閉鎖部材などを別途施工する必要がなく、地震時などに既設管12が環状溝60の部分で破断しても、ライニング管14によって更生管10の水密性が適切に確保される。
【0051】
また、既設管12の管軸方向において、環状溝60と重なり合う位置に伸長可能部46が配置されるようにライニング管14を形成するので、既設管12が環状溝60の部分で変形(破断)した際に、この変形に連動させて伸長可能部46を適切に伸長させることができる。したがって、ライニング管14の連結部分などに掛かる負荷が軽減されて、ライニング管14の破損(第1嵌合部34と第2嵌合部42との嵌合外れ等)がより適切に防止される。
【0052】
なお、上述の実施例では、伸長可能部46を備える接続部材22を用いるようにしたが、帯板部材20に同様の伸長可能部を形成することもできる。
【0053】
また、帯板部材20および接続部材22などのライニング部材が必ずしも単体で伸張可能部を備える必要はなく、嵌合が外れない程度に連結部分が撓む(変形する)ことで、ライニング管14が伸長するようにしても構わない。つまり、ライニング部材同士の連結部分(第1嵌合部34と第2嵌合部42)が伸長可能部として機能してもよい。
【0054】
さらに、伸長性を有するライニング管を形成するに対して、必ずしも伸長可能部を備えるライニング部材を用いる必要はなく、ライニング部材をポリエチレン等の伸長可能な材質によって形成することで、ライニング管に伸長性を持たせるようにしても構わない。
【0055】
また、上述の実施例では、接続部材22を用いて帯板部材20の隣り合う側縁部同士を連結するようにしたが、これに限定されず、帯板部材の両側縁部に互いに嵌り合う嵌合部を形成することによって、帯板部材の側縁部同士を直接連結するようにしてもよい。すなわち、帯板状のライニング部材を螺旋状に巻き回してライニング管を形成する際には、2種類以上の帯板状のライニング部材を組み合わせて用いてもよいし、1種類の帯板状のライニング部材を単独で用いてもよい。
【0056】
さらに、ライニング管は、必ずしも帯板状のライニング部材を螺旋状に巻き回すことで形成される必要はない。たとえば、ライニング部材として円弧状のものを用い、円弧状のライニング部材を周方向および管軸方向に連結することでライニング管を形成することもできる。この場合には、たとえば、ライニング部材の管軸方向における連結部分に伸長性を持たせる、つまり連結部分を伸長可能部として、ライニング管が伸長性を有するようにするとよい。また、この場合でも、ライニング管を施工する際には、伸長可能部と環状溝との位置が重なり合うようにすることが好ましい。
【0057】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 …更生管
12 …既設管
14 …ライニング管
16 …充填材
18 …スペーサ
20 …帯板部材
22 …接続部材
34 …第1嵌合部
42 …第2嵌合部
46 …伸長可能部
60 …環状溝
62 …封止部材
【要約】
【課題】 耐震性に優れる更生管を短工期および低コストで形成できる管路更生方法を提供する。
【解決手段】 この管路更生方法では、既設管12とライニング管14とが充填材16で一体化された更生管10を形成する。先ず、既設管の内周面の所定位置に周方向に延びる環状溝60を形成し、次に、環状溝内への充填材の入り込みを阻止するための封止部材62を設ける。その後、既設管の内周面に沿うように伸長性を有するライニング管を形成し、既設管の内周面とライニング管の外周面との間に充填材を充填する。
【選択図】 図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7