特許第6559947号(P6559947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559947
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】電動補助自転車
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20190805BHJP
   B62J 99/00 20090101ALI20190805BHJP
【FI】
   B62M6/45
   B62J99/00 J
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-245600(P2014-245600)
(22)【出願日】2014年12月4日
(65)【公開番号】特開2016-107738(P2016-107738A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】阪本 翔
(72)【発明者】
【氏名】中村 佑真
(72)【発明者】
【氏名】高尾 浩二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寛
(72)【発明者】
【氏名】田上 勝
【審査官】 稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−95287(JP,A)
【文献】 特開2014−69689(JP,A)
【文献】 特開2002−19684(JP,A)
【文献】 特開2011−230664(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0226400(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の車輪を回転させる補助駆動力を発生する発生手段と、
車速を検出する車速検出手段と、
ハンドル及びロールの少なくとも一方の回転角度を検出する角度検出手段と、
前記車速検出手段によって予め定めた速度より低い車速が検出され、かつ前記角度検出手段によって予め定めた角度以上の前記回転角度が検出された場合に、前記角度検出手段によって検出された前記回転角度に応じて予め定めた補助駆動力を発生するように前記発生手段を制御し、前記車速検出手段によって予め定めた速度以上の車速が検出された場合、及び前記車速検出手段によって予め定めた速度より低い車速が検出され、かつ前記角度検出手段によって予め定めた角度より小さい前記回転角度が検出された場合に、予め定めた定常走行時の補助駆動力を発生するように前記発生手段を制御する制御手段と、
を備え
前記制御手段は、前記予め定めた補助駆動力として、前記角度検出手段によって検出された前記回転角度が大きいほど小さい補助駆動力が発生するように前記発生手段を制御する電動補助自転車。
【請求項2】
ペダルに加えられたトルクを検出するトルク検出手段と、クランク角を検出するクランク角検出手段と、を更に備え、
前記制御手段が、前記車速検出手段、前記トルク検出手段、クランク角検出手段、及び前記角度検出手段の各々の検出結果に基づいて前記予め定めた補助駆動力を発生するように前記発生手段を制御し、前記車速検出手段、前記トルク検出手段、及びクランク角検出手段の各々の検出結果に基づいて前記定常走行時の補助駆動力を発生するように前記発生手段を制御する請求項1に記載の電動補助自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダルに加えられた入力トルクに応じた補助駆動力を電動モータによって発生させ、この補助駆動力によって補助的に車輪を駆動する電動補助自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
ペダルに加えられた入力トルクを車輪に供給する人力駆動系と、ペダルに加えられた踏力に応じて電動モータから車輪に補助駆動力を供給する補助駆動力駆動系と、を備えた電動補助自転車が知られている。
【0003】
また、電動補助自転車には、ペダルに加えられた入力トルクを後輪に伝達し、モータによる補助駆動力を前輪に伝達するタイプのものや、ペダルに加えられた入力トルクとモータによる補助駆動力との双方を後輪に伝達するタイプのものがある。
【0004】
このような電動補助自転車では、ハンドルの舵角に応じて補助駆動力を制御する技術が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1では、足踏みペダルの足踏みを動力補助する電動モータに対してバッテリ電源から供給する電力を、舵角センサの出力舵角θの逆数に係数kを乗じたk/θで表される舵角関数を乗算して制限することが提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、ハンドルポストにハンドル角度を検出するハンドル角度検出手段を設けて、検出したハンドル角度に応じてアシストモータの電動駆動を制御する前輪駆動電動自転車が提案されている。
【0007】
また、特許文献3には、ハンドル切れ角検出装置が検出したハンドル切れ角が所定値を超えたときに、モータによるアシスト力を弱める制御を行う電動アシスト自転車が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−95287号公報
【特許文献2】特開2002−19684号公報
【特許文献3】特開2011−230664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜3のように、舵角に応じて補助駆動力を制御することで走路逸脱や転倒等の防止、操作性向上などの効果を得ることができる。ここで、低速走行時には、特許文献1〜3のように舵角に応じて補助駆動力を制御することで走路逸脱や転倒等を防止することができる。しかしながら、通常速度の走行時や高速走行時などの状況では、舵角に応じて補助駆動力を減らすと、巻き込みが大きくなったり、旋回から直進への立て直しが難しくなったりなどの弊害が考えられるため、改善の余地がある。
【0010】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、発進時や低速時における走行安定性を向上し、かつ旋回時の安定性を維持することが可能な電動補助自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明に係る電動補助自転車は、自転車の車輪を回転させる補助駆動力を発生する発生手段と、車速を検出する車速検出手段と、ハンドル及びロールの少なくとも一方の回転角度を検出する角度検出手段と、前記車速検出手段によって予め定めた速度より低い車速が検出され、かつ前記角度検出手段によって予め定めた角度以上の前記回転角度が検出された場合に、前記角度検出手段によって検出された前記回転角度に応じて予め定めた補助駆動力を発生するように前記発生手段を制御し、前記車速検出手段によって予め定めた速度以上の車速が検出された場合、及び前記車速検出手段によって予め定めた速度より低い車速が検出され、かつ前記角度検出手段によって予め定めた角度より小さい前記回転角度が検出された場合に、予め定めた定常走行時の補助駆動力を発生するように前記発生手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記予め定めた補助駆動力として、前記角度検出手段によって検出された前記回転角度が大きいほど小さい補助駆動力が発生するように前記発生手段を制御する
【0014】
また、本発明に係る電動補助自転車は、ペダルに加えられたトルクを検出するトルク検出手段と、クランク角を検出するクランク角検出手段と、を更に備え、前記制御手段が、前記車速検出手段、前記トルク検出手段、クランク角検出手段、及び前記角度検出手段の各々の検出結果に基づいて前記予め定めた補助駆動力を発生するように前記発生手段を制御し、前記車速検出手段、前記トルク検出手段、及びクランク角検出手段の各々の検出結果に基づいて前記定常走行時の補助駆動力を発生するように前記発生手段を制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電動補助自転車によれば、発進時や低速時における走行安定性を向上し、かつ旋回時の安定性を維持することが可能な電動補助自転車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る電動補助自転車の構成を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る電動補助自転車の電気系の構成を示すブロック図である。
図3】(A)は舵角とアシスト比率を示すグラフであり、(B)は時間経過に対するトルク変化を示すグラフであり、(C)は時間経過に対する横方向距離を示すグラフである。
図4】本発明の実施形態に係る電動補助自転車の演算処理装置で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】(A)は低速時や発進時の補助駆動力とハンドルの切り込みを説明するための図であり、(B)は低速時や発進時の補助駆動力による旋回の膨らみを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、以下の説明では、運転者によってペダルに加えられた入力トルクで後輪を駆動すると共に、電動モータによる補助駆動力で前輪を駆動するタイプの電動補助自転車に本発明を適用する場合を例示する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る電動補助自転車の構成を示す側面図である。
【0019】
電動補助自転車1は、フロントフォーク11、ヘッドパイプ12、ダウンチューブ13、シートチューブ14、シートステー15、及びチェーンステー16からなるフレームを有している。前輪21はフロントフォーク11に回動自在に取り付けられ、後輪22はシートステー15とチェーンステー16との交点に回動自在に取り付けられている。
【0020】
ヘッドパイプ12には、ハンドルステム23が回動自在に挿通され、ハンドルステム23の上端にはハンドル24が取り付けられている。一方、シートチューブ14には、シートポスト25が嵌合されており、シートポスト25の上端にはサドル26が取り付けられている。
【0021】
ペダル27は、クランク28を介してスプロケット(図示せず)に接続されている。運転者がペダル27に踏力を加えることによりスプロケットが回転し、スプロケットが回転することによってチェーン29を介して後輪22に駆動力が伝達されるようになっている。
【0022】
電動モータ30は、前輪21の車軸に装着され、前輪21を回転させる駆動力を生成する。電動モータ30の回転は、減速機構(図示せず)によって減速され、前輪21に伝達されるように構成されている。電動モータ30は、例えばブラシレスDCモータによって構成することができる。
【0023】
電動モータ30を駆動するための電力は、シートチューブ14に沿って着脱可能に設けられたバッテリ31から供給される。バッテリ31は、例えばリチウムイオン二次電池により構成され、充電を行うことによって繰り返し使用することが可能となっている。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係る電動補助自転車1の電気系の構成を示すブロック図である。
【0025】
電動補助自転車1は、図2に示すように、トルクセンサ32、クランク角センサ34、車速センサ36、舵角センサ38、ロールセンサ39、バッテリ10、操作・表示部18、演算処理装置20、モータ駆動回路40、及び電動モータ30を備えている。
【0026】
トルクセンサ32は、ペダル27に加えられた人力による入力トルクの大きさを検出し、検出した入力トルクの大きさを示すトルク検出信号を生成する。トルクセンサ32によって生成されたトルク検出信号は、演算処理装置20に入力される。トルクセンサ32は、例えば、クランク軸に対して機械的な接触部を有しない、磁歪効果を利用した公知のトルクセンサ等を適用することができる。
【0027】
クランク角センサ34は、クランク28の予め定めた基準位置に対する角度を検出し、検出したクランク角度を示すクランク角信号を生成する。生成されたクランク角信号は、演算処理装置20に入力される。クランク角センサ34は、クランク28に設けたホール素子や磁気センサ、ロータリエンコーダなどによって構成することができる。
【0028】
車速センサ36は、車輪の回転速度を検出し、検出した回転速度を示す速度信号を生成する。生成された速度信号は、演算処理装置20に入力される。車速センサ36は、例えば、車輪に設けたホール素子や磁気センサ等によって構成することができる。
【0029】
舵角センサ38は、ハンドル24の直進を基準位置として該基準位置に対する角度(以下、舵角という)を検出し、検出した舵角を示す舵角信号を生成する。生成された舵角信号は、演算処理装置20に入力される。舵角センサ38は、例えば、ハンドルステム23やヘッドパイプ12等に設けたホール素子やロータリエンコーダ等によって構成することができる。
【0030】
ロールセンサ39は、自転車1の垂直に対する傾きであるロール角を検出し、検出したロール角を示すロール信号を生成する。生成されたロール信号は、演算処理装置20に入力される。ロールセンサ390は、例えば、ジャイロセンサを適用することができる。なお、本実施形態では、ジャイロセンサ等のロールセンサによってロールを検出するが、車速と舵角とからロールを求める構成としてもよい。
【0031】
操作・表示部18は、電源ボタン(図示せず)や、アシスト比率の設定(アシストモード)を選択するための入力操作を受け付けるモード選択ボタン(図示せず)、ライト(図示せず)を点灯及び消灯させるための入力操作を受け付けるライトボタン(図示せず)等の各種ボタンを有する。操作・表示部18は、モード選択ボタンやライトボタン等の各種ボタンが操作されると、これらのボタンが操作されたことを演算処理装置20に通知する。また、操作・表示部18は、バッテリ残量、現在選択されているアシストモードやライトの点灯・消灯等を含む自車両の状態を表示するための表示部(図示せず)を有する。自車両の状態に関する情報は、演算処理装置20から供給される。
【0032】
演算処理装置20は、例えば、単一の半導体チップにCPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力回路、タイマー回路等を含むコンピュータシステムを集積したLSI(Large Scale Integration)を含んで構成されている。
【0033】
演算処理装置20は、バッテリ10から電力を受給して動作する。また、演算処理装置20は、バッテリ10の電力を電動モータ30に供給して電動モータ30を駆動する制御を行う。演算処理装置20は、各種センサからの信号に基づいて電動モータ30の駆動を制御する。具体的には、演算処理装置20は、トルクセンサ32、クランク角センサ34、車速センサ36、及び舵角センサ38の各センサの検出結果に基づいて、モータ駆動指令値を生成する。そして、生成したモータ駆動指令値をモータ駆動回路40に供給することによってモータ駆動回路40の動作を制御する。
【0034】
モータ駆動回路40は、演算処理装置20から供給されるモータ駆動指令値によって示される補助駆動力に対応した駆動電力をバッテリ10から電動モータ30に供給する。なお、トルクセンサ32、クランク角センサ34、車速センサ36、舵角センサ38、ロールセンサ39及び操作・表示部18も、それぞれバッテリ10から供給される電力によって動作する。
【0035】
なお、モータ駆動回路40、及び電動モータ30が発生手段に相当し、車速センサ36が車速検出手段に相当し、舵角センサ38及ロールセンサ39が角度検出手段に相当し、演算処理装置20が制御手段に相当する。
【0036】
ところで、本実施形態に係る電動補助自転車1は、上述のように、電動モータ30によって発生する補助駆動力で前輪を駆動する構成である。そのため、ハンドル24の舵角が大きい場合に、補助駆動力を車輪に発生すると、発生する駆動力によっては搭乗者が意図するよりも大きく、または急な角度で曲がってしまう可能性がある。また、発進時などの低速走行の場合においてはバランスを崩す可能性もある。補助駆動力を後輪22に付加する構成においても上記問題が起こり得るが、本実施形態のように、補助駆動力を前輪21に発生する構成では、特に上述のような問題が起こりやすい。
【0037】
そこで、本実施形態に係る電動補助自転車1の演算処理装置20は、車速が予め定めた速度より低く(例えば、発進時等)、舵角が予め定めた角度より大きい場合に、舵角とロール角に応じた補助駆動力となるように、電動モータ30の駆動を制御するようになっている。詳細には、舵角とロール角に応じた補助駆動力は、演算処理装置20が、車速v、ペダル27への入力トルクTPedal、ロール角θRoll、舵角θSteer、及びクランク角θCrankをパラメータとして、補助駆動力TAssist=f(v、TPedal、θRoll、θSteer、θCrank)によって求める。そして、演算処理装置20が求めた補助駆動力を示す指令値をモータ駆動回路40に出力することで電動モータ30の駆動を制御する。例えば、図3(A)に示すように、車速が予め定めた速度より低い場合には、舵角が大きいほどアシスト比率が小さくなるように制御する。図3(A)の例では、舵角が15度までに線形的に補助駆動力が減少し、それ以降は0になる例を示す。これにより、時間経過に対するトルク変化は、図3(B)の実線で示すように、補助駆動力が減少されない場合を示す図3(B)の点線に対して、補助駆動力が減少する。また、補助駆動力が減少することにより、時間経過に対する横方向距離が、図3(C)に示すように、少なくなり危険挙動が減少する。なお、図3(C)の点線は、補助駆動力が減少されない場合を示し、実線は補助駆動力が減少される場合を示し、一点鎖線は補助駆動力なしの場合を示す。また、図3(C)の例では、補助駆動力を減少させる場合は補助駆動力なしに対して2倍の横方向距離となり、補助駆動力を減少させない場合は補助駆動力なしに対して3.5倍の横方向距離となることを示している。
【0038】
また、本実施形態では、車速が予め定めた速度より低く、舵角が予め定めた角度より小さい場合、及び車速が予め定めた車速以上の定常走行の場合には、定常走行時の補助駆動力となるように、電動モータ30の駆動を制御する。定常走行時の補助駆動力は、演算処理装置20が、車速v、ペダル27への入力トルクTPedal、及びクランク角θCrankをパラメータとして、補助駆動力TAssist=f(v、TPedal、θCrank)によって求める。そして、演算処理装置20が求めた補助駆動力を示す指令値をモータ駆動回路40に出力することで電動モータ30の駆動を制御する。
【0039】
続いて、演算処理装置20で行われる具体的な処理について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る電動補助自転車1の演算処理装置20で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図4の処理は、操作・表示部18の電源ボタンによって電源がオンされた場合に開始する。
【0040】
ステップ100では、演算処理装置20が車速センサ36の検出結果を取得してステップ102へ移行する。
【0041】
ステップ102では、演算処理装置20がクランク角センサ34の検出結果を取得してステップ104へ移行する。
【0042】
ステップ104では、演算処理装置20がトルクセンサ32の検出結果を取得してステップ106へ移行する。
【0043】
ステップ106では、車速センサ36の検出結果が予め定めた速度以上か否かを演算処理装置20が判定し、該判定が肯定された場合にはステップ108へ移行し、否定された場合にはステップ110へ移行する。
【0044】
ステップ108では、定常走行時の補助駆動力制御を演算処理装置20が行ってステップ116へ移行する。すなわち、演算処理装置20が、車速v、ペダル27への入力トルクTPedal、及びクランク角θCrankをパラメータとして、補助駆動力TAssist=f(v、TPedal、θCrank)を求める。そして、求めた補助駆動力になるように、演算処理装置20が電動モータ30の駆動を制御する。すなわち、車速が予め定めた速度以上の場合には、旋回時においても定常の補助駆動力が付与されるので、旋回時の安定性を維持することができる。
【0045】
一方、ステップ110では、演算処理装置20が舵角センサ38の検出結果を取得してステップ112へ移行する。
【0046】
ステップ112では、舵角センサ38によって検出された舵角が予め定めた閾値より大きいか否か演算処理装置20が判定し、該判定が否定された場合には上述のステップ108へ移行し、肯定された場合にはステップ114へ移行する。
【0047】
ステップ114では、ステアリングとロール角に応じた補助駆動力制御を演算処理装置20が行ってステップ116へ移行する。すなわち、演算処理装置20が、車速v、ペダル27への入力トルクTPedal、ロール角θRoll、舵角θSteer、及びクランク角θCrankをパラメータとして、補助駆動力TAssist=f(v、TPedal、θRoll、θSteer、θCrank)を求める。そして、求めた補助駆動力になるように、演算処理装置20が電動モータ30の駆動を制御する。ここで、ステップ114における補助駆動力の制御は、アシスト比率の補正を含む。例えば、上述したように、図3(A)に示すように、車速が予め定めた速度より低い場合には、舵角が大きいほどアシスト比率が小さくなるように制御する。これにより、発進時や低速時に舵角が閾値より大きい場合には、補助駆動力を減少させることで、発進時や低速時における走行安定性を向上することができる。なお、本実施形態では、TAssist=f(v、TPedal、θRoll、θSteer、θCrank)により、補助駆動力を求めるが、θRollまたはθSteerを省略して、ロール角または舵角に応じて補助駆動力を制御するようにしてもよい。
【0048】
ステップ116では、操作・表示部18の電源ボタンが操作されて電源がオフされたか否かを演算処理装置20が判定する。該判定が否定された場合にはステップ100に戻って上述の処理が繰り返され、判定が肯定された場合には一連の処理を終了する。
【0049】
このように本実施形態では、車速が予め定めた速度より低い発進時や低速時等に舵角が閾値より大きい場合に、ステアリングとロール角に応じた補助駆動力制御を行い、車速が予め定めた速度以上の定常走行の場合に、定常走行時の補助駆動力制御を行う。すなわち、発進時や低速時だけ舵角やロール角に応じた補助駆動力制御を行う。これにより、図5(A)の点線矢印で示すように、低速時や発進時に補助駆動力によってハンドル24が実線矢印に対して切り込んでしまうようなことを防止して図5(A)実線矢印で示すように補助駆動力を減少させることで安定して旋回することができる。また、図5(B)の点線で示すように、低速時や発進時の旋回の際に自転車1が膨らんでしまうこともなく、図5(B)実線矢印で示すように、安定して意図した回転半径で旋回することができる。
【0050】
また、車速が予め定めた速度以上の場合には、補助駆動力の制限を行うことなく定常走行時の補助駆動力制御を行うので、定常走行時の旋回によって突然補助駆動力が減少してバランスを崩すようなこともなく、安定した旋回を行うことができる。
【0051】
なお、上記の実施形態は、予め定めた速度より低い車速が検出された場合に、ステアリングとロール角に応じた補助駆動力制御を行い、車速が予め定めた速度以上の定常走行の場合に、定常走行時の補助駆動力制御を行うようにしてもよい。
【0052】
また、上記の実施形態では、運転者によってペダルに加えられた入力トルクで後輪を駆動すると共に、電動モータによる補助駆動力で前輪を駆動するタイプの電動補助自転車を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。例えば、ペダルに加えられた入力トルクと電動モータによる補助駆動力との双方を後輪に伝達する電動補助自転車を適用するようにしてもよい。或いは、ペダルに加えられた入力トルクと電動モータによる補助駆動力との双方を後輪に伝達すると共に、電動モータによる補助駆動力で前輪を駆動する電動補助自転車を適用するようにしてもよい。
【0053】
また、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1 電動補助自転車
20 演算処理装置
30 電動モータ
32 トルクセンサ
36 車速センサ
38 舵角センサ
39 ロールセンサ
40 モータ駆動回路
図1
図2
図3
図4
図5