特許第6559949号(P6559949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559949
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】ブロー成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/48 20060101AFI20190805BHJP
   B60K 15/04 20060101ALI20190805BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   B29C49/48
   B60K15/04 C
   F02M37/00 301P
   F02M37/00 301M
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-246616(P2014-246616)
(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公開番号】特開2016-107488(P2016-107488A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義逸
(72)【発明者】
【氏名】中島 孝司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】平野 将史
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01693240(EP,A2)
【文献】 特開平10−339230(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102006037556(DE,A1)
【文献】 米国特許第05932166(US,A)
【文献】 特開平07−195497(JP,A)
【文献】 特開平07−251440(JP,A)
【文献】 特開平11−198222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/48,B60K 15/00−15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形金型を使用して、フィラーパイプとブリーザパイプを一体的に成形するブロー成形方法において、
上記ブロー成形金型は、パーティングラインで分割して形成されたブロー成形割型を有し、開閉面に上記フィラーパイプとブリーザパイプを形成する2個のキャビティーが形成され、ブロー成形割型の2個の上記キャビティーを仕切るスライドコアを設け、上記スライドコアは、パーティングラインで分割して形成された上記ブロー成形割型のそれぞれに形成され、
上記ブロー成形金型を上記パーティングラインで開き、上記スライドコアをキャビティー面から後退させて、上記2個のキャビティーを一体化させて1個のキャビティーとし、
上記ブロー成形割型の一体化させて1個のキャビティーとした部分にパリソンを位置させ、
上記ブロー成形割型を閉じて、上記パリソンに一次ブローを行い、上記パリソンを上記2個のキャビティーを一体化させて1個のキャビティーとしたキャビティー面に当接させ、上記フィラーパイプとブリーザパイプを一体化したまま一次ブロー成形し、上記フィラーパイプとブリーザパイプを均等な肉厚で形成し、
上記ブロー成形割型のそれぞれに形成された上記スライドコアを上記キャビティーの内部に進入させ、一体化された上記キャビティーを2個のキャビティーに分離させ、上記キャビティー面に当接した上記パリソンを2個の部分に板状の接続部を残して分離し、
上記パリソンの2個の部分に二次ブローを行い、上記フィラーパイプとブリーザパイプを成形しつつ上記接続部により一体的に接続されるとともに、上記フィラーパイプとブリーザパイプは、先端部分は相互に連通して成形して、上記フィラーパイプとブリーザパイプの一方に空気を吹き込み、上記フィラーパイプとブリーザパイプの連通した先端部分から上記フィラーパイプとブリーザパイプの他方に空気を流入させて成形することを特徴とするフィラーパイプとブリーザパイプのブロー成形方法。
【請求項2】
上記フィラーパイプとブリーザパイプは、三次元的に屈曲して形成される請求項1に記載のフィラーパイプとブリーザパイプのブロー成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形金型を使用して、複数の樹脂パイプを一体的に成形するブロー成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図26に示すように、複数の樹脂パイプ、例えば、フィラーパイプ101とブリーザパイプ103を接続部104で一体的に接続したパイプを成形する場合には、特に三次元的に屈曲したパイプを成形するには、ブロー成形金型を使用したブロー成形方法が使用されてきた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この場合には、図27に示すように、ブロー成形金型110は、パーティングラインで分割して形成されたブロー成形割型である上型120と下型130を有し、上型120と下型130には、それぞれ第1キャビティー121、131と第2キャビティー122、132が形成されている。第1キャビティー121、131と第2キャビティー122、132の間には、それぞれキャビティー突部123、133が形成され、2つのキャビティーを区分している。
【0004】
第1キャビティー121、131にはフィラーパイプ101が形成され、第2キャビティー122、132には、ブリーザパイプ103が形成される。2つのキャビティー突部123、133が対向している間の隙間に、接続部104が形成されて、フィラーパイプ101とブリーザパイプ103を接続している。
【0005】
このフィラーパイプ101とブリーザパイプ103の製造方法は、図28図31に示すように、まず、ブロー成形金型110をパーティングラインで開き、下型130のキャビティー131、132にパリソン108を置く。このとき、図28に示すように、溶融した樹脂であるパリソン108は、冷却による収縮変形等により、キャビティー131、132の偏った位置に置かれることとなる。
【0006】
その後、図29に示すように、上型120と下型130を閉じると、キャビティー突部123、133によりパリソン108は、第1キャビティー121、131の方に多く存在して、第2キャビティー122、132の方には、少なくなる。
その後、パリソン108をブローすると、第1キャビティー121、131の方のパリソン108は肉厚が厚く、第2キャビティー122、132の方のパリソン108は肉厚が薄くなる。
【0007】
その後、上型120と下型130を開いて、パリソン108を取り出すと、第1キャビティー121、131の方のパイプは肉厚が厚く、第2キャビティー122、132の方のパイプは肉厚が薄くなることとなり、製品のバラつきが大きくなる。
このため、肉厚を同じにするために、2つのパイプを別々に成形して、組付けると、製造コストや組付けコストが増大してしまうこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−207201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのため、本発明は、ブロー成形金型を使用して、ブロー成形品の肉厚のバラツキを少なくして、製造の容易な樹脂パイプのブロー成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、ブロー成形金型を使用して、フィラーパイプとブリーザパイプを一体的に成形するブロー成形方法において、
ブロー成形金型は、パーティングラインで分割して形成されたブロー成形割型を有し、開閉面にフィラーパイプとブリーザパイプを形成する2個のキャビティーが形成され、ブロー成形割型の2個のキャビティーを仕切るスライドコアを設け、スライドコアは、パーティングラインで分割して形成されたブロー成形割型のそれぞれに形成され、
ブロー成形金型をパーティングラインで開き、スライドコアをキャビティー面から後退させて、2個のキャビティーを一体化させて1個のキャビティーとし、
ブロー成形割型の一体化させて1個のキャビティーとした部分にパリソンを位置させ、
ブロー成形割型を閉じて、パリソンに一次ブローを行い、パリソンを2個のキャビティーを一体化させて1個のキャビティーとしたキャビティー面に当接させ、フィラーパイプとブリーザパイプを一体化したまま一次ブロー成形し、フィラーパイプとブリーザパイプを均等な肉厚で形成し、
ブロー成形割型のそれぞれに形成されたスライドコアをキャビティーの内部に進入させ、一体化されたキャビティーを2個のキャビティーに分離させ、キャビティー面に当接したパリソンを2個の部分に板状の接続部を残して分離し、
パリソンの2個の部分に二次ブローを行い、フィラーパイプとブリーザパイプを成形しつつ接続部により一体的に接続されるとともに、フィラーパイプとブリーザパイプは、先端部分は相互に連通して成形して、フィラーパイプとブリーザパイプの一方に空気を吹き込み、フィラーパイプとブリーザパイプの連通した先端部分からフィラーパイプとブリーザパイプの他方に空気を流入させて成形することを特徴とするフィラーパイプとブリーザパイプのブロー成形方法である。
【0011】
請求項1の本発明では、ブロー成形金型を使用して、フィラーパイプとブリーザパイプを一体的に成形するブロー成形方法において、ブロー成形金型は、パーティングラインで分割して形成されたブロー成形割型を有し、開閉面にフィラーパイプとブリーザパイプを形成する2個のキャビティーが形成されている。このため、ブロー成形割型のキャビティー面にパリソンを挟持して、フィラーパイプとブリーザパイプを成形することができる。
【0012】
開閉面にフィラーパイプとブリーザパイプを形成する2個のキャビティーが形成されているため、2個のキャビティーでフィラーパイプとブリーザパイプを同時に成形することができる。
ブロー成形割型の2個のキャビティーを仕切るスライドコアを設けため、スライドコアの進退で複数のキャビティーを合体させたり、分離させたりすることができる。
【0013】
ブロー成形金型をパーティングラインで開き、スライドコアをキャビティー面から後退させて、2個のキャビティーを一体化させて1個のキャビティーとした。このため、パリソンが2個のキャビティーに偏在することを防止することができる。
スライドコアは、パーティングラインで分割して形成されたブロー成形割型のそれぞれに形成されたため、それぞれのブロー成形割型のスライドコアでパリソンの両側の面を挟持して、接続部を形成することができる。
【0014】
ブロー成形割型の一体化させて1個のキャビティーとした部分にパリソンを位置させ、
ブロー成形割型を閉じて、パリソンに一次ブローを行い、パリソンを2個のキャビティーを一体化させて1個のキャビティーとしたキャビティー面に当接させ、フィラーパイプとブリーザパイプを一体化したまま一次ブロー成形し、フィラーパイプとブリーザパイプを均等な肉厚で形成した。このため、2個のキャビティーのキャビティー面に均等にパリソンを当接させ、フィラーパイプとブリーザパイプを均等な肉厚で形成することができる。
【0015】
ブロー成形割型のそれぞれに形成されたスライドコアをキャビティーの内部に進入させ、一体化されたキャビティーを2個のキャビティーに分離させ、キャビティー面に当接したパリソンを2個の部分に接続部を残して分離した。このため、キャビティー面に均等に当接したパリソンを、2個のキャビティーによりフィラーパイプとブリーザパイプを成形して、肉厚の均等なパイプを成形することができる。
【0016】
パリソンの2個の部分に2次ブローを行い、フィラーパイプとブリーザパイプを成形しつつ接続部により一体的に接続されるとともに、フィラーパイプとブリーザパイプは、先端部分は相互に連通して成形する。このため、フィラーパイプとブリーザパイプを同時に成形して、フィラーパイプとブリーザパイプを接続部で一体的に接続したまま成形するとともに、フィラーパイプとブリーザパイプの先端部分は相互に連通して成形して、フィラーパイプとブリーザパイプの一方に空気を吹き込み、フィラーパイプとブリーザパイプの連通した先端部分からフィラーパイプとブリーザパイプの他方に空気を流入させて成形ことができる。フィラーパイプに沿って一体的にブリーザパイプを形成することができ、フィラーパイプにブリーザパイプを強固に取付けることができるとともに、フィラーパイプとブリーザパイプを車体に取付けることが容易である。
ブロー成形時に、一方のパイプに空気を吹き込めば、フィラーパイプとブリーザパイプの連通した先端部分からフィラーパイプとブリーザパイプの他方に空気を流入させて、他方のパイプも同時に成形することができる。また、ブロー成形後は、一方のパイプを他方のパイプのバイパスや空気抜きとして使用することができる。
【0019】
請求項2の本発明は、複数の樹脂パイプは、三次元的に屈曲して形成されるフィラーパイプとブリーザパイプのブロー成形方法である。
【0020】
請求項2の本発明では、フィラーパイプとブリーザパイプは、三次元的に屈曲して形成されるため、同じように三次元的に屈曲させたフィラーパイプとブリーザパイプを同時に形成することができ、早く容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
ブロー成形割型の一体化させて1個のキャビティーとした部分にパリソンを位置させ、パリソンに一次ブローを行い、キャビティー面に当接させたため、複数のキャビティーのキャビティー面に均等にパリソンを当接させることができる。
スライドコアをキャビティーの内部に進入させキャビティー面に当接したパリソンを複数の部分に接続部を残して分離したため、キャビティー面に均等に当接したパリソンを、複数のキャビティーにより複数のパイプを成形して、肉厚の均等なパイプを成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施の形態で使用するブロー成形金型を開いて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れた状態の断面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態で使用するブロー成形金型を閉じて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れた状態の断面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態で使用するブロー成形金型を閉じて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れ、一次ブローをした状態の断面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態で使用するブロー成形金型の上下のスライドコアをキャビティー内に進入させて、二次ブローをした状態の断面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態で使用するブロー成形金型を開いて、ブロー成形品をブロー成形割型の間から取り出す状態の断面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態で使用するブロー成形金型を開いて、上下のスライドコアをキャビティー内から後退させた状態の断面図である。
図7】本発明の第1の実施の形態で使用するブロー成形金型を開いて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れた状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図8】本発明の第1の実施の形態で使用するブロー成形金型を閉じて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れた状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図9】本発明の第1の実施の形態で使用するブロー成形金型を閉じて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れ、一次ブローをした状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図10】本発明の第1の実施の形態で使用するブロー成形金型の上下のスライドコアをキャビティー内に進入させて、二次ブローをした状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図11】本発明の第1の実施の形態で使用するブロー成形金型を開いて、ブロー成形品をブロー成形割型の間から取り出す状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図12】本発明の第2の実施の形態で使用するブロー成形金型を開いて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れた状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図13】本発明の第2の実施の形態で使用するブロー成形金型を閉じて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れた状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図14】本発明の第2の実施の形態で使用するブロー成形金型を閉じて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れ、一次ブローをした状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図15】本発明の第2の実施の形態で使用するブロー成形金型の下のスライドコアをキャビティー内に進入させて、二次ブローをした状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図16】本発明の第2の実施の形態で使用するブロー成形金型を開いて、ブロー成形品をブロー成形割型の間から取り出す状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図17】本発明の第3の実施の形態で使用するブロー成形金型を開いて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れた状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図18】本発明の第3の実施の形態で使用するブロー成形金型を閉じて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れた状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図19】本発明の第3の実施の形態で使用するブロー成形金型を閉じて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れ、一次ブローをした状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図20】本発明の第3の実施の形態で使用する上下のそれぞれ2個のスライドコアをキャビティー内に進入させて、二次ブローをした状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図21】本発明の第3の実施の形態で使用するブロー成形金型を開いて、ブロー成形品をブロー成形割型の間から取り出す状態のスライドコアとパリソンの状態を示す模式図である。
図22】本発明の第1の実施の形態で使用する使用するブロー成形金型の下型のキャビティー部分の平面図である。
図23】本発明の第1の実施の形態で使用するブロー成形金型の側面図である。
図24】本発明の第1の実施の形態で成形したフィラーパイプの正面図である。
図25】本発明の第1の実施の形態で成形したフィラーパイプの断面図であり、図24のA−A線に沿った断面図である。
図26】従来の方法で成形したフィラーパイプの断面図である。
図27】従来の方法で使用するブロー成形金型のキャビティー部分とパリソンの部分ンの斜視図である。
図28】従来のブロー成形金型を開いて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れた状態のパリソンの状態を示す模式図である。
図29】従来のブロー成形金型を閉じて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れた状態のパリソンの状態を示す模式図である。
図30】従来のブロー成形金型を閉じて、ブロー成形割型の間にパリソンを入れ、ブローをした状態のパリソンの状態を示す模式図である。
図31】従来のブロー成形金型を開いて、ブロー成形品をブロー成形割型の間から取り出す状態のパリソンの状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1〜第3の実施の形態について、図1図25に基づき説明する。
まず、第1の実施の形態について説明し、第2〜第3の実施の形態については後述する。
本発明のブロー成型方法により成形された樹脂パイプとして、自動車の車体の給油口から燃料タンクに燃料を給油するフィラーパイプ1を例にとり説明するが、フィラーパイプ1以外の他の三次元的に屈曲して、複数の樹脂パイプが一体的に形成されたブロー成形品の成形方法についても使用することができる。
【0028】
図24は、本発明の第1の実施の形態のブロー成形方法により成形されたフィラーパイプ1の正面図であり、図25は、フィラーパイプ1の断面図である。
フィラーパイプ1は、自動車の車体の形状に沿って三次元的に屈曲して形成され、中空状のフィラーパイプ本体部2と、フィラーパイプ本体部2に沿って形成される中空状のブリーザパイプ3と、フィラーパイプ本体部2とブリーザパイプ3を一体的に接続する板状の接続部4から構成される。また、図24に示すように、フィラーパイプ本体部2とブリーザパイプ3は、先端部分で相互に連通している。
【0029】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態において使用されるブロー成形金型10は、2個のブロー成形割型である上型20と下型30を有する。
上型20は、フィラーパイプ本体部2を成形する上型第1キャビティー21と、ブリーザパイプ3を成形する上型第2キャビティー22と、上型第1キャビティー21と上型第2キャビティー22の間をスライドする上型スライドコア23と、上型スライドコア23をスライドさせる上型スライドコアシリンダ24を有している。
【0030】
下型30は、フィラーパイプ本体部2を成形する下型第1キャビティー31と、ブリーザパイプ3を成形する下型第2キャビティー32と、下型第1キャビティー31と下型第2キャビティー32の間をスライドする下型スライドコア33と、下型スライドコア33をスライドさせる下型スライドコアシリンダ34を有している。
【0031】
ブロー成形金型10を使用したフィラーパイプ1の成形方法について、まず、第1の実施の形態を図1図11及び図22図23に基づき説明し、その後、第2の実施の形態を、図12図16に基づき説明し、第3の実施の形態を、図17図21に基づき説明する。図1図6は、ブロー成形金型10の断面図であり、図7図21は、キャビティー、スライドコア及びパリソンの状態を示す模式図である。
【0032】
第1の実施の形態では、図1に示すように、ブロー成形金型10の上型20と下型30を開いて、その間にパリソン8を導入する。パリソン8は、下型第1キャビティー31と下型第2キャビティー32に置かれる。
【0033】
このとき、図22に示すように、フィラーパイプ1を成形する下型30は、フィラーパイプ本体を成形する下型第1キャビティー31とブリーザパイプ3を成形する下型第2キャビティー32が形成されている。また、図23に示すように、フィラーパイプ1は、三次元的に屈曲して形成されているため、キャビティーは縦方向と横方向に屈曲して形成されている。
【0034】
このとき、図7に示すように、上型第1キャビティー21と上型第2キャビティー22の間を仕切る上型スライドコア23はキャビティー面から後退して、上型第1キャビティー21と上型第2キャビティー22は一体となり1個のキャビティーとなっている。また、同様に下型第1キャビティー31と下型第2キャビティー32の間を仕切る下型スライドコア33はキャビティー面から後退して、下型第1キャビティー31と下型第2キャビティー32は一体となり1個のキャビティーとなっている。
【0035】
次に、図2に示すように、上型20と下型30を閉じる。このとき、図8に示すように、上型スライドコア23と下型スライドコア33は、キャビティー面から後退したままであるため、パリソン8は、上型第1キャビティー21と上型第2キャビティー22及び下型第1キャビティー31と下型第2キャビティー32が一体となった1個のキャビティーの中に位置している。
【0036】
次に、図3に示すように、キャビティー内のパリソン8に対して一次ブローを行う。一次ブローにより図9に示すように、パリソン8を、上型第1キャビティー21と上型第2キャビティー22及び下型第1キャビティー31と下型第2キャビティー32に均等の肉厚で当接させることができる。
【0037】
次に図4に示すように、上型スライドコアシリンダ24により上型スライドコア23を、下型スライドコアシリンダ34により下型スライドコア33をそれぞれキャビティー内に進入させる。上型スライドコア23と下型スライドコア33の進入とともに、パリソン8に対して二次ブローを行う。このとき、樹脂パイプであるフィラーパイプ本体部2とブリーザパイプ3の先端部分は、相互に連通して形成されるため、二次ブロー成形時に、フィラーパイプ本体部2とブリーザパイプ3の一方に空気を吹き込めば、他方の樹脂パイプも同時に成形することができる。
【0038】
図10に示すように、二次ブローにより、上型スライドコア23と下型スライドコア33はその先端の間にパリソンを挟持して、フィラーパイプ1の接続部4を形成するとともに、フィラーパイプ本体部2とブリーザパイプ3を形成する。一次ブローにより、パリソン8は、キャビティー面に均等な肉厚で当接しているため、二次ブローにおいても、フィラーパイプ本体部2とブリーザパイプ3の肉厚は均等にすることができる。
【0039】
次に、図5図11に示すように、ブロー成形金型10の上型20と下型30を開き、パリソン8から成形されたフィラーパイプ1を取出す。これにより、フィラーパイプ本体部2とブリーザパイプ3が接続部4で接続されたフィラーパイプ1を一度に成形することができる。
その後、図6に示すように、上型スライドコアシリンダ24により上型スライドコア23を、下型スライドコアシリンダ34により下型スライドコア33をそれぞれキャビティー内から後退させる。
【0040】
次に、図12図16に基づき本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態と比べて、上型20に上型スライドコア23がなく、下型30に下型スライドコア33がある点が異り、他の点は同様であるため、異なる点を説明し、同様な点の説明は省略する。
【0041】
第2の実施の形態では、図12に示すように、ブロー成形金型10の上型20と下型を開いて、その間にパリソン8を導入する。パリソン8は、下型第1キャビティー31と下型第2キャビティー32に置かれる。
【0042】
このとき、図12に示すように、上型第1キャビティー21と上型第2キャビティー22の間を仕切る上型スライドコア23は無く、上型第1キャビティー21と上型第2キャビティー22は一体となり1個のキャビティーとなっている。また、下型第1キャビティー31と下型第2キャビティー32の間を仕切る下型スライドコア33はキャビティー面から後退して、下型第1キャビティー31と下型第2キャビティー32は一体となり1個のキャビティーとなっている。
【0043】
次に、図13に示すように、上型20と下型30を閉じる。このとき、下型スライドコア33は、キャビティー面から後退したままであるため、パリソン8は、上型第1キャビティー21と上型第2キャビティー22及び下型第1キャビティー31と下型第2キャビティー32が一体となった1個のキャビティーの中に位置している。
【0044】
次に図14に示すように、キャビティー内のパリソン8に対して一次ブローを行う。一次ブローにより図14に示すように、パリソン8を、上型第1キャビティー21と上型第2キャビティー22及び下型第1キャビティー31と下型第2キャビティー32に均等の肉厚で当接させることができる。
【0045】
次に図15に示すように、下型スライドコアシリンダ34により下型スライドコア33をキャビティー内に進入させ、上型20のキャビティー面の近傍まで進入させる。下型スライドコア33の進入とともに、パリソン8に対して二次ブローを行う。
【0046】
図15に示すように、二次ブローにより、下型スライドコア33はその先端の間にパリソン8を挟持して、フィラーパイプ1の接続部4を形成するとともに、フィラーパイプ本体部2とブリーザパイプ3を形成する。一次ブローにより、パリソン8は、キャビティー面に均等な肉厚で当接しているため、二次ブローにおいても、フィラーパイプ本体部2とブリーザパイプ3の肉厚は均等にすることができる。
【0047】
次に、図16に示すように、ブロー成形金型10の上型20と下型30を開き、パリソン8から成形されたフィラーパイプ1を取出す。これにより、フィラーパイプ本体部2とブリーザパイプ3が接続部4で接続されたフィラーパイプ1を一度に成形することができる。その後、下型スライドコアシリンダ34により下型スライドコア33をキャビティー内から後退させる。
【0048】
次に、図17図21に基づき本発明の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、第1の実施の形態と比べて、上型20の上型スライドコア23と、下型30の下型スライドコア33が2個ずつあり、上型20に上型第1キャビティー21、上型第2キャビティー22及び上型第3キャビティー25があり、下型30に、下型第1キャビティー31、下型第2キャビティー32及び下型第3キャビティー35がある点が異り、他の点は同様であるため、異なる点を説明し、同様な点の説明は省略する。
【0049】
第3の実施の形態では、図17に示すように、ブロー成形金型10の上型20と下型を開いて、その間にパリソン8を導入する。パリソン8は、下型第1キャビティー31、下型第2キャビティー32及び下型第3キャビティー35のいずれでもよいが、本実施の形態では真ん中の下型第2キャビティー32に置かれる。
【0050】
このとき、図17に示すように、上型第1キャビティー21と上型第2キャビティー22の間を仕切る上型スライドコア23及び、上型第2キャビティー22と上型第3キャビティー25の間を仕切る2本の上型スライドコア23はキャビティー面から後退して、上型第1キャビティー21、上型第2キャビティー22及び上型第3キャビティー25は一体となり1個のキャビティーとなっている。
【0051】
また、同様に下型第1キャビティー31と下型第2キャビティー32の間を仕切る下型スライドコア33及び、下型第2キャビティー32と下型第3キャビティー35の間を仕切る2本の下型スライドコア33は、キャビティー面から後退して、下型第1キャビティー31、下型第2キャビティー32及び下型第3キャビティー35は一体となり1個のキャビティーとなっている。
【0052】
次に、図18に示すように、上型20と下型30を閉じる。このとき、2本の上型スライドコア23と下型スライドコア33は、キャビティー面から後退したままであるため、パリソン8は、上型第1キャビティー21、上型第2キャビティー22と上型第3キャビティー25及び下型第1キャビティー31、下型第2キャビティー32と下型第3キャビティー35が一体となった1個のキャビティーの中に位置している。
【0053】
次に図19に示すように、キャビティー内のパリソン8に対して一次ブローを行う。一次ブローにより、パリソン8を、上型第1キャビティー21、上型第2キャビティー22と上型第3キャビティー25及び下型第1キャビティー31、下型第2キャビティー32と下型第3キャビティー35に均等の肉厚で当接させることができる。
【0054】
次に図20に示すように、上型スライドコアシリンダ24により2本の上型スライドコア23を、下型スライドコアシリンダ34により2本の下型スライドコア33をそれぞれキャビティー内に進入させる。上型スライドコア23と下型スライドコア33の進入とともに、パリソン8に対して二次ブローを行う。
【0055】
図20に示すように、二次ブローにより、上型スライドコア23と下型スライドコア33はその先端の間にパリソンを挟持して、フィラーパイプ1の接続部4を形成するとともに、フィラーパイプ本体部2、ブリーザパイプ3及び大気解放パイプ5を形成する。一次ブローにより、パリソン8は、キャビティー面に均等な肉厚で当接しているため、二次ブローにおいても、フィラーパイプ本体部2、ブリーザパイプ3及び大気解放パイプ5の肉厚は均等にすることができる。
【0056】
次に、図21に示すように、ブロー成形金型10の上型20と下型30を開き、パリソン8から成形されたフィラーパイプ1を取出す。これにより、フィラーパイプ本体部2とブリーザパイプ3が接続部4で接続され、ブリーザパイプ3と大気解放パイプ5が接続部4で接続されたフィラーパイプ1を一度に成形することができる。
その後、図21に示すように、上型スライドコアシリンダ24により上型スライドコア23を、下型スライドコアシリンダ34により下型スライドコア33をそれぞれキャビティー内から後退させる。
【符号の説明】
【0057】
1 フィラーパイプ
2 フィラーパイプ本体部
3 ブリーザパイプ
8 パリソン
10 ブロー成形金型
20 上型
21 上型第1キャビティー
22 上型第2キャビティー
23 上型スライドコア
30 下型
31 下型第1キャビティー
32 下型第2キャビティー
33 下型スライドコア
図1
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