(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559950
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】燻煙剤組成物、及びこれを用いた燻煙剤使用後の刺激臭緩和方法
(51)【国際特許分類】
A01N 25/20 20060101AFI20190805BHJP
A01N 53/08 20060101ALI20190805BHJP
A01N 43/824 20060101ALI20190805BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20190805BHJP
A01P 7/02 20060101ALI20190805BHJP
A01M 1/20 20060101ALI20190805BHJP
A01M 29/12 20110101ALI20190805BHJP
A01N 25/32 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
A01N25/20 101
A01N53/08 110
A01N53/08 125
A01N43/824 C
A01P7/04
A01P7/02
A01M1/20 R
A01M29/12
A01N25/32
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-250472(P2014-250472)
(22)【出願日】2014年12月11日
(65)【公開番号】特開2016-113369(P2016-113369A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 裕之
(72)【発明者】
【氏名】大島 務
(72)【発明者】
【氏名】菅本 和志
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】
斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−210713(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/111281(WO,A1)
【文献】
特開2003−190264(JP,A)
【文献】
特開2003−137758(JP,A)
【文献】
特開2014−181188(JP,A)
【文献】
特開2013−249262(JP,A)
【文献】
特開2014−210714(JP,A)
【文献】
特開2014−224103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/00−65/48
A61L 9/01
A01M 1/20
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有効成分としてフェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、メトキサジアゾンから選ばれた1種又は2種以上、(B)有機発泡剤としてアゾジカルボンアミド、及び(C)刺激臭緩和剤として4−メチル−3−デセン−5−オール、9−デセノール、2,6−ノナジエノール、エチルブチレート、エチル−2−メチルブチレート、フェノキシエチルイソブチレート、エチルバレレート、エチルイソバレレート、イソアミルイソバレレート、2−メチル−5−メトキシチアゾール、2−イソプロピル−4−メチルチアゾール、4−メチル−5−ビニルチアゾール
から選ばれた成分を1種又は2種以上含有することを特徴とする燻煙剤組成物。
【請求項2】
(A)有効成分としてフェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、メトキサジアゾンから選ばれた1種又は2種以上、(B)有機発泡剤としてアゾジカルボンアミド、及び(C)刺激臭緩和剤としてエチルブチレート、エチルイソバレレート、ベンジルベンゾエート、イソアミルアセテート、エチルプロピオネート、エチルアセトアセテート、イソアミルブチレート、シスー3−ヘキセノール、4−メチル−3−デセン−5−オール、バニリン、エチルマルトール、エチルメチルフェニルグリシデートから成るベリー系香料、エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルブチレート、イソアミルイソバレレート、9−デセノール、リナロール、フェニルエチルアセテート、シクラメンアルデヒド、トリシクロデセニルプロピオネート、γ−ノナラクトン、γ−ドデカラクトン、アミルシンナミックアルデヒド、ガラクソリッド50、フェノキシエチルイソブチレートから成るピーチ系香料、シトロネラール、ゲラニオール、トランス−2−ヘキセノール、アミルアセテート、アミルブチレート、エチルアセテート、エチルブチレート、エチル−2−メチルブチレート、α−ヨノン、ラズベリーケトン、8−メルカプトメントン、エチルマルトール、バニリン、2−イソプロピル−4−メチルチアゾール、フェニルエチルメチルエーテルから成るライチ系香料、バニリン、エチルバニリン、イソアミルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、ジアセチル、エチルアセテート、ヘキシルアセテート、イソアミルブチレート、エチルブチレート、エチルアルコール、プロピレングリコールから成るバナナ系香料、アミルアセテート、エチルアセテート、バニリン、エチルブチレート、ベンジルフォーメート、ベンジルサリチレート、エチルバレレート、メチルオクチンカーボネート、アミルブチレート、ベンジルアセテート、クローブオイル、エチルベンゾエート、エチルラウレート、プロピルアセテート、マルトール、ジメチルヘプテナール、2,6−ノナジエノール、ベンジルアルコールから成るメロン系香料、エチルアセテート、メチルアントラニレート、シンナミックアルコール、エチルブチレート、エチルペラルゴネート、アミルバレレート、オレンジオイル、シンナミルプロピオネート、ロジニルアセテートから成るブドウ系香料、イソアミルアセテート、エチルアセトアセテート、エチルブチレート、エチル−2−メチルブチレート、リナロール、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、γ−ドデカラクトン、アミルシンナミックアルデヒド、ヘキシルアセテート、シトロネリルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ガラクソリッド50から成るアップル系香料、エチルブチレート、シス−3−ヘキセノール、アリルヘキサノエート、アリルヘプタノエート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、エチルメチルフェニルグリシデート、エチルマルトール、バニリン、アミルシンナミックアルデヒド、メチルシンナメート、スチラリルアセテート、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、フェノキシエチルイソブチレートから成るパイナップル系香料から選ばれたフルーツ系香料を1種又は2種以上含有することを特徴とする燻煙剤組成物。
【請求項3】
前記(A)有効成分が、フェノトリン、メトキサジアゾンから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燻煙剤組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の燻煙剤組成物を燻煙する刺激臭緩和方法であって、燻煙処理時に発生する燻煙処理後の燻煙場所における刺激臭を抑える、刺激臭緩和方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燻煙剤組成物、及びこれを用いた燻煙剤使用後の刺激臭緩和方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭内に生息するゴキブリ、ナンキンムシ、トコジラミ、イエダニ、屋内塵性ダニ類などの害虫の駆除・防除、浴室の除菌・防カビ、さらには自動車内の消臭・除菌等のために燻煙剤が使用されてきた。
燻煙剤は、種々の燃焼剤又は発泡剤等を混合した発熱性基剤に、有効成分(殺虫成分、殺菌剤、消臭剤等)を配合した粉末又は顆粒状製剤である。使用時において燻煙剤を加熱すると、発熱性基剤が燃焼又は分解することで煙(ガスおよび微粒子)が発生し、この煙と熱の作用により有効成分が空気中に揮散する。そのため、短時間で有効成分が空間内全体に行き渡り、殺虫、殺菌、消臭等を行うことができる。
【0003】
燻煙剤の加熱には、燻煙剤の一部分に点火して燻煙剤を燃焼させる直接加熱方式と、酸化カルシウム等の加熱剤の水和反応熱により燻煙剤を300℃程度の温度に加熱する間接加熱方式が用いられている。前者を燻煙剤、後者を燻蒸剤と分けていうこともあるが、ここでは総じて燻煙剤と呼ぶ。
【0004】
燻煙剤は、燻煙処理時に発熱性基剤を燃焼又は分解させ、この時に発生するガス及び煙粒子の働きにより、有効成分を短時間に部屋中に噴出、拡散させ、殺虫、殺ダニ、防虫、防ダニ、殺菌、殺カビ、消臭等を行うことのできる優れた製剤であり、従来より汎用されている。しかしながら、燻煙処理時に多量の煙とガスを発生するため、燻煙処理後の空間に、発熱性基材や有効成分に由来する刺激臭を含む不快な臭気が残存する。
【0005】
従来、燻煙処理後の不快な臭気を低減するために、種々の提案がされている。
例えば、銀を含む薬剤と、有機発泡剤とを含有する燻煙剤組成物が提案されている(特許文献1)。特許文献1の発明によれば、有機系薬剤に換えて、銀を含む薬剤を用いることで、薬剤に由来する臭気の低減を図っている。
また、銀を含む薬剤と有機発泡剤、界面活性剤、香料および水を含有する燻煙剤が提案されている(特許文献2)。特許文献2の発明によれば、銀を含む薬剤を用い、特定量の界面活性剤と香料、特定量の水とを含有することで、燻煙処理時及び燻煙処理後の臭気を低減し、かつ香気の経時的な劣化防止を図っているが、特に、香料の中でも、γ−ウンデカラクトン、γ−デカラクトン、イソイースーパー、アセチルセドレン、アンブロキサン、ダマスコン、ヘキシルシンナミックアルデヒド、クマリンを配合したものが、燻煙処理時の臭気のマスキング効果と燻煙処理後の残香性の点で優れており好ましい旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−12051号公報
【特許文献2】特開2013−249262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燻煙処理時及び処理後の実行感や嗜好性を高めるために、燻煙剤に香料を配合する場合があるが、燻煙剤特有の不快な臭気を満足に抑えられる香料成分は見つけられていなかった。
また、不快な臭気を抑えるために香料の配合量を単に高めても、有効成分の揮散を抑制するなど問題があった。
そこで、本発明は、燻煙処理後の不快な臭気(煙臭、刺激臭)を抑えることができる燻煙剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
我々は各種香調の香料を広く調査した結果、フルーツ系香料の香調を有する香料成分が特異的に、他の香調の香料成分では実現できなかった、燻煙処理後の不快な臭気を抑える優れた効果があることを発見した。
即ち、本発明は、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。
(1)有効成分としてフェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、メトキサジアゾ
ンから選ばれた1種又は2種以上、(B)有機発泡剤としてアゾジカルボンアミド、及び(C)刺激臭緩和剤として4−メチル−3−デセン−5−オール、9−デセノール、2,6−ノナジエノール、エチルブチレート、エチル−2−メチルブチレート、フェノキシエチルイソブチレート、エチルバレレート、エチルイソバレレート、イソアミルイソバレレート、2−メチル−5−メトキシチアゾール、2−イソプロピル−4−メチルチアゾール、4−メチル−5−ビニルチアゾールから選ばれた香料成分を1種又は2種以上含有することを特徴とする燻煙剤組成物。
(2)(A)有効成分としてフェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、メトキサジアゾ
ンから選ばれた1種又は2種以上、(B)有機発泡剤としてアゾジカルボンアミド、及び(C)刺激臭緩和剤としてエチルブチレート、エチルイソバレレート、ベンジルベンゾエート、イソアミルアセテート、エチルプロピオネート、エチルアセトアセテート、イソアミルブチレート、シスー3−ヘキセノール、4−メチル−3−デセン−5−オール、バニリン、エチルマルトール、エチルメチルフェニルグリシデートから成るベリー系香料、エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルブチレート、イソアミルイソバレレート、9−デセノール、リナロール、フェニルエチルアセテート、シクラメンアルデヒド、トリシクロデセニルプロピオネート、γ−ノナラクトン、γ−ドデカラクトン、アミルシンナミックアルデヒド、ガラクソリッド50、フェノキシエチルイソブチレートから成るピーチ系香料、シトロネラール、ゲラニオール、トランス−2−ヘキセノール、アミルアセテート、アミルブチレート、エチルアセテート、エチルブチレート、エチル−2−メチルブチレート、α−ヨノン、ラズベリーケトン、8−メルカプトメントン、エチルマルトール、バニリン、2−イソプロピル−4−メチルチアゾール、フェニルエチルメチルエーテルから成るライチ系香料、バニリン、エチルバニリン、イソアミルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、ジアセチル、エチルアセテート、ヘキシルアセテート、イソアミルブチレート、エチルブチレート、エチルアルコール、プロピレングリコールから成るバナナ系香料、アミルアセテート、エチルアセテート、バニリン、エチルブチレート、ベンジルフォーメート、ベンジルサリチレート、エチルバレレート、メチルオクチンカーボネート、アミルブチレート、ベンジルアセテート、クローブオイル、エチルベンゾエート、エチルラウレート、プロピルアセテート、マルトール、ジメチルヘプテナール、2,6−ノナジエノール、ベンジルアルコールから成るメロン系香料、エチルアセテート、メチルアントラニレート、シンナミックアルコール、エチルブチレート、エチルペラルゴネート、アミルバレレート、オレンジオイル、シンナミルプロピオネート、ロジニルアセテートから成るブドウ系香料、イソアミルアセテート、エチルアセトアセテート、エチルブチレート、エチル−2−メチルブチレート、リナロール、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、γ−ドデカラクトン、アミルシンナミックアルデヒド、ヘキシルアセテート、シトロネリルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ガラクソリッド50から成るアップル系香料、エチルブチレート、シス−3−ヘキセノール、アリルヘキサノエート、アリルヘプタノエート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、エチルメチルフェニルグリシデート、エチルマルトール、バニリン、アミルシンナミックアルデヒド、メチルシンナメート、スチラリルアセテート、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、フェノキシエチルイソブチレートから成るパイナップル系香料から選ばれたフルーツ系香料を1種又は2種以上含有することを特徴とする燻煙剤組成物。
(3)前記(A)有効成分が、フェノトリン、メトキサジアゾ
ンから選ばれた1種又は2種以上である(1)又は(2)に記載の燻煙剤組成物。
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載の燻煙剤組成物を燻煙
する刺激臭緩和方法であって、燻煙処理時に発生する燻煙
処理後の燻煙場所における
刺激臭を抑える、刺激臭緩和方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の燻煙剤組成物によれば、薬剤の効果を十分に発揮でき、かつ刺激臭緩和剤の添加により燻煙剤特有の処理後の不快な臭気(煙臭、刺激臭)を良好に抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の燻煙剤組成物は、(A)有効成分、(B)有機発泡剤、及び(C)刺激臭緩和剤を含むものである。
【0011】
本発明における、(A)有効成分としては、一般的な活性を有するものであれば、いずれも使用することが出来る。具体的には、殺虫剤、殺ダニ剤、防虫剤、防ダニ剤、殺菌剤、殺カビ剤、消臭剤等として作用するものが挙げられる。
【0012】
殺虫剤、殺ダニ剤、防虫剤、防ダニ剤としては、例えば、天然ピレトリン、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、プラレトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、イミプロトリン、エムペントリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン等のピレスロイド系殺虫剤; プロポクスル、カルバリル等のカーバメイト系殺虫剤; フェニトロチオン、D D V P 等の有機リン系殺虫剤; メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系殺虫剤; フィプロニル等のフェニルピラゾール系殺虫剤; イミダクロプリド、ジノテフラン等のネオニコチノイド系殺虫剤; アミドフルメト等のスルホンアミド系殺虫剤; クロルフェナピル等のピロール系化合物; メトプレン、ハイドロプレン等の昆虫幼若ホルモン様化合物; プレコセン等の抗幼若ホルモン様化合物; エクダイソン等の脱皮ホルモン様化合物; フィトンチッド、薄荷油、オレンジ油、桂皮油、丁子油等の精油類; IBTA 、IBTE 、四級アンモニウム塩、サリチル酸ベンジル等の1種又は2種以上が挙げられる。
中でもピレスロイド系殺虫剤、カーバメイト系殺虫剤、オキサジアゾール系殺虫剤およびスルホンアミド系殺虫剤が好ましく、特に、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、メトキサジアゾン、プロポクスル、アミドフルメト、エトフェンプロックスが好ましい。
【0013】
殺菌剤、殺カビ剤としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、パラオキシ安息香酸エステル、PCMX、IPBC、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0014】
消臭剤としては、例えば、メタクリル酸ラウリル、ゲラニルクロリネート、カテキン、ポリフェノール等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0015】
本発明における(B)有機発泡剤としては、熱分解して窒素ガス等を発生して一緒に薬剤を揮散するものであればよい。ここでいう有機発泡剤としては、300℃以下で発泡溶融してガスを発生するものが好ましい。例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルヒドラジド、P,P′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジニトロソペン
タメチレンテトラ
ミン、N,N′−ジニトロソ−N,N′−ジメチルテレフタルアミド、トリヒドラジノトリアジン、アゾビスイソブチロニトリル、4,4′−アゾビスシアノバレリックアシッド、t−ブチルアゾホルムアミド、2,4−ビス−(アゾスルホニル)トルエン、2,2′−アゾビスイソブチロアミド、メチル−2,2′−アゾビスイソブチレート、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等の1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、アゾジカルボンアミドの配合は、薬剤の揮散をより良くするとともに、拡散性をも良くするので好ましい。
【0016】
本発明における刺激臭緩和剤としては、各種のフルーツ系香料に配合される香料成分が挙げられる。本発明でいう刺激臭とは、燻煙後の刺激臭であり、煙臭を含む不快な臭いも包括するので、香りを放出することで燻煙後の不快な臭い(煙臭、刺激臭)を抑えるものである。具体的にフルーツ系の香調としては、ベリー系、ピーチ系、ライチ系、バナナ系、メロン系、ブドウ系、アップル系、パイナップル系の香りが含まれる。本発明では、ベリー、ピーチ、ライチ、バナナ、メロン、ブドウ、アップル、パイナップル系の香りを放出するものであれば特に制限はなく、用途に応じて天然香料及び合成香料等からなる群から適宜選択される1種または2種以上の組み合わせが用いられる。また、ピーチフローラルやアップルミントなどフルーティフローラル系、フルーティミント系、フルーティグリーン系なども本発明のフルーツ系香料に含まれる。
【0017】
上記フルーツ系香料に配合される天然香料としては、ジンジャーオイル、スターアニスオイル、オレンジオイル、グレープフルーツオイル、ユーカリオイル、ラベンダーオイル、クローブオイル、サンダルウッドオイル、イランイランオイル等が挙げられる。
【0018】
上記フルーツ系香料に配合される合成香料としては、リモネン、カンフェン、α−ピネン、β−ピネン、γ−ターピネン、ターピノレン、ミルセン、オシメン等のテルペン炭化水素類;ボルネオール、2,6−ジメチルヘプタン−2−オール、シス−3−ヘキセノール、α−フェンキルアルコール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、シンナミックアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、2−メチルブタノール、ヘキサノール、トランス−2−ヘキセノール、トランス−3−ヘキセノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、1−ウンデカノール、シス−6−ノネノール、2,6−ノナジエノール、1−ノネン−3−オール、9−デセノール、1−ウンデセノール、4−メチル−3−デセン−5−オール、ネロール、ジメチルフェニルエチルカルビノール等のアルコール類;C6〜C12の脂肪族アルデヒド、シトラール、シトロネラール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、イソヘキセニルシクロヘキセンカルボキシアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、ペリラアルデヒド、クミンアルデヒド、シクラメンアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ヘキサナール、トランス-2−ヘキセナール、ジメチルヘプテナール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、リラール、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、フルフラール等のアルデヒド類;ジアセチル、セドリルメチルケトン、メチル−β−ナフチルケトン、メチルへプテノン、メチル−n−アミルケトン、カルボン、メントン、アセトフェノン、ヌートカトン、β−ダマセノン、アリルヨノン、シスジャスモン、ジヒドロジャスモン、パラメチルアセトフェノン、イソメントン、プレゴン等のケトン類;アリルアミルグリコレート、アリルヘプタノエート、アリルヘキサノエート、イソアミルアセテート、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、セドリルアセテート、シトロネリルアセテート、エチルブチレート、エチルメチルフェニルグリシデート、シス−3−ヘキセニルアセテート、n−ヘキシルアセテート、リナリルアセテート、メチルジヒドロジャスモネート、メチルアントラニレート、メチル−N−メチルアントラニレート、メチルフェニルカルビニルアセテート、ジヒドロテルピニルアセテート、メチルベンゾエート、メチルシンナメート、メチルサリチレート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、オクチルアセテート、アミルアセテート、ヘキシルアセテート、トランス−2−ヘキセニルアセテート、2−メチルブチルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、プレニルアセテート、ネリルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、エチルアセトアセテート、ロジニルアセテート、エチルプロピオネート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、シトロネリルプロピオネート、シンナミルプロピオネート、ネリルプロピオネート、ゲラニルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、スチラリルプロピオネート、ヘキシルブチレート、アミルブチレート、イソアミルブチレート、メチル−2−メチルブチレート、エチル 2-メチルブチレート、シス−3−ヘキセニルブチレート、ジメチルベンジルカルビニルブチレート、シトロネリルブチレート、ネリルブチレート、ゲラニルブチレート、2−メチルブチルブチレート、エチルイソブチレート、フェノキシエチルイソブチレート、エチルバレレート、アミルバレレート、エチルイソバレレート、イソブチルイソバレレート、イソアミルイソバレレート、2−メチルブチルイソバレレート、メチルオクチンカーボネート、エチルラクテート、エチルラウレート、イソアミルフォーメート、ヘキシルフォーメート、ベンジルフォーメートメチルヘキサノエート、エチルヘキサノエート、ヘキシルサリチレート、ベンジルサリチレート、フェニルエチルサリチレート、エチルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、エチルペラルゴネート等のエステル類;ベンゾイックアシッド、ブチリックアシッド、イソバレリックアシッド、ゲラニックアシッド等の酸類;シネオール、アネトール、マルトール、エチルマルトール、エストラゴール、β−ナフチルエチルエーテル、β−ナフチルメチルエーテル、等のエーテル類;γ−ノナラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ドデカラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、シスジャスミンラクトン等のラクトン類;アセトアルデヒドジエチルアセタール、ヘキサナールジエチルアセタール、ヘキサナールエチルヘキシルアセタール、トランス−2−ヘキセナールジエチルアセタール、ヒドラトロパルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセリンアセタール、アセトアルデヒド−2−フェニル−2,4−ペンタンジオールアセタール、アセトアルデヒドエチルリナリルアセタール等のアセタール類;トナリッド、セレストリッド等のポリサイクリックムスク類;エチレンブラシレート、シクロペンタデカノリッド等のマクロサイクリックムスク類;アネトール、チモール等のフェノール類及び2−メチル−5−メトキシチアゾール、2−イソプロピル−4−メチルチアゾール、4−メチル−5−ビニルチアゾール等のチアゾール類等が挙げられる。
【0019】
上述の香料成分のうち、刺激臭抑制効果の点で、特に、分子内に二重結合を1個又は複数個持つ炭素数6〜12の鎖状アルコールや、脂肪酸エステル類、及びチアゾール類から選ばれるものを用いることが好ましい。
【0020】
分子内に二重結合を1個又は複数個持つ炭素数6〜12の鎖状アルコールとしては、シス−3−ヘキセノール、トランス−2−ヘキセノール、トランス−3−ヘキセノール、シス−4−ヘキセノール、シス−6−ノネノール、2,6−ノナジエノール、1−ノネン−3−オール、9−デセノール、1−ウンデセノール、4−メチル−3−デセン−5−オールが好ましく、このうち2,6−ノナジエノール、9−デセノール、4−メチル−3−デセン−5−オールが特に好ましい。
【0021】
脂肪酸エステル類としては、ブチレート類、イソブチレート類、バレレート類、イソバレレート類が好ましく、このうちエチルブチレート、エチル 2-メチルブチレート、フェノキシエチルイソブチレート、エチルバレレート、エチルイソバレレート、イソアミルイソバレレートが特に好ましい。
【0022】
チアゾール類としては、2−メチル−5−メトキシチアゾール、2−イソプロピル−4−メチルチアゾール、4−メチル−5−ビニルチアゾールが好ましく、このうち2−イソプロピル−4−メチルチアゾールが特に好ましい。
【0023】
本発明の燻煙剤組成物には、上記以外の成分として、発熱助剤、安定剤、賦形剤、色素等の添加剤を配合することができる。
【0024】
発熱助剤としては、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、尿素、炭酸水素ナトリウム、メラミン、グアニジン等が挙げられる。
【0025】
安定化剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドキシアニソール、没食子酸プロピル、エポキシ化合物(エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等)等が挙げられる。
【0026】
賦形剤としては、クレー(含水ケイ酸アルミニウム)、タルク、珪藻土、カオリン、ベントナイト、ホワイトカーボン等が挙げられる。
【0027】
本発明の燻煙剤組成物の形態としては、粉状、顆粒状、固形状のような一般的な形状であれば、特に限定されずいずれであっても用いることは可能である。特に、粉状であれば、袋などに包装することで各種の形状となり、使用し易く、工程も簡便であり特に好ましい。
【0028】
本発明の燻煙剤組成物の使用方法としては、屋内・屋外ともに使用することが可能である。屋内で使用する場合には、1m
3あたり燻煙剤組成物として、0.05〜3g程度、より好ましくは0.2〜1g使用すればよい。屋外で使用する場合には、屋内での使用量を考慮しながら、適宜増減すればよい。
【0029】
次に実施例に基づいて、具体的に本発明の燻煙剤組成物を更に詳しく説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0030】
フルーツ系香料として表1〜表8の香料及びフルーツ系以外の香調の異なる香料として表9〜表12記載のフローラル系、ローズ系、グリーン系、ミント系香料を用いて、後述の方法に従い燻煙剤組成物を調製し、燻煙後の刺激臭の抑制効果を試験した。
【0043】
<燻煙剤組成物の調製>
フェノトリン8.3質量%、メトキサジアゾン6.7質量%にアゾジカルボンアミド84.9質量%を混合し、さらに表1〜12に記載の香料0.1質量%を添加してなる本発明の燻煙剤組成物12gをポリスチレン製フィルム袋に封入し、燻煙薬剤を得た。
【0044】
<刺激臭抑制効果試験1>
上記のように調製した燻煙薬剤をプラスティック容器に入れ、閉め切った6畳の部屋の中央に置き、蚊取線香を点火具として用い燻煙させて試験を行なった。
部屋を閉め切った状態のまま放置し、2時間後、ドアの隙間から室内の臭いを嗅いで、次の基準に従って評価した。
×:刺激臭が強い(無香料と同程度)
△:刺激臭がやや強い(無香料よりやや刺激臭を抑えている)
○:刺激臭が弱い(無香料よりも明らかに刺激臭を抑えている)
【0047】
フルーツ系香料以外の香料を用いた比較例1〜4の燻煙剤組成物は、無香料(比較例5)と同程度に刺激臭が感じられた。これに対して、実施例1〜8のフルーツ系香料を用いた燻煙剤組成物は、無香料(比較例5)と比較して、明らかに刺激臭を抑えていた。
【0048】
次に上記実施例における<燻煙剤組成物の調製>に従って、香料のみを以下の表14に示すフルーツ系香料の単独香料成分を添加して、燻煙剤組成物を得た。
【0049】
<刺激臭抑制効果試験2>
上記のように調製した燻煙剤組成物を供試品とし、試験を行なった。
供試品をプラスチック容器に入れ、これを閉め切った6畳(面積約10m
2で体積約25m
3)の部屋の中央に置き、蚊取り線香の先端を使用して点火し、燻煙した。閉め切った状態のまま放置し、2時間後、ドアの隙間から室内の臭いを嗅いで、4段階の強度表示法により採点し、3名の採点結果の平均点を算出し、平均2点以上で効果があると判定した。
【0050】
(4段階強度表示法)
0点:刺激臭抑制効果が認められない
1点:刺激臭は残るが抑制効果が認められる
3点:抑制効果が認められる
5点:著しい抑制効果が認められ、刺激臭がしない
【0052】
表14で示した結果のように、フルーツ系香料成分のうち、分子内に二重結合を1個又は複数個持つ炭素数6〜12の鎖状アルコールである2,6−ノナジエノール、9−デセノール、4−メチル−3−デセン−5−オールや、脂肪族酸のエステルであるエチルブチレート、エチル 2-メチルブチレート、フェノキシエチルイソブチレート、エチルバレレート、エチルイソバレレート、イソアミルイソバレレート、そしてチアゾール類である2−イソプロピル−4−メチルチアゾールに、刺激臭の抑制効果が認められた。
しかしながら、比較で用いた11〜14のフルーツ系香料以外の香料成分では、刺激臭の抑制効果は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の燻煙剤組成物は使用後も不快な臭いが抑制されていることから、一般住居内で使用できる殺虫剤、殺ダニ剤、防虫剤、防ダニ剤、殺菌剤、殺カビ剤、消臭剤といった幅広い製剤として実用性の高いものである。