特許第6559959号(P6559959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559959
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】弾性的な骨接合術のための骨プレート
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/58 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   A61B17/58
【請求項の数】23
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-555748(P2014-555748)
(86)(22)【出願日】2013年2月1日
(65)【公表番号】特表2015-507953(P2015-507953A)
(43)【公表日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】US2013024336
(87)【国際公開番号】WO2013116642
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2016年1月29日
【審判番号】不服2017-18115(P2017-18115/J1)
【審判請求日】2017年12月6日
(31)【優先権主張番号】61/594,560
(32)【優先日】2012年2月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/755,493
(32)【優先日】2013年1月31日
(33)【優先権主張国】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502427840
【氏名又は名称】ジンマー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ボトラング
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エム.マデイ
(72)【発明者】
【氏名】カイル ウィルツ
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー ツァイ
【合議体】
【審判長】 林 茂樹
【審判官】 高木 彰
【審判官】 沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第6540746(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0319942(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/037984(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/111350(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面と、骨に面する表面と、第1の面と、第2の面と、第1の面と第2の面との間で延びる長手方向軸線とを有する骨折部位固定プレートを含む器具であって、
前記骨折部位固定プレートは該骨折部位固定プレートに対して弾性的に遊動状態で支持されている1つまたは2つ以上の摺動要素を含んでおり、前記骨折部位固定プレート内の各摺動要素の弾性遊動支持は前記摺動要素と前記骨折部位固定プレートの間の弾性材料によって達成され、各摺動要素は、骨ねじのための1つ又は2つ以上のねじ山付き受容穴を含んでおり、前記骨ねじは、該受容穴内に固定的な角度でロック可能な対応するねじ山付きヘッドを有しており、
前記1つまたは2つ以上の摺動要素は、前記骨折部位固定プレートの前記長手方向軸線に対して平行に、制御された状態で変位させられるが、前記骨折部位固定プレートの長手方向軸線に対して垂直な変位に抗して実質的に拘束され、
前記1つまたは2つ以上の摺動要素は、前記骨折部位固定プレート又は摺動要素を骨表面に押し付けることなしに前記骨ねじに堅固に固定されるように形成されている、器具。
【請求項2】
前記摺動要素の弾性遊動支持は、前記骨折部位固定プレートの長手方向に加えられた力に応答して、該骨折部位固定プレートに対して前記摺動要素の所定量の双方向並進運動を生じさせるように構成される、請求項に記載の器具。
【請求項3】
前記弾性材料は、定義された静止位置で各摺動要素を保持前記弾性材料の圧縮性が、前記骨折部位固定プレートの長手方向に加えられた力に応答する、該骨折部位固定プレートに対する各摺動要素の単方向並進運動量を決定する、請求項2に記載の器具。
【請求項4】
前記弾性材料はポリマーである、請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記摺動要素と前記骨折部位固定プレートとの間の摩擦を低減するために、前記摺動要素が前記弾性材料内に部分的又は完全に埋め込まれている、請求項1に記載の器具。
【請求項6】
長手方向アクセスに対して垂直方向の運動を制限することによって、前記骨折部位固定プレートの回転安定性を向上させるために、前記1つ又は2つ以上の摺動要素が前記骨折部位固定プレート内部に互い違いパターンを成して配列されている、請求項1に記載の器具。
【請求項7】
前記骨折部位固定プレートがさらにねじ山無しのねじ穴を含む、請求項1に記載の器具。
【請求項8】
記摺動要素が、前記骨折部位固定プレートの第1区分内に配置されており、且つ前記骨折部位固定プレートの第2区分は、摺動要素なしのねじ山付き穴又はねじ山無しの穴を含む、請求項に記載の装置。
【請求項9】
複数の骨ねじを更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
ねじ山付きヘッドとねじ山無しのペグ軸部とを有する1つ又は2つ以上の非共線状骨ペグを更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記摺動要素内の受容穴が円錐形である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記摺動要素内の受容穴が円筒形である、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記弾性材料は、前記骨折部位固定プレートに対して摺動要素を弾性的に拘束するために、前記骨折部位固定プレート又は摺動要素表面の少なくとも一部にポジティブに付着することができる、請求項に記載の器具。
【請求項14】
前記弾性材料が、ボイドをほとんど有さないエラストマールーメンを含んでいる、請求項に記載の器具。
【請求項15】
前記弾性材料が、エラストマールーメンの圧縮性を高めるためにボイドを含有するエラストマールーメンを含んでいる、請求項に記載の器具。
【請求項16】
前記弾性材料の弾性率が0.1〜50MPaである、請求項に記載の器具。
【請求項17】
前記弾性材料の弾性率及び構成が該弾性材料内部で変化し得る、請求項に記載の器具。
【請求項18】
前記摺動要素が単独エレメントとして取り外すことができるか、又は組み立てることによって骨折部位固定プレートを形成する前に前記弾性材料に組み付けられる、請求項に記載の器具。
【請求項19】
前記受容穴が非ロック式骨ねじで骨表面上に押し付けられるときに前記骨折部位固定プレートを骨表面の上方に持ち上げるために、1つ又は2つ以上の摺動要素が前記骨折部位固定プレートの骨に面する表面を超えて延びており、該非ロック式骨ねじが、該摺動要素の弾性遊動支持と相俟って、前記骨折部位固定プレートと前記骨表面との制御された運動を可能にする、請求項に記載の器具。
【請求項20】
前記弾性材料がシリコーンである、請求項に記載の器具。
【請求項21】
記摺動要素は前記骨折部位固定プレートの側方に設けられた空洞内に少なくとも部分的に包囲されている、請求項に記載の器具。
【請求項22】
前記少なくとも一つまたはそれ以上の摺動要素は、少なくとも部分的に前記骨折部位固定プレート内に形成された凹部内に包囲される、請求項1に記載の器具。
【請求項23】
前記弾性材料は前記摺動要素を収容するエラストマールーメンである、請求項1に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年2月3日付けで出願された米国仮出願第61/594,560号、及び2013年1月31日付けで出願された米国特許出願第13/755,493号の優先権を主張するものであり、上記明細書の開示内容は参照することにより本明細書中に組み入れられる。
【0002】
本明細書中の実施態様は大まかに述べるならば、骨折した骨を固定するための器具に関する。具体的には、本開示は骨折部位を弾性的に固定する骨プレートに関する。このような弾性固定は、骨折部位における小さな運動を可能にすることによって、骨折仮骨(callus)の形成による自然骨折治癒を促進する。
【背景技術】
【0003】
骨折部位を安定化するための骨接合プレートは骨ねじを用いて適用されるのが典型的である。従来から、骨ねじが骨表面上にプレートを押し付けることにより、安定した固定が可能になる。最近では、ロック式プレートが導入されており、ロック式プレートは、典型的には、対応するねじ山付きねじヘッドを有するロック式ねじを、ポジティブに角度安定的に固定するためのねじ山付き受容穴を有している。これらロック式プレート構造は、特に弱い骨粗鬆症の骨において、従来の非ロック式構造よりも耐久性のある固定を可能にする。
【0004】
しかしながら、ロックされたプレートの構造における内在的な剛性は、2つの臨床上の難題を引き起こす。第一に、これは骨内の荷重分布を変化させることがある。このことは、プレートに隣接する荷重遮蔽領域内で骨吸収を招くか、又はインプラントで誘発された応力集中に起因する骨折を引き起こすおそれがある。第二に、骨接合プレート構造の高い剛性は、骨片間の相対変位を抑制するが、しかしこのような骨片間の相互運動は、仮骨形成による自然の骨折治癒カスケードを促進するために重要である。従って、過度に高剛性のロック式プレート構造は骨折治癒を遅延又は阻止するおそれがあり、このことはまた、インプラントの破損又は骨内のねじ固定の損失を招くおそれもある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
添付の図面及び添付の特許請求の範囲と併せて、以下の詳細な説明により実施態様を容易に理解することができる。実施態様は一例として示すものであって、添付の図面に限定するものでは決してない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、種々の実施態様に基づいて骨プレートを示す上面図である。
図2図2は、種々の実施態様に基づいて、円筒形ねじ山を備えた摺動要素を示す横方向断面図である。
図3図3は、種々の実施態様に基づいて、骨プレートを、円筒形骨部分に骨ねじを用いて固定された状態で示す横方向断面図である。
図4図4は、種々の実施態様に基づいて、円錐形ねじ山を備えた摺動要素を示す横方向断面図である。
図5図5は、種々の実施態様に基づいて、骨プレート内部の摺動要素及びばね要素を、摺動要素を見えるようにするために底部のない状態で示す底面図である。
図6図6は、種々の実施態様に基づいて、骨プレート内部の摺動要素及び一体型ばね要素を、摺動要素を見えるようにするために底部のない状態で示す底面図である。
図7図7は、種々の実施態様に基づいて、骨プレート内部の摺動要素及び一体型ばね要素を、摺動要素を見えるようにするために底部のない状態で示す底面図である。
図8図8は、種々の実施態様に基づいて、摺動要素を、円筒形骨区分に固定された骨ねじと連携させた状態で示す断面図である。
図9図9は、種々の実施態様に基づいて、骨プレートを、2つの対応する円筒形骨区分に固定された骨ねじと連携させた状態で示す断面図である。
図10図10は、種々の実施態様に基づいて、骨プレートを、円筒形骨区分に非共線状のロック式ペグで固定された状態で示す断面図である。
図11図11は、種々の実施態様に基づいて、骨プレートと、円筒形ねじ山を備えた摺動要素と、前記摺動要素を骨プレート内部に遊動状態で支持するエラストマールーメンとを示す横方向断面図である。
図12図12は、種々の実施態様に基づいて、骨プレートの側方のスロット内部に位置する摺動要素とエラストマールーメンとを示す底面図である。
図13図13は、種々の実施態様に基づいて、骨プレートを示す上面図である。
図14図14は、種々の実施態様に基づいて、円筒形ねじ山を備えた摺動要素を示す横方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の詳細な説明では、その一部を形成する添付の図面を参照する。図面には、実施態様が一例として示されている。他の実施態様を利用し、本発明の範囲を逸脱することなしに構造的又は論理的変更を加え得ることは言うまでもない。従って以下の詳細な説明は、制限的な意味でとらえるべきではなく、実施態様は添付の特許請求の範囲及びこれらと同等のものによって定義される。
【0008】
実施態様の理解に役立つように、種々の作業を複数の別々の作業として順に説明することがあるが、説明の順序はこれらの作業が順序に依存して行われることを暗示すると解釈してはならない。
【0009】
上方/下方、後/前、及び上部/下部のような視点に基づく記述を用いて説明することがある。このような記述は検討を容易にするために用いるに過ぎず、開示された実施態様の適用を制限するものではない。
【0010】
「連結される(coupled)」及び「結合される(connected)」という用語をこれらの派生語とともに使用することがある。言うまでもなく、これらの用語は互いに同義語として意図されるものではない。具体的な実施態様では、「結合される(connected)」は2つ又は3つ以上のエレメントが直接に物理的又は電気的に互いに接触していることを示すために使用し得る。「連結される(coupled)」は2つ又は3つ以上のエレメントが直接に物理的又は電気的に接触していることを意味することがある。しかし「連結される(coupled)」は、2つ又は3つ以上のエレメントが直接に互いに接触しているのではなく、互いに協働又は相互作用することを意味することもある。
【0011】
説明を目的として、「A/B」の形、又は「A及び/又はB」の形の言い回しは(A)、(B)、又は(A及びB)を意味する。説明を目的として、「A,B,及びCのうちの少なくとも1つ」の形の言い回しは、(A),(B),(C),(A及びB),(A及びC),(B及びC),又は(A,B及びC)を意味する。説明を目的として、「(A)B」の形の言い回しは、(B)又は(AB)を意味し、すなわちAは任意のエレメントである。
【0012】
説明では、「実施態様(embodiment又はembodiments)」という用語を使用することがあり、これは、同一の又は異なる実施態様のうちの1つ又は2つ以上を意味する。さらに、実施態様に関連して使用される「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」などは同義であり、一般に「オープン」な用語として意図される(例えば「含む(including)」という用語は、「制限されることなく含む」として解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は「少なくとも有する」として解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は、「制限されることなく含む」ものとして解釈されるべきである)。
【0013】
本明細書中の任意の複数形及び/又は単数形の用語の使用に関して、当業者であれば、文脈及び/又は用途に応じて単数形から複数形へ、且つ/又は単数形から複数形へ変えることができる。種々の単数形/複数形置換は、明確にするために明示することがある。
【0014】
種々の実施態様において、骨折部位を弾性的に固定するための方法、装置、及びシステムが提供される。
【0015】
本明細書中の実施態様は、骨折部位の安定な固定を可能にする骨接合プレートであって、仮骨形成による骨折治癒を刺激するように、骨プレートの長手方向軸線に沿った弾性的動的運動を許容する一方で、骨折部位の他の全ての方向における安定性を維持する、骨接合プレートを提供する。
【0016】
図1は、細長いプレート穴2を備えた長円形骨プレート1を示す上面図であり、プレート穴は互い違いの(staggered)パターンを成して、概ね長手方向プレート軸線に沿って配列されている。骨プレート1の表面の下方に摺動要素3が位置していて、摺動要素3のねじ山付き貫通穴4が、骨プレート1の細長いプレート穴2と一致している。摺動要素3は、対応するねじ山付きの骨ファスナと係合するためのねじ山付き貫通穴4を有している。貫通穴4は骨プレート1の上面に対してほぼ垂直に配向されていてよい。貫通穴4は、また、プレートの長手方向中央線に向かって角度付けされて、互い違い状/オフセット状のねじ穴内へ挿入された骨ファスナが、プレートの連結された骨部分の中央部に向かって方向付け/角度付けされるようになっていてもよい。図3及び10を参照されたい。
【0017】
図2は、骨プレート1、及び摺動要素3のねじ山付き貫通穴4を示す横方向断面図である。貫通穴4は骨プレート1の凸状の上面に対してほぼ垂直に配向されている。摺動要素3は概ね棒状であり、方形断面を有している。他の実施態様では他の断面形状、例えば正方形、楕円形、湾曲形、又はプレートの断面形状に近似する湾曲方形を用いてよい。摺動要素は、任意の医学的に許容し得る材料、例えばチタン又はステンレス鋼のような金属を具備してよい。摺動要素3は対応する形状を有する凹部5内に配置されている。凹部はプレート底面6に延び、そしてプレートの曲げ強度を維持するためにプレート上面7を貫通することなしに、プレート上面7に向かって延びている。図2に示されているように、摺動要素のための凹部はプレート底面まで延び、そして摺動要素は続いてプレート内で底部カバー9によって保持されている。凹部5を低摩擦部材8でライニングすることによって、摺動要素3と凹部5との間の摩擦及び摩耗を低減する。低摩擦部材は任意の医学的に許容可能な材料、例えばポリマー、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)であってよい。低摩擦係数の他の模範的生体適合性ポリマー、例えばUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)を使用してもよい。或いは、摺動要素と凹部との間の空間を、超弾性界面を提供するシリコーン誘導体で充填してもよい。超弾性界面は摩擦を低減し、且つ/又は凹部内の摺動要素の弾性的な遊動状態での支持(suspend)を可能にするのに役立つことができる。
【0018】
摺動要素3は底部カバー9によってプレート1内部に保持されている。底部カバー9は、摺動要素の挿入後、レーザー溶接、プレス嵌め、又は同等の信頼性の高い結合手段によってプレート1に堅固に結合される。従って摺動要素3は、骨プレート1の長手方向軸線に対して垂直のスライダ運動を防止するように、骨プレート1内部に拘束される。摺動要素3は、ロック式骨ねじ11で骨部分10に連結されてく、ロック式骨ねじ11は、ねじ山付きねじ軸部12とねじ山付きねじヘッド13とを有するねじであってよい(図3参照)。好ましい1つのロック式ねじは、ねじヘッド13及びねじ軸部12において同じねじ山外径及びねじ山ピッチを有する。ねじヘッド13及びねじ軸部12は同じピッチを有し、すなわち巻き付くらせんの勾配が同じであるが、ねじ軸部12は単一のらせんを有し且つねじヘッド13はコア直径の周りに同時に巻き付く3つのらせんを有する。このような構成は、ねじ軸部12と比較してねじヘッド13のより大きいコア直径を可能にし、ねじ山をより緻密に見せる。このような構成はまた、ねじ軸部がねじ挿入時に一貫して摺動要素3のねじ山付き穴14内に係合されるという利点を有する。従ってこの構成は、骨表面に摺動要素又は骨プレートを押し付ける必要なしに、骨表面の上方から所与の高さで摺動要素3を骨部分10に堅固に結合するための手段を提供する。この構成はさらに、ねじヘッド13が、摺動要素3内に係合するのではなく摺動要素3に押し付けられるのを防止する。ねじヘッド13のエンドキャップ15によって、摺動要素3内に骨ねじをポジティブにロックすることが可能になり、エンドキャップ15は摺動要素3の上面に押し付けられる。
【0019】
図4は貫通穴14の別の実施態様であって、摺動要素に設けられたねじ山付き穴14が円錐形であるものを示している。これは、摺動要素3内に対応するねじ山付きの円錐形ねじヘッドをポジティブにロックすることを可能にする。
【0020】
図5は、摺動要素3が見えるようにするために底部カバー9のない状態で、骨プレート1を示す底面図である。摺動要素3の長手方向寸法は凹部5の対応する長手方向寸法よりも短い。長手方向寸法のこのような差は、プレート1に対する摺動要素3の許容し得る軸方向運動を決定する。この制御された軸方向運動範囲は0.2〜2mm、好ましくは0.3〜1mmである。ばね要素22、例えばばね22は、1〜100N、好ましくは5〜50Nの有効ばねプレロードを加えることによって、摺動要素3を定義された静止位置に付勢する。摺動要素3がばね要素22のプレロードに抗して力を加えると、プレートに対する摺動要素の相対運動(骨プレートの長手方向軸に沿った直線運動)が開始される。力が取り除かれると、摺動要素3はばね力によってその静止位置に戻る。ばね要素にプレロードを加える一例は下記の通りである。ばね要素にプレロードを加えるために、組み立て中、摺動要素及び/又はばね要素を骨プレート内に挿入する前、又は挿入するときに、ばね要素を圧縮する。
【0021】
図6はばね要素の別の実施態様であって、一連の細長いばねフィンガ23及びチャネル24によって、ばね要素が(別個のばねとは異なり)摺動要素3内に組み込まれるか、又はその一部であるものを示している。チャネル24は摺動要素3の一部を弾性ばね要素に転換する。
【0022】
図7はばね要素のさらに別の実施態様であって、チャネル24が摺動要素3の互いに対向する側において導入されるものを示している。チャネル24は、摺動要素3の互いに対向する側を弾性ばね要素に転換し、これらの弾性ばね要素は、凹部5内のねじ山付きねじ穴14を弾性的に遊動状態で支持し、ねじ山付きねじ穴14が、荷重を加えられていないその中央位置から双方向に並進運動するのを可能にする。
【0023】
図8は、摺動要素3の実施態様を、円筒形の骨区分10に固定された骨ねじ11と連携させた状態で示す長手方向断面図である。ばね22が、摺動要素3内の円筒形穴17内に埋め込まれている。凹部5が低摩擦層8でライニングされている。プレート1が骨表面18上に押し付けられない形態で、ロック式ねじ11が摺動要素3を固定している。非ロック式ねじを使用する別の実施態様では、プレートは骨表面上に押し付けられてよい。
【0024】
図9は、円筒形骨10の対応する2つの区分に骨ねじ11によって弾性的に固定された骨プレート1を示す断面図である。摺動要素3内のばね22が骨折部位19に向かって配置されている。従って、骨区分10に作用する外部圧縮力が加えられると、プレート1に対する摺動要素3の並進/運動が引き起こされる。このことは、プレート1の長手方向軸線に対して平行な骨セグメント10の並進運動を引き起こす。この並進運動は、骨折部位19の表面間の対称運動を、制御された運動限度内で発生させることになる。骨折部位の運動量は、プレート1の凹部5内部のスライダ並進運動の最大範囲によって制御される。従って、ばね要素の剛性及びプレロードに基づいて、100〜1000N、好ましくは200〜800Nである所定の閾値を超過する外部圧縮力が、プレート内部の摺動要素3の更なる運動をもたらすことはない。ばね要素のプレロード及び剛性が十分に小さいように選択されているならば、過剰なプレートの曲げを防止するのに十分に低い外部圧縮力が加えられたときに最大許容変位に達することになり、さもなければ摺動要素3の凹部内部での過剰な摩擦、摩耗、又は引っかかりを導くおそれがある。
【0025】
弾性的に遊動状態で支持された摺動要素によって骨プレートを骨に弾性的に連結することは、骨折した骨の1つ又は2つの骨区分に適用されてよく、これに対して、他の骨区分は、標準的な骨ファスナ、例えば非ロック式又はロック式ねじを使用して、同一の骨プレートに固定されてもよい。
【0026】
図10は、骨プレート1を円筒形の骨10と連携した状態で示す断面図である。ここでは、プレート1は複数の非共線状の骨ペグ20で骨10に固定されている。骨ペグ20はねじ山付きヘッド21を有しており、摺動要素3の対応するねじ山付きの貫通穴14内にポジティブにロックされている。骨ペグ20は、骨内の多平面固定のための平滑な軸部25を有している。平滑な軸部は、ペグ長手方向軸線の方向で摺動要素3に作用する力の伝達を防止する。
【0027】
図11は、骨プレート1を、摺動要素3のねじ山付き貫通穴14を通って示す横方向断面図である。摺動要素3は凹部5内で少なくとも部分的に包囲されている。所定の実施態様では、摺動要素は上部及び底部で、そしてプレート中央に向かって包囲されているが、しかし所定の実施態様では側方で実際に露出されている。摺動要素を1つの側で開いたままにしておくことにより、摺動要素を所定の場所に投入することができ、そしてシリコーンを成形することができるので、摺動要素に被さるようにプレートを溶接する必要がなくなる。この実施態様では、凹部5は骨プレート1の側方を通して形成され、プレート底面6まで延び、そしてプレート上面7に向かって延びている。摺動要素3はエラストマールーメン26によって凹部5内に遊動状態で支持されている。エラストマールーメン26は、凹部5の部分及び/又は摺動要素3の部分に選択的に結合することによって、骨プレート1に対する摺動要素3の所期の弾性拘束に影響を与えることができる。例えば、一つの実施態様において、摺動要素3の表面27は、エラストマールーメン又は弾性材料に結合される。図11は、摺動要素が運動に抗して束縛されている状況を示している。メタル・オン・メタル収縮、及び摩耗を防止するのに加えて、摺動要素のこのような弾性的な閉じ込めは、特にねじが摺動要素内のねじ穴の軸線に対して正確には平行でない状態で挿入される場合に、ねじ山付きねじヘッドを摺動要素内に係合させるのを容易にする。
【0028】
図12は、ねじ山付き貫通穴14を有する摺動要素3が見えるようにするために底部のない状態で、骨プレート1を示す底面図である。摺動要素3はエラストマールーメン26によって、骨プレート1の側方に形成された凹部5内で包囲されている。エラストマールーメン26は、長手方向運動を優先的に可能にする。この図が示す実施態様では、摺動要素3の長手方向寸法は凹部5の対応する長手方向寸法よりも短い。長手方向寸法のこのような差は、プレート1に対する摺動要素3の許容し得る運動を決定する。この制御された運動範囲は0.1〜2mm、好ましくは0.3〜1mmである。図示した実施態様の場合、摺動要素3は骨プレート1の外面までは延びていない。図12は、摺動要素3のエッジと凹部領域5との間のエラストマー26を示している。他の実施態様では、エラストマーは、摺動要素3を包囲又は収容するエラストマールーメン26である。
【0029】
図13は、上面7と、ねじ山付き貫通穴14を含む摺動要素3とを有する骨プレート1を示す三次元図である。この図は、「骨プレートの側方」(すなわち上面ではなく、また骨に面する表面でもない)に形成された凹部を示しており、ここを通って摺動要素3及びエラストマールーメン26を挿入することができる。
【0030】
図14は、骨プレート1の底面6を超えて突出する摺動要素3を示している。ねじ山付き貫通穴14を備えた摺動要素3は凹部5内に位置している。エラストマールーメン26は、摺動要素3を取り囲んだ状態で示されている。この図は内部の摺動要素3が骨プレートの側方の空洞(すなわち骨に面した表面又は上面に設けられたのではない空洞)内で少なくとも部分的に包囲されていることを示している。この図は、底面の下方に延びるスライダの一部を示すように構成されている。空洞はプレートの側方にまだある。摺動要素3の表面27はエラストマールーメン又は弾性材料に接合されている。
【0031】
一つの実施態様では、外面と、骨に面する表面とを有する骨プレートであって、骨プレートは内部摺動要素を含んでおり、各摺動要素は、骨ねじ又はペグのためのねじ山付き受容穴を含んでおり、骨ねじ又はペグは対応するねじ山付きヘッドを有している、骨プレートが提供される。摺動要素は、プレートの長手方向軸線に対して平行に、制御された状態で変位させられるが、しかしプレートの長手方向軸線に対して垂直な変位に抗して実質的に拘束される。ねじ山付きヘッドを有する骨ねじは、骨プレートを骨表面に押し付けることなしに、ねじ山付き受容穴に堅固に固定されることができる。従って、骨プレートの長手方向軸線に対して平行に、制御された状態で変位する能力を維持しながら、骨区分を骨プレートに確実に固定することができる。変位量は、骨プレート内部の摺動要素の運動限度によって制御される。
【0032】
摺動要素は概ね棒状であり、方形断面を有している。他の実施態様では他の断面形状、例えば正方形、楕円形、湾曲形、又はプレートの断面形状に近似する湾曲方形を用いてよい。摺動要素はプレートの凹部内に適合するようにサイズ設定して成形することが必要なだけであり、所期の運動量を可能にするようにサイズ設定される。摺動要素は、任意の医学的に許容し得る材料、例えばチタン又はステンレス鋼のような金属を具備している。
【0033】
摺動要素はばね要素によってプレート内において弾性的に遊動状態で支持することができ、ばね要素は、プレートの長手方向に作用する荷重に応答して、プレートに対する摺動要素の並進運動量を決定する。この弾性遊動支持は、プレート・骨固定構造の重量負荷に応答して、骨プレートに固定された隣接する骨区分間の動的運動を可能にする。ばね要素は摺動要素とは別個のばねであってよく、或いはばね要素は摺動要素の一部であってもよい。他の実施態様では、ばね要素はエラストマー材料である。
【0034】
荷重応答性の摺動要素を介して骨をプレートに弾性的に固定することにより、骨折部位の制御された対称的な運動が可能になる。このような運動は、仮骨形成による骨折治癒を促進することが知られている。さらに、弾性固定は、固定点間の荷重分布を改善し、このことは応力集中を低減し、これにより構造の強度を向上させる。弾性固定はさらに、骨吸収、及び過度に剛性の固定構造に起因する応力遮蔽によってもたらされる小孔形成を低減する。
【0035】
弾性固定はエラストマーの使用によって実現してよい。エラストマーは、骨プレートに対する摺動要素の所期弾性拘束に影響を与えるために、前記プレート又は摺動要素表面の少なくとも一部にポジティブに付着することができる。
【0036】
特定の実施態様では、エラストマーは、ボイド(例えばエアポケット)を有さないか、又はボイドをほとんど有さない。他の実施態様では、エラストマーはボイドを有しており、これらのボイドは、エラストマーの圧縮性を高めることによって、システムの有効剛性をさらに低減することができる。
【0037】
エラストマーは、医学的に適していればいかなるエラストマーであってもよく、例えばシリコーンであるがこれに限定するものではない。特定の実施態様では、エラストマーの弾性率が0.1〜50MPaである。これにより、所期量の運動/弾性が可能になる。特定の実施態様では、エラストマー材料の弾性率及び構成がエラストマー内部で異なっていてもよい。例えばこれは、2つの異なるエラストマーを使用する場合、又はエラストマーの異なる厚さ又は粘度を使用する場合に当てはまる。
【0038】
特定の実施態様では、エラストマーは摺動要素を取り囲む又は収容するエラストマールーメンを含む。他の実施態様では、エラストマーは摺動要素と凹部壁との間に位置する。
【0039】
特定の実施態様では、摺動要素は単独エレメントとして又はエラストマールーメンと連結した状態で取り外し可能であってよい。換言すれば、特定の実施態様では、摺動要素をプレート内に組み付け、そしてシリコーンを成形することによってこれらを結合する。他の実施態様では、シリコーンを摺動要素上に外部から成形して結合し、次いでその構成部分をプレート内に押し込む。この場合、この構成部分はプレートには結合されない。「ローディングされていない」モジュール骨プレートの別の実施態様では、外科医は弾性摺動要素、非弾性ロック式エレメント、又は非ロック式エレメントを挿入することができる。
【0040】
特定の実施態様において、プレート内の摺動要素の弾性遊動支持は、2つ又は3つ以上のばね要素によって達成され、これらのばね要素は、プレートの長手方向の荷重に応答した、プレートに対する摺動要素の双方向並進運動量を決定する。
【0041】
特定の実施態様では、ばね要素は別個のばねを具備している。特定の実施態様では、ばね要素は、摺動要素の一部である弾性構造又は材料によって形成された一体型ばねを具備する。
【0042】
特定の実施態様では、ばね要素は、摺動要素に隣接するプレート区分の一部である弾性構造又は材料によって形成された一体型ばねを具備する。
【0043】
特定の実施態様では、ばね要素は、摺動要素(図12で符号3として示されている)とプレート(1)との間に取り付けられた弾性材料(エラストマー)によって形成される。
【0044】
特定の実施態様では、ばね要素は、摺動要素を収容するか又は取り囲む弾性材料(エラストマー)ルーメンによって形成される。例えば、エラストマーは凹部壁と摺動要素のエッジとの間ではなく、摺動要素の上部及び下部にも設けられる。
【0045】
一つの実施態様では、摺動要素は2つ又は3つ以上のばね要素(例えば図7に示されたもの)の間に遊動状態で支持されている。このような形態は、2つの対向方向における弾性変位を可能にする。図7が示す実施態様では、2つのばね要素が摺動要素と一体的である。別の実施態様では、ばね要素は摺動要素とは別個のものであってよい。別の実施態様では、ばね要素は別個のばね要素と一体型ばね要素との組み合わせであってよい。他の実施態様では、ばね要素はエラストマー又はエラストマールーメンであってよい。他の実施態様では、ばね要素、例えば別個のばねとエラストマーとの組み合わせであってよい。例えば摺動要素の一方の側が(別個又は一体型の)ばねを有することができ、そして摺動要素の他方の側では、ばね要素はエラストマーであってよい。
【0046】
特定の実施態様では、別個又は一体型のばね要素と、エラストマーばね要素とが組み合わされていてよい。例えば別個及び/又は一体型のばね要素及び摺動要素はエラストマールーメンによって取り囲まれていてよい。或いは、別個又は一体型のばね要素と、凹部壁と摺動要素との間に位置するエラストマー材料とが組み合わされていてよい。
【0047】
特定の実施態様では、プレート内の摺動要素の弾性遊動支持は、定義された静止位置で各摺動要素を保持するばね要素によって達成され、そしてばね要素は、プレートの長手方向に加えられた荷重に応答して、プレートに対する各摺動要素の単方向並進運動量を決定する。
【0048】
特定の実施態様では、骨折プレートは、2つ以上(特定の実施態様では2つ以上、そして特定の実施態様では3つ以上)の貫通穴を具備しており、それぞれの貫通穴は摺動要素とばね要素とを有している。特定の実施態様では、骨折プレートは全て同じ形状及び同じ材料の摺動要素とばね要素とを有している。特定の実施態様では、骨折プレートは異なる形状及び異なる材料の摺動要素、及び/又は異なるばね要素を有している。例えば、所定のプレート区分は別個のばね要素を有してよく、他のプレート区分は摺動要素と一体的なばね要素を有してよく、そして他のプレート区分はエラストマー材料ばね要素を有してよく、又は他のプレート領域は別個のばね要素、一体型ばね要素、及び/又は弾性材料ばね要素の組み合わせを採用してよい。
【0049】
別の実施態様では、摺動要素を定義された静止位置に保持するために単一のばね要素が使用される。このことは、骨ねじの挿入中、摺動要素の安定な位置を保証する。続いて、固定構造に荷重(例えば患者が、骨折した骨に体重又は力を加えるときに生じる荷重)が加えられると、摺動要素の運動が開始される。運動の開始はばね要素のプレロードによって決定されてよい。荷重を取り除くと、摺動要素はその定義された静止位置に戻る。
【0050】
別の実施態様では、摺動要素は低摩擦層、例えばポリマー膜内に部分的又は完全に埋め込まれてよい。このような構成は摺動要素とプレートとの間の摩擦及び摩耗を低減する。
【0051】
別の実施態様では、摺動要素及び対応する固定穴は、互い違い配列で形成されている。例えば図1、3及び10を参照されたい。直線に沿って配置された摺動要素と比較して、この互い違い状の固定は、ねじり荷重を加えられたときの固定構造の安定化を増大させる。
【0052】
特定の実施態様では、受容穴が非ロック式骨ねじで骨表面上に押し付けられるときにプレートを骨表面の上方に持ち上げるために、1つ又は2つ以上の摺動要素がプレートの骨に面する表面を超えて延びており、非ロック式骨ねじが、摺動要素の弾性遊動支持と相俟って、プレートと骨表面との制御された相対運動を可能にする。図14を参照されたい。
【0053】
特定の実施態様では、内部摺動要素はプレートの側方に設けられた空洞内部で少なくとも部分的に包囲されている。図11は、プレートの側方の空洞内部で包囲された摺動要素を示している。
【0054】
別の実施態様では、摺動要素内のねじ山付き受容穴は円錐形である。これは、摺動要素3に対応するねじ山付きの円錐形ねじヘッドをポジティブにロックすることを可能にする。
【0055】
別の実施態様では、摺動要素内のねじ山付き受容穴は円筒形であり、ねじヘッド及びねじ軸部において同じねじ山外径及びねじ山ピッチを有する骨ねじと併せて使用される。このことの利点は、ねじ軸部がねじ挿入時に一貫して摺動要素のねじ山付き穴内に係合されることである。この実施態様は、ねじヘッドが摺動要素に押し付けられるのを防止する。また、摺動要素のねじ山付き穴内にねじヘッドが容易に係合することを保証することによって、骨プレート内部の摺動要素にプレロードが加えられるのも防止する。
【0056】
特定の実施態様では、複数の骨ねじがある(例えば図3及び9参照)。特定の実施態様では、装置はさらに、ねじ山付きヘッドと平滑なペグ軸部とを有する1つ又は2つ以上の非共線状骨ペグを含む(例えば図10参照)。別の実施態様では、摺動要素のねじ山付き穴とポジティブに係合するねじ山付きヘッドを備えたペグを使用して、1つ又は2つ以上の摺動要素を骨に結合してよい。ロック式ねじの代わりにロック式ペグを使用すると、プレート内部の摺動要素にプレロードが加えられるリスクが低減される。固定強度を向上させるために、ロック式ペグを多平面形態で挿入してよい。摺動要素の少なくとも2つのねじ山付き穴は、共線状でない中心軸線を有している。
【0057】
特定の実施態様では、プレートはねじ山付き及び/又はねじ山無しのねじ穴を内蔵している。
【0058】
別の実施態様では、特定の骨プレート区分内にだけ摺動要素を配置する一方、別の骨プレート区分は、(業界において使用されているように)ねじ山付き及び/又はねじ山無しのねじ穴を有していてよい。一つの実施態様では、ばね要素及び摺動要素は1プレート区分内に配置されているのに対して、別のプレート区分は、ばね要素及び摺動要素なしのねじ山付き及び/又はねじ山無しの穴を有している。(業界において使用されているような)ばね要素及び摺動要素を有さない標準的なねじ山付き穴又は標準的なねじ山無しの穴(本明細書中及び特許請求の範囲では静的受容穴と呼ぶ)を備えた骨プレート区分は、骨表面に対するプレートの圧縮及び剛性固定を許容するのに対して、摺動要素/ばね要素を有する骨区分は、対応する骨区分の弾性固定を可能にする。このような弾性固定は、固定構造の間欠的な荷重に応答した骨片間運動を達成する能力を維持する。例えば、骨折部位の一方の側で、骨プレートはばね要素及び摺動要素を使用した弾性遊動支持装置を含んでいてよく、これに対して骨折部位の他方の側における対応する骨区分では、骨プレートは静的受容穴を含む(そして弾性遊動支持装置を含まない)。また特定の実施態様では、摺動要素/ばね要素及び静的受容穴は、同じ骨プレート区分内で一緒に使用することもできる。例えば、1つの穴おきに静的受容穴が存在してよい(そして他の穴は弾性遊動支持貫通穴である)。他の実施態様では、(摺動要素とばね要素とを使用する)弾性遊動支持装置と、静的受容穴とが混合されている。このような混合の状態は、骨折部位を横切る骨プレート全体を通して同じであってよい。他の実施態様では、静的受容穴と弾性遊動支持装置との混合状態はプレート内部で変化してよい。例えば骨折部位の一方の側はより多くの弾性遊動支持装置と、より少ない静的受容穴とを有していてよく、これに対して骨折部位の他方の側には、弾性遊動支持装置よりも多くの静的受容穴があってよい。換言すれば、骨プレートの異なる部分が、種々異なるそれぞれの組み合わせを用いてよい。
【0059】
別の実施態様では、摺動要素と1つ又は2つ以上のねじ穴とを同じプレート区分内で組み合わせてよい。このことは、標準的な非ロック式ねじを使用した骨表面へのプレートの一時的な固定を可能にし、これにより、摺動要素内へのロック式ねじの取り付けを容易にする。
【0060】
本発明はまた、可撓性プレートを使用して骨折部位を固定する方法を提供する。特定の実施態様では、この方法は、骨折した骨部分を概ね整列させ、そして、骨プレート内に弾性的に遊動状態で支持された複数の摺動要素内に設けられた受容穴に堅固に結合する複数の骨ファスナによって、骨折部位を横切るように骨プレートを取り付けることを含む。摺動要素は、骨プレートの長手方向軸線に対して平行な、制御された並進運動を可能にする一方、骨プレートの長手方向軸線に対して垂直な変位を実質的に防止するように構成されている。骨ねじは、骨プレート又は摺動要素を骨表面上に押し付けることなしに、摺動要素に堅固に固定される。
【0061】
特定の実施態様では、受容穴は、骨プレートの長手方向軸線に沿った骨プレートに対する並進運動を優先的に許容する一方、骨プレートの上面又は骨に面する表面に対して垂直方向の、1つ又は2つ以上の受容穴の運動を実質的に拘束するように遊動状態で支持される。
【0062】
特定の実施態様では、ばね要素が、荷重が加えられていないときには骨プレートに対してニュートラルな位置に受容穴を遊動状態で支持する弾性ばねとして作用し、この弾性ばねは、荷重の付与に応答して受容穴が骨プレートに対して制御された状態で弾性的に並進運動することを可能にする。
【0063】
特定の実施態様では、可撓性エレメントは、固定構造の安定性を向上させるために、骨プレートと骨部分との間の衝撃荷重の伝達を減衰する、
【0064】
特定の実施態様では、可撓性エレメントは、単一の骨区分と連携する複数の固定エレメント間の荷重伝達分布を改善する。標準的な静的プレートを用いた場合、整列が完全ではないことから、1つのねじが残りのねじよりも大きい荷重を加えられるのが典型的である。本発明の弾性遊動支持装置(弾性的に遊動状態で支持される摺動要素)を使用すると、ねじが変位を許されるので荷重が全てのねじにわたって分配され、そして弾性エレメントはこの荷重を均等にする。
【0065】
特定の実施態様では、可撓性エレメントは、表面摩耗及び材料疲労を低減するために、受容穴と骨プレートとの少なくとも部分的な直接接触を防止する。
【0066】
特定の実施態様では、2つ又は3つ以上の受容穴及び骨プレートの弾性遊動支持が骨折部位の一方の側で実施されるのに対して、対応する骨区分は静的受容穴に取り付けられる。
【0067】
特定の実施態様では、2つ又は3つ以上の受容穴及び骨プレートの弾性遊動支持が骨折部位の両方の側で実施される。
【0068】
特定の実施態様では、2つ又は3つ以上の受容穴及び骨プレートの弾性遊動支持が、静的受容穴を有する骨プレート構造と比較して、固定構造の軸方向剛性を約40〜90%だけ大幅に低減するのを可能にする。
【0069】
特定の実施態様では、1つ又は2つ以上の可撓性エレメントが変位、圧力、又は荷重を測定するためのセンサを含み、センサは、骨折治癒の進行を評価するための手段として、受信エレメントと骨プレートとの間の荷重伝達の存在又は規模を捕捉する。例えばセンサは、骨が治癒したときにそのことを見極めるのを補助するように埋め込むことができる。例えば、センサが変位を測定する場合、骨の治癒に伴って、部分の変位が時間とともに少なくなると予期される。センサが荷重を測定する場合、プレート上の荷重が骨の治癒に伴って減少すると予期される。
【0070】
特定の実施態様では、エラストマー材料がエラストマールーメンを含み、可撓性エレメントのうちの1つ又は2つ以上のエレメントのエラストマールーメンが、前記センサに過渡電力を供給するためのエネルギー生成手段を含む。
【0071】
特定の実施態様を本明細書に例示し説明してきたが、当業者には明らかなように、同じ目的を達成するように計算された種々様々な別の実施態様及び/又は同等の実施態様を、図示して説明した実施態様と、範囲を逸脱することなしに置き換えることができる。当業者には明らかなように、実施態様を種々様々な方法で実施することができる。本出願は本明細書中で論じた実施態様の改変形又は変更形にも範囲が及ぶように意図される。従って、実施態様は特許請求の範囲及びこれと同等のものによってのみ限定されることが明らかに意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14