特許第6559965号(P6559965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559965トラック幅が狭く且つ読み取りギャップが小さい磁気センサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559965
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】トラック幅が狭く且つ読み取りギャップが小さい磁気センサ
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/39 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   G11B5/39
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-16384(P2015-16384)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-146224(P2015-146224A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2018年1月29日
(31)【優先権主張番号】14/170,487
(32)【優先日】2014年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503116280
【氏名又は名称】エイチジーエスティーネザーランドビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100114546
【弁理士】
【氏名又は名称】頭師 教文
(72)【発明者】
【氏名】ツェン ガオ
(72)【発明者】
【氏名】ハルダヤール エス. ギル
(72)【発明者】
【氏名】イン ホン
(72)【発明者】
【氏名】クアン レー
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−153295(JP,A)
【文献】 特開2000−331316(JP,A)
【文献】 特開2004−289160(JP,A)
【文献】 特開2003−158311(JP,A)
【文献】 特開2013−008439(JP,A)
【文献】 特開2000−228003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分及び前記第1の部分の上に形成された第2の部分を有するセンサ積層体を含み、前記第1の部分がセンサトラック幅を画定する幅を有し、前記第1の部分が空気ベアリング面の反対側に後縁を有し、前記センサ積層体が前記空気ベアリング面まで延在し、前記第2の部分がセンサトラック幅を超えて延在する幅を有している磁気センサにおいて、
前記センサ積層体の前記第1の部分が、磁気自由層と、非磁性層と、第1の磁化固定層の第1の部分とを含み、前記非磁性層が、前記磁気自由層と前記第1の磁化固定層の前記第1の部分との間に挟まれていて、
前記センサ積層体の前記第2の部分が、前記第1の磁化固定層の第2の部分と、第2の磁化固定層と、前記第1の磁化固定層と前記第2の磁化固定層との間に挟まれた非磁性逆平行結合層と、前記第2の磁化固定層に交換結合する反強磁性材料層とを含む磁気センサ。
【請求項2】
記後縁と前記空気ベアリング面との間の距離がセンサストライプ高を画定し、
前記第2の部分が前記センサストライプ高を超えて延在している、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
記反強磁性材料層が前記空気ベアリング面よりも凹んでいる、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記センサ積層体が、第1及び第2の磁気シールドの間に配置されていて、前記反強磁性材料層と前記空気ベアリング面との間に配置された磁気台座を更に含む、請求項3に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記磁気台座が前記第2の磁気シールドと磁気的に接続されている、請求項4に記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記センサ積層体の前記第2の部分が、前記センサ積層体の前記第1の部分に追随する方向に配置されている、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記反強磁性材料層が、前記磁気自由層の反対側で前記第2の磁化固定層の上に形成されている、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項8】
前記センサ積層体の前記第1の部分の第1及び第2の側部の各々に隣接して形成された第1及び第2の磁気バイアス構造を更に含み、前記第1及び第2の磁気バイアス構造が磁気的に柔軟な材料で形成されている、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項9】
前記磁気バイアス構造の各々が反強磁性材料層と交換結合されている、請求項8に記載の磁気センサ。
【請求項10】
前記磁気バイアス構造の各々が、前記センサ積層体の前記第1の部分の下方及び前記磁気バイアス構造の各々の下方に延在する反強磁性材料層と交換結合されている、請求項8に記載の磁気センサ。
【請求項11】
磁気バイアス構造を製造する方法であって、
磁気自由層と、前記磁気自由層の上に堆積された非磁性層と、前記非磁性層の上に堆積された第1の磁化固定層の第1の部分とを含む第1のセンサ積層部分を堆積させるステップと、
前記第1のセンサ積層部分のトラック幅及び後縁を画定するステップと、
前記第1のセンサ積層部分の上に第2のセンサ積層部分を堆積させるステップとを含み、前記第2のセンサ積層部分が、第1の磁化固定層の第2の部分と、前記第1の磁化固定層の前記第2の部分の上に堆積された非磁性逆平行結合層と、前記非磁性逆平行結合層の上に堆積された第2の磁化固定層と、前記第2の磁化固定層の上に堆積された反強磁性材料層とを含んでいる方法。
【請求項12】
前記反強磁性材料層を堆積させた後で、空気ベアリング面の近傍で前記反強磁性材料層の一部を除去するステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記反強磁性材料層を堆積させた後で、
空気ベアリング面の近傍で前記反強磁性材料層の一部を除去するステップと、前記反強磁性材料が除去されたスペースを充填すべく磁性材料を堆積させるとをステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記反強磁性材料層を堆積させた後で、空気ベアリングの面から所望の距離に前縁が位置するマスクを形成するステップと、イオンミリングを実行して、前記反強磁性材料層の一部を除去するステップと、化学機械研磨を実行するステップとを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のセンサ積層部分のトラック幅及び後部を前記画定するステップが、
トラック幅を画定する幅が構成された第1のマスクを形成するステップと、
第1のイオンミリングを実行して、前記第1のマスクにより保護されていない前記第1のセンサ積層部分の一部分を除去するステップと、
空気ベアリング面の反対側に後縁を画定すべく構成された第2のマスクを形成するステップと、
第2のイオンミリングを実行して、前記第2のマスクにより保護されていない前記第1のセンサ積層部分の一部分を除去するステップとを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のイオンミリングを実行した後で、磁気バイアス層を堆積させるステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
筐体と、
前記筐体内に移動可能に搭載された磁気媒体と、
磁気センサを載置する磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを前記磁気媒体の表面に相対的に移動させるアクチュエータ機構とを含む磁気データ記録システムにおいて、
前記磁気センサが更に、
第1の部分と、前記第1の部分の上に形成される第2の部分とを有するセンサ積層体を更に含み、前記第1の部分がセンサトラック幅を画定する幅を有し、前記第1の部分が空気ベアリング面の反対側に後縁を有し、前記センサ積層体が前記空気ベアリング面まで延在し、前記第2の部分が前記センサトラック幅を超えて延在する幅を有し、
前記センサ積層体の前記第1の部分が、磁気自由層と、非磁性層と、第1の磁化固定層の第1の部分とを含み、前記非磁性層が前記磁気自由層と前記第1の磁化固定層の第1の部分との間に挟まれ、
前記センサ積層体の前記第2の部分が、
前記第1の磁化固定層の第2の部分と、第2の磁化固定層と、前記第1の磁化固定層と前記第2の磁化固定層との間に挟まれた非磁性逆平行結合層と、前記第2の磁化固定層と交換結合された反強磁性材料層とを含む、磁気データ記録システム。
【請求項18】
記後縁と前記空気ベアリング面の間の距離がセンサストライプ高を画定し、
前記第2の部分が前記センサストライプ高を超えて延在する、請求項17に記載の磁気データ記録システム。
【請求項19】
記反強磁性材料層が前記空気ベアリング面よりも凹んでいる、請求項17に記載の磁気データ記録システム。
【請求項20】
前記センサ積層体が第1及び第2の磁気シールドの間に配置されていて、前記反強磁性材料層及び前記空気ベアリング面の間に配置された磁気台座を更に含む、請求項19に記載の磁気データ記録システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気データ記録に関し、より具体的には、底部に堆積された自由層構造により画定されるトラック幅を有し、且つ自由層構造の上に堆積された固定層構造を有する磁気読み取りセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの中核は、磁気ディスクドライブと呼ばれるアセンブリである。磁気ディスクドライブは、回転磁気ディスク、回転磁気ディスクの表面に隣接するサスペンションアームにより懸架される書き込み/読み取りヘッド、及びサスペンションアームをスイングさせて回転ディスク上の選択された円形トラック上に読み取り及び書き込みヘッドを乗せるアクチュエータを含んでいる。読み取り及び書き込みヘッドは、空気ベアリング面(ABS)を有するスライダ上に直接置かれる。サスペンションアームは、ディスクが回転していなければスライダを押し付けてディスクの表面と接触させるが、ディスクが回転していれば回転ディスクにより空気が渦巻く。スライダが空気ベアリングに乗ると、書き込み及び読み取りヘッドは回転ディスクを用いて磁気痕跡を書き込んだり、回転ディスクから磁気痕跡を読み取る。読み取り及び書き込みヘッドは、書き込み及び読み取り機能を実行するコンピュータプログラムに従い動作する処理回路に接続されている。
【0003】
書き込みヘッドは、少なくとも1個のコイル、書き込み磁極、及び1個以上の戻り磁極を含んでいる。コイルを通って電流が流れる際に結果的に生じる磁場により、書き込み磁極を通って磁束が流れ、その結果、書き込み磁極の先端から書き込み磁場が生じる。この磁場は、隣接する磁気ディスクの一部を局所的に磁化させて1ビットのデータを記録する程度に充分強い。書き込み磁場は次いで磁気媒体の磁気的に柔軟な下層を通って進み、書き込みヘッドの戻り磁極に戻る。
【0004】
巨大磁気抵抗(GMR)センサ又はトンネル接合磁気抵抗(TMR)センサ等の磁気抵抗センサを用いて磁気媒体から磁気信号を読み取ることができる。磁気抵抗センサは、外部磁場に応答して変化する電気抵抗を有している。この電気抵抗の変化は、隣接する磁気媒体から磁気データを読み取るために、処理回路により検出できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
データ密度に対するニーズが高まるのに従い、ビットサイズを縮小することにより線形データ密度を増大させるべく磁気センサのギャップ間隔を減少させるニーズが厳然として存在する。しかし、センサ層の厚さは、センサの性能及び安定性に悪影響を及ぼさない程度にしか薄くすることができない。従って、ギャップ間隔を減少させながら、信頼性の高い(robust)センサ性能を提供することが可能な磁気センサ設計に対するニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の部分及び第1の部分の上に形成された第2の部分を有するセンサ積層体を含む磁気センサを提供する。第1の部分はセンサトラック幅を画定する幅を有し、第2の部分はセンサトラック幅を超えて延在する幅を有している。センサ積層体の第1の部分は、磁気自由層と、非磁性層と、第1の磁化固定層の第1の部分とを含んでいる。非磁性層は、磁気自由層と第1の磁化固定層の第1の部分との間に挟まれている。センサ積層体の第2の部分は、第1の磁化固定層の第2の部分と、第2の磁化固定層と、第1の磁化固定層と第2の磁化固定層との間に挟まれた非磁性逆平行結合層と、第2の磁化固定層と交換結合された反強磁性材料層とを含んでいる。
【0007】
センサは、磁気自由層と、磁気自由層の上に堆積された非磁性層と、非磁性層の上に堆積された第1の磁化固定層の第1の部分とを含む第1のセンサ積層部分を堆積させるステップを含む処理により形成される。第1のセンサ積層部分のトラック幅及び後縁が次いで画定される。第2のセンサ積層部分が次いで第1のセンサ積層部分の上に堆積される。第2のセンサ積層部分は、第1の磁化固定層の第2の部分と、第1の磁化固定層の第2の部分の上に堆積された非磁性逆平行結合層と、非磁性逆平行結合層の上に堆積された第2の磁化固定層と、第2の磁化固定層の上に堆積された反強磁性材料層とを含んでいる。
【0008】
機能的トラック幅及びセンサのストライプ高が第1のセンサ部上でパターン化及び画定されているため、センサ積層体の全体をパターン化する場合よりも小さい寸法及び微細なセンサ解像度が実現可能である。これにより、センサの寸法解像度が向上して高いデータ密度及び狭いトラック幅が可能になる。
【0009】
また、空気ベアリング面近傍の反強磁性材料層の一部分を除去し、結果的に生じたスペースを上部磁気シールドに接合可能な磁性材料で充填することができる。これにより、全体のギャップ厚から反強磁性材料層の厚さ分が除去される結果、磁気スペーシングが大幅に狭められる。
【0010】
本発明の上記及び他の特徴並びに利点は、同一参照番号で同一要素を示す図面と合わせて以下の好適な実施形態の詳細説明を精査することにより明らになろう。
【0011】
本発明の本質及び利点を、好適な使用形態と合わせてより完全に理解するために、以下の詳細説明を添付図面と合わせて参照されたい。但しこれらの図面は原寸大ではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を実施し得るディスクドライブ装置の模式図である。
図2】磁気ヘッドの位置を示すスライダのABS図である。
図3】磁気データ記録システムのスライダ上に形成され得る磁気読み取りセンサのABS図である。
図4図3の切断線4−4から見た、図3の磁気センサの側面断面図である。
図5】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図6】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図7】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図8】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図9】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図10】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図11】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図12】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図13】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図14】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図15】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図16】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図17】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図18】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図19】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図20】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図21】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図22】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図23】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図24】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
図25】本発明の一実施形態による磁気センサを製造する方法を示す、製造の各中間段階における磁気センサの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の記述は、本発明を実施すべく現在考案されている最良の実施形態に関するものである。この記述は、本発明の一般原理を例示するためになされるものであって、本明細書で権利請求する本発明の概念を限定するものではない。
【0014】
ここで図1を参照するに、本発明を実施するディスクドライブ100を示す。図1に示すように、少なくとも1個の回転可能な磁気ディスク112がスピンドル114上で支持されてディスク駆動モーター118により回転し、これら全てが筐体内101内に搭載されている。各ディスクにおける磁気記録は、磁気ディスク112上の同心円データトラック(図示せず)の環状パターンに沿って行われる。
【0015】
少なくとも1個のスライダ113が磁気ディスク112の近傍に配置されていて、各スライダ113は1個以上の磁気ヘッドアセンブリ121を支持している。磁気ディスクが回転するに従い、スライダ113は、所望のデータが書き込まれている磁気ディスクの異なるトラックに磁気ヘッドアセンブリ121がアクセスできるように、ディスク表面122を横断して放射状に移動する。各スライダ113は、サスペンション115によりアクチュエータアーム119に取り付けられている。サスペンション115は、スライダ113をディスク表面122に押し付ける弱いばね力を及ぼす。各アクチュエータアーム119はアクチュエータ手段127に取り付けられている。図1に示すアクチュエータ手段127は、ボイスコイルモーター(VCM)であってよい。VCMは、一定の磁場内で移動可能なコイルを含み、コイル移動の方向及び速度はコントローラ129により供給されるモーター電流信号により制御される。
【0016】
ディスク記憶システムが動作している間、磁気ディスク112の回転によりスライダ113とディスク表面122の間に空気ベアリングが生じてスライダに上向きの力すなわち揚力を及ぼす。空気ベアリングは従ってサスペンション115の弱いばね力と釣り合って、通常動作の間はスライダ113をディスク表面から僅かに上方でほぼ一定の微小な間隔を保ちながら支持する。
【0017】
ディスク記憶システムの各種の構成要素は動作している間、制御部129により生成された制御信号、例えばアクセス制御信号及び内部クロック信号により制御される。典型的に、制御部129は、論理制御回路、記憶手段、及びマイクロプロセッサを含んでいる。制御部129は、導線123上の駆動モーター制御信号及び導線128上のヘッド位置及びシーク制御信号等、各種のシステム動作を制御すべく制御信号を生成する。導線128上の制御信号は、ディスク112上の所望のデータトラックにスライダ113を最適に移動及び配置させる所望の電流分布を提供する。書き込み及び読み取り信号が記録チャネル125を介して書き込み及び読み取りヘッド121とやり取りされる。
【0018】
図2を参照するに、スライダ113内の磁気ヘッド121の向きをより詳細に見ることができる。図2はスライダ113のABS図であり、同図に見られるように、誘導書き込みヘッド及び読み取りセンサを含む磁気ヘッドがスライダの後縁部に配置されている。典型的な磁気ディスク記憶システムの上の記述及びこれに伴う図1の描画は例示目的に過ぎない。ディスク記憶システムが多数のディスク及びアクチュエータを含んでいてよく、各アクチュエータが多数のスライダを支持できることは明らかであろう。
【0019】
図3及び4に磁気読み取りヘッド300の模式図を示す。図3は、空気ベアリング面(ABS)から見たセンサ300の様子であり、図4図3の切断線4−4から見た側面断面図である。磁気読み取りヘッド300は、導線及び磁気シールドとしても機能できるようにNiFe等の導電性磁性材料から作成できる上下の磁気シールド304と306との間に挟まれたセンサ積層体302を含んでいる。
【0020】
センサ積層体302は、第1のセンサ積層部分(下部)308及び第2のセンサ積層部分(上部)310を含んでいる。図3に示すように、下部308はセンサトラック幅TWを画定する幅を有するのに対し、上部310はそれよりも大幅に広くてよい。
【0021】
下部センサ部308は、シード層314上に形成可能な磁気自由層312を含んでいてよい。磁気自由層312は、NiFe、CoFe及び/又はホイスラー合金等の材料を含んでいてよい。非磁性スペーサ又は障壁層316を、磁気自由層312の上に形成することができる。非磁性スペーサ層316は、センサ300がトンネル接合センサである場合はMgO等の磁気的絶縁材料であってよく、又はセンサ300が巨大磁気抵抗(GMR)センサである場合AgSn等の導電スペーサ層であってよい。下部センサ部308はまた、NiFe又はCoFe等の磁性材料から作成できる第1の磁化固定層(AP1第1の部分)318aの第1の部分を含んでいる。層318aについて以下に詳細に記述する。
【0022】
センサ積層体308は、第2の磁化固定層322としての第1の磁化固定層(AP1)318と、AP1層318とAP2層322との間に挟まれた逆平行結合層324とを含む固定層構造320を含んでいる。逆平行結合層324は、Ru等の材料で形成することができる。図3に示すように、AP1層318は、2個の磁性層、すなわち第1の層318a及び第2の層318bとして形成されている。第1の層318aは下部センサ積層部分308の一部であるのに対し、第2の層318bは上部センサ積層部分310の一部である。また、第1の層318aの幅がトラック幅TW以内であるのに対し、第2の層318bはトラック幅TWを超えて横方向に延在していることが分かる。そのような固定層構造320を新たな二層AP1層318と共に製造する方法について以下に更に詳細に記述する。AP1層及びAP2層は共に、CoFe、NiFe、又はこれらの組合せ等、1個以上の磁性材料から作成されていてよい。
【0023】
図4を参照するに、上部センサ積層部分310は、自由層312の反対側で固定層構造320の上に形成された反強磁性材料AFM層326の層を含んでいる。図4に示すように、AFM層326はABSよりも凹んでいて、磁気台座402がAFM層326とABSの間、及びAP2層322と上部シールド306の間に配置されている。AFM層326は、IrMn又はPtMn等の材料であってよく、AP2層322と交換結合されている。AFM層326とAP2層322との交換結合は、AP2層の磁化をABSに垂直な方向に固定する。AP1層318とAP2層322との逆平行結合は、AP1層318の磁化をAP2層322とは反対方向で同じくABSに垂直な方向に固定する。キャッピング層328をAFM層326の上に形成して、製造工程において下層を保護すると共にセンサ積層体302を上部シールド306から磁気的に分離することができる。第1のセンサ積層部分308の後側のスペースは、アルミナ等の非磁性電気絶縁充填層404で充填することができる。
【0024】
磁気台座402は、NiFe等、上部シールド306と同様の材料から作成されていてよい。磁気台座402は、磁気シールドの一部として機能すべく、磁気シールド306に磁気的に結合することができる。その結果、AFM層326及びキャッピング層328は有利な点として読み取りギャップに寄与せず、その結果データ密度が増大する。従って、読み取りギャップGは、図4に示すように下部シールド304の上面と台座402の底面の間の距離である。
【0025】
再び図3を参照するに、センサ300は、センサ積層体302の両側に磁気バイアス層330、332を含んでいてよい。バイアス層330、332は、磁気自由層312の磁化を空気ベアリング面(ABS)に平行な方向にバイアスさせる磁気バイアス磁場を提供する。バイアス層330、332は、アルミナ334等の薄い非磁性電気絶縁材料によりセンサ積層体302及び下部シールドから分離されていてよい。磁気バイアス構造330、332は、固有の硬磁性特性の結果として磁化を保持する高保磁度の硬磁性材料から作成されていてよい。代替的に、バイアス層330、332は、軟磁性材料から作成されていてよい。その場合、バイアス構造の磁化は、当該構造の下側で形成された反強磁性材料の交換結合された層により維持することができる。例えば、Ru336等の非磁性材料層、非磁性材料336の上に形成されたIrMn338等の反強磁性材料層、及び反強磁性材料338の層の上に形成された磁性層340である。非磁性層336は、層338を下部シールド304から磁気的に分離する。反強磁性層338は、磁性層340と交換結合されて自身の磁化を固定させる。層340の当該磁化固定は次いで、バイアス層330、332の磁化を空気ベアリング面に平行な所望の方向に維持する。
【0026】
図5〜25に、センサ300等の磁気センサを製造する方法を示し、更にそのようなセンサ構造がもたらす利点を示す。特に図5を参照するに、NiFe等の材料で底部磁気シールド502を形成する。次いで、未形成のバイアス構造の磁化を維持すべく、一連の層が任意選択的に堆積されてもよい。これらの層は、底部シールドに堆積されたRu等の非磁性減結合層504、非磁性減結合層504の上に堆積された反強磁性材料層506、及び反強磁性材料層506の上に堆積されたNiFe等の磁性材料層508を含んでいてよい。
【0027】
任意選択の層504、506、508を堆積させた後で、第1の連続センサ層510が堆積される。当該第1の連続センサ層510は、図3を参照しながら上述した底部センサ積層部分308に対応していてよい。第1の連続センサ層510は、シード層512と、シード層512の上に形成された磁気自由層514と、磁気自由層514の上に堆積された非磁性バリア又はスペーサ層516、及び非磁性スペーサ又は障壁層516の上に形成された第1の磁化固定層(AP1層の第1の部分)の第1の部分518を含んでいてよい。
【0028】
次いで、第1の連続センサ層の上に第1のマスク構造520を形成する。マスク520の構成は、図5の切断線6−6から見た上面図を示す図6を参照することで理解が深まろう。図6に見られるように、マスク520は、ABSと表記された空気ベアリング面を覆うように延在し、下部センサ積層体のストライプ高を画定すべく構成された後縁522まで延在している。
【0029】
ここで図7を参照するに、第1のイオンミリングを実行して、マスク520により保護されていない層を除去する。イオンミリングは底部シールド502に達するまで実行してよい。次いで、アルミナ等の非磁性電気絶縁充填層802を堆積して平坦化処理を実行し、図8に示すように構造が残る。平坦化には、化学機械研磨の実行が含まれ、及びマスクリフトオフ処理が含まれていてよい。
【0030】
前述の記載から分かるように、トラック幅TWを画定するマスキング及びミリング処理は、固定層構造及び反強磁性固定層の残りの部分も含める場合に比べてはるかに薄い構造(連続センサ層510)に対して実行される。これが有利な点として、マスキング及びイオンミリングが、これ以外の場合に可能であるよりもはるかに小さいトラックが画定可能になる。
【0031】
ここで図9、10を参照するに、第2のマスク構造902を形成する。図10は、図9の線10−10から見た上面図である。マスク902は、下部センサ積層部分のストライプ高を画定すべく構成された開口部904を有している。次いで、図11を参照するに、第2のイオンミリングを実行して、マスク902により保護されていない材料を除去する。このイオンミリングは、図11に示す層504、506、508の除去の前に終了していてよい。図12を参照するに、薄い非磁性電気絶縁層1202を堆積させる。層1202は、SiN等の材料であってよく、好適には原子層堆積又はイオンビーム堆積等の共形堆積処理により堆積される。
【0032】
次いで、図13を参照するに、イオンミリング等の指向的材料除去処理は、図13に示す垂直絶縁側壁を残して絶縁層1202の水平に配置された部分を除去するように実行される。次いで、図14を参照するに、磁気バイアス材料1402を、続いてCMP停止層/キャッピングバイアス層1404を堆積させる。バイアス材料1402はNiFeであってよく、キャッピング層は炭素又はダイヤモンド状炭素であってよい。絶縁側壁1202はセンサ層510を不動態化する一方、磁性層508は磁気バイアス層1402と交換結合させるべく露出したままにする。次いで、化学機械研磨(CMP)を実行して構造を平坦化し、第2のマスク902を除去して図15に示すように構造を残す。
【0033】
ここで図16を参照するに、例えば50度〜75度の角度で視射角ミリングを実行して層518を露出させ、次いで第2の連続センサ層1602を堆積させる。これらの層1602は、図3、4に関して上述した上部センサ積層部分310に対応していてよい。連続センサ層はAP1層の第2の部分を形成する磁性層1604を含んでいる。Ru1606等の逆平行結合層を磁性層1604の上に堆積させる。別の磁性層(AP2)1608を逆平行結合層1606の上に堆積させる。IrMn又はPtMn等の反強磁性材料層1610(AFM層)をAP2層1608の上に堆積させ、キャッピング層1612をAFM層1610の上に堆積させる。キャッピング層は、Ta及びRuのうち1個以上を含んでいてよい。
【0034】
次いで、図17を参照するに、第3のマスク構造1702を第2の連続センサ層1602の上に形成する。マスク1702の構成は、図17の切断線18−18から見た上面図を示す図18の方がより分かり易い。マスク1702は、第2の連続センサ層1602の外側境界(ストライプ高及び幅)を画定する。次いで、図19を参照するに、第3のイオンミリングを実行して第3のマスク1702により保護されていない材料を除去する。第3のイオンミリング、底部シールド502に達するまで実行されてよい。次いで、電気絶縁非磁性充填層2002を堆積し、化学機械研磨等の平坦化処理を実行すると図20に示す構造が残る。
【0035】
ここで図21、22を参照するに、第4のマスク構造2101を、空気ベアリング面の領域に配置された開口部2104を有するように形成する。図22は、図21の切断線22−22から見た側面断面図である。図23を参照するに、マスク2102により保護されていないキャッピング層1612及びAFM層1610の部分を除去するのに充分なだけイオンミリングを実行して、AP2層1608で止める。次いで、磁性材料2402を堆積させて化学機械研磨等の平坦化処理は実行して、図24に示すように磁性材料2402が台座を形成している構造が残る。次いで、図25を参照するに、電気メッキ等により上部磁気シールド2502を形成する。上部磁気シールド2502は、磁気台座2402に縫合されて磁気的に接続される。
【0036】
各種の実施形態について上で述べたが、これらが例示目的で提示するに過ぎず、本発明を限定するものではないことを理解されたい。本発明の範囲に含まれる他の実施形態もまた当業者には明らかになろう。従って、本発明の広さと範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれによっても限定されてはならず、以下の請求項及びその等価物だけに従い画定されるべきである。
【符号の説明】
【0037】
4,6,18,22 切断線
100 ディスクドライブ
101 筐体
112 磁気ディスク
113 スライダ
114 スピンドル
115 サスペンション
118 ディスク駆動モーター
119 アクチュエータアーム
121 磁気ヘッドアセンブリ
122 ディスク表面
125 記録チャネル
127 アクチュエータ手段
128 導線
129 制御部
300 センサ
302 センサ積層体
304 下部シールド
306 上部シールド
308 下部センサ積層部分
310 上部センサ積層部分
312 磁気自由層
314 シード層
316 非磁性スペーサ層
318,318a,318b AP1層
320 固定層構造
322 AP2層
324 逆平行結合層
326 AFM層
328 キャッピング層
330,332 バイアス層
402 磁気台座
404 非磁性電気絶縁充填層
502 底部磁気シールド
504 非磁性減結合層
506 反強磁性材料層
508 磁性材料層
510 連続センサ層
512 シード層
514 磁気自由層
516 非磁性スペーサ層
518 第1の磁化固定層の第1の部分
520 マスク
522 後縁
802 非磁性電気絶縁充填層
902 マスク
904 開口部
1202 非磁性電気絶縁層
1402 磁気バイアス材料
1404 CMP停止層/キャッピングバイアス層
1602 連続センサ層
1604 磁性層
1606 逆平行結合層
1608 磁性層
1610 反強磁性材料層
1612 キャッピング層
1702 マスク
2002 電気絶縁非磁性充填層
2101 マスク構造
2102 マスク
2104 開口部
2402 磁性材料
2502 上部磁気シールド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25