(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コンバータ回路が、前記コンバータ回路に入力される入力電流を検出する入力電流検出手段又は前記コンバータ回路から出力される出力電流を検出する出力電流検出手段を備え、
前記診断装置が、前記第1ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が所定値未満であり、前記入力電流検出手段又は前記出力電流検出手段により得られる電流が所定値以上の場合に、当該電流の波形又は前記電流の波形と前記交流電圧検出手段の出力との両方を用いて、前記整流手段及び前記切り替え手段が異常であると診断する請求項1記載のコンバータ装置。
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧において所定の下限値未満となる部分があり、前記平滑手段であるコンデンサのチャージ量が所定値未満であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値未満の場合、前記平滑手段が異常であると診断する請求項1又は2記載のコンバータ装置。
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧において所定の下限値未満となる部分があり、前記平滑手段であるコンデンサのチャージ量が所定値以上であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値未満の場合、
前記突入電流防止手段が異常であるか、
前記平滑手段を充電する交流電源に対する物理的切断による保護手段が異常であるか、
前記平滑手段を充電する交流電源に対する物理的切断による保護手段が異常であり、且つ、前記整流手段が異常であるか、
前記平滑手段を充電する交流電源に対する物理的切断による保護手段が異常であり、且つ、前記コンバータ回路に接続された負荷が短絡しているか、又は、
制御部に必要な交流電源以外の交流電源に対する物理的切断による保護手段が異常であるか、
の何れかの状態であると診断する請求項1乃至4の何れか一項に記載のコンバータ装置。
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧において所定の下限値未満となる部分があり、前記平滑手段であるコンデンサのチャージ量が所定値以上であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値未満の場合、前記制御部に電圧を供給する交流電圧以外の交流電流に対する物理的切断による保護手段が異常であると診断する請求項6記載のコンバータ装置。
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧において所定の下限値未満となる部分があり、前記平滑手段であるコンデンサのチャージ量が所定値以上であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値以上であり、且つ、前記制御部に電圧を供給する交流電圧以外の交流電圧が所定値未満の場合、前記平滑手段を充電する交流電源及び制御部に必要な交流電源以外の交流電源に対する物理的切断による保護手段が異常であり、前記コンバータ回路に接続された負荷が短絡していると診断する請求項6又は7記載のコンバータ装置。
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧において所定の下限値未満となる部分があり、前記平滑手段であるコンデンサのチャージ量が所定値以上であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値以上であり、且つ、前記制御部に電圧を供給する交流電圧以外の交流電圧が所定値以上の場合、前記直流電圧検出手段が異常であると診断する請求項6乃至8の何れか一項に記載のコンバータ装置。
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が正常であり、前記平滑手段を充電する交流電圧を検出する前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値以上である条件下で、前記制御部に電圧を供給する交流電圧以外の交流電圧が所定値未満の場合、
前記制御部に電圧を供給する交流電圧以外の交流電圧を検出する手段が異常であるか、
前記制御部に電圧を供給する交流電流に対する物理的接続による保護手段が異常であるか、
前記平滑手段に充電する交流電源と制御部に必要な交流電源以外の交流電源とに対する物理的接続による保護手段が異常、且つ、前記平滑手段に充電する交流電源と制御部に必要な交流電源以外の交流電源を整流する整流手段が異常であるか、又は、
前記平滑手段に充電する交流電源と制御部に必要な交流電源以外の交流電源とに対する物理的接続による保護手段が異常であり、且つ、前記切り替え手段が異常であるか、
の何れかの状態であると診断する請求項6乃至9の何れか一項に記載のコンバータ装置。
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が正常であり、前記平滑手段を充電する交流電圧を検出する前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値以上であり、前記制御部に電圧を供給する交流電圧以外の交流電圧が所定値以上である条件下で、前記制御部に電圧を供給する交流電圧が所定値未満の場合、前記制御部に電圧を供給する交流電圧を検出する交流電圧検出手段が異常であると診断する請求項6乃至10の何れか一項に記載のコンバータ装置。
前記診断装置が、前記第3ステップにおいて、前記平滑手段に充電された直流電圧を電圧降下させて変動させる制御を行い、前記直流電圧検出手段により得られる変動前の直流電圧と変動後の直流電圧とを比較して、前記突入電流防止手段又は前記切り替え手段が異常であると診断する請求項1乃至11の何れか一項に記載のコンバータ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、コンバータの異常部位とインバータの異常部位を、コンバータとインバータで相関のない手段により特定し、交流機駆動装置の異常部位を正確に特定することを所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係るコンバータ装置は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ回路と、前記コンバータ回路の異常を診断する診断装置とを備え、前記コンバータ回路が、交流電圧を整流する整流手段と、前記整流手段により整流された直流電圧を平滑する平滑手段と、前記平滑手段への突入電流を防止する突入電流防止手段と、交流電圧を供給する経路を前記突入電流防止手段を介した経路とは別経路にする切り替え手段と、前記交流電圧を検出する交流電圧検出手段と、前記直流電圧を検出する直流電圧検出手段とを備え、前記診断装置が、前記突入電流防止手段及び前記切り替え手段を制御して、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧及び/又は前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧によって、前記コンバータ回路の異常部位を特定することを特徴とする。
【0008】
このように構成したコンバータ装置によれば、突入電流防止手段及び切り替え手段を制御して得られる交流電圧検出手段の交流電圧及び/又は直流電圧検出手段の直流電圧の測定結果パターンによってコンバータ回路の異常部位を特定することができる。具体的な異常部位の特定方法は以下のとおりである。
【0009】
前記診断装置が、前記突入電流防止手段をOFFとし、前記切り替え手段をOFFとして異常診断を行う第1ステップと、前記突入電流防止手段をONとし、前記切り替え手段をOFFとして異常診断を行う第2ステップとを、この順で実施することが望ましい。
【0010】
前記診断装置が、前記突入電流防止手段をOFFとし、前記切り替え手段をONとして異常診断を行う第3ステップを、前記第2ステップの後に実施することが望ましい。
【0011】
前記診断装置が、前記第1ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧を用いて、前記直流電圧検出手段の異常を診断することが望ましい。
【0012】
前記コンバータ回路が、前記コンバータ回路に入力される入力電流を検出する入力電流検出手段又は前記コンバータ回路から出力される出力電流を検出する出力電流検出手段を備え、前記診断装置が、前記第1ステップにおいて、前記入力電流検出手段又は前記出力電流検出手段により得られる電流が所定値以上の場合に、当該電流の波形を用いて、前記整流手段又は前記切り替え手段の異常を診断することが望ましい。又は、前記電流の波形と交流電圧検出手段の出力とを組み合わせることにより診断することもできる。
【0013】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記整流手段により直流電圧が生成されている状態で得られる前記直流電圧検出手段の直流電圧と前記交流電圧検出手段の交流電圧との組み合わせにより、前記生成された直流電圧が異常であると診断することが望ましい。
【0014】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が設定範囲であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値未満の場合、前記平滑手段が異常であると診断することが望ましい。
【0015】
前記コンバータ装置が、前記整流手段及び前記平滑コンデンサの間に設けられたリアクトルを備え、前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が設定範囲であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値以上の場合、前記リアクトルが異常であると診断することが望ましい。
【0016】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が設定範囲以下であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値未満の場合、前記突入電流防止手段が異常であると診断する請求項2乃至8の何れか一項に記載のコンバータ装置。
【0017】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が設定範囲以下であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値未満の場合、前記平滑手段を充電する交流電源に対する物理的切断による保護手段が異常であると診断することが望ましい。
【0018】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が設定範囲以下であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値未満の場合、制御部に必要な交流電源以外の交流電源に対する物理的切断による保護手段が異常であると診断することが望ましい。
【0019】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が設定範囲以下であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値未満の場合、前記平滑手段を充電する交流電源に対する物理的切断による保護手段が異常であり、且つ、前記整流手段が異常であると診断することが望ましい。
【0020】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が設定範囲以下であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値未満の場合、前記平滑手段を充電する交流電源に対する物理的切断による保護手段が異常であり、且つ、前記コンバータ回路に接続された負荷が短絡していると診断することが望ましい。
【0021】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が設定範囲以下であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値以上であり、且つ、制御部に必要な交流電源以外の交流電源の交流電圧が所定値未満の場合、前記平滑手段を充電する交流電源及び制御部に必要な交流電源以外の交流電源に対する物理的切断による保護手段が異常であり、前記コンバータ回路に接続された負荷が短絡していると診断することが望ましい。
【0022】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が設定範囲以下であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値以上であり、且つ、制御部に必要な交流電源以外の交流電源の交流電圧が所定値以上の場合、前記直流電圧検出手段が異常であると診断することが望ましい。
【0023】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が正常である条件下で、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値未満の場合、前記交流電圧検出手段が異常であると診断することが望ましい。
【0024】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が正常であり、前記平滑手段を充電する交流電圧を検出する前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値以上である条件下で、制御部に必要な交流電源以外の交流電源の交流電圧が所定値未満の場合、制御部に必要な交流電源以外の交流電圧を検出する手段が異常であると診断することが望ましい。
【0025】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が正常であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値以上である条件下で、制御部に必要な交流電源以外の交流電圧が所定値未満の場合、制御部に必要な交流電源に対する物理的接続による保護手段が異常であると診断することが望ましい。
【0026】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が正常であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値以上である条件下で、制御部に必要な交流電源以外の交流電圧が所定値未満の場合、前記平滑手段に充電する交流電源と制御部に必要な交流電源以外の交流電源とに対する物理的接続による保護手段が異常、且つ、前記平滑手段に充電する交流電源と制御部に必要な交流電源以外の交流電源を整流する整流手段が異常であると診断することが望ましい。
【0027】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が正常であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値以上である条件下で、制御部に必要な交流電源以外の交流電圧が所定値未満の場合、前記平滑手段に充電する交流電源と制御部に必要な交流電源以外の交流電源とに対する物理的接続による保護手段が異常であり、且つ、前記切り替え手段が異常であると診断することが望ましい。
【0028】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が正常であり、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧が所定値以上であり、制御部に必要な交流電源以外の交流電圧が所定値以上である条件下で、制御部に必要な交流電源の交流電圧が所定値未満の場合、制御部に必要な交流電源の交流電圧を検出する交流電圧検出手段が異常であると診断することが望ましい。
【0029】
前記診断装置が、前記第3ステップ又は前記コンバータ回路に接続された負荷動作中において、前記突入電流防止手段及び前記切り替え手段を制御して、前記直流電圧検出手段から得られる直流電圧の一定時間経過後の電圧降下を検出することによって、前記平滑手段の異常を診断することが望ましい。
【0030】
前記診断装置が、前記第3ステップにおいて、前記平滑手段に充電された直流電圧を電圧降下させて変動させる制御を行い、前記直流電圧検出手段により得られる変動前の直流電圧と変動後の直流電圧とを比較して、前記突入電流防止手段又は前記切り替え手段の異常を診断することが望ましい。
【0031】
前記診断装置が、前記第3ステップにおいて、前記平滑手段に充電された直流電圧を電圧降下させて変動させる制御を行い、前記直流電圧検出手段により得られる変動前の直流電圧と、直流電圧を変動させた状態から前記切り替え手段によりリアクトルに対して通電したときの前記直流電圧検出手段により得られた直流電圧とを比較して、前記リアクトルの異常を診断することが望ましい。
【0032】
前記診断装置が、前記第3ステップにおいて、前記平滑手段に充電された直流電圧を電圧降下させて変動させる制御を行い、直流電圧を変動させた状態から前記切り替え手段によりリアクトルに対して通電したときの前記直流電圧検出手段により得られた直流電圧と、前記リアクトルに対して通電した後所定時間経過後の前記直流電圧検出手段により得られた直流電圧とを比較して、前記リアクトルの異常を診断することが望ましい。
【0033】
前記診断装置が、前記コンバータ回路が異常であると診断した場合に、前記突入電流防止手段又は前記切り替え手段のON/OFF動作を2回以上行うことが望ましい。
【0034】
また本発明に係るコンバータ装置は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ回路と、前記コンバータ回路の異常を診断する診断装置とを備え、前記コンバータ回路が、交流電圧を整流する整流手段と、前記整流手段により整流された直流電圧を平滑する平滑手段と、前記平滑手段への突入電流を防止する突入電流防止手段と、交流電圧を供給する経路を前記突入電流防止手段を介した経路とは別経路にする切り替え手段と、前記交流電圧の位相を検出する交流電圧位相検出手段と、前記直流電圧を検出する直流電圧検出手段とを備え、前記診断装置が、前記突入電流防止手段及び前記切り替え手段を制御して、前記交流電圧位相検出手段により得られる出力パターン及び/又は前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧によって、前記コンバータ回路の異常部位を特定することを特徴とする。
【0035】
このように構成したコンバータ装置によれば、突入電流防止手段及び切り替え手段を制御して得られる交流電圧位相検出手段の出力パターン及び/又は直流電圧検出手段の直流電圧によってコンバータ回路の異常部位を特定することができる。具体的な異常部位の特定方法は以下のとおりである。
【0036】
前記コンバータ回路が、前記コンバータ回路に入力される入力電流を検出する入力電流検出手段又は前記コンバータ回路から出力される出力電流を検出する出力電流検出手段を備え、前記診断装置が、前記入力電流検出手段又は前記出力電流検出手段により得られる電流が所定値以上の場合に、当該電流の波形及び前記交流電圧位相検出手段により得られる出力パターンとの組み合わせにより、前記整流手段又は前記切り替え手段の異常を診断することが望ましい。
【0037】
前記診断装置が、前記直流電圧検出手段より得られる直流電圧又は前記交流電圧位相検出手段により得られる出力パターンにより、前記整流手段の異常を診断することが望ましい。
【0038】
前記診断装置が、前記突入電流防止手段をOFFとし、前記切り替え手段をOFFとして異常診断を行う第1ステップと、前記突入電流防止手段をONとし、前記切り替え手段をOFFとして異常診断を行う第2ステップとを、この順で実施することが望ましい。
【0039】
前記診断装置が、前記第1ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が所定値以上の場合に、前記切り替え手段が異常であると診断することが望ましい。
【0040】
前記診断装置が、前記第1ステップにおいて、交流電圧位相検出手段により得られる出力パターンを用いて、前記突入電流防止手段の異常又は前記切り替え手段の異常を診断することが望ましい。
【0041】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記電圧位相検知手段により得られる出力パターンが正常であり、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が所定値以下と判断した場合に、前記整流手段の異常、前記コンバータ回路に接続された負荷の異常、前記直流電圧検出手段の異常、前記平滑手段の異常、前記整流手段及び前記平滑コンデンサの間にリアクトルが設けられている場合にはリアクトルの異常、又は整流電源昇圧手段の異常を診断することが望ましい。
【0042】
前記コンバータ回路が、前記交流電圧位相検知手段と、前記整流手段により整流された直流電圧をリアクトルにより昇圧する整流電圧昇圧手段と、前記コンバータ回路から出力される出力電流を検出する出力電流検出手段とを備え、前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記電圧位相検知手段により得られる出力パターンが正常であり、前記整流電圧昇圧手段を動作させた状態で前記出力電流検出手段からの出力電流が検出されない場合、前記直流電圧検出手段で検出した電圧値の変化により、前記コンバータ回路に接続された負荷又は前記出力電流検出手段が異常であると診断することが望ましい。
【0043】
前記コンバータ装置が、前記交流電圧位相検知手段と、前記整流手段により整流された直流電圧をリアクトルにより昇圧する整流電圧昇圧手段と、前記コンバータ回路から出力される出力電流を検出する出力電流検出手段とを備え、前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記電圧位相検知手段により得られる出力パターンが正常であり、前記整流電圧昇圧手段を動作させた状態での前記出力電流検出手段からの出力電流が異常の場合、前記リアクトルが異常であると診断することが望ましい。
【0044】
前記コンバータ回路が、前記整流手段により整流された直流電圧をリアクトルにより昇圧する整流電圧昇圧手段を備え、前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が設定範囲の場合、前記整流電圧昇圧手段が異常であると診断することが望ましい。
【0045】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が、0V又は設定範囲の場合、前記直流電圧検出手段が異常であると診断することが望ましい。
【0046】
前記コンバータ装置が、前記整流手段により整流された直流電圧をリアクトルにより昇圧する整流電圧昇圧手段と、前記コンバータ回路から出力される出力電流を検出する出力電流検出手段とを備え、前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記整流電圧昇圧手段を動作させた状態で前記直流電圧検出手段から得られる直流電圧が異常であり、且つ、前記出力電流検出手段から得られる出力電流が異常である場合、前記リアクトル又は前記出力電流検出手段が異常であると診断することが望ましい。
【0047】
前記コンバータ装置が、前記整流手段により整流された直流電圧をリアクトルにより昇圧する整流電圧昇圧手段と、前記コンバータ回路から出力される出力電流を検出する出力電流検出手段とを備え、前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記交流電圧位相検出手段からの出力が正常であり、前記整流電圧昇圧手段を動作させた状態で前記直流電圧検出手段から得られる直流電圧が正常であり、且つ、前記出力電流検出手段から得られる出力電流が異常の場合、前記出力電流検出手段が異常であると診断することが望ましい。
【0048】
前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧が所定範囲と判断した場合に、前記直流電圧検出手段が異常であると診断することが望ましい。
【0049】
また、本発明に係るコンバータ装置は、交流電源を入力するための電源入力手段と、前記電源入力手段により入力された交流電圧を整流する整流手段と、前記整流手段により整流された直流電圧を平滑する平滑手段と、前記交流電源入力手段及び前記平滑手段の間に設けられたコイルと、前記平滑手段に突入電流が流れるのを防止する突入電流防止手段と、前記電源入力手段により入力された交流電圧を測定する交流電圧検出手段と、前記平滑手段により平滑された直流電圧を測定する直流電圧検出手段と、前記電源入力手段及び前記突入電流防止手段を制御し、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧又は前記直流電圧検出手段により得られる直流電圧を用いて、前記コイルの正常、短絡又は断線を診断する診断装置と、を備えることを特徴とする。
【0050】
前記コイルが、前記整流手段及び前記平滑手段の間に設けられており、前記診断装置が、前記電源入力手段により交流電源が入力された直後に前記直流電圧検出手段により得られる第1電圧値と、前記平滑手段により安定した後の第2電圧値(前記平滑手段により安定した後に前記直流電圧検出手段により得られる第2電圧値)とを比較して、前記第1電圧値が前記第2電圧値よりも大きく、且つ、時間とともに第2電圧値に収束していく場合には、前記コイルを正常状態と判断し、前記第1電圧値が前記第2電圧値よりも小さい又は所定値以上の差がない場合には、前記コイルを短絡状態と判断し、前記第1出力電圧値が0V又は入力された交流電圧の最大値よりも所定値以下、或いは前記第2出力電圧が低下する場合には、前記コイルを断線状態と判断することが考えられる。
【0051】
例えばワイヤや基板パターン等における逆起電力による誤差要因を低減するためには、前記診断装置が、前記電源入力手段により交流電源が入力された直後から1.0μsec以上経過後に前記直流電圧検出手段により得られた直流電圧値を前記第1電圧値とすることが望ましい。
【0052】
前記診断装置が、前記電源入力手段又は前記突入電流防止手段と、前記直流電圧検出手段又は前記交流電圧検出手段とを用いて、前記コイルに流れる直流電流の大きさを制御することが望ましい。
【0053】
前記診断装置が、平滑された直流電圧値を所望の電圧値にまで低下させた後、前記電源入力手段により前記コイルに直流電流を流すことが望ましい。
【0054】
前記診断装置が、前記コイルに流す直流電流の大きさを変えて、同一のコイルに少なくとも2回以上電流を流す動作を行うことが望ましい。
【0055】
前記交流電源が三相交流電源であり、前記コイルが、前記電源入力手段及び前記整流手段の間において各相に設けられており、前記診断装置が、三相のうちの何れか一相に設けられたコイルのみに入力側から出力側に交流電流が流れるように、少なくとも2回以上前記コイルに交流電流を流す動作を行うことが望ましい。
【0056】
前記交流電源が三相交流電源であり、前記コイルが、前記電源入力手段及び前記整流手段の間において各相に設けられており、前記診断装置が、三相のうち何れか二相のみに電流を流すように前記電源入力手段を制御し、少なくとも2回以上前記コイルに交流電流を流す動作を行うことが望ましい。
【0057】
前記診断装置が、前記交流電源の交流電圧値を監視し、交流電圧値が直流電圧値より高い場合に電源入力手段を動作させることが望ましい。
【0058】
また、本発明に係るインバータ装置は、上アーム側の3個のスイッチング素子と、これらスイッチング素子に直列接続された下アーム側の3個のスイッチング素子とを有するインバータ出力部と、前記上アーム側の各スイッチング素子と前記下アーム側の各スイッチング素子との接続点に接続され、外部負荷が接続される3個の端子と、前記各スイッチング素子をスイッチング制御する制御部と、前記各端子の電圧を検出する電圧検出部と、前記下アーム側の3個のスイッチング素子がオフ状態かつ前記上アーム側のいずれか一つのスイッチング素子がオン状態のときの前記各端子の電圧に基づいて、前記インバータ出力部および前記外部負荷のいずれが断線しているか判定する断線判定部とを備えたものである。
これによると、インバータ出力部に電流を流さずに、すなわち、下アーム側のスイッチング素子をすべてオフにし、上アーム側のスイッチング素子のいずれか一つをオンにした状態で3個の端子の電圧の組み合わせからインバータ出力部および外部負荷のいずれが断線しているかを判定することができる。
【0059】
前記断線判定部は、前記上アーム側のスイッチング素子が一つずつ順にオンしたときの前記各端子の電圧に基づいて、前記インバータ出力部および前記外部負荷のいずれが断線しているか判定してもよい。
これによると、インバータ装置の内部または外部のいずれの相で断線故障が発生しているのかを特定することができる。
【0060】
前記インバータ出力部は、前記上アーム側の各スイッチング素子に駆動電圧を印加するブートストラップ回路をさらに有してもよい。
これによると、上アーム側のスイッチング素子にオン抵抗が低いNPNバイポーラトランジスタなどを採用して、上アーム側のスイッチング素子における電流損失を低減することができる。
【0061】
上記のインバータ装置は、前記断線判定部の判定結果を表示する表示部をさらに備えていてもよい。
上記のインバータ装置は、前記断線判定部の判定結果を記憶する記憶部をさらに備えていてもよい。
上記のインバータ装置は、前記断線判定部の判定結果を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された判定結果を表示する表示部とをさらに備えていてもよい。
前記制御部は、前記断線判定部によって前記インバータ出力部および前記外部負荷のいずれの断線が判定されたとき、前記各スイッチング素子のスイッチング制御を制限してもよい。
【0062】
また、本発明に係るインバータ装置は、直流電圧を交流電圧に変換して交流機に出力するインバータ装置であって、直列接続された上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子を有し、前記交流機に結線されるインバータ回路と、前記下アームスイッチ素子がONされることにより前記上アームスイッチ素子を駆動するための電圧が充電されるコンデンサを有し、当該コンデンサに充電された電圧により前記上アームスイッチ素子を駆動するブートストラップ回路と、前記ブートストラップ回路のコンデンサに充電された電圧を検出するコンデンサ電圧検出手段と、前記上アームスイッチ素子及び前記下アームスイッチ素子のON/OFFを制御して、前記コンデンサ電圧検出手段により得られた電圧値を用いて、前記インバータ回路の異常、及び、前記交流機又は前記結線の異常を診断する診断装置と、を備えることを特徴とする。
【0063】
このように構成したインバータ装置によれば、診断装置が、上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子のON/OFFを制御して、コンデンサ電圧検出手段により得られた電圧値を用いて、インバータ回路の異常、及び、交流機又は結線の異常を診断するので、ブートストラップ回路のコンデンサを有効活用することにより、複数の故障が同時に発生した場合でも、正確に故障個所と故障内容を診断可能にすることができる。
【0064】
診断装置の具体的な診断内容としては、前記インバータ回路が、直列接続された上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子からなるハーフブリッジ回路を複数備え、前記ブートストラップ回路が、前記複数のハーフブリッジ回路の上アームスイッチ素子毎に設けられており、前記診断装置が、前記複数のハーフブリッジ回路の下アームスイッチ素子を1つずつ択一的にONさせるとともに、それにより前記コンデンサ電圧検出手段により得られた電圧値の測定結果パターンから、前記下アームスイッチ素子の開放故障、及び、前記交流機又は前記結線の異常を診断することが望ましい。
【0065】
前記診断装置が、前記下アームスイッチ素子がOFFの状態で、前記コンデンサ電圧検出手段により所定値以上のコンデンサ電圧が検出された場合に、前記下アームスイッチ素子が短絡故障していると診断することが望ましい。
【0066】
前記インバータ装置が、前記インバータ回路を流れる電流を検出するインバータ電流検出手段を備え、前記診断装置が、前記下アームスイッチ素子をONさせたときに、前記インバータ電流検出手段より所定値以上の短絡電流を検出した場合に、前記上アームスイッチ素子が短絡故障していると診断することが望ましい。ここで、インバータ電流検出手段としては、前記下アームスイッチ素子に接続されたシャント抵抗を備え、当該シャント抵抗を流れる電流を検出するものであることが考えられる。
【0067】
診断装置の具体的な診断内容としては、前記インバータ装置が、前記インバータ回路を流れる電流を検出するインバータ電流検出手段を備え、前記診断装置が、前記複数のハーフブリッジ回路の下アームスイッチ素子を1つずつ択一的にONさせるとともに、それにより前記コンデンサ電圧検出手段から得られたコンデンサ電圧値の測定結果パターンによって、前記下アームスイッチ素子の開放故障、及び、前記交流機又は前記結線の異常を診断する第1ステップと、前記複数のハーフブリッジ回路毎に、前記上アームスイッチ素子及び前記下アームスイッチ素子をONして短絡させて、前記インバータ電流検出手段により電流が検出されない場合に、前記上アームスイッチ素子が開放故障していると診断する第2ステップとをこの順で実施することが望ましい。
【0068】
診断装置の具体的な診断内容としては、前記インバータ装置が、前記インバータ回路を流れる電流を検出するインバータ電流検出手段を備え、前記診断装置が、前記複数のハーフブリッジ回路の下アームスイッチ素子を1つずつ択一的にONさせるとともに、それにより前記コンデンサ電圧検出手段から得られたコンデンサ電圧値の測定結果パターンによって、前記下アームスイッチ素子の開放故障、及び、前記交流機又は前記結線の異常を診断する第1ステップと、前記複数のハーフブリッジ回路の上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子をON/OFFを制御して前記交流機に電流を流し、前記インバータ電流検出手段から得られた電流によって、前記上アームスイッチ素子が開放故障及び前記交流機又は前記結線の異常を診断する第2ステップと、をこの順に実施することが望ましい。
【0069】
診断装置の具体的な診断内容としては、前記インバータ回路を流れる電流を検出するインバータ電流検出手段を備え、前記診断装置が、前記複数のハーフブリッジ回路の下アームスイッチ素子を1つずつ択一的にONさせるとともに、それにより前記コンデンサ電圧検出手段から得られたコンデンサ電圧値の測定結果パターンによって、前記下アームスイッチ素子の開放故障、及び、前記交流機又は前記結線の異常を診断する第1ステップと、前記複数のハーフブリッジ回路毎に、前記上アームスイッチ素子及び前記下アームスイッチ素子をONして短絡させて、前記インバータ電流検出手段により電流が検出されない場合に、前記上アームスイッチ素子が開放故障していると診断する第2ステップと、前記複数のハーフブリッジ回路の上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子をON/OFFを制御して前記交流機に電流を流し、前記インバータ電流検出手段から得られた電流値によって、前記上アームスイッチ素子が開放故障及び前記交流機又は前記結線の異常を診断する第3ステップと、をこの順に実施することが望ましい。
【0070】
すなわち本発明に係るインバータ装置は、直流電圧を交流電圧に変換して交流機に出力するインバータ装置であって、直列接続された上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子を有し、前記交流機に結線されるインバータ回路と、前記上アームスイッチ素子及び前記下アームスイッチ素子をON/OFF制御して、前記インバータ回路の異常を診断する診断装置と、を備え、前記診断装置が、前記上アームスイッチ素子及び前記下アームスイッチ素子を、前記交流機が正回転するパターンでON/OFF制御することを特徴とする。
【0071】
このように構成したインバータ装置によれば、診断装置が、上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子を、交流機が正回転するパターンでON/OFF制御して、インバータ回路の異常を診断するので、交流機に損傷を与えることなく、通常運転に用いられる電流検出手段を用いてインバータ回路の異常を診断することができる。このとき、交流機を正回転させる電流を流しているので、インバータ回路に通常設けられている電流検出手段の精度でも誤検出しないレベルの電流を流すことができ、診断ミスを防ぐことができる。
【0072】
診断装置の具体的な診断内容としては、前記インバータ回路を流れる電流を検出するインバータ電流検出手段を備え、前記診断装置が、前記電流検出手段から得られた電流値から前記上アームスイッチ素子及び前記下アームスイッチ素子の開放故障を診断することが望ましい。ここで、インバータ電流検出手段としては、前記下アームスイッチ素子に接続されたシャント抵抗を備え、当該シャント抵抗を流れる電流を検出するものであることが考えられる。
【0073】
前記インバータ回路が、直列接続された上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子からなるハーフブリッジ回路を3つ備えた三相インバータ回路であり、前記インバータ電流検出手段が、少なくとも2相以上の相電流を検出するものであることが望ましい。
【0074】
すなわち本発明に係るインバータ装置は、直流電圧を交流電圧に変換して交流機に出力するインバータ装置であって、直列接続された上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子を有し、前記交流機に結線されるインバータ回路と、前記インバータ回路を流れる電流を検出する電流検出手段と、前記インバータ回路の異常、及び、前記交流機又は前記結線の異常を診断する診断装置とを備え、前記診断装置が、前記上アームスイッチ素子及び前記下アームスイッチ素子をON/OFF制御し、前記電流検出手段により得られた電流値から前記交流機又は前記結線の短絡故障を診断する第1段階と、前記上アームスイッチ素子及び前記下アームスイッチ素子を所定のON/OFFパターンで制御し、前記電流検出手段により得られた電流値の測定結果パターンから、前記各スイッチ素子の開放故障を診断する第2段階とを実施し、前記第1段階が、前記上アームスイッチ素子及び前記下アームスイッチ素子のON/OFFを制御して前記交流機に単パルス電圧を出力するものであることを特徴とする。
【0075】
このように構成したインバータ装置によれば、診断装置が、上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子をON/OFF制御して交流機に単パルス電圧を出力して得られた電流値から交流機又は結線の短絡故障を診断するので、インバータ回路に損傷を与えることなく、通常運転に用いられる電流検出手段を用いて負荷側(交流機又は結線)の短絡故障を診断することができる。また、診断装置が、上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子を所定のON/OFFパターンで制御して得られた電流値の測定結果パターンから、各スイッチ素子の開放故障を診断するので、インバータ回路に損傷を与えることなく、通常運転に用いられる電流検出手段を用いてインバータ回路のスイッチ素子の開放故障を診断することができる。
【0076】
なお、第2段階においては、診断装置が、上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子を、交流機が正回転するパターンでON/OFF制御することが特に望ましい。
【0077】
前記単パルス電圧の具体的な実施の態様としては、そのパルス幅が、前記交流機又は前記結線が短絡故障していない場合には、前記電流検出手段により得られる電流値が所定値以上の短絡電流とならず、前記交流機又は前記結線が短絡故障している場合には、前記電流検出手段により得られる電流値が所定値以上の短絡電流となるように設定されていることが望ましい。
これならば、インバータ回路に設けられた過電流保護手段を用いて交流機又は結線の短絡故障を診断することができる。
【0078】
前記電流検出手段から得られる電流値が所定値以上の短絡電流か否かを判断することで、各スイッチ素子の開放故障の他に、前記交流機又は前記結線の開放故障、或いは前記電流検出手段の故障を診断することもできる。したがって、前記診断装置が、前記第2段階において、前記各スイッチ素子の開放故障の他に、前記交流機又は前記結線の開放故障、或いは前記電流検出手段の故障を診断するものであることが望ましい。
【0079】
前記診断装置の具体的な診断手順としては、前記インバータ回路が、直列接続された上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子からなるハーフブリッジ回路を3つ備えた三相インバータ回路であり、前記診断装置が、前記第2段階において、前記上アームスイッチ素子及び前記下アームスイッチ素子を制御して、各相間に順繰りに電流を流すことにより、前記各スイッチ素子の開放故障を診断するものであり、前記第2段階の各相間に電流を流す前に、当該相間に前記第1段階の単パルス電圧の出力を行うことが望ましい。
【0080】
前記電流検出手段が、少なくとも2相以上の相電流を検出するものであることが望ましい。また、電流検出手段としては、前記下アームスイッチ素子に接続されたシャント抵抗を備え、当該シャント抵抗を流れる電流を検出するものであることが考えられる。
【0081】
すなわち本発明に係る交流機駆動装置は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ回路と、前記コンバータ回路が出力する直流電圧をスイッチ素子により交流電圧に変換するとともに、交流機が結線されるインバータ回路と、前記コンバータ回路、前記インバータ回路及び前記交流機又は前記結線の異常を診断する診断装置とを備え、前記診断装置が、前記コンバータ回路の異常を診断する第1ステップと、前記インバータ回路のスイッチ素子の短絡故障を診断する第2ステップと、前記インバータ回路のスイッチ素子の開放故障、及び、前記交流機又は前記結線の異常を診断する第3ステップとを、この順で実施することを特徴とする。
【0082】
このように構成したインバータ装置によれば、診断装置がコンバータ回路の異常を診断する第1ステップと、インバータ回路のスイッチ素子の短絡故障を診断する第2ステップと、インバータ回路のスイッチ素子の開放故障、及び、前記交流機又は前記結線の異常を診断する第3ステップとを、この順で実施するので、各部に損傷を与えることなく、正確に故障診断箇所を特定することができる。したがって、交流機駆動装置の主要部品の故障の有無と個所を診断することが可能となり、交流機駆動装置に精通していない人でも簡単に不具合個所を検査できるようなる。
【0083】
具体的には、インバータ回路が異常の場合、例えば、交流機に電流を流すためのインバータ回路のスイッチ素子が短絡故障していた場合、交流機に電流を流そうとスイッチを導通状態にすると電流は交流機に流れることなく導通状態のスイッチ素子と短絡故障したスイッチ素子の間で短絡電流が流れる。また、インバータ回路のスイッチ素子が正常状態であっても、交流機が短絡又は結線が短絡していた場合も同様にスイッチ素子間で短絡電流が流れる。つまり、インバータ回路のスイッチ素子に短絡故障があった場合と交流機の短絡故障又は結線の短絡故障とは区別することができない。そのため、交流機に電流を流して交流機の異常又は結線異常を診断する第3ステップの前に、インバータ回路の短絡故障を診断する第2ステップを行うことで、交流機又は結線の異常を正しく診断することができる。
また、インバータ回路の故障診断を正しく行うためには、コンバータ回路が正常に動作し、インバータ回路に正常な直流電源が供給される必要がある。そこでインバータ回路の短絡故障を診断する第2ステップの前に、コンバータ回路が正常動作することを確認する第1ステップを先に実施する。
【0084】
第1ステップの具体的な診断内容としては、前記コンバータ回路が、交流電圧を整流する整流手段と、前記整流手段により整流された直流電圧を平滑する平滑手段とを備え、前記交流機駆動装置が、前記平滑手段への突入電流を防止する突入電流防止手段と、交流電圧を供給する経路を前記突入電流防止手段を介した経路とは別経路にする切り替え手段とを備え、前記診断装置が、前記第1ステップにおいて、前記突入電流防止手段及び前記切り替え手段を制御して経路を切り替えることにより、前記コンバータ回路の異常を診断するものであることが望ましい。
【0085】
コンバータ回路への電源投入時は、平滑手段(例えば平滑コンデンサ)へ大きな突入電流が流れる場合があり、通常、コンバータ回路には突入電流を防止するために突入電流防止手段が設けられている。ただし、交流機運転時は電流が流れるのを阻害する要因になるため、突入電流防止手段を迂回する経路に切り替える切り替え手段を併せもつ。ところが、コンバータ回路の他の要素に異常がある場合に、前記切り替え手段を動作させると、過大な突入電流が発生し、主要部品を破損させてしまう場合がある。
このため、前記診断装置が、前記切り替え手段を制御する前に、前記コンバータ回路に入力される交流電圧が正常か否かを確認することが望ましい。
【0086】
その後、診断装置は、コンバータ回路に入力される交流電圧が正常である場合に、突入電流防止手段を動作させ、平滑手段(例えば平滑コンデンサ)を所定の第1直流電圧まで充電させる。そして、診断装置は、平滑手段(例えば平滑コンデンサ)に充電された直流電圧が所定の第1直流電圧に到達したことを確認した後、切り替え手段を動作させて平滑手段に充電された直流電圧が所定の第2直流電圧になることを確認する。これら一連の動作により、平滑手段に充電された直流電圧が第1直流電圧又は第2直流電圧にならない場合には、コンバータ回路に異常があると判断する。
【0087】
第2ステップの具体的な診断内容としては、前記インバータ回路が、直列接続された上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子からなるハーフブリッジ回路を複数備え、前記診断装置が、前記第2ステップにおいて、前記複数のハーフブリッジ回路毎に、前記2つのスイッチ素子の一方をONさせて前記インバータ回路に所定値以上の短絡電流が流れた場合に、前記2つのスイッチ素子の他方が短絡故障していると診断することが望ましい。
【0088】
第3ステップにおける具体的な診断内容としては、前記診断装置が、前記第3ステップにおいて、前記スイッチ素子をON/OFFを制御して前記交流機に電流を流し、前記交流機にかかる電圧又は前記交流機に流れる電流によって、スイッチ素子の開放故障、及び、前記交流機又は前記結線の異常を診断することが望ましい。
【0089】
第3ステップにおける具体的な診断内容としては、前記診断装置が、前記第3ステップにおいて、前記スイッチ素子をON/OFFを制御して前記交流機に電流を流し、前記インバータ回路を流れる電流によって、スイッチ素子の開放故障、及び、前記交流機又は前記結線の異常を診断することが望ましい。
【0090】
また、切り替え手段が短絡故障していないか診断する方法として、平滑手段である平滑コンデンサの放電時間を計測することが考えられる。放電用抵抗による自然放電により平滑コンデンサは放電させることになる。放電用抵抗は常時電力を消費するため、電力を削減するために200kΩなど大きな抵抗値にする場合が多い。そのため、一定の電圧まで放電するための時間は長くなり、診断時間が長くなるという問題がある。
これを改善するために、交流機に電流を流し平滑コンデンサの電荷を強制放電させれば、診断時間を短くすることができる。ところが、コンバータ回路の故障を診断する第1ステップではインバータ回路及び交流機が正常か否か分からないため、安易に交流機に電流を流すことができない。
そこで、前記コンバータ回路、前記インバータ回路、前記交流機及び前記結線が正常なことを確認した後に、前記インバータ回路及び前記交流機に電流を流す強制放電を行い、当該放電による前記平滑手段の直流電圧の時間的変化から、前記切り替え手段の異常を診断することが望ましい。これにより、切り替え手段の診断時間を短くすることができる。なお、切り替え手段が短絡故障をしていた場合でも、その他に故障が無ければ直流電圧は正常時と同じ電圧を供給できるため、第3ステップ後に行っても問題は無い。
【0091】
前記診断装置が、前記各ステップにおいて、異常を診断した場合に、次のステップに移行せず、故障診断モードを終了することが望ましい。
【発明の効果】
【0092】
このように構成した本発明によれば、コンバータ回路に接続されたインバータ回路からの出力を用いることなく、既存のコンバータ回路の回路構成を有効に活用して異常部位を特定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0094】
<<第1実施形態>>
以下に本発明に係るコンバータ装置の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0095】
本実施形態に係るコンバータ装置100は、例えば三相モータ等の三相交流機ADに三相交流電圧(U相、V相、W相)を供給して駆動する交流機駆動装置に用いられるものであり、
図1に示すように、三相交流電源200(R相電源、S相電源、T相電源)からの三相交流電圧(R相、S相、T相)を直流電圧に変換してインバータ回路INVに供給するものである。
【0096】
具体的にコンバータ装置100は、三相交流電源200からの三相交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ回路2と、当該コンバータ回路2の異常を診断する診断装置3とを備えている。
【0097】
コンバータ回路2は、三相交流電圧を整流する整流手段21と、当該整流手段21により整流された直流電圧を平滑する平滑手段22とを備えている。前記整流手段21は、三相フルブリッジダイオード回路である。また、前記平滑手段22は、整流手段21の出力側である直流端子間に接続された平滑コンデンサである。本実施形態では、直流端子間に、直接接続された2つの平滑コンデンサ22a、22bを設けている。
【0098】
また、コンバータ回路2には、前記平滑コンデンサ22a、22bへの突入電流を防止する突入電流防止手段4と、交流電圧を供給する経路を突入電流防止手段4を介した経路とは別経路にする切り替え手段5とを備えている。
【0099】
突入電流防止手段4は、インラッシュリレー41及び抵抗42を有するものであり、本実施形態では、一端が三相交流電源200の中性相(N相)に接続され、他端が2つの平滑コンデンサ22a、22bの接続点に接続されている。また、インラッシュリレー41は、例えば電磁リレーなどの機械式スイッチである。この突入電流防止手段4により、インラッシュリレー41をONすることによって、R相の交流電圧が整流手段21により直流電圧に整流されて平滑コンデンサ22a、22bに印加されて、平滑コンデンサ22a、22bが充電される。
【0100】
切り替え手段5は、コンバータ回路2における整流手段21の入力側と三相交流電源200との間に設けられ、三相交流電圧をコンバータ回路2に入力するためのメインリレー5a、5bである。具体的にメインリレー5a、5bは、三相のうちS相における整流手段21の入力側とT相における整流手段21の入力側とに設けられた例えば電磁リレーなどの機械式スイッチである。
【0101】
このように構成されたコンバータ回路2において、整流手段21及び平滑コンデンサ22aの間にリアクトル23が設けられている。また、整流手段21及び平滑コンデンサ22bの間には、直流電流検出手段6が設けられている。さらに、平滑コンデンサ22a、22bの出力側には、平滑コンデンサ22a、22bにかかる直流電圧を検出する直流電圧検出手段7が設けられている。
【0102】
また、コンバータ回路2の切り替え手段5の入力側には、コンバータ回路2に入力される三相交流電圧を各相毎に検出する交流電圧検出手段8R、8S、8Tが設けられている。本実施形態では、R相交流電圧は、平滑コンデンサ22a、22bを充電する交流電圧であり、T相交流電圧は、コンバータ回路2の突入電流防止手段4及び切り替え手段5等を制御する又はインバータ回路INVの駆動回路を制御する制御部Cに必要な電圧を供給する交流電圧である。S相交流電圧は、平滑コンデンサ22a、22bを充電する交流電圧及び制御部Cに必要な電圧を供給する交流電圧以外の交流電圧である。なお、各相における交流電圧検出手段8R、8S、8Tの接続点と交流電源200との間には、過電流による各部の故障を物理的切断により保護する保護手段(ヒューズ等)FR、FS、FTが設けられている。
【0103】
診断装置3は、突入電流防止手段4及び切り替え手段5を制御して、交流電圧検出手段8R、8S、8Tにより得られる交流電圧及び直流電圧検出手段7により得られる直流電圧の測定結果パターンによって、コンバータ回路2の異常部位を特定するものである。
【0104】
具体的に診断装置3は、(1)突入電流防止手段をOFFとし、切り替え手段5をOFFとして異常診断を行う第1ステップと、(2)突入電流防止手段4をONとし、切り替え手段5をOFFとして異常診断を行う第2ステップと、(3)突入電流防止手段4をOFFとし、前記切り替え手段5をONとして異常診断を行う第3ステップと、をこの順で実施することにより、コンバータ回路2の異常部位を特定する。
【0105】
以下、各ステップについて詳述する。
<第1ステップ>
診断装置3は、
図2に示すように、診断モードスタート後、突入電流防止手段4及び前記切り替え手段5をともにOFFにして、整流手段21への交流電圧を遮断する(Sa1)。この状態において、診断装置3は、直流電圧検出手段7により得られる直流電圧VDCが所定の上限値以上か否かを判断する(Sa2;直流電圧過電圧Check)。なお、所定の上限値とはシステムに応じたあらかじめ定められた第1の値を言う。
【0106】
そして、診断装置3は、直流電圧検出手段7により得られた直流電圧VDCが所定の上限値以上の場合には、直流電圧検出手段7を構成する分圧抵抗が短絡故障していると診断する(Sa3)。
【0107】
一方、直流電圧検出手段7により得られた直流電圧VDCが所定の上限値未満の場合には、コンバータ回路2の運転履歴をチェックする(Sa4;運転履歴Check)。そして、診断装置3は、当該運転履歴において、直流電流検出手段6により得られた直流電流が所定値以上の場合に、当該直流電流の波形を用いて、整流手段21又は切り替え手段5の異常を診断する。具体的に診断装置3は、前記直流電流の波形においてパルス抜けを検出した場合には、整流手段21のブリッジダイオード或いはメインリレー5a又は5bが開放故障していると診断する。
【0108】
また、診断装置3は、運転履歴において、エラー有りと診断した場合には、直流電圧検出手段7により得られた直流電圧VDCが所定の下限値未満となる部分が有るか否かを判断する(Sa5;直流電圧低電圧Check)。なお、所定の下限値とはシステムに応じたあらかじめ定められた第2の値を言う。
【0109】
そして、診断装置3は、直流電圧検出手段7により得られた直流電圧VDCが所定の下限値未満となる部分が有る場合には、整流手段21におけるR相のブリッジダイオードが開放故障していると診断する(Sa6)。
【0110】
一方で、直流電圧検出手段7により得られた直流電圧VDCが所定の下限値未満となる部分が無い場合には、インラッシュリレー41をONとして(Sa7)、メインリレー5a、5bを短時間で複数回ON/OFF制御(例えばON→OFF→ON→OFF→ON)してメインリレー5a、5bのダスト排出制御を行う(Sa8)。その後、インラッシュリレー41をOFFとして(Sa9)、診断装置3は、3相不均衡チェックを行う(Sa10)。
【0111】
そして、診断装置3は、三相不均衡が生じていれば、整流手段21におけるS相又はT相のブリッジダイオードが開放故障している又はメインリレー5a又は5bが開放故障していると診断する(Sa11)。なお、診断装置3は、三相不均衡が生じていなければ、運転履歴をクリアする。
【0112】
前記運転履歴チェックにおいて、エラー無しと診断した場合、診断装置3は、直流電流検出手段6により得られた直流電流のセンター値が所定範囲内か否かを判断する(Sa12)。ここで、診断装置3は、直流電流のセンター値が所定範囲外であれば、直流電流検出手段6が異常であると診断する(Sa13)。一方、直流電流のセンター値が所定範囲内であれば、第2ステップに移行する。
【0113】
以上の第1ステップにより、第1ステップにおいて、直流電圧検出手段7を構成する分圧抵抗の短絡故障、整流手段21のブリッジダイオードの開放故障、メインリレー5a又は5bの開放故障、整流手段21におけるR相のブリッジダイオードの開放故障、整流手段21におけるS相又はT相のブリッジダイオードの開放故障、直流電流検出手段6の異常などを診断することができる。
【0114】
<第2ステップ>
診断装置3は、
図3に示すように、第2ステップにおいて、インラッシュリレー41をONにして(Sb1)、直流電圧検出手段7により得られた直流電圧が所定の下限値未満となる部分が有るか否かを判断する(Sb2;直流電圧低電圧Check)。
【0115】
そして、診断装置3は、前記直流電圧が所定の下限値未満の部分が有ると判断した場合には、平滑コンデンサ22a、22bのチャージ量が、あらかじめ定められた第3の値か否かを判断する(Sb3;直流電圧低電圧Check&チャージ量Check)。
【0116】
ここで、診断装置3は、平滑コンデンサ22a、22bのチャージ量があらかじめ定められた第3の値未満の場合には、R相の交流電圧検出手段8Rにより得られるR相交流電圧が異常か否かを判断する(Sb4;R相電圧波形異常Check)。なお、この交流電圧波形異常の判断は、交流電圧検出手段8Rにより得られた交流電圧の波形を解析して行う。このとき、診断装置3は、R相交流電圧波形が異常の場合には、平滑コンデンサ22a、22bが短絡故障していると診断する(Sb5)。また、診断装置3は、R相交流電圧波形が正常の場合には、リアクトル23が開放故障していると診断する(Sb6)。
【0117】
一方で、診断装置3は、平滑コンデンサ22a、22bのチャージ量が、あらかじめ定められた第3の値以上の場合には、R相の交流電圧検出手段8Rにより得られるR相交流電圧波形が異常か否かを判断する(Sb7)。このとき、診断装置3は、R相交流電圧波形が異常の場合には、交流電圧検出手段8Rにより得られた各相の交流電圧の波形を解析して、インラッシュリレー41の開放故障、R相保護手段FRの開放故障及び整流手段21のR相のブリッジダイオードの短絡故障、R相保護手段FRの開放故障、R相保護手段FR及びS相保護手段FSの開放故障、或いは、R相保護手段FRの開放故障及び交流機の短絡故障を診断する(Sb8)。
【0118】
診断装置3は、前記ステップSb7において、R相交流電圧波形が異常でない場合には、S相の交流電圧検出手段8Sにより得られるS相交流電圧波形が異常か否かを判断する(Sb9)。そして、診断装置3は、S相交流電圧波形が異常の場合には、S相保護手段FSが開放故障しており、且つ、交流機が短絡故障していると診断する(Sb10)。また、診断装置3は、S相交流電圧波形が異常ではない場合には、直流電圧検出手段7を構成する分圧抵抗が開放故障していると診断する(Sb11)。
【0119】
さらに、診断装置3は、前記ステップSb2(直流電圧低電圧Check)において、前記直流電圧が所定の下限値未満となる部分が無い場合には、R相の交流電圧検出手段8Rにより得られるR相交流電圧波形が異常か否かを判断する(Sb12)。そして、診断装置3は、R相交流電圧波形が異常の場合には、R相の交流電圧検出手段8Rが異常であると診断する(Sb13)。
【0120】
一方で、診断装置3は、R相交流電圧波形が異常でない場合には、S相の交流電圧検出手段8Sにより得られるS相交流電圧波形が異常か否かを判断する(Sb14)。そして、診断装置3は、S相交流電圧波形が異常の場合には、S相保護手段FSの開放故障及び整流手段21のS相のブリッジダイオードの短絡故障、S相保護手段FSの開放故障及びメインリレー5a、5bの開放故障、S相の交流電圧検出手段8Rの異常、或いは、S相保護手段FSの開放故障を診断する(Sb15)。
【0121】
また、診断装置3は、前記ステップSb14において、T相交流電圧波形が異常でない場合には、T相の交流電圧検出手段8Tにより得られるT相交流電圧波形が異常か否かを判断する(Sb16)。そして、診断装置3は、T相交流電圧波形が異常の場合には、T相の交流電圧検出手段8Tが異常であると診断する(Sb17)。一方、T相交流電圧波形が異常でない場合には、第3ステップに移行する。
【0122】
以上の第2ステップにより、第2ステップにおいて、平滑コンデンサ22a、22bの短絡故障、リアクトル23の開放故障、インラッシュリレー41の開放故障、R相保護手段FSの開放故障、整流手段21のR相のブリッジダイオードの短絡故障、S相保護手段FSの開放故障、交流機の短絡故障、直流電圧検出手段7を構成する分圧抵抗の開放故障、R相の交流電圧検出手段8Rの異常、整流手段21のS相のブリッジダイオードの短絡故障、メインリレー5a、5bの開放故障、S相の交流電圧検出手段8Sの異常、T相の交流電圧検出手段8Tの異常などを診断することができる。
【0123】
<第3ステップ>
診断装置3は、
図4に示すように、
第2ステップの後に、インラッシュリレー41をOFFとして(Sc1)、平滑コンデンサ22a、22bに充電された電荷を所定時間放電させる(Sc2)。そして、診断装置3は、直流電圧検出手段7から得られる直流電圧が、前記所定時間による電圧降下によって、所定値未満となるか否かを判断する(Sc3)。
【0124】
そして、診断装置3は、前記放電後に得られる直流電圧が所定値未満の場合には、平滑コンデンサ22a、22bが開放故障していると診断する(Sc4)。一方で、前記放電後に得られる直流電圧が所定値以上の場合には、メインリレー5a、5bをONにする(Sc5)。
【0125】
その後、診断装置3は、直流電圧検出手段7から直流電圧を取得する(Sc6)。そして、診断装置3は、メインリレー5a、5b及びインラッシュリレー41をOFFにするとともに、平滑コンデンサ22a、22bに充電された電荷を強制放電して直流電圧を電圧降下させて変動させる(Sc7)。
【0126】
ここで、診断装置3は、前記ステップSc6において得られた変動前の直流電圧と、前記ステップSc7により得られた変動後の直流電圧とを比較して、インラッシュリレー41又はメインリレー5a、5bの開放故障を診断する。具体的には、所定時間(あらかじめ定められた第4の値)で下降電圧(変動前の直流電圧及び変動後の直流電圧の差)が、あらかじめ定められた第5の値以上となるか否かで判断する(Sc8)。診断装置3は、所定時間(あらかじめ定められた第4の値)以内に下降電圧が所定値以上とならなければ、インラッシュリレー41又はメインリレー5a、5bが開放故障していると診断する(Sc9)。
【0127】
また、診断装置3は、所定時間(あらかじめ定められた第4の値)に下降電圧が所定値以上となった場合に、接続負荷を切り離して、メインリレー5a、5bをONにする(Sc10)。そして、診断装置3は、メインリレー5a、5bをONした後所定時間(あらかじめ定められた第6の値)経過後に、直流電圧検出手段7から直流電圧を取得する(Sc11)。この直流電圧は、電圧降下した状態からリアクトル23に対して通電した直後の過渡状態の直流電圧である。
【0128】
さらに、診断装置3は、前記ステップSc11の後所定時間(あらかじめ定められた第7の値)経過後に、直流電圧検出手段7から直流電圧を取得する(Sc12)。この直流電圧は、電圧降下した状態からリアクトル23に対して通電した後の安定状態の直流電圧である。
【0129】
そして、診断装置3は、前記ステップSc6において得られた変動前の直流電圧V(a)と、前記ステップSc11により得られた過渡状態の直流電圧V(b)とを比較するとともに、前記過渡状態の直流電圧V(b)と、前記ステップSc12により得られた安定状態の直流電圧V(c)とを比較して、V(b)<V(a)+k、及び、V(b)<V(c)+k(kは、正の調整係数)を満たすか否かを判断する(Sc13)。そして、診断装置3は、前記関係を満たす場合には、リアクトル23が短絡故障していると診断する(Sc14)。一方、診断装置3は、前記関係を満たさない場合には、正常であると診断する。なお、リアクトル23の短絡故障としては、V(b)<V(a)+k、及び、V(b)<V(c)+k(kは、正の調整係数)の両方を用いる必要はなく、何れか一方の関係を満たす場合に、リアクトル23が短絡故障していると診断しても良い。
【0130】
以上の第3ステップにより、第3ステップにおいて、平滑コンデンサ22a、22bの開放故障、インラッシュリレー41又はメインリレー5a、5bの開放故障、リアクトル23の短絡故障などを診断することができる。
【0131】
このように構成したコンバータ装置100によれば、突入電流防止手段4及び切り替え手段5を制御して得られる交流電圧検出手段8R、8S、8Tの交流電圧及び/又は直流電圧検出手段7の直流電圧の測定結果パターンによってコンバータ回路2の異常部位を特定することができる。したがって、コンバータ回路2に接続されたインバータ回路INVからの出力を用いることなく、既存のコンバータ回路2の回路構成を有効に活用して異常部位を特定することができる。
【0132】
<<第2実施形態>>
以下に本発明に係るコンバータ装置の第2実施形態について図面を参照して説明する。
【0133】
本実施形態に係るコンバータ装置100は、例えば三相モータ等の三相交流機に三相交流電圧(U相、V相、W相)を供給して駆動する交流機駆動装置に用いられるものであり、
図5に示すように、単相交流電源300からの単相交流電圧を直流電圧に変換してインバータ回路3に供給するものである。
【0134】
具体的にコンバータ装置100は、単相交流電源300からの単相交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ回路2と、当該コンバータ回路2の異常を診断する診断装置3とを備えている。
【0135】
コンバータ回路2は、単相交流電圧を整流する整流手段21と、当該整流手段21により整流された直流電圧を平滑する平滑手段22とを備えている。前記整流手段21は、単相フルブリッジダイオード回路である。また、前記平滑手段22は、整流手段21の出力側である直流端子間に接続された平滑コンデンサである。
【0136】
また、コンバータ回路2には、前記平滑コンデンサ22への突入電流を防止する突入電流防止手段4と、交流電圧を供給する経路を突入電流防止手段4を介した経路とは別経路にする切り替え手段5とを備えている。
【0137】
突入電流防止手段4は、インラッシュリレー41及び抵抗42を有するものであり、本実施形態では、整流手段21の入力側と単相交流電源300との間に設けられたメインリレー5及び回路保護手段(PTCサーミスタ等)と並列に接続されている。このメインリレー5が切り替え手段となる。なお、インラッシュリレー41及びメインリレー5はともに、例えば電磁リレーなどの機械式スイッチである。
【0138】
このように構成されたコンバータ回路2において、整流手段21及び平滑コンデンサ22の間には、コンバータ回路2を流れる直流電流を検出する直流電流検出手段6が設けられており、整流手段21及び平滑コンデンサ22の間には、前記整流手段21により整流された直流電圧を昇圧する整流電圧昇圧手段(PFC等)9が設けられており、平滑コンデンサ22の出力側には、平滑コンデンサ22にかかる直流電圧を検出する直流電圧検出手段7が設けられている。また、コンバータ回路2の整流手段21及び整流電圧昇圧手段9の間には、交流電圧位相検出手段(ゼロクロス検知回路)10が設けられている。なお、コンバータ回路2の切り替え手段5の入力側には、コンバータ回路2に入力される単相交流電圧を検出する交流電圧検出手段(不図示)が設けられている。
【0139】
ここで、直流電流検出手段6は、負電圧線(低電源線)に設けられたシャント抵抗61を有し、当該シャント抵抗61を流れる電流を検出するものである。また、整流電圧昇圧手段9は、正電圧線(高電源線)に設けられたリアクトル91と、当該リアクトル91の出力側においてアノードをリアクトル91側に向けて設けられたダイオード92と、リアクトル91及びダイオード92の接続点と低減電線との間に設けられた例えばIGBT等のスイッチ素子93とを有している。
【0140】
診断装置3は、突入電流防止手段4及び切り替え手段5を制御して、直流電圧検出手段7より得られる直流電圧及び/又は交流電圧位相検出手段10により得られる測定結果パターンによって、コンバータ回路2の異常部位を特定するものである。
【0141】
具体的に診断装置3は、(1)突入電流防止手段4をOFFとし、切り替え手段5をOFFとして異常診断を行う第1ステップと、(2)突入電流防止手段4をONとし、切り替え手段5をOFFとして異常診断を行う第2ステップと、をこの順で実施することにより、コンバータ回路2の異常部位を特定する。
【0142】
以下、各ステップについて詳述する。
<第1ステップ>
診断装置3は、
図6に示すように、診断モードスタート後、突入電流防止手段4(インラッシュリレー41)及び切り替え手段5(メインリレー)をともにOFFにして、整流手段21への交流電圧を遮断する(Sd1)。この状態において、診断装置3は、交流電圧位相検出手段10により得られる出力パターンを用いて(Sd2)、メインリレー5の短絡故障又はインラッシュリレー41の短絡故障を診断する。具体的に診断装置3は、交流電圧位相検出手段10により出力信号を検知した場合に、メインリレー5が短絡故障である又はインラッシュリレー41が短絡故障であると診断する(Sd3)。一方、交流電圧位相検出手段10により出力信号を検知しない場合、及び直流電圧検出手段7により得られる直流電圧が所定値未満の場合には、第2ステップに移行する。なお、診断装置3は、直流電圧検出手段7により得られる直流電圧が所定値以上の場合に、メインリレー5が短絡故障である又はインラッシュリレー41が短絡故障であると診断することもできる。
【0143】
以上の第1ステップにより、第1ステップにおいて、メインリレー5の短絡故障、インラッシュリレー41の短絡故障などを診断することができる。
【0144】
<第2ステップ>
診断装置3は、
図6に示すように、第2ステップにおいて、インラッシュリレー41をONにして(Se1)、交流電圧位相検出手段10により出力パルス信号を検知するか否かを判断する(Se2)つまり、診断装置3は、交流電圧位相検出手段10の出力が0Vか否かを判断する。そして、診断装置3は、交流電圧位相検出手段10により出力パルス信号を検知できない場合(交流電圧位相検出手段10の出力が0Vの場合)には、インラッシュリレー41が開放故障である又はメインリレー5が開放故障であると診断する(Se3)。このとき、診断装置3は、交流電圧位相検出手段10により得られる直流電圧が、0V又は所定の範囲の場合、交流電圧位相検出手段10が異常であると診断する。また、診断装置3は、直流電圧検出手段7により得られる直流電圧が0Vである場合に、前記直流電圧検出手段7が短絡故障であると診断する。
【0145】
一方で、診断装置3は、交流電圧位相検出手段10により出力パルス信号を検知した場合、直流電圧検出手段7により得られる直流電圧が所定の下限値未満か否かを判断する(Se4)。そして、診断装置3は、前記直流電圧が前記所定の下限値未満の場合には、整流手段21のブリッジダイオードの短絡故障、コンバータ回路2に接続された負荷の短絡故障、整流電圧昇圧手段9のスイッチ素子の短絡故障、直流電圧検出手段7の開放故障、平滑コンデンサ22の短絡故障、リアクトル91の開放故障、整流電圧昇圧手段9のダイオードの開放故障を診断する(Se5)。
【0146】
また、診断装置3は、前記ステップSe4において、前記直流電圧が前記所定の下限値以上の場合には、直流電圧検出手段7により得られる直流電圧が所定の上限値以上か否かを判断する(Se6)。そして、診断装置3は、前記直流電圧が所定の上限値以上の場合に、直流電圧検出手段7が短絡故障であると診断する(Se7)。
【0147】
一方で、診断装置3は、前記直流電圧が所定の上限値未満の場合に、整流電圧昇圧手段9のスイッチ素子をスイッチングして整流電圧昇圧手段9の動作チェックを行う(Se8)。そして、診断装置3は、動作チェックにおいてエラー(過電流を除く。)が生じた場合には、整流電圧昇圧手段9が異常(例えばダイオード92が短絡故障)であると診断する(Se9)。このとき、診断装置3は、前記整流手段21のブリッジダイオードが開放故障であると診断することもできる。
【0148】
また、診断装置3は、前記動作チェックにおいて、エラー(過電流を除く。)が生じていない場合には、整流電圧昇圧手段9を動作させた状態で、直流電流検出手段6により直流電流が検出されているか否かを判断する(Se10)。ここで、診断装置3は、前記直流電流が検出されていない場合に、整流電圧昇圧手段9の動作前後において、直流電圧検出手段7により得られる電圧値が昇圧しているか否かを判断する(Se11)。そして、診断装置3は、前記電圧値が昇圧してない場合には、整流電圧昇圧手段9のスイッチ素子が開放故障であると診断する(Se12)。一方で、前記電圧値が昇圧している場合には、直流電流検出手段6のシャント抵抗61が短絡故障である又は負荷が短絡故障であると診断する(Se13)。
【0149】
また、診断装置3は、前記ステップSe13において、直流電流検出手段6により直流電流が検出された場合に、当該直流電流が過電流か否を判断する(Se14)。そして、診断装置3は、前記直流電流が過電流である場合に、リアクトル91が短絡故障であると診断する(Se15)。一方、診断装置3は、前記直流電流が過電流で無い場合に、コンバータ回路2が正常である判断して、故障モードを終了する。
【0150】
以上の第2ステップにより、第2ステップにおいて、インラッシュリレー41の開放故障、メインリレー5の開放故障、交流電圧位相検出手段10の異常、直流電圧検出手段7の短絡故障、整流手段21のブリッジダイオードの短絡故障、コンバータ回路2に接続された負荷の短絡故障、整流電圧昇圧手段9のスイッチ素子の短絡故障、直流電圧検出手段7の開放故障、平滑コンデンサ22の短絡故障、リアクトル91の開放故障、整流電圧昇圧手段9のダイオードの開放故障、直流電圧検出手段7の短絡故障、整流電圧昇圧手段9の異常(例えばダイオード92が短絡故障)、直流電流検出手段6のシャント抵抗61の短絡故障、負荷の短絡故障、リアクトル91の短絡故障などを診断することができる。
【0151】
このように構成したコンバータ装置100によれば、突入電流防止手段4及び切り替え手段5を制御して得られる交流電圧位相検出手段10の出力及び/又は直流電圧検出手段7の直流電圧の測定結果パターンによってコンバータ回路2の異常部位を特定することができる。したがって、コンバータ回路2に接続されたインバータ回路INVからの出力を用いることなく、既存のコンバータ回路2の回路構成を有効に活用して異常部位を特定することができる。
【0152】
なお、本発明は前記第1、第2実施形態に限られるものではない。
例えば、前記各実施形態では、コンバータ回路に、当該コンバータ回路から出力される出力電流(直流電流)を検出する出力電流検出手段を備えたものであったが、コンバータ回路に、当該コンバータ回路に入力される入力電流(交流電流)を検出する入力電流検出手段を備え、診断装置が、前記出力電流検出手段により得られた直流電流の代わりに、前記入力電流検出手段によって得られた交流電流を用いて診断するように構成しても良い。
また、
図1に示す3相電源入力、及び、本文中のR相、S相、T相の記載は、一例であり入力電圧の各相の接続を限定するものではない。
【0153】
<<第3実施形態>>
次に、本発明に係るコンバータ装置の第3実施形態について図面を参照して説明する。
【0154】
本実施形態のコンバータ装置は、
図7に示すように、3相4線の交流電源を入力とするコンバータ回路2と、当該コンバータ回路2の異常を診断する診断装置3とを備えている。
【0155】
コンバータ回路2は、三相交流電圧を整流する整流手段21と、当該整流手段21により整流された直流電圧を平滑する平滑手段22とを備えている。前記整流手段21は、三相フルブリッジダイオード回路である。また、前記平滑手段22は、整流手段21の出力側である直流端子間に接続された平滑コンデンサである。本実施形態では、直流端子間に、直接接続された2つの平滑コンデンサ22a、22bを設けている。
【0156】
また、コンバータ回路2には、前記平滑コンデンサ22a、22bへの突入電流を防止する突入電流防止手段4と、交流電圧を供給する経路を突入電流防止手段4を介した経路とは別経路にする切り替え手段5とを備えている。
【0157】
突入電流防止手段4は、インラッシュリレー41及び抵抗42を有するものであり、本実施形態では、一端が三相交流電源200の中性相(N相)に接続され、他端が2つの平滑コンデンサ22a、22bの接続点に接続されている。また、インラッシュリレー41は、例えば電磁リレーなどの機械式スイッチである。この突入電流防止手段4により、インラッシュリレー41をONすることによって、R相の交流電圧が整流手段21により直流電圧に整流されて平滑コンデンサ22a、22bに印加されて、平滑コンデンサ22a、22bが充電される。
【0158】
切り替え手段5は、コンバータ回路2における整流手段21の入力側と三相交流電源200との間に設けられ、三相交流電圧をコンバータ回路2に入力するための電源入力手段たるメインリレー5a、5bである。具体的にメインリレー5a、5bは、三相のうちS相における整流手段21の入力側とT相における整流手段21の入力側とに設けられた例えば電磁リレーなどの機械式スイッチである。
【0159】
このように構成されたコンバータ回路2において、整流手段21及び平滑コンデンサ22aの間にリアクトル23が設けられている。また、整流手段21及び平滑コンデンサ22bの間には、直流電流検出手段(不図示)が設けられている。さらに、平滑コンデンサ22a、22bの出力側には、平滑コンデンサ22a、22bにかかる直流電圧を検出する直流電圧検出手段7が設けられている。また、コンバータ回路2の切り替え手段5の入力側には、コンバータ回路2に入力される三相交流電圧を各相毎に検出する交流電圧検出手段8が設けられている。
【0160】
診断装置3は、前記メインリレー5a、5b及び前記突入電流防止手段4を制御し、前記交流電圧検出手段8により得られる交流電圧又は前記直流電圧検出手段7により得られる直流電圧を用いて、前記コイルの正常、短絡又は断線を診断する。
【0161】
以下に、診断装置3のコイル診断機能とともに、コンバータ装置の動作について説明する。
前記メインリレー5a、5bを動作させる前に突入電流防止手段4のインラッシュリレー41をONさせて、平滑コンデンサ22a、22bを適当な電圧まで充電し、その後、メインリレー5a、5bを動作させる。
図7に示す3相4線の交流電源200で平滑コンデンサ22a、22bを直列に接続した平滑手段をもつものの場合、突入電流防止手段4は、ある1つの相と中性電位(N相)の間に構成され、電圧半波毎に平滑コンデンサ22aと平滑コンデンサ22bを充電していく。
図7の場合、上段の平滑コンデンサ22aはリアクトル23を通過する電流によって充電されるが、下段の平滑コンデンサ22bはリアクトル23を通らずに充電される。
【0162】
仮にリアクトル(コイル)23が断線していた場合、突入電流防止手段4の動作時に平滑コンデンサ22a、22bで平滑された直流電圧は、入力交流電圧の最大値の約50%程度にしかならない。つまり、このリアクトル故障モードは直流電圧検出手段7により得られる直流電圧によって容易に判断がつく。もちろん、平滑コンデンサ22a、22bを直列接続していない平滑手段をもつものであれば、そもそもコンデンサに充電することができないので、直流電圧値は0Vとなり、これも容易にリアクトル断線であることが判断できる。
【0163】
一方、仮にリアクトル(コイル)23が短絡だった場合の診断方法を示す。前述と同じように突入電流防止手段4の動作時に、リアクトル23が短絡であれば平滑コンデンサ22a、22bへの充電は、正常の場合と区別がつかない。このため、平滑コンデンサ22a、22bへの充電が適当な直流電圧まで完了すると、次にメインリレー5a、5bをONさせる。この時、入力交流電圧値と充電された直流電圧値の差で平滑コンデンサ22a、22bに突入電流が流れる。電圧差が大きければ大きな突入電流が流れ、小さければ少しの突入電流だけが流れることになる。この突入電流によってリアクトル23がインダクタンス値(L)を持っていればリアクトル両端には次のような逆起電圧(VL)が発生する。
VL=L×di/dt・・・(式1)
【0164】
この突入電流が流れることで、平滑コンデンサ22a、22bには瞬時に入力交流電圧最大値をピークホールドとする直流電圧値と、リアクトル23の両端に発生する逆起電圧が加えられ、瞬時に平滑コンデンサ22a、22bの安定時より大きな直流電圧になる。
【0165】
リアクトル23が短絡の場合、(式1)のL≒0であることから、VLはほとんど0Vとみなされ、メインリレー5a、5bのON直後の平滑コンデンサ22a、22bの直流電圧値は安定時のそれとほぼ等しい。つまり、適当な突入電流をリアクトル23に流してその直後の直流電圧値を監視することで、リアクトル23が正常か、短絡かを診断することが可能である。
【0166】
ところで交流電源電圧が診断動作中に変動するとも限らない。そのため、突入電流を流した直後の直流電圧値(第1電圧値)と、その後安定状態になった直流電圧値(第2電圧値)を比較し、確実に逆起電圧VLが放電してVL=0Vになったことを確認してリアクトル23の正常/短絡を診断する。
【0167】
ここで、適当な突入電流を作成する第1の方法は、例えば電源投入時の突入電流防止手段4の動作中に直流電圧値と交流電圧値をそれぞれ検出手段7、8により監視し、適当な電位差のときにメインリレー5a、5bを動作させてもよい。この方法の場合、交流電圧値が分かっている必要があり、交流電圧検出手段8は電圧値をマイコンのA/D変換器で読み込むなどの方法が必要である。
【0168】
また第2の方法は、平滑コンデンサ22a、22bの安定時の直流電圧を確認ののち、メインリレー5a、5bにより一度放電させながら所望の直流電圧値まで低下させ、再度、メインリレー5a、5bを動作させることで、適当な電位差を発生させてもよい。
【0169】
この場合は安定時の直流電圧値が分かっていることから、交流電圧検出手段8は、交流のゼロクロスを監視する手段など、直接電圧値が分からない手段であってよい。ただし、診断途中で交流電圧値が変動する場合が考えられるので、その時は、交流ゼロクロスのタイミングから判断して、電位差を増やしながら、少なくとも2回以上の突入電流による短絡診断を行えば精度よく結果を得ることができる。
【0170】
また、たとえリアクトル23が短絡していたとしても、突入電流が流れる部分、例えばワイヤや基板パターンなどのインダクタンスにより、逆起電圧の発生が起きる場合がある。そのため、突入電流が流れた直後の直流電圧を検知すべきではない。つまり、交流電圧が入力された直後から例えば発生する電圧VLが十分に検出でき、かつその他要因のインダクタンスによる逆起電圧の検知を十分回避できる時間の経過後に直流電圧検出手段7により得られた直流電圧値を前記第1電圧値とすることが望ましい。十分回避できる時間は実験などにより容易に決定できるものである。
【0171】
さらに、診断装置3は、リアクトル23が、上記の診断により故障と判断された場合、その診断結果をディスプレイ状に表示、そのほかの報知手段により報知する。これにより所望の性能に回復させる対処ができると同時に、正常品の修理交換などのロスを防ぐことが可能となる。なお、診断装置3による報知は、通信手段などを用いて集中管理システム等の上位制御装置に診断結果を送信することにより、ユーザ又は修理業者に報知することでも良い。
【0172】
上記のコンバータ装置は、3相4線の交流電源を入力とするコンバータ回路2を有するものであったが、
図8に示すように、3相3線の交流電源を入力とするコンバータ回路2を有するものであっても良い。
【0173】
このコンバータ回路2においては、交流電源又は電源入力手段たるメインリレー5a、5bと、整流手段21との間に、各相ごとにリアクトル23a、23b、23cが設けられている。
【0174】
次に
図8に示すコンバータ回路2における診断装置3のコイル診断機能について説明する。
まず、診断装置3は、突入電流防止手段4のインラッシュリレー41をONして、R相とT相から突入防止抵抗42を介して平滑コンデンサ22a、22bを充電する。
この動作において、仮にR相のリアクトル23aが断線していた場合、平滑コンデンサ22a、22bに充電ができない。このため、診断装置3は、直流電圧値が0V又は直流電圧値が上昇しない場合に、R相のリアクトル23aが断線していると診断する。
【0175】
次に、診断装置3は、所望の直流電圧値を確認した後に、交流電圧検出手段によりT相の交流電圧値が最大値でメインリレー5bをONして、同時に突入電流防止手段4のインラッシュリレー41をOFFして、R相とT相から平滑コンデンサ22a、22bを充電する。
この動作において、仮にT相のリアクトル23cが短絡の場合、逆起電圧が検出されない。このため、診断装置3は、逆起電圧が検出されない場合に、T相のリアクトル23cが短絡していると診断する。また、仮にT相のリアクトル23cが断線の場合、充電ができず直流電圧値が上昇しない。このため、診断装置3は、直流電圧値が上昇しない場合に、T相のリアクトル23cが断線していると診断する。
【0176】
次に、診断装置3は、直流電圧検出手段7により得られる直流電圧値が安定していることを確認後、メインリレー5bをOFFする。
【0177】
そして、診断装置3は、直流電圧値が所望の電圧値まで低下した後に、交流電圧検出手段8によりS相の交流電圧値が最大値でメインリレー5aをONして、R相とS相から平滑コンデンサ22a、22bを充電する。
この動作により、仮にS相のリアクトル23bが短絡の場合、逆起電圧が検出されない。このため、診断装置3は、逆起電圧が検出されない場合に、S相のリアクトル23bが短絡していると診断する。また、仮にS相のリアクトル23bが断線の場合、充電ができず直流電圧値が上昇しない。このため、診断装置3は、直流電圧値が上昇しない場合に、R相のリアクトル23bが断線していると診断する。
【0178】
次に、診断装置3は、直流電圧検出手段7により得られる直流電圧値が安定していることを確認後、メインリレー5aをOFFする。
【0179】
そして、診断装置3は、直流電圧値が所望の電圧値まで低下した後に、交流電圧検出手段8によりR相の交流電圧値が最大値でメインリレー5a又はメインリレー5bのうち、断線と診断されていない相のリレーをONして、R相と、S相又はT相とから平滑コンデンサ22a、22bを充電する。
この動作により、仮にR相のリアクトル23aが短絡の場合、逆起電圧が検出されない。このため、診断装置3は、R相のリアクトル23aが短絡していると診断する。
【0180】
以上、一連の動作により3つのリアクトル23a、23b、23c全ての短絡及び断線が診断可能である。診断するリアクトル23a、23b、23cの相の交流電圧値が最大のときに、該当するメインリレー5a、5bをONし、かつ、2相だけ導通させることで、診断しようとする相のリアクトル23a、23b、23cの1つだけを故障診断することができる。
【0181】
<<第4実施形態>>
本発明に係る第4実施形態のインバータ装置について説明する。なお、第4実施形態において使用する符号は、前記第1〜第3実施形態とは異なる。
【0182】
図9は、第4実施形態に係るインバータ装置の構成図である。本実施形態に係るインバータ装置100は、直流電力から3相交流電力を生成して外部負荷に供給する装置である。外部負荷は、例えば、モーター200である。モーター200は、図略の3相コイルを有する3相交流負荷である。
【0183】
インバータ装置100は、インバータ出力部10、制御部20、電圧検出部30、断線判定部40、記憶部50および表示部60を備えている。インバータ装置100は、直流電圧Vinを受けて3相交流電力を生成し、端子2U、2Vおよび2Wから、それぞれ、電気角が互いに120°ずれたU相電流、V相電流およびW相電流を出力する。
【0184】
インバータ出力部10は、上アーム側のスイッチング素子1U、1Vおよび1Wと、スイッチング素子1U、1Vおよび1Wのそれぞれに直列接続された下アーム側のスイッチング素子1X、1Yおよび1Zとを備えている。スイッチング素子1Uおよび1Xの接続点に端子2Uが接続されている。スイッチング素子1Vおよび1Yの接続点に端子2Vが接続されている。スイッチング素子1Wおよび1Zの接続点に端子2Wが接続されている。
【0185】
スイッチング素子1U、1V、1W、1X、1Yおよび1Zとして、例えば、バイポーラジャンクショントランジスタ、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などを使用することができる。
【0186】
より好ましくは、スイッチング素子として、オン抵抗が低いNPNバイポーラトランジスタを採用することがより好ましい。これにより、スイッチング素子における電流損失を低減することができる。
【0187】
上アーム側のスイッチング素子1U、1Vおよび1WにもNPNバイポーラトランジスタを使用する場合、スイッチング素子1U、1Vおよび1Wのそれぞれにブートストラップ回路11U、11Vおよび11Wを接続する必要がある。ブートストラップ回路11U、11Vおよび11Wにより、スイッチング素子1U、1Vおよび1Wのベース電圧をコレクタ電圧(インバータ装置100に入力される直流電圧Vin)よりも高めて、NPNバイポーラトランジスタで構成された上アーム側のスイッチング素子1U、1Vおよび1Wをスイッチング制御することができる。
【0188】
制御部20は、インバータ出力部10の上アーム側のスイッチング素子1U、1Vおよび1W、および下アーム側のスイッチング素子1X、1Yおよび1Zをスイッチング制御する。具体的には、モーター200を駆動する通常動作モードにおいて、制御部20は、スイッチング素子1Uおよび1Xに貫通電流が流れないようにスイッチング素子1Uおよび1Xを排他的にスイッチング制御する。また、制御部20は、電気角を120°ずらして、スイッチング素子1Vおよび1Yに貫通電流が流れないようにスイッチング素子1Vおよび1Yを排他的にスイッチング制御する。また、制御部20は、さらに電気角を120°ずらして、スイッチング素子1Wおよび1Zに貫通電流が流れないようにスイッチング素子1Wおよび1Zを排他的にスイッチング制御する。
【0189】
一方、インバータ装置100の断線故障を診断する診断モードにおいて、制御部20は、下アーム側のスイッチング素子1X、1Yおよび1Zをすべてオフ状態にして上アーム側のスイッチング素子1U、1Vおよび1Wのいずれか一つをオン制御する。診断モード時の制御部20の動作については後述する。
【0190】
電圧検出部30は、端子2U、2Vおよび2Wの各電圧、すなわち、U相電圧、V相電圧およびW相電圧を検出する。例えば、電圧検出部30は、端子2U、2Vおよび2Wの各電圧を二つの抵抗素子によって分圧する抵抗分圧回路で構成することができる。端子2U、2Vおよび2Wの各電圧を抵抗分圧する理由は、断線判定部40の入力電圧の定格に合わせるためである。なお、電圧検出部30において、検出した電圧を平滑化するために、各抵抗分圧点に容量素子を接続してもよい。
【0191】
断線判定部40は、上記の診断モードにおいて、電圧検出部30で検出されたU相検出電圧、V相検出電圧およびW相検出電圧に基づいてインバータ装置100の断線故障診断を行う。より詳細には、断線判定部40は、電圧検出部30で検出されたU相検出電圧、V相検出電圧およびW相検出電圧をHレベルまたはLレベルの2値で認識し、これら電圧レベルの組み合わせに応じて、インバータ出力部10およびモーター200のいずれが断線しているか判定し、さらにはいずれの相が断線しているか判定する。断線判定部40は、例えば、マイコンなどで構成することができる。
【0192】
記憶部50は、断線判定部40の判定結果を記憶する。記憶部50が記憶する内容は、断線の有無、および断線がある場合にはその断線箇所などである。記憶部50は、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリで構成することができる。
【0193】
表示部60は、断線判定部40の判定結果を表示する。表示部60は、断線判定部40から判定結果を直接受けてそれを表示するほか、記憶部50に記憶されている判定結果を読み出して表することができる。表示部60が表示する内容は、断線の有無、および断線がある場合にはその断線箇所などである。表示部60は、LED(Light Emitting Diode)などのインジケータや液晶表示装置などで構成することができる。
【0194】
このように、記憶部50に断線判定部40の判定結果を記憶させて表示部60にその記憶された判定結果を表示させることで、例えば、インバータ装置100の故障発生後にサービスマンがインバータ装置100のメンテナンスを行う際に、故障診断を再度行わなくてもよくなる。インバータ装置100の故障発生後はインバータ装置100を動作させることができないことがあり、そのような場合には故障診断を行うことができないため、記憶部50に断線判定部40の判定結果を記憶させておくことは有用である。
【0195】
なお、制御部20は、断線判定部40によってインバータ出力部10およびモーター200のいずれの断線が判定されたとき、スイッチング素子1U、1V、1W、1X、1Yおよび1Zのスイッチング制御を制限してもよい。これにより、故障状態にあるインバータ装置100を動作させないようにして安全性を保つことができる。
【0196】
次に、インバータ装置100の断線故障診断の詳細について図面を参照して説明する。上述したように、インバータ装置100の断線故障診断はインバータ出力部10の下アーム側のスイッチング素子1X、1Yおよび1Zをすべてオフ状態にして上アーム側のスイッチング素子1U、1Vおよび1Wのいずれか一つをオンにして行う。
【0197】
<第1の例>
図10(A)は、断線故障診断時の第1のスイッチング制御例を示す模式図であり、
図10(B)は断線判定条件を示す表である。本例は、インバータ出力部10の上アーム側のスイッチング素子1Uのみをオンにしたときの断線故障診断の例である。なお、
図10(A)において、各スイッチング素子をオン/オフ状態がわかるようなシンボルで表している。
【0198】
インバータ装置100に断線故障がなければ、スイッチング素子1Uのみをオンにすると、端子2Uにインバータ出力部10の入力直流電圧Vinが印加され、電圧検出部30から出力されるU相検出電圧VuはHレベルとなる。また、入力直流電圧Vinは、モーター200の図示しない3相コイルを経由して端子2Vおよび2Wにも印加され、電圧検出部30から出力されるV相検出電圧VvおよびW相検出電圧VwもHレベルとなる。したがって、
図10(B)の断線判定条件に示すように、(Vu,Vv,Vw)=(H,H,H)であれば、断線判定部40は、インバータ装置100の断線故障なしを判定する。
【0199】
(Vu,Vv,Vw)=(H,H,L)であれば、断線判定部40は、モーター200側のW相(外部W相)が断線していると判定する。(Vu,Vv,Vw)=(H,L,H)であれば、断線判定部40は、モーター200側のV相(外部V相)が断線していると判定する。(Vu,Vv,Vw)=(H,L,L)であれば、断線判定部40は、モーター200側のU相(外部U相)、または、モーター200側のV相およびW相(外部V相および外部W相)が断線していると判定する。(Vu,Vv,Vw)=(L,L,L)であれば、断線判定部40は、インバータ出力部10のU相(内部U相)が断線、すなわち、スイッチング素子1Uがオープン故障していると判定する。
【0200】
上記以外の検出電圧の組み合わせ、すなわち、(Vu,Vv,Vw)=(L,H,H)、(Vu,Vv,Vw)=(L,H,L)、(Vu,Vv,Vw)=(L,L,H)は、本例では観測されない検出電圧パターンである。
【0201】
断線判定部40は、上記の断線判定を複数回実施して各回の判定結果から総合的に断線判定を行ってもよい。その場合、制御部20は、上アーム側のスイッチング素子1Uをオン制御する前に下アーム側のスイッチング素子1Xをオンにしてブートストラップ回路11Uを充電する必要がある。
【0202】
<第2の例>
図11(A)は、断線故障診断時の第2のスイッチング制御例を示す模式図であり、
図11(B)は断線判定条件を示す表である。本例は、インバータ出力部10の上アーム側のスイッチング素子1Vのみをオンにしたときの断線故障診断の例である。なお、
図11(A)において、各スイッチング素子をオン/オフ状態がわかるようなシンボルで表している。
【0203】
インバータ装置100に断線故障がなければ、スイッチング素子1Vのみをオンにすると、端子2Vにインバータ出力部10の入力直流電圧Vinが印加され、電圧検出部30から出力されるV相検出電圧VvはHレベルとなる。また、入力直流電圧Vinは、モーター200の図示しない3相コイルを経由して端子2Uおよび2Wにも印加され、電圧検出部30から出力されるU相検出電圧VuおよびW相検出電圧VwもHレベルとなる。したがって、
図11(B)の断線判定条件に示すように、(Vu,Vv,Vw)=(H,H,H)であれば、断線判定部40は、インバータ装置100の断線故障なしを判定する。
【0204】
(Vu,Vv,Vw)=(H,H,L)であれば、断線判定部40は、モーター200側のW相(外部W相)が断線していると判定する。(Vu,Vv,Vw)=(L,H,H)であれば、断線判定部40は、モーター200側のU相(外部U相)が断線していると判定する。(Vu,Vv,Vw)=(L,H,L)であれば、断線判定部40は、モーター200側のV相(外部V相)、または、モーター200側のU相およびW相(外部U相および外部W相)が断線していると判定する。(Vu,Vv,Vw)=(L,L,L)であれば、断線判定部40は、インバータ出力部10のV相(内部V相)が断線、すなわち、スイッチング素子1Vがオープン故障していると判定する。
【0205】
上記以外の検出電圧の組み合わせ、すなわち、(Vu,Vv,Vw)=(H,L,H)、(Vu,Vv,Vw)=(H,L,L)、(Vu,Vv,Vw)=(L,L,H)は、本例では観測されない検出電圧パターンである。
断線判定部40は、上記の断線判定を複数回実施して各回の判定結果から総合的に断線判定を行ってもよい。その場合、制御部20は、上アーム側のスイッチング素子1Vをオン制御する前に下アーム側のスイッチング素子1Yをオンにしてブートストラップ回路11Vを充電する必要がある。
【0206】
<第3の例>
図12(A)は、断線故障診断時の第3のスイッチング制御例を示す模式図であり、
図12(B)は断線判定条件を示す表である。本例は、インバータ出力部10の上アーム側のスイッチング素子1Wのみをオンにしたときの断線故障診断の例である。なお、
図12(A)において、各スイッチング素子をオン/オフ状態がわかるようなシンボルで表している。
【0207】
インバータ装置100に断線故障がなければ、スイッチング素子1Wのみをオンにすると、端子2Wにインバータ出力部10の入力直流電圧Vinが印加され、電圧検出部30から出力されるW相検出電圧VwはHレベルとなる。また、入力直流電圧Vinは、モーター200の図示しない3相コイルを経由して端子2Uおよび2Wにも印加され、電圧検出部30から出力されるU相検出電圧VuおよびV相検出電圧VvもHレベルとなる。したがって、
図12(B)の断線判定条件に示すように、(Vu,Vv,Vw)=(H,H,H)であれば、断線判定部40は、インバータ装置100の断線故障なしを判定する。
【0208】
(Vu,Vv,Vw)=(H,L,H)であれば、断線判定部40は、モーター200側のV相(外部V相)が断線していると判定する。(Vu,Vv,Vw)=(L,H,H)であれば、断線判定部40は、モーター200側のU相(外部U相)が断線していると判定する。(Vu,Vv,Vw)=(L,L,H)であれば、断線判定部40は、モーター200側のW相(外部W相)、または、モーター200側のU相およびV相(外部U相および外部V相)が断線していると判定する。(Vu,Vv,Vw)=(L,L,L)であれば、断線判定部40は、インバータ出力部10のW相(内部W相)が断線、すなわち、スイッチング素子1Wがオープン故障していると判定する。
【0209】
上記以外の検出電圧の組み合わせ、すなわち、(Vu,Vv,Vw)=(H,H,L)、(Vu,Vv,Vw)=(H,L,L)、(Vu,Vv,Vw)=(L,H,L)は、本例では観測されない検出電圧パターンである。
【0210】
断線判定部40は、上記の断線判定を複数回実施して、各回の判定結果から総合的に断線判定を行ってもよい。その場合、制御部20は、上アーム側のスイッチング素子1Wをオン制御する前に下アーム側のスイッチング素子1Zをオンにしてブートストラップ回路11Wを充電する必要がある。
【0211】
なお、オン制御するスイッチング素子がスイッチング素子1U、1Vおよび1Wのいずれか一つのみでは、例えば、スイッチング素子1Uをオンにしたときの(Vu,Vv,Vw)=(H,L,L)のように、外部の断線箇所が特定できないケースがある。したがって、スイッチング素子1U、1Vおよび1Wを一つずつ順にオンにして断線故障診断を行うとよい。これにより、インバータ装置100の断線箇所を完全に特定することができる。
【0212】
以上のように、本実施形態によれば、インバータ装置100自体が、装置側(インバータ装置100)が断線しているのか、または、外部負荷(モーター200)が断線しているのかを識別することができる。これにより、従来は故障箇所が特定できずに負荷交換時に本来正常なインバータ装置までも交換されていたが、そのような無駄な交換をなくすことができる。
【0213】
また、本実施形態によれば、インバータ出力部10に電流を流すことなく断線故障診断を行うことができる。このため、もし上アーム側のスイッチング素子1U、1Vおよび1Wのいずれかが短絡故障している場合であっても、電流を流さずに安全に断線故障診断を行うことができ、診断実施による2次的破壊を防止することができる。
【0214】
また、本実施形態によれば、インバータ装置100自体が断線故障診断を行うため、ヒューマンエラーによる誤診断を防止することができる。
また、本実施形態によれば、断線故障診断用の外部機器が不要であり、低コストで断線故障診断サービスを提供することができる。
【0215】
なお、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、端子2U、2Vおよび2W、または、下アーム側のスイッチング素子1X、1Yおよび1Zのエミッタに外部負荷の地絡検出用の検出抵抗が接続される場合がある。そのような場合には、外部負荷の地絡の有無を検査して地絡がないことを確認してから上記の断線故障診断を実施するとよい。
【0216】
また、
図9ないし
図12を用いて上記第4実施形態により示した構成および処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成および処理に限定する趣旨ではない。
【0217】
<<第5実施形態>>
以下に本発明に係るインバータ装置の第5実施形態について図面を参照して説明する。なお、第5実施形態において使用する符号は、前記第1〜第4実施形態とは異なる。
【0218】
本実施形態に係るインバータ装置100は、例えば三相モータ等の三相交流機ADに三相交流電圧(R相、S相、T相)を供給して駆動するものであり、
図13に示すように、直流電源又はコンバータ回路から出力される直流電圧を三相交流電圧に変換するとともに、交流機ADが結線されるインバータ回路2と、インバータ回路2及び交流機AD又は結線の異常を診断する診断装置4とを備えている。
【0219】
インバータ回路2は、直列接続された上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zからなるハーフブリッジ回路(直列回路部)21〜23を3つ備えたものである。なお、上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zは、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)である。
【0220】
また、インバータ回路2には、上アームスイッチ素子2U、2V、2Wの駆動電圧を生成するブートストラップ回路24U、24V、24Wが設けられている。
【0221】
このブートストラップ回路24U、24V、24Wは、3つの上アームスイッチ素子2U、2V、2Wそれぞれに設けられており、一端が制御電源VCに接続されるとともに、他端が上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zの接続点に接続されている。具体的にブートストラップ回路24U、24V、24Wは、コンデンサ241と、ダイオード242と、制限抵抗243とを有する。なお、以下の説明において、ブートストラップ回路24U、24V、24Wのコンデンサ241を区別する場合には、ブートストラップ回路24Uのコンデンサを符号241U、ブートストラップ回路24Vのコンデンサを符号241V、ブートストラップ回路24Wのコンデンサを符号241Wとする。
【0222】
このように構成されたブートストラップ回路24U、24V、24Wにおいて、下アームスイッチ素子2X、2Y、2ZがONされることにより、上アームスイッチ素子2U、2V、2Wを駆動するための電圧(駆動電圧)がそれぞれのコンデンサ241U、241V、241Wに充電される。
【0223】
さらに、ブートストラップ回路24U、24V、24Wには、前記コンデンサ241U、241V、241Wに充電された電圧を検出するコンデンサ電圧検出手段25U、25V、25Wが設けられている。
【0224】
なお、インバータ回路2には、当該インバータ回路2を流れる電流を、少なくとも2相以上の相電流を相毎に検出するインバータ電流検出手段3が設けられている。本実施形態のインバータ電流検出手段3は、U相結線に接続されてU相電流を検出するU相電流検出部31と、W相結線に接続されてW相電流を検出するW相電流検出部32とを有している。その他、インバータ電流検出手段3としては、前記下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zの負電位側端子に直列接続されたシャント抵抗を備え、当該シャント抵抗を流れる電流を検出するものであっても良い。この場合、インバータ電流検出手段3は、下アームスイッチ素子2Xのみにシャント抵抗を接続する単一シャント方式であっても良いし、下アームスイッチ素子2X及び下アームスイッチ素子2Zにそれぞれシャント抵抗を接続する3シャント方式であっても良い。
【0225】
診断装置4は、複数の下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを1つずつ択一的にONにして異常診断を行う第1ステップと、各ハーフブリッジ回路21〜23毎に上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを同時にONにして短絡させて異常診断を行う第2ステップとをこの順で実施する。
【0226】
以下、各ステップにおける診断装置4の診断内容について詳述する。
<第1ステップ>
診断装置4は、第1ステップにおいて、複数のハーフブリッジ回路21〜23の下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを1つずつ択一的にONにするとともに、それにより全てのコンデンサ電圧検出手段24U、24V、24Wにより得られたコンデンサ電圧値の測定結果パターンによって、下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zの開放故障、及び、AD交流機又は結線の異常を診断する。
【0227】
ここで、この診断内容について説明する。
全ての下アームスイッチ素子2X、2Y、2Z、交流機AD及び結線が正常な場合、下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを1つずつ択一的にONにすると、
図14に示すように、全てのコンデンサ241U、241V、241Wが充電される。つまり、この場合のコンデンサ電圧値の測定結果パターンは、以下の表1となる。なお、以下の表1〜表5において「○」は充電されることを示し、「−」は充電されないことを示す。
【0229】
下アームスイッチ素子2Xが開放故障であり、交流機及び結線が正常な場合、下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを1つずつ択一的にONにすると、
図15に示すように、故障した下アームスイッチ素子2XをONにしても、全てのコンデンサ241U、241V、241Wが充電されない。故障していないその他の下アームスイッチ素子2Y、2ZをONにすると、全てのコンデンサ241U、241V、241Wが充電される。つまり、この場合のコンデンサ電圧値の測定結果パターンは、以下の表2となる。
【0231】
全ての下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zが正常であり、U相結線が異常の場合、下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを1つずつ択一的にONにすると、
図16に示すように、異常なU相結線に繋がる下アームスイッチ素子2XをONにすると、U相結線に繋がるコンデンサ241Uのみが充電され、それ以外の下アームスイッチ素子2Y、2ZをONにすると、U相結線以外のV相結線、W相結線に繋がるコンデンサ241V、241Wが充電される。つまり、この場合のコンデンサ電圧値の測定結果パターンは、以下の表3となる。
【0233】
下アームスイッチ素子2Xが開放故障であり、開放故障の下アームスイッチ素子2Xに繋がるU相結線が異常の場合、下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを1つずつ択一的にONにすると、
図17に示すように、故障した下アームスイッチ素子2XをONにしても、全てのコンデンサ241U、241V、241Wが充電されない。また、故障していないその他の下アームスイッチ素子2Y、2ZをONにすると、正常なV相結線及びW相結線に繋がるコンデンサ241V、241Wのみが充電される。つまり、この場合のコンデンサ電圧値の測定結果パターンは、以下の表4となる。
【0235】
下アームスイッチ素子2Xが開放故障であり、開放故障の下アームスイッチ素子2Xに繋がるU相結線以外の相(V相結線)が異常の場合、下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを1つずつ択一的にONにすると、
図18に示すように、故障した下アームスイッチ素子2XをONにしても、全てのコンデンサ241U、241V、241Wが充電されない。また、異常なV相結線に繋がる下アームスイッチ素子2YをONにすると、異常なV相結線に繋がるコンデンサ241Vのみ充電され、その他の下アームスイッチ素子2ZをONにすると、正常なU相結線及びW相結線に繋がるコンデンサ241U、241Wが充電される。つまり、この場合のコンデンサ電圧値の測定結果パターンは、以下の表5となる。
【0237】
同様にして、全ての故障モードを整理すると、下記の表6に示す組み合わせによって、各部の故障を診断することができる。
【0239】
この表6において、「○」の箇所がエラー(コンデンサが充電されない)の場合には、それに対応する下アームスイッチ素子が開放故障であることを示している。
「△」の箇所が全てエラーの場合には、下アームスイッチ素子2Xに繋がるU相結線が異常であることを示している。
「□」の箇所が全てエラーの場合には、下アームスイッチ素子2Yに繋がるV相結線が異常であることを示している。
「◇」の箇所が全てエラーの場合には、下アームスイッチ素子2Zに繋がるW相結線が異常であることを示している。
【0240】
そして、診断装置4は、上記の全ての故障モードのエラーの組み合わせを用いて、下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを1つずつ択一的にONにして得られたコンデンサ電圧値の測定結果パターンと、前記組み合わせとを比較して、下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zの開放故障、及び、AD交流機又は結線の異常を診断する。なお、前記全ての故障モードのエラーの組み合わせを示すデータは、予め診断装置のメモリに格納されている。
【0241】
また、診断装置4は、第1ステップにおいて、下アームスイッチ素子2X、2Y、2ZをOFFにした状態で、コンデンサ電圧検出手段25U、25V、25Wにより所定値以上のコンデンサ電圧が検出された場合に、下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zが短絡故障していると診断する。
【0242】
例えば、
図19に示すように、下アームスイッチ素子2Yが短絡故障している場合、下アームスイッチ素子2X、2Y、2ZをOFFにした状態であっても、当該短絡故障した下アームスイッチ素子2Yに直列接続された上アームスイッチ素子2Vに対応するコンデンサ241Vが充電される。このため、下アームスイッチ素子2X、2Y、2ZをOFFにした状態で、コンデンサ電圧検出手段25Vにより所定値以上のコンデンサ電圧が検出される。これにより、下アームスイッチ素子2Yが短絡故障していると診断することができる。
【0243】
さらに、診断装置4は、第1ステップにおいて、下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを1つずつ択一的にONにしたときに、インバータ電流検出手段3により所定値以上の短絡電流を検出した場合に、上アームスイッチ素子2U、2V、2が短絡故障していると診断する。
【0244】
例えば、
図20に示すように、上アームスイッチ素子2Wが短絡故障している場合、下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを1つずつ択一的にONにすると、下アームスイッチ素子2WをONにしたとき、コンデンサ241U、V、Wとは別に、短絡電流が流れる。この短絡電流は、インバータ電流検出手段3や他の短絡電流検出手段によって検出される。これにより、上アームスイッチ素子2Wが短絡故障していると診断することができる。
【0245】
<第2ステップ>
次に、上記の第1ステップの後に行われる第2ステップについて説明する。
【0246】
診断装置4は、第2ステップにおいて、各ハーフブリッジ回路21〜23毎に上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを同時にONにして短絡させて、前記インバータ電流検出手段3により電流が検出されない場合に、前記上アームスイッチ素子2U、2V、2Wが開放故障していると診断する。
【0247】
例えば、
図21に示すように、(1)上アームスイッチ素子2U及び下アームスイッチ素子2Xを同時にONにして、ハーフブリッジ回路21を短絡させ、(2)上アームスイッチ素子2V及び下アームスイッチ素子2Yを同時にONにして、ハーフブリッジ回路22を短絡させ、(3)上アームスイッチ素子2W及び下アームスイッチ素子2Zを同時にONにして、ハーフブリッジ回路23を短絡させる。このとき、全ての上アームスイッチ素子2U、2V、2Wが正常であれば、インバータ電流検出手段3や他の短絡電流検出手段によって短絡電流が検出される。一方、例えば、上アームスイッチ素子2Uが開放故障している場合には、上アームスイッチ素子2U及び下アームスイッチ素子2Xを同時にONにしても短絡電流が検出されない。これにより、上アームスイッチ素子2Uが開放故障していると診断することができる。
【0248】
このように構成したインバータ装置100によれば、診断装置が、上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2ZのON/OFFを制御して、コンデンサ電圧検出手段24U、24Vにより得られた電圧値を用いて、インバータ回路の異常、及び、交流機又は結線の異常を診断するので、ブートストラップ回路のコンデンサを有効活用することにより、複数の故障が同時に発生した場合でも、正確に故障個所と故障内容を診断可能にすることができる。
【0249】
具体的に本実施形態によれば、複数の下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを1つずつ択一的にONさせて得られるコンデンサ電圧値の測定結果パターンから、開放故障している下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zの特定及び異常結線の特定ができる。
【0250】
また、上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2ZをOFFにした状態で得られるコンデンサ電圧値により、短絡故障している下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zの特定ができる。さらに、複数の下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを1つずつ択一的にONして生じる短絡電流の有無により、短絡故障している上アームスイッチ素子2U、2V、2Wの特定ができる。
【0251】
その上、上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを同時にONして生じる短絡電流の有無により、開放故障している上アームスイッチ素子2U、2V、2Wの特定ができる。
【0252】
なお、本発明は前記第5実施形態に限られるものではない。
例えば、前記第5実施形態の第2ステップにおいて、診断装置が、複数のハーフブリッジ回路の上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子をON/OFFを制御して交流機に電流を流し、インバータ電流検出手段から得られた電流値によって、上アームスイッチ素子が開放故障を診断するように構成しても良い。
【0253】
例えば、
図22に示すように、(1)上アームスイッチ素子2V及び下アームスイッチ素子2Xを同時にONにして交流機ADに電流を流し、(2)上アームスイッチ素子2W及び下アームスイッチ素子2Uを同時にONにして交流機ADに電流を流し、(3)上アームスイッチ素子2U及び下アームスイッチ素子2Yを同時にONにして交流機ADに電流を流す。このとき、全ての上アームスイッチ素子2U、2V、2Wが正常であれば、インバータ電流検出手段3により得られる電流値が正常値となる、一方、例えば、上アームスイッチ素子2Uが開放故障している場合には、上アームスイッチ素子2U及び下アームスイッチ素子2Yを同時にONにしても交流機ADに電流が流れない。これにより、上アームスイッチ素子2Uが開放故障していると診断することができる。
【0254】
また、前記第5実施形態の第1ステップ及び第2ステップに加えて、当該第2ステップの後に、診断装置が、複数のハーフブリッジ回路の上アームスイッチ素子及び下アームスイッチ素子をON/OFFを制御して交流機に電流を流し、インバータ電流検出手段から得られた電流値によって、前記交流機又は前記結線の異常を診断する第3ステップを実施するように構成しても良い。
【0255】
<<第6実施形態>>
以下に本発明に係るインバータ装置の第6実施形態について図面を参照して説明する。なお、第6実施形態において使用する符号は、前記第1〜第4実施形態とは異なる。
【0256】
本実施形態に係るインバータ装置100は、例えば三相モータ等の三相交流機ADに三相交流電圧(R相、S相、T相)を供給して駆動するものであり、
図23に示すように、直流電源又はコンバータ回路から出力される直流電圧を三相交流電圧に変換するとともに、交流機ADが結線されるインバータ回路2と、インバータ回路2及び交流機AD又は結線の異常を診断する診断装置4とを備えている。
【0257】
インバータ回路2は、直列接続された上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zからなるハーフブリッジ回路(直列回路部)21〜23を3つ備えたものである。なお、上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zは、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)である。
【0258】
なお、このように構成されたインバータ回路2には、当該インバータ回路2を流れる電流を、少なくとも2相以上の相電流を相毎に検出するインバータ電流検出手段3が設けられている。本実施形態のインバータ電流検出手段3は、U相電流を検出するU相電流検出部31と、W相電流を検出するW相電流検出部32とを有している。その他、インバータ電流検出手段3としては、前記下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zの負電位側端子に直列接続されたシャント抵抗を備え、当該シャント抵抗を流れる電流を検出するものであっても良い。この場合、インバータ電流検出手段3は、3つの下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zの負電位側に共通のシャント抵抗を接続する単一シャント方式であっても良いし、3つの下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zのそれぞれにシャント抵抗を接続する3シャント方式であっても良い。
【0259】
診断装置4は、前記インバータ回路2の上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2ZをON/OFF制御して、インバータ回路2の異常を診断するものである。
【0260】
具体的に診断装置4は、上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを、交流機(三相モータ)ADが正回転するパターンでON/OFF制御して、前記インバータ電流検出手段から得られた電流値により、各ハーフブリッジ回路21〜23における上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zの開放故障を診断する。
【0261】
ここで、スイッチ素子2U、2V、2W、2X、2Y、2Zの開放診断において、交流機(三相モータ)ADが正回転するON/OFFパターンは、
図24に示すように、以下の(1)〜(6)である。
【0262】
(1)上アームスイッチ素子2U及び下アームスイッチ素子2YをONとし、その他のスイッチ素子2V、2W、2X、2ZをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、U相電流及びV相電流が流れる。そして、U相電流がU相電流検出部31により検出される。
【0263】
(2)上アームスイッチ素子2U及び下アームスイッチ素子2ZをONとし、その他のスイッチ素子2V、2W、2X、2YをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、U相電流及びW相電流が流れる。そして、U相電流がU相電流検出部31により検出され、W相電流がW相電流検出部32により検出される。
【0264】
(3)上アームスイッチ素子2V及び下アームスイッチ素子2ZをONとし、その他のスイッチ素子2U、2W、2X、2YをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、V相電流及びW相電流が流れる。そして、W相電流がW相電流検出部32により検出される。
【0265】
(4)上アームスイッチ素子2V及び下アームスイッチ素子2XをONとし、その他のスイッチ素子2U、2W、2Y、2ZをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、U相電流及びV相電流が流れる。そして、U相電流がU相電流検出部31により検出される。
【0266】
(5)上アームスイッチ素子2W及び下アームスイッチ素子2XをONとし、その他のスイッチ素子2U、2V、2Y、2ZをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、U相電流及びW相電流が流れる。そして、U相電流がU相電流検出部31により検出され、W相電流がW相電流検出部32により検出される。
【0267】
(6)上アームスイッチ素子2W及び下アームスイッチ素子2YをONとし、その他のスイッチ素子2U、2V、2X、2ZをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、V相電流及びW相電流が流れる。そして、W相電流がW相電流検出部32により検出される。
【0268】
以上の(1)〜(6)のON/OFF制御を順番に行い、各状態における相電流を検出することで、スイッチ素子2U、2V、2W、2X、2Y、2Zのうち、開放故障しているスイッチ素子を特定することができる。
【0269】
例えば、上アームスイッチ素子2Uが開放故障している場合には、上記(1)及び(2)においてU相電流検出部31により得られる電流がゼロとなり、その他の(3)〜(6)では、通常通りの電流が検出されることになる。
【0270】
上記(1)〜(6)のON/OFF制御を順番に行うことで、スイッチ素子2U、2V、2W、2X、2Y、2Zの開放診断を、交流機ADを逆回転させることなく、交流機ADを正回転方向に、最大回転数が極数分の1回転させるだけで行うことができる。
【0271】
このように構成したインバータ装置100によれば、診断装置4が、上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを、交流機ADが正回転するパターンでON/OFF制御して、インバータ回路2の異常を診断するので、交流機ADに損傷を与えることなく、通常運転に用いられる電流検出手段3を用いてインバータ回路2の異常を診断することができる。このとき、交流機ADを正回転させる電流を流しているので、インバータ回路2に通常設けられている電流検出手段の精度でも誤検出しないレベルの電流を流すことができ、診断ミスを防ぐことができる。
また、上記(1)〜(6)のON/OFFパターンにより、スイッチ素子2U、2V、2W、2X、2Y、2Zの開放診断を、交流機ADを逆回転させることなく、交流機ADを正回転方向に極数分の1回転させるだけで行うことができる。
【0272】
なお、本発明は前記第6実施形態に限られるものではない。
例えば、前記インバータ電流検出手段が、U相電流検出部及びW相電流検出部の他に、V相電流を検出するV相電流検出部を有するものであっても良い。
【0273】
また、各スイッチ素子のON/OFFパターンは、交流機が正回転するものであれば、前記実施形態に限られない。
【0274】
さらに、前記第6実施形態の診断装置は、インバータ回路のスイッチ素子の開放故障を別の手法により診断可能であれば、交流機の開放故障又はインバータ回路及び交流機の間の結線の開放故障を前記実施形態の手法を用いて診断するように構成しても良い。
【0275】
<<第7実施形態>>
以下に本発明に係るインバータ装置を用いた交流機駆動装置の第7実施形態について図面を参照して説明する。なお、第7実施形態において使用する符号は、前記第1〜第4実施形態とは異なる。
【0276】
本実施形態に係るインバータ装置100は、例えば三相モータ等の三相交流機ADに三相交流電圧(R相、S相、T相)を供給して駆動するものであり、
図25に示すように、直流電源又はコンバータ回路から出力される直流電圧を三相交流電圧に変換するとともに、交流機ADが結線されるインバータ回路2と、インバータ回路2及び交流機AD又は結線の異常を診断する診断装置4とを備えている。
【0277】
インバータ回路2は、直列接続された上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zからなるハーフブリッジ回路(直列回路部)21〜23を3つ備えたものである。なお、上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zは、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)である。
【0278】
なお、このように構成されたインバータ回路2には、当該インバータ回路2を流れる電流を、少なくとも2相以上の相電流を相毎に検出するインバータ電流検出手段3が設けられている。本実施形態のインバータ電流検出手段3は、U相電流を検出するU相電流検出部31と、W相電流を検出するW相電流検出部32とを有している。その他、インバータ電流検出手段3としては、前記下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zの負電位側端子に直列接続されたシャント抵抗を備え、当該シャント抵抗を流れる電流を検出するものであっても良い。この場合、インバータ電流検出手段3は、3つの下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zの負電位側に共通のシャント抵抗を接続する単一シャント方式であっても良いし、3つの下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zのそれぞれにシャント抵抗を接続する3シャント方式であっても良い。
【0279】
診断装置4は、前記インバータ回路2の上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2ZをON/OFF制御して、インバータ回路2の異常及び交流機AD又は結線の異常を診断するものである。
【0280】
具体的に診断装置4は、前記上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2ZをON/OFF制御し、インバータ電流検出手段3により得られた電流値から交流機AD又は結線の短絡故障を診断する第1段階と、前記上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを所定のON/OFFパターンで制御し、インバータ電流検出手段3により得られた電流値の測定結果パターンから、各スイッチ素子2U、2V、2W、2X、2Y、2Zの開放故障を診断する第2段階とを実施する。
【0281】
以下、各段階における診断方法について説明する。
診断装置4は、第1段階において、前記上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2ZをON/OFF制御して、交流機ADに単パルス電圧を出力する。
【0282】
ここで、交流機ADに出力する単パルス電圧のパルス幅は、交流機AD又は結線が短絡故障していない場合には、インバータ電流検出手段3により得られる電流値が所定値以上の短絡電流とならず、インバータ回路2に設けられた過電流保護手段が働かず、交流機AD又は結線が短絡故障している場合には、インバータ電流検出手段3により得られる電流値が所定値以上の短絡電流となり、前記過電流保護手段が働く幅に設定されている。
【0283】
具体的に診断装置4は、
図26及び
図27に示すように、第1段階において、以下の(2−1)〜(2−6)のように、各スイッチ素子2U、2V、2W、2X、2Y、2ZをON/OFF制御して、ADに単パルス電圧を出力する。
【0284】
(1−1)上アームスイッチ素子2U及び下アームスイッチ素子2YをONして交流機ADに単パルス出力し、その他のスイッチ素子2V、2W、2X、2ZをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、U相電流及びV相電流が流れる。そして、U相電流がU相電流検出部31により検出される。
【0285】
(1−2)上アームスイッチ素子2U及び下アームスイッチ素子2ZをONして交流機ADに単パルス出力し、その他のスイッチ素子2V、2W、2X、2YをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、U相電流及びW相電流が流れる。そして、U相電流がU相電流検出部31により検出され、W相電流がW相電流検出部32により検出される。
【0286】
(1−3)上アームスイッチ素子2V及び下アームスイッチ素子2ZをONして交流機ADに単パルス出力し、その他のスイッチ素子2U、2W、2X、2YをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、V相電流及びW相電流が流れる。そして、W相電流がW相電流検出部32により検出される。
【0287】
(1−4)上アームスイッチ素子2V及び下アームスイッチ素子2XをONして交流機ADに単パルス出力し、その他のスイッチ素子2U、2W、2Y、2ZをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、U相電流及びV相電流が流れる。そして、U相電流がU相電流検出部31により検出される。
【0288】
(1−5)上アームスイッチ素子2W及び下アームスイッチ素子2XをONして交流機ADに単パルス出力し、その他のスイッチ素子2U、2V、2Y、2ZをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、U相電流及びW相電流が流れる。そして、U相電流がU相電流検出部31により検出され、W相電流がW相電流検出部32により検出される。
【0289】
(1−6)上アームスイッチ素子2W及び下アームスイッチ素子2YをONして交流機ADに単パルス出力し、その他のスイッチ素子2U、2V、2X、2ZをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、V相電流及びW相電流が流れる。そして、W相電流がW相電流検出部32により検出される。
【0290】
以上の(1−1)〜(1−6)の単パルス出力を順番に行い、各状態における相電流を検出することで、交流機AD又は結線において短絡故障している相を特定することができる。
【0291】
例えば、交流機AD又は結線のU相が短絡故障している場合には、上記(1−1)、(1−2)、(1−4)及び(1−5)においてU相電流検出部31により得られる電流値が短絡電流となり、その他の(1−3)、(1−6)では、通常通りの電流が検出されることになる。
【0292】
一方、診断装置4は、第2段階において、上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを、交流機(三相モータ)ADが正回転するパターンでON/OFF制御して、前記インバータ電流検出手段から得られた電流値により、各ハーフブリッジ回路21〜23における上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zの開放故障を診断する。
【0293】
ここで、スイッチ素子2U、2V、2W、2X、2Y、2Zの開放診断において、交流機(三相モータ)ADが正回転するON/OFFパターンは、
図26及び
図27に示すように、に示すように、以下の(2−1)〜(2−6)である。
【0294】
(2−1)上アームスイッチ素子2U及び下アームスイッチ素子2YをPWM制御によりON/OFFして、その他のスイッチ素子2V、2W、2X、2ZをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、U相電流及びV相電流が流れる。そして、U相電流がU相電流検出部31により検出される。
【0295】
(2−2)上アームスイッチ素子2U及び下アームスイッチ素子2ZをPWM制御によりON/OFFして、その他のスイッチ素子2V、2W、2X、2YをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、U相電流及びW相電流が流れる。そして、U相電流がU相電流検出部31により検出され、W相電流がW相電流検出部32により検出される。
【0296】
(2−3)上アームスイッチ素子2V及び下アームスイッチ素子2ZをPWM制御によりON/OFFして、その他のスイッチ素子2U、2W、2X、2YをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、V相電流及びW相電流が流れる。そして、W相電流がW相電流検出部32により検出される。
【0297】
(2−4)上アームスイッチ素子2V及び下アームスイッチ素子2XをPWM制御によりON/OFFして、その他のスイッチ素子2U、2W、2Y、2ZをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、U相電流及びV相電流が流れる。そして、U相電流がU相電流検出部31により検出される。
【0298】
(2−5)上アームスイッチ素子2W及び下アームスイッチ素子2XをPWM制御によりON/OFFして、その他のスイッチ素子2U、2V、2Y、2ZをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、U相電流及びW相電流が流れる。そして、U相電流がU相電流検出部31により検出され、W相電流がW相電流検出部32により検出される。
【0299】
(2−6)上アームスイッチ素子2W及び下アームスイッチ素子2YをPWM制御によりON/OFFして、その他のスイッチ素子2U、2V、2X、2ZをOFFとする。
このとき、インバータ回路2及び交流機ADには、V相電流及びW相電流が流れる。そして、W相電流がW相電流検出部32により検出される。
【0300】
以上の(2−1)〜(2−6)のON/OFF制御を順番に行い、各状態における相電流を検出することで、スイッチ素子2U、2V、2W、2X、2Y、2Zのうち、開放故障しているスイッチ素子を特定することができる。
【0301】
例えば、上アームスイッチ素子2Uが開放故障している場合には、上記(2−1)及び(2−2)においてU相電流検出部31により得られる電流がゼロとなり、その他の(2−3)〜(2−6)では、通常通りの電流が検出されることになる。
【0302】
上記(2−1)〜(2−6)のON/OFF制御を順番に行うことで、スイッチ素子2U、2V、2W、2X、2Y、2Zの開放診断を、交流機ADを逆回転させることなく、交流機ADを正回転方向に、最大回転数が極数分の1回転させるだけで行うことができる。
【0303】
しかして本実施形態の診断装置4は、
図27に示すように、第2段階の各相間(UV相間、UW相間、VW相間)に電流を流す前に、当該相間に第1段階の単パルス電圧の出力を行う。つまり、診断装置4は、各相間毎に、第1段階の単パルス電圧の出力と、第2段階のスイッチ素子のPWM制御による通電とをこの順で行う。
【0304】
具体的に診断装置4は、第2段階の(2−1)の前に第1段階の(1−1)を行い、第2段階の(2−2)の前に第1段階の(1−2)を行い、第2段階の(2−3)の前に第1段階の(1−3)を行い、第2段階の(2−4)の前に第1段階の(1−4)を行い、第2段階の(2−5)の前に第1段階の(1−5)を行い、第2段階の(2−6)の前に第1段階の(1−6)を行う。
【0305】
このように構成したインバータ装置100によれば、診断装置4が、交流機ADに単パルス電圧を出力して得られた電流値から交流機又は結線の短絡故障を診断するので、インバータ回路2に損傷を与えることなく、通常運転に用いられるインバータ電流検出手段3を用いて負荷側(交流機AD又は結線)の短絡故障を診断することができる。
【0306】
このとき、単パルス電圧のパルス幅が、交流機AD又は結線が短絡故障している場合にのみインバータ電流検出手段3により得られる電流値が所定値以上の短絡電流となるように設定されているので、インバータ回路2に設けられた過電流保護手段を用いて交流機AD又は結線の短絡故障を診断することができる。
【0307】
また、診断装置4が、上アームスイッチ素子2U、2V、2W及び下アームスイッチ素子2X、2Y、2Zを所定のON/OFFパターンで制御して得られた電流値の測定結果パターンから、各スイッチ素子2U、2V、2W、2X、2Y、2Zの開放故障を診断するので、インバータ回路2に損傷を与えることなく、通常運転に用いられるインバータ電流検出手段3を用いてインバータ回路2のスイッチ素子2U、2V、2W、2X、2Y、2Zの開放故障を診断することができる。
【0308】
このとき、交流機ADを正回転させる電流を流しているので、インバータ回路2に通常設けられている電流検出手段の精度でも誤検出しないレベルの電流を流すことができ、診断ミスを防ぐことができる。また、上記(2−1)〜(2−6)のON/OFFパターンにより、スイッチ素子2U、2V、2W、2X、2Y、2Zの開放診断を、交流機ADを逆回転させることなく、交流機ADを正回転方向に極数分の1回転させるだけで行うことができる。
【0309】
なお、本発明は前記第7実施形態に限られるものではない。
例えば、前記インバータ電流検出手段が、U相電流検出部及びW相電流検出部の他に、V相電流を検出するV相電流検出部を有するものであっても良い。
【0310】
また、第2段階における各スイッチ素子のON/OFFパターンは、交流機が正回転するものであれば、前記実施形態に限られない。
【0311】
さらに、前記第7実施形態の診断装置は、インバータ回路のスイッチ素子の開放故障を別の手法により診断可能であれば、第2段階において、交流機の開放故障、インバータ回路と交流機との間の結線の開放故障、前記電流検出手段の故障を前記第7実施形態の手法を用いて診断するように構成しても良い。
【0312】
<<第8実施形態>>
以下に本発明に係る交流機駆動装置の第8実施形態について図面を参照して説明する。なお、第8実施形態において使用する符号は、前記第1〜第7実施形態とは異なる。
【0313】
本実施形態に係る交流機駆動装置100は、例えば三相モータ等の三相交流機ADに三相交流電圧(R相、S相、T相)を供給して駆動するものであり、
図28に示すように、三相交流電源200からの三相交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ回路2と、コンバータ回路2が出力する直流電圧を三相交流電圧に変換するとともに、交流機ADが結線されるインバータ回路3と、コンバータ回路2、インバータ回路3及び交流機AD又は結線の異常を診断する診断装置6とを備えている。
【0314】
コンバータ回路2は、三相交流電圧を整流する整流手段21と、当該整流手段21により整流された直流電圧を平滑する平滑手段22とを備えている。前記整流手段21は、三相フルブリッジダイオード回路である。また、前記平滑手段22は、整流手段21の出力側である直流端子間に接続された平滑コンデンサである。本実施形態では、直流端子間に、直接接続された2つの平滑コンデンサ22a、22bを設けている。なお、符号23a、23bは、平滑コンデンサ22a、22bの電荷を放電させるための放電用抵抗である。
【0315】
また、コンバータ回路2には、前記平滑コンデンサ22a、22bへの突入電流を防止する突入電流防止手段4と、交流電圧を供給する経路を突入電流防止手段4を介した経路とは別経路にする切り替え手段5とを備えている。
【0316】
突入電流防止手段4は、インラッシュリレー41及び抵抗42を有するものであり、本実施形態では、一端が三相交流電源200の中性相(N相)に接続され、他端が2つの平滑コンデンサ22a、22bの接続点に接続されている。また、インラッシュリレー41は、例えば電磁リレーなどの機械式スイッチである。この突入電流防止手段4により、インラッシュリレー41をONすることによって、R相の交流電圧が整流手段21により直流電圧に整流されて平滑コンデンサ22a、22bに印加されて、平滑コンデンサ22a、22bが充電される。
【0317】
切り替え手段5は、コンバータ回路2における整流手段21の入力側と三相交流電源200との間に設けられ、三相交流電圧をコンバータ回路2に入力するためのメインリレー5a、5bである。具体的にメインリレーは、三相のうちS相における整流手段21の入力側とT相における整流手段21の入力側とに設けられた例えば電磁リレーなどの機械式スイッチ5a、5bである。このメインリレー5a、5bをON/OFF制御することにより、三相交流機ADに三相交流電圧を供給することができる。
【0318】
なお、このように構成されたコンバータ回路2には、当該コンバータ回路2に入力される三相交流電圧を各相毎に検出する交流電圧検出手段(不図示)が設けられている。また、コンバータ回路2には、平滑手段22にかかる直流電圧を検出する直流電圧検出手段(不図示)が設けられている。
【0319】
インバータ回路3は、直列接続された上アームスイッチ素子3a及び下アームスイッチ素子3bからなるハーフブリッジ回路(直列回路部)31〜33を3つ備えたものである。なお、各スイッチ素子3a、3bは、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)である。
【0320】
なお、このように構成されたインバータ回路3には、当該インバータ回路3を流れる電流を各相毎に検出するインバータ電流検出手段(不図示)が設けられている。
【0321】
しかして、本実施形態の診断装置6は、
図29に示すように、コンバータ回路2の異常を診断する第1ステップと、インバータ回路3のスイッチ素子3a、3bの短絡故障を診断する第2ステップと、インバータ回路3のスイッチ素子3a、3bの開放故障、及び、前記交流機AD又は前記結線の異常を診断する第3ステップとを、この順で実施する。
【0322】
以下、診断装置6による各部の制御内容とともに、各ステップにおける診断内容を
図29を参照して詳述する。
【0323】
<第1ステップ>
診断装置6は、第1ステップにおいて、突入電流防止手段4及び切り替え手段5を制御して経路を切り替えることにより、コンバータ回路2の異常を診断する。
【0324】
診断装置6は、まず、切り替え手段5及び突入電流防止手段4を制御する前、つまり、メインリレー5a、5bをOFF及びインラッシュリレー41をOFFとした状態で、前記交流電圧検出手段により得られる交流電圧により、コンバータ回路2に入力される交流電圧が正常か否かを判断する。
【0325】
そして、診断装置6は、コンバータ回路2に入力される交流電圧が正常であると判断した場合に、突入電流防止手段4をON及び切り替え手段5をOFFに制御して、前記直流電圧検出手段から得られる直流電圧に基づいて、平滑コンデンサ22a、22bを所定の第1直流電圧まで充電させる。
【0326】
そして、診断装置6は、平滑コンデンサ22a、22bに充電された直流電圧が前記第1直流電圧に到達したことを確認した後、突入電流防止手段4をOFF及び切り替え手段5をONに制御して、平滑コンデンサ22a、22bを前記第1直流電圧からさらに充電させる。
【0327】
このとき、診断装置6は、前記直流電圧検出手段から得られる直流電圧に基づいて、平滑手段22に充電された直流電圧が所定の第2直流電圧になることを確認する。これら一連の動作により、平滑手段22に充電された直流電圧が第1直流電圧又は第2直流電圧にならない場合には、コンバータ回路2に異常があると判断する。具体的には、前記交流電圧検出手段により得られた交流電圧の波形、前記直流電圧検出手段により得られた直流電圧値から、コンバータ回路2の各部の異常を診断する。
【0328】
この第1ステップにおいて、診断装置6は、整流回路21のブリッジダイオードの破損、メインリレー5a、5b又はインラッシュリレー41の破損、コンバータ回路2及び交流電源200との間に設けられたヒューズの破損、平滑コンデンサ22a、22bの異常、整流手段21及び平滑コンデンサ22a、22bの間にリアクトルが設けられている場合にはリアクトルの開放、交流電圧検出手段の異常、直流電圧検出手段の異常等が診断できる。
【0329】
<第2ステップ>
診断装置6は、第2ステップにおいて、複数のハーフブリッジ回路31〜33毎に、2つのスイッチ素子3a、3bの一方をONさせてインバータ回路3に所定値以上の短絡電流が流れた場合に、2つのスイッチ素子3a、3bの他方が短絡故障していると診断する。
【0330】
具体的に、診断装置6は、R相のハーフブリッジ回路31の上アームスイッチ素子3a及び下アームスイッチ素子3bの一方のみをONさせたときに、インバータ電流検出回路から得られた直流電流値が所定値以上の場合には、上アームスイッチ素子3a及び下アームスイッチ素子3bの他方が短絡故障していると診断する。また、S相のハーフブリッジ回路32及びT相のハーフブリッジ回路33についても、同様にして、スイッチ素子3a、3bの短絡故障を診断する。
【0331】
<第3ステップ>
診断装置6は、第3ステップにおいて、インバータ回路3のスイッチ素子3a、3bをON/OFFを制御して交流機ADに交流電流を流し、交流機ADにかかる三相交流電圧又は交流機ADに流れる三相交流電流によって、スイッチ素子3a、3bの開放故障、及び、前記交流機AD又は前記結線の異常を診断する。なお、交流機ADにかかる三相交流電圧は、インバータ回路3の出力電圧を検出する出力電圧検出手段(不図示)により得られたものである。また、交流機ADに流れる三相交流電流は、前記インバータ電流検出手段により得られたものである。
【0332】
具体的に診断装置6は、交流機ADにかかる三相交流電圧又は各相の電圧値が所定値未満又は交流機ADに流れる三相交流電流が所定値未満の場合に、インバータ回路3のスイッチ素子3a、3bが開放故障である、インバータ電流検出手段が異常である、交流機ADの内部巻線が開放・短絡故障である、結線が開放・短絡故障であることを診断する。
【0333】
また、診断装置6は、前記第1ステップから前記第3ステップを実施して、コンバータ回路2、インバータ回路3、交流機AD及び結線が正常なことを確認した後に、インバータ回路3及び交流機ADに電流を流し、平滑コンデンサ22a、22bの直流電圧の時間的変化から、切り替え手段5の異常を診断する第4ステップを実施する。
【0334】
具体的に診断装置6は、平滑コンデンサ22a、22bの電荷をインバータ回路3及び交流機ADに流す強制放電を行い、前記直流電圧検出手段により得られる当該放電による平滑コンデンサ22a、22bの直流電圧の時間的変化から、切り替え手段5の異常を診断する。なお、切り替え手段5が短絡故障している場合には、平滑コンデンサ22a、22bの直流電圧の時間的変化が、切り替え手段5が正常な場合に比べて緩やかとなり、切り替え手段5が短絡故障していると診断できる。
【0335】
また、整流手段21及び平滑コンデンサ22a、22bの間にリアクトルが設けられている場合には、診断装置6は、平滑コンデンサ22a、22bの直流電圧を電圧降下させた後に、前記切り替え手段5をONして、前記リアクトルに通電させる。そして、電圧降下後に前記直流電圧検出手段により得られた直流電圧と、前記リアクトルに通電したときに前記直流電圧検出手段により得られた直流電圧とを比較して、リアクトルの断線を診断する。
【0336】
以上の第1〜第3ステップにおいて、診断装置6は、何れかのステップにおいて、異常を診断した場合には、次のステップに移行せず、故障診断モードを終了する。
【0337】
このように構成したインバータ装置100によれば、診断装置6がコンバータ回路2の異常を診断する第1ステップと、インバータ回路3のスイッチ素子3a、3bの短絡故障を診断する第2ステップと、インバータ回路3のスイッチ素子3a、3bの開放故障、及び、前記交流機AD又は前記結線の異常を診断する第3ステップとを、この順で実施するので、各部に損傷を与えることなく、正確に故障診断箇所を特定することができる。
【0338】
なお、本発明は前記第8実施形態に限られるものではない。
例えば、前記第8実施形態では、交流電圧検出手段を設けた構成であったが、前記診断装置6が、前記整流手段21により整流された直流電圧の電圧波形から、交流電圧を推測するように構成しても良い。
【0339】
また、交流電圧検出手段の代わりに、交流電圧の位相を検出する位相検出手段を備え、前記診断装置6が、当該位相検出手段により得られた交流電圧の位相と、前記直流電圧検出手段により得られた直流電圧とから、交流電圧を推測するように構成しても良い。
【0340】
さらに、前記第1〜第8実施形態の各構成を互いに組み合わせてもよい。例えば、前記第1実施形態のリアクトル(コイル)の異常診断において、前記第3実施形態の診断装置の診断機能を用いても良い。また、前記第8実施形態の第1ステップおけるコンバータ回路の異常診断において、前記第1、第2実施形態における診断装置の診断機能を用いても良い。さらに、前記第8実施形態の第3ステップにおいて、第3〜第7実施形態における診断装置の診断機能を用いても良い。
【0341】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。