(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559982
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】記録計及び記録計を備えた測定システム
(51)【国際特許分類】
G04G 3/00 20060101AFI20190805BHJP
G01R 22/06 20060101ALI20190805BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20190805BHJP
G04R 20/26 20130101ALI20190805BHJP
G04G 5/00 20130101ALI20190805BHJP
【FI】
G04G3/00 H
G01R22/06 130E
G01R22/06 120E
G08C17/00 Z
G04R20/26
G04G5/00 J
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-51259(P2015-51259)
(22)【出願日】2015年3月13日
(65)【公開番号】特開2016-170120(P2016-170120A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】502036826
【氏名又は名称】埼広エンジニヤリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳川 博之
(72)【発明者】
【氏名】梶村 浩司
【審査官】
菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−20698(JP,A)
【文献】
特開2010−164346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 3/00− 3/04
G04G 5/00− 5/04
G04R 20/00−20/30
G01R 22/00−22/10
G08C 17/00−17/06
G01D 9/00− 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧電路のうちの異なる場所に取り付けられた複数の記録計を備えた測定システムであって、
前記各記録計と双方向の無線通信が可能に構成され、かつ、内部時計を有する端末装置を含み、
前記各記録計は、
電源周波数に基づいて時刻を刻む周波数時計と、
前記取付場所の電圧及び電流の少なくとも一方を測定する測定部と、
データを記憶する記憶部と、
前記測定部で測定された測定データを前記周波数時計の時刻に基づいて所定回数又は所定期間にわたって前記記憶部に記憶させる制御部と、
前記端末装置との間でデータ送受信をする無線通信部とを備え、
前記複数の記録計の周波数時計は、それぞれ、同一電源の電源電圧から抽出された電源周波数に基づいて時刻を刻むように構成され、
前記端末装置が、該内部時計の現在時刻を前記各記録計に無線送信し、
前記各記録計の制御部が、前記無線通信部を介して前記端末装置から受信した前記内部時計の現在時刻を前記周波数時計の時刻に反映し、該反映後に前記周波数時計の時刻に基づいて前記測定部で測定された測定データを前記記憶部に記憶させる
ことを特徴とする測定システム。
【請求項2】
請求項1記載の測定システムにおいて、
前記端末装置は、前記内部時計の現在時刻に加えて、測定開始時刻を前記各記録計に無線送信するように構成されており、
前記記録計の制御部は、前記内部時計の現在時刻を前記周波数時計の時刻に反映した後に、前記測定開始時刻から前記周波数時計の時刻に基づいて前記測定部で測定された測定データを前記記憶部に記憶させる
ことを特徴とする測定システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の測定システムにおいて、
前記端末装置は、
データを表示可能な表示部と、
前記各記録計の測定部で測定された測定データを無線通信で収集し、かつ、前記表示部に対して、前記各記録計の測定データ及び該測定データに基づいて算出された加工データの少なくとも一方である波形データを同一時間軸上に重ねて表示させる端末制御部とを備える
ことを特徴とする測定システム。
【請求項4】
請求項3記載の測定システムにおいて、
前記端末装置の表示部は、
前記波形データを同一時間軸上に重ねて表示可能に構成された第1表示部と、
前記第1表示部に表示させる波形データとは異なる前記波形データを同一時間軸上に重ねて表示可能に構成された第2表示部とを備え、
前記第1表示部と前記第2表示部とは、画面横方向における時刻が揃うように上下方向に並べて配設されている
ことを特徴とする測定システム。
【請求項5】
低圧電路に取り付けられた記録計であって、
電源周波数に基づいて時刻を刻む周波数時計と、
前記取付場所の電圧及び電流の少なくとも一方を測定する測定部と、
データを記憶する記憶部と、
前記測定部で測定された測定データを前記周波数時計の時刻に基づいて所定回数又は所定期間にわたって前記記憶部に記憶させる制御部と、
測定データを収集する端末装置との間でデータの送受信を行う無線通信部を備え、
前記記録計の周波数時計は、前記低圧電路のうちの異なる場所に取り付けられた同じ構成を有する他の記録計と同一電源の電源電圧から抽出された電源周波数に基づいて時刻を刻むように構成され、
前記制御部は、前記無線通信部を介して前記端末装置から該端末装置が有する内部時計の現在時刻を受けた場合に、該現在時刻を前記周波数時計の時刻に反映し、該反映後に前記周波数時計の時刻に基づいて前記測定部で測定された測定データを前記記憶部に記憶させる
ことを特徴とする記録計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力量計に接続された配電経路の電圧及び電流の少なくとも一方を測定する記録計及び該記録計を用いた測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、需要家の電力量計等に仮設して、電圧変動状態及び負荷電流状態を測定、表示及び記録し、配電線路状態を確認できるようにした電圧・電流記録計が開示されている。
【0003】
近年、太陽光発電等の再生可能エネルギーの家庭への普及に伴い、電力需要者からの出力抑制や電圧等に関する問い合わせが増加しており、該問い合わせに対応するために、特許文献1に開示されたような記録計を用いて、電圧変動状態及び負荷電流状態の測定が長期間(例えば、数日間)にわたって実施される場合がある。
【0004】
上記測定において、例えば、家庭用の場合、電力需要者の各家庭に設けられた電力量計、引込分岐点及び柱上変圧器等の複数の測定箇所を設定し、各測定箇所に記録計を設置して測定を行う場合がある。その場合、例えば、作業員等の作業者が、測定後にタブレット等の端末装置を用いて各測定箇所の測定データを無線で受信し、その測定データに基づいて作成された表示データを電力需要者に示して説明を行ったりする場合がある。
【0005】
上述のように複数の測定箇所に設置した記録計からの測定データを取得して、確認、解析等を行う場合、複数の記録計間での時刻のずれがあると、正確な確認、解析等ができなくなるため、測定データの時刻が正確に一致していることが強く望まれている。
【0006】
一般的な記録計には、RTC(Real-Time Clock)回路等に基づく時計装置が設けられているが、部品や回路の製造ばらつき等により、正確に時刻を一致させることが困難であり、例えば、複数の記録計間で数日間に数秒間程度の時刻ずれが発生する場合がある。そこで、各記録計に、GPS(Global Positioning System)時計等の無線通信等を用いた時刻補正機能を有する時計を搭載することも考えられるが、コストが高く、障害物等がある環境では時刻情報を高精度に受信できないといった問題がある。
【0007】
これに対し、例えば、特許文献2には、波形記録装置を複数設置した場合に、各波形記録装置間のサンプリングタイミングを、時間軸上一致させるとともに、一波形記録装置群としてサンプリングデータを記録可能とする波形記録装置及び波形記録方法が開示されている。このものでは、メイン機とサブ機との間を専用ケーブル或いは通信ネットワークで接続し、共通のサンプリング信号を用いて時間軸上のサンプリングタイムを一致させるようにしている。
【0008】
また、特許文献3には、電子式電力量計等に用いる時計装置として、電源周波数に対応したパルスをカウントして電源同期時計として時刻を刻む装置が開示されている。このものでは、一定周期毎にバックアップ用時計の時刻を周波数時計の時刻に合わせ、パルスが基準電源周期より短い場合(例えば、電源にノイズが混入した場合)に、バックアップ用時計に切り替えることで、時計の進みを防止できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−92200号公報
【特許文献2】特許第4649397号公報
【特許文献3】特開平8−21884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2のように、専用ケーブルを介してサンプリング信号を送信する方式の場合、例えば、家庭用の電力量計、引込分岐点及び柱上変圧器の二次側等の各測定箇所間を専用ケーブルで接続する必要があるが、そのような作業を測定毎に(測定箇所が異なる度に)行うのは現実的ではない。また、仮に、通信ネットワークとして、既存の無線通信回線を使用し、該無線通信回線を介してサンプリング信号を送受信するとしても、長期間の測定において、無線通信回線が定常的又は突発的なノイズの影響を受ける場合があり、該測定期間中に複数の記録計の測定時刻がずれてしまう可能性がある。すなわち、継続して正確な時刻一致を図るのは困難な場合がある。
【0011】
複数の記録計を備えた測定システムのうち、1つの記録計に特許文献3に開示されたような技術を適用し、他の記録計にRTC回路等に基づく時計が内蔵されていた場合、複数の記録計間で測定時刻の一致をさせるのは困難である。また、仮に複数の記録計すべてに特許文献3に開示されたような技術を適用した場合においても、記録計単体では、所定の周期毎に電源周期が規定の範囲内になるか否かを判定して時刻の補正をすることができる、すなわち、所定期間毎に時計の進みを防止することができるが、複数の記録計間で正確に時刻を一致させることができない場合がある。具体的には、電源周期の判定を行う所定期間中における複数の記録計間の時刻のずれは補正することができない。また、上記所定期間を超える期間においても、複数の記録計間で電源周期が上記規定の範囲内でずれているような場合、測定期間が経過するにしたがって複数の記録計間の時刻にずれが生じ、正確に時刻を一致させることができない場合がある。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主な目的は、低圧電路に複数の記録計を取り付けて測定を行う場合において、より正確に測定時刻を一致させて測定することができる記録計及び測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る測定システムは、低圧電路のうちの異なる場所に取り付けられた複数の記録計を備えた測定システムにおいて、各記録計が電源周波数に基づいて時刻を刻む周波数時計を備え、複数の記録計の周波数時計は、それぞれ、同一電源の電源電圧から抽出された電源周波数に基づいて時刻を刻むように構成した。
【0014】
すわなち、本発明の第1態様では、低圧電路のうちの異なる場所に取り付けられた複数の記録計を備えた測定システムであって、前記各記録計は、電源周波数に基づいて時刻を刻む周波数時計と、前記取付場所の電圧及び電流の少なくとも一方を測定する測定部と、データを記憶する記憶部と、前記測定部で測定された測定データを前記周波数時計の時刻に基づいて所定回数又は所定期間にわたって前記記憶部に記憶させる制御部とを備え、前記複数の記録計の周波数時計は、それぞれ、同一電源の電源電圧から抽出された電源周波数に基づいて時刻を刻むように構成されている。
【0015】
この態様によると、各記録計は、同一電源の電源周波数に基づいて所定回数又は所定期間にわたる測定を行うように構成されているため、仮に測定中に負荷の変動等により電源にノイズが混入したり、電源周波数に微小の揺らぎがあったりして周波数時計が標準時刻(例えば、日本標準時)からずれるような場合においても、複数の記録計の周波数時計の時刻が一様にずれるため、記録計間での時刻のずれがない状態で測定を継続することができる。これにより、より正確な測定データの解析等ができるようになる。また、記録計間で時刻の一致を取るのに際して、各記録計間でサンプリング信号等の特別な信号の受け渡しをする必要がない。
【0016】
上記態様の測定システムにおいて、前記各記録計と双方向の無線通信が可能に構成され、かつ、内部時計を有する端末装置を備え、前記各記録計は、前記端末装置との間でデータ送受信をする無線通信部をさらに備え、前記端末装置が、該内部時計の現在時刻を前記各記録計に無線送信し、前記各記録計の制御部が、前記無線通信部を介して前記端末装置から受信した前記内部時計の現在時刻を前記周波数時計の時刻に反映し、該反映後に前記周波数時計の時刻に基づいて前記測定部で測定された測定データを前記記憶部に記憶させる、ように構成されていてもよい。
【0017】
この態様によると、各記録計が、端末装置から受信した内部時計の現在時刻を周波数時計の時刻に反映させてから周波数時計の時刻に基づく測定を開始するため、測定開始時点での各記録計間の時刻をより正確に一致させることができる。ここで、仮に、端末装置の時刻が標準時刻からずれているような場合においても、各記録計間の測定開始時刻は一致する。したがって、端末装置の時刻と標準時刻との関係に拘わらず、各記録計の測定データ間での時刻ずれがない状態で測定を開始することができる。なお、端末装置の時刻が標準時刻と一致している場合には、複数の記録計は標準時刻に基づく測定を行うことができ、その方が好ましい。
【0018】
上記態様の測定システムにおいて、前記端末装置は、前記内部時計の現在時刻に加えて、測定開始時刻を前記各記録計に無線送信するように構成されており、前記各記録計の制御部は、前記内部時計の現在時刻を前記周波数時計の時刻に反映した後に、前記測定開始時刻から前記周波数時計の時刻に基づいて前記測定部で測定された測定データを前記記憶部に記憶させる、ように構成されていてもよい。
【0019】
この態様によると、記録計は、測定開始時刻から測定を開始するように構成されているため、測定開始に先立って端末装置から各記録計に内部時計の現在時刻を設定することができる。これにより、測定時刻の管理が容易になるとともに、例えば、作業者が端末装置で記録計毎の受信状況を個別に確認しながら順をおって時刻送付(時刻合わせ)をすることができるようになる。すなわち、作業者の利便性が向上するとともに、複数の記録計の時刻設定が終了してから測定を開始させるようにすることができる。
【0020】
上記態様の測定システムにおいて、前記記録計は、時刻データを生成するリアルタイムクロック回路をさらに備えており、前記記録計の制御部は、所定の時間毎に前記周波数時計の時刻を前記リアルタイムクロック回路の時刻に反映し、かつ、前記電源周波数が所定の周波数範囲から外れた場合に、前記測定部による測定を、前記周波数時計の時刻に基づく測定から前記リアルタイムクロック回路の時刻に基づく測定に切り替える、ように構成されていてもよい。
【0021】
この態様によると、例えば、部品や回路等の製造ばらつき等により、仮に各記録計間でリアルタイムクロック回路の時刻にずれが生じるような場合でも、所定期間毎にリアルタイムクロック回路の時刻を、記録計間で揃った時刻に補正することができる。これにより、仮に停電が発生した場合においても、復電後に測定を継続させることができる。これにより、本態様に係る記録計は、通常動作時における複数の記録計間での時刻一致を取りつつ、非常時等においてもできるだけ少ない時刻誤差で測定を継続させることができる。
【0022】
なお、上記態様では、電源ノイズが混入した場合においても、複数の記録計の周波数時計がそのノイズに応じて一様にずれるため、リアルタイムクロック回路に切り替えなくても、記録計間での時刻のずれがない状態で測定を継続することができる。一方で、記録計の制御部が、リアルタイムクロック回路への切り替えができることで、通常動作時における複数の記録計間での正確な時刻一致を実現しつつ、仮に電源ノイズが混入した場合には標準時刻からのずれを極力排除して測定を継続することができる利点がある。
【0023】
上記態様の測定システムにおいて、前記端末装置は、データを表示可能な表示部と、前記各記録計の測定部で測定された測定データを無線通信で収集し、かつ、前記表示部に対して、前記各記録計の測定データ及び該測定データに基づいて算出された加工データの少なくとも一方である波形データを同一時間軸上に重ねて表示させる端末制御部とを備える、ように構成されていてもよい。
【0024】
この態様によると、端末装置が各記録計から受けた測定データに基づく波形データを同一時間軸上に重ねて表示させることができるため、各測定地点での電圧変動状態及び負荷電流状態等の変動状態(以下、電圧等変動状態ともいう)の対比確認が容易になる。また、例えば、作業者が電力需要者に該変動状況等を説明する場合に、上記波形データを示して説明を行うことができ、説明が容易になり、かつ、電力需要者にとってもわかりやすい説明を行うことができる利点がある。
【0025】
上記態様の測定システムにおいて、前記端末装置の表示部は、前記波形データを同一時間軸上に重ねて表示可能に構成された第1表示部と、前記第1表示部に表示させる波形データとは異なる前記波形データを同一時間軸上に重ねて表示可能に構成された第2表示部とを備え、前記第1表示部と前記第2表示部とは、画面横方向における時刻が揃うように上下方向に並べて配設されている、ように構成されていてもよい。
【0026】
この態様によると、例えば、第1表示部に電圧変動状態を表示し、第2表示部に負荷電流状態を表示させたときに、画面横方向における時刻が揃うため、第1表示部に表示したデータと、第2表示部に表示したデータとを同一時間軸上で対比しながら確認することができる。これにより、例えば、電圧変動と電流変動のように、相関関係にあるような項目の波形を、表示を分けてかつ時間軸を揃えて表示させることができるため、対応関係の確認や、該対応関係を用いた説明が容易になるとともに、電力需要者にとってもわかりやすい説明を行うことができる利点がある。
【0027】
本発明の第2態様では、低圧電路に取り付けられた記録計であって、電源周波数に基づいて時刻を刻む周波数時計と、前記取付場所の電圧及び電流の少なくとも一方を測定する測定部と、データを記憶する記憶部と、前記測定部で測定された測定データを前記周波数時計の時刻に基づいて所定回数又は所定期間にわたって前記記憶部に記憶させる制御部とを備え、前記記録計の周波数時計は、低圧電路のうちの異なる場所に取り付けられた同じ構成を有する他の記録計と同一電源の電源電圧から抽出された電源周波数に基づいて時刻を刻むように構成されている。
【0028】
この態様によると、記録計は、他の記録計と同一電源の電源周波数に基づいて所定回数又は所定期間にわたる測定を行うように構成されているため、仮に測定中に電源にノイズが混入したり、電源周波数に微小の揺らぎがあったりして周波数時計が標準時刻(例えば、日本標準時)からずれるような場合においても、他の記録計との間での時刻のずれがない状態で測定を継続することができる。これにより、例えば、測定後に外部の機器から測定データを収集する場合に、他の記録計と間で時刻の一致が取れたデータを提供することができる。
【0029】
上記態様の記録計において、測定データを収集する端末装置との間でデータの送受信を行う無線通信部を備え、前記制御部は、前記無線通信部を介して前記端末装置から該端末装置が有する内部時計の現在時刻を受けた場合に、該現在時刻を前記周波数時計の時刻に反映し、該反映後に前記周波数時計の時刻に基づいて前記測定部で測定された測定データを前記記憶部に記憶させる、ように構成されていてもよい。
【0030】
この態様によると、記録計は、端末装置から受信した内部時計の現在時刻を周波数時計の時刻に反映させてから周波数時計の時刻に基づく測定を開始するため、測定開始時点での時刻を端末装置の内部時計の時刻に一致させた状態で測定を開始することができる。これにより、本開示に係る記録計は、端末装置による測定データの確認や解析等が容易な測定データを提供することができる。さらに、例えば、複数の記録計を用いた測定を実施する場合に、測定開始時点における該複数の記録計の時刻を端末装置の内部時計の時刻に一致させることができ、複数の記録計間の測定時刻のずれをより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、配電経路上の異なる複数の地点に記録計を設置して測定を行う場合において、簡易な構成でより正確に測定時刻を一致させて測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施形態に係る測定システムを含む全体構成図である。
【
図3】端末装置の接続状態を示すブロック図である。
【
図4】記録計の時計設定の流れを示すフローチャートである。
【
図5】測定システムの測定に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】測定結果の表示画面の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0034】
図1に示すように、本態様に係る複数の記録計1,1,…は、低圧電路90のうちの異なる場所に取り付けられている。
図1の例では、記録計1は、柱上変圧器92の二次側(低圧配電線93側)の接続端子、引込分岐点94の接続端子及び計器取付点95における接続端子に接続されている。より具体的には、記録計1には、後述する電圧端子26に電圧測定ケーブルの基端部が接続され、後述する電流端子25(25a,25b,25c)に電流測定ケーブルの基端部が接続されており、それぞれのケーブルの先端に設けられた検出部(図示しない)が、各取付場所において低圧電路90の電圧及び電流を測定できるように取り付けられている。なお、本開示において、低圧電路90とは、高圧配電線91と低圧配電線93との間に接続された柱上変圧器92の低圧電線側の端子から引込分岐点94を介して計器取付点95までの低圧配電経路97及び屋内配線経路96を含む概念である。また、屋内配線経路96とは、電力量計99が取り付けられた計器取付点95よりも屋内側の配線経路であり、太陽光発電装置83が接続されたパワーコンディショナーから分電盤85までの間の配線経路や分電盤85から各負荷までの配線経路を含む概念である。また、以下の実施形態では、測定対象の配電経路は、単相/三相3線式であるものとして説明する。
【0035】
(記録計の構成)
図2に示すように、記録計1には、基板10に設けられた電流端子25及び電圧端子26が設けられており、これらの端子25,26から低圧電路90の電流信号I1〜I3及び電圧P1〜P3が入力される。電流信号I1〜I3は、検知部の電流測定レンジに応じて切り替え可能に構成された負担抵抗を有する電流入力回路11を介して測定部12に入力される。電圧P1〜P3は、直接又は分圧されて測定部に入力される。
【0036】
測定部12は、電流信号I1〜I3及び電圧P1〜P3を受けて、A/D(Analog/Digital)変換し、測定結果をデジタル信号としてCPU13に出力する。なお、測定部12によるサンプリング周期は任意に設定することが可能である。また、測定部12が、電流信号I1〜I3及び電圧P1〜P3のうちいずれか一方を測定するように構成されていてもよい。
【0037】
CPU13は、測定動作に係る各種設定の変更や測定データの取得、記録、送信等の各種制御を行う。また、操作部32や外部機器からの設定や予め定められた設定に基づいて、表示部31に対して、電圧P1〜P3や電流信号I1〜I3に基づく現在の測定値や、各種設定情報を表示する制御を行う。また、CPU13は、電圧端子26のうちのいずれかから入力された電圧(例えばP1)を周波数カウント用のA/D変換回路17でデジタル変換し、該電圧(電源周波数)に基づいて時刻を刻むように構成されている。本開示に係る周波数時計とは、このように低圧電路から受けた電圧から抽出された電源周波数に基づいて時刻を刻む構成を指すものとする。
【0038】
無線通信部16は、後述する端末装置(例えば、タブレット端末)40の無線通信部42と双方向データ通信が可能に構成されている。無線通信部16は、例えば端末装置40から各種設定情報等を受信し、測定データ等を端末装置40に送信する。具体的には、自機の存在を示すビーコン信号を発信したり、端末装置40から受けた測定データ要求に応じてCPU13から受けた測定データを端末装置40に送信したりする。
【0039】
基板10に設けられた各回路の電源は、電源部15から供給されており、電源部15は、電圧P1,P2を受けて、DC電源を生成している。また、記録計1は、内部時計としてCPU13に接続されたリアルタイムクロック回路(以下、RTC回路ともいう)18を備えており、内蔵電池19からの電源を受けて動作する。
【0040】
(端末装置の構成)
図3に示すように、作業者等が使用する端末装置40には、各記録計1が有する無線通信部16と双方向データ通信が可能に構成された無線通信部42と、無線通信部42の通信を制御するCPU43とを備えている。各記録計1の無線通信部16と送受信するデータは、前述のとおりである。
【0041】
CPU43は、各種制御を行う。具体的には、各記録計1に対して測定動作に係る各種設定の変更を行う、各記録計1から測定データを取得する、該取得した測定データをメモリ44に記録させる、メモリ44に記録されている測定データを加工等してタッチパネル41の表示部41aに表示させる等の各種制御を行う。CPU43から記録計に送信するデータ(情報)は、例えば、端末装置40から時刻情報、測定周期情報、電流測定レンジの設定情報等の各種設定情報等が含まれる。また、各記録計1に対してデータ要求信号等を送信して、各記録計1に測定データの送信要求を行う。
【0042】
(記録計の時計設定及び測定(1))
以下において、
図4を参照しながら、記録計1の時計設定フロー及び電圧、電流の測定フローの一例について詳細に説明する。なお、本「記録計の時計設定及び測定(1)」では、測定開始時点において、複数の記録計1,1,…のすべてのRTC回路18の時刻が一致しているものとする。
【0043】
まず、作業者は、複数の記録計1,1,…を各測定場所に設置し、電圧測定ケーブル及び電流測定ケーブルの検出部を低圧電路90に取り付ける。
【0044】
各記録計1では、上記検出部が低圧電路90に取り付けられると、CPU13が、A/D変換回路17の出力結果に基づいて、周波数判定(50Hz/60Hz)を行う(S11)。具体的には、電源周波数が、50Hzまたは60Hzに対して所定の範囲内に収まっているかを確認し、接続されている低圧電路の電源周波数(50Hzまたは60Hz)を確定させる。
【0045】
S11で周波数判定が確定すると、RTC回路18の時刻が周波数時計に反映され(S12)、その後、CPU13が周波数時計に基づく時刻と、該時刻における測定データをメモリ14に記憶させ(S13)、データ取得回数(記憶されたデータ数)が所定の回数(所定のデータ数)に到達したか否かを判定する(S14)。
【0046】
データ取得回数が所定の回数未満の場合(S14でNo)、測定場所に係る低圧電路の電源周波数が所定の範囲以内に収まっているか否かが確認され(S15)、正常であれば、時計更新時間が経過したか否かが確認される(S16)。そして、データ取得回数が所定の回数に到達するか(S14でYes)、または時計更新時間が経過するまでの間(S16でNo)、フローはS13からS16の処理を繰り返し実施する。すなわち、CPU13は周波数時計の時刻に基づいて所定時間毎に所定回数に到達するまで測定データを記憶部に蓄積する。
【0047】
一方で、S16において時計更新時間が経過したとき(S16でYes)、周波数時計の時刻がRTC回路18の時刻に反映され(S17)、フローはS13に戻る。これにより、時計更新時間毎にRTC回路18の時刻を周波数時計の時刻にアップデートすることができる。
【0048】
また、S11において周波数判定が未確定である場合、またはS15で測定場所に係る低圧電路90の電源周波数が所定の範囲から外れている場合(異常の場合)、CPU13は、RTC回路18の所定の時刻毎に、RTC回路18の時刻と、該時刻における測定データをメモリ14に記憶させる。
【0049】
そして、複数の記録計1,1,…が、上記のフローを各測定場所においてそれぞれに実施する。そして、通常のフロー(S13からS16が繰り返し実施されて測定が完了した場合)において、例えば、作業者が測定開始から十分な期間が経過した後(測定完了後)に、端末装置40等を用いて記録計1に測定データを要求すると、各記録計1から周波数時計の時刻に基づいて所定回数にわたって記憶されたデータを取得することができる。
【0050】
ここで、各記録計1の周波数時計は、それぞれ、同一電源(同一低圧電路上)の電圧から抽出された電源周波数に基づいて時刻を刻むように構成されているため、仮に各記録計1での測定中に電源にノイズが混入したり、電源周波数に微小の揺らぎがあったりして周波数時計が標準時刻(例えば、日本標準時)からずれるような場合においても、複数の記録計1の周波数時計の時刻が一様にずれるため、記録計1間での時刻のずれがない状態で測定を継続することができる。これにより、より正確に測定時刻を一致させて電圧、電流等の測定することができ、より正確な測定データの解析、表示等ができるようになる。
【0051】
また、低圧電路90の電源周波数が所定の範囲から外れている場合に、CPU13が周波数時計によって補正されたRTC回路18の時刻に基づいて測定データを記録するようにしているため、通常動作時における複数の記録計間での時刻一致を取りつつ、異常時にもできるだけ少ない時刻誤差で測定を継続させることができる。
【0052】
なお、本発明では、電源ノイズが混入した場合においても、複数の記録計1,1,…の周波数時計がそのノイズに応じて一様にずれるため、S15の分岐及びS18の処理はなくてもかまわない。ただし、上記S15の分岐及びS18の処理を設けることにより、通常動作時における複数の記録計間での正確な時刻一致を実現しつつ、仮に電源ノイズが混入した場合には標準時刻からのずれを極力排除して測定を継続したいというニーズがある場合等に有用である。
【0053】
(記録計の時計設定及び測定(2))
次に、
図5を参照しながら、記録計1の時計設定フロー及び電圧、電流の測定フローの他の例について詳細に説明する。なお、S11,S12,S15〜S18については、
図4のフローと同一又は類似であり、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0054】
まず、作業者は、複数の記録計1,1,…を各測定場所に設置し、電圧測定ケーブル及び電流測定ケーブルの検出部を低圧電路90に取り付ける。すると、各記録計では、
図4のS11及びS12の処理が行われる。
【0055】
次に、作業者は、端末装置40の操作部41bを操作して、端末装置40の内部時計の時刻及び測定開始時刻を複数の記録計1,1,…に順次送信する(S21)。このとき、各記録計1は、ビーコン発信(S30)をしており、作業者は、端末装置40上で設置した記録計1のうち、通信可能な記録計1を確認し(S20)、該通信可能な記録計1のうちから所望の記録計1に内部時計の時刻を送信する。
【0056】
端末装置40の時刻を受信した各記録計1は、受信した端末時刻を周波数時計の時刻及びRTC回路18の時刻に反映させ(S31)、測定部12に電圧、電流等の測定をさせる(S32)。S32では、CPU13は、測定部12に電圧、電流等の測定はさせるが、メモリ14への測定結果の記憶は行わない。そして、各記録計1のCPU13は、測定開始時刻(
図5では予約時刻)までの間(S33でNo)、上記S32の測定を繰り返す。このとき、CPU13は、表示部31に該S32での測定結果を表示させてもよい。
【0057】
その後、測定開始時刻になると(S33でYes)、各記録計1では、所定時間毎に所定回数に到達するまで、継続して測定データが記憶部に蓄積される(S34)。そして、所定回数の測定データの記録が完了すると(S35でYes)、記録計1は測定データの送信可能な待機状態になる(S36)。このとき、
図4のS15及びS16の判定も並行して実施されており、必要に応じてフローはS17,S18に移行する。
【0058】
次に、作業者は、測定開始から十分な期間が経過した後(測定完了後)に、端末装置40等を用いて記録計1からのビーコン受信を行い、通信可能な記録計1を確認するとともに、測定が完了しているか否かを確認する(S22)。その後、作業者は、端末装置40の操作部41bを操作して、各記録計1に測定データを要求すると(S23)、各記録計1から端末装置40に対して、周波数時計の時刻に基づいて所定回数にわたって記憶されたデータが送信される(S37)。端末装置40に回収された測定データは、メモリ44に記憶され(S24)、作業者の操作等に応じて表示部41aに表示される(S25)。
【0059】
図6は、タッチパネル41への測定データの表示例を示した図である。
図6(a)の上段は複数の記録計1,1,…の電圧波形を重ねて表示している例を示しており、実線が引込分岐点94、破線が柱上変圧器92の二次側、二点鎖線が計器取付点95の電圧波形をそれぞれ表示している。
図6(a)の下段は計器取付点95の潮流の大きさと潮流方向と併せて表示した波形である。また、
図6(b)は、各時刻における複数の記録計1,1,…の電力量を棒グラフで並べて表示している例を示しており、右下がり斜線が引込分岐点94の順方向電力量、黒塗りが計器取付点95の順方向電力量、白抜きが計器取付点95の逆方向電力量をそれぞれ表示している。
【0060】
図6(a)に示すように、各記録計1から受けた測定データに基づく波形データ(電圧)を同一時間軸上に重ねて表示させることにより、電圧等変動状態の対比確認が容易になっている。また、各記録計1の設置場所における電圧波形と、逆潮流波形をタッチパネル41の画面横方向の時刻が揃うように上下方向に並べて表示させることにより、各測定場所の電圧と、逆潮流との関係が容易に把握できる。なお、
図6(b)に示すように、棒グラフで表示してもよく、同一記録計1の複数の測定データを重ねて表示させるようにしてもよい。
【0061】
以上のように、本態様によると、各記録計1が、端末装置40から受信した内部時計の現在時刻を周波数時計の時刻に反映させてから周波数時計の時刻に基づく測定を開始するため、測定開始時点での各記録計1間の時刻をより正確に一致させることができる。また、各記録計1が端末装置40から指定された測定開始時刻から測定を開始するように構成されているため、測定時刻の管理が容易になる。
【0062】
また、各記録計1からアプリケーションレベルでビーコンを通知することにより、端末装置側で記録計1の存在を認識しながらデータ回収や動作モードの設定ができる。さらに、上記ビーコンを使用することにより、端末装置には各記録計1の情報を予め登録する必要がなくなり、不特定の記録計1に対してデータ回収や動作モードの設定が可能になる。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明してきたが、種々の改変が可能である。
【0064】
−変形例−
例えば、本実施形態では、測定対象である低圧電路90は、単相/三相3線式であるものとして説明したが、これに限定されず、本発明に係る記録計1及び測定システムは単相2線式の低圧電路90にも適用することが可能である。
【0065】
また、
図6(a)の電圧波形や潮流(電流波形)に代えて、力率、位相、電力等の波形を表示してもよい。また、
図6(b)において、電力量の示した棒グラフを上段に表示し、下段に電圧、潮流(電流)、力率、位相、電力等の波形を表示させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る記録計は、簡易な構成でより正確に測定時刻を一致させて測定することができるため、低圧電路の電圧変動状態等を測定する記録計として極めて有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 記録計
12 測定部
13 CPU(制御部)
14 メモリ(記憶部)
16 無線通信部
18 リアルタイムクロック回路
22a 溝部
22b 板状閉部
33 ベルト
40 端末装置
41a 表示部
43 CPU(端末制御部)