【実施例】
【0024】
まず、本実施例に係る人物認証の概念について説明する。
図1は、実施例に係る人物認証の概念を示す概念図である。本実施例に係る人物認証システムでは、認証対象者の登録画像データをあらかじめ取得しておき、探索エリアに俯瞰用飛行体31及び照合用飛行体32を飛行させて認証対象者の探索を行なう。具体的には、俯瞰用飛行体31及び照合用飛行体32を使って、登録画像データに登録された人物を探す方法を用いるものであり、飛行経路の候補をランダムに作成し、各候補によればどれくらいの照合値が得られるかという評価値を算出し、最も高い評価値が得られる飛行経路に決定する。以下その評価値を得る為の手順について、主に説明をする。
【0025】
俯瞰用飛行体31及び照合用飛行体32は、小型の無人飛行体であり、カメラが搭載されている。
図1(a)に示すように、俯瞰用飛行体31は、照合用飛行体32よりも高い高度で飛行し、探索エリアに所在する人物について俯瞰の映像データを撮像する(S1)。また、俯瞰用飛行体31は高所から検索エリアに居る人物を俯瞰できる場所で映像データを撮像できれば良いので、ビルの壁面、若しくは屋上の端部に設けたカメラ、或いは、鉄塔の上、ポールの上に設けたカメラで代用することもできる。
【0026】
人物認証システムは、俯瞰の映像データに基づいて探索エリアに所在する人物の状態を検知する。人物の状態には、人物の位置、移動方向及び移動速度が含まれる。そして、人物認証システムは、検知した人物の状態に基づいて所定時間後までの人物の状態の変化を推定する(s2)。
【0027】
例えば、
図1(a)では、時刻t1に撮像した俯瞰の映像データから人物H
1〜H
3の3人の状態が検知された状況を示している。そして、人物認証システムは、人物H
1〜H
3について、時刻t1+Δt秒までの状態の変化を推定している。
【0028】
人物認証システムは、人物の状態の推定結果を用い、照合用飛行体32の飛行経路候補を算定し(S3)、複数の飛行経路候補について評価値を算定し(S4)、照合用飛行体32の飛行経路を特定する(S5)。その後、照合用飛行体32は、特定された飛行経路に従って飛行しつつ人物H
1〜H
3を撮像して入力画像データを撮像する。人物認証システムは、入力画像データと登録画像データとを照合処理することで、照合用飛行体32により撮像された人物が認証対象者と同一人であるか否かを認証する。
【0029】
飛行経路候補は、照合用飛行体32の状態と、人物H
1〜H
3の状態に応じて算定する。例えば、照合用飛行体32に対する各人物の位置関係に基づき、直進、右旋回、左旋回などの基本的な飛行パターンを組み合わせることで、人物H
1〜H
3の周囲を飛行する複数の飛行経路候補を得ることができる。
【0030】
人物認証システムは、飛行経路候補について当該飛行経路候補が飛行経路として特定され、かつ照合用飛行体32が撮像した人物に認証対象者が含まれていた場合に、照合処理による照合値が所定の値を超える確率を評価値として算定する。この評価値の算定には、登録画像データを用いる。このため、例えば、認証対象者の左上腕部に特徴的な目印が存在し、左上腕部を含む登録画像データが取得されているならば、人物H
1〜H
3の左側面を撮像する飛行経路候補の評価値が高くなる。
【0031】
図1(b)では、人物H
1〜H
3の状態の推定結果に基づいて、飛行経路候補B1〜B3を算定している。飛行経路候補B1は、左に旋回しながら人物H
1〜H
3を撮像する経路であり、人物H
1〜H
3の左側面を含む撮像に適している。飛行経路候補B2は、直進して人物H
1〜H
3に接近する経路であり、人物H
1〜H
3の正面像を多く撮像することに適している。飛行経路候補B3は、右に旋回しながら人物H
1〜H
3を撮像する経路であり、人物H
1〜H
3の右側面を含む撮像に適している。認証対象者の左上腕部に特徴的な目印が存在し、左上腕部を含む登録画像データが取得されているならば、飛行経路候補B1〜B3のうち、飛行経路候補B1の評価値が高くなり、飛行経路候補B1が飛行経路として特定されることになる。
【0032】
次に、実施例に係る人物認証システムのシステム構成について説明する。
図2は、実施例に係る人物認証システムのシステム構成図である。ここでは、遊園地の入口であるゲート11にゲートカメラ12が設置されるとともに、ゲートカメラ12が遊園地内の迷子センタ等に設置された人物認証装置20と接続された状況を示している。また、遊園地内には、俯瞰用飛行体31及び照合用飛行体32が用意されている。
【0033】
俯瞰用飛行体31及び照合用飛行体32は、人物認証装置20と無線通信可能であり、人物認証装置20からの制御を受けて飛行し、撮像した映像データを人物認証装置20に送信する。
【0034】
人物認証装置20は、ゲート11を通過した人物を認証対象者として登録し、照合用飛行体32を用いて認証対象者を探索することができる。具体的には、まず、ゲート11を通過する認証対象者H
0を所定時間継続してゲートカメラ12が撮像し、撮像により得られた映像データを人物認証装置20に送信する(S11)。
【0035】
人物認証装置20は、ゲートカメラ12が撮像した映像データから認証対象者H
0の像を検知する。そして、認証対象者H
0の像を複数のフレームから切り出して、複数の登録画像データT
i(1≦i≦N)を生成する(S12)。このとき、各登録画像データT
iには認証対象者H
0の上半身を含むことが望ましい。また、人物認証装置20は、登録画像データT
iの各々について、認証対象者H
0の移動方向と撮像時の俯角を特定し、登録画像データT
iに対応付ける。なお、Nは登録画像データの数である。
【0036】
認証対象者の探索を行う場合には、まず、人物認証装置20は、俯瞰用飛行体31及び照合用飛行体32を探索対象のエリアの上空に飛行させる。このとき、俯瞰用飛行体31は、人物の位置等を撮像できるよう比較的高い高度で飛行させる。
【0037】
人物認証装置20は、俯瞰用飛行体31から映像データを取得し(S13)、近傍に所在する人物H
1〜H
3の位置、移動方向及び移動速度を検知する。そして、検知した人物H
1〜H
3の状態に基づいて所定時間後までの人物の状態の変化を推定し、飛行経路候補を算定する(S14)。人物認証装置20は、複数の飛行経路候補について評価値を算定し(S15)、照合用飛行体32の飛行経路を特定する(S16)。
図2では、飛行経路候補B1〜B3の3つの飛行経路候補が算定され、飛行経路候補B1が飛行経路として特定された状態を示している。
【0038】
人物認証装置20は、特定した飛行経路を照合用飛行体32に指示する(S17)。照合用飛行体32は、人物認証装置20からの飛行経路指示に基づいて飛行し、撮像した映像データを人物認証装置20に送信する(S18)。
【0039】
人物認証装置20は、照合用飛行体32が撮像した映像データから人物H
1〜H
3の像を検知する。そして、人物H
1〜H
3の像を複数のフレームから切り出して、複数の入力画像データI
k(1≦k≦M)を生成する(S19)。この入力画像データI
kは、人物ごとに生成する。なお、Mは入力画像データの数である。
【0040】
人物認証装置20は、複数の登録画像データT
i(1≦i≦N)と複数の入力画像データI
k(1≦k≦M)とを用いて照合値を算定する。照合値の算定は、人物ごとに行う。人物認証装置20は、照合値が閾値以上となる人物が存在するならば、該人物が認証対象者H
0と同一人であると認証し、認証の結果を出力する(S20)。なお、ここでは照合値が閾値以上であるか否かにより認証を行う場合を示したが、照合値が閾値よりも大きいか否かにより認証を行うようにしてもよい。
【0041】
このように、本実施例に係る人物認証システムは、俯瞰用飛行体31を利用して探索エリアに所在する人物の状態を取得し、入力画像データI
kの撮像に用いる照合用飛行体32の飛行経路候補を算定する。そして、あらかじめ取得した登録画像データT
iを用いて移動経路候補の評価値を算定し、該評価値に基づいて照合用飛行体32の移動経路を特定する。このため、照合用飛行体32を適正な飛行経路で飛行させ、もって認証対象者の認証効率を高めることができる。
【0042】
次に、
図2に示した人物認証装置20の構成について説明する。
図3は、
図2に示した人物認証装置20の内部構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この人物認証装置20は、入出力部21、通信部22、無線通信部23、記憶部24及び制御部40を有する。
【0043】
入出力部21は、キーボードやマウスからなる入力デバイスと、液晶パネルやディスプレイ装置からなる表示デバイスとを含む。通信部22は、ゲートカメラ12と通信を行うためのインタフェース部であり、無線通信部23は俯瞰用飛行体31及び照合用飛行体32と無線通信を行うためのインタフェース部である。
【0044】
記憶部24は、フラッシュメモリやハードディスク装置等からなる記憶デバイスであり、登録画像データ、撮像俯角データ及び人物移動方向データを記憶する。なお、ここでは登録画像データと重みデータとを同一の記憶部24に格納する構成を示したが、登録画像データと重みデータとをそれぞれ異なる記憶部に格納する構成であってもよい。
【0045】
制御部40は、人物認証装置20を全体制御する制御部であり、登録処理部41、人物検知部42、飛行制御部43、照合部44及び判定部45を有する。実際には、これらの機能部に対応するプログラムを図示しないROMや不揮発性メモリに記憶しておき、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、登録処理部41、人物検知部42、飛行制御部43、照合部44及び判定部45にそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0046】
登録処理部41は、ゲート11を通過する人物を照合対象者として登録する処理部である。具体的には、登録処理部41は、ゲートカメラ12が撮像した映像データを取得し、映像データから人物の像を検知する。そして、同一の人物について複数の登録画像データを生成する。例えば、ゲートカメラ12が撮影した映像データの複数のフレームから同一人物の像をそれぞれ切り出して登録画像データとする。このとき、登録画像データとしては人物の上半身を含むことが望ましい。
【0047】
また、登録処理部41は、登録画像データについて、撮像時の俯角を示す撮像俯角データと、登録画像データにおける認証対象者H
0の向きを示す人物移動方向データとを特定し、登録画像データに対応付ける。撮像俯角データ及び登録画像データは、画像処理によって特定してもよいし、ゲートカメラ12の設置位置から算定してもよい。登録処理部41は、登録画像データ、撮像俯角データ及び登録画像データを対応付けて記憶部24に格納する。
【0048】
人物検知部42は、俯瞰用飛行体31から取得した映像データを用い、近傍に所在する人物の位置、移動方向及び移動速度を検知する処理部である。飛行制御部43は、人物検知部42により検知された人物の状態(位置、移動方向及び移動速度)に基づいて、照合用飛行体32が入力画像データとして好適な画像データを撮像できるよう、照合用飛行体32の飛行経路を設定し、照合用飛行体32の飛行を制御する。
【0049】
飛行制御部43は、飛行経路候補算定部43a、評価値算定部43b及び飛行経路特定部43cを有する。飛行経路候補算定部43aは、人物検知部42により検知された人物の状態に基づいて所定時間後までの人物の状態の変化を推定し、飛行経路候補を算定する処理部である。
【0050】
評価値算定部43bは、飛行経路候補算定部43aにより算定された複数の飛行経路候補について評価値を算定する処理部である。飛行経路特定部43cは、評価値算定部43bにより算定された評価値に基づいて飛行経路を特定し、特定した飛行経路を照合用飛行体32に指示する処理部である。
【0051】
照合部44は、照合用飛行体32により撮像された映像データを用いて照合を行う処理部である。照合部44は、照合用飛行体32から映像データを取得し、映像データから人物の像を検知する。そして、同一の人物について一又は複数の入力画像データを生成する。例えば、映像データの複数のフレームから同一人物の像をそれぞれ切り出して入力画像データとする。照合部44は、生成した一又は複数の入力画像データと認証対象者について生成された複数の登録画像データとの間の照合値を算定する。
【0052】
判定部45は、照合用飛行体32のカメラにより撮像された人物が認証対象者であるか否かを認証する処理部である。具体的には、判定部45は、照合部44により算出された照合値と閾値とを比較し、照合値が閾値以上であれば、照合用飛行体32のカメラにより撮像された人物と認証対象者とが同一人であると認証し、認証の結果を出力する。
【0053】
俯瞰用飛行体31、もしくは照合用飛行体32に人物認証装置20を搭載して、ゲートカメラ12と俯瞰用飛行体31と照合用飛行体32との間で通信することにしても良い。
【0054】
次に、評価値算定部43bによる飛行経路候補のそれぞれについての評価値の算定について説明する。
図4は、評価値算定部43bによる評価値の算定についての説明図である。評価値算定部43bは、まず、人物検知部42により検知された人物の状態(位置、移動方向及び移動速度)に基づいて時間tにおける人物の状態確率マップPH
s(x,y,deg,t)と、人物には関係無く照合飛行体32の各軌道候補のみに依存する画像取得範囲SC
i,r(t)とを算定する。
【0055】
人物の状態確率マップPH
s(x,y,deg,t)は、時間tにおいて、人物sが位置x,y、移動方向degの状態で存在する確率を示す。画像取得範囲SC
i,r(t)は、時間tにおいて、照合用飛行体32の状態から求められる照合可能な平面上の範囲を示し、登録画像データT
iごと、かつ得られる入力画像データのサイズ設定値rごとに求める。登録画像データT
iについては、対応する俯角データを使用し、登録画像データT
iに応じた俯角で入力画像データを撮像可能な範囲が求められることになる。サイズ設定値rは人物の上半身の画素数で表した大きさをランク分けしたものである。
【0056】
評価値算定部43bは、人物の状態確率マップPH
s(x,y,deg,t)と、画像取得範囲SC
i,r(t)とを用い、入力画像データ取得確率PI
s(i,r,t)を算定する。入力画像データ取得確率PI
s(i,r,t)は、人物sのi番目の登録画像データT
iに対応したサイズrの入力画像データが得られる確率を示す。
【0057】
また、評価値算定部43bは、飛行経路候補にて、仮に取得されるであろうと仮定した入力画像データの人物の向き等を示す属性に対応する登録画像データの取得パターンAを求める。入力画像データとは、具体的には、照合用飛行体32が飛行経路上を移動しながら所定の時間間隔で人物を撮像した画像データであり、正面、横、背面と言った同一人物の複数の画像データが入力画像データとして得られる。実際には照合用飛行体32は飛行していないので入力画像データは存在していない。評価値算定部43bは、入力画像データに対応する登録画像データの取得パターンAから、推定照合値を算定する。取得パターンAは複数個あり、詳細は後述する。
【0058】
推定照合値は、該入力画像データの属性に対応する登録画像データの取得パターンAが取得され、かつ人物が認証対象者と同一人であった場合に照合処理によって得られると推定できる照合値である。この推定照合値は、入力画像データの属性に対応する登録画像データの組合せパターンから算定することができる。
【0059】
そして、評価値算定部43bは、入力画像データ取得確率PI
s(i,r,t)と推定照合値とを用い、飛行経路候補ごとに推定照合値取得確率EP
sを算定する。推定照合値取得確率EP
sは、該飛行経路候補を通って撮像した人物sが認証対象者と同一人である場合に、閾値th_ev以上の照合値が得られる確率である。
【0060】
評価値算定部43bは、推定照合値取得確率EP
sを評価値として出力する。飛行経路特定部43cは、照合用飛行体32が実際に飛ぶ前に評価値算定部43bにより算定された推定照合値取得確率EP
sに基づいて各飛行経路候補を評価し、効率良く、且つ精度よく飛行経路を特定することとなる。例えば、認証対象者全員の推定照合値取得確率EP
sの平均値が最も高くなる経路を求める経路とする、等の経路特定手法がある.
【0061】
次に、人物の状態確率マップPH
s(x,y,deg,t)の算定について説明する。
図5は、人物の状態確率マップPH
s(x,y,deg,t)の算定についての説明図である。
図5では、時刻tにおける人物H
1〜H
3の状態をH
1(t)〜H
3(t)、時刻tにおける照合用飛行体32の状態をR(t)として示している。このとき、照合用飛行体32の状態R(t)と人物H
sの状態Hs(t)は、
【数1】
として示される。なお、rx(t),ry(t),rz(t)は時刻tにおける照合飛行体の位置を示し、roll(t):前後を軸にした回転角度、pitch(t):左右を軸とした上下方向の回転角度、yaw(t):上下を軸とした回転角度は時刻tにおける照合飛行体の向きを示す。Camera_paramは、照合用飛行体32のカメラについての静的パラメータであり、画角、焦点距離、解像度、レンズ歪及び俯角などである。
【0062】
人物の状態確率マップPH
s(x,y,deg,t)は、
【数2】
によって算定される。x、yは人物の位置、degは移動方向、tは時刻を示す。
【0063】
P
object、は、
【数3】
であり、障害物があるかないかをマップ的に示している。なお、1が通過可能、0は障害物有を示す。
【0064】
P
status ,s、は、
【数4】
であり、人のステータスを表し、立ち状態(1:normal)で、認証可能な状態であるか、座っている、寝ている等(0:irregular)で認証できないかを示す。
【0065】
P
position,sは、
【数5】
である。ここで、人物sは基本的に等速直線運動で動くと仮定し,その位置誤差及び移動方向はガウス状に広がると仮定している。
【0066】
次に、画像取得範囲SC
i,r(t)の算定について説明する。
図6〜8は、画像取得範囲SC
i,r(t)の算定についての説明図である。まず、照合用飛行体32のカメラで撮像が可能な範囲をSc
camera(t)とする。
【0067】
Sc
camera(t)は、一般的な透視投影変化により求めることができる。例えば、
図6に示すように画像として取得されるイメージプレーンの4つの頂点をV
im,1(t)〜V
im,4(t)とし、xy平面上のV
pro,1(t)〜V
pro,4(t)に対応させ、Camera_paramを
【数6】
として算定を行えばよい。
【0068】
続いて、登録画像データに対応する撮像俯角データと比較して、時刻tにおける照合に用いることのできる入力画像データを取得可能な範囲Sc
dip,i(t)を考える。
図7に示すように、登録画像データT
iを撮像した時の俯角(撮像俯角データ)をθ
tp_dipとし、照合に用いることのできる角度マージンをθ
marginとすると、
【数7】
を満たす範囲が、Sc
dip,i(t)である。
【0069】
続いて、登録画像データにおける認証対象者の像のサイズと比較して、時刻tにおける照合に用いることのできる入力画像データを取得可能な範囲Sc
size,r(t)を考える。
図8に示すように、人物の上下を規定する地点p,qをイメージプレーンに投影した点をp
im,q
imとすると、
|p
im−q
im|
が照合できるサイズの範囲内にあればその地点は照合可能な範囲内にあることになる。この範囲をSc
size,r(t)とする。rは、像のサイズに対する設定値であり、登録画像データにおける像のサイズに対する比率を示す。rとしては、例えば100%、75%、50%、33%、25%の5つのサイズ設定値を設ける。
【0070】
画像取得範囲SC
i,r(t)は、Sc
camera(t)、Sc
dip,i(t)、Sc
size,r(t)を全て満たすため、
【数8】
として算定できる。
【0071】
次に、入力画像データ取得確率PI
s(i,r,t)の算定について説明する。入力画像データ取得確率PI
s(i,r,t)は、人物sのi番目の登録画像データT
iに対応したサイズrの入力画像データが得られる確率を示すものであり、人物の状態確率マップPH
s(x,y,deg,t)と、画像取得範囲SC
i,r(t)とを用いて
【数9】
によって算定される。
ここで、f
person_dir(i)は、登録画像データT
iに対応付けられた人物角度データである。また、other
s(t)は、いずれの登録画像データにも対応しない入力画像データが得られる確率である。
【0072】
上記の式により示されるように、入力画像データ取得確率は、人物s、登録画像データの番号i、サイズ設定値r及び所定時間間隔が空いた時刻tごとに算定される。1経路の飛行で取得する画像数はF(フレーム数)で表す。
図9は、入力画像データ取得確率を説明する図である。
図9では、ある人物についての入力画像データ取得確率をテーブルにまとめた入力画像データ取得確率表を示している。
図9のテーブルは1人の登録に対して、1テーブルが用意されている。縦方向のT
iは角度を違えて撮像した人物のテンプレート(登録画像データ)で、横方向はサイズを表している。これが、撮影フレーム数分作成され、F個テーブルが生成される。
【0073】
図9では、ある人物を時刻tに撮像した場合に、登録画像データT
1に対応するサイズ100%の入力画像データが得られる確率が0.02であり、登録画像データT
1に対応するサイズ75%の入力画像データが得られる確率が0.05であり、登録画像データT
1に対応するサイズ25%の入力画像データが得られる確率が0.002であることが示されている。また、登録画像データT
2に対応するサイズ100%の入力画像データが得られる確率が0.1であり、登録画像データT
Nに対応するサイズ100%の入力画像データが得られる確率が0.001であり、登録画像データT
Nに対応するサイズ25%の入力画像データが得られる確率が0.05であることが示されている。そして、いずれの登録画像データにも対応しない入力画像データが得られる確率が0.35であることが示されている。
【0074】
このように、サイズ設定値rの数をR、登録画像データの数(iの最大値)をNとすると、ある人物について時刻tに得られる可能性のある入力画像データに対応する登録画像データは、(N×R+1)通りである。
サイズ設定値rと登録画像データの添え字iの変数を統合し,
【数10】
と定義し、入力画像データ取得確率PI
s(i,r,t)は、PI
s(u,t)と表す。入力画像データ取得確率は、入力画像データがいずれの登録画像データにも対応しない確率other
s(t)を統合し、
【数11】
とする。
【0075】
ここで、N×R+1=Lとし、ある飛行経路候補BにおいてF回の撮像を行なったとすると、
図10に示す様に、入力画像データの属性に対応する登録画像データの取得パターンAの数はL
Fとなる。
図10のパターンAcの数字である、1〜Lは、登録画像データT
iのiが示す被写体の向きタイプとサイズrの取りえる値の組み合わせに、写っていない場合の1組を加算したものうちのどれかを指し示すものである。この入力画像データに対応する登録画像データの取得パターンAを特定するパターン番号をcとし、対応する登録画像データパターンをA
c(c=1〜L
F)として、登録画像データパターンA
cによる推定照合値を
【数12】
とする。この推定照合値は、登録画像データパターンA
cの1つに対して1つの評価値が得られる。
【0076】
ここで、以降の説明を容易にする為に、実際に照合用飛行体32を飛行させて入力画像データを撮影し、照合値Vを算出する処理について説明する。推定照合値はこの照合値算出処理を利用して算出する。
【0077】
照合値Vは登録画像データT
iと入力画像データI
kから算出される。照合値Vは、
【数13】
で算出される。αiは重み係数で、スコアPiは各登録画像データT
iが持つスコアである。このように、照合値Vは各登録画像データT
iのスコアPiを重みを掛けて合計した値である。従い、入力画像データI
kとしては連続的に視点が変化する映像を入れる必要が無く、異なる角度の映像が入ってくることで精度が向上るとともに、方向の制約は受けない。
【0078】
スコアPiは、
【数14】
で表される。fverifyは2つの画像データ(T
i,I
k)の特徴量を比較し、一致度合いを求める関数である。aveiとσiは各登録画像データT
iに対する他人の平均値と、標準偏差である。このように正規化することで、各登録画像データT
iの他人との分離しやすさを組み込んでいる。
【0079】
重み係数αiは、
【数15】
【数16】
で表され、これはiで示す一つの登録画像データとjで示すそれ以外の登録画像データ間での類似度の合計の逆数であり、登録画像データ内での特異性を表している。
【0080】
ここで、飛行経路の決定方法の説明に戻る。
推定照合値は、
図10に示すF個のフレームから成る登録画像データパターンAcに示される登録画像T
iを入力画像データI
k(k=1〜F)として入力した場合の照合値Vである。しかし、それぞれのfverifyの値は、登録画像データパターンの像のサイズrにより異なる値を設定する。これは、解像度が落ちるとfverifyの値も落ちるからである。例えば、fverifyの値はそれぞれ、1(r=1),0.9(r=2),0.8(r=3),0.7(r=4),0.6(r=5)である。
【0081】
取得パターンAcにおいて、時刻tでの入力画像データに対応する登録画像データをA
c(t)とすると、取得パターンAcが得られる確率PP
s,cは
【数17】
となる。すなわち、ある飛行経路候補Bにおいて取得パターンAcの入力画像データの組合せが得られたならば、PP
s,cの確率で推定照合値
【数12】
を得ることができることになる。
【0082】
推定照合値取得確率EP
sは、最低限得たい推定照合値の閾値をth_evとすると、
【数18】
となる。すなわち、入力画像データの組合せの全てのパターンについて確率PP
s,cと推定照合値を求め、推定照合値が閾値th_evを越える場合の確率PP
s,cを合算したものが推定照合値取得確率EP
sである。これは、この飛行経路候補Bを通ったならば、照合値が閾値th_evを越える確率がEP
sとなることを示している。このEPsが最大となる飛行経路候補を照合用飛行体32が飛ぶことにより、所望の品質の被写体画像が撮像されることが期待できる。
【0083】
次に、人物の状態確率マップ及び画像取得範囲の具体例について説明する。
図11は、人物の状態確率マップと画像取得範囲の具体例についての説明図である。
図11(a)は、人物の状態確率マップの変化を示している。まず時刻t=0は、人物検知部42により検知された人物の状態に対応し、人物の位置は一点に特定されている。時刻t=5は、時刻t=1の状態に基づいて推定された状態であるため、人物の位置は所定の範囲に広がる確率の分布として推定されている。さらに、時刻t=10では、推定による誤差が大きくなるため、人物の位置はより広い範囲の分布として推定されている。
【0084】
図11(b)は、画像取得範囲の算定を示している。まずカメラによる撮像範囲としてSc
camera(t)が求められ、俯角による撮像範囲としてSc
dip,i(t)が求められ、サイズによる撮像範囲としてSc
size,r(t)が求められる。なお、サイズによる撮像範囲ではサイズ設定値100%から25%に各々対応する範囲を網掛の差によって示している。
図11(b)に示すように、画像取得範囲SC
i,r(t)は、Sc
camera(t)、Sc
dip,i(t)、Sc
size,r(t)を合成した範囲となる。
【0085】
次に、人物認証装置20による登録処理手順について説明する。
図12は、
図2に示した人物認証装置20による登録処理手順を示すフローチャートである。人物認証装置20の登録処理部41は、まず、ゲートカメラ12が撮像した映像データを取得する(ステップS101)。
【0086】
登録処理部41は、ゲートカメラ12により撮像された映像データから人物の像を検知し、同一の人物について複数の登録画像データを生成する(ステップS102)。例えば、ゲートカメラ12が撮影した映像データの複数のフレームから同一人物の像をそれぞれ切り出して登録画像データとする。
【0087】
登録処理部41は、各登録画像データについて、特徴量を算出する(ステップS103)。特徴量としては、カラーの画像データをモノクロ濃淡画像に変換した濃淡画像データ、色相ヒストグラム、Gaborフィルタを適用した振幅成分及びGaborフィルタを適用した方向成分などを用いることができる。
【0088】
また、登録処理部41は、登録画像データについて、撮像時の俯角を示す撮像俯角データを特定し(ステップS104)、登録画像データにおける認証対象者H
0の向きを示す人物移動方向データを特定する(ステップS105)、登録処理部41は、登録画像データ、撮像俯角データ及び登録画像データを対応付けて記憶部24に格納し(ステップS106)、登録処理を終了する。
【0089】
次に、人物認証装置20による人物探索の処理手順について説明する。
図13は、
図2に示した人物認証装置20による人物探索の処理手順を示すフローチャートである。認証対象者が指定され、探索の開始が指示されたならば、人物認証装置20の飛行制御部43は、まず、俯瞰用飛行体31及び照合用飛行体32を最初の探索エリアに移動させる(ステップS201)。探索エリアは、探索の対象となる領域を俯瞰用飛行体31のカメラにより撮像可能な範囲に応じて区分した小領域であり、俯瞰用飛行体31及び照合用飛行体32は、探索エリアを予め指定された順序で移動しながら探索エリアごとに探索を行う。
【0090】
俯瞰用飛行体31及び照合用飛行体32が探索エリアに到達したならば、俯瞰用飛行体31は、探索エリアを撮像する。人物認証装置20の人物検知部42は、俯瞰用飛行体31により撮像された映像データを取得し(ステップS202)、取得した画像データに対する画像処理によって探索エリア内に所在する人物の位置、移動方向及び移動速度を検知する(ステップS203)。
【0091】
飛行制御部43は、人物検知部42により検知された人物の位置、移動方向及び移動速度に基づいて、照合用飛行体32が入力画像データとして好適な画像データを撮像できるよう、照合用飛行体32の飛行経路を設定する飛行経路設定処理を行なう(ステップS204)。飛行経路設定処理の詳細については後述する。設定された飛行経路は照合用飛行体32に送信され、照合用飛行体32は設定された飛行経路に従って飛行しつつ対象の人物を撮像する。
【0092】
照合部44は、照合用飛行体32により撮像された映像データを取得する(ステップS205)。そして、取得した映像データを用い、同一の人物について一又は複数の入力画像データを生成する(ステップS206)。例えば、映像データの複数のフレームから同一人物の像をそれぞれ切り出して入力画像データとする。
【0093】
照合部44は、生成した一又は複数の入力画像データと認証対象者について生成された複数の登録画像データとの間の照合値を算定する(ステップS207)。判定部45は、算定された照合値と閾値とを比較する(ステップS208)。照合値が閾値未満であれば(ステップS208;No)、判定部45は、入力画像データの数が十分であったか否かを判定する(ステップS209)。入力画像データの不足のために認証が失敗した可能性があるためである。入力画像データの数が十分でなければ(ステップS209;No)、ステップS202に移行し、同一探索エリアで照合用飛行体32による撮像を行う。一方、入力画像データの数が十分であれば(ステップS209;Yes)、飛行制御部43は、俯瞰用飛行体31及び照合用飛行体32を次の探索エリアに移動させ(ステップS210)、ステップS202に移行する。
【0094】
照合値が閾値以上となれば(ステップS208;Yes)、判定部45は、照合用飛行体32のカメラにより撮像された人物と認証対象者とが同一人であると認証し、撮像された人物を探索結果として表示デバイスなどに出力して(ステップS211)、処理を終了する。
【0095】
次に、
図13に示した飛行経路設定処理について詳細に説明する。
図14は、
図13に示した飛行経路設定処理の処理手順を示すフローチャートである。まず、飛行経路候補算定部43aは、人物検知部42により検知された人物の状態に基づいて所定時間後までの人物の状態の変化を推定し、飛行経路候補を算定する(ステップS301)。
【0096】
評価値算定部43bは、人物検知部42により検知された撮像対象となる人物を1名選択するとともに、飛行経路候補算定部43aにより算定された飛行経路候補を1つ選択する(ステップS302)。そして、選択した人物について、人物の状態確率マップPH
sを算定する(ステップS303)とともに、各登録画像データに対応する画像取得範囲SC
i,rを算定する(ステップS304)。
【0097】
評価値算定部43bは、人物の状態確率マップPH
s及び画像取得範囲SC
i,rから入力画像データ取得確率PI
sを算定し、入力画像データ取得確率表を生成する(ステップS305)。
【0098】
評価値算定部43bは、飛行経路における入力画像データの組合せのパターンを求め、各パターンでの推定照合値を照合部44に算定させ、推定照合値取得確率EP
sを算定する(ステップS306)。
【0099】
評価値算定部43bは、全ての飛行経路候補について推定照合値取得確率EP
sを算定したか否かを判定する(ステップS307)。推定照合値取得確率EP
sを算定していない飛行経路候補が残っていれば(ステップS307;No)、未選択の飛行経路候補を選択して飛行経路候補を更新し(ステップS310)、ステップS303に移行する。
【0100】
全ての飛行経路候補について推定照合値取得確率EP
sを算定済であるならば(ステップS307;Yes)、評価値算定部43bは、撮像対象となる全ての人物について推定照合値取得確率EP
sを算定したか否かを判定する(ステップS308)。推定照合値取得確率EP
sを算定していない人物が残っていれば(ステップS308;No)、未選択の人物を選択して撮像対象の人物を更新し(ステップS311)、飛行経路候補の選択履歴を初期化して(ステップS312)、ステップS303に移行する。
【0101】
撮像対象となる全ての人物について推定照合値取得確率EP
sを算定済であるならば(ステップS308;Yes)、評価値算定部43bは、推定照合値取得確率EP
sを評価値として出力する。飛行経路特定部43cは、評価値算定部43bにより算定された推定照合値取得確率EP
sに基づいて各飛行経路候補を評価し、飛行経路を特定して(ステップS309)、処理を終了する。なお、飛行経路候補を評価は、任意の方法を用いることができる。例えば、推定照合値取得確率EP
sの期待値の所定の閾値から減算し、撮像対象の人数分を合計した値が最も小さくなる飛行経路候補を飛行経路として特定すればよい。
【0102】
上述してきたように、本実施例に係る人物認証装置、人物認証システム及び人物認証方法は、入力画像データの撮像に用いる飛行体について複数の飛行経路候補を算定し、あらかじめ取得した複数の登録画像データに基づいて各移動経路候補の評価値を算定し、該評価値に基づいて飛行体を移動させる移動経路を特定する。このため、入力画像データの撮像に用いる飛行体を適正な飛行経路で移動させ、もって認証対象者の認証効率を高めることができる。
【0103】
なお、本実施例に図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部または一部を各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0104】
また、本実施例では、ゲートカメラ12の出力から直接登録画像データを生成する構成を例に説明を行なったが、ゲートカメラ12の出力を所定の記憶部に蓄積しておき、蓄積した映像データから登録画像データを生成するように構成してもよい。かかる構成によれば、迷子の問い合わせがあった場合に蓄積した画像データを再生し、認証対象者とする人物の指定を受けて登録画像データを生成することができる。別の監視カメラ等が撮像した映像を登録しても良いし、メール等により送られてきた画像データを登録する様にしても良い。
【0105】
また、照合値や推定照合値の算定に用いる特徴量及び算定アルゴリズムは、任意のものを用いることができる。また、照合値や推定照合値の算定に先だって、画像データに対する画像処理を施すように構成してもよい。例えば、登録画像データと入力画像データとの間で撮像時の俯角に違いが生じることが想定される場合には、俯角の差異を補正する幾何学補正を行なったうえで照合値や推定照合値を算定すればよい。
【0106】
また、本実施例では、カメラを搭載した飛行体を用いて入力画像データを得る場合を例に説明を行なったが、本発明は飛行体に限定されるものではなく、カメラ等の撮像装置を搭載した任意の移動体を用いて入力画像データを得る場合に適用可能である。