(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るインタンクバルブについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係るインタンクバルブを示す。
【0018】
このインタンクバルブ10は、例えば、燃料電池車両の燃料電池システムに用いられ、高圧ガスである水素ガスをタンク12へと充填、又は、前記タンク12から前記燃料電池システムへと供給(放出)する目的で用いられる。なお、
図1においては、タンク12の開口部12a近傍を図示している。
【0019】
インタンクバルブ10は、
図1に示されるように、例えば、タンク12の一端部に形成された開口部12aに設けられ、内部に水素ガスの流通する流路14を有したボディ16と、該ボディ16の端部に連結される駆動ユニット(ボディ)18と、前記タンク12内における水素ガスの状態を検出する検出部20と、前記駆動ユニット18に対して前記検出部20を保持する保持手段22とを含む。なお、タンク12は、その両端部が略半球状に形成された筒体からなる。
【0020】
ボディ16は、例えば、金属製材料から形成され、軸方向(矢印A、B方向)に沿って直線状に形成されタンク12の開口部12aに装着されるボディ本体24と、該ボディ本体24に対して側方へ突出した配管接続部26と、該配管接続部26とは反対方向に突出した電源接続部28とを有する。ボディ本体24は、その一端部がタンク12の外側に突出した状態で、略中央部がタンク12の開口部12aへと挿入されることで固定される。一方、ボディ本体24の他端部側は、タンク12の内部に収納されている。
【0021】
このボディ本体24の内部には、軸方向(矢印A、B方向)に沿って延在した流路14が形成され、その一端部が配管接続部26に形成された接続流路30と接続されると共に、他端部が駆動ユニット18のハウジング32と連通している。この配管接続部26には、例えば、図示しない水素ガス供給装置や燃料電池システムが配管を介して選択的に接続される。
【0022】
電源接続部28には、例えば、図示しない制御装置と接続されたカプラ34が着脱自在に設けられ、該電源接続部28には、駆動ユニット18を構成するソレノイド部(図示せず)へ通電するためのリード線や、検出部20によって検出された検出信号を出力するためのリード線36が内蔵されている。そして、電源接続部28に対してカプラ34が接続されることで、図示しない制御装置からの制御信号が駆動ユニット18へと伝達され、一方、検出部20によって検出された検出信号が前記制御装置へと出力される。
【0023】
駆動ユニット18は、円筒状のハウジング32の内部に通電作用下に励磁するソレノイド部(図示せず)を有し、該ソレノイド部の励磁作用下に弁体を開閉動作させることで流路14の連通状態を切り替えている。このハウジング32の他端部中央には、
図1〜
図2Bに示されるように、軸方向(矢印B方向)に突出した連結部38が形成され、該連結部38の他端部中央には縮径して軸方向(矢印B方向)に突出したロケートピン40が設けられる。
【0024】
また、連結部38の他端部には縮径した段付部42を有し、該段付部42には連結部38の外周側に挿通された保持手段22が締結ナット44によって固定される。
【0025】
検出部20は、例えば、駆動ユニット18の他端部に連結されるセンサケース46を有し、該センサケース46の内部には、タンク12内における水素ガスの温度を検出可能なセンサ(図示せず)が収納されている。
【0026】
このセンサケース46は、タンク側(矢印B方向)となる他端部が開口した筒部48と、該筒部48の一端部に形成され駆動ユニット18と連結される取付部50とを有している。そして、筒部48の内部に収納されたセンサによって水素ガスの温度を検出し、電気信号としてリード線36を通じて制御装置へ出力される。
【0027】
取付部50は、
図2Aに示されるように、例えば、筒部48の軸線と直交方向(矢印C方向)に延在した断面長方形状に形成され、その略中央部には駆動ユニット18のロケートピン40の挿入されるロケート孔52が形成されると共に、その幅方向(矢印C方向)に沿った両端部には、厚さ方向(矢印A、B方向)に貫通した一対の係合孔(係合部)54がそれぞれ形成される。
【0028】
係合孔54は、取付部50の中心側となる内壁面56が筒部48の他端部側(矢印B方向)に向かって徐々に両端側(矢印C1方向)へと傾斜したテーパ状に形成される。
【0029】
また、取付部50には、筒部48の接合される端面50aにおいて、係合孔54に対して幅方向(矢印C方向)で前記筒部48側となる位置に一対の溝部58が形成される。この溝部58は、取付部50の端面50aに対して所定深さで形成され、係合孔54と平行な一直線状に形成される。
【0030】
保持手段22は、駆動ユニット18の他端部と検出部20の一端部との間に設けられたブラケット60からなる。
【0031】
このブラケット60は、
図1〜
図3Bに示されるように、例えば、金属製材料からなる薄板をプレス成形することによって形成され、略平面状のベース部(基部)62と、該ベース部62の両端部から折曲され所定角度傾斜して延在した一対のアーム部64a、64bとからなる。
【0032】
このベース部62には略中央部に孔部66が形成され、その内部には駆動ユニット18の連結部38が挿通される。
【0033】
また、ベース部62は、その両端部に向かって所定角度だけ傾斜した傾斜部70を有し、該傾斜部70は、アーム部64a、64bから離間する方向(矢印A方向)へと傾斜し、その端部がそれぞれアーム部64a、64bへと接合されている。この傾斜部70の傾斜角度θは、例えば、ベース部62に対して5°程度に設定される(
図3B参照)。
【0034】
アーム部64a、64bは、ベース部62から離間するように一直線状に延在し、一方のアーム部64aと他方のアーム部64bとが互いに接近するように傾斜している。そして、アーム部64a、64bの先端には、断面U字状で内側へ折曲されたフック72がそれぞれ形成される。
【0035】
そして、ブラケット60は、その孔部66に駆動ユニット18の連結部38が挿入された状態で締結ナット44によって固定することで、アーム部64a、64bが前記駆動ユニット18から離間する方向(矢印B方向)に延在した状態で固定される。この場合、ベース部62は、駆動ユニット18の軸線と略直交する方向(矢印C方向)に延在した状態で固定される。
【0036】
また、連結部38には、
図2A及び
図2Bに示されるように、ブラケット60と共に回り止め部材74が固定される。この回り止め部材74は、
図2A〜
図3Aに示されるように、ブラケット60と同様に、例えば、金属製材料からなる薄板をプレス成形することによって形成され、その中央に孔部76を有した略平面状のベース部78と、前記孔部76の外周側に形成され前記ベース部78に対して立設した一組の壁部80a、80bとからなる。
【0037】
この壁部80a、80bは、孔部76を挟んでそれぞれ設けられ、ベース部78の側面に対して略直交するように形成されると共に、一方の壁部80aと他方の壁部80bとがベース部78に対して互い違いとなるように反対方向に突出している(
図2B及び
図3A参照)。
【0038】
そして、回り止め部材74は、
図2Bに示されるように、そのベース部78がブラケット60のベース部62と共に締結ナット44によって連結部38に固定され、一方の壁部80aをベース部78に対して略直交するように塑性変形させ連結部38の側面に当接させると共に、同様に、他方の壁部80bをベース部78に対して略直交するように塑性変形させ締結ナット44の側面に当接させる。これにより、回り止め部材74を介して前記駆動ユニット18に対するブラケット60の回転が規制される。
【0039】
この際、壁部80a、80bは、ブラケット60のアーム部64a、64bと接触することがないように連結部38を中心として該アーム部64a、64bに対して約90°ずれて配置されている。
【0040】
すなわち、一組の壁部80a、80bは、駆動ユニット18に対するブラケット60の回転変位を規制する回り止め手段として機能し、駆動ユニット18の連結部38に対してブラケット60を組み付けた後に折曲させ当接させている。
【0041】
また、ブラケット60は、上述したように駆動ユニット18に対して別体で設けられる場合に限定されるものではなく、例えば、前記駆動ユニット18のハウジング32や検出部20のセンサケース46と一体的に形成される構成であってもよい。このようにブラケット60を、駆動ユニット18又は検出部20と一体的に形成することで、別体とした場合と比較して部品点数の削減を図ることができると同時に、組付性を向上できるため組付工数の削減を図ることができる。
【0042】
さらに、上述した回り止め部材74は、ブラケット60と別に設けられる場合に限定されるものではなく、前記ブラケット60と一体的に設けるようにしてもよい。
【0043】
本発明の実施の形態に係るインタンクバルブ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に駆動ユニット18に対して検出部20を保持させる場合について
図4A〜
図4Cを参照しながら説明する。
【0044】
先ず、
図4Aに示されるように、検出部20の上方に駆動ユニット18の他端部を配置し、ロケートピン40とロケート孔52とを一直線状とした状態で、前記駆動ユニット18を前記検出部20側(矢印B方向)に向かって接近させる。
【0045】
そして、
図4Bに示されるように、駆動ユニット18のロケートピン40をロケート孔52へ挿入させ始めることで、前記駆動ユニット18と前記検出部20とが同軸上に位置決めされると同時に、ブラケット60におけるアーム部64a、64bの先端(フック72)が取付部50の係合孔54へと挿入され始める。
【0046】
この駆動ユニット18をさらに検出部20側(矢印B方向)へと接近させることで、アーム部64a、64bのフック72が係合孔54の内壁面56に当接しながら徐々に幅方向外側(矢印C1方向)へと押し広げられていき、該内壁面56の他端部を乗り越えた時点で弾発力によって幅方向内側(矢印C2方向)へと移動する。
【0047】
これにより、
図4Cに示されるように、アーム部64a、64bにおけるフック72の先端が取付部50の溝部58に挿入され、傾斜部70の弾発力によって駆動ユニット18側(矢印A方向)へと引っ張られた状態で検出部20が前記駆動ユニット18の連結部38に対して保持される。
【0048】
このように、駆動ユニット18の他端部にブラケット60を予め固定し、前記駆動ユニット18と検出部20とを互いに接近させ、前記ブラケット60のアーム部64a、64bを前記検出部20の係合孔54へと挿入してフック72を溝部58へと係合させることで、傾斜部70が有する駆動ユニット18側への弾発力によって取付部50をアーム部64a、64bで吊り上げた状態で保持することができる。そのため、検出部20を駆動ユニット18に対して軸方向(矢印A、B方向)に容易に保持できると共に、脱落やがたつき等の発生がないよう強固に保持することが可能となる。
【0049】
また、駆動ユニット18のロケートピン40を検出部20のロケート孔52に挿入することで、両者を容易且つ確実に同軸上に配置することができ、しかも、アーム部64a、64bが係合孔54に対応した位置となるため改めて位置合わせ等を行う必要がなく、前記アーム部64a、64bを前記係合孔54へと容易に挿入することができる。
【0050】
さらに、取付部50において、係合孔54の幅方向外側(矢印C1方向)に外壁50bを有しているため、前記係合孔54に係合されたアーム部64a、64bが、該外壁50bに当たることで誤って幅方向外側(矢印C1方向)へ傾動して外れてしまうことが防止される。
【0051】
次に、上述したように検出部20が駆動ユニット18の他端部に対して連結されたインタンクバルブ10の動作並びに作用効果について説明する。
【0052】
先ず、図示しない水素ガス供給装置から水素ガスがタンク12へと充填される場合について説明する。なお、ボディ16の配管接続部26には、予め水素ガス供給装置(図示せず)が接続されている。
【0053】
図示しない水素ガス供給装置から水素ガスが配管接続部26の接続流路30へと供給されると、前記接続流路30に設けられた逆止弁(図示せず)が前記水素ガスの圧力によって自動的に開かれ弁開状態となる。そして、水素ガスは、接続流路30から流路14へと流れた後、駆動ユニット18の内部を経てタンク12内へと供給され充填される。
【0054】
次に、上述したようにタンク12内に貯留された水素ガスを燃料電池システムへと供給する場合について説明する。この場合、配管接続部26は、図示しない配管を介して燃料電池システムに予め接続されている。
【0055】
先ず、図示しない制御装置からの信号が駆動ユニット18へと伝達されることで、弁体(図示せず)が作動してタンク12内と流路14とが連通した状態となる。
【0056】
そして、タンク12内の水素ガスが駆動ユニット18のハウジング32内へと流れた後、ボディ16の流路14及び接続流路30を通じて、配管接続部26に接続された燃料電池システム(図示せず)へと供給される。
【0057】
なお、上述したような水素ガスのタンク12内への充填時や、タンク12からの水素ガスの放出時に生じる圧力変化に伴って変化する温度を検出部20のセンサ(図示せず)において検出し、検出信号としてリード線36及びカプラ34を通じて図示しない制御装置へと出力することで、前記水素ガスの温度が測定される。
【0058】
また、インタンクバルブ10を通じてタンク12への充填、又は、前記タンク12からの放出が行われる高圧ガスは水素ガスに限定されるものではない。
【0059】
以上のように、本実施の形態では、インタンクバルブ10を構成する駆動ユニット18に対して検出部20を保持する保持手段22を備え、該保持手段22は、前記駆動ユニット18のハウジング32に対して固定されるベース部62と、該ベース部62の両端部に形成された一対のアーム部64a、64bとを有したブラケット60からなる。このブラケット60は、金属製材料からなる薄板で弾性を有し、一対のアーム部64a、64bを検出部20における係合孔54へ挿入して係合させることで、その弾発力によって検出部20に対して駆動ユニット18側(矢印A方向)への引っ張り力が付与された状態で保持される。
【0060】
その結果、検出部20は、ブラケット60の弾発力によって駆動ユニット18側(矢印A方向)へ常に引っ張られた状態で強固に保持され、しかも、ねじ等を用いることなく、簡素な構成で検出部20を駆動ユニット18の連結部38に対して保持できるため組付性の向上を図ることができる。
【0061】
また、ブラケット60は、駆動ユニット18及び検出部20の外周側から外側に突出することがないコンパクトな構成とすることができるため、前記駆動ユニット18等を含むインタンクバルブ10をタンク12の開口部12aを通じて内部へと挿入する際の支障となることがなく組付性が良好である。
【0062】
さらに、ブラケット60が駆動ユニット18及び検出部20と別体としているため、該ブラケット60の材質や形状等を適宜選択することで、前記検出部20を前記駆動ユニット18側(矢印A方向)へと引っ張る力を自在に設定することが可能となる。換言すれば、検出部20の形状や重さに応じてブラケット60の形状や材質を適宜設定することで、最適な保持手段22を構成することができる。
【0063】
さらにまた、検出部20には、その取付部50に係合孔54が形成され、ブラケット60のアーム部64a、64bを挿入して係合させる構成としているため、前記アーム部64a、64bを前記係合孔54へと挿入するだけで容易且つ確実に前記検出部20を前記駆動ユニット18に対して固定することが可能となる。
【0064】
その結果、ねじ等を用いて駆動ユニット18と検出部20とを連結する場合と比較し、ブラケット60からなる保持手段22を用いることで構成の簡素化を図ることができると共に組付性を向上させることができる。
【0065】
なお、上述した実施の形態においては、ブラケット60が駆動ユニット18の連結部38に固定される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、前記駆動ユニット18に臨む検出部20の一端部にブラケット60を固定し、そのアーム部64a、64bを前記駆動ユニット18の連結部38に対して係合させることで保持可能な構成としてもよい。
【0066】
また、上述したブラケット60の代わりに、
図3Cに示されるブラケット100のように、一組のアーム部102a、102bの先端に断面U字状の把持部104をそれぞれ有し、前記把持部104を検出部20における取付部50の両端部に側方から係合させることで、前記ブラケット100のアーム部102a、102bに検出部20を保持可能な構成としてもよい。この把持部104は、その一方と他方とが互いに向かい合うように開口している。
【0067】
このようなブラケット100から保持手段106を構成することで、前記ブラケット60のアーム部64a、64bを係合させるための係合孔54を検出部20に形成する必要がないため、前記検出部20における製造コスト並びに製造工数の削減を図ることができる。
【0068】
また、本発明に係るインタンクバルブは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。