(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記人感センサは、赤外線を発生する発光部と、前記人から反射して戻された前記赤外線を受光する受光部を有し、前記発光部が発生する前記赤外線は、近赤外線である請求項1に記載の冷蔵庫。
  前記発光部からの赤外線の発光方向と前記前面板とが垂直で、前記受光部が赤外線を受ける受光方向と前記前面板とが垂直になるように、前記発光部と前記受光部が配置されている請求項2ないし4のいずれかに記載の冷蔵庫。
【発明を実施するための形態】
【0009】
  以下、図面を用いて、本発明の実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
 
【0010】
  <第1実施形態>
  
図1は、本発明の第1実施形態に係わる冷蔵庫の全体を示す正面図である。
図2は、
図1に示す冷蔵庫1の縦方向の断面図である。
 
【0011】
  図1と
図2に示す冷蔵庫1は、本体1Aを有している。この冷蔵庫1の本体1Aは、左側面部17と、右側面部18と、上面部19と、底面部15と、背面部16を有している。本体1Aは、外側側板からなる外箱と、内側側板からなる内箱を有する。この外箱と内箱の間には、断熱材が配置されているので本体1Aは断熱性を有する。この本体1Aの内部には、複数の貯蔵室が形成されている。
 
【0012】
  図1と
図2に例示するように、貯蔵室としては、上から順に冷蔵室2、野菜室3が設けられ、この野菜室3の下には製氷室4と小冷凍室5が左右の並べて設けられ、最下部に主冷凍室6が設けられている。
 
【0013】
  図1と
図2に示す冷蔵室2の前面には、冷蔵室2の前面開口部を開閉する左右の扉7,8が設けられている。左右の扉7,8は、観音開き式扉であり、左側の扉7の左端部が図示しないヒンジにより回動可能に取り付けられている。同様にして、右側の扉8の右端部が図示しないヒンジにより回動可能に取り付けられている。
 
【0014】
  図1と
図2に示すように、野菜室3、製氷室4、小冷凍室5、主冷凍室6の各前面には、各前面開口部を開閉する引出し式の扉9,10,11,12が設けられている。左右の扉7,8と、引出し式の扉9,10,11,12は、内部に断熱材を設けることで、断熱性を有している。
 
【0015】
  図1と
図2に示すように、左右の扉7,8,と引出し式の扉9,10,11,12の各前面(外面)には、好ましくは前面板7A,8A,9A,10A,11A,12Aが配置されている。前面板7A,8A,9A,10A,11A,12Aは、好ましくは透光性を有するガラス板あるいは透明なガラス板であり、赤外線を通す光透過性を有している。この前面板は、割れや強度の観点から強化ガラスを採用するのが好ましい。
 
【0016】
  左側の扉7には、一例として操作パネル200が設けられている。この操作パネル200は、好ましくは前面板7Aの内側に配置され、例えば操作領域20と、表示領域21を有している。操作領域20は、例えば使用者が指を接触させることで、冷蔵庫1の各種の操作機能を入力できる。表示領域21は、各種の表示項目を使用者に表示する。
 
【0017】
  次に、
図2を参照して、冷蔵庫1の冷蔵室2、野菜室3、製氷室4、小冷凍室5、主冷凍室6の構造の一例を説明する。
 
【0018】
  図2に示すように、本体1Aの主冷凍室6の背面位置には、機械室22が設けられており、この機械室22には、コンプレッサ(圧縮器)23等が配置されている。
 
【0019】
  図2に示すように、本体1Aの背面位置には、野菜室3の後側に、冷蔵冷却ファン30と貯蔵室冷却器31と、送風ダクト32が配置されている。また、本体1Aの背面位置には、製氷室(貯蔵室)4と小冷凍室(貯蔵室)5と主冷凍室6の後側に、冷凍冷却ファン40と、冷凍室冷却器41と、送風ダクト42が配置されている。貯蔵室冷却器31と冷凍室冷却器41は、コンプレッサ23から供給される冷媒によって冷却される。
 
【0020】
  野菜室3には、上下の貯蔵容器3M,3Nが出し入れ可能に収納されている。小冷凍室5には、貯蔵容器5Mが出し入れ可能に収納されている。主冷凍室6には、上下の貯蔵容器6M、6Nが出し入れ可能に収納されている。
 
【0021】
  図1と
図2に示すように、開扉装置51,52が、例えば本体1Aの上面部19に設けられている。開扉装置51,52は、共に例えば電磁ソレノイド等のアクチュエータを使用することができる。開扉装置51が駆動すると、左側の扉7を押して開くことができる。同様にして、開扉装置52が駆動すると、右側の扉8を押して開くことができる。
 
【0022】
  図3は、
図1と
図2に示す冷蔵庫1の電気的接続例を示す図である。
 
【0023】
  図3に示すように、冷蔵庫1は、制御部100を備えている。この制御部100は、左扉スイッチ61、右扉スイッチ62、冷蔵室温度センサ63、冷凍室温度センサ64、冷凍室の扉スイッチ65、冷却器温度センサ66、庫内照明67、冷蔵冷却ファン30、冷凍冷却ファン40、コンプレッサ23に電気的に接続されている。
 
【0024】
  左扉スイッチ61、右扉スイッチ62、冷凍室の扉スイッチ65は、
図1に示すように、それぞれ扉7,8,12に配置されており、例えば静電容量型のタッチセンサを採用できる。
 
【0025】
  この制御部100は、使用者が左扉スイッチ61、右扉スイッチ62、冷凍室の扉スイッチ65に接触してオン操作することにより、操作オン信号を受ける。制御部100は、冷蔵室温度センサ63、冷凍室温度センサ64、冷却器温度センサ66からの温度情報信号を受ける。さらに、制御部100は、庫内照明67、冷蔵冷却ファン30、冷凍冷却ファン40、コンプレッサ23の各動作の制御を行うことができる。
 
【0026】
  また、
図3に示す制御部100は、開扉装置51,52に電気的に接続されている。この制御部100は、開扉装置51,52の動作を制御する。使用者が左扉スイッチ61をオン操作すると、制御部100が指令して開扉装置51を駆動して、開扉装置51が左側の扉7を押して開くことができる。使用者が右扉スイッチ62をオン操作すると、制御部100が指令して開扉装置52を駆動して、右側の扉8を押して開くことができる。
 
【0027】
  図3の制御部100は、感度調整操作部120に電気的に接続されている。感度調整操作部120は、感度調整スイッチ121と、表示部130と、音声装置であるスピーカ140に電気的に接続されている。表示部130とスピーカ140は、制御部100にも電気的に接続されている。
 
【0028】
  図3に示す感度調整操作部120と感度調整スイッチ121は、例えば
図1に示す左側の扉7の操作領域20に配置することができるが、感度調整操作部120の配置位置は、冷蔵庫1の本体1A内であっても良く、特に限定されない。
 
【0029】
  この感度調整操作部120は、制御部100を通じて、赤外線タイプの人感センサ80の検知感度の調整を、任意に行うことができるようにするために設けられている。例えば、使用者の自宅の設置場所に冷蔵庫1を初めて設置した時に、使用者または冷蔵庫のメンテナンス要員が、冷蔵庫1の設置場所の状況に合わせて、感度調整スイッチ121を操作することで、赤外線タイプの人感センサ80の検知感度の調整を、適宜行うことができるようになっている。
 
【0030】
  この冷蔵庫1の設置場所の状況とは、例えば設置場所の明るさや、設置場所にコンロ等の熱源がどのような位置に配置されているかどうか等である。設置場所の状況に応じて、感度調整モードとしては、幾つかのモードに分けて予め設定することができる。
 
【0031】
  図3の感度調整操作部120は、感度調整モード記憶部122と、感度調整データ記憶部123と、音声データ記憶部124と、受信部150を有する。
 
【0032】
  次に、
図3に示す上述した要素について、順次説明する。
 
【0033】
  まず、
図3に示す赤外線タイプの人感センサ80について説明する。
図1において破線で例示するように、赤外線タイプの人感センサ80は、好ましくは右の扉8の下部であって、左の扉7寄りの位置に配置されている。
 
【0034】
  近年、冷蔵庫1の外観デザイン性(外観デザイン上の美観)が重視される中、
図1に示すように、冷蔵庫1の前面側の左右の扉7,8と引出し式の扉9,10,11,12には、ガラス板のような前面板7A,8A,9A,10A,11A,12Aが、装飾用に配置されている。従来冷蔵庫に用いられている鋼板扉であれば、人感センサを含む樹脂部品は、鋼板扉をくり抜いた部分に埋め込むことができる。
 
【0035】
  しかし、本発明の第1実施形態の冷蔵庫1のように、左右の扉7,8と引出し式の扉9,10,11,12には、強化ガラス板のような前面板7A,8A,9A,10A,11A,12Aが配置されている場合には、後から前面板に対して加工して赤外線タイプの人感センサ80を埋め込むことができない。この理由としては、すでに説明したように、この前面板としては、割れへの強度確保や飛散防止を図る等から、強化ガラス板が用いられているので、後から強化ガラス板に対して加工しにくいのが現状だからである。
 
【0036】
  このような状況であっても、冷蔵庫1の高機能化が進んでおり、冷蔵庫1に対して人が近づいてきたかの人の存否の検知を行ったり、音声で話しかけたり、その時だけ動作するような省エネルギ設計を行うために、人の存否を検知するための人感センサの取り付けが、必要になってきている。
 
【0037】
  そこで、本発明の第1実施形態では、人感センサとしては、
図3に示す赤外線タイプの人感センサ80を用いている。赤外線タイプの人感センサ80は、後で詳しく説明するが、
図1に示すように、右側の扉8の前面板8Aの裏面(内面)側に配置してあり、扉8に対して移動しないように位置が固定されている。
 
【0038】
  赤外線タイプの人感センサ80としては、アクティブ型の赤外線センサと、パッシブ型の赤外線センサを含むが、より好ましくはアクティブ型の赤外線センサを用いる。
 
【0039】
  アクティブ型の赤外線センサとは、能動型赤外線センサとも呼ばれ、赤外線を発生して人に照射した後、人が反射した赤外線を検知する。この際には、受光される赤外線量の変化を調べることで、人の存否を検知する。利用する赤外線の種類は、近赤外線であり、近赤外線は、可視光線と遠赤外線の中間の性質を持つ。アクティブ型の赤外線センサとしては、赤外線を発生する発光部と、人から反射した赤外線を受ける受光部を有し、発光部と受光部が1つの製品となった一体型の物が使用できる。アクティブ型の赤外線センサとしては、例えば焦電形赤外線素子が用いられる。アクティブ型の赤外線センサの具体的な構造例は、後で説明する。
 
【0040】
  これに対して、パッシブ型の赤外線センサは、受動型赤外線センサとも呼ばれ、人体表面から放出する赤外線を受信して、背景と人体の赤外線エネルギの差(温度差)を調べて、人の存否を検知する。利用する赤外線の種類は、遠赤外線であり、遠赤外線は、熱線とも呼ばれる。パッシブ型の赤外線センサは、赤外線ビームを受ける受光部を有するが、発光部はない。パッシブ型の赤外線センサは、強誘電体セラミックス素子が使用できる。
 
【0041】
  図3に示す赤外線タイプの人感センサ80は、予め定めた検知範囲内における人の存否と、人までの検知距離を検知した信号SGを、周辺デバイスとのシリアル通信の方式である12C通信等により、デジタル信号あるいはアナログ信号として制御部100側に送る。これにより、制御部100は、信号SGに基づいて、人を検知しているか検知していないかの人の存否情報と、その人までの検知距離情報を得ることができる。
 
【0042】
  赤外線タイプの人感センサ80が予め定めた検知範囲内に人(使用者)を検知した場合には、制御部100は、人を検知したことを、液晶表示装置のような表示部130に表示したり、スピーカ140により音声で発話して、人(使用者)に通知することができる。
 
【0043】
  ただし、制御部100は、左右の扉7,8のいずれか一方が既に開いている場合には、赤外線タイプの人感センサ80による人の検知を行わせないようにしている。この理由としては、左右の扉7,8のいずれか一方が既に開いている場合には、既に人が冷蔵庫1の前に居ることが確実であることと、扉7,8は開閉することにより円弧形状を描くために、扉8の開閉角度により、赤外線タイプの人感センサ80が人の存否を検知する方向が不定であることと、そして赤外線タイプの人感センサ80が人以外の物を検知する場合があるためである。
 
【0044】
  このように、制御部100は、扉7,8が閉じた時のみに、赤外線タイプの人感センサ80から信号SGを「有効」として、扉7,8のいずれかが開いている場合には、制御部100は、赤外線タイプの人感センサ80から信号SGを受けても、その信号Sを「無効」にする。
 
【0045】
  本発明の実施形態では、赤外線タイプの人感センサ80としては、特に好ましくは
図4に示すようなアクティブ型の赤外線センサを用いている。
 
【0046】
  図4(A)は、赤外線タイプの人感センサ80を示す正面図であり、
図4(B)は、赤外線タイプの人感センサ80が人HMに対して赤外線を照射して、人HMを検知している様子を示す図である。
 
【0047】
  図4に示す例では、好ましくは、この赤外線タイプの人感センサ80としては、上述したアクティブ型の赤外線センサを採用している。赤外線タイプの人感センサ80は、近赤外線領域の赤外線IR1を発生し、人が反射した戻りの赤外線IR2を検知することで、人の存否の検知と、必要に応じてその人までの検知距離情報を得ることができる。
 
【0048】
  赤外線タイプの人感センサ80は、近赤外線領域の赤外線IR1を発生する発光部81と、人から反射した戻りの赤外線IR2を受ける受光部82と、発光部81と受光部82を搭載する基板83を有する。受光部82の前には、可視光カットフィルタ84が配置されている。この可視光カットフィルタ84は、例えば前面板8Aの内面8Sに貼り付けて固定されている。
 
【0049】
  これにより、発光部81が発生する近赤外線領域の赤外線IR1は、光透過性を有する前面板8Aを通って、検知対象物である人HMに当たる。そして、人MHにより反射した戻りの近赤外線領域の赤外線IR2は、再び前面板8Aを通ってしかも可視光カットフィルタ84で可視光が入り込まないように可視光をカットした後に、受光部82に受光される。このため、受光部82では、可視光が入らないので、近赤外線領域の赤外線IR2の受光精度を上げて、人の存否の検出能力を上げることができる。
 
【0050】
  図4に示す赤外線タイプの人感センサ80は、近赤外線領域の赤外線を利用しているので、遠赤外線領域の赤外線を利用するのに比べて、より人の存否の情報を確実に検知することができる。冷蔵庫1が置かれている例えばキッチン周辺には、コンロ等の熱源が多くあるが、近赤外線領域の赤外線は、これらのコンロ等の熱源を誤検知することが、遠赤外線領域の赤外線を用いるのに比べるとない。このことから、冷蔵庫1に近づいた人を、
図4(B)に示す予め定めた検知範囲DR内で検知するために、近赤外線領域の赤外線を利用するのは、有効である。
 
【0051】
  赤外線タイプの人感センサ80を用いることは、静電容量型の人感センサを用いるのに比べて、
図4(B)に示す人の検知範囲DRを大きく取れる利点がある。
図4(B)に示す赤外線タイプの人感センサ80の検知範囲DRの数値例としては、例えば1mである。検知範囲の角度は、例えば上下方向と左右方向に関して、それぞれ30度前後である。しかし、検知範囲の数値と角度の数値は、特に限定されず、任意に選択できる。
 
【0052】
  図1に示すように、赤外線タイプの人感センサ80は、右側の扉8の左下部に配置されている。このため、赤外線タイプの人感センサ80は、冷蔵庫1の左右のほぼ真ん中の位置に配置されている。
 
【0053】
  図1に示すこの赤外線タイプの人感センサ80の配置位置の床面からの高さHは、ある程度の身長の高い人でも低い人でも、人の存否を確実に検知できるようにするために、好ましくは床面からの高さが、100cmから120cmであることが望ましい。赤外線タイプの人感センサ80の配置位置の床面からの高さHが100cmよりも小さいと、赤外線タイプの人感センサ80が扉8の範囲内に取り付けられなくなる可能性があり、120cmよりも大きいと、子供の使用者の検知が難しくなる可能性がある。なお、この例では、冷蔵庫1の全高は、例えば180cmである。
 
【0054】
  これにより、赤外線タイプの人感センサ80は、人(使用者)が、冷蔵庫1の前を単に通り過ぎるのではなく,意図して冷蔵庫1の扉7,8を開ける位置に来たことを、検知することができる。
 
【0055】
  図5は、赤外線タイプの人感センサ80が、右側の扉8において配置されているより具体的な例を示している。
図5(A)は、右側の扉8を示す正面図であり、
図5(B)は、
図5(A)に示す扉8のD−D線における断面構造例を示す図である。
 
【0056】
  図5(A)と
図5(B)において、塗装部75は、前面板8Aの裏面(内面)8Sのほぼ前面にわたって形成されている。
 
【0057】
  図5に示すように、この塗装部75が、赤外線を通さない性質を有する塗料で形成されている場合には、
図4に示す赤外線タイプの人感センサ80の前面側に相当する赤外線透過部8Rに塗装部75が形成されてしまっていると、塗装部75は、近赤外線IR1と近赤外線IR2を透過させることができない。
 
【0058】
  このため、塗装部75は、この赤外線タイプの人感センサ80の前面側に相当する赤外線透過部8R以外の領域に形成されている。すなわち、塗装部75は、この赤外線タイプの人感センサ80の前面側に相当する、例えば長方形状の赤外線透過部8Rには形成されていない。
 
【0059】
  この結果、別の効果としては、使用者は、このガラス板である前面板8Aの赤外線透過部8Rを通じて、赤外線タイプの人感センサ80の位置を見て確認することを、容易にできる。
 
【0060】
  この塗装部7は、所望の色、例えば赤、白、黒等の塗料を採用することで、扉8の色は、冷蔵庫1の全体の色、例えば赤、白、黒等の色と同色にすることができる。このため、前面板8Aの裏面8S側において、赤外線タイプの人感センサ80を配置しても、冷蔵庫1では、扉8の色を冷蔵庫1の全体の色と同じにして、外観デザイン性を損なわずに色を統一することができる。
 
【0061】
  上述したように、
図4と
図5に示すガラス板である前面板8Aでは、赤外線タイプの人感センサ80の前面側に相当する赤外線透過部8Rが、前面板8Aだけであり塗装部75が配置されていないことから、赤外線透過部8Rは赤外線の透過性を有する材料により作られている。すなわち、前面板8Aの裏面であって人感センサ80の前面には、塗装部75は形成されておらず、赤外線を透過させる赤外線透過部材である前面板8Aだけが用いられており、塗装等の赤外線を遮断する材料は用いられていない。
 
【0062】
  これにより、発光部81が発生する近赤外線領域の赤外線IR1は、赤外線透過部材である前面板8Aを透過して、検知対象物である人HMに照射され、人MHにより反射した戻りの近赤外線領域の赤外線IR2は、再び赤外線透過部材である前面板8Aを透過してしかも可視光カットフィルタ84で可視光が入り込まないようにして可視光をカットした上で、受光部82に確実に受光することができる。
 
【0063】
  このように、扉8のガラス板である前面板8Aの内面側には、赤外線タイプの人感センサ80を配置するために、ガラス板である前面板8Aでは、赤外線タイプの人感センサ80に対面する領域である赤外線透過部8Rには、塗装部75を形成しないようにすることで、近赤外線を確実に透過させることができる。
 
【0064】
  また、
図4(B)と
図5(A)に示すように、赤外線タイプの人感センサ80の発光部81の発光方向と受光部82の受光方向は、好ましくは前面板8Aに対して垂直になるように設定されている。前面板8Aとして例えば強化ガラスを用いる場合には、その前面板8Aの厚みは、通常は3mm以上である。
 
【0065】
  発光部81が発生する近赤外線IR1が前面板8Aにおいて反射したり屈折するのを抑制し、受光部82に到達しようとする戻りの近赤外線IR2が反射したり屈折するのを抑制するために、好ましくは赤外線タイプの人感センサ80の発光部81の発光方向と受光部82の受光方向は、好ましくは前面板8Aに対して垂直になるように設定されている。
 
【0066】
  これにより、前面板8Aの厚みが3mm以上あっても、発光部81が発生する近赤外線IR1は、前面板8Aにおいて反射したり屈折するのをできるだけ抑制でき、戻りの近赤外線IR2は、前面板8Aにおいて反射したり屈折するのをできるだけ抑制した状態で、受光部82に受光させることができる。
 
【0067】
  図5(A)に示すように、赤外線タイプの人感センサ80の発光部81と受光部82を搭載している基板83は、断熱材である例えば発泡ポリウレタン77により扉8に対して固定されている。この場合に、基板83は、発泡ポリウレタン77側に例えば接着剤により固定することができる。
 
【0068】
  これにより、扉8を開閉する際に生じる振動により、赤外線タイプの人感センサ80の発光部81と受光部82を搭載している基板83が、扉8内において位置ずれを起こすのを防げる。このため、赤外線タイプの人感センサ80と前面板8Aとの位置関係を固定することができる。
 
【0069】
  上述した本発明の第1実施形態の冷蔵庫1では、扉8にガラス板のような前面板8Aを有している冷蔵庫の外観デザインを損なうことなく、人感センサ80は、前面板8Aの裏面側に設置することができる。
 
【0070】
  <第2実施形態>
  次に、
図6を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
 
【0071】
  図6に示す第2実施形態が、
図5に示す第1実施形態と同様な箇所には、同じ符号を記してその説明を用いる。
図6(A)は、右側の扉8を示す正面図であり、
図6(B)は、
図6(A)に示す扉8のE−E線における断面構造例を示す。
 
【0072】
  図6に示す第2実施形態が、
図5に示す第1実施形態と異なるのは、前面板8Aの裏面8Sと赤外線タイプの人感センサ80の前側部との間であって、赤外線タイプの人感センサ80の前面側に相当する赤外線透過部8Rには、好ましくは別部材である赤外線透過部材88が配置されていることである。この赤外線透過部材88は、赤外線を透過することができる赤外線透過材料から成る例えば長方形状の板状部材である。
 
【0073】
  このように、赤外線透過部材88が、扉8の前面板8Aの裏面8Sと赤外線タイプの人感センサ80の前側部との間であって、赤外線タイプの人感センサ80の前面側に相当する赤外線透過部8Rに配置するのは、次の理由からである。
 
【0074】
  扉8の前面板8Aにおいて、赤外線タイプの人感センサ80の前面側に相当する赤外線透過部8Rには色が着いていない。しかし、使用者は、この赤外線透過部8R以外の広い領域では塗装部75の色が前面板8Aを通して見ることができる。このため、扉8では、赤外線タイプの人感センサ80の前面側に相当する赤外線透過部8Rと、赤外線透過部8R以外の広い領域との間では、使用者が前面板8Aを通して扉8を見ると、扉8における色合いに違いが出てしまい、外観デザイン上好ましくない可能性がある。
 
【0075】
  そこで、赤外線タイプの人感センサ80の前面側に相当する赤外線透過部8Rを含む部分には、塗装部75の色と同色の色を有する赤外線透過部材88を配置する。例えば、塗装部75の色が赤色であれば、赤外線透過部材88の色も赤色にする。これにより、扉8の全体の色合いの統一感を出すことができる。この赤外線透過部材88としては、例えば赤外線透過フィルムである。
 
【0076】
  この赤外線透過部材88は、例えばガラスのような赤外線透過材料に対して、誘電体多層膜を蒸着させるようなことで実現している。誘電体多層膜としては、屈折率の違う材料を2種類以上重ねることで、必要な反射率を出す。屈折率の違う材料としては、例えばAl2O3(アルミナ)、CaF2(フッ化カルシウム)、MgF2(フッ化マグネシウム)、SiO2(二酸化シリコン:ガラス)、ZnS(硫化亜鉛)、ZrO2(二酸化ジルコニウム)、Si(シリコン)、TiO2(二酸化チタン)等である。
 
【0077】
  <第3実施形態>
  次に、
図7を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。
 
【0078】
  図7に示す第3実施形態が、
図4(B)に示す第1実施形態と同様な箇所には、同じ符号を記してその説明を用いる。
 
【0079】
  図7に示す第3実施形態が、
図4(B)に示す第1実施形態と異なるのは、赤外線タイプの人感センサ80の発光部81と受光部82の周囲が、開放されてはおらず、赤外線吸収部材90により囲まれていることである。
 
【0080】
  すでに説明したように、赤外線タイプの人感センサ80の発光部81と受光部82は、前面板8Aに対して垂直になるように取り付けるのが望ましいが、実際の製造時の組立工程では、赤外線タイプの人感センサ80の取り付けには、多少なりとも垂直方向ではなく取付け角度にばらつきが生じることが想定される。
 
【0081】
  そこで、赤外線タイプの人感センサ80の発光部81と受光部82の周囲の4辺の側部を、赤外線吸収部材90により囲めるように、基板99の4辺の端部分と前面板8Aの裏面8Sの間には、それぞれ赤外線吸収部材90が設けられている。
 
【0082】
  これにより、赤外線タイプの人感センサ80の発光部81と受光部82の4辺の側部には、赤外線を反射する部材はなくなり、近赤外線IR1,IR2を反射してしまうことが無い。もし近赤外線IR1,IR2を反射してしまうと、受光部82は反射した余計な近赤外線を受光することになり、受光部82は、人HMからの戻りの近赤外線IR2を正確な光量で受光できなくなるおそれがある。このように、赤外線タイプの人感センサ80の発光部81と受光部82の4辺の側部を、赤外線吸収部材90により囲むことで、赤外線タイプの人感センサ80における極力ノイズ源の発生を除去している。
 
【0083】
  赤外線吸収部材90は、前面板8Aの裏面8Sに対して例えば接着剤を用いて固定されている。これにより、赤外線タイプの人感センサ80は、
図6に例示したのと同様に前面板8Aの裏面8Sに対して固定することができるとともに、発泡ポリウレタン77に対しても接着剤を用いて固定できる。
 
【0084】
  これにより、扉8を開閉する際に生じる振動により、赤外線タイプの人感センサ80の発光部81と受光部82を搭載している基板83が扉8において位置ずれを起こすのを防げる。このため、扉8の開閉を行って振動が加わっても、赤外線タイプの人感センサ80と前面板8Aとの位置関係を固定することができる。
 
【0085】
  赤外線吸収部材90の赤外線吸収材料は、例えばガラス等の材料に近赤外線吸収色素を含ませており、近赤外線吸収色素としては、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジチオール金属錯体、ナフトキノン化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物等である。
 
【0086】
  <第4実施形態>
  次に、
図3を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。
 
【0087】
  図3に示す第4実施形態では、赤外線タイプの人感センサ80の検知感度を調整が可能な例を示している。
 
【0088】
  上述したように、
図1に示すように、赤外線タイプの人感センサ80が、冷蔵庫1の扉8の前面板8Aの裏面側に取り付けられている。この冷蔵庫1が設置されるキッチンの環境は、家ごとに異なるために、扉7,8前にキッチンの空間がどの程度あるか等については一定ではない。このため、赤外線タイプの人感センサ80の検知範囲(検知距離)の数値は、冷蔵庫1が設置されるキッチン環境によって、調整できるようにするのが好ましい。
 
【0089】
  そこで、
図3に示すように、感度調整操作部120が制御部100に対して、有線通信あるいは無線通信により接続されており、感度調整操作部120からは制御部100に対して、赤外線タイプの人感センサ80の検知感度調整が行えるようなっている。
 
【0090】
  この感度調整操作部120には、感度調整スイッチ121が電気的に接続されている。感度調整操作部120は、感度調整モード記憶部122と、感度調整データ記憶部123と、音声データ記憶部124と、無線の受信部150を有する。感度調整操作部120と感度調整スイッチ121は、例えば
図1に示す操作パネル200の操作領域20に配置することができるが、特に配置位置には限定されない。
 
【0091】
  図3に示すように、感度調整モード記憶部122は、感度調整モードテーブル122Tを記憶している。この感度調整モードテーブル122Tには、例えば冷蔵庫1が設置されるキッチンの環境の違い、例えばキッチンの面積が異なることを考慮して、一例として、3段階の感度調整用のモード(1)、(2)、(3)が設定されている。
 
【0092】
  感度調整用のモード(1)としては、冷蔵庫1の前に確保できる空間距離が小さいキッチンを想定し、感度調整用のモード(2)としては、冷蔵庫1の前に確保できる空間距離が中くらいの広さのキッチンを想定し、そして感度調整用のモード(3)としては、冷蔵庫1の前に確保できる空間距離が最も大きいキッチンを想定している。
 
【0093】
  そして、感度調整データ記憶部123は、感度調整データ123Dを記憶している。例えば、感度調整データ123Dは、感度調整用のモード(1)のために予め設定された適切な赤外線タイプの人感センサ80の検知範囲(例えば80cm)、感度調整用のモード(2)のために予め設定された適切な赤外線タイプの人感センサ80の検知範囲(例えば90cm)、そして感度調整用のモード(3)のために予め設定された適切な赤外線タイプの人感センサ80の検知範囲(例えば100cm)を有する。
 
【0094】
  ユーザである使用者が、
図3に示す感度調整スイッチ121を押すたびに、感度調整操作部120は、感度調整モードテーブル122Tから感度調整用のモード(1)、モード(2)、モード(3)の内のいずれかを選択して呼び出す。このため、感度調整操作部120は、感度調整用のモード(1)、モード(2)、モード(3)の内の選択したモードに対応した赤外線タイプの人感センサ80の検知範囲の数値を、感度調整データ123Dから取り出す。
 
【0095】
  例えば、使用者が、感度調整スイッチ121を押して、冷蔵庫1の設置されているキッチンの広さが感度調整用のモード(2)に相当するとしてモード(2)を選択すると、感度調整操作部120は、感度調整用のモード(2)に対応する赤外線タイプの人感センサ80の検知範囲の数値を、感度調整データ記憶部123の感度調整データ123Dから呼び出す。
 
【0096】
  そして、感度調整操作部120は、制御部100に指令すると、制御部100は赤外線タイプの人感センサ80の検知感度の調整をして、赤外線タイプの人感センサ80の検知範囲を感度調整用のモード(2)に対応する値に設定することができる。
 
【0097】
  音声データ記憶部124は、感度調整された結果を通知するための音声データを記憶している。感度調整操作部120は、例えば音声データ記憶部124に記憶されている使用者により選択された感度調整用のモード(2)のガイダンス内容を説明する音声データを、スピーカ140から発音させる。これにより、使用者にその旨を通知することができ、使用者はモード(2)に設定されたことを音で確認できる。
 
【0098】
  同時に、感度調整操作部120は、例えば音声データ記憶部124に記憶されている使用者により選択されたモード(2)のガイダンス内容を表示部130に表示することができ、使用者はモード(2)に設定されたことを目視で確認できる。
 
【0099】
  図3に示すように、感度調整リモコン装置160は、無線の送信部170を有する。例えば冷蔵庫1を製造工程において組み立てて製造した後に、工場の作業者が、冷蔵庫1の出荷前に、この感度調整リモコン装置160を操作して、送信部170から、感度調整操作部120の受信部150へ、感度調整情報を無線送信する。
 
【0100】
  これにより、感度調整操作部120は、制御部100に指令をして、制御部100は赤外線タイプの人感センサ80の検知感度の調整を行うことができる。
 
【0101】
  工場内において、組立後に感度調整操作部120に対して、赤外線タイプの人感センサ80の検知感度の調整を行うのは、各冷蔵庫1に搭載されている赤外線タイプの人感センサ80のモジュール間には、取付け初期では、ある程度の検知範囲の誤差が存在しているためである。このため、赤外線タイプの人感センサ80のモジュール間にある検知範囲の誤差を、各冷蔵庫1について校正して、各冷蔵庫1の赤外線タイプの人感センサ80のモジュールについて、例えば検知範囲を1mに統一して設定した後に、冷蔵庫1を出荷する。
 
【0102】
  このようにして、各冷蔵庫1の赤外線タイプの人感センサ80のモジュールについて、検知範囲を予め所定の値に設定した上で、各冷蔵庫1を工場から出荷することができるメリットがある。
 
【0103】
  以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な態様で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
 
【0104】
  図1に示す例では、赤外線タイプの人感センサが配置される位置は、右側の扉8の下部であるが、これに限らず、例えば左側の扉7の下部の位置や、左の扉7の左端部位置や右の扉8の右端部位置等でも良い。
 
【0105】
  このように、赤外線タイプの人感センサを左の扉7の左端部位置や右の扉8の右端部位置に配置する場合には、人感センサの取り付け方向を扉の前面の垂直方向(前方方向)対して、斜め中央側に向けるのが好ましい。これにより、使用者が冷蔵庫1の中央の位置に近づいても、使用者の存否を確実に検知することができる。
 
【0106】
  図1に示す冷蔵庫1の構造は、一例であり、任意の構造を採用することができる。例えば、
図1に示す冷蔵庫1の冷蔵室が左右両開きの扉構造を有しているが、冷蔵室は、片開き式の1枚の扉構造を有するようにしても良い。冷蔵庫の各貯蔵室の配置構造は、任意に選択することができる。片開き式の1枚の扉の場合には、赤外線タイプの人感センサは、この扉の中央であって下部の位置に配置するのが好ましい。
 
【0107】
  前面板8Aは、ガラス材以外の光透過性を有するプラスチック板であっても良い。
 
【0108】
  本発明の各実施形態は、必要に応じて任意に組み合わせることができる。