特許第6560090号(P6560090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560090
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】測量機の支柱構造
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   G01C15/00 105R
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-196405(P2015-196405)
(22)【出願日】2015年10月2日
(65)【公開番号】特開2017-67710(P2017-67710A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】奥平 洋輔
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−156773(JP,A)
【文献】 実開平4−79209(JP,U)
【文献】 特開2011−47812(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/21236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直軸と、
前記鉛直軸回りに水平回転可能に設けられた支柱部と、
チルトセンサと、を備え、
前記鉛直軸を前記支柱部の根元部の下面に固定し、
前記チルトセンサを前記根元部の上面かつ前記鉛直軸の軸上に配置し
前記根元部の上面には、上方に開口し下方に窪む有底の袋部が形成され、前記チルトセンサは前記袋部に配置されたことを特徴とする測量機の支柱構造。
【請求項2】
前記チルトセンサは前記袋部の内周壁に接触しない位置に固定された請求項1に記載の測量機の支柱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セオドライトやトータルステーション等の測量機の支柱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
測量機は、整準部と、整準部の上に設けられた基盤部と、該基盤部上を鉛直軸周りに水平回転可能に設けられた支柱部と、該支柱部に鉛直回転可能に設けられた望遠鏡から構成されている。支柱部は、望遠鏡が上方および前後方向を視準できるようにするために、外形がU字形状となっているのが一般的である。
【0003】
前記測量機は、内部に整準用のチルトセンサを備えており、該チルトセンサの検出結果に基づいて、前記整準部が調整され、測量機本体が水平姿勢となるように整準される(例えば特許文献1参照)。なお、測量機の中には、前記整準用のチルトセンサの他に、該チルトセンサの検出値を補正するために設けられた補正用のチルトセンサを備えるものもある(例えば特許文献2参照)。以下、本明細書でのチルトセンサとは、整準用チルトセンサのことを指すものとする。
【0004】
整準用チルトセンサの配置位置は、上記特許文献では明確に表されていないが、一般的には、図6に示すように、(A)支柱部の托架部に配置されるか、(B)支柱部を下方支持する内部構造として、鉛直軸に配置されるものが知られている。図中、符号4が支柱部、符号7がチルトセンサ、符号11が鉛直軸である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−109458号公報
【特許文献2】特開2009−14368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記(A)タイプでは、チルトセンサが測量機本体の回転軸(鉛直軸)上にないため、測量機が水平回転した時の遠心力により、センサの液面安定性が悪くなるという問題がある。上記(B)タイプでは、チルトセンサは回転軸上にあるが、支柱部を下方支持する構造物として配置されているため、支柱部が変形すると引張応力がかかり、センサ精度へ悪影響を及ぼすおそれや、センサ筐体の強度を強化しなければならないという問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題を解決するためになされたもので、チルトセンサの精度を向上させ、さらには支柱部の剛性向上を図った測量機の支柱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の測量機の支柱構造は、鉛直軸と、前記鉛直軸回りに水平回転可能に設けられた支柱部と、チルトセンサと、を備え、前記鉛直軸を前記支柱部の根元部の下面に固定し、前記チルトセンサを前記根元部の上面かつ前記鉛直軸の軸上に配置したことを特徴とする。
【0009】
上記態様において、前記根元部の上面には、上方に開口し下方に窪む有底の袋部が形成され、前記チルトセンサは前記袋部に配置されるのも好ましい。
【0010】
上記態様において、前記チルトセンサは前記袋部の内周壁に接触しない位置に固定されるのも好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、整準用のチルトセンサの精度を向上させることのできる測量機の支柱構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る測量機の正面の縦断面図である。
図2図1の測量機の右側面の縦断面図である。
図3図1の支柱部の正面図である。
図4図1の支柱部の斜視図である。
図5】実施の形態との比較例に係る支柱部の正面図である。
図6】従来の支柱構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は実施の形態に係る測量機の正面の縦断面図、図2図1の測量機の右側面の縦断面図である。
【0015】
図中、符号1は測量機である。測量機1は、整準部2と、整準部2の上に設けられた基盤部3と、該基盤部3上を鉛直軸11周りに水平回転可能に設けられた支柱部4と、該支柱部4に設けられた水平軸12周りに鉛直回転可能に設けられた望遠鏡5から構成されている。支柱部4および望遠鏡5は、図示しない内蔵のモータにより回転駆動される様になっており、遠隔で又は自動で操作が可能となっている。
【0016】
図3図1の支柱部4の正面図、図4図1の支柱部4の斜視図である。支柱部4は、外形形状がU字形状をしており、U字の根元部41と、根元部41の左右から上方に延びる一対の托架部42,42と、基盤部3との連結枠43と、図示しない表示部を設置するための設置枠44を有する。なお、連結枠43および設置枠44の形状は、実施の一例であり、当業者の知識に基づく形状変更は想定される。
【0017】
図1に示すように、一対の托架部42,42には、水平軸12が設けられ、水平軸12が望遠鏡5を鉛直回転可能に支承する。図4に示すように、符号45が、水平軸12の設置部であり、該設置部45の中心に水平軸12の軸心が据えられる。
【0018】
根元部41の上面411は、その略中央位置に、上方に開口し下方に窪む有底の袋部46を有する。袋部46には、チルトセンサ7が配置されている(図1図2参照)。チルトセンサ7は、センサ本体7a、センサ筐体7b,台座プレート部7cを備える。センサ本体7aは、本形態では液面反射式であり、チルトパターンを液面に照射し反射光を画像センサで解析して傾斜を測定する。なお、この他、気泡管式、静電容量式等であってもよい。台座プレート部7cは、センサ筐体7bを収容する収容部を上面に備え、固定用の座面を下面に備えている。センサ筐体7bは、台座プレート部7cに対しビス(図示せず)で固定されている。
【0019】
図2に示すように、鉛直軸11は、基盤部3に固定された軸受に支承されて、上端のフランジ部において、根元部41の下面(すなわち袋部46の下面462)に対しネジ固定されている。袋部46の底面461は、平面(ある程度平らな面)で形成されている。チルトセンサ7は、台座プレート部7cを介して、根元部41の上面(すなわち袋部46の底面461)に対し、3箇所でビス固定されている(図2参照)。チルトセンサ7は、台座プレート部7cによって位置決めされて、袋部46の内周壁463に接触しない位置に固定されている。これにより、高温・低温環境下でセンサの0点位置に狂いが生じることを防止できる。また、袋部46に対し台座プレート部7cを介して固定することで、後述する支柱部4の変形によるセンサへの影響をより低減することができる。
【0020】
以上の構成からなる本形態の支柱構造では、チルトセンサ7が測量機本体の回転軸上(鉛直軸11の軸上)に配置されているので、測量機1が水平回転したときの遠心力によってセンサ液面が波立つのを最小限に抑えられ、センサの液面安定性が向上する。
【0021】
また、チルトセンサ7を支柱部4の袋部46(根元部41の上面411)に配置したことで、チルトセンサ7は、図6のタイプ(B)のように支柱部4を下方支持する構造物でなくなる。図6のタイプ(B)では、チルトセンサ7が支柱部4を下方支持する構造物となっているため、測量機の外気温度が変化すると、周辺部品(支柱部4や鉛直軸11)が熱収縮もしくは膨張し、これによる応力がチルトセンサ7にも負荷される。また、上記周辺部品(特に支柱部4)が外力を受けた際にも、その応力が部品を介してチルトセンサ7に負荷される。これに対し、本形態では、チルトセンサ7が支柱部4を下方支持する構造物でなくなるため、上記した応力の影響が減少し、結果、チルトセンサ7の傾斜データ誤差を減らすことが出来る。さらに、センサ筐体7b自体に強度を有する必要がなくなり、センサ筐体7bの寸法を小さくすることができる。一例として、図6のタイプ(B)の支柱構造でのセンサ筐体の外寸は、縦56mm,横52mm,高さ30mmであったのに対し、本形態でのセンサ筐体7bの外寸は縦52mm,横44mm,高さ23.5mmで形成されており、小型なチルトセンサの搭載が実現されている。
【0022】
また、一般に測量機の支柱部はU字形状であるため、その形状特性上、特に左右方向からの外力に弱く、托架部が内方向に変形しやすい。この変形が起きると、チルトセンサも傾き、測定誤差が生じるおそれがある。しかし、本形態では、支柱部4の根元部41を袋状に形成したことで、該袋部46により左右の托架部42の剛性が上がり、托架部42への荷重印加時に支柱部4に発生する最大応力が従来よりも減少する。また、袋部46によって、根元部41での応力分布が均一化する(応力分散する)ため、托架部42の変位量も従来よりも減少する。
【0023】
実際に、本形態の支柱部4の剛性を従来のものと比較した。図5は実施の形態との比較例に係る支柱部の正面図である。比較例に係る支柱構造は、図6のタイプ(B)のものである。本形態と同等の部位については、同一の符号を使用して説明を割愛する。比較例は、U字形状の支柱部4を有する。支柱部4は、一対の托架部42,42と、基盤部3との連結枠43と、図示しない表示部の設置枠44と、水平軸12の設置部45を有する。設置部45の中心に水平軸12の軸心が据えられる。比較例の根元部41は、袋部を有さない平面で形成されている。
【0024】
本形態と比較例のそれぞれに対し、鉛直軸11もしくはチルトセンサ7との取付面を拘束し、左側の托架部42の上端に、右方向の外力をかけたときの、支柱部4に生じる最大応力値と、水平軸の設置部45の中心の変形量(XYZ合成変位)を、本形態と比較例の材質は同一としてCAE解析したところ、本形態の上記最大応力値および上記変位量は、ともに比較例よりも約3割低減することを確認した。
【0025】
このように、支柱部4の根元部41に袋部46を形成することで、支柱部4の剛性を向上させることができる。この分支柱部4は変形しにくくなり、結果、支柱部4の変形が要因となるチルトセンサ7の傾斜データ誤差を減らすことができる。また、袋部46の形成により剛性が向上したことで、望遠鏡5の回転軸(水平軸12)の支持点位置の変化が減少し、即ち外力による回転軸の水平度変化が減少する。このように、センサ精度および望遠鏡の位置精度が向上するため、測量機1の測定精度も向上する。
【0026】
なお、本形態では、上述のように袋部46を設定することに加えて、根元部41の上面411から望遠鏡5の回転軸(水平軸12)の中心までの距離d2(図3図4参照)を短く設定(例えば約75mm)すると、さらなる支柱部4の剛性向上に繋がる。一方、袋部46によって支柱剛性が上がった分、距離d2を従来の距離d1(約90mm、図5参照)より長く設定して支柱剛性が下がっても、袋部46を形成することで従来と同程度の剛性を保つことができる。このことは、望遠鏡5に様々な機能を持たせ望遠鏡を大型化する必要が生じた場合に有利となる。
【0027】
このように、本形態の支柱構造によれば、チルトセンサ7の精度が向上し、支柱部4の剛性が向上する。また、支柱部4の剛性が向上したことにより、剛性を上げるために支柱部に肉付けし過ぎる必要がなくなり、機械重量の増加、その重量増加による測量機の耐落下衝撃性の低下、持ち運びが困難になるなどの弊害も避けることができる。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、当業者の知識に基づく変形がなされたものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
1 測量機
4 支柱部
41 支柱部の根元部
411 根元部の上面
46 袋部
461 袋部の底面(根元部の上面)
462 根元部の下面
5 望遠鏡
7 チルトセンサ
11 鉛直軸
12 水平軸
d1、d2 望遠鏡の回転軸から根元部の上面までの距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6