(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記低線膨張材層は、前記封止層の前記太陽電池セルが設けられていない周縁部の少なくとも一部の領域と重なるように配置される請求項1に記載の太陽電池モジュール。
前記低線膨張材層は、前記封止層の前記太陽電池セルが設けられていない周縁部の全周と重なるように配置される請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
前記低線膨張材層の一部は、前記封止層の厚さ方向からみて前記封止層の前記太陽電池セルが設けられている領域の一部と重なるように配置される請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の太陽電池モジュールの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。また、実質的に同一の機能を有する部材には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0030】
[第1実施形態]
図1(a)は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールを、太陽光が入射する側から見た平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)におけるA−A線断面図である。
図2は、
図1(b)における点線部Xに対応する、第1実施形態に係る太陽電池モジュールの拡大図である。
図3は、
図1(b)における点線部Yに対応する、第1実施形態に係る太陽電池モジュールの拡大図である。
【0031】
図1〜
図3に示すように、太陽電池モジュール100は、複数の太陽電池セル10が封止材により封止されている封止層12と、複数の太陽電池セル10を電気的に接続するインターコネクタ11(
図2、3では省略)と、樹脂で構成される表面層14と、前記樹脂よりも線膨張率の低い材料で構成される背面層16と、背面層16を構成する材料よりも線膨張率の小さい材料で構成される低線膨張材層15と、を有する。さらに、太陽電池モジュール100では、表面層14は、封止層12の太陽光が入射する側に配置される。背面層16は、封止層12の表面層14の配置された側とは反対側に配置される。そして、
図2及び
図3に示すように、低線膨張材層15は、封止層12と背面層16との間にあり、封止層12の厚さ方向からみて封止層12の太陽電池セル10が設けられていない領域の少なくとも一部と重なるように配置される。
【0032】
次に、従来技術に係る太陽電池モジュールについて、
図9及び
図10を参照して記載する。
図9(a)は、従来技術に係る太陽電池モジュールを、太陽光が入射する側から見た平面図であり、
図9(b)は
図9(a)におけるB−B線断面図である。
図10は、
図9(b)における点線部X’’に対応する、従来技術に係る太陽電池モジュールの拡大図である。
【0033】
図9及び
図10に示すように、太陽電池モジュール300は、複数の太陽電池セル20が封止材により封止されている封止層22と、複数の太陽電池セル20を電気的に接続するインターコネクタ21と、樹脂で構成される表面層24と、前記樹脂よりも線膨張率の低い材料で構成される背面層26と、を有する。太陽電池モジュール300では、封止層22の太陽電池セル20が配置されている部位では反りが抑制される。しかし、封止層22の太陽電池セル20が配置されていない部位(
図9(b)及び
図10におけるモジュール端部)では太陽電池モジュール300の反りが大きくなってしまう。
【0034】
一方、本実施形態に係る太陽電池モジュール100では、封止層12の厚さ方向からみて封止層12の太陽電池セルが設けられていない領域の少なくとも一部と重なるように、低線膨張材層15が配置されている。そして、低線膨張材層15が封止層12と背面層16との間に配置されることで、
図1(b)に示すように、太陽電池モジュール100に発生する反りが抑制される。
【0035】
さらに、太陽電池モジュール100では、前述の特許文献1のように発光素子の受光面に対応する開口部が形成された平板状の枠体を封止層12に設けることなく、太陽電池モジュール100に発生する反りが抑制される。そのため、太陽電池モジュール100の厚さ及び質量が低減され、モジュールの製造工程の簡略化により太陽電池モジュール100の製造コストも低減される。
【0036】
太陽電池モジュール100では、
図1(a)に示すように複数の太陽電池セル10が、インターコネクタ11によって電気的に接続された状態で配列されている。
図1(a)では、6枚の太陽電池セル10が配列されているが、太陽電池モジュール100に配置される太陽電池セルの数は、本実施形態の例に限定されるものではなく、必要に応じて適宜選択される。
【0037】
太陽電池セル10としては、特に限定されるものではなく、従来から公知の太陽電池セルを用いることができる。太陽電池セル10の具体例としては、例えば、シリコン型(単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、微結晶シリコン型、アモルファスシリコン型等)、化合物半導体型(InGaAs型、GaAs型、CIGS型、CZTS型等)、色素増感型、有機薄膜型等、任意の太陽電池セルが用いられる。これらの中でも、シリコン型の太陽電池セルが好ましく、単結晶シリコン型又は多結晶シリコン型の太陽電池セルがより好ましい。
【0038】
太陽電池セル10を電気的に接続するインターコネクタ11としては、特に限定されるものではなく、従来から公知のインターコネクタを用いることができる。
【0039】
太陽電池セル10は、封止材によって封止されている。太陽電池セル10が封止材によって封止されることで、封止層12が形成される。
【0040】
太陽電池セル10を封止する封止材としては、太陽光を透過可能なものであれば特に限定されるものではなく、従来から公知の封止材を用いることができる。
封止材の材質の具体例としては、熱可塑性樹脂、架橋樹脂などが挙げられ、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、シリコーン樹脂等の任意の材料が用いられる。これらの中でも、EVA樹脂が好ましい。
【0041】
封止材には、接着性、耐候性等を向上させるため、各種添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤などの接着向上剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等を配合することができる。
【0042】
封止層12の厚さは、太陽電池セル10の厚さ、封止材の種類等を勘案して適宜設定される。本実施形態においては、封止層12の厚さは、0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.8mm以上2.0mm以下であることがより好ましく、0.8mm以上1.5mm以下であることが更に好ましい。
【0043】
太陽電池モジュール100は、表面層14を有する。表面層14は、封止層12の太陽光が入射する側(つまり、太陽電池セル10の受光面側)に配置され、樹脂で構成される。
【0044】
表面層14は、光透過性を有する樹脂からなり、物理的衝撃や雨、ガスなどによる侵食から太陽電池セル10、インターコネクタ11などを保護する層である。表面層14を構成する樹脂としては、太陽光を透過可能なものであれば特に限定されず、従来から公知の樹脂を用いることができる。
【0045】
表面層14を構成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。
【0046】
表面層14を構成する樹脂には、各種添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、例えば、ガラス、アルミナ等の無機繊維、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、セルロース等の有機繊維、シリカ、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機充填材、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0047】
表面層14の厚さは、太陽電池モジュール100の機械的強度(特に剛性)、軽量化等を勘案して適宜設定される。本実施形態においては、表面層14の厚さは、0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.3mm以上2.0mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上1.5mm以下であることが更に好ましい。
【0048】
また、後述するように、背面層16は、表面層14を構成する樹脂よりも線膨張率の低い材料で構成される、つまり、表面層14は、背面層16を構成する材料よりも線膨張率の高い材料で構成される。なお、本明細書において、線膨張率はJIS R 1618:2002の規定に準じて測定される値である。
【0049】
表面層14を構成する樹脂の線膨張率は、背面層16を構成する材料の線膨張率よりも高い値であればよく、例えば、2.5×10
−5K
−1以上2.0×10
−4K
−1以下であることが好ましく、4.0×10
−5K
−1以上1.5×10
−4K
−1以下であることがより好ましく、5.0×10
−5K
−1以上1.0×10
−4K
−1以下であることが更に好ましい。
【0050】
また、後述するように、背面層16は、表面層14を構成する樹脂よりもヤング率の高い材料で構成されることが好ましい、つまり、表面層14は、背面層16を構成する材料よりもヤング率の低い材料で構成されることが好ましい。なお、本明細書において、ヤング率は、常温において、板状の試験片に引張荷重を加え、その変位を算出する引張試験により求めた値である。
【0051】
表面層14を構成する樹脂のヤング率は、0.1GPa以上10GPa以下であることが好ましく、0.5GPa以上5.0GPa以下であることが好ましく、1.5GPa以上4.0GPa以下であることが更に好ましい。
【0052】
太陽電池モジュール100は、背面層16を有する。背面層16は、封止層12の表面層14の配置される側とは反対側に配置され、表面層14を構成する樹脂よりも線膨張率の低い材料で構成される。
【0053】
背面層16は、表面層14と同様に、物理的衝撃や雨、ガスなどによる侵食から太陽電池セル10、インターコネクタ11などを保護する層である。背面層16を構成する材料としては、表面層14を構成する樹脂よりも線膨張率の低い材料で構成されていれば特に限定されない。
【0054】
背面層16を構成する材料の線膨張率は、表面層14を構成する樹脂の線膨張率よりも低い値であればよく、例えば、1.0×10
−5K
−1以上5.0×10
−5K
−1以下であることが好ましく、1.5×10
−5K
−1以上4.0×10
−5K
−1以下であることがより好ましく、2.0×10
−5K
−1以上3.0×10
−5K
−1以下であることが更に好ましい。
【0055】
さらに、背面層16は、太陽電池モジュール100の反りの発生を好適に抑制する観点から、高い剛性を有することが好ましい。
【0056】
剛性は、例えば、背面層16を構成する材料のヤング率及び背面層16の厚さにより判断することができる。そのため、背面層16は、ヤング率の高い材料で構成されていることが好ましく、例えば、表面層14を構成する樹脂よりもヤング率の高い材料で構成されていることが好ましい。
【0057】
背面層16を構成する材料のヤング率は、30GPa以上150GPa以下であることが好ましく、50GPa以上120GPa以下であることが好ましく、60GPa以上90GPa以下であることが更に好ましい。
【0058】
背面層16を構成する材料としては、表面層14を構成する樹脂よりも線膨張率の低い材料であればよく、例えば、低い線膨張率及び高い剛性を有するアルミニウム、アルミニウム合金などが挙げられる。
【0059】
背面層16の厚さは、太陽電池モジュール100の機械的強度(特に剛性)、軽量化等を勘案して適宜設定される。本実施形態においては、背面層16の厚さは、0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましく、0.8mm以上2.0mm以下であることがより好ましく、0.8mm以上1.2mm以下であることが更に好ましい。
また、背面層16の厚さは、表面層14の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0060】
前述の背面層16の厚さの数値範囲は、厚さ方向において低線膨張材層15が配置されていない部分の背面層の厚さを指している。そのため、
図2及び
図3に示すように、封止層12と背面層16との間に低線膨張材層15が配置されている部分では、背面層16の厚さは、低線膨張材層15の厚さの分だけ薄くなっている。
【0061】
太陽電池モジュール100は、低線膨張材層15を有する。低線膨張材層15は、背面層16を構成する材料よりも線膨張率の小さい材料で構成される。また、低線膨張材層15は、封止層12と背面層16との間にあり、封止層12の厚さ方向からみて封止層12の太陽電池セル10が設けられていない領域の少なくとも一部と重なるように配置される。
【0062】
低線膨張材層15は、封止層12の太陽電池セル10が設けられていない周縁部の少なくとも一部の領域と重なるように配置されることが好ましく、
図2に示すように、低線膨張材層15は、封止層12の太陽電池セル10が設けられていない周縁部と重なるように配置されることがより好ましい。これにより、低線膨張材層15が配置された領域における太陽電池モジュールの反りをより好適に抑制することができる。
【0063】
なお、低線膨張材層15は、封止層12の太陽電池セル10が設けられていない周縁部の全周(例えば、
図1(a)の点線部C)と重なるように配置されていてもよく、このとき、周縁部の全領域と重なるように低線膨張材層15が配置されていてもよく、周縁部の一部の領域と重なるように低線膨張材層15が配置されていてもよい。これにより、太陽電池モジュール100の周縁部の全周における反りをより好適に抑制することができる。
【0064】
また、低線膨張材層15は、背面層16の端部の少なくとも一部に配置されることが好ましく、
図2に示すように、低線膨張材層15は、背面層16の端部に配置されることがより好ましい。これにより、太陽電池モジュール100の端部における反りをより好適に抑制することができる。
【0065】
また、低線膨張材層15は、太陽電池モジュール100に発生する反りをより好適に抑制する点から、隣接する太陽電池セル10間における太陽電池セル10が設けられていない領域の少なくとも一部と重なるように配置されることが好ましく、
図3に示すように、低線膨張材層15は、隣接する太陽電池セル10間における太陽電池セル10が設けられていない領域と重なるように配置されることがより好ましい。なお、低線膨張材層15と重なる領域は、
図1に示す太陽電池モジュール100の長手方向(
図1(a)中のA−A線と平行な方向)にて隣接する太陽電池セル10間に限定されず、太陽電池モジュール100の短手方向(
図1(a)中のA−A線と垂直な方向)にて隣接する太陽電池セル10間であってもよい。
【0066】
本実施形態に係る太陽電池モジュール100は、封止層12の太陽電池セル10が設けられていない周縁部と重なるように配置される低線膨張材層15及び隣接する太陽電池セル10間における太陽電池セル10が設けられていない領域と重なるように配置される低線膨張材層15の両方が設けられているが、どちらか一方だけが設けられていてもよい。
【0067】
さらに、低線膨張材層15の一部は、封止層12の厚さ方向からみて封止層12の太陽電池セル10が設けられている領域の一部と重なる(オーバーラップする)ように配置されることが好ましい。これにより、低線膨張材層15が配置された領域における太陽電池モジュール100の反りを更に好適に抑制することができる。
【0068】
具体的には、
図2に示すように、封止層12の太陽電池セル10が設けられていない周縁部及び端部と重なるように配置される低線膨張材層15は、太陽電池セル10と少なくとも一部の領域が重なっている。これにより、太陽電池モジュール100の端部やその周辺における反りがより好適に抑制される。
【0069】
図2に示すような低線膨張材層15と太陽電池セル10との重なっている領域の長さ(ラップ代)aは、特に限定されないが、太陽電池モジュール100の反りをより好適に抑制する点から、1mm以上15mm以下であることが好ましく、3mm以上12mm以下であることがより好ましく、5mm以上10mm以下であることが更に好ましい。
【0070】
また、
図3に示すように、隣接する太陽電池セル10間における太陽電池セル10が設けられていない領域と重なるように配置される低線膨張材層15は、太陽電池セル10と少なくとも一部の領域が重なっている。これにより、太陽電池モジュール100の太陽電池セル10が隣接する部分(
図1(b)の点線部Y)における反りがより好適に抑制される。
【0071】
図3に示すような低線膨張材層15と太陽電池セル10との重なっている領域の長さ(ラップ代)a’は、特に限定されないが、太陽電池モジュール100の反りをより好適に抑制する点から、1mm以上15mm以下であることが好ましく、3mm以上12mm以下であることがより好ましく、5mm以上10mm以下であることが更に好ましい。
ラップ代a’は、前述のラップ代aと同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
【0072】
低線膨張材層15を構成する材料の線膨張率は、背面層16を構成する材料の線膨張率よりも低い値であればよく、例えば、5.0×10
−6K
−1以上3.0×10
−5K
−1以下であることが好ましく、8.0×10
−6K
−1以上2.0×10
−5K
−1以下であることがより好ましく、1.0×10
−5K
−1以上1.5×10
−5K
−1以下であることが更に好ましい。
【0073】
さらに、低線膨張材層15は、太陽電池モジュール100の反りの発生を好適に抑制する観点から、高い剛性を有することが好ましい。そのため、低線膨張材層15は、ヤング率の高い材料で構成されていることが好ましく、例えば、表面層14を構成する樹脂よりもヤング率の高い材料で構成されていることが好ましく、背面層14を構成する材料よりもヤング率の高い材料で構成されていることがより好ましい。
【0074】
低線膨張材層15を構成する材料のヤング率は、50GPa以上300GPa以下であることが好ましく、100GPa以上250GPa以下であることが好ましく、150GPa以上220GPa以下であることが更に好ましい。
【0075】
低線膨張材層15を構成する材料としては、背面層16を構成する材料よりも線膨張率の小さい材料であればよく、例えば、鉄、鉄合金などが挙げられる。
【0076】
低線膨張材層15の厚さは、太陽電池モジュール100の機械的強度(特に剛性)、軽量化等を勘案して適宜設定される。本実施形態においては、低線膨張材層15の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上0.8mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上0.6mm以下であることが更に好ましい。
【0077】
[参考例]
次に、参考例に係る太陽電池モジュールについて、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、
図1(b)における点線部Xに対応する、参考例に係る太陽電池モジュールの拡大図であり、
図5は、
図1(b)における点線部Yに対応する、参考例に係る太陽電池モジュールの拡大図である。
【0078】
参考例に係る太陽電池モジュール200は、封止層12と背面層16との間に配置される低線膨張材層15の代わりに、背面層16の封止層12の配置された側とは反対側に配置される高線膨張材層18を有する点で、第1実施形態に係る太陽電池モジュール100と相違する。
【0079】
本参考例に係る太陽電池モジュール200では、封止層12の厚さ方向からみて封止層12の太陽電池セルが設けられていない領域の少なくとも一部と重なるように、背面層16を構成する材料よりも線膨張率の大きい材料で構成される高線膨張材層18が配置されている。そして、高線膨張材層18が背面層16の封止層12の配置された側とは反対側に配置されることで、背面層16を構成する材料よりも線膨張率の大きい樹脂で構成される表面層14の配置されている側とは反対側に、背面層16を構成する材料よりも線膨張率の大きい材料で構成される高線膨張材層18が位置することになる。そのため、
図1(b)に示すように、太陽電池モジュール200に発生する反りが抑制される。
【0080】
さらに、太陽電池モジュール200では、前述の特許文献1のように発光素子の受光面に対応する開口部が形成された平板状の枠体を封止層12に設けることなく、太陽電池モジュール200に発生する反りが抑制される。そのため、太陽電池モジュール200の厚さ及び質量が低減され、モジュールの製造工程の簡略化により太陽電池モジュール200の製造コストも低減される。
【0081】
また、高線膨張材層18は、接着層17を介して、背面層16の封止層12の配置された側とは反対側に接着されている。接着層17としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合が挙げられる。
【0082】
太陽電池モジュール200は、高線膨張材層18を有する。高線膨張材層18は、背面層16を構成する材料よりも線膨張率の大きい材料で構成される。また、高線膨張材層18は、背面層16の封止層12の配置された側とは反対側に配置され、封止層12の厚さ方向からみて封止層12の太陽電池セル10が設けられていない領域の少なくとも一部と重なるように配置される。
【0083】
高線膨張材層18は、封止層12の太陽電池セル10が設けられていない周縁部の少なくとも一部の領域と重なるように配置されることが好ましく、
図4に示すように、高線膨張材層18は、封止層12の太陽電池セル10が設けられていない周縁部と重なるように配置されることがより好ましい。これにより、高線膨張材層18が配置された領域における太陽電池モジュール200の反りをより好適に抑制することができる。
【0084】
なお、高線膨張材層18は、封止層12の太陽電池セル10が設けられていない周縁部の全周と重なるように配置されていてもよく、このとき、周縁部の全領域と重なるように高線膨張材層18が配置されていてもよく、周縁部の一部の領域と重なるように高線膨張材層18が配置されていてもよい。これにより、太陽電池モジュール200の周縁部の全周における反りをより好適に抑制することができる。
【0085】
また、高線膨張材層18は、背面層16の端部の少なくとも一部に配置されることが好ましく、
図4に示すように、高線膨張材層18は、背面層16の端部に配置されることがより好ましい。これにより、太陽電池モジュール200の端部における反りをより好適に抑制することができる。
【0086】
また、高線膨張材層18は、太陽電池モジュール200に発生する反りをより好適に抑制する点から、隣接する太陽電池セル10間における太陽電池セル10が設けられていない領域の少なくとも一部と重なるように配置されることが好ましく、
図5に示すように、高線膨張材層18は、隣接する太陽電池セル10間における太陽電池セル10が設けられていない領域と重なるように配置されることがより好ましい。
【0087】
本参考例に係る太陽電池モジュール200は、封止層12の太陽電池セル10が設けられていない周縁部と重なるように配置される高線膨張材層18及び隣接する太陽電池セル10間における太陽電池セル10が設けられていない領域と重なるように配置される高線膨張材層18の両方が設けられているが、どちらか一方だけが設けられていてもよい。
【0088】
さらに、高線膨張材層18の一部は、封止層12の厚さ方向からみて封止層12の太陽電池セル10が設けられている領域の一部と重なる(オーバーラップする)ように配置されることが好ましい。これにより、高線膨張材層18が配置された領域における太陽電池モジュール200の反りを更に好適に抑制することができる。
【0089】
具体的には、
図4に示すように、封止層12の太陽電池セル10が設けられていない周縁部及び端部と重なるように配置される高線膨張材層18は、太陽電池セル10と少なくとも一部の領域が重なっている。これにより、太陽電池モジュール200の端部やその周辺における反りがより好適に抑制される。
【0090】
図4に示すような高線膨張材層18と太陽電池セル10との重なっている領域の長さ(ラップ代)bは、特に限定されないが、太陽電池モジュール200の反りをより好適に抑制する点から、1mm以上15mm以下であることが好ましく、3mm以上12mm以下であることがより好ましく、5mm以上10mm以下であることが更に好ましい。
【0091】
また、
図5に示すように、隣接する太陽電池セル10間における太陽電池セル10が設けられていない領域と重なるように配置される高線膨張材層18は、太陽電池セル10と少なくとも一部の領域が重なっている。これにより、太陽電池モジュール200の太陽電池セル10が隣接する部分(
図1(b)の点線部Y)における反りがより好適に抑制される。
【0092】
図5に示すような高線膨張材層18と太陽電池セル10との重なっている領域の長さ(ラップ代)b’は、特に限定されないが、太陽電池モジュール200の反りをより好適に抑制する点から、1mm以上15mm以下であることが好ましく、3mm以上12mm以下であることがより好ましく、5mm以上10mm以下であることが更に好ましい。
ラップ代b’は、前述のラップ代bと同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
【0093】
高線膨張材層18を構成する材料の線膨張率は、背面層16を構成する材料の線膨張率よりも高い値であればよく、例えば、2.5×10
−5K
−1以上2.0×10
−4K
−1以下であることが好ましく、4.0×10
−5K
−1以上1.5×10
−4K
−1以下であることがより好ましく、5.0×10
−5K
−1以上1.0×10
−4K
−1以下であることが更に好ましい。
【0094】
高線膨張材層18を構成する材料のヤング率は、0.1GPa以上10GPa以下であることが好ましく、0.5GPa以上5.0GPa以下であることが好ましく、1.5GPa以上4.0GPa以下であることが更に好ましい。
【0095】
高線膨張材層18を構成する材料としては、背面層16を構成する材料よりも線膨張率の大きい材料であればよく、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。この中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、ポリアミド樹脂が好ましい。
なお、高線膨張材層18を構成する材料は、前述の表面層14を構成する樹脂と同じであってもよい。
【0096】
高線膨張材層18の厚さは、太陽電池モジュール100の機械的強度(特に剛性)、軽量化等を勘案して適宜設定される。本参考例においては、高線膨張材層18の厚さは、0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.3mm以上2.0mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上1.5mm以下であることが更に好ましい。
【実施例】
【0097】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
【0098】
まず、
図6に示すような太陽電池モジュールを準備した。
図6は、本発明の実施例に係る太陽電池モジュールを示す断面図である。
図7は、(a)は
図6における領域Y’に対応する、実施例に係る太陽電池モジュールの拡大図であり、(b)は
図6における領域X’に対応する、実施例に係る太陽電池モジュールの拡大図である。
【0099】
[実施例]
実施例に係る太陽電池モジュールは、太陽電池セル10が封止材により封止されている封止層12と、樹脂で構成される表面層14と、前記樹脂よりも線膨張率の低い材料で構成される背面層16と、背面層16を構成する材料よりも線膨張率の小さい材料で構成される低線膨張材層15と、を有する。本実施例では、太陽電池モジュールにおける太陽電池セル及び各層は、以下の材料により構成され、太陽電池セル及び各層の厚さならびに各層を構成する材料の線膨張率及びヤング率は以下の通りである。
太陽電池セル10・・・単結晶シリコン(厚さ:0.2mm)
封止層12・・・エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(厚さ:1.0mm、セル上及びセル下共に0.4mm)
表面層14・・・ポリカーボネート樹脂(厚さ:1.0mm、線膨張率:7.0×10
−5K
−1、ヤング率:2.4GPa)
背面層16・・・アルミニウム合金(厚さ:1.2mm、線膨張率:2.3×10
−5K
−1、ヤング率:70GPa、鉄系合金が配置されている部分の厚さ:0.8mm)
低線膨張材層15・・・鉄合金(厚さ:0.4mm、線膨張率:1.17×10
−5K
−1、ヤング率:200GPa)
【0100】
さらに、実施例に係る太陽電池モジュールでは、ラップ代a、a’を共に0mm(ラップ無し)、5mm、10mmとし、ラップ代a、a’を変化させたときの太陽電池モジュールの変形量(反り)を評価した。太陽電池モジュールの変形量は、25℃〜100℃の間にて評価した。なお、
図6における領域Y’と領域X’との間の領域Z’において、領域Y’と同様に太陽電池セル10間の領域と重なるように低線膨張材層15が設けられているが、この領域Z’におけるラップ代もそれぞれ0mm(ラップ無し)、5mm、10mmとした。
【0101】
[比較例]
低線膨張材層が設けられていないこと以外は、前述の実施例に係る太陽電池モジュールと同様の構成を有する比較例に係る太陽電池モジュールを準備した。そして、比較例に係る太陽電池モジュールの変形量(反り)を、実施例に係る太陽電池モジュールと同様に評価した。
【0102】
実施例及び比較例に係る太陽電池モジュールの変形量(反り)の評価結果を
図8に示す。
図8は、太陽電池モジュールの長さ方向の位置と、太陽電池モジュールの変形量との関係を示すグラフである。なお、
図8において、モジュール長さは、モジュール中心部を0mmとし、モジュールの長さ方向における位置を表し、変形量がプラスの場合、表面層側が凹となっており、変形量がマイナスの場合、背面層側が凹となっていることを表す。なお、太陽電池モジュールの変形量は、表面層側の表面の変位により評価した。
【0103】
図8に示すように、実施例に係る太陽電池モジュール(ラップ無し)と比較例に係る太陽電池モジュールとを比較すると、実施例に係る太陽電池モジュールでは、モジュール端部における変形量の傾きが比較例に係る太陽電池モジュールよりも小さく、モジュール端部における反りが抑制されていた。
【0104】
また、
図8に示すように、実施例に係る太陽電池モジュール(ラップ代a、a’が5mm又は10mm)と比較例に係る太陽電池モジュールとを比較すると、実施例に係る太陽電池モジュールでは、低線膨張材層が配置された領域における反りが抑制されており、太陽電池モジュール全体における反りがより好適に抑制されていた。