特許第6560114号(P6560114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6560114スパナのヘッド構造、スパナおよびヘッド構造の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560114
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】スパナのヘッド構造、スパナおよびヘッド構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B25B 13/08 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   B25B13/08
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-244515(P2015-244515)
(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公開番号】特開2017-109263(P2017-109263A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151690
【氏名又は名称】株式会社東日製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聖司
(72)【発明者】
【氏名】増田 直也
(72)【発明者】
【氏名】中込 惇
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07237462(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0167724(US,A1)
【文献】 実開昭61−016275(JP,U)
【文献】 特開2002−096270(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3184802(JP,U)
【文献】 特開昭51−124898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 13/00−13/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
締付部材と係合するスパナのヘッド構造であって、
前記締付部材と接触する接触面に沿って配置されたフランジ部を備え、少なくとも前記フランジ部における前記接触面が所定の硬度を有する金属製のヘッド本体と、
前記フランジ部に沿って前記フランジ部の周囲のみに配置され、前記接触面とは反対側の前記フランジ部の面に固定された補強部材と、
を有することを特徴とするヘッド構造。
【請求項2】
前記ヘッド本体は、前記補強部材を支持する支持部を備えており、
前記フランジ部は、前記支持部から突出していることを特徴とする請求項1に記載のヘッド構造。
【請求項3】
前記支持部は、前記ヘッド本体の厚さ方向における中央に配置されており、
前記フランジ部は、前記厚さ方向における前記支持部の両側にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項2に記載のヘッド構造。
【請求項4】
前記補強部材が炭素繊維で形成されており、
前記炭素繊維の長手方向が前記フランジ部に沿った方向となるように、前記炭素繊維が配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のヘッド構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のヘッド構造を備えたことを特徴とするスパナ。
【請求項6】
締付部材と係合するスパナのヘッド構造の製造方法であって、
前記ヘッド構造は、
前記締付部材と接触する接触面に沿って配置されたフランジ部を備えた金属製のヘッド本体と、
前記フランジ部に沿って前記フランジ部の周囲のみに配置され、前記接触面とは反対側の前記フランジ部の面に固定された補強部材と、を有しており、
前記ヘッド本体に熱硬化処理を行うことにより、前記ヘッド本体の硬度を所定の硬度とすることを特徴とするヘッド構造の製造方法。
【請求項7】
締付部材と係合するスパナのヘッド構造の製造方法であって、
前記ヘッド構造は、
前記締付部材と接触する接触面に沿って配置されたフランジ部を備えた金属製のヘッド本体と、
前記フランジ部に沿って前記フランジ部の周囲のみに配置され、前記接触面とは反対側の前記フランジ部の面に固定された補強部材と、を有しており、
少なくとも前記フランジ部における前記接触面に皮膜処理を行うことにより、所定の硬度を有する皮膜を形成することを特徴とするヘッド構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパナのヘッド構造と、このヘッド構造を備えたスパナと、ヘッド構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパナは、ボルトやナットといった締付部材を締め付けるために用いられ、金属で形成されている。スパナを製造するときには、所定の形状に成形された成形品に対して熱硬化処理が行われる。この熱硬化処理によって、スパナに対して所定の硬度を与えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
熱硬化処理を行えば、スパナの硬度を上げることができるが、スパナのヘッドの硬度を上げすぎると、ヘッドが破断しやすくなる。すなわち、ヘッドの全体の硬度を上げるほど、ヘッドの摩耗を抑制しやすくなるが、ヘッドの一部が締付部材からの負荷を受けて僅かに変形してしまうと、この変形部分を起点としてヘッドが破断しやすくなる。
【0004】
一方、上述したヘッドの破断を抑制するために、ヘッドの硬度を下げてしまうと、ヘッドが変形しやすくなる。具体的には、ヘッドが締付部材から繰り返しの負荷を受けたとき、締付部材と接触する部分において、ヘッドが摩耗してしまうことがある。ヘッドの一部が摩耗してしまうと、ヘッドから締付部材に対して適正な締め付け力を与えることができなくなり、締付部材を締め付けることができなくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願第1の発明は、締付部材と係合するスパナのヘッド構造であり、ヘッド本体および補強部材を有する。ヘッド本体は、金属で形成されており、締付部材と接触する接触面に沿って配置されたフランジ部を備えている。少なくともフランジ部における接触面は、所定の硬度を有する。補強部材は、フランジ部に沿ってフランジ部の周囲のみに配置されており、接触面とは反対側のフランジ部の面に固定されている。
【0006】
従来と同様に、ヘッド本体には熱硬化処理が行われるが、本願第1の発明によれば、ヘッド本体のフランジ部に熱硬化処理が行われることによって、フランジ部の硬度を所定の硬度まで向上させることができる。これにより、締付部材と接触する部分において、フランジ部の変形(陥没等)や摩耗を抑制することができる。また、フランジ部に沿ってフランジ部の周囲のみに補強部材を配置することにより、フランジ部が締付部材からの負荷を受けてヘッドの口が広がる方向に変形しようとしても、このフランジ部の変形を補強部材によって抑制できる。これにより、フランジ部から締付部材に対して適正な締め付け力を与えることができる。
【0007】
ヘッド本体には、補強部材を支持する支持部を配置することができる。これにより、支持部を用いて、補強部材を配置(固定)しやすくなる。フランジ部は、支持部から突出させることができる。ここで、支持部は、ヘッド本体の厚さ方向における中央に配置することができる。そして、フランジ部は、厚さ方向における支持部の両側にそれぞれ配置することができる。
【0008】
補強部材は、炭素繊維で形成することができる。この場合において、炭素繊維の長手方向がフランジ部に沿った方向となるように、炭素繊維を配置することができる。このように炭素繊維を配置することにより、フランジ部の変形力が伝達される補強部材に反発力を持たせることができ、ヘッドの口が広がる方向におけるフランジ部の変形を抑制しやすくなる。
【0009】
本願第1の発明であるヘッド構造を用いてスパナを構成することができる。ここで、ヘッド構造は、スパナの本体と別体で構成されていてもよいし、スパナの本体と一体的に構成されていてもよい。
【0010】
本願第2の発明は、上述した本願第1の発明であるヘッド構造を製造する方法であって、ヘッド本体に熱硬化処理を行うことにより、ヘッド本体の硬度を所定の硬度とすることを特徴とする。本願第3の発明は、上述した本願第1の発明であるヘッド構造を製造する方法であって、少なくともフランジ部における上記接触面に皮膜処理を行うことにより、所定の硬度を有する皮膜を形成することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態であるスパナの正面図である。
図2】本実施形態であるスパナの側面図である。
図3】本実施形態であるヘッドの正面図である。
図4】本実施形態であるヘッドの側面図である。
図5】本実施形態であるヘッドの分解斜視図である。
図6】炭素繊維ブロックの側面図である。
図7】炭素繊維ブロックを補強部材として用いたときのヘッドの正面図である。
図8】本実施形態の第1変形例であるヘッドの斜視図である。
図9】本実施形態の第2変形例であるヘッドの側面図である。
図10】本実施形態の第3変形例であるヘッドの側面図である。
図11】第3変形例であるヘッドの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態であるスパナについて説明する。図1は、スパナ1の正面図であり、図2は、図1に示す矢印D1の方向からスパナ1を見たときの側面図である。
【0013】
スパナ1は、ボルトやナットといった締付部材(不図示)と係合するヘッド100を有する。ヘッド100は、ヘッドピン210によってスパナ本体200の先端部220に固定されている。本実施形態では、ヘッド100およびスパナ本体200を別々の部材によって構成しているため、ヘッド100を交換することができる。
【0014】
スパナ本体200の基端部230は、ゴムなどの弾性材料で形成されたグリップ300によって覆われている。グリップ300は、スパナ1を使用する使用者によって保持される。なお、スパナ本体200の基端部230を弾性材料で覆わなくてもよい。この場合には、スパナ本体200の基端部230が使用者によって保持される。
【0015】
スパナ本体200は中空構造を有しており、スパナ本体200の内部には、所定のトルクを与えるために、トグルおよびスプリングを含むトルク設定機構(不図示)が収容されている。トルク設定機構としては、公知の機構を適宜採用することができる。このため、トルク設定機構の詳細な説明は省略する。ヘッド100を締付部材に係合して、スパナ1を所定方向に回転させると、上述したトルク設定機構によって、所定のトルク値まで締付部材を締め付けることができる。ここで、締め付け時のトルクが所定のトルク値に到達すると、スパナ本体200がヘッド100に対して回動することになる。
【0016】
本実施形態では、トルク設定機構をスパナ本体200に収容しているが、トルク設定機構を省略することもできる。この場合には、トルク設定機構を収容するためのスペースが不要となり、スパナ本体200を中空構造とする必要も無い。スパナ本体200を中実構造としたときには、スパナ本体200およびヘッド100を一体的に構成することができる。
【0017】
次に、ヘッド100の構造について、図3図5を用いて説明する。図3は、ヘッド100の正面図であり、図4は、図3に示す矢印D2の方向からヘッド100を見たときの側面図である。図5は、ヘッド100の分解斜視図である。
【0018】
ヘッド100は、ヘッド本体10と、一対の補強部材21,22とを有する。補強部材21,22は、ヘッド本体10に固定される。ヘッド本体10に補強部材21,22を固定する方法としては、例えば、接着剤を用いることができる。また、ヘッド本体10および補強部材21,22の一方にピンを設けるとともに、ヘッド本体10および補強部材21,22の他方にピンと係合する溝を設けることができる。これにより、ピンを溝に挿入することにより、補強部材21,22をヘッド本体10に固定することができる。なお、補強部材21,22をヘッド本体10に固定できればよいため、この固定方法は適宜決めることができる。
【0019】
ヘッド本体10は、金属で形成されており、支持部11と、一対のフランジ部12,13と、基端部14とを有する。支持部11は、補強部材21,22を支持するために用いられ、基端部14と接続されている。図4,5に示すように、支持部11は、ヘッド100の厚さ方向Dtにおけるヘッド本体10の中央に設けられている。
【0020】
フランジ部12,13は、厚さ方向Dtにおいて、支持部11から突出している。具体的には、図4,5に示すように、フランジ部12は、支持部11から上方に向かって突出しており、フランジ部13は、支持部11から下方に向かって突出している。
【0021】
ヘッド100の口Oは、締付部材と接触する接触面Sを有しており、接触面Sは、支持部11の一部と、フランジ部12,13とによって構成されている。フランジ部12,13は、所定の厚さT(図3,4参照)を有しており、ヘッド100の口O(言い換えれば、接触面S)に沿って配置されている。
【0022】
本実施形態では、各フランジ部12,13の全体を一定の厚さTにしているが、これに限るものではない。具体的には、各フランジ部12,13を複数の領域に分けたときに、複数の領域において、厚さを異ならせることができる。また、フランジ部12の厚さと、フランジ部13の厚さとを異ならせることもできる。
【0023】
ヘッド本体10は金属で形成されているが、スパナ1を製造するときには、ヘッド本体10に熱硬化処理が施される。熱硬化処理は、ヘッド本体10の硬度を向上させるために行われ、熱硬化処理としては、例えば、焼き入れ処理や焼き戻し処理がある。
【0024】
本実施形態では、ヘッド本体10に設けられたフランジ部12,13に熱硬化処理を行うことによって、フランジ部12,13の硬度を十分に上げることができる。これにより、フランジ部12,13が締付部材からの負荷を受けたとき、締付部材と接触する部分において、フランジ部12,13の変形(例えば、陥没)や摩耗を抑制することができる。なお、フランジ部12,13の変形(例えば、陥没)や摩耗を抑制することを考慮して、フランジ部12,13の具体的な硬度(所定の硬度)を決めることができる。また、熱硬化処理の条件を適宜決めることにより、フランジ部12,13の硬度を所定の硬度とすることができる。
【0025】
第1補強部材21は、支持部11の上面11aに配置される。第1補強部材21の内側面21aは、フランジ部12に沿って形成されており、フランジ部12の外側面12aと接触する。第1補強部材21の外側面21bの一部は、支持部11の外側面11bに沿って形成されている。厚み方向Dtにおける第1補強部材21の寸法は、厚み方向Dtにおけるフランジ部12の寸法と等しくなっており、第1補強部材21の上面21cと、フランジ部12の上端面12bとは、同一平面内に位置する。
【0026】
第2補強部材22は、支持部11の下面11cに配置される。第2補強部材22の内側面22aは、フランジ部13に沿って形成されており、フランジ部13の外側面13aと接触する。第2補強部材22の外側面22bの一部は、支持部11の外側面11bに沿って形成されている。厚み方向Dtにおける第2補強部材22の寸法は、厚み方向Dtにおけるフランジ部13の寸法と等しくなっており、第2補強部材22の下面22cと、フランジ部13の下端面13bとは、同一平面内に位置する。
【0027】
補強部材21,22は、スパナ1の使用時において、フランジ部12,13の変形を抑制するために用いられる。この点について、以下に説明する。
【0028】
本実施形態において、フランジ部12,13が設けられた部分では、ヘッド本体10および補強部材21,22が一体的に形成されたヘッド(従来のヘッド)と比べて、薄肉となっている。このため、スパナ1を使用したとき、フランジ部12,13は、締付部材からの負荷を受けることにより、ヘッド100の口Oが広がる方向に変形することがある。フランジ部12,13の変形力は、補強部材21,22に伝達されるが、補強部材21,22をフランジ部12,13に沿って配置しておくことにより、補強部材21,22に反発力を持たせることができる。この反発力によって、フランジ部12,13の変形を抑制しやすくなる。
【0029】
補強部材21,22の材料は、フランジ部12,13の変形を抑制することを考慮して、適宜選択することができる。例えば、補強部材21,22を金属又は炭素繊維で形成することができる。
【0030】
補強部材21,22を炭素繊維で形成するとき、炭素繊維の長手方向がフランジ部12,13に沿った方向となるように、補強部材21,22を配置することができる。炭素繊維を用いて補強部材21,22を製造する方法(一例)について、以下に説明する。
【0031】
まず、図6に示すように、炭素繊維で形成された複数のシート31を積層することにより、炭素繊維ブロック32を形成する。ここで、積層された複数のシート31は、互いに固定される。また、炭素繊維の長手方向は、図6の左右方向となる。なお、炭素繊維で形成された1枚のシート31を折り返すことにより、炭素繊維ブロック32を形成することもできる。
【0032】
次に、図7に示すように、炭素繊維ブロック32をフランジ部12,13に沿って配置し、上述した補強部材21,22の形状に成形する。ここで、炭素繊維ブロック32を構成する各シート31は、フランジ部12,13に沿って配置され、フランジ部12,13に対して複数のシート31が積層される。これにより、炭素繊維の長手方向がフランジ部12,13に沿った方向となるように、炭素繊維ブロック32(補強部材21,22)が配置される。
【0033】
上述したように、シート31をフランジ部12,13に沿って配置すれば、ヘッド100の口Oが広がる方向にフランジ部12,13が変形したときに、炭素繊維ブロック32(補強部材21,22)に反発力を持たせることができる。この反発力によって、フランジ部12,13の変形を抑制しやすくなる。
【0034】
ヘッド本体10および補強部材21,22が一体的に形成されたヘッド(従来のヘッド)では、熱硬化処理によって、ヘッドの全体の硬度を上げることができる。しかし、ヘッドの全体の硬度を上げすぎると、ヘッドの一部が締付部材からの負荷を受けて僅かに変形したときに、この変形部分を起点としてヘッドが破断しやすくなってしまう。一方、ヘッドの破断を抑制するために、ヘッドの全体の硬度を下げてしまうと、ヘッドの一部、すなわち、締付部材からの負荷を受ける部分について、変形(例えば、陥没)や摩耗が発生しやすくなってしまう。
【0035】
本実施形態では、上述したようにフランジ部12,13の全体の硬度を十分に上げることができるため、フランジ部12,13の一部が締付部材からの負荷を受けて変形(例えば、陥没)したり摩耗したりすることを抑制できる。一方、上述したように、フランジ部12,13が設けられた部分では、従来のヘッドと比べて薄肉になるため、ヘッド100の口Oが広がる方向にフランジ部12,13が変形しやすくなる。そこで、本実施形態では、フランジ部12,13に沿って補強部材21,22を配置することにより、ヘッド100の口Oが広がる方向におけるフランジ部12,13の変形を抑制している。これにより、フランジ部12,13から締付部材に対して適正な締め付け力を与えることができる。
【0036】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下に説明する変形例において、本実施形態で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を用いている。以下に説明する変形例においても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0037】
図8に示すヘッド100では、本実施形態(図3図5)で説明した支持部11の一部を省略し、この省略した部分にも補強部材21,22を設けている。支持部11は、フランジ部12および基端部14の間に位置する領域に設けられているだけである。そして、ヘッド100の口Oの幅方向Dwにおけるフランジ部12の外側面12aには、支持部11が設けられていない。
【0038】
本実施形態では、厚さ方向Dtにおける支持部11の両側にフランジ部12,13を設けているが、これに限るものではない。すなわち、厚さ方向Dtにおける支持部11の位置や、厚さ方向Dtにおけるフランジ部12,13の位置は、適宜決めることができる。
【0039】
例えば、図9に示すように、厚さ方向Dtにおけるヘッド本体10の一端に支持部11を設けるとともに、支持部11から上方に向かって突出するフランジ部12を設けることができる。ここで、支持部11は、ヘッド本体10の基端部14と接続されている。補強部材21は、支持部11の上面11aに配置されている。また、補強部材21は、フランジ部12に沿って配置されており、補強部材21の内側面21aは、フランジ部12の外側面12aと接触している。
【0040】
一方、図10に示すように、厚さ方向Dtにおけるヘッド本体10の両端に支持部11A,11Bを設けることができる。ここで、支持部11Aは、ヘッド本体10の上端に設けられており、支持部11Bは、ヘッド本体10の下端に設けられている。そして、支持部11A,11Bは、図11に示すように、基端部14と接続されている。なお、図11は、図10に示す矢印D3の方向からヘッド100を見たときの正面図である。
【0041】
フランジ部12は、支持部11Bから上方に向かって突出しており、フランジ部13は、支持部11Aから下方に向かって突出している。図11に示すように、フランジ部12は、支持部11Aと接続されている。同様に、フランジ部13は、支持部11Bと接続されている。
【0042】
第1補強部材21は、支持部11Bの上面11aに配置されている。また、第1補強部材21は、フランジ部12に沿って配置されており、第1補強部材21の内側面21aは、フランジ部12の外側面12aと接触している。第2補強部材22は、支持部11Aの下面11cに配置されている。また、第2補強部材22は、フランジ部13に沿って配置されており、第2補強部材22の内側面22aは、フランジ部13の外側面13aと接触している。
【0043】
本実施形態および変形例では、ヘッド本体10に設けられた支持部11(11A,11B)によって、補強部材21,22を支持しているが、これに限るものではない。すなわち、フランジ部12,13に対応した領域だけに補強部材21,22を配置し、補強部材21,22をフランジ部12,13に固定するだけでもよい。この場合には、補強部材21,22は、支持部11によって支持されていないことになる。ここで、本実施形態および変形例のように、支持部11によって補強部材21,22を支持することにより、補強部材21,22をヘッド本体10に固定しやすくなる。
【0044】
本実施形態では、ヘッド本体10に熱硬化処理を行うことにより、フランジ部12,13の硬度を所定の硬度まで向上させているが、これに限るものではない。具体的には、フランジ部12,13の表面に皮膜処理を行うことにより、フランジ部12,13の表面に形成された皮膜の硬度を所定の硬度とすることができる。皮膜処理を行う場合には、皮膜を含むフランジ部12,13が、本発明におけるフランジ部に相当する。
【0045】
皮膜処理としては、例えば、めっき処理、溶射処理、コーティング処理がある。皮膜の材料としては、例えば、金属、金属化合物、セラミックスを用いることができる。皮膜処理は、少なくともフランジ部12,13のうち、締付部材と接触する面(接触面Sの一部)に対して行えばよい。例えば、フランジ部12,13のうち、締付部材と接触する面だけに皮膜処理を行ったり、フランジ部12,13の全体だけに皮膜処理を行ったり、ヘッド本体10の全体に皮膜処理を行ったりすることができる。
【0046】
フランジ部12,13の表面に、所定の硬度を有する皮膜を形成することにより、本実施形態と同様に、締付部材と接触する部分において、フランジ部12,13の変形(例えば、陥没)や摩耗を抑制することができる。ここで、フランジ部12,13の変形(例えば、陥没)や摩耗を抑制することを考慮して、皮膜の硬度や厚さを決めることができる。皮膜処理の条件を適宜決めることにより、皮膜の硬度を所定の硬度としたり、皮膜の厚さを所定の厚さとしたりすることができる。
【0047】
一方、ヘッド本体10にフランジ部12,13を設けただけでは、皮膜を有するフランジ部12,13が、締付部材からの負荷を受けることにより、ヘッド100の口Oが広がる方向に変形することがある。本実施形態で説明したように、補強部材21,22をフランジ部12,13に沿って配置することにより、補強部材21,22に反発力を持たせることができ、フランジ部12,13の変形を抑制しやすくなる。これにより、フランジ部12,13から締付部材に対して適正な締め付け力を与えることができる。
【符号の説明】
【0048】
1:スパナ、100:ヘッド、200:スパナ本体、300:グリップ、
10:ヘッド本体、11:支持部、12,13:フランジ部、21,22:補強部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11