(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0016】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、複数の類似の部材(部位)が存在する場合には、総称の符号に記号を追加し個別または特定の部位を示す場合がある。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0017】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。
【0018】
また、断面図において、各部位の大きさは実デバイスと対応するものではなく、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。
【0019】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら本実施の形態の半導体装置について詳細に説明する。
【0020】
[構造説明]
図1は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
図1等に示す本実施の形態の半導体装置(半導体素子)は、窒化物半導体を用いたMIS(Metal Insulator Semiconductor)型の電界効果トランジスタ(FET;Field Effect Transistor)である。
【0021】
本実施の形態の半導体装置においては、基板S上に、核生成層NUCおよびバッファ層BUが順に形成されている。
【0022】
核生成層NUCは、窒化物半導体層からなる。バッファ層BUは、窒化物半導体に対し深い準位を形成する不純物を添加した1層もしくは複数層の窒化物半導体層からなる。ここでは、複数層の窒化物半導体層からなる超格子構造体(超格子層ともいう)を用いている。
【0023】
そして、バッファ層BU上には、コドープ層CDが形成されている。コドープ層CDは、窒化物半導体に対しp型となる不純物およびn型となる不純物を有する窒化物半導体層からなる。コドープ層CDは、例えば、p型不純物であるMgと、n型不純物であるSiとを含有するGaN層である。
【0024】
そして、コドープ層CDは、p型半導体領域CDpと、n型半導体領域CDnとを有する。このように、p型半導体領域となるCDpと、n型半導体領域となるCDnが、同一層内(同一面内)に形成されている(
図2の下図参照)。p型半導体領域となるのは、ホールがキャリアの主となる領域をいい、n型半導体領域となるとは、電子がキャリアの主となる領域をいう。半導体領域の極性(p型かn型か)は、例えば、SCM(Scanning Capacitance Microscopy、走査型静電容量顕微鏡法)により、キャリア濃度(電子濃度、ホール濃度)は、例えば、SMM(Scanning Microwave Microscope、走査型マイクロ波顕微鏡法)により測定することができる。
【0025】
図2は、コドープ層の構成およびコドープ層の形成工程を模式的に示す断面図である。
図2の上図に示すように、コドープ層CDは、例えば、p型不純物であるMgと、n型不純物であるSiとを有する。例えば、p型不純物であるMgと、n型不純物であるSiとをドープしながら窒化物半導体層(例えば、GaN層)をエピタキシャル成長させることで、p型不純物であるMgと、n型不純物であるSiとを含有する窒化物半導体層(例えば、GaN層)を形成することができる。
【0026】
ここで、コドープ層CDは、n型不純物であるSiよりp型不純物であるMgを多く含有している。別の言い方をすれば、コドープ層CD中のp型不純物(ここでは、Mg)の濃度は、n型不純物(ここでは、Si)の濃度より、高い。さらに、別の言い方をすれば、コドープ層CD中のp型不純物(ここでは、Mg)の含有量(添加量)は、n型不純物(ここでは、Si)の含有量より、多い(Mgリッチ)。なお、不純物の濃度や含有量は、例えば、不純物元素の単位体積当たりの個数で表すことができる。
【0027】
このため、コドープ層CD中のn型不純物(ここでは、Si)に起因するキャリア(電子)は、p型不純物(ここでは、Mg)に起因するキャリア(ホール)と相殺され、コドープ層CDは、p型半導体領域(CDp)となる。
【0028】
そして、
図2の下図に示すように、このコドープ層CDのうち、n型半導体領域の形成領域(形成予定領域)に、水素(H)を導入することにより、Mgを不活性化することができる。
図2の下図中の破線で囲んだMgは、不活性化したMgを示す。Mgを不活性化することにより、p型不純物(ここでは、Mg)に起因するキャリア(ホール)濃度が低く、例えば、ゼロとなる。このため、水素(H)が導入された領域は、コドープ層CD中のn型不純物(ここでは、Si)に起因するキャリア(電子)が支配的となり、n型半導体領域CDnとなる。一方、水素(H)が導入されない領域は、p型半導体領域CDpのままとなる。水素(H)の導入方法に制限はないが、後述するように、イオン注入法や固相拡散法を用いることができる。
【0029】
このように、コドープ層CDに水素(H)を導入することで、同一層内にp型半導体領域CDpとn型半導体領域CDnとを形成することができる。
【0030】
ここで、コドープ層CDの構成についてまとめておく。
【0031】
水素(H)の導入前のコドープ層CDは、p型不純物(ここでは、Mg)とn型不純物(ここでは、Si)とを有する。p型不純物(ここでは、Mg)とn型不純物(ここでは、Si)とは、コドープ層CD中にほぼ均一に含有されている。そして、コドープ層CD中の、p型不純物(ここでは、Mg)の濃度は、n型不純物(ここでは、Si)の濃度より高い(大きい)。また、これらの不純物は、活性化されている。
【0032】
コドープ層CD中のp型不純物(ここでは、Mg)やn型不純物(ここでは、Si)の均一性およびその濃度は、水素(H)の導入後においても、変化しない。p型不純物(ここでは、Mg)の活性化率が異なるにすぎない。
【0033】
よって、ここでは、水素(H)の導入の前後に関わらず、p型不純物(ここでは、Mg)およびn型不純物(ここでは、Si)を含有しているコドープ層を“CD”として示す。このため、水素(H)の導入前のコドープ層CDは、p型不純物(ここでは、Mg)とn型不純物(ここでは、Si)とを有する単層であり、水素(H)の導入後のコドープ層CDは、p型半導体領域CDpとn型半導体領域CDnとを有する層となる(
図2参照)。
【0034】
このように、水素(H)の導入後のコドープ層CDは、p型半導体領域CDpとn型半導体領域CDnとを有する。前述したように、半導体領域の極性(p型かn型か)は、例えば、SCMにより判定することができる。また、コドープ層CDは、電子濃度が高い領域と、ホール濃度が高い領域とを有する。電子濃度が高い領域が、n型半導体領域CDnと対応し、ホール濃度が高い領域が、p型半導体領域CDpと対応する。キャリア濃度(電子濃度、ホール濃度)は、例えば、SMMにより測定することができる。
【0035】
また、水素(H)の導入後のコドープ層CDは、水素(H)を含有する領域と、水素(H)を含有しない領域とを有する。別の言い方をすれば、コドープ層CDは、水素(H)濃度の高い領域と、水素(H)濃度の低い領域とを有する。この水素(H)を含有する領域または水素(H)濃度の高い領域が、n型半導体領域CDnと対応し、水素(H)を含有しない領域または水素(H)濃度の低い領域が、p型半導体領域CDpと対応する。よって、n型半導体領域CDnの水素濃度は、p型半導体領域CDpの水素濃度より高い。また、別の言い方をすれば、n型半導体領域CDnの活性化したn型不純物(ここでは、Si)の濃度は、p型半導体領域CDpの活性化したp型不純物(ここでは、Mg)の濃度より低い(小さい)。
【0036】
また、水素(H)の導入後のコドープ層CDは、不活性化された状態のp型不純物(ここでは、Mg)を含有する領域と、活性化された状態のp型不純物(ここでは、Mg)を含有する領域とを有する。この不活性化された状態のp型不純物(ここでは、Mg)を含有する領域が、n型半導体領域CDnと対応し、活性化された状態のp型不純物(ここでは、Mg)を含有する領域が、p型半導体領域CDpと対応する。なお、コドープ層CD中のn型不純物(ここでは、Si)は、活性化された状態で、コドープ層CD中に、ほぼ均一に存在する。
【0037】
そして、
図1に示すように、本実施の形態のMISFETは、上記コドープ層CD上に、ゲート絶縁膜GIを介して形成されたゲート電極GEを有している。また、ゲート電極GEの両側のコドープ層CDの上方に形成されたソース電極SEおよびドレイン電極DEを有している。コドープ層CDのうち、p型半導体領域CDpが、チャネル領域となる。このp型半導体領域CDpの両側のn型半導体領域CDn上にそれぞれ、ソース電極SEおよびドレイン電極DEが形成されている。なお、ここでは、n型半導体領域CDnとソース電極SEとの間には、接続抵抗の低減のため、コンタクト層(不純物層)CLが形成されている。また、n型半導体領域CDnとドレイン電極DEとの間にも、接続抵抗の低減のため、コンタクト層CLが形成されている。コンタクト層CLは、例えば、高濃度に不純物を含有する窒化物半導体層よりなる。また、ゲート電極GEは、層間絶縁膜ILにより覆われている。この層間絶縁膜IL中のコンタクトホール中に、上記ソース電極SEとドレイン電極DEが形成されている。
【0038】
次いで、
図2を参照しながら、コドープ層CDのうち、p型半導体領域の形成領域に、水素(H)を導入する方法について説明する。水素(H)を導入する方法、即ち、一部の領域のみにおいて、Mgを不活性化する方法については、例えば、以下の固相拡散法とイオン注入法とを例示することができる。
【0039】
1)固相拡散法
例えば、n型半導体領域CDnの形成領域上に、水素を含有する膜を形成する。次いで、熱処理を施すことにより、水素を含有する膜からコドープ層CDに水素(H)を導入する。この水素(H)の導入により、活性化されていたp型不純物(ここでは、Mg)が不活性化し、n型半導体領域CDnとなる。
【0040】
2)イオン注入法
例えば、n型半導体領域CDnの形成領域上に開口部を有するマスク膜を形成する。次いで、このマスク膜をマスクとして、コドープ層CDに水素(H)をイオン注入(イオン打ち込み)し、熱処理を施すことにより、コドープ層CDのp型不純物(ここでは、Mg)を不活性化する。これにより、水素(H)をイオン注入した領域が、n型半導体領域CDnとなる。
【0041】
なお、上記1)、2)の方法については、以下の製法説明の欄において具体的に説明する。
【0042】
[製法説明]
次いで、
図3〜
図11を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するとともに、当該半導体装置の構成をより明確にする。
図3〜
図11は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0043】
図3に示すように、基板S上に、核生成層NUCおよびバッファ層BUを順次形成する。基板Sとして、例えば、(111)面が露出しているシリコン(Si)からなる半導体基板を用い、その上部に、核生成層NUCとして、例えば、窒化アルミニウム(AlN)層を、有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などを用いて、200nm程度の膜厚で、エピタキシャル成長させる。
【0044】
なお、基板Sとしては、上記シリコンの他、SiCやサファイアなどからなる基板を用いてもよい。また、GaNからなる基板を用いてもよく、この場合、核生成層NUCを省略してもよい。なお、通常、核生成層NUCおよびこの核生成層NUC以降の窒化物半導体層(III−V族の化合物半導体層)は、すべてIII族元素面成長(即ち、本件の場合、ガリウム面成長あるいはアルミ面成長)で形成する。
【0045】
次いで、核生成層NUC上に、バッファ層BUとして、窒化ガリウム(GaN)層と窒化アルミニウム(AlN)層との積層膜(AlN/GaN膜)を、繰り返し積層した超格子構造体を形成する。例えば、20nm程度の膜厚の窒化ガリウム(GaN)層と、5nm程度の膜厚の窒化アルミニウム(AlN)層とを、交互に有機金属気相成長法などを用いてエピタキシャル成長させる。例えば、上記積層膜を40層形成する。この超格子構造体上に、バッファ層BUの一部として、例えば、AlGaN層を、有機金属気相成長法などを用いてエピタキシャル成長させてもよい。AlGaN層の膜厚は、例えば、1μm程度である。なお、バッファ層BUの膜構成や各膜の膜厚は適宜調整可能である。例えば、超格子構造体を含まない単層膜をバッファ層BUとして用いてもよい。さらに、使用する基板Sの種類や、作成する素子の用途に応じて省略することも可能である。
【0046】
バッファ層BUの構成材料としては、GaN、AlN、InNおよびこれらの混晶を用いることができる。例えば、上記積層膜(AlN/GaN膜)の他、AlGaN/GaN膜を繰り返し積層した超格子構造体や、これにAlGaN層やInAlN層などを組み合わせて、またはAlGaN層やInAlN層などを単層で用いることができる。また、バッファ層BUの構成膜に適宜不純物を添加してもよい。不純物としてはたとえば、Feなどの遷移金属や、C、Mg、Beなどを用いることができる。
【0047】
次いで、
図4に示すように、バッファ層BU上に、コドープ層CDを形成する。まず、p型不純物およびn型不純物をドープ(導入)しながら、窒化物半導体層を形成する。例えば、p型不純物(ここでは、Mg)およびn型不純物(ここでは、Si)を含有するGaN層を、例えば、MOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy、有機金属気相成長)法を用いて成長させる。例えば、キャリアガスと原料ガスを、装置内に導入しながら、層を成長させる。原料ガスには、窒化物半導体層(ここでは、GaN層)の構成元素を含むガスを用いる。例えば、GaN層の成膜の際には、Ga、Nの原料ガスとして、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニアをそれぞれ用い、p型不純物であるMgの原料ガスとして、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム((C
5H
5)
2Mg)を用い、n型不純物であるSiの原料ガスとして、シランを用いる。このように、エピタキシャル成長法によれば、原料ガスの流量を調整することで、p型不純物やn型不純物のドープ量(導入量)を容易に、また、精度よく調整することができる。また、エピタキシャル成長法によれば、イオン注入法と比較し、原子の注入による格子欠陥が生じ難く、特性の良好な窒化物半導体層(ここでは、GaN層)を形成することができる。
【0048】
例えば、Mgの濃度(ドープ量)が、5×10
18cm
-3、Siの濃度(ドープ量)が、2×10
17cm
-3であるGaN層を100nm程度の膜厚で成長させる。もちろん、用途に応じて、ドープする不純物の種類や濃度、また、窒化物半導体の材料や厚さを適宜選択することができる。窒化物半導体の材料としては、GaNの他、AlN、InNを用いることができる。また、これらの混晶を用いてもよい。また、ドープする不純物について、n型不純物としては、例えば、Siの他、O、S、Seなど、p型不純物としては、例えば、Mgの他、Zn、Be、Cなどを用いることができる。これらの中でも、SiやMgを用いることが好ましい。
【0049】
また、活性化後のp型不純物の濃度は、活性化後のn型不純物の濃度より高くする必要がある(活性化後のn型不純物の濃度<活性化後のp型不純物の濃度)。p型不純物(ここでは、Mg)と、n型不純物(ここでは、Si)の活性化率を考慮し、p型不純物(ここでは、Mg)およびp型不純物(ここでは、Si)のコドープ層CD中への導入量を調整することが好ましい。例えば、活性化率を考慮し、コドープ層CDに導入されるp型不純物(ここでは、Mg)の濃度は、n型不純物(ここでは、Si)の濃度の、2倍以上、より好ましくは、5倍以上、さらに好ましくは10倍以上とする。また、p型不純物(ここでは、Mg)の濃度は、5×10
17cm
-3〜2×10
19cm
-3の範囲とすることが好ましい。また、n型不純物(ここでは、Si)の濃度は、5×10
16cm
-3〜2×10
18cm
-3の範囲とすることが好ましい。かかる範囲であれば、精度よく、コドープ層CD中に、p型不純物(ここでは、Mg)とn型不純物(ここでは、Si)とを導入しながら窒化物半導体層(例えば、GaN層)をエピタキシャル成長させることができる。
【0050】
次いで、
図5に示すように、コドープ層CD上に、コンタクト層CLとして、例えば、n型不純物を含有するGaN層を、有機金属気相成長法などを用いてエピタキシャル成長させる。例えば、n型不純物として、Siを用いる。例えば、Siをドープしながら窒化ガリウム層を50nm程度堆積させる。もちろん、用途に応じて、ドープする不純物の種類や濃度、また、窒化物半導体の材料や厚さを適宜選択することができる。窒化物半導体の材料としては、GaNの他、AlN、InNを用いることができる。また、これらの混晶を用いてもよい。例えば、InGaN層、AlGaN層、InAlN層などを用いることができる。また、ドープする不純物について、n型不純物としては、例えば、Siの他、O、S、Seなど、p型不純物としては、例えば、Mgの他、Zn、Be、Cなどを用いることができる。
【0051】
次いで、コドープ層CD中のp型不純物(ここでは、Mg)を活性化するための熱処理を施す。例えば、窒素雰囲気で、800℃、30分間の熱処理を行う。これにより、p型不純物(ここでは、Mg)が活性化する。なお、n型不純物(ここでは、Si)は、活性化しやすく、熱処理をするまでもなく、活性化している。
【0052】
次いで、
図6に示すように、コドープ層CDに水素(H)を導入するための膜を形成する。水素導入膜として、高濃度の水素を含有する絶縁膜ILHを形成する。例えば、高濃度の水素を含有する窒化シリコン膜をPECVD(plasma-enhanced chemical vapor deposition)法などを用いて、100nm程度の膜厚で形成する。なお、ここでは、絶縁膜として、窒化シリコン膜(SiN膜)を用いたが、この他、SiO
2膜やSiON、SiOC、Al
2O
3、HfO
2、ZrO
2などを用いることができる。さらに、有機絶縁膜などを用いてもよい。SiN膜などの無機膜は、CVD法などによる成膜時に、水素化合物ガスを原料ガスとして、また、水素をキャリアガスとして用いることで、膜中に水素が取り込まれる。また、有機絶縁膜としては、水素を組成として含む膜を用いることで、膜から水素を放出することができる。また、高濃度の水素を含有する絶縁膜ILHとしては、除去しやすい膜を用いることが好ましい。
【0053】
次いで、高濃度の水素を含有する絶縁膜ILH上にカバー絶縁膜ILCを形成する。例えば、酸化シリコン膜を常圧CVD法などを用いて、200nm程度の膜厚で形成する。ここでは、絶縁膜として、酸化シリコン膜(SiO
2膜)を用いたが、この他、SiN膜やSiON、SiOC、Al
2O
3、HfO
2、ZrO
2などを用いることができる。さらに、有機絶縁膜などを用いてもよい。カバー絶縁膜ILCとしては、水素(H)を透過し難い膜を用いることができる。このように、水素(H)を透過し難い膜をカバー絶縁膜ILCとして用いることで、高濃度の水素を含有する絶縁膜ILHの上面側からの水素(H)の放出量を低減することができ、下面側、即ち、コドープ層CDに水素(H)を効率よく導入することができる。また、カバー絶縁膜ILCとしては、水素(H)を透過し難く、除去しやすい膜を用いることが好ましい。
【0054】
次いで、
図7に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチング技術を用いて、高濃度の水素を含有する絶縁膜ILHおよびカバー絶縁膜ILCよりなる積層膜のうち、チャネル層となるp型半導体領域CDpの形成領域の積層膜を除去する。即ち、上記積層膜上にフォトレジスト膜(図示せず)を形成し、チャネル層となるp型半導体領域CDpの形成領域のフォトレジスト膜を除去する。次いで、このフォトレジスト膜をマスクとして、上記積層膜を除去する。例えば、CF
4を主成分とするガスを用いたドライエッチングにより上記積層膜を除去する。この後、フォトレジスト膜を除去する。このように、所望の形状の膜をマスクとして、下層の膜をエッチングすることをパターニングという。
【0055】
次いで、熱処理を施すことにより、高濃度の水素を含有する絶縁膜ILHからコンタクト層CLを介してコドープ層CDに水素(H)を導入する。例えば、600℃、30分間の熱処理を行う。これにより、絶縁膜ILH中の水素(H)が、コンタクト層CLを介してコドープ層CD中に拡散する。この水素(H)の導入により、活性化されていたp型不純物(ここでは、Mg)が不活性化する。なお、n型不純物(ここでは、Si)は、水素(H)により不活性化することはない。これにより、水素(H)が導入された領域は、Mgが不活性化され、n型半導体領域CDnとなる(
図8、
図2参照)。即ち、チャネル層となるp型半導体領域CDpと、その両側のn型半導体領域CDnとが、同一層内に形成されたnpn構成部を形成することができる。なお、コンタクト層(n型GaN)CLは、水素(H)を通過させる。このように、水素(H)は原子が小さく、層中を拡散することができる。例えば、窒化物半導体層(GaN、AlN、InN、InGaN、AlGaN、InAlN)中を、拡散することができる。また、H含有量の少ないSiNや、SiON、SiOC、Al
2O
3、HfO
2、ZrO
2などは、水素(H)の拡散を阻止することができる。
【0056】
なお、コンタクト層(n型GaN)CLの形成前に、コドープ層CDへの水素(H)導入工程を行ってもよい。但し、前述したように、窒化物半導体層は、すべてIII族元素面成長(即ち、本件の場合、ガリウム面成長あるいはアルミ面成長)で形成されるため、連続成長が好ましい。このため、コンタクト層CLの形成後に、コンタクト層CLを介してコドープ層CDに水素(H)を導入することが好ましい。
【0057】
この後、上記積層膜(ILC、ILH)を除去する。例えば、HF水溶液を用いたウエットエッチングにより上記積層膜を除去する。
【0058】
次いで、
図9に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチング技術を用いて、チャネル層となるp型半導体領域CDp上のコンタクト層CLを除去する。即ち、コンタクト層CLの一部を除去することにより、開口部を形成する。例えば、BCl
3を主成分とするガスを用いたドライエッチングによりコンタクト層CLの一部を除去する。なお、このエッチングの際、チャネル層となるp型半導体領域CDpと、ドレイン電極DE側のコンタクト層CLとの距離が、チャネル層となるp型半導体領域CDpと、ソース電極SE側のコンタクト層CLとの距離より大きくなるように、コンタクト層CL中に開口部を形成する。これにより、チャネル層(ゲート電極GE)とドレイン電極DEとの距離を確保することができ、耐圧を向上させることができる。
【0059】
次いで、
図10に示すように、チャネル層となるp型半導体領域CDpに、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEを形成する。例えば、コンタクト層CLの開口部内を含むコンタクト層CL上に、ゲート絶縁膜GIとして、酸化アルミニウム膜(Al
2O
3膜)をALD(Atomic Layer Deposition)法などを用いて50nm程度の膜厚で堆積する。
【0060】
このゲート絶縁膜GIとしては、酸化アルミニウム膜の他、酸化シリコン膜や、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜を用いてもよい。高誘電率膜として、SiN膜、SiON膜(酸窒化シリコン膜)、ZrO
2膜(酸化ジルコニウム膜)、HfO
2膜(酸化ハフニウム膜)、ハフニウムアルミネート膜、HfON膜(ハフニウムオキシナイトライド膜)、HfSiO膜(ハフニウムシリケート膜)、HfSiON膜(ハフニウムシリコンオキシナイトライド膜)、HfAlO膜のようなハフニウム系絶縁膜を用いてもよい。この際、バンドギャップが最表面の半導体層よりも大きく、かつ、電子親和力が最表面の半導体層よりも小さいものを選択する。さらに、ゲート絶縁膜GIは、ゲート電極GEに印加できる電圧や、閾値電圧に影響を及ぼすため、絶縁耐圧、誘電率、膜厚などを適宜考慮して設計することが必要である。
【0061】
次いで、例えば、ゲート絶縁膜GI上に、導電性膜(ゲート電極GEの構成材料)として、例えば、TiN(窒化チタン)膜を、スパッタリング法などを用いて200nm程度の膜厚で堆積する。ゲート電極GEの構成材料や膜厚は適宜調整可能である。ゲート電極GEとして、TiNの他、BまたはPなどのドーパントを添加した多結晶シリコンを用いてもよい。また、Ti、Al、Ni、Pt、Au、およびこれらのSi化合物や、N化合物を用いてもよい。また、これらの材料膜を積層した多層膜を用いてもよい。
【0062】
次いで、フォトリソグラフィ技術を用いて、ゲート電極形成領域にフォトレジスト膜(図示せず)を形成し、このフォトレジスト膜をマスクとして、TiN膜をエッチングすることによりゲート電極GEを形成する。例えば、Cl
2を主成分とするガスを用いたドライエッチングによりTiN膜をエッチングする。この後、フォトレジスト膜を除去する。次いで、他のフォトレジスト膜(図示せず)をマスクとして、ゲート電極(TiN膜)GEの下層の酸化アルミニウム膜をエッチングする。例えば、BCl
3を主成分とするガスを用いたドライエッチングにより酸化アルミニウム膜をエッチングする。なお、ゲート電極GEとゲート絶縁膜GIの加工を同じフォトレジスト膜を用いて同時に行ってもよい。
【0063】
次いで、
図11に示すように、ゲート電極GEおよびコンタクト層CL上に、層間絶縁膜ILを形成する。例えば、層間絶縁膜ILとして、酸化シリコン膜を常圧CVD法などを用いて500nm程度堆積する。層間絶縁膜ILの構成材料や膜厚は適宜調整可能である。例えば、層間絶縁膜ILとして、複数種の絶縁膜の積層膜を用いてもよい。層間絶縁膜ILとしては、バンドギャップが最表面の半導体層よりも大きく、電子親和力が最表面の半導体層よりも小さい膜を用いることが好ましい。また、ゲート電極やソース電極やドレイン電極の材料などと反応性が低い膜を用いることが好ましい。層間絶縁膜ILとしては、例えば、酸化シリコン膜の他、SiN膜(窒化シリコン)、SiON膜(酸窒化シリコン膜)、Al
2O
3膜、ZrO
2膜(酸化ジルコニウム膜)、HfO
2膜(酸化ハフニウム膜)などを用いることができる。
【0064】
次いで、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、層間絶縁膜IL中に、コンタクトホールを形成する。例えば、層間絶縁膜IL上に、ソース電極接続領域およびドレイン電極接続領域にそれぞれ開口部を有するフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。次いで、このフォトレジスト膜をマスクとして、層間絶縁膜ILをエッチングすることにより、コンタクトホールを形成する。例えば、SF
6を主成分とするガスを用いたドライエッチングにより、層間絶縁膜ILをエッチングする。
【0065】
次いで、このコンタクトホール中に、ソース電極SEおよびドレイン電極DEを形成する(
図1参照)。例えば、コンタクトホール内を含む層間絶縁膜IL上に導電性膜を形成する。例えば、導電性膜として、Al/Ti膜を形成する。例えば、コンタクトホール内を含む層間絶縁膜IL上に、Ti膜を、スパッタリング法などを用いて50nm程度の膜厚で形成し、さらに、その上に、Al膜をスパッタリング法などを用いて1000nm程度の膜厚で形成する。次いで、熱処理を施す。例えば、500℃、30分間の熱処理を行う。これにより、導電性膜(Al/Ti膜)とその下層の層との間のオーミックコンタクトを取ることができる。
【0066】
次いで、ソース電極SE、ドレイン電極DEの形成領域にフォトレジスト膜(図示せず)を形成し、このフォトレジスト膜(図示せず)をマスクとして、導電性膜(Al/Ti膜)をエッチングする。例えば、Cl
2を主成分とするガスを用いたドライエッチングにより、導電性膜(Al/Ti膜)をエッチングする。
【0067】
このソース電極SEおよびドレイン電極DEを構成する導電性膜の構成材料や膜厚は適宜調整可能である。このような導電性膜としては、窒化物半導体層とオーミック接触する材料を用いることが好ましい。特に、本実施の形態においては、n型半導体領域CDnとソース電極SEとの間と、n型半導体領域CDnとドレイン電極DEとの間とに、コンタクト層CLを設けたので、大部分の導電体はオーミック接触することができる。よって、ソース電極SEおよびドレイン電極DEを構成する導電性膜として、幅広い材料から選択することができる。ソース電極SEおよびドレイン電極DEを構成する導電性膜としては、例えば、Ti、Al、Mo、Nb、Vおよびこれらの混合物(合金)や、Si化合物、N化合物を用いてもよい。また、これらの材料膜を積層した多層膜を用いてもよい。
【0068】
この後、ソース電極SE、ドレイン電極DE上を含む層間絶縁膜IL上に、絶縁膜を形成し、さらに、上層の配線を形成してもよい。また、最上層配線上には、絶縁膜よりなる保護膜を形成する。
【0069】
以上の工程により、本実施の形態の半導体装置を形成することができる。なお、上記工程は、一例であり、上記工程以外の工程により、本実施の形態の半導体装置を製造してもよい。
【0070】
このように、本実施の形態においては、p型不純物およびn型不純物を含有する窒化物半導体層であるコドープ層CDの一部の領域に、高濃度の水素を含有する絶縁膜ILHから水素を導入したので、当該領域のp型不純物を不活性化することができる。これにより、不活性化した領域は、n型半導体領域CDnとなり、不活性化していない領域は、p型半導体領域CDpのままとなる。このように、同一層内に、n型半導体領域CDnとp型半導体領域CDpを形成することができる。これらの領域中の不純物はエピタキシャル成長により結晶内の理想的な位置に配置され、また、イオン注入のような結晶が破壊されやすい方法で注入されたものではないため、良好な半導体特性を実現することができる。
【0071】
例えば、以下に説明するように、イオン注入法や再成長法を用いることにより、同一層内に、n型半導体領域CDnとp型半導体領域CDpを形成することができる。これらの方法と比較した場合の本実施の形態のメリットについて説明する。
【0072】
(1)イオン注入法を用いることにより、同一層内に、n型半導体領域CDnとp型半導体領域CDpを形成することができる。しかしながら、1)注入した原子が通過した部分において、イオン注入した層の結晶が壊れるため結晶性や、膜質が劣化する。この場合、1200℃以上の高温の熱処理である程度回復はするが完全ではなく、結晶性や、膜質を維持しようとする場合、浅い位置にイオン注入せざるを得ず、所望の厚さのn型半導体領域CDnとp型半導体領域CDpとを形成することができない。また、2)イオン注入においては、注入量や注入エネルギーの制御が困難であり、現状では、例えば、比較的低濃度の半導体領域(例えば、1×10
18cm
-3以下のn型の半導体領域、n
-領域)を形成することができない。また、3)イオン注入においては、必然的に注入された不純物が統計的な分布を持ってしまい、注入量が小さい領域では、高抵抗化するなど、半導体領域(CDn、CDp)の特性のばらつきが生じやすい。
【0073】
これに対し、本実施の形態によれば、1)p型不純物(ここでは、Mg)やn型不純物(ここでは、Si)をイオン注入する必要はないため、これらの不純物のイオン注入によるダメージを回避することができる。また、エピタキシャル成長によれば、形成する層の膜厚の制御は容易であり、薄膜から厚膜まで特性の良好な膜を形成することができる。2)また、エピタキシャル成長によれば、原料ガスの流量により、p型不純物(ここでは、Mg)やn型不純物(ここでは、Si)の濃度を容易に調整することができる。また、p型不純物(ここでは、Mg)やn型不純物(ここでは、Si)の濃度差により、不純物濃度が決まるため、低濃度から高濃度の広い範囲において、不純物濃度の調整がし易い。特に、半導体素子の高耐圧化に欠かせない、低濃度の不純物領域を容易に形成することができる。また、3)エピタキシャル成長によれば、p型不純物(ここでは、Mg)やn型不純物(ここでは、Si)の濃度をほぼ均一に制御することができ、p型不純物(ここでは、Mg)やn型不純物(ここでは、Si)の分布ばらつきによる特性のばらつきを抑制することができる。なお、p型不純物(ここでは、Mg)やn型不純物(ここでは、Si)の濃度に勾配を持たせたい場合には、p型不純物の原料ガスやn型不純物の原料ガスの流量を調整することで、容易に不純物の濃度勾配を持たせることができる。
【0074】
(2)再成長法を用いることにより、同一層内に、n型半導体領域CDnとp型半導体領域CDpを形成することができる。例えば、n型半導体領域CDnをエピタキシャル成長した後、p型半導体領域CDpの形成領域のn型半導体領域CDnを除去し開口部を形成した後、開口部内に、p型半導体領域CDpをエピタキシャル成長(再成長)させる。かかる方法によっても、同一層内に、n型半導体領域CDnとp型半導体領域CDpを形成することができる。しかしながら、再成長法によれば、再成長の起点となる界面において、結晶の不連続面が生じやすく、特性の良好な半導体装置を得ることができない。これに対し、本実施の形態によれば、積層された窒化物半導体層の連続成膜が可能であり、層の界面に不連続面が生じ難い、また、再成長工程を回避することができ、再成長工程に起因する不連続面ができない。
【0075】
このように、本実施の形態においては、同一層内に、n型半導体領域CDnとp型半導体領域CDpを簡易な工程で、精度よく、形成することができる。また、形成された、n型半導体領域CDnやp型半導体領域CDpの各領域の特性も良好なものとなる。
【0076】
(応用例)
なお、上記製造工程においては、高濃度の水素を含有する膜からコドープ層CDに水素(H)を拡散させる工程(いわゆる、固相拡散工程)を例に説明したが、イオン注入工程により、コドープ層CDに水素(H)を導入してもよい。
【0077】
この場合、高濃度の水素を含有する絶縁膜ILHおよびカバー絶縁膜ILCの積層膜の形成工程(
図6、
図7参照)に代えて、チャネル層となるp型半導体領域CDpの形成領域を覆い、n型半導体領域CDnの形成領域に開口部を有するマスク膜(例えば、酸化シリコン膜)を形成し、このマスク膜をマスクとして、水素(H)をコドープ層CDにイオン注入する。この後、熱処理を施し、水素(H)により、活性化されていたp型不純物(ここでは、Mg)を不活性化する。
【0078】
ここで、水素原子(H)は、小さく軽いことから、低エネルギーでも深く注入することができる。また、水素原子(H)が、軽く、小さく、また、低エネルギーでのイオン注入が可能であることから、注入される層の結晶を壊さないで、イオン注入することが可能である。
【0079】
このように、イオン注入法により、n型半導体領域CDnとp型半導体領域CDpを形成した場合においても、固相拡散法で形成した場合と同様の効果を奏する。
【0080】
なお、本応用例においては、コドープ層に、イオン注入法により、水素(H)を直接導入したが、コドープ層より上層の膜に水素(H)をイオン注入し、この膜からコドープ層に水素(H)を熱拡散させてもよい。
【0081】
(実施の形態2)
実施の形態1においては、npn構成部(n型半導体領域CDn−p型半導体領域CDp−n型半導体領域CDn)を有する横型のMISFETを例に説明したが、同一層内に形成された異なる導電型の接合部(pn接合部)の適用例は、上記横型のMISFETの限定されるものではない。同一層内にpn接合部を有する半導体素子については種々のものがあるが、本実施の形態においては、縦型のMISFETへの適用例について説明する。
【0082】
[構造説明]
図12は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
図12に示す本実施の形態の半導体装置(半導体素子)は、窒化物半導体を用いた縦型のMISFETである。
【0083】
本実施の形態の半導体装置においては、基板S上に、第1n
-層NL1が形成されている。第1n
-層NL1は、窒化物半導体層からなる。
【0084】
そして、第1n
-層NL1上には、コドープ層CDが形成されている。コドープ層CDは、窒化物半導体に対しp型となる不純物およびn型となる不純物を有する窒化物半導体層からなる。例えば、p型不純物であるMgと、n型不純物であるSiとを含有するGaN層である。
【0085】
そして、コドープ層CDは、p型半導体領域CDpと、n型半導体領域CDnとを有する。具体的には、ゲート電極GEの下方に位置するn型半導体領域CDnと、このn型半導体領域CDnの両側に位置するp型半導体領域CDpとを有する。このように、p型半導体領域となるCDpと、n型半導体領域となるCDnが、同一層内に形成されている(
図2の下図参照)。p型半導体領域となるのは、ホールがキャリアの主となる領域をいい、n型半導体領域となるとは、電子がキャリアの主となる領域をいう。半導体領域の極性(p型かn型か)は、例えばSCMにより、キャリア濃度(電子濃度、ホール濃度)は、例えばSMMにより測定することができる。
【0086】
ここで、実施の形態1の場合と同様に、コドープ層CDは、n型不純物であるSiよりp型不純物であるMgを多く含有している。別の言い方をすれば、コドープ層CD中のp型不純物(ここでは、Mg)の濃度は、n型不純物(ここでは、Si)の濃度より、高い。このため、コドープ層CD中のn型不純物(ここでは、Si)に起因するキャリア(電子)は、p型不純物(ここでは、Mg)に起因するキャリア(ホール)と相殺され、コドープ層CDは、p型半導体領域となる。
【0087】
そして、このコドープ層CDのうち、n型半導体領域の形成領域に、水素(H)を導入することにより、Mgを不活性化することができる(
図2参照)。Mgを不活性化することにより、p型不純物(ここでは、Mg)に起因するキャリア(ホール)濃度が低く、例えば、ゼロとなる。このため、水素(H)が導入された領域は、コドープ層CD中のn型不純物(ここでは、Si)に起因するキャリア(電子)が支配的となり、n型半導体領域CDnとなる。水素(H)の導入方法に制限はないが、実施の形態1で説明したように、イオン注入法や固相拡散法を用いることができる。
【0088】
上記コドープ層CD上には、第2n
-層(キャリア走行層ともいう)NL2が形成されている。第2n
-層NL2は、窒化物半導体層からなる。この第2n
-層NL2上には、バリア層Lが形成されている。バリア層Lは、窒化物半導体層からなる。第2n
-層NL2とバリア層Lとの積層膜の両側には、後述する2つのソース電極SEが形成されている。ソース電極SEは、p型半導体領域CDpと電気的に接続されている。
【0089】
そして、バリア層L上には、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEが形成されている。また、ゲート電極GEの両側には、上記2つのソース電極SEがそれぞれ形成されている。即ち、ソース電極SEは、p型半導体領域CDp上に、第2n
-層NL2とバリア層Lとの積層膜の側壁に接するように形成されている。また、基板Sの裏面には、ドレイン電極DEが形成されている。
【0090】
図12に示す、縦型のMISFETにおいては、ゲート電極GEに電位が印加されると、ソース電極SEからコドープ層CDのn型半導体領域CDnを介してドレイン電極DEへ電子が流れる。
【0091】
このように、コドープ層CDに水素(H)を導入することで、同一層内にp型半導体領域CDpとn型半導体領域CDnとを形成することができる。
【0092】
[製法説明]
次いで、
図13〜
図16を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するとともに、当該半導体装置の構成をより明確にする。
図13〜
図16は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0093】
図13に示すように、基板S上に、第1n
-層NL1、コドープ層CD、第2n
-層NL2およびバリア層Lを順次形成する。これらの層は、窒化物半導体層からなる。
【0094】
基板Sとして、例えば、n型不純物を含有するGaNからなる半導体基板(n
+GaN基板)を用い、その上部に、第1n
-層NL1として、例えば、n型不純物を含有するGaN層を、有機金属気相成長法などを用いてエピタキシャル成長させる。例えば、n型不純物として、Siををドープしながら窒化ガリウム層を3μm程度堆積させる。堆積膜中のSi濃度を、例えば、1×10
16(1E16)cm
-3程度とする。なお、通常、第1n
-層NL1およびこの第1n
-層NL1以降の窒化物半導体層(III−V族の化合物半導体層)は、すべてIII族元素面成長(即ち、本件の場合、ガリウム面成長あるいはアルミ面成長)で形成する。
【0095】
次いで、第1n
-層NL1上に、コドープ層CDを形成する。まず、p型不純物およびn型不純物をドープ(導入)しながら、窒化物半導体層を形成する。例えば、p型不純物(ここでは、Mg)およびn型不純物(ここでは、Si)を含有するGaN層を、例えば、MOVPE法を用いて成長させる。例えば、キャリアガスと原料ガスを、装置内に導入しながら、層を成長させる。キャリアガスには、水素、または窒素、または水素と窒素の混合ガスを用いる。原料ガスには、実施の形態1の場合と同様に、窒化物半導体層(ここでは、GaN層)の構成元素を含むガスやp型不純物やn型不純物の構成元素を含むガスを用いる。
【0096】
例えば、Mgの濃度(ドープ量)が、1×10
18cm
-3、Siの濃度(ドープ量)が、1×10
16cm
-3であるGaN層を500nm程度の膜厚で成長させる。もちろん、用途に応じて、ドープする不純物の種類や濃度、また、窒化物半導体の材料や厚さを適宜選択することができる。窒化物半導体の材料としては、GaNの他、AlN、InNを用いることができる。また、これらの混晶を用いてもよい。また、ドープする不純物について、n型不純物としては、例えば、Siの他、S、Seなど、p型不純物としては、例えば、Mgの他、Be、Cなどを用いることができる。これらの中でも、SiやMgを用いることが好ましい。
【0097】
また、活性化後のp型不純物の濃度は、活性化後のn型不純物の濃度より高くする必要がある(活性化後のn型不純物の濃度<活性化後のp型不純物の濃度)。p型不純物(ここでは、Mg)と、n型不純物(ここでは、Si)の活性化率を考慮し、p型不純物(ここでは、Mg)およびp型不純物(ここでは、Si)のコドープ層CD中への導入量を調整することが好ましい。
【0098】
次いで、コドープ層CD上に、第2n
-層NL2として、例えばn型不純物を含有するGaN層を、有機金属気相成長法などを用いてエピタキシャル成長させる。例えば、n型不純物として、Siををドープしながら窒化ガリウム層を50nm程度堆積させる。堆積膜中のSi濃度を、例えば、1×10
16(1E16)cm
-3程度とする。
【0099】
次いで、第2n
-層NL2上に、バリア層Lとして、例えば、AlGaN層を、有機金属気相成長法などを用いてエピタキシャル成長させる。例えば、Al組成比0.2のAlGaN層を、膜厚20nm程度堆積させる。
【0100】
次いで、コドープ層CD中のp型不純物(ここでは、Mg)を活性化するための熱処理を施す。例えば、窒素雰囲気で、800℃、30分間の熱処理を行う。これにより、p型不純物(ここでは、Mg)が活性化する。なお、n型不純物(ここでは、Si)は、活性化しやすく、熱処理をするまでもなく、活性化している。
【0101】
次いで、n型半導体領域CDnの形成領域上に、高濃度の水素を含有する絶縁膜ILHおよびカバー絶縁膜ILCの積層膜(図示せず、
図7参照)を形成する。この積層膜は、実施の形態1と同様にして形成することができる。次いで、熱処理を施すことにより、コドープ層CDに水素(H)を導入する。この水素(H)の導入により、活性化されていたp型不純物(ここでは、Mg)が不活性化し、n型半導体領域CDnとなる(
図14)。なお、実施の形態1で説明したように、イオン注入法を用いて、コドープ層CDに水素(H)を導入してもよい。
【0102】
次いで、
図15に示すように、n型半導体領域CDnの上方のバリア層L上に、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEを形成する。ゲート絶縁膜GIおよびゲート電極GEは、例えば、実施の形態1の場合と同様にして形成することができる。次いで、第2n
-層NL2とバリア層Lとをパターニングする(
図16)。
【0103】
次いで、ゲート電極GEの両側に、2つのソース電極SEを形成し、さらに、基板Sの裏面に、ドレイン電極DEを形成する(
図12参照)。これらの電極は、導電性膜の成膜と、パターニングにより形成することができる。なお、ゲート電極GE上に層間絶縁膜を形成した後、ソース電極SEを形成してもよい。
【0104】
以上の工程により、本実施の形態の半導体装置を形成することができる。なお、上記工程は、一例であり、上記工程以外の工程により、本実施の形態の半導体装置を製造してもよい。
【0105】
このように、本実施の形態においても、p型不純物およびn型不純物を含有する窒化物半導体層であるコドープ層CDの一部の領域に、高濃度の水素を含有する絶縁膜から水素を導入することにより、当該領域のp型不純物を不活性化することができる。これにより、不活性化した領域は、n型半導体領域CDnとなり、不活性化していない領域は、p型半導体領域CDpのままとなる。このように、同一層内に、n型半導体領域CDnとp型半導体領域CDpを形成することができる。これらの領域中の不純物はエピタキシャル成長により結晶内の理想的な位置に配置され、また、イオン注入のような結晶が破壊されやすい方法で注入されたものではないため、良好な半導体特性を実現することができる。また、実施の形態1で説明したように、イオン注入法や再成長法を用いて、同一層内に、n型半導体領域CDnとp型半導体領域CDpを形成する方法と比較した場合、種々のメリットを奏する。
【0106】
さらに、本実施の形態の半導体装置においては、第1n
-層NL1とコドープ層CDにより、高耐圧化を図ることができる。例えば、膜厚3μmの第1n
-層NL1と膜厚500nmのコドープ層CDで、GaNの耐圧の理論値3MV/cmを考慮すると、900V以上の耐圧を確保することができる。これにより、ソース電極SEとゲート電極GE間の距離を小さくすることができ、半導体素子の小面積化を図ることができる。
【0107】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、同一層内に形成された異なる導電型の接合部(pn接合部)を、パワーMISFETのスーパージャンクション構造部へ適用した例について説明する。
【0108】
[構造説明]
図17は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。本実施の形態の半導体装置(半導体素子)は、スーパージャンクション構造を採用した、縦型のパワーMISFETである。
【0109】
本実施の形態の半導体装置においては、基板S上に、n
-層NLが形成されている。n
-層NLは、窒化物半導体層からなる。
【0110】
そして、n
-層NL上には、コドープ層CDが形成されている。コドープ層CDは、窒化物半導体に対しp型となる不純物およびn型となる不純物を有する窒化物半導体層からなる。例えば、p型不純物であるMgと、n型不純物であるSiとを含有するGaN層である。このコドープ層CDの膜厚は、例えば、5μm程度である。
【0111】
そして、コドープ層CDは、p型半導体領域CDpと、n型半導体領域CDn1、CDn2とを有する。具体的には、ゲート電極GEの下方に位置するn型半導体領域CDn1と、このn型半導体領域CDn1の両側に位置するp型半導体領域CDpとを有する。また、ゲート電極GE間に位置するn型半導体領域CDn2を有する。このように、p型半導体領域となるCDpと、n型半導体領域となるCDn1、CDn2が、同一層内に形成されている。p型半導体領域となるとは、ホールがキャリアの主となる領域をいい、n型半導体領域となるとは、電子がキャリアの主となる領域をいう。半導体領域の極性(p型かn型か)は、例えばSCMにより、キャリア濃度(電子濃度、ホール濃度)は、例えばSMMにより測定することができる。
【0112】
ここで、実施の形態1の場合と同様に、コドープ層CDは、n型不純物であるSiよりp型不純物であるMgを多く含有している。別の言い方をすれば、コドープ層CD中のp型不純物(ここでは、Mg)の濃度は、n型不純物(ここでは、Si)の濃度より、高い。このため、H導入前のコドープ層CD中のn型不純物(ここでは、Si)に起因するキャリア(電子)は、p型不純物(ここでは、Mg)に起因するキャリア(ホール)と相殺され、コドープ層CDは、p型半導体領域(CDp)となる。
【0113】
ここでは、コドープ層CDは、複数のp型半導体領域(p型カラム領域、p型ピラーともいう)CDpと複数のn型半導体領域(n型カラム領域、n型ピラーともいう)CDn1とを有する。p型半導体領域CDpとn型半導体領域CDn1とは交互に配置されている。このようなp型半導体領域CDpとn型半導体領域CDnとが周期的に配置された構造を、スーパージャンクション構造(SJ構成部)と言う。かかる構造によれば、p型半導体領域CDpとn型半導体領域CDn1との境界領域、即ち、縦方向に延びるpn接合から、横方向に空乏層が延びるため、耐圧を確保することができる。
【0114】
パワーMISFETは、n型半導体領域CDn1上にゲート絶縁膜GIを介して配置されたゲート電極GEを有する。ゲート絶縁膜GIとしては、例えば、酸化シリコン膜を用いることができる。また、ゲート電極GE間には、前述したように、n型半導体領域CDn2が形成されている。
【0115】
ゲート電極GEは、層間絶縁膜ILで覆われている。また、n型半導体領域CDn2上には、ソース電極SEが形成され、基板Sの裏面には、ドレイン電極DEが形成されている。
【0116】
このように、本実施の形態においても、コドープ層CDに水素(H)を導入することで、同一層内にp型半導体領域CDpとn型半導体領域CDn1、CDn2とを形成することができる。
【0117】
[製法説明]
次いで、
図18〜
図23を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するとともに、当該半導体装置の構成をより明確にする。
図18〜
図23は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0118】
図18に示すように、基板S上に、n
-層NLおよびコドープ層CDを順次形成する。これらの層は、窒化物半導体層からなる。
【0119】
基板Sとして、例えば、n型不純物を含有するGaNからなる半導体基板(n
+GaN基板)を用い、その上部に、n
-層NLとして、例えば、n型不純物を含有するGaN層を、有機金属気相成長法などを用いてエピタキシャル成長させる。例えば、n型不純物として、Siをドープしながら窒化ガリウム層を堆積させる。なお、通常、n
-層NLおよびこのn
-層NL以降の窒化物半導体層(III−V族の化合物半導体層)は、すべてIII族元素面成長(即ち、本件の場合、ガリウム面成長あるいはアルミ面成長)で形成する。
【0120】
次いで、n
-層NL上に、コドープ層CDを形成する。まず、p型不純物およびn型不純物をドープ(導入)しながら、窒化物半導体層を形成する。例えば、p型不純物(ここでは、Mg)およびn型不純物(ここでは、Si)を含有するGaN層を、例えば、MOVPE法を用いて成長させる。例えば、キャリアガスと原料ガスを、装置内に導入しながら、層を成長させる。原料ガスには、実施の形態1の場合と同様に、窒化物半導体層(ここでは、GaN層)の構成元素を含むガスやp型不純物やn型不純物の構成元素を含むガスを用いる。
【0121】
例えば、Mgの濃度(ドープ量)が、1×10
18cm
-3、Siの濃度(ドープ量)が、1×10
16cm
-3であるGaN層を5μm程度の膜厚で成長させる。もちろん、用途に応じて、ドープする不純物の種類や濃度、また、窒化物半導体の材料や厚さを適宜選択することができる。窒化物半導体の材料としては、GaNの他、AlN、InNを用いることができる。また、これらの混晶を用いてもよい。また、ドープする不純物について、n型不純物としては、例えば、Siの他、S、Seなど、p型不純物としては、例えば、Mgの他、Be、Cなどを用いることができる。これらの中でも、SiやMgを用いることが好ましい。
【0122】
また、活性化後のp型不純物の濃度は、活性化後のn型不純物の濃度より高くする必要がある(活性化後のn型不純物の濃度<活性化後のp型不純物の濃度)。p型不純物(ここでは、Mg)と、n型不純物(ここでは、Si)の活性化率を考慮し、p型不純物(ここでは、Mg)およびp型不純物(ここでは、Si)のコドープ層CD中への導入量を調整することが好ましい。
【0123】
次いで、コドープ層CD中のp型不純物(ここでは、Mg)を活性化するための熱処理を施す。例えば、窒素雰囲気で、800℃、30分間の熱処理を行う。これにより、p型不純物(ここでは、Mg)が活性化する。なお、n型不純物(ここでは、Si)は、活性化しやすく、熱処理をするまでもなく、活性化している。
【0124】
次いで、n型半導体領域CDnの形成領域上に、高濃度の水素を含有する絶縁膜およびカバー絶縁膜の積層膜(図示せず、
図7参照)を形成する。この積層膜は、実施の形態1と同様にして形成することができる。次いで、熱処理を施すことにより、コドープ層CDに水素(H)を導入する。この水素(H)の導入により、活性化されていたp型不純物(ここでは、Mg)が不活性化し、n型半導体領域CDn1となる(
図19)。なお、実施の形態1で説明したように、イオン注入法を用いて、コドープ層CDに水素(H)を導入してもよい。
【0125】
なお、コドープ層CDの膜厚が大きい場合には、水素(H)の導入工程を複数回(例えば、2回)に分けてもよい。例えば、
図20に示すように、GaN層を2.5μm程度の膜厚で成長させ、高濃度の水素を含有する絶縁膜(図示せず)から水素(H)を導入し、さらに、GaN層(CD)を2.5μm程度の膜厚で成長させ、高濃度の水素を含有する絶縁膜(図示せず)から水素(H)を導入する(
図19参照)。
【0126】
次いで、
図21に示すように、n型半導体領域CDn1上に、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEを形成する。ゲート絶縁膜GIおよびゲート電極GEは、例えば、実施の形態1の場合と同様にして形成することができる。
【0127】
次いで、
図22に示すように、ゲート電極GEをマスクとして、水素(H)をゲート電極GE間にイオン注入する。この後、熱処理を施し、水素(H)により、活性化されていたp型不純物(ここでは、Mg)を不活性化し、ゲート電極GE間であって、p型半導体領域CDpの上層部にn型半導体領域CDn2を形成する。
【0128】
次いで、
図23に示すように、ゲート電極GE上に層間絶縁膜ILを形成し、次いで、n型半導体領域CDn2上の層間絶縁膜ILを除去することにより、開口部を形成する。次いで、この開口部内を含む層間絶縁膜IL上に、導電性膜を堆積し、パターニングすることにより、ソース電極SEを形成する。次いで、基板Sの裏面に、ドレイン電極DEを形成する(
図17参照)。
【0129】
以上の工程により、本実施の形態の半導体装置を形成することができる。なお、上記工程は、一例であり、上記工程以外の工程により、本実施の形態の半導体装置を製造してもよい。
【0130】
このように、本実施の形態においても、p型不純物およびn型不純物を含有する窒化物半導体層であるコドープ層CDの一部の領域に、水素を導入することにより、当該領域のp型不純物を不活性化することができる。これにより、不活性化した領域は、n型半導体領域CDn1、CDn2となり、不活性化していない領域は、p型半導体領域CDpのままとなるため、同一層内に、n型半導体領域CDn1、CDn2とp型半導体領域CDpを形成することができる。これらの領域中の不純物はエピタキシャル成長により結晶内の理想的な位置に配置され、また、イオン注入のような結晶が破壊されやすい方法で注入されたものではないため、良好な半導体特性を実現することができる。また、実施の形態1で説明したように、イオン注入法や再成長法を用いて、同一層内に、n型半導体領域とp型半導体領域を形成する場合と比較し、種々のメリットを奏する。
【0131】
なお、上記工程においては、n型半導体領域CDn1を固相拡散法で形成し、n型半導体領域CDn2をイオン注入法で形成したが、n型半導体領域CDn1をイオン注入法で形成し、n型半導体領域CDn2を固相拡散法で形成してもよい。また、n型半導体領域CDn1、CDn2の双方を固相拡散法で形成してもよく、また、イオン注入法で形成してもよい。
【0132】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0133】
例えば、上記実施の形態1〜3においては、主にMISFETを例に説明したが、同一層内にpn接合部を有する半導体素子には種々のものがある。例えば、このようなpn接合部は、パワーエレクトロニクス用デバイスや高周波増幅デバイス、スイッチング電源やインバータなどの回路、パワーモジュール、高周波アンプ等の種々の半導体装置に適用可能である。