特許第6560120号(P6560120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6560120ECL製造用の新規ビス−イリジウム錯体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560120
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】ECL製造用の新規ビス−イリジウム錯体
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20190805BHJP
   C07D 221/12 20060101ALI20190805BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20190805BHJP
   G01N 21/76 20060101ALI20190805BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20190805BHJP
【FI】
   C07F15/00 ECSP
   C07D221/12
   C09K11/06
   G01N21/76
   G02F1/15 506
【請求項の数】11
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-524677(P2015-524677)
(86)(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公表番号】特表2015-527338(P2015-527338A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】EP2013002324
(87)【国際公開番号】WO2014019710
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年7月29日
【審判番号】不服2018-3064(P2018-3064/J1)
【審判請求日】2018年3月2日
(31)【優先権主張番号】12179056.2
(32)【優先日】2012年8月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ツィシュースキ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・コーラ,ルイーザ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス・エルナンデス,ヘスス・ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼル,ハンス−ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ロンギ,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】フォンデンホフ,ガストン・フーベルトゥス・マリア
【合議体】
【審判長】 佐藤 健史
【審判官】 冨永 保
【審判官】 齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−169474(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/079741(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/134013(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/066686(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/013685(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102168104(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0209048(US,A1)
【文献】 特表2005−522405(JP,A)
【文献】 特表昭64−500146(JP,A)
【文献】 Chem.Eur.J.,(2009),15,pp.136−148
【文献】 Journal of Organometallic Chemistry,(1998),558,pp.103−110
【文献】 Magn.Reson.Chem.,(2011),49,pp.816−823
【文献】 J.Mass.Spectrom.,(2012),47,pp.34−40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F,C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのイリジウムベースの化合物:
【化1】
[式中:
各Xは、独立してクロロ、ブロモ、または、ヨードであり、
各R1〜R12は、独立して、水素、置換または非置換アルキルオキシ、置換または非置換スルホアルキル、置換または非置換アリールスルホニルであり、
ここで、R1〜R12のいずれかに置換基が存在する場合、R1〜R12における置換基は、それぞれ独立して、ハライド、シアノ基またはニトロ基、アミノ、アルキルアミノ、アルキルアンモニウム、カルボキシ、カルバモイル、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールオキシ、アルキルアリールオキシ、ポリエチレンオキシ、ポリプロピレンオキシ、スルファニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、スルホ、スルフィノ、スルフェノ、スルホネート、スルファモイル、ホスホノ、ヒドロキシホスフィノイル、ヒドロキシル−アルキル−ホスフィノイルから選択され、
ここで、前記R1〜R12にアルキルが存在する場合、前記アルキルは、1〜20炭素原子の長さをもつ直鎖もしくは分岐鎖アルキルであり、ここで、前記直鎖もしくは分岐鎖アルキルは、鎖内においてO、N、PおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子で置換されていてもよく、
前記R1〜R12にアリールが存在する場合、前記アリールは、5、6もしくは7員環であり、ここで、前記5、6もしくは7員環は、環を構成する原子がO、SおよびNから選択される1〜3個のヘテロ原子で置換されていてもよく、
ただし、R1〜R12のうち少なくとも1つは、スルホ−アルキル、スルホ−アルコキシ、またはその塩(=スルホネート)であり、その際、対イオンはアルカリ金属の属からのカチオンである。]
【請求項2】
R1〜R12のうち少なくとも1つは、スルホ−メチル、C2〜C4アルキル鎖をもつスルホ−アルコキシ、またはその塩(=スルホネート)であり、その際、対イオンはアルカリ金属の属からのカチオンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
イリジウム3ベースの電気化学発光性標識の製造方法における請求項1または2に記載の化合物の使用であって、該電気化学発光性標識は式Iに含まれるフェニルフェナントリジン残基2残基、イリジウム3および第3配位子を含むものである、前記使用。
【請求項4】
第3配位子が、ピコリン酸の誘導体、アゾリルピリジンの誘導体、ビピリジルの誘導体、フェニル−ピリジンの誘導体、およびフェニルアゾールの誘導体からなる群から選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
第3配位子がピコリン酸の誘導体である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
第3配位子がアゾリルピリジンの誘導体である、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
第3配位子がビピリジルの誘導体である、請求項4に記載の使用。
【請求項8】
第3配位子がフェニル−ピリジンの誘導体である、請求項4に記載の使用。
【請求項9】
第3配位子がフェニルアゾールの誘導体である、請求項4に記載の使用。
【請求項10】
電気化学発光性標識を製造するための方法であって、請求項1または2に記載のイリジウムベースの化合物を第3配位子と共に有機溶媒中で不活性ガス雰囲気下にインキュベートする工程を含む方法。
【請求項11】
電気化学発光性標識の製造における出発物質としての、請求項1または2に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビス−イリジウム錯体、および発光性標識、特に電気化学発光性標識の製造におけるそれらの使用、およびそのようなビス−イリジウム錯体をベースとするECL標識を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的に発生する化学発光(電気化学発光とも呼ばれ、ECLと略される)は、電極で発生した化学種が高エネルギー電子伝達反応を受けて励起状態を形成し、それにより光を発するプロセスである。最初の詳細なECL研究は1960年代半ばにHerculesおよびBardらにより記載された。約50年間の研究の後、ECLは現在きわめて有力な分析手法になり、たとえばイムノアッセイ、食品および水の検査、ならびに生物兵器作用物質検出の領域で広く用いられている。
【0003】
有機発光デバイス(organic light emitting device(OLED))に使用するものとして関心がもたれると思われるきわめて多数の化合物がある。これらの化合物は固体材料中に用いるのに適切であり、あるいは有機流体に溶解できる。しかし、たとえば生物試料からの分析物の検出に必要な水性媒体中におけるそれらの有用性に関しては結論を得ることができない。
【0004】
一般に、ECLベースの検出法は、Ru(II)を金属イオンとして含む水溶性ルテニウム錯体の使用に基づく。
この数十年間にわたってなされたかなりの改良にもかかわらず、より高感度の電気化学発光ベースの in vitro 診断アッセイがなお著しく必要とされている。
【0005】
今回、意外にも、イリジウムベースの特定のIr(III)発光性錯体が将来の高感度ECLベース検出法のためのきわめて有望な標識であり、以下に開示する新規なビス−イリジウム錯体をきわめて有利にそのようなECL標識の製造に使用できることが見出された。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、式Iのイリジウムベースの化学発光性化合物を開示する:
【0007】
【化1】
【0008】
[式中:
各Xは、独立してクロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、シアナトまたはジフェニルホスファニルであり、
各R1〜R12は、独立して、水素、ハライド、シアノ基またはニトロ基、アミノ、置換アミノ、アルキルアミノ、置換アルキルアミノ、アリールアミノ、置換アリールアミノ、アルキルアンモニウム、置換アルキルアンモニウム、カルボキシ、カルボキレート、カルボン酸エステル、カルバモイル、ヒドロキシ、置換または非置換アルキルオキシ、置換または非置換アリールオキシ、スルファニル、置換または非置換アルキルスルホニル、置換または非置換アリールスルホニル、スルホ、スルフィノ、スルフェノ、スルホネート、スルフィネート、スルフェネート、スルファモイル、スルホキシド、ホスホノ、ヒドロキシホスフィノイル、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル、ホスホネート、ホスフィネート、あるいはR13であり、その際、R13は、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、分岐鎖アルキル、置換された分岐鎖アルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アミノ−アルキル、置換アミノ−アルキル、アミノ−アルコキシ、置換アミノ−アルコキシ、アミノ−アリール、置換アミノ−アリール、アミノ−アリールオキシ、置換アミノ−アリールオキシであり、
R1〜R12内において、2つの隣接Rは芳香族環または置換された芳香族環を形成することができ、その際、置換基は水素、アルキル、置換アルキル、ハライド、シアノ基またはニトロ基、親水基:アミノ、置換アミノ、アルキルアミノ、置換アルキルアミノ、アルキルアンモニウム、置換アルキルアンモニウム、カルボキシ、カルボキレート、カルボン酸エステル、カルバモイル、ヒドロキシ、置換または非置換アルキルオキシ、置換または非置換アリールオキシ、スルファニル、置換または非置換アルキルスルホニル、置換または非置換アリールスルホニル、スルホ、スルフィノ、スルフェノ、スルホネート、スルフィネート、スルフェネート、スルファモイル、スルホキシド、ホスホノ、ヒドロキシホスフィノイル、ヒドロキシル−アルキル−ホスフィノイル、ホスホネート、ホスフィネートから選択され、あるいは
R1〜R12内において、2つの隣接Rは脂肪族環または置換された脂肪族環を形成することができ、その際、置換基は水素、アルキル、置換アルキル、ハライド、シアノ基またはニトロ基、親水基:アミノ、置換アミノ、アルキルアミノ、置換アルキルアミノ、アルキルアンモニウム、置換アルキルアンモニウム、カルボキシ、カルボキレート、カルボン酸エステル、カルバモイル、ヒドロキシ、置換または非置換アルキルオキシ、置換または非置換アリールオキシ、スルファニル、置換または非置換アルキルスルホニル、置換または非置換アリールスルホニル、スルホ、スルフィノ、スルフェノ、スルホネート、スルフィネート、スルフェネート、スルファモイル、スルホキシド、ホスホノ、ヒドロキシホスフィノイル、ヒドロキシル−アルキル−ホスフィノイル、ホスホネート、ホスフィネートから選択され、
R1〜R13のいずれかに置換基が存在する場合、R1〜R13における置換基は、それぞれ独立して、ハライド、シアノ基またはニトロ基、親水基:アミノ、アルキルアミノ、アルキルアンモニウム、カルボキシ、カルボキレート、カルボン酸エステル、カルバモイル、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールオキシ、アルキルアリールオキシ、ポリエチレンオキシ、ポリプロピレンオキシ、スルファニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、スルホ、スルフィノ、スルフェノ、スルホネート、スルフィネート、スルフェネート、スルファモイル、スルホキシド、ホスホノ、ヒドロキシホスフィノイル、ヒドロキシル−アルキル−ホスフィノイル、ホスホネート、ホスフィネートから選択され、
アルキルは、1〜20炭素原子の長さをもつ直鎖もしくは分岐鎖アルキル、またはO、N、PおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む1〜20原子の長さをもつヘテロアルキル鎖であり、アリールは、5、6もしくは7員アリール環系、またはO、SおよびNから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5、6もしくは7員ヘテロアリール環系であり、
ただし、R1〜R12のうち少なくとも1つは、スルホ−アルキル、スルホ−アリール、スルホ−アルコキシ、スルホ−アリールオキシ、スルホ、スルフィノ−アルキル、スルフィノ−アリール、スルフィノ−アルコキシ、スルフィノ−アリールオキシ、スルフィノ、スルフェノ−アルキル、スルフェノ−アリール、スルフェノ−アルコキシ、スルフェノ−アリールオキシ、スルフェノ、スルファモイル−アルキル、スルファモイル−アリール、スルファモイル−アルコキシ、スルファモイル−アリールオキシ、スルファモイル、アルカンスルホニル−アルキル、アルカンスルホニル−アリール、アルカンスルホニル、アレーンスルホニル−アルキル、もしくはアレーンスルホニル−アリール、もしくはアレーンスルホニル、スルホアミノ−アルキル、スルホアミノ−アリール、スルホアミノ−アルコキシ、スルホアミノ−アリールオキシ、スルホアミノ、スルフィノアミノ−アルキル、スルフィノアミノ−アリール、スルフィノアミノ−アルコキシ、スルフィノアミノ−アリールオキシ、スルフィノアミノ、アルカンスルホニルアミノ−アルキル、アルカンスルホニルアミノ−アリール、アルカンスルホニルアミノ−アルコキシ、アルカンスルホニルアミノ−アリールオキシ、アルカンスルホニルアミノ、アレーンスルホニルアミノ−アルキル、アレーンスルホニルアミノ−アリール、アレーンスルホニルアミノ−アルコキシ、アレーンスルホニルアミノ−アリールオキシ、アレーンスルホニルアミノ、アルカンスルフィニルアミノ−アルキル、アルカンスルフィニルアミノ−アリール、アルカンスルフィニルアミノ−アルコキシ、アルカンスルフィニルアミノ−アリールオキシ、アルカンスルフィニルアミノ、アレーンスルフィニルアミノ−アルキル、アレーンスルフィニルアミノ−アリール、アレーンスルフィニルアミノ−アルコキシ、アレーンスルフィニルアミノ−アリールオキシ、アレーンスルフィニルアミノ、ホスホノ−アルキル、ホスホノ−アリール、ホスホノ−アルキルオキシ、ホスホノ−アリールオキシ、ホスホノ、ヒドロキシホスフィノイル−アルキル、ヒドロキシホスフィノイル−アリール、ヒドロキシホスフィノイル−アルキルオキシ、ヒドロキシホスフィノイル−アリールオキシ、ヒドロキシホスフィノイル、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル−アルキル、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル−アリール、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル−アルキルオキシ、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル−アリールオキシ、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル、ホスホノアミノ−アルキル、ホスホノアミノ−アリール、ホスホノアミノ−アルコキシ、ホスホノアミノ−アリールオキシ、ホスホノアミノ、または化学的に調和する場合は前記置換基の塩である]。
【0009】
本発明はさらに、イリジウム3ベースの発光性化合物の製造における、本発明において開示する化合物の使用に関する。さらに、本発明は、電気化学発光性化合物を製造するための方法を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前記に述べたように、電気化学発光性標識(ECL標識)の製造に使用できる、新規なビス−イリジウム錯体が必要とされている。
式Iの新規なビス−イリジウム錯体
本発明は、式Iのイリジウムベースの化学発光性化合物に関する:
【0011】
【化2】
【0012】
[式中:
各Xは、独立してクロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、シアナトまたはジフェニルホスファニルであり、
各R1〜R12は、独立して、水素、ハライド、シアノ基またはニトロ基、アミノ、置換アミノ、アルキルアミノ、置換アルキルアミノ、アリールアミノ、置換アリールアミノ、アルキルアンモニウム、置換アルキルアンモニウム、カルボキシ、カルボキレート、カルボン酸エステル、カルバモイル、ヒドロキシ、置換または非置換アルキルオキシ、置換または非置換アリールオキシ、スルファニル、置換または非置換アルキルスルホニル、置換または非置換アリールスルホニル、スルホ、スルフィノ、スルフェノ、スルホネート、スルフィネート、スルフェネート、スルファモイル、スルホキシド、ホスホノ、ヒドロキシホスフィノイル、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル、ホスホネート、ホスフィネート、あるいはR13であり、その際、R13は、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、分岐鎖アルキル、置換された分岐鎖アルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アミノ−アルキル、置換アミノ−アルキル、アミノ−アルコキシ、置換アミノ−アルコキシ、アミノ−アリール、置換アミノ−アリール、アミノ−アリールオキシ、置換アミノ−アリールオキシであり、
R1〜R12内において、2つの隣接Rは芳香族環または置換された芳香族環を形成することができ、その際、置換基は水素、アルキル、置換アルキル、ハライド、シアノ基またはニトロ基、親水基:アミノ、置換アミノ、アルキルアミノ、置換アルキルアミノ、アルキルアンモニウム、置換アルキルアンモニウム、カルボキシ、カルボキレート、カルボン酸エステル、カルバモイル、ヒドロキシ、置換または非置換アルキルオキシ、置換または非置換アリールオキシ、スルファニル、置換または非置換アルキルスルホニル、置換または非置換アリールスルホニル、スルホ、スルフィノ、スルフェノ、スルホネート、スルフィネート、スルフェネート、スルファモイル、スルホキシド、ホスホノ、ヒドロキシホスフィノイル、ヒドロキシル−アルキル−ホスフィノイル、ホスホネート、ホスフィネートから選択され、あるいは
R1〜R12内において、2つの隣接Rは脂肪族環または置換された脂肪族環を形成することができ、その際、置換基は水素、アルキル、置換アルキル、ハライド、シアノ基またはニトロ基、親水基:アミノ、置換アミノ、アルキルアミノ、置換アルキルアミノ、アルキルアンモニウム、置換アルキルアンモニウム、カルボキシ、カルボキレート、カルボン酸エステル、カルバモイル、ヒドロキシ、置換または非置換アルキルオキシ、置換または非置換アリールオキシ、スルファニル、置換または非置換アルキルスルホニル、置換または非置換アリールスルホニル、スルホ、スルフィノ、スルフェノ、スルホネート、スルフィネート、スルフェネート、スルファモイル、スルホキシド、ホスホノ、ヒドロキシホスフィノイル、ヒドロキシル−アルキル−ホスフィノイル、ホスホネート、ホスフィネートから選択され、
R1〜R13のいずれかに置換基が存在する場合、R1〜R13における置換基は、それぞれ独立して、ハライド、シアノ基またはニトロ基、親水基:アミノ、アルキルアミノ、アルキルアンモニウム、カルボキシ、カルボキレート、カルボン酸エステル、カルバモイル、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールオキシ、アルキルアリールオキシ、ポリエチレンオキシ、ポリプロピレンオキシ、スルファニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、スルホ、スルフィノ、スルフェノ、スルホネート、スルフィネート、スルフェネート、スルファモイル、スルホキシド、ホスホノ、ヒドロキシホスフィノイル、ヒドロキシル−アルキル−ホスフィノイル、ホスホネート、ホスフィネートから選択され、
アルキルは、1〜20炭素原子の長さをもつ直鎖もしくは分岐鎖アルキル、またはO、N、PおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む1〜20原子の長さをもつヘテロアルキル鎖であり、アリールは、5、6もしくは7員アリール環系、またはO、SおよびNから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5、6もしくは7員ヘテロアリール環系であり、
ただし、R1〜R12のうち少なくとも1つは、スルホ−アルキル、スルホ−アリール、スルホ−アルコキシ、スルホ−アリールオキシ、スルホ、スルフィノ−アルキル、スルフィノ−アリール、スルフィノ−アルコキシ、スルフィノ−アリールオキシ、スルフィノ、スルフェノ−アルキル、スルフェノ−アリール、スルフェノ−アルコキシ、スルフェノ−アリールオキシ、スルフェノ、スルファモイル−アルキル、スルファモイル−アリール、スルファモイル−アルコキシ、スルファモイル−アリールオキシ、スルファモイル、アルカンスルホニル−アルキル、アルカンスルホニル−アリール、アルカンスルホニル、アレーンスルホニル−アルキル、もしくはアレーンスルホニル−アリール、もしくはアレーンスルホニル、スルホアミノ−アルキル、スルホアミノ−アリール、スルホアミノ−アルコキシ、スルホアミノ−アリールオキシ、スルホアミノ、スルフィノアミノ−アルキル、スルフィノアミノ−アリール、スルフィノアミノ−アルコキシ、スルフィノアミノ−アリールオキシ、スルフィノアミノ、アルカンスルホニルアミノ−アルキル、アルカンスルホニルアミノ−アリール、アルカンスルホニルアミノ−アルコキシ、アルカンスルホニルアミノ−アリールオキシ、アルカンスルホニルアミノ、アレーンスルホニルアミノ−アルキル、アレーンスルホニルアミノ−アリール、アレーンスルホニルアミノ−アルコキシ、アレーンスルホニルアミノ−アリールオキシ、アレーンスルホニルアミノ、アルカンスルフィニルアミノ−アルキル、アルカンスルフィニルアミノ−アリール、アルカンスルフィニルアミノ−アルコキシ、アルカンスルフィニルアミノ−アリールオキシ、アルカンスルフィニルアミノ、アレーンスルフィニルアミノ−アルキル、アレーンスルフィニルアミノ−アリール、アレーンスルフィニルアミノ−アルコキシ、アレーンスルフィニルアミノ−アリールオキシ、アレーンスルフィニルアミノ、ホスホノ−アルキル、ホスホノ−アリール、ホスホノ−アルキルオキシ、ホスホノ−アリールオキシ、ホスホノ、ヒドロキシホスフィノイル−アルキル、ヒドロキシホスフィノイル−アリール、ヒドロキシホスフィノイル−アルキルオキシ、ヒドロキシホスフィノイル−アリールオキシ、ヒドロキシホスフィノイル、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル−アルキル、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル−アリール、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル−アルキルオキシ、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル−アリールオキシ、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル、ホスホノアミノ−アルキル、ホスホノアミノ−アリール、ホスホノアミノ−アルコキシ、ホスホノアミノ−アリールオキシ、ホスホノアミノ、または化学的に調和する場合は前記置換基の塩である]。
【0013】
式Iによる化合物を、本明細書中でビス−イリジウム錯体またはイリジウム二量体(錯体)と呼ぶ。それは二核(イリジウム)錯体であり、ジ−イリジウム錯体とも命名される。
【0014】
前記に定めるように、式I中の2つの“架橋基”Xはそれぞれ、独立してクロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、シアナトまたはジフェニルホスファニルである。
【0015】
1態様において、式I中の2つの“架橋基”Xはそれぞれ、独立してクロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシル、メトキシおよびシアナトからなる群から選択される。
1態様において、式I中の2つの“架橋基”Xはそれぞれ、独立してクロロ、ブロモおよびヨードからなる群から選択される。
【0016】
1態様において、式I中の2つの“架橋基”Xはそれぞれクロロである。
当業者に認識されるように、特定の態様において、式I中の2つの“架橋基”Xは同一であり、前記に定めるものであろう。
【0017】
1態様において、R1〜R13のいずれかに置換基が存在する場合、R1〜R13における置換基は、それぞれ独立して、ハライド、シアノ基またはニトロ基、親水基:アミノ、アルキルアミノ、アルキルアンモニウム、カルボキシ、カルボキレート、カルボン酸エステル、カルバモイル、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールオキシ、アルキルアリールオキシ、ポリエチレンオキシ、ポリプロピレンオキシ、スルファニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、スルホ、スルホネート、およびホスホノから選択される。1態様において、R1〜R13のいずれかに置換基が存在する場合、R1〜R13における置換基は、それぞれ独立して、ハライド、アミノ、カルボキシ、カルボキレート、カルボン酸エステル、ヒドロキシ、アルキルオキシ、ポリエチレンオキシ、アルキルスルホニル、スルホ、およびスルホネートから選択される。
【0018】
1態様において、R1〜R13のいずれかに置換基が存在する場合、R1〜R13における置換基は、それぞれ独立して、アミノ、カルボキシ、ヒドロキシ、およびスルホおよびスルホネートから選択される。
【0019】
1態様において、R1〜R13のいずれにも置換基が存在しない。
付随する特許請求の範囲を含めて本明細書中で用いる置換基は、当業者に一般的に知られている意味をもつ。
【0020】
アルキルは、好ましくは、1〜20炭素原子の長さをもつ、好ましくは1〜10炭素原子の長さをもつ、特に好ましくは1〜6炭素原子の長さをもつ、直鎖もしくは分岐鎖アルキル;またはO、N、PおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む1〜20原子の長さをもつ、好ましくは1〜10炭素原子の長さをもつ、ヘテロアルキル鎖である。アルキル基の例にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert.−ブチル、異性体ペンチル類、異性体ヘキシル類、異性体ヘプチル類、異性体オクチル類、およびドデシルが含まれるが、これらに限定されない。特定の好ましい態様において、アルキルはメチルまたはエチルである。
【0021】
用語アルコキシとアルキルオキシ、および置換アルキルと置換アルコキシは、それぞれ互換性をもって使用できる。アルコキシおよびアルキルオキシは、式−ORの部分を意味し、ここでRは、好ましくは本明細書中で前記に定めたアルキル部分である。アルコキシ部分の例にはメトキシ、エトキシ、およびイソプロポキシが含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
アリールは、好ましくは5、6もしくは7員アリール環系、好ましくは6員アリール環系、またはO、SおよびNから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5、6もしくは7員ヘテロアリール環系、好ましくは6員ヘテロアリール環系である。特定の好ましい態様において、アリールはフェニルである。
【0023】
1態様において、式Iにおいて各R1〜R12は、独立して水素、ヒドロキシ、置換または非置換アルキルオキシ、置換または非置換アリールオキシ、スルファニル、置換または非置換アルキルスルホニル、置換または非置換アリールスルホニル、スルホ、スルフィノ、スルフェノ、スルホネート、スルフィネート、スルフェネート、スルファモイルまたはスルホキシドである。
【0024】
1態様において、式Iにおいて各R1〜R12は、独立して水素、置換または非置換アルキルオキシ、置換または非置換アリールオキシ、置換または非置換アルキルスルホニル、置換または非置換アリールスルホニル、スルホネート、スルフィネート、スルフェネート、スルファモイルまたはスルホキシドである。
【0025】
1態様において、式Iにおいて各R1〜R12は、独立して水素、置換または非置換アルキルオキシ、置換または非置換アルキルスルホニル、置換または非置換アリールスルホニル、スルホネートまたはスルホキシドである。
【0026】
1態様において、式Iにおいて各R1〜R12は、独立して水素、非置換アルキルオキシ、非置換アルキルスルホニル、非置換アリールスルホニル、スルホネートまたはスルホキシドである。
【0027】
1態様において、R1〜R12のうち少なくとも1つは、置換された、または置換されていない、下記のものから選択される基である:スルホ−アルキル、スルホ−アリール、スルホ−アルコキシ、スルホ−アリールオキシ、スルホ、スルファモイル−アルキル、スルファモイル−アリール、スルファモイル−アルコキシ、スルファモイル−アリールオキシ、スルファモイル、アルカンスルホニル−アルキル、アルカンスルホニル−アリール、アルカンスルホニル、アレーンスルホニル−アルキル、アレーンスルホニル−アリール、アレーンスルホニル、アルカンスルホニルアミノ−アルキル、アルカンスルホニルアミノ−アリール、アルカンスルホニルアミノ−アルコキシ、アルカンスルホニルアミノ−アリールオキシ、アルカンスルホニルアミノ、アレーンスルホニルアミノ−アルキル、アレーンスルホニルアミノ−アリール、アレーンスルホニルアミノ−アルコキシ、アレーンスルホニルアミノ−アリールオキシ、アレーンスルホニルアミノ、ホスホノ−アルキル、ホスホノ−アリール、ホスホノ−アルキルオキシ、ホスホノ−アリールオキシ、ホスホノ、ヒドロキシホスフィノイル−アルキル、ヒドロキシホスフィノイル−アリール、ヒドロキシホスフィノイル−アルキルオキシ、ヒドロキシホスフィノイル−アリールオキシ、ヒドロキシホスフィノイル、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル−アルキル、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル−アリール、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル−アルキルオキシ、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル−アリールオキシ、ヒドロキシ−アルキル−ホスフィノイル、または化学的に調和する場合は前記置換基の塩。
【0028】
1態様において、R1〜R12のうち少なくとも1つは、置換された、または置換されていない、スルホ−アルキル、スルホ−アリール、スルホ−アルコキシ、スルホ−アリールオキシ、スルホ、またはその塩(=スルホネート)から選択される基であり、その際、対イオンは好ましくはアルカリ金属の属からのカチオンである。
【0029】
1態様において、R1〜R12のうち少なくとも1つは、スルホ−アルキル、スルホ−アリール、スルホ−アルコキシ、スルホ−アリールオキシ、スルホ、またはその塩(=スルホネート)であり、その際、対イオンは好ましくはアルカリ金属の属からのカチオンである。
【0030】
1態様において、R1〜R12のうち少なくとも1つは、置換された、または置換されていない、スルホ−アルキル、スルホ−アルコキシ、スルホ、またはその塩(=スルホネート)から選択される基であり、その際、対イオンはアルカリ金属の属からのカチオンである物。
【0031】
1態様において、R1〜R12のうち少なくとも1つは、スルホ−アルキル、スルホ−アルコキシ、スルホ、またはその塩(=スルホネート)であり、その際、対イオンはアルカリ金属の属からのカチオンである物。
【0032】
1態様において、R1〜R12のうち少なくとも1つは、スルホ−メチル、C2〜C4アルキル鎖をもつスルホ−アルコキシ、またはその塩(=スルホネート)であり、その際、対イオンはアルカリ金属の属からのカチオンである。
【0033】
1態様において、基R1〜R12のうち少なくとも1つはスルホ基である。
1態様において、対イオンはリチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、およびセシウムカチオンからなる群から選択されるアルカリ金属カチオンである。
【0034】
1態様において、対イオンはナトリウムカチオンおよびセシウムカチオンからなる群から選択されるアルカリ金属カチオンである。
1態様において、対イオンはセシウムカチオンである。
【0035】
1態様において、式Iにおいて2つの“架橋基”Xはそれぞれ、独立してクロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシル、メトキシおよびシアナトからなる群から選択され、
各R1〜R12は、独立して水素、ヒドロキシ、置換または非置換アルキルオキシ、置換または非置換アリールオキシ、スルファニル、置換または非置換アルキルスルホニル、置換または非置換アリールスルホニル、スルホ、スルフィノ、スルフェノ、スルホネート、スルフィネート、スルフェネート、スルファモイルまたはスルホキシドであり、
R1〜R12のいずれかに置換基が存在する場合、R1〜R13における置換基は、それぞれ独立して、ハライド、シアノ基またはニトロ基、親水基:アミノ、アルキルアミノ、アルキルアンモニウム、カルボキシ、カルボキレート、カルボン酸エステル、カルバモイル、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールオキシ、アルキルアリールオキシ、ポリエチレンオキシ、ポリプロピレンオキシ、スルファニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、スルホ、スルホネート、およびホスホノから選択され、
R1〜R12のうち少なくとも1つは、置換された、または置換されていない、スルホ−アルキル、スルホ−アリール、スルホ−アルコキシ、スルホ−アリールオキシ、スルホ、またはその塩(=スルホネート)から選択される基であり、その際、対イオンは好ましくはアルカリ金属の属からのカチオンである。
【0036】
1態様において、式Iに含まれるフェニルフェナントリジン残基は、以下に挙げる置換フェニルフェナントリジン類から選択される。
【0037】
【化3-1】
【0038】
【化3-2】
【0039】
1態様において、式Iに含まれるフェニルフェナントリジン残基は上記の置換フェニルフェナントリジン類から選択され、Xはクロロである。
前記に定める式Iの化合物のいずれかの態様の組合わせはいずれも本発明の範囲に含まれるものとする。
【0040】
新規な式Iのビス−イリジウム錯体を製造するための方法
本発明は、他の観点において、式Iの化合物を製造するための新規方法に関する。
式Iによる化合物は、たとえば(Nonoyama, M., J. Organomet. Chem. 86 (1975) 263-267に基づいて)下記に従って、たとえば実施例3に示すように合成できる。
【0041】
したがって、1観点において、本発明は前記に定める式Iの化合物の製造方法であって、下記の工程を含む方法に関する:
前記に式Iの化合物により定めるフェニル−フェナントリジン残基と、三ハロゲン化イリジウム、好ましくは三塩化イリジウム 3水和物を、適切であれば溶媒の存在下で反応させて、前記に定める式Iの化合物を得る。
【0042】
この方法を溶媒の存在下で実施する場合、本発明の方法を実施するのに適切な溶媒には有機溶媒を含めることができる。これらには、好ましくは2−エトキシエタノールまたはメトキシエタノール、およびそれと水の混合物が含まれる;2−エトキシエタノール/水の混合物が好ましい。
【0043】
1態様において、この方法は2−エトキシエタノール/水の混合物中で実施される。
1態様において、この方法は無機または有機塩基の存在下で実施される。これには、好ましくはトリアルキルアミン塩基が含まれる。
【0044】
1態様において、この方法は不活性ガス雰囲気下で、好ましくは窒素下で実施される。
この方法によれば、たとえば下記のスキーム1に示すように式Iの化合物を得ることができる。
【0045】
【化4】
【0046】
スキーム1:式Iの化合物の合成
2-ethoxyethanol : 2−エトキシエタノール; reflux : 還流
出発物質として用いるフェニル−フェナントリジン類、たとえばスルホネート置換フェニル−フェナントリジン類は、たとえば実施例(参照:実施例3.1および3.3)に示す方法により得ることができる。
【0047】
化合物(4−フェナントリジン−6−イル−フェニル)−メタンスルホン酸イソブチルエステルは新規であり、本発明の対象物でもある。
電気化学発光性標識(ECL標識)を製造するための本発明のビス−イリジウム錯体の使用
1観点において、式Iによる化合物、すなわち4つのフェニル−フェナントリジン誘導体および2つのイリジウム3原子を含むイリジウム二量体錯体を、発光性標識の製造に使用する。当業者に認識されるように、そのような標識は単量体または単量体Ir3錯体であり、式Iにより定める2つのフェニル−フェナントリジン誘導体、および第3配位子を含む。好ましくは、得られる発光性標識は電気化学発光性標識である。
【0048】
第3配位子は、得られるイリジウム標識の発光特性に強く影響を及ぼす。
1態様において、本発明は、発光性標識の製造における式Iによるビス−イリジウム錯体の使用に関する;その際、第3配位子は、ピコリン酸の誘導体、アゾリルピリジンの誘導体、ビピリジルの誘導体、フェニル−ピリジンの誘導体、およびフェニルアゾールの誘導体からなる群から選択される。
【0049】
1態様において、本発明は、式Iにより定める2つのフェニル−フェナントリジン誘導体、および第3配位子としてのピコリン酸の誘導体(たとえば、EP 12179048.9に記載)を含む発光性標識の製造方法における、式Iによるビス−イリジウム錯体の使用に関する。
【0050】
“ピコリン酸の誘導体”は、式IIにより定められる:
【0051】
【化5】
【0052】
[式中、R1〜R4は式IのR1〜R12について前記に定めたものであり、ただし、R1〜R4のうち少なくとも1つは−Q−Zであり、Qはリンカーまたは共有結合であり、Zは官能基である]。
【0053】
R1〜R4の好ましい態様は、式IのR1〜R12について前記に定めたものである。
QおよびZそれぞれの好ましい態様を後記に定める。
1態様において、R1〜R4のうちの1つは−Q−Zであり、その際、Qはリンカーまたは共有結合であり、Zは官能基であり、他の基R1〜R4は水素である。
【0054】
1態様において、本発明は、式Iにより定める2つのフェニル−フェナントリジン誘導体、および第3配位子としてのアゾリルピリジンの誘導体(たとえば、EP 12179050.5に記載)を含む発光性標識の製造方法における、式Iによるビス−イリジウム錯体の使用に関する。
【0055】
“アゾリルピリジンの誘導体”は、式IIIにより定められる:
【0056】
【化6】
【0057】
[式中、
XはCまたはNを表わし、
YはCまたはNを表わし、
R1〜R6は式IのR1〜R12について前記に定めたものであり、ただし、R1〜R6のうち少なくとも1つは−Q−Zであり、
Qはリンカーまたは共有結合であり、
Zは官能基である]。
【0058】
R1〜R6の好ましい態様は、式IのR1〜R12について前記に定めたものである。
QおよびZそれぞれの好ましい態様を後記に定める。
1態様において、R1〜R6のうちの1つは−Q−Zであり、その際、Qはリンカーまたは共有結合であり、Zは官能基であり、他の基R1〜R6は水素である。
【0059】
1態様において、本発明は、式Iにより定める2つのフェニル−フェナントリジン誘導体、および第3配位子としてのビピリジルの誘導体(たとえば、EP 12179054.7に記載)を含む発光性標識の製造方法における、式Iによるビス−イリジウム錯体の使用に関する。
【0060】
“ビピリジルの誘導体”は、式IVにより定められる:
【0061】
【化7】
【0062】
[式中、
R1〜R8は式IのR1〜R12について前記に定めたものであり、ただし、R1〜R8のうち少なくとも1つは−Q−Zであり、
Qはリンカーまたは共有結合であり、
Zは官能基である]。
【0063】
R1〜R8の好ましい態様は、式IのR1〜R12について前記に定めたものである。
QおよびZそれぞれの好ましい態様を後記に定める。
1態様において、R1〜R8のうちの1つは−Q−Zであり、その際、Qはリンカーまたは共有結合であり、Zは官能基であり、他の基R1〜R8は水素である。
【0064】
1態様において、本発明は、式Iにより定める2つのフェニル−フェナントリジン誘導体、および第3配位子としてのフェニル−ピリジンの誘導体(たとえば、EP 12179054.7に記載)を含む発光性標識の製造方法における、式Iによるビス−イリジウム錯体の使用に関する。
【0065】
“フェニル−ピリジンの誘導体”は、式Vにより定められる:
【0066】
【化8】
【0067】
[式中、
XおよびYのうち一方はNであり、他方はCであり、
R1〜R8は式IのR1〜R12について前記に定めたものであり、ただし、R1〜R8のうち少なくとも1つは−Q−Zであり、
Qはリンカーまたは共有結合であり、
Zは官能基である]。
【0068】
R1〜R8の好ましい態様は、式IのR1〜R12について前記に定めたものである。
QおよびZそれぞれの好ましい態様を後記に定める。
1態様において、R1〜R8のうちの1つは−Q−Zであり、その際、Qはリンカーまたは共有結合であり、Zは官能基であり、他の基R1〜R8は水素である。
【0069】
1態様において、本発明は、式Iにより定める2つのフェニル−フェナントリジン誘導体、および第3配位子としてのフェニルアゾールの誘導体(たとえば、EP 12179057.0に記載)を含む発光性標識の製造方法における、式Iによるビス−イリジウム錯体の使用に関する。
【0070】
“フェニルアゾールの誘導体”は、式VIaおよびVIbにより定められる:
【0071】
【化9】
【0072】
[式中、
XおよびYはそれぞれC−R6およびC−R7であるか、あるいはXおよびYのうち一方はNであり、他方はそれぞれC−R7またはC−R6であり、
R1〜R7は式IのR1〜R12について前記に定めたものであり、ただし、R1〜R7のうち少なくとも1つは−Q−Zであり、
Qはリンカーまたは共有結合であり、
Zは官能基である]。
【0073】
R1〜R7の好ましい態様は、式IのR1〜R12について前記に定めたものである。
QおよびZそれぞれの好ましい態様を後記に定める。
1態様において、R1〜R7のうちの1つは−Q−Zであり、その際、Qはリンカーまたは共有結合であり、Zは官能基であり、他の基R1〜R7は水素である。
【0074】
1態様において、本発明は、発光性標識の製造における、式Iによるビス−イリジウム錯体の使用に関する;その際、第3配位子は、ピコリン酸の誘導体、アゾリルピリジンの誘導体、ビピリジルの誘導体、およびフェニル−ピリジンの誘導体からなる群から選択される。
【0075】
式II、III、IV、VおよびVIそれぞれによる化合物において、Qは共有結合であるか、あるいは1〜200原子の主鎖長さをもつリンカーである。言い換えると、主鎖長さが1〜200原子であれば、式II、III、IV、VおよびVIそれぞれのいずれかによる芳香族環と官能基Zの間の最短結合は1〜200原子からなる。
【0076】
環系が存在する場合、リンカー長さを査定する際に環系中の最短数の原子を採用する。一例として、フェニレン環はリンカーにおいて4原子の長さを占める。
1態様において、Qは、共有結合であるか、あるいは主鎖として下記の鎖をもつリンカーである:直鎖または分岐鎖、飽和、不飽和、非置換または置換C1〜C200アルキル鎖、あるいは炭素原子、置換された炭素原子、および/またはO、N、PおよびS、または置換されたN、P、S原子から選択される1個以上の原子からなる1〜200原子の鎖、あるいは1以上の環式または複素環式の芳香族または非芳香族環系を含む主鎖を備えた前記の鎖。
【0077】
1態様において、リンカーQは、主鎖として、直鎖または分岐鎖、飽和、不飽和、非置換または置換C1〜C100アルキル鎖、あるいは炭素原子、置換された炭素原子、および/またはO、N、PおよびS、または置換されたN、PもしくはS原子から選択される1個以上の原子からなる1〜100原子の鎖、あるいは1以上の環式または複素環式の芳香族または非芳香族環系を含む主鎖を備えた前記の鎖をもつ。
【0078】
1態様において、リンカーQは、主鎖として、直鎖または分岐鎖、飽和、不飽和、非置換または置換C1〜C50アルキル鎖、あるいは炭素原子、置換された炭素原子、および/またはO、N、PおよびS、または置換されたN、PもしくはS原子から選択される1個以上の原子からなる1〜50原子の鎖、あるいは1以上の環式または複素環式の芳香族または非芳香族環系を含む主鎖を備えた前記の鎖をもつ。
【0079】
さらなる1態様において、リンカーQは、主鎖として、直鎖または分岐鎖、飽和、不飽和、非置換または置換C1〜C20アルキル鎖、あるいは炭素原子、置換された炭素原子、および/またはO、N、PおよびS、または置換されたN、PもしくはS原子から選択される1個以上の原子からなる1〜20原子の鎖、あるいは1以上の環式または複素環式の芳香族または非芳香族環系を含む主鎖を備えた前記の鎖をもつ。
【0080】
1態様において、本発明の電気化学発光性錯体中のリンカーQは、直鎖または分岐鎖、飽和、不飽和、非置換または置換C1〜C20アルキル鎖、またはC1〜C20アリールアルキル鎖(その際、たとえばフェニレン環は4炭素原子の長さを占める)、あるいは炭素原子、置換された炭素原子、および/またはO、N、PおよびS、または置換されたN、PもしくはS原子から選択される1個以上の原子からなる主鎖を備えた1〜20原子の鎖、あるいは炭素原子、置換された炭素原子、ならびにO、N、PおよびS、または置換されたN、PもしくはS原子から選択される1個以上の原子からなり、少なくとも1つのアリール、ヘテロアリール、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基を含む主鎖を備えた1〜20原子の鎖(その際、たとえばフェニレン環は4原子の長さを占める)である。
【0081】
1態様において、本発明による化合物中のQ、たとえばリンカーQは、飽和C1〜C12アルキル鎖、またはC1〜C12アリールアルキル鎖、あるいは炭素原子、置換された炭素原子、および/またはO、N、PおよびS、または置換されたN、PもしくはS原子から選択される1個以上の原子からなる主鎖を備えた1〜12原子の鎖、あるいは炭素原子、置換された炭素原子、ならびにO、N、PおよびS、または置換されたN、PもしくはS原子から選択される1個以上の原子からなり、少なくとも1つのアリール、ヘテロアリール、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基を含む主鎖を備えた1〜12原子の鎖(その際、たとえばフェニレン環は4原子の長さを占める)である。
【0082】
本明細書中で用いる用語“リンカー”は、当業者に既知の意味をもち、分子のフラグメントを連結するために用いられる分子または分子群に関する。リンカーは、柔軟または剛直な骨格上に2以上の化学的にオルソゴナルな(orthogonal)官能基をもつことを特徴とする。
【0083】
1態様において、式IIのR1〜R4のうちの1つ、または式IIIのR1〜R6のうちの1つ、または式IVのR1〜R8のうちの1つ、または式VのR1〜R8のうちの1つ、または式VIのR1〜R7のうちの1つは、−Q−Zである。
【0084】
1態様において、式II、III、IV、VまたはVIそれぞれによる第3配位子に含まれる官能基Zは、アルデヒド、カルボン酸、カルボン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、エポキシド、アミノ基、ハロゲン、ヒドラジン、ヒドロキシル、スルフヒドリル、マレイミド、アルキニル、アジドおよびホスホロアミダイトからなる群から選択される。
【0085】
1態様において、式II、III、IV、VまたはVIそれぞれによる第3配位子に含まれる官能基Zは、カルボン酸、アミノ基、ハロゲン、スルフヒドリル、マレイミド、アルキニルおよびアジドからなる群から選択される。
【0086】
電気化学発光性化合物および標識を製造するための方法
さらに、本発明は、電気化学発光性化合物を製造するための方法であって、前記の二量体と第3配位子、たとえば前記の第3配位子を、有機溶媒中において塩基の存在下または非存在下で不活性ガス雰囲気下に反応させることを含む方法を開示する。
【0087】
1態様において、前記の二量体と第3配位子、たとえば前記の第3配位子との反応は、ジメチルホルムアミド(DMF)中において塩基の存在下で不活性ガス雰囲気下に実施される。
【0088】
1態様において、用いる塩基はアルカリ金属の炭酸塩である。
1態様において、用いる塩基は炭酸セシウムである。
前記のように、本明細書に開示する化合物はきわめて好ましい特性をもつ。たとえば、開示する化合物、すなわちこれらの化合物を用いて製造したイリジウムベースの標識は、高いECL効率を示す。この高い効率は、有機溶媒中で分析した場合にのみ高いECL効率を示した多数のECL標識と比較して、対応する測定を水性の系で実施しても存在する。たとえば、多くのOLED色素は、通常はアセトニトリル中で分析され、水溶液には溶解できないか、あるいは溶解できるとしても水溶液中では効率的な電気化学発光を示さない。
【0089】
1観点において、本発明は、電気化学発光性標識の製造における出発物質としての、本発明の式Iの化合物の使用に関する。
好ましい1態様において、本発明は、水溶液中で電気化学発光反応を示す標識を製造するための、本発明に開示する化合物の使用に関する。水溶液は、少なくとも90%(w/w)の水を含むいずれかの溶液である。明らかに、そのような水溶液はさらに、緩衝化合物、界面活性剤、およびたとえばECL反応における電子ドナーとしての第三級アミン、たとえばトリプロピルアミンなどの成分を含有することができる。
【0090】
以下の実施例は本発明の理解を補助するために提示され、本発明の真の範囲は特許請求の範囲に述べられている。述べられた方法において本発明の精神から逸脱することなく改変を行なうことができると理解される。
【0091】
本明細書に示したすべての特許および刊行物を全体として本明細書に援用する。
【実施例】
【0092】
実施例1
置換フェニルフェナントリジン類の合成
実施例1.1
置換2−アミノビフェニル類の合成のための一般法:
Youn, S.W., Tetrahedron Lett. 50 (2009) 4598-4601により記載された鈴木−宮浦カップリング反応を用いて、市販の2−ブロモアニリン誘導体と対応するアリールボロン酸の間で、フェナントリジン類へのさらなる反応に必要な適切な2−アミノビフェニル類を合成することができる。
【0093】
【化10】
【0094】
実施例1.2
置換フェナントリジン類の合成のための一般法:
2−アリールアニリン1(0.01mol)のクロロホルム(20ml)中における氷冷溶液に、アリール酸クロリド2(0.01mol)を添加し、不活性条件下に室温で30分間撹拌した。得られた混合物を、次いで2時間、撹拌しながら還流した。反応混合物を、ピリジン(0.02mol,10mlのクロロホルム中)の滴加により60分間かけて処理した。混合物を室温に放冷し、一夜撹拌した。混合物を0.5M HClで十分に洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより3:2 ヘキサン/酢酸エチルで精製して、純粋な生成物3を66%の収率で得た;
ベンズアミド−2−ビフェニル3(0.01mol)およびPOCl(5ml)を20mlのトルエン中で窒素下に18時間、還流および撹拌した;Lion, C., Bull. Soc. Chim. Belg. 98 (1989) 557-566に記載された方法に従う。冷却した反応混合物をCHCl(30ml)で希釈し、氷に注入し、25% NHOHおよび蒸留水で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させ、真空中で濃縮し、続いてフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル,1:1 ヘキサン/酢酸エチル)により生成物4である6−フェニルフェナントリジンを得た。
【0095】
【化11】
【0096】
収率: 52%. 白色固体. 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 7.54-7.85 (m, 9H), 8.10 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.28 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 8.62 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 8.67 (d, J = 8.4 Hz, 1H)。
【0097】
2−ナフタレン−2−イル−フェニルアミンを2−アリール−アニリンの代わりに用いると下記のものが得られる:
【0098】
【化12】
【0099】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.64 (d, J = 9.1 Hz, 2H), 8.29 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.16 (d, J = 8.92 Hz, 1H), 7.92 (d, J = 7.48 Hz, 1H), 7.79-7.75 (m, 2H), 7.69 (t, J = 14.0, 8.2 Hz, 1H), 7.63-7.61 (m, 2H), 7.53-7.46 (m, 4H), 7.19 (t, J = 14.3, 7.2 Hz, 1H).
MS: [M+H]+ 306.3。
【0100】
ナフタレン−カルボニルクロリドをフェニル酸クロリドの代わりに用いると下記のものが得られる:
【0101】
【化13】
【0102】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ8.74 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 8.65 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.27 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.23 (s, 1H), 8.15 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 8.03 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.97-7.94 (m, 2H), 7.90-7.85 (m, 2H), 7.80-7.69 (m, 2H), 7.62 (t, J= 14.2, 7.1 Hz, 1H), 7.59-7.55 (m, 2H).
MS: [M+H]+306.3。
【0103】
実施例1.3
6−(2−スルホフェニル)フェナントリジンの合成方法
6−(2−スルホフェニル)フェナントリジンは、アリールアニリン(0.01mol)を2−スルホ安息香酸 環状無水物(0.01mol)と共にCHCN中で6時間、穏やかに加熱することにより合成できる;Nicolai, E., Chem. Pharm. Bull. 42 (1994) 1617-1630に記載された方法を使用;
精製後、実施例1.2に記載された方法に基づいて生成物を適切なフェナントリジンに変換できる。
【0104】
【化14】
【0105】
実施例1.4
6−フェニル−アルキルスルホニルフェナントリジンの合成方法
6−フェニル−アルキルスルホニルフェナントリジンは、アルキルスルホニル−アリールアニリン(0.01mol)を安息香酸クロリド(0.01mol)と共にクロロホルム中で穏やかに加熱することにより合成できる;Lion, C., Bull. Soc. Chim. Belg. 98 (1989) 557-566に記載された方法を使用;実施例1.2を参照;
精製後、実施例1.2に記載された方法に基づいて生成物を適切なフェナントリジンに変換できる。
【0106】
【化15】
【0107】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.92 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 8.75 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 8.68 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 8.35 (dd, J = 8.7, 2.0 Hz, 1H), 8.30 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.89 (t, J = 15.3, 7.1 Hz, 1H), 7.81-7.73 (m, 3H), 7.64-7.56 (m, 3H) 3.12 (s, 3H).
MS: [M+H]+ 334,3
6−(4−メチルスルホフェニル)フェナントリジンも、Cymerman, J., J. Chem. Soc. (1949) 703-707に記載された方法に従って合成できる。
【0108】
実施例1.5
6−[4−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−フェニル]−フェナントリジンの合成
【0109】
【化16】
【0110】
2,5,8,11−テトラオキサトリデカン−13−オール トシレートの合成:
方法: (JACS, 2007, 129, 13364) 2,5,8,11−テトラオキサトリデカン−13−オール(7g,33.6mmol)およびトリエチルアミン(4.9ml,35.3mmol)の、乾燥CHCl(100ml)中における溶液に、4−トルエンスルホニルクロリド(6.7g,35.3mmol)およびDMAP(120mg)を添加した。混合物を室温で20時間撹拌した。反応混合物を80mLのHCl(1M)、次いで水で洗浄した。抽出液を無水MgSOで乾燥させ、濾過し、濾液を蒸発させた。残留物をそれ以上精製せずに次の工程に用いた。
収量: 11.0 g (90%)
NMR:
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.75 - 7.64 (m, 2H), 7.31 - 7.26 (m, 2H), 4.16 - 4.06 (m, 2H), 3.62 (m 2H), 3.59 - 3.40 (m, 10H), 3.30 (s, 3H), 2.38 (s, 3H).
13C{1H} NMR (101 MHz, CDCl3) δ 144.75 (s), 132.90 (s), 129.77 (s), 127.8 (s), 71.82 (s), 70.60 (s), 70.48 (s), 70.47 (s), 70.41 (s), 70.39 (s), 69.23 (s), 68.55 (s), 58.90 (s), 21.53 (s)。
【0111】
4−PEG4−安息香酸エチルエステルの合成:
方法:(JACS 129 (2007) 13364) 化合物2,5,8,11−テトラオキサトリデカン−13−イル 4−メチルベンゼンスルホン酸エチル(8.1g,22.3mmol)、4−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル(3.7g,22.3mmol)、KCO(15.4g,111.5mmol)および18−クラウン−6(0.59g,2.2mmol)の混合物を、アセトン(120ml)中で22時間還流した。反応混合物を濃縮し、酢酸エチルで抽出した。抽出液をHOで洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過した。濾液を蒸発乾固し、残留物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=100:1)により精製して、上記化合物(1.93g,88%)を得た。
収量: 7 g (88%)
NMR:
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.01 - 7.84 (m, 2H), 6.96 - 6.85 (m, 2H), 4.29 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 4.12 (dd, J = 5.4, 4.3 Hz, 2H), 3.82 (dd, J = 5.4, 4.2 Hz, 2H), 3.71 - 3.56 (m, 10H), 3.51 - 3.45 (m, 2H), 3.32 (s, 3H), 1.32 (t, J = 7.1 Hz, 3H).
13C{1H} NMR (101 MHz, CDCl3) δ 166.29 (s), 162.47 (s), 131.45 (s), 123.01 (s), 114.11 (s), 71.90 (s), 70.84 (s), 70.60 (s), 70.59 (s), 70.58 (s), 70.48 (s), 69.51 (s), 67.54 (s), 60.57 (s), 58.98 (s), 14.35 (s)
MS(+):
[M+Na+]+= 計算値 379.1727, 実測値 379.1743。
【0112】
4−PEG4−安息香酸の合成:
方法:(JACS, 2007, 129, 13364) 化合物4−(2,5,8,11−テトラオキサトリデカン−13−イルオキシ)安息香酸エチル(7g,19.6mmol)およびKOH(2.3g,41.24mmol)の、200mLのEtOH/HO(1:1 v/v)中における混合物を、一夜還流した。冷却した後、混合物をHCl(2N)で中和した。得られた混合物をEtOAcで抽出し、蒸発乾固した。得られた白色固体をEtOAc/ヘキサン中で再結晶した。
収量: 5.3 g (85%)
NMR:
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 11.17 (s, 1H), 8.14 - 7.89 (m, 2H), 7.03 - 6.75 (m, 2H), 4.29 - 4.02 (m, 2H), 3.92 - 3.81 (m, 2H), 3.78 - 3.57 (m, 10H), 3.57 - 3.46 (m, 2H), 3.35 (s, 3H).
13C{1H} NMR (75 MHz, CDCl3) δ 171.46 (s), 163.24 (s), 132.30 (s), 121.98 (s), 114.33 (s), 71.96 (s), 70.91 (s), 70.67 (s), 70.66 (s), 70.64 (s), 70.54 (s), 69.55 (s), 67.66 (s), 59.08 (s).
MS(-):
[M-H]-= 計算値 327.1438, 実測値 327.1456。
【0113】
N−ビフェニル−2−イル−4−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−ベンズアミドの合成:
方法:4−(2,5,8,11−テトラオキサトリデカン−13−イルオキシ)安息香酸(3g,9.14mmol)、DMF 0.2mLの、乾燥DCM 30mL中における溶液に、0℃で、塩化オキサリル(1.05mL,12.34mmol)を添加した。反応混合物を0℃で1時間撹拌した。溶液を濃縮乾固した。油状残留物をそれ以上精製せずに次の工程に用いた;
2−フェニルアニリン(1.6g)、ピリジン(2.4mL)の、クロロホルム(80mL)中における溶液を、不活性雰囲気下で0℃にまで冷却した。20mL中の(フェニル−4−(2,5,8,11−テトラオキサトリデカン−13−イルオキシ)ベンゾイルクロリド(3.1g,9.14mmol)をこの溶液に徐々に添加し、最終混合物を室温に達するまで放置した。この溶液を2時間還流し、室温で一夜撹拌した。反応混合物をHCl(1M,2×100mL)、NaHCO(100mL)および水(50mL)で抽出した。有機相をMgSOで乾燥させ、シリカゲルにおけるクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)により精製した。
収量: 4.1 (90%)
NMR:
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.49 (dd, J = 8.3, 0.9 Hz, 1H), 7.94 (s, 1H), 7.61 - 7.35 (m, 9H), 7.33 - 7.25 (m, 1H), 7.19 (m, 1H), 6.91 - 6.84 (m, 2H), 4.16 - 4.10 (m, 2H), 3.85 (m, 2H), 3.77 - 3.58 (m, 10H), 3.56 - 3.49 (m, 2H), 3.36 (s, 3H).
13C{1H} NMR (101 MHz, CDCl3) δ 164.56 (s), 161.65 (s), 138.18 (s), 135.12 (s), 132.32 (s), 129.97 (s), 129.39 (s), 129.22 (s), 128.66 (s), 128.57 (s), 128.16 (s), 127.13 (s), 124.18 (s), 121.23 (s), 114.57 (s), 71.95 (s), 70.89 (s), 70.64 (s), 70.63 (s), 70.54 (s), 69.54 (s), 67.63 (s), 59.04 (s), 53.51 (s).
MS(+)
[M+H]+= 計算値 480.2386 実測値 480.2383; [M+Na]+= 計算値 502.2200, 実測値 502.2204。
【0114】
6−[4−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−フェニル]−フェナントリジンの合成:
方法:N−ビフェニル−2−イル−4−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−ベンズアミド(4g,8.34mmol)、POCl(10ml)を、10mlのトルエン中で20時間還流した。混合物を室温にまで冷却し、100mlのジクロロメタンを添加した。この溶液を氷に注入し、混合物をNHOH(20%)で中和した。有機相を抽出し、順に蒸留水およびブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させた。得られた溶液をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル,酢酸エチル/ヘキサン 1:1中,R=0.14)により精製した。
収量: 1 g (25%)
NMR:
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.68 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 8.59 (dd, J = 8.1, 1.4 Hz, 1H), 8.23 (dd, J = 8.1, 1.1 Hz, 1H), 8.15 (dd, J = 8.3, 0.7 Hz, 1H), 7.84 (ddd, J = 8.3, 7.1, 1.3 Hz, 1H), 7.79 - 7.57 (m, 5H), 7.15 - 7.03 (m, 2H), 4.29 - 4.19 (m, 2H), 3.93-3.90 (m, 2H), 3.80 - 3.60 (m, 12H), 3.59 - 3.49 (m, 2H), 3.37 (s, 3H).
13C{1H} NMR (75 MHz, CDCl3) δ 160.92 (s), 159.45 (s), 143.84 (s), 133.59 (s), 131.26 (s), 130.61 (s), 130.26 (s), 129.05 (s), 128.90 (s), 127.19 (s), 126.85 (s), 125.39 (s), 123.70 (s), 122.29 (s), 122.01 (s), 114.68 (s), 72.02 (s), 70.97 (s), 70.74 (s), 70.72 (s), 70.69, 70.62 (s), 69.80 (s), 67.68 (s), 59.15 (s).
MS (+) JM358-F5, [M+H]+ 計算値 = 462,2280, 実測値 462.2275。
【0115】
実施例2
クロロ架橋した二量体錯体の合成のための一般法:
一般法はNonoyama, M., J. Organomet. Chem. 86 (1975) 263-267により公開された;
イリジウム二量体を下記に従って合成した:IrCl・3HOおよび2.5当量の6−フェニルフェナントリジンを窒素下に120℃で18時間、2−エトキシエタノール/水混合物(3:1,v/v)中で加熱した。室温に冷却した後、沈殿を濾別し、順にメタノールおよびEtOで洗浄し、乾燥させて、目的とする二量体を得た。
【0116】
実施例2.1
6−[4−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−フェニル]−フェナントリジンを含むビス−イリジウム錯体
【0117】
【化17】
【0118】
6−[4−(2−{2−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−フェニル]−フェナントリジン(1g,2.16mmol)、IrCl・3HO(346mg,0.98mmol)の、16mlの2−EtOEtOH:HO(12:4)中における混合物を、窒素雰囲気下で一夜還流した。反応混合物を室温にまで冷却し、60mlの水を添加すると、油状沈殿が得られた。上清を廃棄し、50mlの水を残留物に添加した。混合物を1時間撹拌すると赤褐色の沈殿が得られた。この固体を濾過し、水(50ml)およびEtO(30ml)で洗浄した。褐色の固体を比較的少量のジクロロメタンに溶解し、EtOを添加すると沈殿した。それをそれ以上精製せずに次の工程に用いた。
収量: 550 mg (50%)
NMR:
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.74 (d, J = 8.1 Hz, 4H), 8.36 (dd, J = 8.0, 5.2 Hz, 8H), 7.90 (dd, J = 14.7, 7.7 Hz, 8H), 7.81 (d, J = 9.0 Hz, 4H), 7.79 - 7.67 (m, 4H), 6.78 - 6.65 (m, 4H), 6.32 (dd, J = 8.8, 2.5 Hz, 4H), 5.89-5.83 (m, 4H), 5.28 (d, J = 2.5 Hz, 4H), 3.67-3.10 (m, 100H, PEG鎖,若干の不純物を含有)
MS(ESI-MS(+)):
[M+2Na+]2+ 計算値 1171.3463, 実測値 1171.3473; [(C^N)2Ir]+ = 計算値 1113.3877, 実測値 1113.3892。
【0119】
実施例3:
スルホネート置換フェニルフェナントリジン類の合成およびビス−フェニルフェナントリジン錯体の構築におけるそれらの使用
実施例3.1
3−(4−フェナントリジン−6−イル−フェノキシ)−プロパン−1−スルホン酸セシウム塩の合成
【0120】
【化18】
【0121】
6−(4−メトキシフェニル)フェナントリジンを、前記の方法に従ってN−(ビフェニル−2−イル)−4−メトキシベンズアミド(2g,6.59mmol)の環化により製造した。この化合物をジクロロメタン/ヘキサン(勾配 1:5−1:1)中でのクロマトグラフィーにより精製した。収率:87%。
NMR : 1H NMR (300 MHz, DMSO) δ 8.94 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.84 (dd, J = 8.2, 1.2 Hz, 1H), 8.18 - 8.05 (m, 2H), 7.97 (ddd, J = 8.3, 7.1, 1.3 Hz, 1H), 7.86 - 7.62 (m, 5H), 7.23 - 7.07 (m, 2H), 3.88 (s, 3H).
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.70 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 8.61 (dd, J = 8.1, 1.3 Hz, 1H), 8.28 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.18 (dd, J = 8.3, 0.7 Hz, 1H), 7.86 (ddd, J = 8.3, 7.1, 1.3 Hz, 1H), 7.81 - 7.56 (m, 5H), 7.18 - 7.02 (m, 2H), 3.92 (s, 3H).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 160.95 (s), 160.33 (s), 143.72 (s), 133.67 (s), 132.12 (s), 131.36 (s), 130.71 (s), 130.20 (s), 129.13 (s), 128.97 (s), 127.23 (s), 126.92 (s), 125.40 (s), 123.73 (s), 122.33 (s), 122.03 (s), 114.03 (s), 55.57 (s).
MS [ESI-MS (+)]: [M+H+]-実測値 286.1231, calc. 286.1226。
【0122】
4−フェナントリジン−6−イル−フェノール:6−(4−メトキシフェニル)フェナントリジンの脱保護を、HBrを用いて達成した。6−(4−メトキシフェニル)フェナントリジン(1g,3.5mmol)の懸濁液15mL(HBr,47%)を、100℃で12時間還流した。混合物を室温にまで冷却し、氷水に注入し、NaCOで中和した。生じた沈殿を濾別し、水およびEtOで洗浄した。この固体をクロマトグラフィーカラムによりジクロロメタン/MeOHを用いて精製した。収率:90%。
NMR: 1H NMR (300 MHz, DMSO) δ 9.84 (s, 1H), 8.92 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.82 (dd, J = 8.2, 1.2 Hz, 1H), 8.20 - 8.11 (m, 1H), 8.08 (dd, J = 8.1, 1.2 Hz, 1H), 8.02 - 7.88 (m, 1H), 7.84 - 7.64 (m, 3H), 7.64 - 7.49 (m, 2H), 7.06 - 6.89 (m, 2H).
MS [ESI-MS (-)]: [M-H+]-実測値 270.0922, calc. 270.0924。
【0123】
4−(フェナントリジン−6−イル)フェノール(320mg,1.18mmol)の、DMF(4ml)中における溶液に、CsCO(482.2mg,1.48mmol)および1,3−プロピルスルトン(159mg,1.30mmol)を添加した。反応混合物を室温で一夜撹拌した。反応混合物を濃縮乾固し、残留物をクロマトグラフィーカラム(シリカ)によりジクロロメタン/MeOH(勾配 10:1−5:1)を用いて精製した。収率:72%。
NMR: 1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 8.98 - 8.87 (m, 1H), 8.83 (dd, J = 7.9, 1.6 Hz, 1H), 8.12 (m, 2H), 7.97 (ddd, J = 8.3, 7.0, 1.3 Hz, 1H), 7.85 - 7.69 (m, 3H), 7.67 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.14 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 4.19 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.64 - 2.57 (m, 2H), 2.15 - 1.97 (m, 2H).
MS [EI-MS (-)]: [M-Cs+]-計算値 392.0956. 実測値 392.0962。
【0124】
実施例3.2
3−(4−フェナントリジン−6−イル−フェノキシ)−プロパン−1−スルホン酸セシウム塩を含むビス−イリジウム錯体の合成
【0125】
【化19】
【0126】
配位子3−(4−(フェナントリジン−6−イル)フェノキシ)プロパン−1−スルホン酸セシウム(500mg,0.92mmol)およびIrCl(159.5mg,0.45mmol)の、2−エトキシエタノール:水 混合物(3:1,16ml)中における混合物を、窒素雰囲気下で36時間還流した。反応混合物を濾過し、濾液を濃縮乾固した。残留物をそれ以上精製せずにイリジウム単量体錯体の合成に用いた。
MS [ESI-MS(-)]: [Ir(C^N)2-2Cs+]- 計算値 975.13858, 実測値 975.13882。
【0127】
実施例3.3
(4−フェナントリジン−6−イル−フェノキシ)−メタンスルホン酸の合成
【0128】
【化20】
【0129】
6−(4−クロロメチル−フェニル)−フェナントリジン:
4−クロロメチル−ベンゾイルクロリド(2.5g,13.2mmol)および2−アミノ−ビフェニル(1.95g,11.5mmol)をDCM(50mL)に溶解し、45℃で4時間撹拌し、続いてさらに16時間、室温でアルゴン下に撹拌した。この混合物にピリジン(2.4mL)を添加し、有機層を水(2×50mL)で洗浄した。有機層を次いでNaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させて、3.78gのN−ビフェニル−2−イル−4−クロロメチル−ベンズアミドを得た。
MS [ESI-MS(+)]: C20H17ClNOにつき 計算値: 322.1[M+H]+; 実測値 322.3。
【0130】
N−ビフェニル−2−イル−4−クロロメチル−ベンズアミド、POCl(20mL)およびトルエン(40mL)を混和して120℃で16時間撹拌した。反応混合物を蒸発により乾燥させ、残留物を酢酸エチル(100mL)に装入し、有機層を次いでNaHCO(飽和)(2×50mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させて、1.96gの6−(4−クロロメチル−フェニル)−フェナントリジンを得た。
MS [ESI-MS(+)]: C20H15ClNにつき 計算値: 304.1[M+H]+; 実測値 304.4。
【0131】
(4−フェナントリジン−6−イル−フェニル)−メタンスルホン酸ナトリウム塩:6−(4−クロロメチル−フェニル)−フェナントリジン(1.3g)および亜硫酸ナトリウム(5g)を、HO/MeOH混合物(35/16mL)に溶解し、100℃で11時間、アルゴン雰囲気下に撹拌した。反応混合物を濾過し、減圧下で体積を10mLに減少させた。続いて30mLのMeOHの添加により生成物を沈殿させた。生成物を次いで濾別し、MeOH/HO混合物(3/1,v/v)で洗浄した。RMを次いで減圧下で乾燥させて、1.0gの(4−フェナントリジン−6−イル−フェニル)−メタンスルホン酸ナトリウム塩を得た。
MS [ESI-MS(+)]: C20H16NO3につき 計算値: 350.1[M+H]+; 実測値 350.4。
【0132】
実施例3.4
(4−フェナントリジン−6−イル−フェニル)−メタンスルホン酸を含むビス−イリジウム錯体の合成
【0133】
【化21】
【0134】
(4−フェナントリジン−6−イル−フェニル)−メタンスルホン酸(50mg)およびIrCl(30mg)を、2−エトキシエタノールと水の混合物(3:1,v/v)に溶解し、これにDIPEA(25μL)を添加した。反応混合物を110℃で一夜、アルゴン下に撹拌した。続いて、混合物を室温にまで冷却し、ニトロセルロース(0.45μm)フィルターで濾過すると明るい赤色の溶液が得られた。揮発性成分を蒸発させ、生成物をHPLCにより精製した。
MS [ESI-MS(+)]: (M-2H+)-: C40H26IrN2O6S2につき 計算値887.1. 実測値: 887.1 (=観察された2つの配位子を含む1つのイリジウムイオンのフラグメント)。
【0135】
実施例3.5
(6−フェニル−フェナントリジン−9−イル)−メタンスルホン酸ナトリウム塩の合成
【0136】
【化22】
【0137】
工程1:m−トリルボロン酸(10g,73.55mmol)、2−ブロモアニリン(15.1g,88.26mmol)、KF(10g,172mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(1g,3.56mmol)およびPd(OAc)(260mg,1.15mmol)を、乾燥THF(100mL)にアルゴン雰囲気下で懸濁/溶解し、80℃で一夜撹拌した;
続いて、RMをEtOAcに装入し、水(2回,100mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、揮発性成分を蒸発させると暗黄色の油が得られた。この生成物を次いでシリカカラムで、石油エーテル中5−15% EtOAcの系を用いて精製した。
収量 : 8 g (60%)
MS [ESI-MS(+)]: (M+H+): C13H14Nにつき 計算値 184.1. 実測値: 184.2。
【0138】
工程2:工程1の生成物(8g,43.48mmol)および過酸化ベンゾイル(5mL(43.48mmol)を、乾燥DCM中において室温でアルゴン雰囲気下に2時間反応させた。揮発性成分を蒸発させ、残留物をEtOAcに装入し、飽和NaHCO(2回,50mL)およびブライン1回で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、揮発性成分を蒸発させると暗黄色の油が得られた。この生成物を次いでシリカカラムで、石油エーテル中5−15% EtOAcの系を用いて精製した。これにより、シリカクロマトグラフィーでは分離できない2種類の生成物が得られた。
おおよその収量: 12 g (約90%)
MS [ESI-MS(+)]:(M+H+): C20H18NOにつき 計算値 288.1 実測値: 288.2。
【0139】
工程3:工程2の生成物(12g,45mmol)をトルエン(100mL)に溶解し、それにPOCl(80mL)を添加した。混合物を次いで120℃で一夜、アルゴン雰囲気下に撹拌した。続いて、揮発性成分を蒸発させ、残留物をEtOAcに装入し、飽和NaHCO(2回,100mL)およびブライン1回で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、揮発性成分を蒸発させると暗黄色の油が得られた。この生成物を次いでシリカカラムで、石油エーテル中5−15% EtOAcの系を用いて精製した。これにより、再び2種類の生成物が得られたが、それらはDCM中2% MeOHを用いて良好に分離された。
おおよその収量: 8 g (66 %)
MS [ESI-MS(+)]:(M+H+): C20H16Nにつき 計算値: 270.1 実測値: 270.2。
【0140】
工程4:工程3の生成物(500mg,1.8mmol)をTHF(5mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下で−78℃に冷却した。次いでLDA(2.5mL)を添加し、混合物を−78℃で15分間撹拌した。続いて、クロロトリメチルシラン(0.5mL)を添加し、混合物をさらに15分間、再び撹拌した後、EtOH(0.6mL)で反応を停止した。混合物をEtOAc(50mL)に装入し、飽和NaHCO(2回,20mL)およびブライン(20mL)1回で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、揮発性成分を蒸発させて、暗黄色の油を得た。
おおよその収量: 200 mg (40 %)
MS [ESI-MS(+)]:(M+H+): C23H23NSiにつき 計算値: 342.2 実測値: 342.2。
【0141】
工程5:工程5の生成物(250mg,0.73mmol)、CsF(540mg,3.5mmol)、CCl(840mg,3.5mmol)をCHCN(5mL)に溶解/懸濁し、70℃で2時間、アルゴン雰囲気下に撹拌した。混合物をEtOAc(50mL)に装入し、水(20mL)およびブライン(20mL)1回で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、揮発性成分を蒸発させて、淡黄色固体を得た。
MS [ESI-MS(+)]:(M+H+): C20H15ClNにつき 計算値: 304.1 実測値: 304.1。
【0142】
工程6:工程5の粗生成物(250mg,0.8mmol)およびNaSO(200mg,1.5mmol)をMeOH/水 混合物(10mL,1:1,v/v)に溶解し、環流しながら10時間撹拌した。続いて、揮発性成分を蒸発させ、残留物をEtOAcおよび水に装入した。生成物を含有する水層を乾燥させ、さらにdiaionカラムで精製した(水中2−20 %アセトン,生成物は約15%アセトンで溶出)。生成物を次いでさらに分取用Vydac C−18カラムでのHPLCを用いて水中2−50% CHCNの系で精製した。
MS [ESI-MS(+)]: (M+H+): C20H15ClNにつき 計算値: 350.1 実測値: 350.1。
【0143】
実施例3.6
(6−フェニル−2−スルホメチル−フェナントリジン−9−イル)−メタンスルホン酸二ナトリウム塩の合成
【0144】
【化23】
【0145】
(6−フェニル−2−スルホメチル−フェナントリジン−9−イル)−メタンスルホン酸二ナトリウム塩の合成を、実施例3.4に記載された方法に従って、適切な出発物質および化学量論的量を用いて実施した。