(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
ところで、最近では、パワー半導体108の出力密度を向上させて小型化したい、もしくは放熱性を向上させて冷却系を簡素化したい、というニーズがある。パワー半導体108の出力密度を向上させると発熱量が増加し、冷却系を簡素化すると、放熱性が低下するため、上述のニーズに対応するには、セラミック回路基板100にさらなる放熱性が要求される。
【0006】
そこで、放熱性を向上させる方法として、例えば
図20に示すように、第1金属板104及び第2金属板106の厚みt1及びt2を従来の厚み(
図19A参照)より厚くすることが考えられる。
【0007】
通常、
図19Aに示す従来のセラミック回路基板100を使用する場合、使用時の熱サイクルによって、第1金属板104とセラミック基板102との熱膨張差に伴う熱応力が、第1金属板104とセラミック基板102との界面114aにおいて発生する。この場合、セラミック基板102の表面102aは、熱応力がかかる上述の界面114aと、熱応力がかからない周辺部とが混在した状態となる。同様に、第2金属板106とセラミック基板102との熱膨張差に伴う熱応力が、第2金属板106とセラミック基板102との界面114bにおいて発生する。この場合も、セラミック基板102の裏面102bは、熱応力がかかる上述の界面114bと、熱応力がかからない周辺部とが混在した状態となる。
【0008】
従って、
図20に示すように、第1金属板104の厚みt1及び第2金属板106の厚みt2を厚くすると、第1金属板104及び第2金属板106の体積が大きくなることから、第1金属板104とセラミック基板102の界面114a並びに第2金属板106とセラミック基板102の界面114bで発生する熱応力も増大する。そのため、使用時の熱サイクルによってセラミック基板102にクラック116(亀裂)が入ったり、割れるという問題が生じるおそれがある。すなわち、セラミック基板102の表面のうち、熱応力がかかる界面と熱応力がかからない周辺部との境界部分において集中的に圧縮応力や引っ張り応力がかかり、該境界部分からクラック116(亀裂)が入るおそれがある。
【0009】
このように、従来のセラミック回路基板100では、放熱性の向上を実現することができず、上述したニーズに対応することができないという問題がある。
【0010】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、少なくともパワー半導体が実装される側の金属板を厚くしても、金属板とセラミック基板の界面で生じる熱応力を緩和することができると共に、反りの発生も抑制することができ、放熱性の向上を図ることができるセラミック回路基板及び電子デバイスを提供することを目的とする。
【0011】
[1] 第1の本発明に係るセラミック回路基板は、セラミック基板と、前記セラミック基板の表面に接合された金属板(第1金属板と記す)と、前記第1金属板の表面側に接合された部材と、を有し、前記部材は、前記金属板よりも熱膨張係数が小さく、且つ、ヤング率が大きい材料からなることを特徴とする。
【0012】
これにより、使用時における熱サイクルによって、以下の熱応力が発生することになる。
【0013】
(i) 第1金属板とセラミック基板との熱膨張差に伴う熱応力が、第1金属板とセラミック基板との界面(以下、界面1と記す)において発生する。
【0014】
(ii) 第1金属板と部材との熱膨張差に伴う熱応力が、第1金属板と部材との界面(以下、界面2と記す)において発生する。
【0015】
従来では、第1金属板とセラミック基板との界面1に熱応力が発生し、セラミック基板の表面のうち、界面1とその周辺部との境界部分において集中的に圧縮応力や引っ張り応力がかかっていたが、本発明では、特に、(ii)に示す熱応力の発生によって、(i)に示す熱応力が緩和(低減)されることになる。すなわち、熱サイクルによる熱応力が界面1と界面2とに分散して発生することとなり、セラミック基板の表面のうち、界面1とその周辺部との境界部分に集中的にかかる圧縮応力や引っ張り応力が緩和され、使用時の熱サイクルによるセラミック基板への亀裂や割れの発生のおそれがなくなる。これにより、第1金属板の厚みを大きくすることが可能となり、放熱性の向上を図ることができる。
【0016】
[2] 第1の本発明において、前記部材は、前記第1金属板の表面の外周に沿って環状に形成されていてもよい。
【0017】
[3] 第1の本発明において、複数の前記部材が前記第1金属板の表面の外周に沿って配列されていてもよい。
【0018】
[4] 第1の本発明において、2つの前記部材が線対称の位置に接合されていてもよい。
【0019】
[5] 第1の本発明において、前記部材は、その一部が、前記第1金属板の表面の外周よりも横方向に張り出していてもよい。この場合、第1金属板の表面に部材を接合する際の位置合わせが容易であり、工数の低減、歩留りの向上、生産性の向上を図ることができる。
【0020】
[6] 第1の本発明において、前記部材は、その全体が、前記第1金属板の表面内に接合されていてもよい。この場合、部材の構成材料の量が少なくて済み、製造コストの低減を図ることができる。
【0021】
[7] 第1の本発明において、前記第1金属板の表面の一部に窪みを有し、前記部材は、前記窪みに接合されていてもよい。この場合、パワー半導体が実装される面(第1金属板の表面)が部材の表面とほぼ同じ、あるいは部材の表面よりも高くなるため、パワー半導体の実装性の向上を図ることができる。
【0022】
[8] 第1の本発明において、前記部材と前記セラミック基板として、当該セラミック回路基板に反りが発生するのを抑制するように、少なくとも物性及び厚みが調整されたものが用いられていることが好ましい。これは、部材とセラミック基板の熱膨張係数、ヤング率から、それぞれの厚みを調整することによって達成することができる。例えば、部材とセラミック基板のヤング率が同等の場合、部材の熱膨張係数がセラミック基板よりも小さいのであれば、部材の厚みは、セラミック基板よりも薄くする。
【0023】
[9] 前記部材の構成材料は、前記セラミック基板と同様のセラミック材料であることが好ましい。
【0024】
[10] 第1の本発明において、前記セラミック基板の構成材料は窒化珪素であることが好ましい。窒化珪素は、熱伝導率が高いだけでなく、「強度」、「靱性」も高く、熱サイクルによるセラミック基板のクラック(亀裂)や割れに対する耐性が高いため好適に用いられる。
【0025】
[11] 第1の本発明において、前記セラミック基板の裏面に別の金属板(以下、第2金属板と記す)が接合され、前記第1金属板の厚みは前記第2金属板の厚みよりも大きいことが好ましい。
【0026】
上述したように、界面1への熱応力が緩和されることから、第2金属板の厚みを第1金属板の厚みよりも小さくしても、セラミック回路基板全体の反りの発生が抑制され、セラミック回路基板の表面上に半田付けされたパワー半導体への割れの発生や、接合層へのクラックの発生のおそれがなくなる。これにより、放熱性を向上させることができると共に、セラミック回路基板の低背化(薄型化)にも有利になる。
【0027】
[12] この場合、前記セラミック基板の厚みをta、前記第1金属板の厚みをt1、前記第2金属板の厚みをt2としたとき、
t2<ta<t1
であってもよい。
【0028】
[13] 第2の本発明に係る電子デバイスは、上述した第1の本発明に係るセラミック回路基板と、該セラミック回路基板の前記第1金属板の表面に実装されたパワー半導体とを有することを特徴とする。
【0029】
以上説明したように、本発明に係るセラミック回路基板及び電子デバイスによれば、少なくともパワー半導体が実装される側の金属板を厚くしても、金属板とセラミック基板の界面で生じる熱応力を緩和することができると共に、反りの発生も抑制することができ、放熱性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るセラミック回路基板の実施の形態例を
図1A〜
図18Cを参照しながら説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0032】
先ず、第1の本実施の形態に係るセラミック回路基板(以下、第1セラミック回路基板10Aと記す)は、
図1A及び
図1Bに示すように、セラミック基板12と、該セラミック基板12の表面12aに接合された第1金属板14と、セラミック基板12の裏面12bに接合された第2金属板16と、第1金属板14の表面14a側に接合された部材18とを有する。部材18は、第1金属板14よりも熱膨張係数が小さく、且つ、ヤング率が大きい材料から構成される。
【0033】
第1金属板14及び第2金属板16は、Cu(銅)やAl(アルミニウム)を始めとする高熱伝導率の金属板にて構成することができる。セラミック基板12は、AlN(窒化アルミニウム)やSi
3N
4(窒化珪素)のような高熱伝導率のセラミック材料にて構成することができる。第1金属板14とセラミック基板12との接合、並びに第2金属板16とセラミック基板12との接合は、直接接合でもよいし、もしくは、ろう材を介して接合してもよい。ろう材としては、Ag−Cuろう等のろう材にTi(チタン)等の活性金属を添加したろう材を用いることができる。部材18の具体的な構成材料並びに接合については後述する。
【0034】
そして、この第1セラミック回路基板10Aは、第1金属板14の表面14aの一部に窪み20を有し、窪み20に部材18が埋め込まれ接合されている。ここで、「第1金属板14の表面14a」とは、パワー半導体26(
図3A参照)が実装される面(例えば
図1Bでは上面)をいい、裏面とは、表面14aと対向する面(例えば
図1Bでは下面)をいう。セラミック基板12等の他の部材の表面も、パワー半導体26が実装される側の面(例えば
図1Bでは上面)を指し、他の部材の裏面も、表面と対向する面(例えば
図1Bでは下面)をいう。
【0035】
窪み20は、第1金属板14の表面14aの外周14cに沿って環状に形成され、特に、
図1A及び
図1Bの例では、第1金属板14の表面14aの外周14cは、窪み20の一部を構成している。つまり、窪み20は、第1金属板14の表面14aから側面14bにかけて形成されている。そのため、第1金属板14は、肩部分が窪み20によって切り欠かれた形状を有する。また、部材18は、窪み20の環状に沿った1つの環状部材にて構成されている。すなわち、第1金属板14の窪み20を埋めるように部材18が接合される。部材18は、窪み20の底面20aから側面20bにかけてAg−Cuろう等のろう材等によって接合されることが好ましい。
【0036】
セラミック基板12、第1金属板14及び第2金属板16の各外形形状は、様々な形状が挙げられるが、
図1Aでは、上面から見て、それぞれ長方形状とされている。セラミック基板12を上面から見た縦方向の長さD1y及び横方向の長さD1xは、第1金属板14の縦方向の長さL1y及び横方向の長さL1xよりも長く設定されている。第1金属板14と第2金属板16の縦方向の長さ及び横方向の長さはそれぞれほぼ同じとされている。部材18の中央部には、同じく長方形状の孔22が形成され、この孔22を通じて第1金属板14の表面14aが露出している。
【0037】
部材18を上面から見た縦方向の長さD2y及び横方向の長さD2xと第1金属板14の縦方向の長さL1y及び横方向の長さL1xとの関係は、以下の関係のいずれを採用してもよい。
(A−1) D2y=L1y、D2x=L1x
(A−2) D2y>L1y、D2x=L1x
(A−3) D2y<L1y、D2x=L1x
(A−4) D2y=L1y、D2x>L1x
(A−5) D2y>L1y、D2x>L1x
(A−6) D2y<L1y、D2x>L1x
(A−7) D2y=L1y、D2x<L1x
(A−8) D2y>L1y、D2x<L1x
(A−9) D2y<L1y、D2x<L1x
【0038】
このうち、(A−1)の例が上述した第1セラミック回路基板10A(
図1A及び
図1B参照)である。
【0039】
セラミック基板12、第1金属板14及び第2金属板16の各外形形状は、上述した長方形状のほか、円形状、楕円形状、トラック形状、三角形状、五角形、六角形等の多角形状等が挙げられる。
【0040】
また、第1セラミック回路基板10Aは、セラミック基板12の厚みをta、部材18の厚みをtb、第1金属板14の厚みをt1、第2金属板16の厚みをt2としたとき、
ta≒tb
t2<ta<t1
となっている。
【0041】
窪み20の深さtcは、
図1Bに示すように、部材18の厚みtbと同じでもよいし、
図2Aに示すように、部材18の厚みtbより浅くてもよい。あるいは、
図2Bに示すように、部材18の厚みtbより深くてもよい。
【0042】
そして、
図3Aに示すように、第1金属板14の表面14aに半田等の接合層24を介してパワー半導体26が実装されることで、第1の本実施の形態に係る電子デバイス(以下、第1電子デバイス28A)が構成される。もちろん、
図3Bに示すように、さらに、第2金属板16の端面にヒートシンク30を接合して第1電子デバイス28Aを構成してもよい。なお、
図3A及び
図3B等では、パワー半導体26の高さを、部材18の厚みよりも薄く図示されているが、これに限定されるものではない。
【0043】
この第1セラミック回路基板10Aにおいては、第1金属板14の表面14aに形成された窪み20に部材18を接合したので、使用時における熱サイクルによって、以下の熱応力が発生することになる。
【0044】
(a) 第1金属板14とセラミック基板12との熱膨張差に伴う熱応力が、第1金属板14とセラミック基板12との界面32a(以下、第1界面32aと記す)において発生する。
【0045】
(b) 第2金属板16とセラミック基板12との熱膨張差に伴う熱応力が、第2金属板16とセラミック基板12との界面32b(以下、第2界面32bと記す)において発生する。
【0046】
(c) 第1金属板14と部材18との熱膨張差に伴う熱応力が、第1金属板14と部材18との界面32c(以下、第3界面32cと記す)において発生する。
【0047】
従来では、第1金属板14とセラミック基板12との第1界面32aに熱応力が集中して発生していたが、本実施の形態では、特に、(c)に示す熱応力の発生によって、(a)に示す熱応力が緩和(低減)されることになる。すなわち、熱サイクルによる熱応力が第1界面32aと第3界面32cとに分散して発生することとなる。その結果、セラミック基板12の表面12aのうち、第1界面32aとその周辺部との境界部分に集中的にかかる圧縮応力や引っ張り応力が緩和され、使用時の熱サイクルによるセラミック基板12への亀裂や割れの発生のおそれがなくなる。これにより、第1金属板14の厚みt1を大きくすることが可能となり、放熱性の向上を図ることができる。
【0048】
また、第1界面32aへの熱応力が緩和されることから、第2金属板16の厚みt2を第1金属板14の厚みt1よりも小さくしても、第1セラミック回路基板10A全体の反りの発生が抑制され、半田付けされたパワー半導体26への割れの発生や、接合層24へのクラックの発生のおそれがなくなる。これにより、セラミック基板12からヒートシンク30までの距離を短くすることができ、放熱性を向上させることができると共に、第1セラミック回路基板10Aの低背化(薄型化)にも有利になる。また、パワー半導体26が実装される面(第1金属板14の表面14a)が部材18の表面とほぼ同じ、あるいは部材18の表面よりも高くなるため、パワー半導体26の実装性の向上を図ることができる。
【0049】
また、部材18とセラミック基板12として、第1セラミック回路基板10Aに反りが発生するのを抑制するように、少なくとも物性及び厚みが調整されたものを用いることが好ましい。これは、部材18とセラミック基板12の熱膨張係数、ヤング率から、それぞれの厚みを調整することによって達成することができる。例えば、部材18とセラミック基板12のヤング率が同等の場合、部材18の熱膨張係数がセラミック基板12よりも小さいのであれば、部材18の厚みは、セラミック基板12よりも薄くすることである。また、部材18とセラミック基板12の構成材料を同種にすること、例えば部材18の構成材料をセラミックにすること等が挙げられる。具体的には、セラミック基板12の構成材料を例えばSi
3N
4としたとき、部材18もSi
3N
4とすること等である。Si
3N
4は、熱伝導率が高いだけでなく、「強度」、「靱性」も高く、熱サイクルによるセラミック基板12のクラック(亀裂)や割れに対する耐性が高いため好適に用いられる。
【0050】
部材18の好ましい構成材料としては、セラミックス、半導体、金属等が挙げられる。セラミックスは、Si
3N
4、AlN、Al
2O
3、SiC(炭化珪素)、コージェライト、ムライト等が挙げられ、半導体は、Si(シリコン)、GaN(窒化ガリウム)、SiC等が挙げられる。金属は、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、Nb(ニオブ)、Ir(イリジウム)、又はこれらを主成分とする合金(CuMo、CuW等)が挙げられる。
【0051】
部材18は、厚みが100μm以上、1mm以下、熱膨張係数が10ppm/K以下が好ましい。また、ヤング率は第1金属板14よりも大きいことが好ましい。第1金属板14が例えば銅であれば、130GPa以上が好ましい。後述する熱サイクルにおける接合層24やセラミック基板12へのクラックの発生を効果的に防止することができる。また、セラミック基板12と同様の材料であれば、セラミック基板12を製造する際に同時に部材18を製造することができるため、コスト的に有利である。
【0052】
また、部材18と第1金属板14との接合については、部材18の構成材料がセラミックス又は半導体であれば、Ag−Cuろう等によるろう付けを用いることができる。部材18の構成材料が金属材料であれば、ろう付けだけでなく、溶射等のコーティングも用いることができる。
【0053】
このように、第1セラミック回路基板10A及び第1電子デバイス28Aにおいては、少なくともパワー半導体26が実装される側の第1金属板14を厚くしても、第1金属板14とセラミック基板12の第1界面32aで生じる熱応力を緩和することができると共に、反りの発生も抑制することができ、放熱性の向上を図ることができる。しかも、小型化にも有利となる。
【0054】
次に、第1セラミック回路基板10Aのいくつかの変形例について
図4A〜
図10Cを参照しながら説明する。
【0055】
上述した寸法関係のうち、(A−2)、(A−4)、(A−5)、(A−6)及び(A−8)の例は、部材18の一部が、第1金属板14の表面14aの外周14cよりも横方向に張り出している例を示し、代表的に、(A−5)の例(第1変形例に係る第1セラミック回路基板10Aa)を
図4A及び
図4Bに示す。この第1変形例では、第1金属板14の表面14aに部材18を接合する際の位置合わせが容易であり、工数の低減、歩留りの向上、生産性の向上を図ることができる。
【0056】
(A−3)、(A−7)、(A−9)の例は、部材18の全体が、窪み20の底面20a内に接合されている例を示し、代表的に、(A−9)の例(第2変形例に係る第1セラミック回路基板10Ab)を
図5A及び
図5Bに示す。この第2変形例では、部材18の構成材料の量が少なくて済み、製造コストの低減を図ることができる。
【0057】
第3変形例に係る第1セラミック回路基板10Acは、第1セラミック回路基板10Aとほぼ同様の構成を有するが、
図6A及び
図6Bに示すように、環状の窪み20が、第1金属板14の表面14aの外周14cよりも内側の位置に形成されている点で異なる。
【0058】
第4変形例及び第5変形例に係る第1セラミック回路基板10Ad及び10Aeは、第1セラミック回路基板10Aとほぼ同様の構成を有するが、
図7A〜
図8Bに示すように、複数の部材18が窪み20の環状に沿って配列されている点で異なる。これら第4変形例及び第5変形例では、部材18の製造が簡単であり、工数の低減、歩留りの向上、生産性の向上を図ることができる。
【0059】
第4変形例では、
図7A及び
図7Bに示すように、直線状に延びる4つの平板状の部材18が窪み20の環状に沿って配列されている。第5変形例では、
図8A及び
図8Bに示すように、L字状に屈曲した2つの平板状の部材18が窪み20の環状に沿って配列されている。
【0060】
第6変形例に係る第1セラミック回路基板10Afは、第1セラミック回路基板10Aとほぼ同様の構成を有するが、
図9A及び
図9Bに示すように、直線状に延びる2つの窪み20がそれぞれ線対称の位置に形成され、各窪み20にそれぞれ部材18が接合されている。この場合、部材18の構成材料の量が少なくて済み、製造コストの低減を図ることができる。
【0061】
第7変形例に係る第1セラミック回路基板10Agは、第1セラミック回路基板10Aとほぼ同様の構成を有するが、
図10A及び
図10Bに示すように、セラミック基板12の裏面12bに第2金属板16が接合されていない点で異なる。なお、上述の第1セラミック回路基板10Agにおいて、セラミック基板12の裏面12bにヒートシンク30を接合する場合は、
図10Cに示すように、セラミック基板12の裏面12bとヒートシンク30との間に伝熱グリースやTIM等17を挟んで接合してもよい。
【0062】
これら第1変形例〜第7変形例に係る第1セラミック回路基板10Aa〜10Agにおいても、第1セラミック回路基板10Aと同様の効果を奏する。
【0063】
次に、第2の本実施の形態に係るセラミック回路基板(以下、第2セラミック回路基板10Bと記す)及び第2の本実施の形態に係る電子デバイス(以下、第2電子デバイス28Bと記す)について、
図11A〜
図18Cを参照しながら説明する。
【0064】
第2セラミック回路基板10Bは、上述した第1セラミック回路基板10Aとほぼ同様の構成を有するが、
図11A及び
図11Bに示すように、第1金属板14の表面14aに窪みがなく、平坦な表面14a(平坦面)上に環状の部材18が接合されている点で異なる。
【0065】
部材18を上面から見た内周の長さ(縦方向の長さDi2y及び横方向の長さDi2x)と第1金属板14の縦方向の長さL1y及び横方向の長さL1xとの関係は、
Di2y<L1y
Di2x<L1x
である。
【0066】
部材18を上面から見た外周の長さ(縦方向の長さDe2y及び横方向の長さDe2x)と第1金属板14の縦方向の長さL1y及び横方向の長さL1xとの関係は、以下の関係のいずれを採用してもよい。
(B−1) D2ey=L1y、D2ex=L1x
(B−2) D2ey>L1y、D2ex=L1x
(B−3) D2ey<L1y、D2ex=L1x
(B−4) D2ey=L1y、D2ex>L1x
(B−5) D2ey>L1y、D2ex>L1x
(B−6) D2ey<L1y、D2ex>L1x
(B−7) D2ey=L1y、D2ex<L1x
(B−8) D2ey>L1y、D2ex<L1x
(B−9) D2ey<L1y、D2ex<L1x
【0067】
このうち、(B−1)の例が上述した第2セラミック回路基板10B(
図11A及び
図11B参照)である。
【0068】
(B−2)、(B−4)、(B−5)、(B−6)及び(B−8)の例は、部材18の一部が、第1金属板14の表面14aの外周14cよりも横方向に張り出している例を示し、代表的に、(B−5)の例(第1変形例に係る第2セラミック回路基板10Ba)を
図12A及び
図12Bに示す。この第1変形例では、第1金属板14の表面14aに部材18を接合する際の位置合わせが容易であり、工数の低減、歩留りの向上、生産性の向上を図ることができる。
【0069】
(B−3)、(B−7)、(B−9)の例は、部材18の全体が、第1金属板14の表面14a内に接合されている例を示し、代表的に、(B−9)の例(第2変形例に係る第2セラミック回路基板10Bb)を
図13A及び
図13Bに示す。この第2変形例では、部材18の構成材料の量が少なくて済み、製造コストの低減を図ることができる。
【0070】
第3変形例及び第4変形例に係る第2セラミック回路基板10Bc及び10Bdは、第1セラミック回路基板10Aとほぼ同様の構成を有するが、
図14A〜
図15Bに示すように、複数の部材18が第1金属板14の表面14aの外周14cに沿って配列されている点で異なる。これら第3変形例及び第4変形例では、部材18の製造が簡単であり、工数の低減、歩留りの向上、生産性の向上を図ることができる。
【0071】
第3変形例では、
図14A及び
図14Bに示すように、直線状に延びる4つの平板状の部材18が第1金属板14の表面14aの外周14cに沿って配列されている。第4変形例では、
図15A及び
図15Bに示すように、L字状に屈曲した2つの平板状の部材18が第1金属板14の表面14aの外周14cに沿って配列されている。
【0072】
第5変形例に係る第2セラミック回路基板10Beは、
図16A及び
図16Bに示すように、上述した第3変形例から一部の部材18を除いた構成を有する。
図16A及び
図16Bでは、長辺がそれぞれ同じ方向に延びる2つの部材18を接合した(直線状に延びる2つの部材18をそれぞれ線対称の位置に接合した)例を示す。この第5変形例では、部材18の構成材料の量が少なくて済み、製造コストの低減を図ることができる。
【0073】
そして、第2電子デバイス28Bは、上述した第1電子デバイス28Aと同様に、
図17Aに示すように、第1金属板14の表面14a(平坦面)のうち、部材18の孔22から露出する部分に半田等の接合層24を介してパワー半導体26が実装されることで構成される。もちろん、
図17Bに示すように、さらに、第2金属板16の端面にヒートシンク30を接合して第2電子デバイス28Bを構成してもよい。
【0074】
この第2セラミック回路基板10Bにおいては、第1金属板14の表面14a(平坦面)に部材18を接合したので、使用時における熱サイクルによって、上述した(a)〜(c)に示す熱応力が発生することになる。
【0075】
これにより、熱応力が第1界面32aに集中して発生するということが回避され、使用時の熱サイクルによるセラミック基板12への亀裂や割れの発生のおそれがなくなる。その結果、第1金属板14の厚みt1を大きくすることが可能となり、放熱性の向上を図ることができる。
【0076】
また、第2金属板16の厚みt2を第1金属板14の厚みt1よりも小さくすることができ、放熱性を向上させることができると共に、第2セラミック回路基板10Bの低背化(薄型化)にも有利になる。
【0077】
図18A及び
図18Bに示すように、セラミック基板12の裏面12bに第2金属板16を接合しない構成(第6変形例に係る第2セラミック回路基板10Bf)を採用してもよい。なお、上述の第2セラミック回路基板10Bfにおいて、セラミック基板12の裏面12bにヒートシンク30を接合する場合は、
図18Cに示すように、セラミック基板12の裏面12bとヒートシンク30との間に伝熱グリースやTIM等17を挟んで接合してもよい。
【0078】
これら第1変形例〜第6変形例に係る第2セラミック回路基板10Ba〜10Bfにおいても、第2セラミック回路基板10Bと同様の効果を奏する。
【実施例】
【0079】
[第1実施例]
実施例1〜5、比較例1及び2について、接合層24及びセラミック基板12へのクラックの有無を評価した。評価結果を後述する表1に示す。
【0080】
セラミック基板12及び部材18のために、曲げ強度が650MPaで、厚みが0.3mmの窒化珪素(Si
3N
4)基板を用意した。第1金属板14及び第2金属板16のために、無酸素Cu板を用意した。また、Ti活性金属粉末を添加したAg−Cu系のろう材ペーストを用意した。
【0081】
(実施例1)
実施例1に係る評価サンプルのセラミック回路基板は、
図11A及び
図11Bに示す第2セラミック回路基板10Bと同様の構成を有する。すなわち、環状の部材18を使用した(表1において「(環状)」と表記した)。
【0082】
先ず、セラミック基板12及び部材18にろう材を厚み10μm塗布し、Cu板(第1金属板14及び第2金属板16)を接合した。第1金属板14の厚みt1は2mm、第2金属板16の厚みt2は0.1mmとした。接合条件は、真空下、温度800℃、1MPaで加熱加圧接合した。その後、
図17A及び
図17Bに示すように、パワー半導体26を接合層24(この場合、半田層)で接合し、実施例1に係る評価サンプルとした。10個の評価サンプルを作製した。
【0083】
(実施例2)
実施例2に係る評価サンプルのセラミック回路基板は、
図14A及び
図14Bに示すセラミック回路基板10Bcと同様の構成を有する。すなわち、4つの部材18を第1金属板14の表面14aの外周14cに沿って配列接合した点(表1において「(分割1)」と表記した)以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る10個の評価サンプルを作製した。
【0084】
(実施例3)
実施例3に係る評価サンプルのセラミック回路基板は、
図16A及び
図16Bに示すセラミック回路基板10Beと同様の構成を有する。すなわち、直線状に延びる2つの部材18をそれぞれ線対称の位置に接合した点(表1において「(分割2)」と表記した)以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る10個の評価サンプルを作製した。
【0085】
(実施例4)
実施例4に係る評価サンプルのセラミック回路基板は、
図1A及び
図1Bに示す第1セラミック回路基板10Aと同様の構成を有する。すなわち、第1金属板14の表面14aの外周部分をエッチングして、環状の窪み20を形成し、窪み20に環状の部材18を埋め込み接合した点(表1において「(埋込)」と表記した)以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る10個の評価サンプルを作製した。
【0086】
(実施例5)
実施例5に係る評価サンプルのセラミック回路基板は、
図18A及び
図18Bに示すセラミック回路基板10Bfと同様の構成を有する。すなわち、セラミック基板12の裏面12bに第2金属板16を接合しなかった点以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る10個の評価サンプルを作製した。
【0087】
(比較例1)
比較例1に係る評価サンプルのセラミック回路基板は、
図20に示すセラミック回路基板100と同様の構成を有する。すなわち、第1金属板104に部材18を接合せず、第1金属板104及び第2金属板106の厚みを共に2mmとした点以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る10個の評価サンプルを作製した。
【0088】
(比較例2)
比較例2に係る評価サンプルは、第1金属板104に部材18を接合せず、第1金属板104の厚みを2mm、第2金属板106の厚みを0.1mmとした点以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る10個の評価サンプルを作製した。
【0089】
<評価>
先ず、評価方法として、温度=−40℃〜125℃の熱サイクル試験を実施した。サイクル数=100サイクルとし、1サイクル当たり、−40℃(低温)下で30分、125℃(高温)下で30分保持した。熱サイクル試験終了後に、接合層24へのクラックの発生率と、セラミック基板へのクラックの発生率を評価した。具体的には、接合層24へのクラックの発生率は、10個の評価サンプルのうち、接合層24にクラックが発生した評価サンプルの個数で表し、セラミック基板へのクラックの発生率は、10個の評価サンプルのうち、セラミック基板12(セラミック基板102)にクラックが発生した評価サンプルの個数で表した。表1には、クラックが発生した評価サンプルの個数/評価サンプルの母数(=10)で表記した。評価結果を下記表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1から、実施例1〜5に係る評価サンプルは、いずれも接合層24及びセラミック基板12にクラックが発生しなかった。これは、第1金属板14の表面14aに部材18を接合したことから、第1金属板14とセラミック基板12との界面32aに発生する熱応力が緩和されたことによるものと考えられる。
【0092】
これに対して、比較例1は、いずれも接合層24にはクラックが生じていなかったが、10個の評価サンプル中、7個の評価サンプルにおいてセラミック基板102にクラックが発生していた。比較例2は、いずれもセラミック基板102にはクラックが生じていなかったが、10個の評価サンプル全てにおいて接合層24にクラックが発生していた。
【0093】
[第2実施例]
実施例6〜12について、接合層24及びセラミック基板12へのクラックの有無を評価した。評価結果を後述する表2に示す。
【0094】
セラミック基板12のために、曲げ強度が650MPaで、厚みが0.3mmの窒化珪素(Si
3N
4)基板を用意した。Si
3N
4基板は、熱膨張係数が3.1ppm/K、ヤング率が330GPaである。第1金属板14及び第2金属板16のために、無酸素Cu板を用意した。無酸素Cu板は、熱膨張係数が16.5ppm/K、ヤング率が129.8GPaである。また、Ti活性金属粉末を添加したAg−Cu系のろう材ペーストを用意した。
【0095】
(実施例6)
部材18のために、厚みが0.3mmのアルミナ(Al
2O
3)基板を用意した。Al
2O
3基板は、熱膨張係数が7.2ppm/K、ヤング率が310GPaである。そして、実施例6に係る評価サンプルのセラミック回路基板は、上述した第1実施例と同様に、
図11A及び
図11Bに示す第2セラミック回路基板10Bと同様の構成を有する。すなわち、環状の部材18を使用した(表2において「(環状配置)」と表記した)。
【0096】
先ず、セラミック基板12及び部材18にろう材を厚み10μm塗布し、Cu板(第1金属板14及び第2金属板16)を接合した。第1金属板14の厚みt1は2mm、第2金属板16の厚みt2は0.1mmとした。接合条件は、真空下、温度800℃、1MPaで加熱加圧接合した。その後、
図17A及び
図17Bに示すように、パワー半導体26を接合層24(この場合、半田層)で接合し、実施例6に係る評価サンプルとした。10個の評価サンプルを作製した。
【0097】
(実施例7)
部材18のために、厚みが0.3mmのアルミナ−ジルコニア(Al
2O
3−ZrO
2)基板を用意したこと以外は、上述した実施例6と同様にして、実施例7に係る10個の評価サンプルを作製した。Al
2O
3−ZrO
2基板は、Al
2O
3を80質量%、ZrO
2を20質量%含有する。また、熱膨張係数が8.3ppm/K、ヤング率が380GPaである。
【0098】
(実施例8)
部材18のために、厚みが0.3mmの炭化珪素(SiC)基板を用意したこと以外は、上述した実施例6と同様にして、実施例8に係る10個の評価サンプルを作製した。SiC基板は、熱膨張係数が3.8ppm/K、ヤング率が390GPaである。
【0099】
(実施例9)
部材18のために、厚みが0.3mmのジルコニア(ZrO
2)基板を用意したこと以外は、上述した実施例6と同様にして、実施例9に係る10個の評価サンプルを作製した。ZrO
2基板は、熱膨張係数が10.5ppm/K、ヤング率が200GPaである。
【0100】
(実施例10)
部材18のために、厚みが0.3mmのシリコン(Si)基板を用意したこと以外は、上述した実施例6と同様にして、実施例10に係る10個の評価サンプルを作製した。Si基板は、熱膨張係数が3.9ppm/K、ヤング率が190GPaである。
【0101】
(実施例11)
部材18のために、厚みが0.3mmのタングステン(W)基板を用意したこと以外は、上述した実施例6と同様にして、実施例11に係る10個の評価サンプルを作製した。W基板は、熱膨張係数が4.3ppm/K、ヤング率が345GPaである。
【0102】
(実施例12)
部材18のために、厚みが0.3mmのタングステン−銅(W−Cu)基板を用意したこと以外は、上述した実施例6と同様にして、実施例12に係る10個の評価サンプルを作製した。W−Cu基板は、Wを80質量%、Cuを20質量%含有する。また、熱膨張係数が8.3ppm/K、ヤング率が290GPaである。
【0103】
<評価>
上述した第1実施例と同様に、評価方法として、温度=−40℃〜125℃の熱サイクル試験を実施した。サイクル数=100サイクルとし、1サイクル当たり、−40℃(低温)下で30分、125℃(高温)下で30分保持した。熱サイクル試験終了後に、接合層24へのクラックの発生率と、セラミック基板へのクラックの発生率を評価した。評価結果を下記表2に示す。表2においても、表1と同様に、クラックが発生した評価サンプルの個数/評価サンプルの母数(=10)で表記した。
【0104】
【表2】
【0105】
表2から、実施例6〜12のうち、実施例9を除く実施例はいずれも接合層24及びセラミック基板12にクラックが発生しなかった。これは、第1金属板14の表面14aに部材18を接合したことから、第1金属板14とセラミック基板12との界面32aに発生する熱応力が緩和されたことによるものと考えられる。
【0106】
実施例9については、10個の評価サンプル中、1個の評価サンプルにおいて接合層24及びセラミック基板12にクラックが発生していたが、実用上は問題ないレベルである。実施例9のみにクラックが発生したのは、実施例6〜12のうち実施例9のZrO
2板の熱膨張係数が第1金属板14の熱膨張係数(この場合、16.5ppm/K)に最も近いためと考えられる。
【0107】
なお、本発明に係るセラミック回路基板及び電子デバイスは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。