特許第6560124号(P6560124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6560124ミネラルウール系断熱物品及びその物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560124
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】ミネラルウール系断熱物品及びその物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4218 20120101AFI20190805BHJP
   D04H 1/74 20060101ALI20190805BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20190805BHJP
   E04B 1/88 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   D04H1/4218
   D04H1/74
   F16L59/02
   E04B1/88 Z
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-552122(P2015-552122)
(86)(22)【出願日】2014年1月8日
(65)【公表番号】特表2016-512578(P2016-512578A)
(43)【公表日】2016年4月28日
(86)【国際出願番号】FR2014050018
(87)【国際公開番号】WO2014108630
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2016年12月8日
(31)【優先権主張番号】1350235
(32)【優先日】2013年1月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン−ゴバン イゾベール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】寺上 健一郎
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/059752(WO,A1)
【文献】 特表2004−504248(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0111198(US,A1)
【文献】 特開平05−069450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
E04B 1/88
F16L 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維を含むミネラルウール系断熱物品であって、その物品は、2つの主要面と、それら主要面に対して垂直である長手方向の端部及び横断方向の端部とを有し、以下の配向率によって特徴付けられる、ミネラルウール系断熱物品:
−長手断面でのみ前記無機繊維が考慮される場合、前記主要面の平面に対して±6°の角度に沿う、長手方向の配向率TO(0°+/-6°)は、48%以上であり、かつ
−横断断面及び長手断面の両方で前記無機繊維が考慮される場合、前記主要面の平面に対して±6°の角度に沿う、平均配向率TO(0°+/-6°)は、40%以上である。
【請求項2】
前記長手方向の配向率TO(0°+/-6°)は、50%以上であり、かつ前記平均配向率TO(0°+/-6°)は、45%以上である、請求項1に記載の断熱物品。
【請求項3】
前記物品が、以下の配向率によってさらに特徴付けられる、請求項1又は2に記載の断熱物品:
−長手断面でのみ前記無機繊維が考慮される場合、前記主要面の平面に対して±12°の角度に沿う、長手方向の配向率TO(0°+/-12°)は、75%以上であり、かつ
−横断断面及び長手断面の両方で前記無機繊維が考慮される場合、前記主要面の平面に対して±12°の角度に沿う、平均配向率TO(0°+/-12°)は、70%以上である。
【請求項4】
前記物品が、以下の配向率によってさらに特徴付けられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の断熱物品:
−長手断面でのみ前記無機繊維が考慮される場合、前記主要面の平面に対して±24°の角度に沿う、長手方向の配向率TO(0°+/-24°)は、90%以上であり、かつ
−横断断面及び長手断面の両方で前記無機繊維が考慮される場合、前記主要面の平面に対して±24°の角度に沿う、平均配向率TO(0°+/-24°)は、85%以上である。
【請求項5】
前記無機繊維のマイクロネア値が、8〜15L/minの範囲である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の断熱物品。
【請求項6】
熱伝導率が32mW/m.K以下であり、かつ密度が少なくとも15kg/mである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の断熱物品。
【請求項7】
熱伝導率が29mW/m.K以下であり、かつ密度が少なくとも40kg/mである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の断熱物品。
【請求項8】
密度が55〜80kg/mである、請求項7に記載の断熱物品。
【請求項9】
以下の工程を含むミネラルウール系断熱物品の製造方法:
−内部遠心による無機繊維の製造、
−Vのスピードを有する受け取りベルト上へのその無機繊維の受け入れ、
−第1グループのコンベヤー上の前記無機繊維の運搬、ここで前記第1グループのコンベヤーの最後のコンベヤーのスピードVは、Vの100%105%以下の範囲である、
−第2グループのコンベヤー上の前記無機繊維の運搬、ここで前記第2グループのコンベヤーの最後のコンベヤーのスピードVは、Vの108%〜120%の範囲である。
【請求項10】
前記第2グループのコンベヤーの最後のコンベヤーの前記スピードVは、Vの110%〜115%の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2グループのコンベヤーが、全て、前記第1グループのコンベヤーのスピードよりも速いスピードを有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1グループのコンベヤーの数が、3つ〜10つの範囲である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2グループのコンベヤーの数が、2つ〜5つの範囲である、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1グループの各コンベヤーのスピードが、先行するコンベヤーと同じ量だけ増加する、請求項9〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2グループの各コンベヤーのスピードが、先行するコンベヤーと同じ量だけ増加し、又は前記第2グループの各コンベヤーのスピードが、先行するコンベヤーのスピードよりも早く増加する、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも2つの最後の前記コンベヤーに関して、少なくとも2つの最後の前記コンベヤーと少なくとも2つの上部の駆動装置との間を前記無機繊維が進行する際に、前記無機繊維が次第に圧縮される、請求項9〜15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミネラルウール系断熱物品、例えばグラスウール系断熱物品、断熱用物品及び場合により遮音用物品の組成に組み込まれるように特に設計されているミネラルウール系断熱物品、例えばグラスウール系断熱物品、特に壁及び/又は屋根のライニング用のミネラルウール系断熱物品、例えばグラスウール系断熱物品に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁物品の市場において、サプライヤーは常に、断熱に関してより一層高い性能を有する物品を提供することを望んでいる。物品の断熱性能は一般に、熱伝導率λの知見によって決定される。物品の熱伝導率λは、熱流が物品を通って流れることを可能とする物品の性能であると思い出され;熱伝導率は、W/m.Kで表記される。この熱伝導率が低ければ低いほど、その物品はより絶縁性が高く、そしてそのため物品はより一層断熱性が高い。
【0003】
現在の市場において、ロックウール又はグラスウールで構成されているミネラルウール系物品は、0.040〜0.035W/m.Kの間に位置し、それらいくつかは熱伝導率約0.032W/m.Kでさえある。他に記載がない限り、熱伝導率は、標準規格ISO8301に準拠して10℃で従来通りに測定したものである。
【0004】
建造物の断熱性を向上することが常に望まれている。この向上は、絶縁物品の厚みを増すことによって一般に達成される。しかし、厚みを増すにつれて、物品は重くなり、より取扱が困難となり、そして断熱空間の体積がより小さくなる。
【0005】
そのため、物品の厚みを増加させることなしに向上した断熱特性を示すミネラルウール系断熱物品に関するニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的に関して、本発明は、無機繊維を含むミネラルウール系断熱物品を提供する。この物品は、2つの主要面と、それら主要面に対して垂直である長手方向(longitudinal)の端部及び横断方向(transverse)の端部とを有し、以下の配向率によって特徴付けられる:
−長手断面でのみ無機繊維が考慮される場合、主要面の平面に対して±6°の角度に沿う、長手方向の配向率は、48%以上又は50%以上であり、かつ
−横断断面及び長手断面の両方で無機繊維が考慮される場合、主要面の平面に対して±6°の角度に沿う、平均配向率は、40%以上又は45%以上である。
【0007】
他の特徴によれば、物品を以下の配向率によってさらに特徴付けられる:
−横断断面及び長手断面の両方で無機繊維が考慮される場合、主要面の平面に対して±12°の角度に沿う、長手方向の配向率は、75%以上又は80%以上であり、かつ
−横断断面及び長手断面の両方で無機繊維が考慮される場合、主要面の平面に対して±12°の角度に沿う、平均配向率は、70%以上又は72%以上である。
【0008】
他の特徴によれば、物品を以下の配向率によってさらに特徴付けられる:
−横断断面及び長手断面の両方で無機繊維が考慮される場合、主要面の平面に対して±24°の角度に沿う、長手方向の配向率は、90%以上であり、かつ
−横断断面及び長手断面の両方で無機繊維が考慮される場合、主要面の平面に対して±24°の角度に沿う、平均配向率は、85%以上である。
【0009】
他の特徴によれば、無機繊維のマイクロネア(micronaire)は、8〜15L/minの範囲である。
【0010】
他の特徴によれば、物品の熱伝導率は32mW/m.K以下であり、物品の密度は少なくとも15kg/m、好ましくは15〜60kg/m、特に15〜27kg/m又は18〜25kg/mの範囲である。
【0011】
他の特徴によれば、物品の熱伝導率は29mW/m.K以下であり、物品の密度は少なくとも40kg/m、好ましくは50kg/m以上又は55〜80kg/m、特に55〜65kg/mである。
【0012】
本発明はまた、以下の工程を含むミネラルウール系断熱物品の製造方法に関する:
−内部遠心による無機繊維の製造、
−Vのスピードを有する受け取りベルト上への無機繊維の受け入れ、
−第1グループのコンベヤー上の無機繊維の運搬、ここで第1グループのコンベヤーの最後のコンベヤーのスピードVは、Vの100%〜105%の範囲である、
−第2グループのコンベヤー上の無機繊維の運搬、ここで第2グループのコンベヤーの最後のコンベヤーのスピードVは、Vの108%〜120%の範囲、好ましくはVの110%〜115%の範囲である。
【0013】
他の特徴によれば、第2グループのコンベヤーは、全て、第1グループのコンベヤーのスピードよりも速いスピードを有する。
【0014】
他の特徴によれば、第1グループのコンベヤーの数は、3つ〜10つの範囲であり、好ましくは4つ〜8つの範囲、特に5つ〜7つの範囲である。
【0015】
他の特徴によれば、第2グループのコンベヤーの数は、2つ〜5つの範囲であり、好ましくは2つ又は3つである。
【0016】
他の特徴によれば、第1グループの各コンベヤーのスピードは、先行するコンベヤーと同じ量だけ増加する。
【0017】
他の特徴によれば、第2グループの各コンベヤーのスピードは、先行するコンベヤーと同じ量だけ増加し、又は第2グループの各コンベヤーのスピードは、先行するコンベヤーのスピードよりも比較的早く増加する。
【0018】
他の特徴によれば、少なくとも2つの最後のコンベヤーに関して、少なくとも2つの最後のコンベヤーと少なくとも2つの上部の駆動装置との間を無機繊維が進行する際に、その無機繊維は次第に圧縮される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において、「平均」という用語は、「算術平均」を意味する。
【0020】
さらに、本明細書において「の範囲で」によって定義されている全ての値の範囲は、範囲の境界も含む。
【0021】
本発明は、無機繊維を含むミネラルウール系断熱物品に関する。この物品は、2つの主要面と、それら主要面に対して垂直である長手方向の端部及び横断方向の端部とを有し、以下の配向率によって特徴付けられる:
−長手断面でのみ無機繊維が考慮される場合、主要面の平面に対して±6°の角度に沿う、長手方向の配向率は、48%以上又は50%以上であり、かつ
−横断断面及び長手断面の両方で無機繊維が考慮される場合、主要面の平面に対して±6°の角度に沿う、平均配向率は、40%以上又は45%以上である。
【0022】
配向率は、物品中の無機繊維の配向特性であるので、本発明による物品は、長手方向だけでなく、長手方向及び横断方向の2方向の平均において、無機繊維の並外れた水平性を持つ構造を有する。これにより、物品の熱伝導率を低減することを可能とし、そしてその結果、物品の厚みを増加させることなしに、物品の絶縁力を向上させる。
【0023】
配向率の決定は、以下の方法で行われる。
【0024】
まず第1に、同じサイズであり、かつ物品の厚みと同じ厚みを有するいくつかの六面体(parallelepipedic)の試験体(とりわけ少なくとも6つ)を、物品においてサンプリングする。セクショニング装置を用いて、例えば切り出し方向において繊維を引きずることなく鋭く切り出し、それにより切り出し前の物品を形成する繊維の形状を乱さないブレードを用いて、物品の切り出しを行う。各試験体は、長手方向の面と呼ばれる2つの第1面を含む。2つの第1面は共に、物品の長手方向の端部に平行であり、物品の主要面に垂直である。そして各試験体は、横断方向の面と呼ばれる2つの第2面を含む。2つの第2面は共に、物品の長手方向の端部に垂直であり、物品の主要面に垂直である。
【0025】
続いて、各試験体の少なくとも1つの長手方向の面及び少なくとも1つの横断方向の面を交互に観察する。観察される各面を、小さな面積(典型的には1×1mm)を有する単一領域に分け、そして各単一領域内で繊維を視覚的に観察する。全ての無機繊維の主要な方向は、単一領域内で決定される。各単一領域内において、物品の主要面に対して、全ての無機繊維の主要な方向によって形成される角度を注目する。この角度は、その単一領域の主要な配向と見なされる。各面は、面の全ての単一領域の主要な配向の分布を含む。角度区域(angular sector)0°+/-αによる配向率は、その主要な配向がこの角度区域の範囲内になる単一領域の割合を意味する。この目的に関して、例えばコントラスト解析によって画像処理を行うために、画像処理アプリケーションと組み合わされた画像収集ツールを用いることができる。
【0026】
試験体の少なくとも1つの長手方向の面及びそれぞれの少なくとも1つの横断方向の面に関して、所定の角度区域0°+/-αの範囲内で、この面の長手方向の配向率to(0°+/-α)、それぞれの横断方向の配向率to(0°+/-α)が、決定される。その後、同じ所定の角度区域0°+/-αの範囲内で、長手断面、それぞれの横断断面における物品の長手方向の配向率TO(0°+/-α)、それぞれの横断方向の配向率TO(0°+/-α)を表すために、全ての試験体からのデータを平均化する。各所定の角度区域(0°+/-α)に関して、物品における横断方向の配向率及び長手方向の配向率の平均TO(0°+/-α)が計算され、その結果、TO(0°+/-α)=[TO(0°+/-α)+TO(0°+/-α)]/2となる。
【0027】
そのため本発明による物品において、物品の主要面の平面が水平である場合、角度区域が0°+/-6°及び180°+/-6°の範囲内で、長手方向の配向率は、48%以上又は50%以上であり(つまりTO(0°+/-6°)が48%以上又はTO(0°+/-6°)が50%以上)、そして同じ角度区域範囲内で、平均配向率は、40%以上又は45%以上である(つまりTO(0°+/-6°)が40%以上又はTO(0°+/-6°)が45%以上)。
【0028】
同様に、本発明による物品において、再び物品の主要面の平面が水平である場合、角度区域が0°+/-12°及び180°+/-12°の範囲内で、長手方向の配向率は、好ましくは75%以上又は80%以上であり(つまりTO(0°+/-12°)が75%以上又はTO(0°+/-6°)が80%以上)、そして同じ角度区域範囲内で、平均配向率は、好ましくは70%以上又は72%以上である(つまりTO(0°+/-12°)が70%以上又はTO(0°+/-12°)が72%以上)。
【0029】
さらに、本発明による物品において、再び物品の主要面の平面が水平である場合、角度区域が0°+/-24°及び180°+/-24°の範囲内で、長手方向の配向率は、好ましくは90%以上であり(つまりTO(0°+/-24°)が90%以上)、そして同じ角度区域範囲内で、平均配向率は、好ましくは85%以上である(つまりTO(0°+/-24°)が85%以上)。
【0030】
言い換えれば、物品中の無機繊維の水平性は、以下によって特徴付けられる:
−長手断面でのみ無機繊維が考慮される場合、主要面の平面に対して±6°の角度に沿う、長手方向の配向率TO(0°+/-6°)は、48%以上又は50%以上であり、かつ
−横断断面及び長手断面の両方で無機繊維が考慮される場合、主要面の平面に対して±6°の角度に沿う、平均配向率TO(0°+/-6°)は、40%以上又は45%以上である。
【0031】
好ましくは、無機繊維の水平性は以下によっても特徴付けられる:
−横断断面及び長手断面の両方で無機繊維が考慮される場合、主要面の平面に対して±12°の角度に沿う、長手方向の配向率TO(0°+/-12°)は、75%以上又は80%以上であり、かつ
−横断断面及び長手断面の両方で無機繊維が考慮される場合、主要面の平面に対して±12°の角度に沿う、平均配向率TO(0°+/-12°)は、70%以上又は72%以上である。
【0032】
好ましくは、無機繊維の水平性は以下によっても特徴付けられる:
−横断断面及び長手断面の両方で無機繊維が考慮される場合、主要面の平面に対して±24°の角度に沿う、長手方向の配向率TO(0°+/-24°)は、90%以上であり、かつ
−横断断面及び長手断面の両方で無機繊維が考慮される場合、主要面の平面に対して±24°の角度に沿う、平均配向率TO(0°+/-24°)は、85%以上である。
【0033】
したがって本発明による物品は、物品の主要面に略水平な多くの無機繊維を有する。それにより、物品は以下に示されるような向上された熱特性を示す。
【0034】
特に、本発明による絶縁物品の熱伝導率は、32mW/m.K以下であり、そして本発明による絶縁物品の密度は、少なくとも15kg/m、好ましくは60kg/m3以下、特に27kg/m以下若しくは18〜25kg/mの範囲であり、又は本発明による絶縁物品の熱伝導率は、29mW/m.K以下であり、そして本発明による絶縁物品の密度は、少なくとも40kg/m、好ましくは50kg/m以上若しくは55〜80kg/m、特に50〜65kg/m、若しくは55〜65kg/mの範囲である。
【0035】
さらに、本発明による物品中の無機繊維のマイクロネアは、好ましくは8〜15L/min、さらに好ましくは8〜12L/min、より好ましくは9〜11L/min、特に熱伝導率が29mW/m.K以下である物品に関して、本発明による物品中の無機繊維のマイクロネアは、10L/min以上であり、又は熱伝導率が32mW/m.K以下である物品に関して、本発明による物品中の無機繊維のマイクロネアは8〜12L/minである。
【0036】
繊維の繊度は、5g未満での繊維のマイクロネア値(F)によってしばしば決定されることが想起される。サイズ処理されていないマットから抽出される多量の繊維が、ガス(一般には酸素又は窒素)の所定の圧力下に置かれる場合、「繊度指数(fineness index)」とも言われるマイクロネアの測定は、空的負荷の損失の測定に基づいて、比表面積を考慮する。この測定は、無機繊維に関する製造単位において通例であり、標準規格DIN53941又はASTMD1448に準拠して行われ、そして「マイクロネア装置」として知られる装置を使用して行われる。
【0037】
しかし、そのような装置は、一定の繊維の繊度に対して測定限界を有する。極めて細い繊維に関しては、国際公開第2003/098209号に記載されている既知の技術を用いて、繊度(「マイクロネア」)をL/minにおいて測定することができる。この特許出願はまさに、繊度指数を測定するための装置を含む繊維の繊度指数を決定する装置に関する。この繊度指数を測定するための装置は、一方では複数の繊維から構成されるサンプルを収容するように設計されている測定セルと接続されている第1開口部を少なくとも1つ有し、そして他方ではそのサンプルの両側にある差圧を測定するための装置と接続されている第2開口部を有する。この差圧を測定するための装置は、流体を発生する装置と接続されるように設計されており、この繊度指数を測定するための装置は、このセルを通過する流体のための容積式流量計を少なくとも1つ含むことを特徴とする。この装置は、「マイクロネア」値と1分あたりのリットル(L/min)との間の対応を与える。
【0038】
例として、国際公開第2003/098209号明細書によれば、繊維サンプルのマイクロネア値と繊維サンプルの平均直径の値との間に対応関係を述べることができる。おおまかに言及すると、約12L/minのマイクロネア値は、2.5〜3μmの平均直径に相当し、約13.5L/minのマイクロネア値は、3〜3.5μmの平均直径に実質的に相当し、最後に約18L/minのマイクロネア値は、約4〜5μmの平均直径に相当する。
【0039】
本発明の例となる実施態様を以下に示す。
【0040】
本発明による絶縁物品の製造方法を説明する。
【0041】
ミネラルウールは、溶融無機材料を出発物質とする内部遠心法によって製造される。内部遠心法の一例を以下に説明する。
【0042】
溶融ガラスのフィレットを、別名繊維形成プレートとして知られる遠心機に導入する。この遠心機は高スピードで回転し、そして外縁上に開けられた極めて多数の開口部を有する。遠心力の効果によって、開口部を通して、ガラスがフィラメントの形態で押し出される。その後これらのフィラメントは、環状バーナーによって高温度かつ高スピードで生成されるガス状の引き出し流の作用を受ける。遠心機の壁に沿って作動することによって、ガス状の引き出し流は、フィラメントを細くして、そしてそれらを繊維に転換する。形成された繊維は、ガス状の引き出し流によって、吸引手段と関連付けられているガス透過性バンドによって通常形成されている受け取りベルトへと運ばれる。繊維同士を結合してウール物品とするのに必要なバインダーは、繊維が受け取りベルトへ引き出される時に、繊維上にスプレーされる。吸引の効果による受け取りベルト上の繊維の蓄積は、繊維のカーペットを与える。この繊維のカーペットの厚みは、得るべき最終物品に応じて様々であってよい。
【0043】
受け取りベルトは、Vのスピードで前へ進む。無機繊維は続いて、バインダーを重合させるために、受け取りベルトとオーブンとの間に配置されたコンベヤーによって、オーブンへと運ばれる。本発明の方法によれば、コンベヤーは2つのグループに分けられる:受け取りベルトの出口にある第1グループと、続いて第1グループとオーブンとの間にある第2グループである。
【0044】
第1グループのコンベヤーは、3つ〜10つのコンベヤーを含み、好ましくは4つ〜8つのコンベヤー、特に5つ〜7つのコンベヤーを含む。第1グループの各コンベヤーのスピードは、受け取りベルトのスピードと同じであってよい。第1グループのコンベヤーの最後のコンベヤーのスピードVは、最低でもVの100%に等しい。変形態様として、コンベヤーに関して十分な張力を確保するために、第1グループの各コンベヤーのスピードを、あるコンベヤーから次のコンベヤーへと徐々に速くすることができる。好ましくは、第1グループの各コンベヤーのスピードは、すぐ前のコンベヤーと同じだけ増加する。したがって、例えば1番目のコンベヤーは、Vの101%のスピードを有し、2番目のコンベヤーは、Vの102%のスピードを有し、3番目のコンベヤーは、Vの103%のスピードを有するなどとなる。この場合、各コンベヤーでの増加はVの101%である。第1グループのコンベヤーの最後のコンベヤーのスピードVは、一方で最大でもVの105%に等しい。これら2つの境界値の間で、様々な変形形態を想定することができるが、第1グループのコンベヤーの最後のコンベヤーのスピードVは、Vの100%〜105%の範囲である。
【0045】
第2グループのコンベヤーは、2つ〜5つのコンベヤーを含み、好ましくは2つ又は3つのコンベヤーを含む。第2グループのコンベヤーの最後のコンベヤーのスピードVは、Vの108%〜120%の範囲であり、好ましくはVの110%〜115%の範囲である。第2グループの各コンベヤーのスピードを、あるコンベヤーから次のコンベヤーへと好ましくは速くする。そして好ましくは、第2グループの全てのコンベヤーは、第1グループのコンベヤーのスピードよりも速いスピードを有する。好ましくは、第2グループの各コンベヤーのスピードは、すぐ前のコンベヤーと同じだけ増加するか、又は第2グループの各コンベヤーのスピードはすぐ前のコンベヤーのスピードよりも速く増加する。
【0046】
加えて、少なくとも2つの最後のコンベヤーに関して、無機繊維が、少なくとも2つの最後のコンベヤーと少なくとも2つの上部の駆動装置との間を進行する時に、その無機繊維は次第に圧縮される。その上部の駆動装置は、下部に位置するコンベヤーと同じスピードで無機繊維を運搬する。運搬コンベヤー/上部駆動装置の少なくとも1つの対が、水平面に対して対称であってよい。この漸進的な圧縮を第1グループのコンベヤー内で開始することができる。2つの連続する圧縮の間の圧縮を維持しつつ、圧縮工程とその後の駆動工程を連続させて、漸進的な圧縮を徐々に適用することができる。
【0047】
上部の駆動装置、第1グループのコンベヤー及び第2グループのコンベヤーは、いかなるタイプであってよく、例えばベルトタイプ、バンドタイプ又はローラータイプであってよい。
【0048】
の少なくとも108%に等しいスピードを有する第2グループのコンベヤーの存在によって、物品の全ての方向において、より好ましくは物品の長手方向において、比較的水平な繊維を得ることができる。そのため、物品の熱特性を向上することができる。
【0049】
10L/minのマイクロネアを有する無機繊維を製造する内部遠心によって、本発明による物品の2つの例を製造している。
【0050】
第1の例を製造するために、第1グループのコンベヤーは全て、受け取りベルトと同じスピードで進んだ。第2グループのコンベヤーにおいて、上流から下流まで、2つのコンベヤーはそれぞれ、Vの103%のスピード及びVの110%のスピードで進み、すなわち不均一なスピードで進んだ。得られた物品は、100mmの厚み、20kg/mの密度及び31.77mW/m.K.の熱伝導率を有する。長手断面でのみ無機繊維が考慮される場合、得られる物品は、物品の主要面の平面に対して±6°の角度に沿って、53%の長手方向の配向率TO(0°+/-6°)を有する。横断断面及び長手断面の両方で無機繊維が考慮される場合、得られる物品は、物品の主要面の平面に対して±6°の角度に沿って、46%の平均配向率TO(0°+/-6°)を有する。
【0051】
第2の例を製造するために、上流から下流まで、第1グループの5つのコンベヤーはそれぞれ、Vの101%のスピード、Vの102%のスピード、Vの103%のスピード、Vの104%のスピード、及びVの105%のスピードで進んだ。第2グループのコンベヤーにおいて、上流から下流まで、2つのコンベヤーはそれぞれ、Vの105%のスピード及びVの110%のスピードで進み、すなわち不均一なスピードで進んだ。得られた物品は、60mmの厚み、55kg/mの密度及び28.95mW/m.K.の熱伝導率を有する。長手断面でのみ無機繊維が考慮される場合、得られる物品は、物品の主要面の平面に対して±6°の角度に沿って、50%の長手方向の配向率TO(0°+/-6°)を有する。横断断面及び長手断面の両方で無機繊維が考慮される場合、得られる物品は、物品の主要面の平面に対して±6°の角度に沿って、45%の平均配向率TOm(0°+/-6°)を有する。
【0052】
本方法によっても、従来の物品に対して実質的な重量増加がある状態で、32mW/m.K.以下の熱伝導率及びとりわけ8〜11L/minの範囲のマイクロネアの繊維を有する物品を得ることができる。
【0053】
本発明による方法によって、妥当な厚みに関して、向上した熱伝導率を有する物品の製造をうまく達成している。
《態様1》
無機繊維を含むミネラルウール系断熱物品であって、その物品は、2つの主要面と、それら主要面に対して垂直である長手方向の端部及び横断方向の端部とを有し、以下の配向率によって特徴付けられる、ミネラルウール系断熱物品:
−長手断面でのみ前記無機繊維が考慮される場合、前記主要面の平面に対して±6°の角度に沿う、長手方向の配向率TO(0°+/-6°)は、48%以上又は50%以上であり、かつ
−横断断面及び長手断面の両方で前記無機繊維が考慮される場合、前記主要面の平面に対して±6°の角度に沿う、平均配向率TO(0°+/-6°)は、40%以上又は45%以上である。
《態様2》
前記物品が、以下の配向率によってさらに特徴付けられる、態様1に記載の断熱物品:
−横断断面及び長手断面の両方で前記無機繊維が考慮される場合、前記主要面の平面に対して±12°の角度に沿う、長手方向の配向率TO(0°+/-12°)は、75%以上又は80%以上であり、かつ
−横断断面及び長手断面の両方で前記無機繊維が考慮される場合、前記主要面の平面に対して±12°の角度に沿う、平均配向率TO(0°+/-12°)は、70%以上又は72%以上である。
《態様3》
前記物品が、以下の配向率によってさらに特徴付けられる、態様1又は2に記載の断熱物品:
−横断断面及び長手断面の両方で前記無機繊維が考慮される場合、前記主要面の平面に対して±24°の角度に沿う、長手方向の配向率TO(0°+/-24°)は、90%以上であり、かつ
−横断断面及び長手断面の両方で前記無機繊維が考慮される場合、前記主要面の平面に対して±24°の角度に沿う、平均配向率TO(0°+/-24°)は、85%以上である。
《態様4》
前記無機繊維のマイクロネア値が、8〜15L/minの範囲である、態様1〜3のいずれか一項に記載の断熱物品。
《態様5》
熱伝導率が32mW/m.K以下であり、かつ密度が少なくとも15kg/m、好ましくは15〜60kg/m、特に15〜27kg/m又は18〜25kg/mの範囲である、態様1〜4のいずれか一項に記載の断熱物品。
《態様6》
熱伝導率が29mW/m.K以下であり、かつ密度が少なくとも40kg/m、好ましくは50kg/m以上又は55〜80kg/m、特に50〜65kg/m又は55〜65kg/mである、態様1〜5のいずれか一項に記載の断熱物品。
《態様7》
以下の工程を含むミネラルウール系断熱物品の製造方法:
−内部遠心による無機繊維の製造、
−Vのスピードを有する受け取りベルト上へのその無機繊維の受け入れ、
−第1グループのコンベヤー上の前記無機繊維の運搬、ここで前記第1グループのコンベヤーの最後のコンベヤーのスピードVは、Vの100%〜105%の範囲である、
−第2グループのコンベヤー上の前記無機繊維の運搬、ここで前記第2グループのコンベヤーの最後のコンベヤーのスピードVは、Vの108%〜120%の範囲、好ましくはVの110%〜115%の範囲である。
《態様8》
前記第2グループのコンベヤーが、全て、前記第1グループのコンベヤーのスピードよりも速いスピードを有する、態様7に記載の方法。
《態様9》
前記第1グループのコンベヤーの数が、3つ〜10つの範囲であり、好ましくは4つ〜8つの範囲、特に5つ〜7つの範囲である、態様7又は8に記載の方法。
《態様10》
前記第2グループのコンベヤーの数が、2つ〜5つの範囲であり、好ましくは2つ又は3つである、態様7〜9のいずれか一項に記載の方法。
《態様11》
前記第1グループの各コンベヤーのスピードが、先行するコンベヤーと同じ量だけ増加する、態様7〜10のいずれか一項に記載の方法。
《態様12》
前記第2グループの各コンベヤーのスピードが、先行するコンベヤーと同じ量だけ増加し、又は前記第2グループの各コンベヤーのスピードが、先行するコンベヤーのスピードよりも比較的早く増加する、態様7〜11のいずれか一項に記載の方法。
《態様13》
少なくとも2つの最後の前記コンベヤーに関して、少なくとも2つの最後の前記コンベヤーと少なくとも2つの上部の駆動装置との間を前記無機繊維が進行する際に、前記無機繊維が次第に圧縮される、態様7〜12のいずれか一項に記載の方法。