(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
たばこ葉の香味を変更するためにたばこ葉を処理する方法について、従来から検討が行われている。例えば、たばこ葉としてバーレー種のたばこ葉について加圧乾燥を行う方法が知られている(特許文献1)。特許文献1には、加圧条件としては25kPa〜700kPaであるとともに、たばこ葉の水分含有量が10%を超えるように維持することが記載されている。
また、水分含量が少なくとも15%になるように調整されたたばこ葉の混合物を、香りや芳香成分が発生するのに十分な条件下(実質的に大気圧下)で熱処理(少なくとも250°F)が行われる技術も知られている(特許文献2)。特許文献2には、熱処理の時間は10分、温度は121〜177℃であることが記載されている(実施例)。
また、ベルトコンベア上にたばこストリップを積載し、これを乾燥機を通過するように搬送させて、乾燥処理を行う方法が知られている(特許文献3)。この方法では、約30%の水分含有量を有するたばこ葉を乾燥させることで、最終的にその水分含有量を約5%に減少させることが記載されており、また、乾燥の際の温度範囲として93〜118℃が記載されている。
また、たばこ葉、たばこストリップ、裁断されたたばこ葉を乾燥させるための回転乾燥機が知られている(特許文献4)。特許文献4には、たばこ葉を乾燥させるための具体的な条件についての記載はない。また、たばこ葉の水分含有量に関する記載もない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1〜3には、いずれもたばこ葉の水分をある一定以上に保ちながら加熱する工程が記載されている。
特許文献1には、加熱中のたばこ葉の水分含量を10%を超えて維持し、乾燥後のたばこ葉の水分含量も10%以上に維持することで、たばこ葉片の充填力(filling power)が向上すると記載されている。また、特許文献2には、十分な量の芳香成分を発生させるために、乾燥前のたばこ葉は、少なくとも15%の水分含有量を有している必要が記載されている。
一方、特許文献3には、たばこ葉の水分含有量を一定以上にしないと、処理後のたばこの化学組成や風味に影響を与える旨が記載されている。
【0005】
以上のように、各特許文献に記載の技術では、様々な目的でたばこ葉の乾燥処理を行っているものの、いずれも乾燥前のたばこ葉の水分含有量を高く調整したものを乾燥させることが記載されている。特に、乾燥工程においても、その水分量を極力減らさないようにすることが重要であることが特許文献1や3に記載されている。
上記のいずれの特許文献にも、たばこ葉の水分含有量が非常に少ない条件下で乾燥処理を行うことについては記載がない。また、たばこ葉の水分含有量が非常に少ない条件下で乾燥処理を行った場合のたばこ葉の膨嵩性や香味の変化との関係については記載されていない。
【0006】
本発明では、たばこ葉の膨嵩性を高めることができるとともに、香味を変化させたたばこ材料を得るための製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意検討した結果、たばこ葉の処理方法として、水分含有量が2.5重量%以下のたばこ葉原料を、100〜200℃の品温となる条件下で加熱する工程を含むことで、上記課題を解決できることがわかり本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]たばこ材料の製造方法であって、水の含有量が2.5重量%以下のたばこ葉原料を、品温が100〜200℃となる条件下で加熱する工程を含む、たばこ材料の製造方法。
[2]前記加熱工程の前に、たばこ葉原料の水の含有量を2.5重量%以下にまで減少させる乾燥工程を含む、[1]に記載の製造方法。
[3]前記乾燥工程に供されるたばこ葉原料の水の含有量が、10〜40重量%である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記たばこ葉原料が、刻み幅0.1〜2.0mmのラミナ、中骨またはこれらの混合物を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法で作製されたたばこ材料。
[6][5]に記載のたばこ材料を用いたたばこ製品。
[7][5]に記載のたばこ材料を用いたシガレット。
[8][5]に記載のたばこ材料を用いた無煙たばこ製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、膨嵩性が高められているとともに、香味が変化されているたばこ材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0012】
本発明のたばこ材料の製造方法は、水の含有量が2.5重量%以下のたばこ葉原料を、100〜200℃の品温で加熱する工程を含む。
水の含有量が2.5重量%以下のたばこ葉原料は、例えば以下の二通りの方法で得ることができる。
第一の方法としては、
図1(a)で示すように、水の含有量が例えば10〜40重量%であるたばこ葉原料を、後の加熱工程(本加熱)で用いる同じ加熱装置に入れ、常温から100〜200℃の温度範囲(品温)で加熱する(予備加熱あるいは乾燥)工程を含ませる態様を挙げることができる。
第二の方法としては、
図1(b)で示すように、水の含有量が例えば10〜40重量%であるたばこ葉原料を、後の加熱工程(本加熱)で用いる加熱装置とは同じあるいは異なる装置を用いて乾燥処理を別途行う方法を挙げることができる。この際の加熱温度や加熱装置としては特に制限されず、たばこ葉原料の水分含有量を2.5重量%以下まで減少させることができればよい。
【0013】
なお、たばこ葉原料における水の含有量は、以下の測定法により測定できる。
水分測定方法
1.ガラス製の試料容器に、たばこ葉原料を1〜2g量り取る。試料容器全体の重量を測定する。
2.試料容器を、ロータリー式乾燥機(松山工業社製、M-104AT)に入れ、回転させながら乾燥させる。その際、ロータリー式乾燥機は100℃に予熱しておく。
3.100℃で1時間乾燥させた後、試料容器を取り出し、デシケーター内で放冷させる。
4.放冷後、試料容器の重量を測定する。
5.水分を下記の式で計算する。
水分=(W1-W2) / (W1-W0) * 100
W0:試料容器の空重量
W1:乾燥前試料と試料容器重量
W2:乾燥後試料と試料容器重量
【0014】
水分含有量が2.5重量%以下であるたばこ葉原料の加熱は、たばこ葉原料の品温が100〜200℃になるように行われる。具体的な加熱方法としては、高温蒸気(200℃以上)や高温空気を接触させる方法や、200℃以上に加熱された加熱容器に接触させる方法を挙げることができる。
高温蒸気を接触させる方法と、加熱された加熱容器に接触させる方法は、それぞれ単独で行ってもよく、それらを併用して行ってもよい。
高温蒸気を発生させる手段としては公知のもの、例えば加熱蒸気発生装置(例えば、富士電機サーモシステムズ株式会社製、型式:IHSS-20B)を用いることができる。
加熱された加熱容器としては、ドラム型の缶壁加熱型乾燥機を挙げることができる。加熱容器の設定温度(缶壁温度の設定)としては、200℃〜330℃に設定する態様を挙げることができ、300℃程度に設定することが好ましい。
【0015】
水分含有量が2.5重量%以下であるたばこ葉原料の品温が100℃以上となる条件下で加熱を行うことで、たばこ葉の膨嵩性を高めるとともに香味の変化が大きくなり、一方、水分含有量が2.5重量%以下であるたばこ葉原料の品温が200℃以下となる条件下で加熱を行うことで、たばこ葉の炭化を防ぐことができる。より好ましい品温の条件としては120℃以上200℃以下が好ましい。
また、前記の加熱工程にかかる時間は、加熱されるたばこ葉原料の量や、装置の大きさなどにより条件が異なってくるが、たばこ葉原料の品温が100〜200℃となる時間として2秒以上加熱することで、膨嵩性を十分に高めることができ、香味も大きく変化させることができるので好ましい。この加熱時間は、たばこ葉原料の品温が100〜200℃となる時間として30秒以上、特に好ましくは120秒以上加熱するようにすることが、たばこ葉原料の膨嵩性を高める観点から好ましい。品温が200℃を超えた状態でたばこ葉原料を加熱しすぎることによりたばこ葉原料の破砕や炭化などの不都合が生じることを回避することが重要であり、品温が200℃以下になる状態を保持できる状態であれば加熱時間の上限は適宜設定可能である。
上記の加熱工程(本加熱)の時間は、たばこ葉原料の水分含有量が2.5重量%以下になっており、かつ品温が100〜200℃になっているときの時間を意味する。
【0016】
本発明の製造方法には、先に説明した予備加熱(水分含有量が2.5重量%を超える状態で、品温が常温〜100℃以上になっている状態)や、上記の本加熱以外に、たばこ葉原料の水の含有量が2.5重量以下になっている状態で品温が100℃未満のときの加熱(例えば加熱後の余熱による加熱状態)が含まれたり、本加熱の段階で、短時間であれば品温が200℃を超える状態で加熱が行われることがあってもよい。
【0017】
本発明でいうたばこの香味とは、ロースト感の強さ等をいい、本発明の製造方法を用いて得られるたばこ材料は、ロースト感が増大する。さらに、たばこ葉原料に中骨を含有させた場合には、中骨臭を低減できる。
【0018】
なお、本発明でいうたばこ葉原料の品温とは、以下の方法により測定される温度のことである。
加熱手段により加熱されたたばこ葉原料を、熱電対を差し込んだデュアー瓶に2秒以内に流し込み、これを熱電対に十分に接触させ、コルク栓をして静置して表示される最高温度を品温とする。
【0019】
本発明のたばこ材料の製造方法に用いるたばこ葉原料の形態としては、裁断済みのたばこ葉原料ならび裁断前のたばこ葉原料を用いることができる。また、たばこ葉原料は、たばこ葉を葉肉部(ラミナ)と葉脈部(中骨)に分けたもののうちどちらを用いてもよいし、たばこ葉部分ではないたばこ幹部を含んでいてもよい。たばこ葉原料としては、刻み幅0.1〜2.0mmに裁断されたものを挙げることができる。刻み幅は、たばこ材料の用途、例えばシガレットや口腔用たばこのような種類に応じて適宜決めることができる。たばこ葉品種としては、黄色種、バーレー種、在来種、オリエント種等の主な品種や、それらを用いた発酵葉などを使用できる。
本発明でいう刻み幅とは、たばこ裁刻機で原料葉たばこを裁刻する際に設定される値である。たばこ葉の裁刻とは原料葉たばこを一定の幅の細長い繊維状に刻む操作であり、刻まれたものをたばこ刻という。裁刻を行う装置を裁刻機と呼び、回転型裁刻機や栽落型裁刻機が一般的な装置であるが、これらの装置でたばこを裁刻する際に原料葉たばこを刻む幅として設定する値を刻み幅と呼ぶ。
【0020】
本発明のたばこ材料の製造方法には、上記の加熱工程の他に、公知の工程を含ませることができる。例えば、加熱工程の後にたばこ材料を冷却するための工程や、後述する種々のたばこ製品、たとえばシガレットや無煙たばことするために必要な工程を適宜含ませてよい。
種々のたばこ製品を作製するための工程としては、得られたたばこ材料に香料のような添加剤を添加する工程を挙げることができる。また、必要に応じて調湿工程を含ませてもよい。
本発明の製造方法を用いて得られるたばこ材料は、以下のような種々のたばこ製品の用途に用いる態様を挙げることができる。
【0021】
シガレットの製造方法としては、たばこ材料として上記の本発明の製造方法を用いて得られたものを用いること以外は特段の制限なく公知の製造方法を用いることができる。シガレットとしてはフィルタ付のものでもフィルタなしのものでもよい。
本発明の製造方法を用いて得られたたばこ材料をシガレットに用いた場合には、高い煙量感が得られる。
シガレットのたばこ材料に含まれる本発明で得られるたばこ材料の割合は5〜100重量%である態様を挙げることができる。
【0022】
無煙たばこの一例としては、スヌースを挙げることができる。スヌースの製造についても公知の方法を用いることができる。この場合は、上述した製造方法で作製したたばこ材料を例えば不織布のような原料を用いた包装材に公知の方法を用いて充填することで得られる。例えばたばこ材料の量を調整して充填し、ヒートシールなどの手段によりシールしてスヌースを得る。
包装材としては特段の限定なく用いることができるが、セルロース系の不織布などが好ましく用いられる。
無煙たばこ製品として、例えばガムとする場合は、本発明の製造方法を用いて得られる上記たばこ材料を公知のガムベースと公知の方法を用いて混合することで得られる。かみたばこやかぎたばこ、圧縮たばこについても、本発明の製造方法を用いて得られる上記たばこ材料を用いること以外は、公知の方法を用いて得ることができる。
また、無煙たばこ材料に含まれる本発明の製造方法で得られるたばこ材料の割合は、5〜100重量%である態様を挙げることができる。
【0023】
シガレットや無煙たばこ以外のたばこ製品としては、例えばユーザーが自ら巻紙で刻みを巻いて作成する手巻きたばこや水たばこ、シガー、きせるなど挙げることができる。本発明の製造方法で用いられるたばこ材料を用いること以外は、公知の手巻たばこや水たばこの製造方法を用いてこれらを製造することができる。
【実施例】
【0024】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0025】
水分含有量が12重量%のたばこ葉原料(刻み幅0.2mmになるように裁刻された中骨)をシリンダー型の加熱乾燥器に投入し、常温(25℃)から加熱を行った。加熱は、300℃に加熱したシリンダー型の加熱乾燥機を用いた缶壁加熱と、320℃の加熱蒸気を接触させることにより行った。
本実施例で用いた加熱乾燥器は
図4で例示されている型のものである。シリンダー1は内寸が直径400mm、長手方向長さが1900mmの円筒形であり、4rpmで回転し、原料入口位置が原料出口位置と比較して、高い位置となるように傾けている。傾ける角度は、水平方向に対して3°である。
たばこ葉原料は原料入口部2からロータリーバルブ3を介して、排気ダクト4および内部に羽根ブレード10を有するシリンダー1に投入した。
シリンダー1はヒーター6および過熱水蒸気発生装置7を用いて製造した過熱水蒸気によって加熱した。
たばこ葉原料はシリンダー1の回転および傾斜により搬送され、原料出口部9から取り出した。
加熱蒸気発生装置は、富士電機サーモシステムズ株式会社製(型式:IHSS-20B)を用いた。
【0026】
加熱時間とたばこ葉原料の品温の関係は表1に記載の通りである。
表1に記載の処理時間は、加熱を開始してからの連続時間を示している。また、品温が100℃以上であるときの加熱時間も示す。
【0027】
【表1】
【0028】
本発明のたばこ材料の製造方法を用いて得られたたばこ材料の膨嵩性の測定方法は、以下に示すとおりである。
【0029】
<膨嵩性測定方法>
1.測定試料を予め温度22℃、湿度60%_R.H.の環境で72時間以上静置しておく。
2.上記試料を十分に混和する。
3.試料を8〜10g量り取る。
4.シリンダーに試料を入れ、膨嵩性測定器(ボルグワルド社製、DD-60A)にセットし、測定を開始する。荷重時間は30秒とする。
5.30秒後、表示される値(試料の高さ)を読み取る。
6.膨嵩性を以下の式で計算する。
膨嵩性=(A * h) / W * 0.1
A:シリンダー底面積
h:試料高さ(表示値)
W:測定試料重量
【0030】
実施例における、たばこ葉原料の品温の測定方法は以下の通りである。
<たばこ品温測定方法>
1.シリンダー出口で、たばこ葉原料をステンレス製のスコップで採取する。
2.熱電対(林電工社製)を差し込んだデュワー瓶(Thermos社製、サーモカットD-500)に、試料を2秒以内に流し込む。棒で試料を押し、熱電対に十分接触させる。
3.コルク栓をして静置し、表示される最高温度を、たばこ品温とする。
【0031】
上記表1で示される結果を
図2及び3としてまとめた。
図2からわかるように、たばこ葉原料の品温が100℃以上となる条件下での加熱を含ませると、得られるたばこ葉原料の膨嵩性が高まる。また、たばこ葉原料中の水分が少ない状態での加熱(品温100℃以上)を含ませると、膨嵩性が高くなる(
図3)。
【0032】
本発明のたばこ材料の製造方法を用いて得られたたばこ材料は、膨嵩性が著しく高められていた。また、本発明の製造方法を用いて得られたたばこ材料は、香味が大きく変化していた。具体的には、シガレットとして用いた場合にはロースト感が高められていた。また、中骨臭が低減されていた。