(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560127
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】濃縮物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
A61M1/16 161
A61M1/16 163
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-555609(P2015-555609)
(86)(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公表番号】特表2016-504942(P2016-504942A)
(43)【公表日】2016年2月18日
(86)【国際出願番号】EP2014000215
(87)【国際公開番号】WO2014117927
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2017年1月30日
(31)【優先権主張番号】102013001628.2
(32)【優先日】2013年1月30日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/758,470
(32)【優先日】2013年1月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル コッホ
(72)【発明者】
【氏名】アヒム エバーライン
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム ノアック
【審査官】
宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−197956(JP,A)
【文献】
特開平08−243157(JP,A)
【文献】
特開平05−337167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14 − A61M 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの透析液を生成するための少なくとも1つの溶解した物質の少なくとも1つの濃縮物を提供する方法であって、
少なくとも1つの溶解される固体を収容した少なくとも1つの容器を用意する工程と、
前記固体を溶解するために前記容器に水を供給する工程と、
前記溶解した物質の前記濃縮物を前記容器から排出させて水を補充する工程と、
前記溶解した物質の濃度、または、当該濃度と相関関係にあるパラメータの濃度を測定する工程と、
前記溶解した物質の前記測定された濃度値が第1限界値を下回るか、あるいは、前記パラメータの値が第1限界値を下回るかもしくは超過するとき、または、前記溶解した物質の前記濃度値の変化もしくは前記パラメータの値の変化が第1限界値を超過するときに、前記容器への水の補充を一時的または永続的に抑制し、前記容器への水の補充を抑制した後に前記容器に存在している液体を透析液の生成に使用する工程と、
を備えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記溶解した物質の前記濃度、または、前記容器から流出する前記濃縮物における前記パラメータが測定される
ことを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記溶解した物質の前記濃度値または前記パラメータ値の変化は、単位時間当たりの変化、または前記容器から取り出された体積単位当たりの変化である
ことを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の方法において、
前記溶解した物質の前記濃度値がもはや上昇していない、または、当該濃度と相関関係にある前記パラメータの値がもはや上昇していない、もしくは、もはや低下していないことが水の前記補充の前記抑制後に判明したときは、前記容器は好ましくは完全に空にされる
ことを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の方法において、
前記水はRO水である
ことを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の方法において、
前記第1限界値は、臨界値および補足分により構成される
ことを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記溶解した物質の前記濃度値が第2限界値を超過したとき、または、当該濃度と相関関係にある前記パラメータの値が第2限界値を超過するか、もしくは下回るときに、水の前記補充が再開される
ことを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法において、
前記第2限界値は、第1限界値を上回るか、もしくは下回り、または、第1限界値に対応する
ことを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の方法において、
前記第1限界値および/または前記第2限界値は、あるパーセンテージ分だけ前記臨界値を上回るか、もしくは下回る
ことを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の方法において、
前記溶解した物質は重炭酸塩のみ、または重炭酸塩を含む化合物、好ましくは重炭酸ナトリウムである
ことを特徴とする、方法。
【請求項11】
溶解される少なくとも1つの固体が入った少なくとも1つの容器が接続されているか、または接続可能である、少なくとも1つの接続ポートを備える透析機器であって、水を前記容器に供給するための少なくとも1つの供給ラインと、前記容器から濃縮物を取り出すための少なくとも1つの取り出しラインとをさらに備え、また、前記容器から取り出した前記濃縮物の濃度を測定するか、または、当該濃度と相関関係にあるパラメータを測定する、少なくとも1つのセンサをさらに備える透析機器において、
上記透析機器は、少なくとも1つの制御または規制ユニットを有し、当該ユニットは、請求項7から9のいずれか1つに記載の方法に基づいて、前記容器から溶解した物質の濃縮物を提供するように構成されており、
前記透析機器は、設定手段を有し、使用者は、当該設定手段を使って、前記第1限界値および/または前記第2限界値および/または前記臨界値および/または当該臨界値に対する前記補足分を設定可能である、
ことを特徴とする、透析機器。
【請求項12】
請求項11に記載の透析機器であって、
前記センサは、伝導率センサである
ことを特徴とする、透析機器。
【請求項13】
請求項11または12に記載の透析機器であって、
前記透析機器は、少なくとも1つのRO水生成ユニットを有しているか、または、前記透析機器にRO水を供給可能である少なくとも1つのコネクタを有し、
前記容器に供給される前記水はRO水である
ことを特徴とする、透析機器。
【請求項14】
請求項11に記載の透析機器において、
前記透析機器は、前記第1限界値および/または前記第2限界値および/または前記臨界値を超過もしくは下回ったときに警報を発する手段を有する
ことを特徴とする、透析機器。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか1つに記載の方法において使用されるか、請求項11から14のいずれか1つに記載の透析機器において使用される容器であって、溶解可能な少なくとも1つの固体を収容する、容器。
【請求項16】
請求項15に記載の容器において、
前記固体は、重炭酸塩を含むか、または重炭酸塩からなる
ことを特徴とする、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析液を生成するための少なくとも1つの溶解した物質の濃縮物を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透析液のオンライン生成を伴う透析治療では、通常、固形炭酸ナトリウムが入った袋を使ってアルカリ性の濃縮物を提供している。
【0003】
治療開始前に透析機器からこの袋の中に水が導入されることにより、重炭酸ナトリウムの飽和溶液が生成される。袋内における液体、または、固体/液体の混合物の充填レベルを、先行技術から公知である装置を使用して圧力を測定することによって監視する。所定の圧力値に達していなければ、袋が一杯になるまで水が補充される。つまり、袋内の圧力が閾値を下回るや否や、既に取り出された量の液体が新鮮な水に置き換えられる。すなわち、圧力制御による水の補充が行われる。袋内の炭酸ナトリウムが溶解するや否や、飽和溶液はそれ以上生成できなくなり、それに応じて袋内の溶液濃度が低下する。
【0004】
この濃度が特定の閾値を下回ると、偏心膜ポンプや、透析液を生成するためのその他の搬送部材が、必要な量の炭酸ナトリウムをそれ以上搬送したり利用したりできなくなり、重炭酸塩の警報が生じる。
【0005】
この警報が生じると、使用者はまだ中身が詰まった袋を透析機器から取り外して、溶解する固体で満たされた新しい袋を取り付けるか、または治療を早期に終了するかしなくてはならないことになる。
【0006】
しかしながら、この時点では、直前に使われていた袋は、濃縮が不十分な重炭酸塩溶液でまだ現実に満たされている。この重炭酸塩溶液は、その中にまだ重炭酸塩が含まれているが、廃棄しなくてはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、袋の内容物を理想的に活用可能とするように、冒頭に指定した種類の方法をさらに発展させることにより、不要な廃棄を避けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を持つ方法によって達成される。したがって、この方法は以下の工程を備えるものとされる。すなわち、少なくとも1つの溶解される固体を収容した少なくとも1つの容器を用意する工程と、固体を溶解するために容器に水を供給する工程と、溶解した物質の濃縮物を容器から排出させて水を補充する工程と、溶解した物質の濃度、または、この濃度と相関関係にあるパラメータの濃度を測定する工程と、溶解した物質の測定された濃度値が第1限界値を下回るか、あるいは、相関関係にあるパラメータの値が第1限界値を下回るかもしくは超過するとき、または、溶解した物質の濃度値の変化もしくは相関関係にあるパラメータの値の変化が第1限界値を超過するときに、容器への水の補充を一時的または永続的に抑制する工程と、を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】時間の経過と共に袋から流出する濃縮物の伝導率が経時的に推移する様子を示す図である。
【
図2】時間の経過と共に袋から流出する濃縮物の伝導率が推移する様子を示す図である。
【
図3】
図2において伝導率変化が大きい領域の伝導率推移を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の根底を成す着想は、例えば、伝導率やその他のパラメータ(つまり、結果として濃度を導き出すもの)が限界値を下回るかまたは超過するときに、永続的または一時的に水を補充する設定をすることである。袋内の濃度が臨界レベルを下回る前に水の補充を抑制すれば、袋内に残っている量の重炭酸塩や、その他の溶解した物質を、完全に使い果たすこともできるし、透析液用に引き続き利用することもできる。
【0011】
このことは、好ましくは袋状に作られた容器内にまだ存在する溶解した物質の大部分またはそのすべてを使用でき、無駄を避けられるという効果だけではなく、袋が完全に空になるまで透析をそのまま継続できるという効果をももたらす。
【0012】
また、ある一定の状況下では、治療が終わる少し前に別の袋や容器を追加して使用したり、新しい袋や容器に換えて使用したりすることを避けられる。ある一定の状況下では、オンラインでの再注入を引き続き行うことができるので、食塩水の入った袋の追加を省くことができる。
【0013】
本発明の主な着想は、袋内の溶解した物質の濃度と相関関係にある伝導率などのパラメータが限界値を下回るかもしくは超過するときに、袋への水の補充を抑制することである。このパラメータの例としては、伝導率や透過率、吸収率などが挙げられる。伝導率や濃度などが許容範囲内であった場合、容器を満たしたり空にしたりすることは、通常範囲内で行われる。例えばこの場合では、水の補充を圧力制御によって行う。つまり、圧力が限界値を下回ると、圧力がその上限値に達するまで水を補充する。
【0014】
本発明では、濃度や伝導率などの限界値を超えたり下回ったりすると、通常動作から、補充を永続的または一時的に抑制する動作モードへと切り替えを行う。
【0015】
あるいは、または、これに加えて、例えば、経時的な変化あるいは体積に関係する変化、または、それとは別の、伝導率の変化や濃度と相関関係にあるパラメータの変化が検出されて、この変化が特定の境界を越えた場合、袋などの容器への補充は、一定時間の間、あるいは永続的に停止されるとしてもよい。
【0016】
したがって、例えば、経時的な伝導率の勾配を測定することが考えられる。伝導率が特定の限界値を超えた場合、水の補充は少なくとも一時的に抑制されるとしてもよい。よって、体積に関係する変化などにも同じことがいえる。例えば、袋から取り出された体積単位当たりの伝導率が変化すると、この伝導率の変化と体積の変化から勾配が形成され、これに基づき、水の補充を抑制するか否かを決定することができる。
【0017】
濃度の値はそれ以上上昇することはなく、むしろ低下すると考えられる。なぜなら、固体は完全に溶解されているため、水をさらに補給することで希釈が起きるからである。一方で、濃度の値は再び上昇する、または、伝導率の勾配は時間とともに再び変化する、あるいは体積に対する伝導率変化の勾配が再び変化するとも考えられるが、それは、実際には、溶解される固体の溶解工程に一時的な問題が起きた場合のみである。溶解工程が再開されると、濃度が上昇し、その結果、圧力制御などによって水が補充される通常動作モードに戻る。
【0018】
万一、補充作業を停止した後(つまり、通常動作を停止した後)に濃度がそれ以上上昇しないとすれば、重炭酸塩、または、それ以外の少なくとも一つの溶解されるべき物質が完全に溶解したと推定できる。この場合、液は袋などの容器から搬送され、その容器が空になるまで、透析液を生成するために使用されうる。この状態は、例えば、重炭酸塩チャンバ内のレベルセンサにおける液の不足、または容器内の超過圧力の不足によって認識できる。
【0019】
濃度や、容器内に存在するか容器から取り出されるかした液の伝導率、または、これと相関関係にある別の値が許容範囲内にある限り、当該容器への水の供給は、例えば以下の項目に従って制御または規制されうる。すなわち、容器内の圧力に従うか、伝導率あるいはその経時的推移、または、取り出された溶液の濃度あるいはその経時的推移に従うか、さらには、容器から取り出された体積、十分な測定をするために必要とされる重炭酸塩濃度、または、それを境に十分な測定がもはやできなくなる値である臨界値に従って、制御または規制されうる。
ある特定の限界を境に水の補充が抑制されると、希釈され過ぎることが防止され、また、容器にまだ存在する濃縮物を透析液の生成のために使用できるという効果がもたらされる。
【0020】
本発明のある好ましい実施形態では、溶解した物質の濃度、または容器から流出する濃縮物における関連するパラメータが測定される。これに代えて、濃度の測定、または袋自体におけるその他のパラメータの測定も考えられる。
【0021】
本発明の別の実施形態では、上に述べたように、溶解した物質の濃度値またはパラメータの値の変化は、単位時間当たりの変化あるいは容器から取り出された体積単位当たりの変化であるとされる。これらの場合、勾配dS/dtまたはdS/dVが形成される。ここで、Sは伝導率、tは時間、Vは容器から取り出された体積を表す。これらの勾配が特定の限界値を超えると、水の補充が少なくとも一時的に停止している、つまり、通常動作モードがオフになっている、との判定ができる。例えば、溶解工程が再開したことが原因で、所望の範囲で勾配が変化したり、濃度が上昇したりすると、水の補充工程、つまり通常動作が再開されるとしてもよい。
【0022】
ある好ましい実施形態では、水の補充を抑制した後に、溶解した物質の濃度の値、あるいは、当該濃度と相間関係のあるパラメータの値がもはや上昇していないと判断されるか、動き(低下/上昇)に何の変化もないと判断される場合は、容器は好ましくは完全に空にされるとする。例えば、濃度がもはや上昇していないときは、溶解すべき固体はもう存在しておらず、これ以上水を供給しても希釈がさらに進んで濃度が低下するだけであるとの結論を導き出すことができる。この場合、水が補充されず、袋が好ましくは完全に空にされるという点では変わりはない。
【0023】
既に述べたように、例えば溶解プロセスが局所的に再開するなどして、溶解した物質の濃度の値または当該濃度と相間関係のあるパラメータの値が再び許容範囲内に入ったと判明したときは、水の補充が再開されることも考えられる。
【0024】
第1限界値は、臨界値および補足分により構成されうる。
【0025】
容器から流出する溶液の伝導率の最小許容値、または濃縮物の伝導率の最小許容値は、所望の目標濃度によって決まる。重炭酸塩の必要量は、以下の関係式から得られる。
【0026】
c
desired x V
balance chamber < V
max x c
min
ここで、V
maxは、重炭酸塩ポンプの最大搬送体積(例えば2.2ml)である。重炭酸塩の設定値(e
desired)を、35mmolの重炭酸塩および30mlのバランスチャンバ容積からなると仮定すると、容器または袋における最低濃度(c
min)は477mmol/lになる。この結果、最小伝導率は約29.5mS/cmとなる。この最小伝導率が臨界値になり得る。最小伝導率が臨界値を下回ると、容器内に透析液を生成するためにある溶液をそれ以上使えなくなる。なぜなら、その溶液は希釈され過ぎているからである。
【0027】
この臨界値から一定の“安全幅”を保つためには、第1限界値をこの臨界値および補足分により構成することが意味のあるものでありうる。つまり、指定された臨界値に達したときだけではなく、むしろ、この臨界値から補足分だけ離間している第1限界値に達したときにも、補充の抑制が開始されうるということである。例えば、20%の余裕量を設定することができる。これは、上に具体的に述べた例では、34mS/cmという伝導率の値で補充の抑制がすでに起きていることを意味している。伝導率がその後再び上昇して、最低濃度(つまり臨界値)を例えば30%超過すれば、補充が再開されるか、通常の補充作業が開始されうる。
【0028】
溶解した物質の濃度値、またはこの濃度と相関関係にあるパラメータの値、またはdS/dtあるいはdS/dvで表される変化が第2限界値を超えたとき、水の補充が再開されうる。
【0029】
第2限界値は第1限界値を上回る値であり得るので、ある一定のヒステリシスを伴って上記方法を実行できる。
【0030】
さらに、第1限界値および/または第2限界値は、あるパーセンテージ分だけ(例えば、20〜30%の範囲内で)臨界値から離間しているとしてもよい。
【0031】
さらに、少なくとも1つの溶解した物質は、重炭酸塩のみ、または重炭酸塩を含む化合物であり、好ましくは重炭酸ナトリウムであるとしてもよい。本発明のある好ましい実施形態では、溶解した物質は、透析液を生成するために定められた枠組みのなかで使用される、いわゆるアルカリ性濃縮物であるとされる。
【0032】
前記水はRO水(逆浸透水)でありうる。
【0033】
ここで、本発明による構成でいう「水」とは、RO水から構成されるだけではなく、むしろ所望のどのような溶媒であってもよい。
【0034】
さらに、本発明は、請求項11の特徴を備える透析機器にも関する。この透析機器は、溶解される固体が入った少なくとも1つの容器が接続されているか、または接続可能である、少なくとも1つの接続ポートを備えている。透析機器は、水を容器に供給するための少なくとも1つの供給ラインと、容器から濃縮物を取り出すための少なくとも1つの取り出しラインとをさらに備えている。また、透析機器は、容器から取り出した濃縮物の濃度もしくは容器内に存在する濃縮物の濃度を測定するか、または、これらと相関関係にあるパラメータを測定する、少なくとも1つのセンサをさらに備えている。
【0035】
本発明によると、透析機器は、少なくとも1つの制御または規制ユニットを有しており、当該ユニットは、上に具体的に述べた請求項1から10の発明のうちの1つに基づいて、容器から溶解した物質の濃縮物を提供するように構成されるものとされる。言い換えると、この制御または規制ユニットは、本発明に係るこの方法に従って透析機器を動作させることができるように構成されている。
【0036】
したがって、前記透析機器は、透析液をオンラインで生成できる手段を有する。この手段は、本発明に係る方法に従って動作される。
上に具体的に述べた透析機器のセンサは、伝導率センサであってもよい。濃度センサや、その他所望のどのような種類のセンサもすべて本発明の範囲に含まれる。これらセンサの測定値により、少なくとも1つの溶解した物質の濃度を決定することができる。
【0037】
透析機器は、少なくとも1つのRO水生成ユニットを有していてもよいし、または、RO水を透析機器に供給可能とする少なくとも1つのコネクタを有していてもよい。したがって、容器に供給される水はRO水である。
【0038】
透析機器は、主要ラインと、少なくとも1つの容器を設置する分岐した第2ラインと、を有しているとしてもよい。容器を通過した後に、それに応じて形成された濃縮物が主要ラインのRO水と混ぜ合わされることによって、透析液が所望の濃度で存在するようにする。したがって、RO水による濃縮物の希釈はこの混合箇所で起きる。
【0039】
さらに、透析機器は、設定手段を有するものとしてもよい。使用者は、この設定手段を使って、第1限界値および/または第2限界値および/または臨界値および/または上に具体的に述べた臨界値への補足分を設定可能である。
【0040】
さらに、透析機器は、第1限界値および/または第2限界値および/または臨界値を超過もしくは下回ったときに警報を発する手段を有するとしてもよい。
【0041】
さらに、本発明は、溶解される少なくとも1つの固体を収容する少なくとも1つの容器を、本発明に係る方法および/または透析装置において使用することにも関する。この溶解される固体は重炭酸塩であってもよいし、重炭酸塩を含む化合物であってもよい。
本発明のさらなる詳細と効果を、以下の図面に示される実施形態を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0042】
図1は、時間の経過と共に袋から流出する濃縮物の伝導率が経時的に推移する様子を示す図である。
【0043】
図2は、時間の経過と共に袋から流出する濃縮物の伝導率が推移する様子を示す図であり、重炭酸塩濃度のアンダーシュートが発生して袋の交換が行われる様子を示す図である。
【0044】
図3は、
図2において伝導率変化が大きい領域の伝導率推移を拡大して示す図である。
【0045】
これら図面と以下に記載する実施形態は、重炭酸塩の溶解または重炭酸塩の濃縮物に関する。
【0046】
図1から分かるように、オンラインで生成されて袋から流出する濃縮物の伝導率は実質的に一定であるので、透析プロセスを通じてその濃度は実質的に一定である。この濃度は、溶解した少なくとも一つの物質の飽和濃度に相当してもよいし、実質的にこの飽和濃度に相当してもよい。したがって、
図1は、袋交換をしなかった(が温度は補償されている)治療中に、袋から取り出された液体の伝導率の典型的な推移を示している。
【0047】
図2は、ある特定の時点A以降に、袋から取り出された液のアンダーシュート(伝導率の大幅な低下、つまり濃度の大幅な低下のこと)が発生することを示している。ここに示される例における伝導率のこのアンダーシュートは、時点Bの重炭酸塩警報または伝導率警報の13分前に発生している。透析液の流れは、940ml/分に達していた。重炭酸塩警報までの間に、約400mlが袋から取り出された。
【0048】
袋内の濃度cは、以下の式により求められる。
c [mmol/l] = 10 + 11.52 x LF (25°C) [mS/cm] + 0.156 (LF (25°C)[mS/cm])
2
満杯の袋では、
図2から分かるように、溶液の伝導率はおよそ57mS/cmである。これは、およそ1173mmol/lの濃度に相当する。
【0049】
既に述べたように、伝導率の最小許容値は、所望の目標濃度によって決まる。上に具体的に述べた例では、最小伝導率は29.5mS/cmという結果である。これは、
図2によると、重炭酸塩警報の発生とよく合致している。この値は、ここに示す実施形態において警報が発せられる時点Bの前に、40sを下回る値に低下した。
【0050】
図2に示す実施形態では、時点B(つまり、重炭酸塩警報が発生した時点)で袋が交換された。すなわち、満杯の袋が取り外されて、新鮮な固体の入った新しい袋が透析機器に取り付けられた。その後この袋を水で満たし、
図2から分かるように、再び伝導率をおよそ57mS/cmからの範囲に設定した。
【0051】
図3は、
図2において伝導率が低下した時間部分を拡大して示す図である。
【0052】
図3から分かるように、ここに示される実施形態では、伝導率の値が約20mS/cmの時点で袋が交換された。この濃度の袋は廃棄されて、新しい袋が使用された。
【0053】
本発明によれば、
図3に示すように、伝導率の特定の限界値以降は水の補充を停止するので、濃度の過剰な低下を防ぐことが可能になる。その結果、袋内の濃度は一定の最低レベルに維持される。例えば、具体例では、第1限界値としての値34mS/cmが意味のあるものであり得る。
【0054】
溶解プロセスが再開して伝導率がその後再び上昇すると、補充が再開されるか、または補充モードへの切り替えがなされる。例えば最低濃度(すなわち臨界値)を30%超過した場合がこれに相当するケースとなる。
【0055】
つまり、本発明によると無駄を省くことが可能であると言える。さらに、治療に要する合計の時間にもよるが、溶解すべき新しい固体が入った袋などの容器を装置へ取り付ける作業を、必要に応じて回避できるという効果が得られると言える。
【0056】
したがって、袋の中身が完全に空になるまで透析治療を続けることが可能である。ある一定の状況下では、治療が終わる少し前に追加の袋を取り付けることを止めるか、または、防ぐことができ、必要に応じてオンラインでの再注入を行うことができる。