特許第6560138号(P6560138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560138
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】粒子計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20190805BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   G01N15/14 B
   G01N15/14 D
   G01N15/14 G
   G01N21/49 Z
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-22649(P2016-22649)
(22)【出願日】2016年2月9日
(65)【公開番号】特開2017-142116(P2017-142116A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】東芝メモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】平野 雅輝
(72)【発明者】
【氏名】黒田 雄一
【審査官】 野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/156037(WO,A1)
【文献】 特開2005−283152(JP,A)
【文献】 特開2009−281930(JP,A)
【文献】 特開2011−169884(JP,A)
【文献】 特開2014−002035(JP,A)
【文献】 特開2016−105043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00−14
G01N 21/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体に光を照射する光源と、
前記気体に含まれる粒子からの反射光の強度を検知し、前記反射光の強度を示す第1パラメータを出力する第1光検知部と、
前記第1パラメータと前記粒子の成分との対応関係を示す第1データを格納する記憶部と、
前記第1光検知部からの前記第1パラメータを前記記憶部からの前記第1データと比較して、前記気体に含まれる粒子の成分を判断する演算部と、を備え、
前記記憶部は、前記第1パラメータと前記粒子の大きさとの対応関係を示す第2データを格納し、
前記演算部は、前記第1光検知部からの前記第1パラメータを前記記憶部からの前記第2データと比較して、前記気体に含まれる粒子の大きさを決定する、粒子計測装置。
【請求項2】
前記第1パラメータは、前記反射光の強度を示す電圧であり、
前記第1データは、前記反射光の強度を示す電圧範囲と該電圧範囲に対応する前記粒子の成分とを対応させたデータである、請求項1に記載の粒子計測装置。
【請求項3】
前記気体に含まれる粒子からの反射光の強度を、前記第1光検知部とは異なる方向から検知し、前記反射光の強度を示す第2パラメータを出力する第2光検知部をさらに備え、 前記記憶部は、前記第2パラメータと前記粒子の成分との対応関係を示す第3データを格納する、請求項1または請求項2に記載の粒子計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、粒子計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気体中に含まれる粒子の個数または濃度を計測するために、光学式粒子計測装置(パーティクルカウンタ)が用いられることがある。パーティクルカウンタは、測定環境から所定量の雰囲気を吸引し、吸引した雰囲気にレーザ光を照射した際に発生する散乱光を検出することによって粒子の個数または濃度を計測する。また、検知できないほど小さな微小粒子を検知するために、核凝縮パーティクルカウンタが用いられることがある。核凝縮パーティクルカウンタは、凝縮液を用いて過飽和状態にした気流路に気体を通過させて、気体中の粒子を核として凝縮液を凝縮させる。これにより、粒子を肥大させてから検知する。
【0003】
しかし、従来、これらのパーティクルカウンタは、粒子の成分分析を行うことができなかった。粒子の成分分析を行うためには、パーティクルカウンタとは別個に専用分析装置(例えば、GC−MS(Gas Chromatograph-Mass Spectrometer))が必要であった。このため、粒子の成分分析を行うためには、設備が大規模になり、かつ、分析時間が長くかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−169884号公報
【特許文献2】特開2014−002035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気体中の粒子の個数または濃度を計測し、かつ、その粒子の成分を判断することができる粒子計測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による粒子計測装置は、気体に光を照射する光源を備える。第1光検知部は、気体に含まれる粒子からの反射光の強度を検知し、反射光の強度を示す第1パラメータを出力する。記憶部は、第1パラメータと粒子の成分との対応関係を示す第1データを格納する。演算部は、第1光検知部からの第1パラメータを記憶部からの第1データと比較して、気体に含まれる粒子の成分を判断する。記憶部は、第1パラメータと粒子の大きさとの対応関係を示す第2データを格納する。演算部は、第1光検知部からの第1パラメータを記憶部からの第2データと比較して、気体に含まれる粒子の大きさを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態による粒子計測装置1の構成の一例を示すブロック図。
図2】第1の実施形態による粒子計測装置1の動作の一例を示すフロー図。
図3】第1および第2データの一例を示す表、および、光検知部40から出力された電圧値の一例を示す表。
図4】第2の実施形態による粒子計測装置2の構成の一例を示すブロック図。
図5】第3データおよび第4データの一例を示す表、および、光検知部45から出力された電圧値の一例を示す表。
図6】反射光の強度と散乱角との関係を示すグラフ。
図7】第2の実施形態による粒子計測装置1の動作の一例を示すフロー図。
図8】第3の実施形態による核凝縮型粒子計測装置3の構成の一例を示す図。
図9】粒子成分に対する過飽和度Sを示すグラフ。
図10】粒子成分、液体の接触角、凝縮過飽和度、液体含有部110および温度調節管115の温度の対応関係を示す表。
図11】第3の実施形態による粒子計測装置3の動作の一例を示すフロー図。
図12】第4の実施形態による核凝縮型粒子計測装置4の構成の一例を示す図。
図13】第4の実施形態による粒子計測装置4の動作の一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による粒子計測装置1の構成の一例を示すブロック図である。粒子計測装置1は、気体供給部10と、計測室20と、光源30と、光検知部40と、ポンプ50と、演算部80と、ユーザインタフェース83と、記憶部85と、表示部87と、フィルタ95と、排気管99とを備えている。
【0010】
粒子計測装置1は、測定の対象となる環境100から気体を得て、その気体中に存在する粒子(パーティクル)の個数や濃度を測定する。即ち、粒子計測装置1は、所謂、パーティクルカウンタでよい。測定の対象となる環境100は、例えば、半導体製造プロセスに用いられるクリーンルーム内の環境、あるいは、半導体製造装置のチャンバ内の環境等でよい。
【0011】
気体供給部10は、環境100と粒子計測装置1との間を接続する配管であり、環境100内の被計測用の気体(以下、被計測気体ともいう)を粒子計測装置1へ導入する。環境100内の気体は、ポンプ50によって吸引されることによって環境100から気体供給部10内へ導入される。気体供給部10は、導入された気体を計測室20へ送る。被計測気体は、例えば、空気、あるいは、半導体製造プロセスに用いられるプロセスガスでよい。
【0012】
光源30は、計測室20に設けられており、レーザ光を被計測気体に照射する。レーザ光は、被計測気体中に存在する粒子に照射されると、粒子において散乱(反射)する。この散乱光(反射光)の一部が光検知部40に入射する。
【0013】
光検知部(第1光検知部)40は、粒子からの反射光を受けるように計測室20に設置されている。光検知部40は、被計測気体中の粒子からの反射光の強度を検知する。光検知部40は、粒子からの反射光の強度を電圧(第1パラメータ)に変換することによって、反射光の強度に応じた電圧値を得る。そして、光検知部40は、その電圧値を演算部80へ出力する。あるいは、光検知部40は、電圧値が或る閾値を超えたときに、電圧値が閾値を超えたことを示す信号を出力してもよい。
【0014】
演算部80は、光源30および光検知部40に電気的に接続されており、これらを制御する。また、演算部80は、光検知部40からの情報および記憶部85からの情報に基づいて被計測気体中の粒子数、粒子濃度、粒径、粒子成分等を算出しあるいは決定する。例えば、演算部80は、光検知部40からの電圧値が閾値を超えたことをカウントすることによって、あるいは、電圧値が閾値を超えたことを示す信号をカウントすることによって、粒子数を計測することができる。
【0015】
演算部80は、例えば、CPU等でよい。演算部80は、光源30からレーザ光を所定時間発生させ、光源30の動作と同期して光検知部40で計測された電圧値から粒子数を得る。被計測気体は、予め設定されたポンプ50の吸引流量に従って流れている。従って、演算部80は、単位時間に計測された粒子数と単位時間に流れた被計測気体の量(体積)に基づいて、被計測気体中に含まれている粒子濃度(粒子密度)を算出することができる。
【0016】
ポンプ50は、気体供給部10や計測室20から気体を吸引する。ポンプ50が気体を吸引することによって、気体供給部10から被計測気体が導入される。気体中の粒子数を正確に計測するためには、或る程度の気体の流量が必要となる。従って、ポンプ50は、粒子数の計測に必要な規定流量以上の流量の気体を吸引するように設定されている。
【0017】
ユーザインタフェース83は、オペレータが計測条件を設定し、入力するときに用いられる。ユーザインタフェース83は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等のデータ入力装置でよい。
【0018】
記憶部85は、粒子の反射光の強度を示す電圧範囲とその電圧範囲に対応する粒子成分との対応関係を示す第1データを記憶する。また、記憶部85は、粒子の反射光の強度を示す電圧範囲と粒子の大きさとの対応関係を示す第2データをも格納する。さらに、記憶部85は、光検知部40で計測された粒子数や粒子濃度を記憶する。第1および第2データは、オペレータがユーザインタフェース83を用いて入力してもよい。あるいは、第1および第2データは、書換えできない状態で記憶部85に予め格納しておいてもよい。
【0019】
表示部87は、記憶部85に格納されている第1データ、第2データ、粒子数、あるいは、粒子濃度等を表示する。表示部87は、例えば、ディスプレイ、タッチパネル等でよい。ユーザインタフェース83および表示部87は、同一のタッチパネルとして構成してもよい。
【0020】
排気管99は、ポンプ50に接続されており、ポンプ50を通過した被計測気体を粒子計測装置1の外部へ排出する。フィルタ95は、被計測気体から粒子を取り除くために設けられている。
【0021】
次に、粒子計測装置1の動作を説明する。
【0022】
図2は、第1の実施形態による粒子計測装置1の動作の一例を示すフロー図である。まず、ポンプ50が環境100から被計測気体を吸引する。これにより、被計測気体が気体供給部10を通過して計測室20へ導入される(S10)。
【0023】
次に、光源30が被計測気体へレーザ光を照射し、光検知部40が被計測気体中の粒子に反射した反射光(散乱光)を検知する(S20)。光検知部40は、その反射光の強度に対応する電圧値を演算部80へ出力する。
【0024】
次に、演算部80が光検知部40からの電圧値を受けて被計測気体中の粒子数または粒子濃度を算出する。例えば、演算部80は、光検知部40からの電圧値と閾値とを比較する(S32)。電圧値が閾値未満である場合(S32のNO)、演算部80は、この比較時点における被計測気体中に粒子が無い(検出されていない)と判断する(S34)。一方、電圧値が閾値以上になった場合(S32のYES)、演算部80は、この比較時点における被計測気体中に粒子が存在する(検出された)と判断する(S36)。この場合、演算部80は、上述のように粒子をカウントする。演算部80は、単位時間、粒子をカウントして粒子数または粒子濃度を算出する(S38)。
【0025】
また、粒子が検出された場合(S36)、演算部80は、光検知部40からの電圧値を記憶部35に格納された第1および第2データ(テーブル)と比較する(S40)。光検知部40からの電圧値がテーブル中のいずれかの電圧範囲に属する場合(S40のYES)、演算部80は、検出された粒子がその電圧範囲に対応する粒径および粒子成分を有すると判断する(S50)。もし、光検知部40からの電圧値がテーブル中の複数の電圧範囲に属する場合、演算部80は、被計測気体中の粒子が複数の電圧範囲に対応する粒径および粒子成分のいずれかであると判断する。
【0026】
例えば、図3(A)は、第1および第2データ(テーブル)の一例を示す表である。第1データは、粒子成分と電圧値との対応関係を示すデータである。第2データは、粒子の粒径と電圧値との対応関係を示すデータである。第1および第2 データは、図3(A)に示すように1つのテーブルとして格納されていてもよい。
【0027】
光検知部40からの電圧値(即ち、反射光の強度)は、粒径(即ち、粒子の大きさ)に依存して変化する。例えば、粒子の大きさが大きければ、当然、反射光の強度は大きくなる。粒子の大きさが小さければ、反射光の強度は小さくなる。従って、図3(A)に示す第2データのように、光検知部40からの電圧値に基づいて、粒径を或る程度特定することができる。また、光検知部40からの電圧値は、粒子成分にも依存して変化する。例えば、屈折率等の粒子の物性値によって、反射光の強度は変化する。従って、図3(A)に示す第1データのように、光検知部40からの電圧値に基づいて、粒子成分も或る程度特定することができる。尚、粒子の粒径および粒子成分がそれぞれ同一であっても、光検知部40から実際に出力される電圧は、或る程度ばらつく。従って、第1および第2データにおける電圧値は、或る幅を持った電圧範囲として設定される。
【0028】
このような対応関係を示す第1および第2データは、予め作成され、記憶部35へ格納しておけばよい。勿論、第1データは、ユーザインタフェース83を介して更新可能にしてもよい。演算部80は、光検知部40からの電圧値と第1データの電圧範囲とを比較して、被計測気体に含まれる粒子の粒径および成分を決定する。
【0029】
図3(B)は、光検知部40で測定され光検知部40から出力された電圧値の一例を示す表である。例えば、光検知部40は、周期的に反射光の検知動作を実行する。このとき、被計測気体中に粒子が無く、反射光がほとんど検出されなかった場合(t3、t4、t6、t8、t10等)、光検知部40からの電圧は、ほぼ0Vとなる。被計測気体中に粒子が存在し、反射光が検出された場合(t2、t5、t7、t9等)、光検知部40からの電圧は、粒子の粒径や成分に応じた電圧となる。
【0030】
光検知部40からの電圧値が図3(A)のテーブル中のいずれの電圧範囲にも属さない場合(S40のNO)、演算部80は、粒子の粒径および成分が不明と判断する(S60)。
【0031】
次に、演算部80は、被計測気体内の粒子数、粒子濃度、粒径、粒子成分を表示部87に表示する(S70)。演算部80は、粒子数、粒子濃度、粒径、粒子成分の情報を粒子計測装置1の外部へ出力してもよい。粒径および粒子成分の候補が複数ある場合には、演算部80は、その複数の粒径および粒子成分の候補を全て表示または出力すればよい。また、粒径および粒子成分が不明な場合には、演算部80は、その旨を表示または出力すればよい。被計測気体は、フィルタ95を介して排気管99から粒子計測装置1の外部へ排出される。
【0032】
このように、本実施形態による粒子計測装置1は、光検知部40からの電圧値と粒子成分との対応関係を示す第1データおよび光検知部40からの電圧値と粒径との対応関係を示す第2データを予め格納し、光検知部40で検知された反射光に対応する電圧値を第1および第2データと比較する。これにより、粒子計測装置1は、気体に含まれる粒子の粒径や粒子成分を決定することができる。その結果、粒子計測装置1は、気体中の粒子数または粒子濃度を計測できるだけでなく、その粒子の粒径や粒子成分をも判断することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態による粒子計測装置2の構成の一例を示すブロック図である。第2の実施形態は、第2光検知部45をさらに備えている点で第1の実施形態と異なる。
【0034】
光検知部(第2光検知部)45は、気体に含まれる粒子からの反射光の強度を、光検知部40とは異なる方向から検知する。光検知部45は、粒子からの反射光の強度を電圧(第2パラメータ)に変換することによって、反射光の強度に応じた電圧値を得る。そして、光検知部45は、その電圧値を演算部80へ出力する。あるいは、光検知部45は、電圧値が或る閾値を超えたときに、電圧値が閾値を超えたことを示す信号を出力してもよい。演算部80は、光検知部45からの電圧値が閾値を超えたことをカウントすることによって、粒子数または粒子濃度を計測することができる。
【0035】
記憶部85は、光検知部45からの電圧値と粒子成分との対応関係を示す第3データを格納する。第3データは、反射光の強度を示す電圧範囲と該電圧範囲に対応する粒子成分とを対応させたデータである。また、記憶部85は、光検知部45からの電圧値と粒径(粒子の大きさ)との対応関係を示すデータ(第4データ)も格納する。尚、以下、図3(A)に示す第1および第2データを第1テーブルとも呼び、図5(A)に示す第3および第4データを第2テーブルとも呼ぶ。
【0036】
図5(A)は、第3データおよび第4データ(第2テーブル)の一例を示す表である。図5(B)は、光検知部45から出力された電圧値の一例を示す表である。第2テーブルは、数値において図3(A)に示す第1テーブルと異なるものの、それぞれ第1テーブルタと同種のデータであるので、その詳細な説明を省略する。また、光検知部45から出力された電圧値は、数値において図3(B)に示す光検知部45から出力された電圧値と異なるものの、その電圧値と同種のデータであるので、その詳細な説明を省略する。
【0037】
第1の実施形態において、光検知部40で検知された反射光に対応する電圧値を記憶部85の第1テーブルと比較する。しかし、光検知部40からの電圧値が第1テーブルの複数の電圧範囲に属し、対応する粒径や成分が複数ある場合、演算部80は、粒子の粒径および成分を判断できない。
【0038】
そこで、第2の実施形態による粒子計測装置1は、光検知部45で検知された反射光に対応する電圧値を記憶部85の第2テーブルと比較する。光検知部45は、光検知部40とは異なる方向から反射光を検知するので、光検知部45からの電圧値は、光検知部40からの電圧値と異なる。従って、光検知部40からの電圧値だけでなく、光検知部45からの電圧値を用いることによって、演算部80が粒径および粒子成分をより正確に判断し易くなる。
【0039】
例えば、図6(A)〜図6(D)は、反射光の強度(電圧値)と散乱角(検出方向)との関係を示すグラフである。これらのグラフの縦軸は反射光の強度を示し、横軸は散乱角を示す。図6(A)は、第1粒径の粒子成分Aの反射光強度(散乱光強度)を示す。図6(B)は、第2粒径の粒子成分Aの反射光強度を示す。図6(C)は、第1粒径の粒子成分Bの反射光強度を示す。図6(D)は、第2粒径の粒子成分Bの反射光強度を示す。
【0040】
これらのグラフを参照すると、粒径または粒子成分が同じであっても、散乱角(検出方向)が異なれば、反射光の強度が大きく変化することが分かる。従って、複数の光検知部40、45を用いて、複数の方向から反射光を検知すれば、粒径および粒子成分を特定し易くなることが分かる。例えば、光検知部40が散乱角0度の方向から反射光を検知する。光検知部45が散乱角90度の方向から反射光を検知する。これにより、光検知部40で検知された反射光の強度(電圧値)では1つの粒径および1つの粒子成分を特定することができない場合であっても、光検知部45で検知された反射光の強度(電圧値)をさらに用いることによって、演算部80は、1つの粒径および1つの粒子成分を特定することが可能となる。
【0041】
勿論、光検知部40、45の両方からの電圧値を用いても、1つの粒径および1つの粒子成分を特定することができない場合もあり得る。しかし、第2の実施形態は、このような場合が発生する確率を小さくすることができる。
【0042】
また、3つ以上の光検知部が3つ以上の方向から反射光を検知してもよい。これにより、粒径および粒子成分をさらに正確に特定することができる。
【0043】
図7は、第2の実施形態による粒子計測装置1の動作の一例を示すフロー図である。まず、ステップS10〜S40を実行する。尚、ステップS20では、光検知部40、45の両方が被計測気体中の粒子に反射した反射光(散乱光)を検知する。光検知部40、45は、その反射光の強度に対応する電圧値を演算部80へ出力する。また、粒子数または粒子濃度は、光検知部40、45のいずれか一方または両方からの電圧値を用いて算出してよい。
【0044】
ステップS40において、電圧値が第1テーブル中のいずれの電圧範囲にも属さない場合(S40のNO)、演算部80は、粒径および粒子成分が不明であると判断している。しかし、この場合(S40のNO)、ステップS80に進み、演算部80は、さらい、その電圧値を第2テーブルと比較してもよい。演算部80は、電圧値が第1および第2テーブルのいずれの電圧範囲にも属さない場合に、粒径および粒子成分が不明であると判断してもよい(S60)。
【0045】
次に、演算部80は、光検知部40からの電圧値が第1テーブル(第1および第2データ)中の複数の電圧範囲に属するか否かを判断する(S45)。ここで、光検知部40からの電圧値が第1テーブル中の単一の電圧範囲に属する場合(S45のNO)、演算部80は、検出された粒子の粒径および粒子成分がその電圧範囲に対応する粒径および粒子成分であると判断する(S50)。
【0046】
一方、光検知部40からの電圧値が第1テーブル中の複数の電圧範囲に属する場合(S45のYES)、演算部80は、光検知部45からの電圧値を記憶部35に格納された第2テーブル(第3および第4データ)と比較する(S80)。光検知部45からの電圧値が第2テーブル中のいずれかの電圧範囲に属する場合(S80のYES)、演算部80は、検出された粒子の粒径および粒子成分がその電圧範囲に対応する粒径および粒子成分であると判断する(S50)。光検知部45からの電圧値が第2テーブル中の電圧範囲のいずれにも属さない場合(S80のNO)、演算部80は、ステップS45で判明した第1テーブル内の複数の粒径または複数の粒子成分を、検出された粒子の粒径および粒径成分と判断する(S90)。この場合、代替的に、演算部80は、粒径および粒子成分が不明と判断してもよい。
【0047】
また、光検知部45からの電圧値が第2テーブル中の複数の電圧範囲に属する場合、ステップS80のNOと同様に、演算部80は、第1および/または第2テーブル内の複数の粒径または複数の粒子成分を、検出された粒子の粒径および粒径成分と判断してよい。この場合も、代替的に、演算部80は、粒径および粒子成分が不明と判断してもよい。
【0048】
次に、演算部80は、被計測気体の粒子数、粒子濃度、粒径、粒子成分を表示部87に表示する(S70)。ステップS90において粒子が第1テーブル内の複数の粒径または複数の粒子成分を有すると判断された場合、演算部80は、複数の粒径または複数の粒子成分を表示部87に表示すればよい。被計測気体の粒子数、粒子濃度、粒径、粒子成分の情報は、粒子計測装置1の外部へ出力してもよい。
【0049】
このように、第2の実施形態は、複数の光検知部40、45を用いて互いに異なる複数の方向から反射光を検知する。演算部80は、光検知部40からの電圧値および第1テーブルを用いて、被計測気体中の粒子の粒径および粒子成分を判断する。さらに、光検知部40からの電圧値だけでは、1つの粒径および1つの粒子成分を特定できない場合、演算部80は、光検知部45からの電圧値および第2テーブルを用いて、被計測気体中の粒子の粒径および粒子成分を判断する。これにより、粒子計測装置2は、気体に含まれる粒子の粒径や粒子成分をより正確に判断することができる。
【0050】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態による核凝縮型粒子計測装置3(以下、粒子計測装置3)の構成の一例を示す図である。粒子計測装置3は、液体含有部110と、温度調節管115と、計測室120と、光源130と、光検知部140と、ポンプ150と、温度センサ160と、温度コントローラ170と、データベース175と、演算部180と、記憶部185と、ユーザインタフェース183と、表示部187と、液体供給部190と、排気管199とを備えている。
【0051】
粒子計測装置3は、凝縮用の液体を気化して過飽和状態にした気流路101に、被計測気体を通過させる。これにより、液体は、被計測気体中の微粒子を核(凝縮核)として凝縮する。これにより、例えば、粒径100nm未満の非常に小さな微粒子が、例えば、μmオーダーの粒子に成長(肥大)する。このように微粒子を肥大させることによって、光検知部140が微粒子を容易に検知可能となる。
【0052】
液体含有部(第1液体含有部)110は、被計測気体が通過する気流路101の周囲に設けられ、液体を含有する。液体含有部110は、液体を含有可能な多孔質部材であり、例えば、スポンジ等であってもよい。液体は、液体含有部110から気化して気流路101に飽和状態で存在可能であり、かつ、気体中の粒子を核として凝縮可能な液体である。液体は、例えば、水、ブタノール等でよい。
【0053】
温度調節管115は、液体含有部110の周囲に設けられた管であり、液体含有部110を収容している。即ち、温度調節管115の内面に液体含有部110が設けられており、さらに液体含有部110の中心部に気流路101が設けられている。温度調節管115は、液体含有部110の温度を調節するために設けられている。温度調節管115には、例えば、金属やガラス等が用いられており、温度調整管115の内部の温度を調整する図示しないヒータ等を備えている。
【0054】
温度調節管115は、上管115aと、下管115bとを含む。上管115aは、液体含有部110の上部の温度を調節する。下管115bは、液体含有部110の下部の温度を調節する。温度コントローラ170は、上管115aおよび下管115bの温度をそれぞれ異なる温度に設定可能である。
【0055】
光源130(第1光源)は、計測室120に設けられており、レーザ光を被計測気体に照射する。 光源130は、図1の光源30と同じ構成でよい。光検知部(第1光検知部)140は、粒子からの反射光を受けるように計測室120に設置されている。光検知部140は、図1の光検知部40と同じ構成でよい。ポンプ150は、気流路101や計測室120から気体を吸引する。ポンプ150は、図1のポンプ50と同じ構成でよい。
【0056】
温度センサ160は、温度調節管115の温度を検出し、その温度を温度コントローラ170へ出力する。温度センサ160は、温度調節管115の上管115aおよび下管115bのそれぞれの温度を検出可能である。これにより、温度センサ160は、液体含有部110の上部の温度および下部の温度を間接的に検出することができる。
【0057】
温度コントローラ170は、データベース175に格納されている温度条件に従って温度調節管115および液体含有部110の温度を制御する。温度調節管115の温度の実測値は温度センサ160から温度コントローラ170へフィードバックされるので、温度コントローラ170は、実測値に基づいて温度調節管115の温度を上記温度条件に適合するに制御することができる。また、温度コントローラ170は、温度調節管115の上管115aおよび下管115bのそれぞれの温度を制御可能である。これにより、温度コントローラ170は、液体含有部110の上部の温度および下部の温度を間接的に制御することができる。
【0058】
第1記憶部としてのデータベース175は、液体が粒子に凝縮する温度と粒子成分との対応関係を示す第1データを格納する。ここで、粒子を核として液体が凝縮するための過飽和度Sは、粒子成分(例えば、液体の粒子に対する接触角)によって相違する。従って、凝縮温度と粒子成分との対応関係は、テーブルとして表すことができる。データベース175は、このようなテーブルを第1データとして予め格納する。
【0059】
第2記憶部としての記憶部185は、光検知部140において検知された粒子数または粒子濃度を記憶する。記憶部185は、光検知部140からの電圧値も格納してよい。
【0060】
演算部180は、液体含有部110の温度および第1データに基づいて、光検知部140において検知された粒子成分を決定する。また、演算部180は、光検知部140において検知された粒子数または粒子濃度に基づいて、各粒子成分の粒子数または粒子濃度を演算する。
【0061】
ユーザインタフェース183は、ユーザインタフェース83と同様でよい。オペレータは、ユーザインタフェース183を介して第1データをデータベース175へ登録してもよい。
【0062】
表示部187は、記憶部185に格納されている第1データ、第2データ、粒子数、あるいは、粒子濃度等を表示する。表示部187は、表示部87と同じ構成でよい。
【0063】
液体供給部190は、液体含有部110へ液体を供給する。液体は、ポンプPによって液体供給部190から液体含有部110へ供給されてもよい。あるいは、液体は、毛細管現象を利用して、液体供給部190から液体含有部110へ供給されてもよい。
【0064】
図9(A)は、粒子成分に対する過飽和度Sを示すグラフである。縦軸は、液体が粒子を核として凝縮するために必要な過飽和度S(以下、凝縮過飽和度ともいう)を示す。過飽和度S=1は、相対湿度が100%であることを意味する。横軸は、粒子成分を示す。例えば、粒子成分A〜Cの凝縮過飽和度Sは、昇順にA、B、Cとなっている。凝縮過飽和度Sが低いことは、凝縮し易いことを意味し、逆に、凝縮過飽和度Sが高いことは、凝縮し難いことを意味する。従って、液体は、比較的低い過飽和度Sで粒子成分Aに凝縮する。また、この液体は、比較的高い過飽和度Sで粒子成分Cに凝縮する。このような凝縮過飽和度Sの相違は、図10を参照して説明するように、粒子成分A〜Cの接触角の相違によって生じる。尚、図9のS1は、過飽和度Sが1(相対湿度=100%)であることを示している。
【0065】
粒子成分A〜Cの全てを肥大させたい場合、過飽和度SをScのレベルに設定すればよい。これにより、液体は、気流路101において粒子成分A〜Cを核として凝縮し成長する。しかし、この場合、光検知部140は、粒子成分A〜Cの全てを検知するので、それらを区別することができない。
【0066】
そこで、第3の実施形態による粒子計測装置3は、気流路101の過飽和度Sを変更して、液体の凝縮核となる粒子成分を制御する。例えば、気流路101の過飽和度SをSaに設定すれば、粒子成分Aが液体の凝縮核となるが、粒子成分B、Cは、液体の凝縮核とならない。従って、粒子成分A〜Cのうち粒子成分Aのみが成長し、検知可能となる。また、気流路101の過飽和度SをSbに設定すれば、粒子成分A、Bが液体の凝縮核となるが、粒子成分Cは、液体の凝縮核とならない。従って、粒子成分A〜Cのうち粒子成分A、Bのみが成長し、検知可能となる。さらに、気流路101の過飽和度SをScに設定すれば、粒子成分A、B、Cが液体の凝縮核となる。従って、粒子成分A〜Cが全て成長し、検知可能となる。演算部180は、過飽和度Sa〜Scのそれぞれにおいて検知された粒子数の差に基づいて、粒子成分A〜Cのそれぞれの粒子数を算出することができる。例えば、過飽和度がSaの場合に検出された粒子数Na、過飽和度がSbの場合に検出された粒子数Nb、過飽和度がScの場合に検出された粒子数Ncとする。この場合、Nc−Nbが粒子成分Cの粒子数となる。Nb−Naが粒子成分Bの粒子数となる。Naが粒子成分Aの粒子数となる。
【0067】
過飽和度Sは、液体含有部110の温度(間接的に温度調節管115の温度)によって制御される。図10は、粒子成分、液体の接触角、凝縮過飽和度、液体含有部110または温度調節管115の温度の対応関係(第1データ)を示す表である。尚、第1データは、少なくとも粒子成分と液体含有部110または温度調節管115の温度との対応関係が含まれていればよい。液体の接触角および過飽和度は、必ずしも第1データに含まれていなくてもよい。
【0068】
第1データを参照すると、粒子成分A〜Bに対する液体の接触角は、その成分に依存して相違することが分かる。これに伴い、粒子成分A〜Bの凝縮過飽和度もそれぞれ相違する。このような凝縮過飽和度を得るために、液体含有部110または温度調節管115の温度が粒子成分A〜Cのそれぞれに対して設定されている。例えば、凝縮過飽和度の最も小さな粒子成分Aを検出する際には、温度調節管115の上管115aの温度は、約40度に設定され、下管115bの温度は、約10度に設定される。粒子成分A、Bを検出する際には、温度調節管115の上管115aの温度は、約50度に設定され、下管115bの温度は、約20度に設定される。粒子成分A〜Cを全て検出する際には、温度調節管115の上管115aの温度は、約60度に設定され、下管115bの温度は、約20度に設定される。このように上管115aと下管115bとで温度が異なる理由は、温度変化を利用すると過飽和状態をより簡便に作ることができるためである。
【0069】
このような第1データは、データベース175に予め登録される。あるいは、第1データは、ユーザインタフェース83を介してデータベース175に登録される。
【0070】
次に、粒子計測装置3の動作を説明する。
【0071】
図11は、第3の実施形態による粒子計測装置3の動作の一例を示すフロー図である。まず、液体供給部190が液体を液体含有部110へ供給する(S110)。液体含有部110は、液体を吸収し含有する。
【0072】
次に、温度コントローラ170がデータベース175に格納された第1データを参照して温度調節管115の温度を設定する(S120)。温度調節部115の温度は、上管115aと下管115bとでそれぞれ設定される。このとき、温度センサ160が温度調節部115および液体含有部110の温度測定値を温度コントローラ170へフィードバックする。これにより、温度コントローラ170は、温度調節部115および液体含有部110の温度を、第1データに従った温度に精度良く設定することができる。図10を参照して説明したように、温度コントローラ170は、液体含有部110および温度調節管115の温度を、検出対象となる粒子成分A〜Cのいずれかの凝縮過飽和度に対応した温度に設定する。
【0073】
例えば、最初に、温度コントローラ170は、液体含有部110および温度調節管115の温度を、粒子成分Aの凝縮過飽和度Saに対応する温度(第1温度)に設定する。即ち、温度コントローラ170は、上管115aの温度を約40度に設定し、下管115bの温度を約10度に設定する。
【0074】
次に、ポンプ150が環境100から被計測気体を吸引する。これにより、被計測気体が気流路101へ導入される(S130)。被計測気体は、下管115bから上管115aに向かって流れる。これにより、被計測気体は、当初、下管115bの温度になり、その後、下管115bの温度になる。例えば、上記例において、被計測気体の温度は、下管115bを通過する際に約10度となり、上管115aを通過する際に約40度になる。これにより、粒子成分Aに液体が凝縮し、粒子成分Aは肥大する。一方、粒子成分B、Cには液体が凝集しない。従って、粒子成分B、Cは、肥大せずにそのままの粒径で気流路101を通過する。
【0075】
次に、光源130が被計測気体へレーザ光を照射し、光検知部140が被計測気体中の粒子に反射した反射光(散乱光)を検知する(S140)。光検知部140は、その反射光の強度に対応する電圧値を演算部180へ出力する。粒子成分Aは肥大しているので、光検知部140は、粒子成分Aを容易に検知し、その反射光の強度に対応する電圧値を演算部180へ出力する。一方、粒子成分B、Cは肥大していないので、光検知部140は、粒子成分B、Cからは充分に大きな反射光強度を得ることができず、粒子成分B、Cをほとんど検知することができない。仮に粒子成分B、Cを検知できた場合であっても、粒子成分Aとの反射強度の差が大きいので、粒子成分Aと容易に区別できる。
【0076】
次に、演算部180が光検知部140からの電圧値を受けて被計測気体中の粒子数をカウントしあるいは粒子濃度を算出する(S150)。このとき、演算部180で算出される粒子数または粒子濃度は、粒子成分Aの粒子数または粒子濃度となる。粒子成分Aの粒子数または粒子濃度は、記憶部180に格納される(S160)。即ち、記憶部180は、液体含有部110が凝縮過飽和度Saに対応する第1温度であるときに検知された粒子数(第1粒子数)または粒子濃度(第1粒子濃度)を記憶する。
【0077】
次に、温度コントローラ170は、液体含有部110および温度調節管115の温度を、粒子成分Bの凝縮過飽和度Sbに対応する温度(第2温度)に設定する(S170のNO、S120)。即ち、温度コントローラ170は、上管115aの温度を約50度に設定し、下管115bの温度を約20度に設定する。そして、ステップS130〜S160を実行する。これにより、粒子成分A、Bには液体が凝縮し、粒子成分A、Bは肥大する。一方、粒子成分Cには液体が凝集しない。従って、粒子成分Cは、肥大せずにそのままの粒径で気流路101を通過する。
【0078】
粒子成分A、Bは肥大しているので、光検知部140は、粒子成分A、Bを容易に検知し、その反射光の強度に対応する電圧値を演算部180へ出力する。一方、粒子成分Cは肥大していないので、光検知部140は、粒子成分Cからは充分に大きな反射光強度を得ることができず、粒子成分Cをほとんど検知することができない。仮に粒子成分Cを検知できた場合であっても、粒子成分Aとの反射強度の差が大きいので、粒子成分A、Bと容易に区別できる。
【0079】
演算部180で算出される粒子数または粒子濃度は、粒子成分A、Bの粒子数または粒子濃度となる。粒子成分A、Bの粒子数または粒子濃度は、記憶部180に格納される。即ち、記憶部180は、液体含有部110が凝縮過飽和度Sbに対応する第2温度であるときに検知された粒子数(第2粒子数)または粒子濃度(第2粒子濃度)を記憶する。
【0080】
次に、温度コントローラ170は、液体含有部110および温度調節管115の温度を、粒子成分Cの凝縮過飽和度Scに対応する温度(第3温度)に設定する(S170のNO、S120)。即ち、温度コントローラ170は、上管115aの温度を約60度に設定し、下管115bの温度を約20度に設定する。そして、ステップS130〜S160を再度実行する。これにより、粒子成分A〜Cに液体が凝縮し、粒子成分A〜Cは肥大する。粒子成分A〜Cは肥大しているので、光検知部140は、粒子成分A〜Cの全てを容易に検知し、その反射光の強度に対応する電圧値を演算部180へ出力する。
【0081】
演算部180で算出される粒子数または粒子濃度は、粒子成分A〜Cの粒子数または粒子濃度となる。粒子成分A〜Cの粒子数または粒子濃度は、記憶部180に格納される。即ち、記憶部180は、液体含有部110が凝縮過飽和度Scに対応する第3温度であるときに検知された粒子数(第3粒子数)または粒子濃度(第3粒子濃度)を記憶する。
【0082】
第1データがさらに他の温度条件を含む場合(S170のNO)、温度コントローラ170は、液体含有部110および温度調節管115の温度を、他の温度に設定し、ステップS130〜S160を繰り返す。このように、粒子計測装置3は、液体含有部110および温度調節管115の温度を変更しながら、粒子数をカウントしあるいは粒子濃度を算出する。
【0083】
第1データの全ての温度条件について検知動作が実行された場合(S170のYES)、演算部180は、上述のように、各粒子成分の粒子数あるいは粒子濃度を算出する(S175)。例えば、気流路101の凝縮過飽和度がSaである場合に検出された第1粒子数をNaとし、気流路101の凝縮過飽和度がSbである場合に検出された第2粒子数をNbとし、気流路101の凝縮過飽和度がScである場合に検出された第3粒子数をNcとする。この場合、演算部180は、Naを粒子成分Aの粒子数と判断する。演算部180は、第1粒子数Naと第2粒子数Nbとの差(Nb−Na)を粒子成分Bの粒子数と判断する。演算部180は、第2粒子数Naと第3粒子数Nbとの差(Nc−Nb)を粒子成分Cの粒子数と判断する。また、演算部180は、粒子濃度についても同様に演算することができる。例えば、気流路101の凝縮過飽和度がSaである場合に検出された第1粒子濃度をCaとし、気流路101の凝縮過飽和度がSbである場合に検出された第2粒子濃度をCbとし、気流路101の凝縮過飽和度がScである場合に検出された第3粒子濃度をCcとする。この場合、演算部180は、Caを粒子成分Aの粒子濃度と判断する。演算部180は、第1粒子濃度Caと第2粒子濃度Cbとの差(Cb−Ca)を粒子成分Bの粒子濃度と判断する。演算部180は、第2粒子濃度Caと第3粒子濃度Cbとの差(Cc−Cb)を粒子成分Cの粒子濃度と判断する。
【0084】
次に、演算部180は、粒子成分A〜Cの粒子数、粒子濃度、粒径、粒子成分を表示部187に表示する(S180)。演算部180は、粒子成分A〜Cの粒子数、粒子濃度、粒径、粒子成分の情報を粒子計測装置3の外部へ出力してもよい。被計測気体は、排気管199から粒子計測装置3の外部へ排出される。
【0085】
このように、第3の実施形態による粒子計測装置3は、液体の凝集温度と粒子成分との対応関係に基づいて、液体含有部110および温度調節管115の温度を複数の温度に設定し、粒子を選択的に肥大させてから検知する。これにより、粒子計測装置3は、粒子成分ごとの粒子数または粒子濃度を得ることができる。
【0086】
(第4の実施形態)
図12は、第4の実施形態による核凝縮型粒子計測装置4(以下、粒子計測装置4)の構成の一例を示す図である。粒子計測装置4は、第2液体含有部112と、第2温度調節管117と、第2計測室122と、第2光源132と、第2光検知部142と、第2温度センサ162とをさらに備えている点で第3の実施形態の粒子計測装置4と異なる。第4の実施形態のその他の構成は、第3の実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、液体含有部と、温度調節管と、計測室と、光源と、光検知部と、温度センサは、それぞれ複数設けられているが、その他の構成要素は共通でよい。
【0087】
第2液体含有部112は、気流路101とは異なる気流路102の周囲に設けられ、液体を含有する。気流路101、102は、同一の環境100に接続されており、環境100からの被計測気体を流す。第2液体含有部112は、第1液体含有部110と同様に、液体を含有可能な多孔質部材であり、例えば、スポンジ等であってもよい。液体は、第2液体含有部112から気化して気流路102に飽和状態で存在可能であり、かつ、気体中の粒子を核として凝縮可能な液体である。液体は、第1液体含有部112に含まれる液と同じであり、例えば、水、ブタノール等でよい。
【0088】
第2温度調節管117は、第2液体含有部112の周囲に設けられた管であり、第2液体含有部112を収容している。即ち、第2温度調節管117の内面に第2液体含有部112が設けられており、さらに第2液体含有部112の中心部に気流路102が設けられている。第2温度調節管117は、第2液体含有部112の温度を調節するために設けられている。第2温度調節管117には、例えば、金属やガラス等が用いられている。
【0089】
第2温度調節管117は、上管117aと、下管117bとを含む。上管117aは、第2液体含有部112の上部の温度を調節する。下管117bは、第2液体含有部112の下部の温度を調節する。温度コントローラ170は、上管117aおよび下管117bの温度をそれぞれ異なる温度に設定可能である。また、温度コントローラ170は、第2温度調節管117を第1温度調節管115とは別に温度制御する。従って、上管115a、117aおよび下管115b、117bの各温度は、それぞれ別々に制御され得る。
【0090】
第2光源132は、第2計測室122に設けられており、レーザ光を被計測気体に照射する。第2光源132の構成は、第1光源130の構成と同様でよい。
【0091】
第2光検知部142は、粒子からの反射光を受けるように第2計測室122に設置されている。第2光検知部142は、第2計測室122において被計測気体中の粒子からの反射光の強度を検知する。第2光検知部140の構成は、第1光検知部40の構成と同様でよい。演算部180は、第1光検知部140からの電圧値に基づいて第1計測室120内の粒子数(第1粒子数)を計測し、第2光検知部142からの電圧値に基づいて第2計測室122内の粒子数(第2粒子数)を計測する。第1および第2粒子数は、電圧値とともに記憶部185に格納される。
【0092】
第2温度センサ162は、第2温度調節管117および第2液体含有部112の温度を検出し、その温度を温度コントローラ170へ出力する。第2温度センサ162は、第2温度調節管117の上管117aおよび下管117bのそれぞれの温度を検出可能である。これにより、第2温度センサ162は、第2液体含有部112の上部の温度および下部の温度を検出することができる。
【0093】
温度コントローラ170は、データベース175に格納されている温度条件に従って、第1および第2温度調節管115、117並びに第1および第2液体含有部110、112の温度を制御する。第1および第2温度調節管115、117並びに第1および第2液体含有部110、112の温度の実測値は第1および第2温度センサ160、162から温度コントローラ170へフィードバックされる。よって、温度コントローラ170は、実測値に基づいて第1および第2温度調節管115、117、第1および第2液体含有部110、112の温度を上記温度条件に適合するように制御する。
【0094】
データベース175は、第3の実施形態と同様に、第1データを予め格納している。
【0095】
記憶部185は、第1光検知部140において検知された第1粒子数または第1粒子濃度を記憶し、さらに、第2光検知部142において検知された第2粒子数または第2粒子濃度をも記憶する。
【0096】
演算部180は、第1および第2液体含有部110、112の各温度および第1データに基づいて、第1および第2光検知部140、142のそれぞれにおいて検知された粒子成分を決定する。また、演算部180は、第1および第2光検知部140、142において検知された粒子数または粒子濃度に基づいて、第1および第2計測室120、122に存在する粒子成分のそれぞれの粒子数または粒子濃度を演算する。
【0097】
ユーザインタフェース183および表示部187は、第3の実施形態のそれらと同様でよい。液体供給部190は、第1および第2液体含有部110、112へ液体を共通に供給する。
【0098】
次に、粒子計測装置4の動作を説明する。
【0099】
図13は、第4の実施形態による粒子計測装置4の動作の一例を示すフロー図である。まず、液体供給部190が液体を第1および第2液体含有部110、112へ供給する(S112)。第1および第2液体含有部110、112は、液体を吸収し含有する。
【0100】
次に、温度コントローラ170がデータベース175に格納された第1データを参照して、第1および第2温度調節管115、117の温度を設定する(S122)。第1温度調節部115の温度は、上管115aと下管115bとにおいてそれぞれ設定される。第2温度調節部117の温度は、上管117aと下管117bとにおいてそれぞれ設定される。
【0101】
例えば、温度コントローラ170は、第1液体含有部110および第1温度調節管115の温度を、粒子成分Aの凝縮過飽和度Saに対応する温度(第1温度)に設定する。即ち、温度コントローラ170は、上管115aの温度を約40度に設定し、下管115bの温度を約10度に設定する。一方、温度コントローラ170は、第2液体含有部112および第2温度調節管117の温度を、粒子成分Bの凝縮過飽和度Sbに対応する温度(第2温度)に設定する。即ち、温度コントローラ170は、上管117aの温度を約50度に設定し、下管117bの温度を約20度に設定する。これにより、気流路101、102は、それぞれ異なる過飽和度に設定される。
【0102】
次に、ポンプ150が環境100から被計測気体を吸引する。これにより、被計測気体が気流路101、102へ導入される(S132)。被計測気体は、下管115bから上管115aに向かって流れ、それと並行して(同時に)、下管117bから上管117aに向かって流れる。これにより、被計測気体は、気流路101において、当初、下管115bの温度になり、その後、下管115bの温度になる。また、被計測気体は、気流路102において、当初、下管117bの温度になり、その後、下管117bの温度になる。これにより、気流路101において、粒子成分Aに液体が凝縮し、粒子成分Aは肥大する。気流路101内において、粒子成分B、Cには液体が凝集しない。一方、気流路102内において、粒子成分A、Bに液体が凝縮し、粒子成分A、Bは肥大する。気流路102内において、粒子成分Cには液体が凝集しない。
【0103】
次に、第1および第2光源130、132がそれぞれ被計測気体へレーザ光を照射し、第1および第2光検知部140、142が被計測気体中の粒子に反射した反射光(散乱光)をそれぞれ検知する(S142)。第1光検知部140は、粒子成分Aを容易に検知し、その反射光の強度に対応する電圧値を演算部180へ出力するが、粒子成分B、Cをほとんど検知しない。仮に粒子成分B、Cを検知できた場合であっても、粒子成分Aとの反射強度の差が大きいので、粒子成分Aと容易に区別できる。第2光検知部142は、粒子成分A、Bを容易に検知し、その反射光の強度に対応する電圧値を演算部180へ出力するが、粒子成分Cをほとんど検知しない。仮に粒子成分Cを検知できた場合であっても、粒子成分A、Bとの反射強度の差が大きいので、粒子成分Aと容易に区別できる。
【0104】
次に、演算部180が第1および第2光検知部140、142からの電圧値を受けて被計測気体中の粒子数をカウントしあるいは粒子濃度を算出する(S152)。このとき、演算部180は、第1光検知部140からの電圧値を用いて、粒子成分Aの第1粒子数または第1粒子濃度を算出する。演算部180は、第2光検知部142からの電圧値を用いて、粒子成分A、Bの第2粒子数または第2粒子濃度を算出する。第1および第2粒子数または第1および第2粒子濃度は、記憶部180に格納される(S162)。このように、記憶部180は、液体含有部110が凝縮過飽和度Saに対応する第1温度であるときに検知された第1粒子数または第1粒子濃度を記憶するとともに、液体含有部112が凝縮過飽和度Sbに対応する第2温度であるときに検知された第2粒子数または第2粒子濃度を記憶する。
【0105】
次に、演算部180は、各粒子成分の粒子数あるいは粒子濃度を算出する(S177)。例えば、気流路101の凝縮過飽和度がSaである場合に検出された第1粒子数をNaとし、気流路102の凝縮過飽和度がSbである場合に検出された第2粒子数をNbとする。この場合、演算部180は、Naを粒子成分Aの粒子数と判断する。演算部180は、第1粒子数Naと第2粒子数Nbとの差(Nb−Na)を粒子成分Bの粒子数と判断する。また、演算部180は、粒子濃度についても同様に演算することができる。例えば、気流路101の凝縮過飽和度がSaである場合に検出された第1粒子濃度をCaとし、気流路102の凝縮過飽和度がSbである場合に検出された第2粒子濃度をCbとする。この場合、演算部180は、Caを粒子成分Aの粒子濃度と判断する。演算部180は、第1粒子濃度Caと第2粒子濃度Cbとの差(Cb−Ca)を粒子成分Bの粒子濃度と判断する。
【0106】
次に、演算部180は、粒子成分A、Bの粒子数、粒子濃度、粒径、粒子成分を表示部187に表示する(S182)。演算部180は、粒子成分A、Bの粒子数、粒子濃度、粒径、粒子成分の情報を粒子計測装置4の外部へ出力してもよい。被計測気体は、排気管199から粒子計測装置4の外部へ排出される。
【0107】
このように、第4の実施形態によれば、第1および第2液体含有部110、112をそれぞれ異なる温度に設定し、気流路101、102をそれぞれ異なる過飽和度に設定する。そして、第1および第2光検知部140、142は、それぞれ時間的に並行して粒子を検知する。これにより、第1および第2光検知部140、142は、異なる粒子成分を同時に検知することができる。例えば、第1光検知部140は、粒子成分Aを検知し、それと同時に、第2光検知部142は、粒子成分A、Bを検知することができる。その結果、第4の実施形態による粒子計測装置4は、短時間で各粒子成分A、Bのそれぞれの粒子数または粒子濃度等を算出することができる。
【0108】
また、粒子計測装置4は、第1および第2液体含有部110、112の温度を変更せずに、複数の温度条件のもとで同時に粒子の検出を行うことができる。よって、環境100が時間的に変化する場合であっても、粒子計測装置4は、或る時点における環境100に含まれる複数の粒子成分を検知することができる。
【0109】
尚、第4の実施形態において、環境100と排気管199との間に並列されている液体含有部等の構成の数は、2組である。しかし、これらの液体含有部等の構成の数は、3組以上であってもよい。この場合、粒子計測装置は、3種類以上の粒子成分(例えば、A〜C)のそれぞれの粒子数および粒子濃度を同時に得ることができる。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0111】
1〜4・・・粒子計測装置、10・・・気体供給部、20、120・・・計測室、30、130・・・光源、40、45、140・・・光検知部、50、150・・・ポンプ、80、180・・・演算部、83、183・・・ユーザインタフェース、85、185・・・記憶部、87、187・・・表示部、95・・・フィルタ、99、199・・・排気管、110・・・液体含有部、115・・・温度調節管、160・・・温度センサ、170・・・温度コントローラ、175・・・データベース、190・・・液体供給部
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