【実施例1】
【0011】
図1〜3は、実施例1のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)10を示している。
図2、3に示すように、MOSFET10は、半導体基板12と、電極、絶縁層等を備えている。なお、
図1では、図の見易さのため、半導体基板12の上面12a上の電極、絶縁層の図示を省略している。以下では、半導体基板12の上面12aと平行な一方向をx方向といい、上面12aに平行でx方向に直交する方向をy方向といい、半導体基板12の厚み方向をz方向という。半導体基板12は、SiC(炭化シリコン)によって構成されている。
【0012】
図2に示すように、半導体基板12の上面12aには、複数のトレンチ22が設けられている。
図1に示すように、各トレンチ22は、y方向に直線状に長く伸びている。複数のトレンチ22は、x方向に間隔を開けて配列されている。
図2に示すように、各トレンチ22の内面は、ゲート絶縁層24によって覆われている。ゲート絶縁層24は、底部絶縁層24aと側部絶縁層24bを有している。底部絶縁層24aは、トレンチ22の底面を覆っている。側部絶縁層24bは、トレンチ22の側面を覆っている。底部絶縁層24aの厚みは、側部絶縁層24bの厚みよりも厚い。各トレンチ22内には、ゲート電極26が配置されている。各ゲート電極26は、ゲート絶縁層24によって半導体基板12から絶縁されている。各ゲート電極26の上面は、層間絶縁膜28によって覆われている。
【0013】
半導体基板12の上面12aには、上部電極70が配置されている。上部電極70は、層間絶縁膜28が設けられていない部分で半導体基板12の上面12aに接している。上部電極70は、層間絶縁膜28によってゲート電極26から絶縁されている。半導体基板12の下面12bには、下部電極72が配置されている。下部電極72は、半導体基板12の下面12bに接している。
【0014】
図1〜3に示すように、半導体基板12の内部には、複数のソース領域30、ボディ領域32、ドレイン領域34、複数の底部領域36及び複数の端部領域38が設けられている。
【0015】
各ソース領域30は、n型領域である。
図2に示すように、各ソース領域30は、半導体基板12の上面12aに露出する位置に配置されており、上部電極70にオーミック接触している。また、各ソース領域30は、トレンチ22の上端部において側部絶縁層24bに接している。
【0016】
ボディ領域32は、p型領域である。
図2に示すように、ボディ領域32は、各ソース領域30に接している。ボディ領域32は、2つのソース領域30に挟まれた範囲から各ソース領域の下側まで伸びている。2つのソース領域30に挟まれた範囲では、ボディ領域32内のp型不純物濃度が高い。ボディ領域32は、2つのソース領域30に挟まれた範囲で、上部電極70にオーミック接触している。ソース領域30の下側では、ボディ領域32内のp型不純物濃度が低い。ボディ領域32は、ソース領域30の下側で、側部絶縁層24bに接している。ボディ領域32の下面は、ゲート電極26の下端よりも上側に配置されている。また、
図1、3に示すように、トレンチ22に対してy方向に隣接する範囲にも、ボディ領域32が設けられている。
【0017】
各底部領域36は、p型領域である。
図2、3に示すように、各底部領域36は、対応するトレンチ22の底面に露出する範囲に配置されている。各底部領域36は、対応するトレンチ22の底面において、底部絶縁層24aに接している。
図3に示すように、各底部領域36は、対応するトレンチ22の底面に沿ってy方向に長く伸びている。各底部領域36は、対応するトレンチ22の底面全域で底部絶縁層24aに接している。各底部領域36は、第1底部領域36aと第2底部領域36bを有している。第2底部領域36bの厚みは、第1底部領域36aの厚みよりも厚い。すなわち、第1底部領域36aは、トレンチ22の底面から下側に第1位置(第1底部領域36aの下面の位置)まで広がっており、第2底部領域36bは、トレンチ22の底面から第1位置よりも下側の第2位置(第2底部領域36bの下面の位置)まで広がっている。
図3に示すように、トレンチ22の長手方向に沿う縦断面において、第1底部領域36aの下面はy方向に平行に直線状に伸びており、第2底部領域36bの下面はy方向に平行に直線状に伸びている。第2底部領域36bの下面が第1底部領域36aの下面よりも下側に位置している。つまり、底部領域36の下面の位置が、第1底部領域36aから第2底部領域36bに向かって、ステップ状に下側にシフトしている。第1底部領域36aのp型不純物濃度は、第2底部領域36bのp型不純物濃度と略等しい。
【0018】
第1底部領域36aは、トレンチ22の長手方向(すなわち、y方向)の端部22aの下部に配置されている。つまり、トレンチ22の底面のうちの端部22aに位置する第1範囲23aにおいて、第1底部領域36aが底部絶縁層24aに接している。なお、図示していないが、第1底部領域36aは、
図3に示す端部22aとは反対側の端部に位置する底面にも形成されている。底部領域36内の実効キャリア密度は、底部領域36内のp型不純物濃度と底部領域36内のn型不純物濃度の差によって算出される。また、トレンチ22の下部(トレンチ22の直下)において底部領域36内の実効キャリア密度をz方向に積分した値を、以下では実効キャリア面密度という。第1底部領域36aの実効キャリア面密度は、1.4×10
13(cm
−2)より小さい。第1底部領域36aのy方向の幅は、第1底部領域36aのz方向の厚みよりも大きい。
【0019】
第2底部領域36bは、トレンチ22の長手方向(すなわち、y方向)において、第1底部領域36aに隣接する位置に配置されている。つまり、トレンチ22の底面のうちの第1範囲23aに隣接する第2範囲23bにおいて、第2底部領域36bが底部絶縁層24aに接している。したがって、第2底部領域36bは、第1底部領域36aよりも、トレンチ22の端部22aから離れた位置に配置されている。第2底部領域36bは、端部22a近傍を除くトレンチ22の底面の全域に接している。第2底部領域36bの厚みが第1底部領域36aの厚みよりも厚いので、第2底部領域36bの実効キャリア面密度は第1底部領域36aの実効キャリア面密度よりも大きい。第2底部領域36bの実効キャリア面密度は、1.4×10
13(cm
−2)より大きい。第2底部領域36bのy方向の幅は、第1底部領域36aのy方向の幅よりも大きい。
【0020】
ドレイン領域34は、n型領域である。
図2、3に示すように、ドレイン領域34は、ボディ領域32の下側に配置されている。ドレイン領域34は、n型不純物濃度が低いドリフト領域34aと、ドリフト領域34aよりもn型不純物濃度が高いドレインコンタクト領域34bを有している。ドリフト領域34aは、ボディ領域32の下側に配置されている。ドリフト領域34aは、ボディ領域32によってソース領域30から分離されている。ドリフト領域34aは、ボディ領域32の下面に接する位置から各底部領域36の下側まで伸びている。ドリフト領域34aは、各底部領域36(すなわち、第1底部領域36aと第2底部領域36b)の下面と側面に接している。
図2に示すように、ドリフト領域34aは、ボディ領域32の下側で側部絶縁層24bに接している。ドレインコンタクト領域34bは、ドリフト領域34aの下側に配置されている。ドレインコンタクト領域34bは、半導体基板12の下面12bに露出している。ドレインコンタクト領域34bは、下部電極72にオーミック接触している。
【0021】
図1、3に示すように、各端部領域38は、対応するトレンチ22の長手方向の端部22aに沿って設けられている。各端部領域38は、p型領域である。
図3に示すように、各端部領域38の下端は、対応する第1底部領域36aに接続されている。各端部領域38の上端は、ボディ領域32に接続されている。上述したように、ボディ領域32は、上部電極70に接続されている。このため、各第1底部領域36aは、端部領域38とボディ領域32を介して上部電極70に接続されている。
【0022】
次に、MOSFET10の動作について説明する。MOSFET10の使用時には、MOSFET10と負荷(例えば、モータ)と電源が直列に接続される。MOSFET10と負荷の直列回路に対して、電源電圧が印加される。MOSFET10のドレイン側(下部電極72側)がソース側(上部電極70側)よりも高電位となる向きで、電源電圧が印加される。MOSFET10のゲート電位(ゲート電極26の電位)は、図示しない制御装置によって制御される。
【0023】
MOSFET10がオフしているときについて説明する。ゲート電位が閾値よりも低いと、MOSFET10がオフしている。この状態では、下部電極72の電位が上部電極70の電位よりも高い。ボディ領域32が上部電極70に接続されており、ドリフト領域34aがドレインコンタクト領域34bを介して下部電極72に接続されているので、ボディ領域32とドリフト領域34aの界面のpn接合33に逆電圧が印加される。したがって、pn接合33から空乏層が伸びる。また、底部領域36は、端部領域38とボディ領域32を介して上部電極70に接続されている。このため、底部領域36とドリフト領域34aの界面のpn接合37にも逆電圧が印加される。したがって、pn接合37からも空乏層が伸びる。ドリフト領域34aのn型不純物濃度が低いので、ドリフト領域34aには広く空乏層が広がる。このため、ドリフト領域34aの略全域が空乏化される。また、空乏層は、pn接合33からボディ領域32内にも広がる。また、空乏層は、pn接合37から底部領域36内にも広がる。
【0024】
図4は、
図3に示す第1底部領域36aと第2底部領域36bを拡大して示している。また、
図5は、比較例のMOSFETの
図4に対応する拡大断面図を示している。
図5に示す比較例のMOSFETでは、底部領域36全体が、第1底部領域36aと略同じ深さを有している。つまり、比較例のMOSFETでは、底部領域36全体が一定の厚みを有している。比較例のMOSFETのその他の構成は、実施例1のMOSFET10と等しい。
図4、5において、ドットによりハッチングされている半導体領域は、空乏化していない半導体領域(以下では、非空乏化領域という)である。
図4、5において、ドットによりハッチングされていない半導体領域は、空乏化している半導体領域である。空乏化している半導体領域には電流が流れないため、空乏化している半導体領域内に電位差が発生する。
図4、5では、空乏化している半導体領域内の電位分布を、等電位線100によって示している。
【0025】
図4、5において等電位線100によって示すように、トレンチ22の下部では、等電位線100が主に横方向(y方向)に伸びている。トレンチ22の長手方向(y方向)においてトレンチ22に隣接する領域では、トレンチ22の下部よりも上側に等電位線が分布する。したがって、トレンチ22の端面(トレンチ22の端部22aを画定している側面)とトレンチ22の底面の間の角部25の近傍で、等電位線100がトレンチ22の下部から斜め上方向に向かうように曲がる。このため、
図4、5では、角部25近傍の範囲25aで、局所的に等電位線100の間隔が狭くなっている。したがって、範囲25aでは、その周囲に比べて電界が高い。但し、範囲25a内の電界は、
図4では
図5よりも緩和されている。以下、詳細に説明する。
【0026】
比較例のMOSFETでは、底部領域36の厚みが一定であるので、底部領域36の下面(pn接合37)の位置が一定である。したがって、
図5に示すように、pn接合37から底部領域36内に伸びる空乏層の上端が、一定の深さに分布している。言い換えると、底部領域36内の非空乏化領域の下端が、一定の深さに分布している。このため、底部領域36内の非空乏化領域の下部において、等電位線100が、略一定の深さで横方向に伸びている。等電位線100は、角部25近傍の範囲25aにおいて急激に曲がる。このため、範囲25aにおいて、等電位線100の間隔が極めて狭い。すなわち、比較例のMOSFETでは、範囲25aにおいて極めて高い電界が発生する。
【0027】
他方、実施例1のMOSFET10では、上述したように、第1底部領域36aの下面(pn接合37)が、第2底部領域36bの下面(pn接合37)よりも上側に位置している。したがって、
図4に示すように、pn接合37から第1底部領域36a内に伸びる空乏層の上端が、pn接合37から第2底部領域36b内に伸びる空乏層の上端よりも上側に位置している。言い換えると、第2底部領域36b内の非空乏化領域の下端が、第1底部領域36a内の非空乏化領域の下端よりも下側に突出している。このため、第2底部領域36b内の非空乏化領域の下部では第1底部領域36a内の非空乏化領域の下部よりも等電位線100が下側に押し下げられている。その結果、第1底部領域36a内の非空乏化領域の下部において、等電位線100が、第2底部領域36b側から角部25側に向かうにしたがって徐々に上側にシフトするように分布する。このため、角部25近傍の範囲25aにおける等電位線100の曲がり具合が、
図5に比べて緩和される。このため、範囲25aにおける等電位線100の間隔が、
図5に比べて広い。すなわち、実施例1のMOSFET10では、範囲25aにおける電界が、比較例のMOSFETに比べて緩和される。
【0028】
このように、実施例1のMOSFET10では、第1底部領域36a内の非空乏化領域の下部で等電位線100が第2底部領域36b側から角部25側に向かうにしたがって徐々に上側にシフトするように分布するため、角部25近傍における等電位線100の曲がり具合を緩和することができる。このため、角部25近傍において等電位線100の間隔が狭くなることを抑制することができ、角部25近傍における電界集中が抑制される。特に、角部25は厚みが薄い側部絶縁層24bに近いため、角部25近傍における電界集中を抑制することで、側部絶縁層24bに印加される電界を緩和することができる。これによって、側部絶縁層24bの絶縁性の劣化を抑制することができる。したがって、実施例1のMOSFET10は、高い耐圧を有する。
【0029】
また、
図4に示すように、実施例1のMOSFET10では、角部25周辺の範囲25aでは電界が緩和される一方で、トレンチ22の下部(第1底部領域36aと第2底部領域36bの境界周辺の範囲25b)では比較例のMOSFETに比べて電界が若干強くなる。しかしながら、トレンチ22の底面は厚い底部絶縁層24aによって覆われている。厚みが厚い底部絶縁層24aの絶縁性は劣化し難い。このため、底部絶縁層24aへの印加電界が高くなっても、絶縁性の劣化の問題は生じない。このように、トレンチ22の下部の範囲25b(すなわち、厚い底部絶縁層24aの近傍)で電界を上昇させることによって、角部25周辺の範囲25a(すなわち、薄い側部絶縁層24bの近傍)で電界を低下させることができ、これによってMOSFET10全体の耐圧が向上する。
【0030】
次に、MOSFETをオンさせる場合について説明する。ゲート電位が閾値よりも高い電位まで引き上げられると、側部絶縁層24bに隣接する範囲でボディ領域32がn型に反転し、その範囲にチャネルが形成される。すると、ドリフト領域34aからボディ領域32側に空乏層が収縮し、ドリフト領域34aを通って電子が流れるようになる。つまり、MOSFETがターンオンする。したがって、上部電極70から、ソース領域30、チャネル、ドレイン領域34を介して下部電極72へ電子が流れる。すなわち、下部電極72から上部電極70へ電流が流れる。
【0031】
また、MOSFETがオンするときに、下部電極72の電位が上部電極70と略同電位まで低下する。すると、下部電極72と底部領域36の間の容量結合によって、底部領域36の電位が低下する。この状態では、底部領域36の電位がドリフト領域34aの電位よりも低いので、底部領域36からドリフト領域34aに空乏層が広がっている。しかしながら、底部領域36の電位が低下すると、上部電極70から、ボディ領域32と端部領域38を通って底部領域36に電荷が流入する。このように底部領域36に電荷が流入することで、底部領域36の電位が上部電極70と略同電位まで上昇する。底部領域36の電位が上昇することで、底部領域36からドリフト領域34aに広がっている空乏層が底部領域36側に収縮する。その結果、ドリフト領域34aの抵抗が低下し、MOSFETのオン抵抗が低下する。
図5に示す比較例のMOSFETでは、底部領域36全体の厚みが薄いので、底部領域36全体の抵抗が高い。このため、比較例のMOSFETがオンするときに、底部領域36全体に電荷が行き渡るのに時間がかかる。このため、比較例のMOSFETでは、底部領域36からドリフト領域34aに広がっている空乏層が底部領域36側に収縮するのに時間を要する。したがって、比較例のMOSFETは、チャネルが形成されてからオン抵抗が低下するまでに時間がかかる。他方。実施例1のMOSFET10では、底部領域36の一部は厚みが薄い第1底部領域36aであるが、他の部分は厚みが厚い第2底部領域36bである。第2底部領域36bの厚みが厚いので、第2底部領域36bの抵抗は低い。したがって、MOSFET10がオンするときに、底部領域36全体に短時間で電荷が行き渡る。このため、実施例のMOSFET10では、底部領域36からドリフト領域34aに広がっている空乏層が短時間で底部領域36側に収縮する。したがって、実施例1のMOSFET10では、チャネルが形成されてから短時間でオン抵抗が低下する。このため、実施例1のMOSFET10は、比較例のMOSFETに比べて、低損失で動作することができる。
【0032】
なお、SiCでは、半導体領域の実効キャリア面密度が1.4×10
13cm
−2より大きい場合には、その半導体領域に対する印加電圧をどこまで高くしても、その半導体領域全体を空乏化することはできない。逆に、半導体領域の実効キャリア面密度が1.4×10
13cm
−2より小さい場合には、その半導体領域に対する印加電圧を高くすれば、その半導体領域全体を空乏化することができる。上述した実施例1においては、第2底部領域36bにおける実効キャリア面密度が、1.4×10
13cm
−2より大きい。このため、MOSFET10がオフしているときに上部電極70と下部電極72の間に印加される電圧が大きくても、トレンチ22の下部の第2底部領域36bが厚み方向(z方向)において完全に空乏化されることがない。つまり、上部電極70と下部電極72の間に印加される電圧が大きくても、トレンチ22の下部の第2底部領域36b内に非空乏化領域が残る。このため、MOSFET10がオンするときに、底部領域36全体に電荷が供給され易い。したがって、実施例1のMOSFET10は、オフ時に上部電極70と下部電極72の間に印加される電圧が大きくても、オンするときに短時間でオン抵抗が低下する。
【0033】
また、上述した実施例1において、第1底部領域36aにおける実効キャリア面密度が、1.4×10
13cm
−2より小さい。このため、
図4の状態からさらに上部電極70と下部電極72の間の印加電圧を高くすると、第1底部領域36aが厚み方向(z方向)において完全に空乏化する。このように第1底部領域36aを厚み方向に完全に空乏化すると、
図6に示すように、第1底部領域36a内において空乏層が底部絶縁層24aに達する。すると、
図6に示すように、等電位線100が空乏化した第1底部領域36aから底部絶縁層24aに跨って伸びるようになり、等電位線100の曲がり具合が
図4よりもさらに緩和される。このため、角部25周辺における電界集中をより緩和することができる。
【0034】
なお、上述した実施例1において、第1底部領域36aと第2底部領域36bの間に、第3底部領域を配置してもよい。第3底部領域は、第1底部領域36aよりも厚みが厚く、第2底部領域36bよりも厚みが薄いp型半導体領域である。このような構成によれば、電界をより緩和することができる。
【実施例2】
【0035】
図7、8は、実施例2のMOSFETを示している。実施例2のMOSFETでは、第2底部領域36bのp型不純物濃度が、第1底部領域36aのp型不純物濃度よりも高い。実施例2のMOSFETのその他の構成は、実施例1のMOSFET10と等しい。
【0036】
上記の通り、実施例2のMOSFETでは、第2底部領域36bのp型不純物濃度が第1底部領域36aのp型不純物濃度よりも高い。このため、第2底部領域36b内では、第1底部領域36a内よりも空乏層が広がり難い。このため、
図8に示すように、実施例2のMOSFETがオフしたときに、pn接合37から第2底部領域36b内に広がる空乏層の幅が、pn接合37から第1底部領域36a内に広がる空乏層の幅よりも小さくなる。したがって、
図8では、第2底部領域36b内の非空乏化領域の下端が第1底部領域36a内の非空乏化領域の下端に対して下側に突出する量が、実施例1(
図4)の場合よりも大きい。このため、
図8では、第1底部領域36a内の非空乏化領域の下部における等電位線100の傾斜角度が、
図4に比べて大きい。したがって、
図8では、角部25近傍での等電位線100の曲がり具合が、
図4に比べてさらに緩和される。このため、
図8では、角部25近傍での等電位線100の間隔が、
図4に比べてさらに広い。したがって、実施例2のMOSFETによれば、角部25近傍における電界集中をさらに緩和することができる。
【0037】
なお、上述した実施例2において、第1底部領域36aと第2底部領域36bの間に、上述した第3底部領域(すなわち、第1底部領域36aよりも厚みが厚く、第2底部領域36bよりも厚みが薄いp型半導体領域)を配置してもよい。この場合、第3底部領域のp型不純物濃度を、第1底部領域36aよりも高く、第2底部領域36bよりも低くすることができる。このような構成によれば、電界をより緩和することができる。
【0038】
次に、実施例2の第1底部領域36aと第2底部領域36bの形成方法について説明する。まず、
図9に示すように、半導体基板12の上面12aにトレンチ22を形成する。次に、半導体基板12の上面12aを覆うマスク12cを形成する。次に、
図9に示すように、イオン注入方向を半導体基板12の上面12aに対してx軸周りに傾斜させた状態で、トレンチ22の底面にp型不純物を注入する(第1注入工程)。第1注入工程では、底面のうちのトレンチ22の長手方向(y方向)の一方の端部近傍の範囲110へのイオン注入が、上面12aによって遮られる。次に、
図10に示すように、イオン注入方向を半導体基板12の上面12aに対してx軸周りに第1注入工程とは反対向きに傾斜させた状態で、トレンチ22の底面にp型不純物を注入する(第2注入工程)。第2注入工程では、底面のうちのトレンチ22の長手方向(y方向)の他方の端部近傍の範囲120へのイオン注入が、上面12aによって遮られる。範囲110、120によって挟まれた範囲130(トレンチ22の底面の中央部)には、第1注入工程と第2注入工程の両方でp型不純物が注入される。したがって、範囲110、120へのイオン注入量は、範囲130へのイオン注入量よりも少ない。その後、半導体基板12をアニールすることで、注入されたp型不純物を活性化させる。また、アニールによって、p型不純物が半導体基板12中で拡散する。p型不純物が高濃度に注入された範囲130では、範囲110、120よりもp型不純物の拡散距離が長くなる。したがって、範囲130にp型不純物濃度が高いと共に厚みが厚い第2底部領域36bが形成され、範囲110、120にp型不純物濃度が低いと共に厚みが薄い第1底部領域36aが形成される。したがって、この方法によれば、実施例2のMOSFETを製造することができる。また、この方法によれば、範囲110、120、130を個別にマスクすることなく、範囲130に範囲110、120よりも高濃度にp型不純物を注入することができる。範囲110、120、130にマスクを形成したりマスクを除去したりする必要がないので、効率的にMOSFETを製造することができる。なお、実施例2のMOSFETを、その他の方法によって製造することも可能である。
【0039】
なお、上述した実施例では、底部領域36をボディ領域32に接続するp型領域(すなわち、端部領域38)がトレンチ22の長手方向の端部に設けられていた。しかしながら、底部領域36をボディ領域32に接続するp型領域が、別の位置に設けられていてもよい。また、底部領域36をボディ領域32に接続するp型領域が、第2底部領域36bに接続されていてもよい。また、底部領域36がボディ領域32を介さずに上部電極70に接続されていてもよい。また、底部領域36を上部電極70に接続するp型領域が設けられていなくてもよい。この場合、底部領域36の電位がフローティングとなる。
【0040】
また、上述した実施例では、半導体基板12がSiCによって構成されていた。しかしながら、半導体基板12がSi(シリコン)によって構成されていてもよい。半導体基板12がSiによって構成されている場合、第2底部領域36bの実効キャリア面密度を、2.0×10
12(cm
−2)より大きくすることが好ましい。この構成によれば、第2底部領域36bが厚み方向に完全に空乏化されることを防止することができる。また、半導体基板12がSiによって構成されている場合、第1底部領域36aの実効キャリア面密度を、2.0×10
12(cm
−2)より小さくすることが好ましい。この構成によれば、MOSFETへの印加電圧が高いときに、第1底部領域36aを厚み方向に完全に空乏化させることができる。
【0041】
また、上述した実施例1、2では、nチャネル型のMOSFETについて説明したが、pチャネル型のMOSFETに本明細書に開示の技術を適用してもよい。上述した実施例1、2において、n型とp型を入れ替えることで、pチャネル型のMOSFETを構成することができる。また、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他のスイッチング素子に、本明細書に開示の技術を適用してもよい。
【0042】
上述した実施例の各構成要素と、請求項の各構成要素との関係について説明する。実施例のソース領域は、請求項の第1半導体領域の一例である。実施例のドリフト領域は、請求項の第2半導体領域の一例である。実施例の端部領域とボディ領域は、請求項の接続領域の一例である。
【0043】
本明細書が開示する技術要素について、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0044】
本明細書が開示する一例の構成では、スイッチング素子が、半導体基板の上面に設けられており、第1半導体領域に接している上部電極を有している。半導体基板が、底部領域と上部電極とを接続している第2導電型の接続領域を有している。
【0045】
この構成によれば、底部領域が上部電極に接続されるので、底部領域の電位が安定する。このため、スイッチング素子の特性が安定する。また、スイッチング素子がオンするときに、接続領域を介して底部領域に電荷が供給される。底部領域に電荷が供給されることで、底部領域から第2半導体領域に広がっている空乏層が底部領域側に収縮する。これによって、第2半導体領域の抵抗が低下する。底部領域が第2底部領域(すなわち、厚みが厚く、抵抗が低い領域)を有しているので、スイッチング素子がオンするときに、底部領域全体に素早く電荷を供給することができる。このため、第2半導体領域から底部領域へ空乏層を素早く収縮させることができる。このため、スイッチング素子がオンするときに、オン抵抗を素早く低下させることができる。
【0046】
本明細書が開示する一例の構成では、ゲート絶縁層が、トレンチの前記底面を覆っている底部絶縁層と、トレンチの側面を覆っており、底部絶縁層よりも厚みが薄い側部絶縁層を有している。
【0047】
このような構成によれば、第1底部領域と第2底部領域の境界近傍においてトレンチの下部における電界が高くなっても、厚みが厚い底部絶縁層の絶縁性がほとんど劣化しない。
【0048】
本明細書が開示する一例の構成では、半導体基板が、炭化シリコンによって構成されている。トレンチの下部に位置する第2底部領域内の実効キャリア密度を半導体基板の厚み方向に積分した実効キャリア面密度が、1.4×10
13(cm
−2)より大きい。
【0049】
なお、本明細書において、実効キャリア密度は、特定の半導体領域内の第1導電型不純物濃度と第2導電型不純物濃度のうち大きい方から小さい方を減算した値を意味する。
【0050】
この構成によれば、トレンチの下部に位置する第2底部領域が厚み方向全体にわたって空乏化することがない。したがって、スイッチング素子がオンするときに、底部領域全体に素早く電荷を供給することができる。このため、第2半導体領域から底部領域へ空乏層を素早く収縮させることができる。このため、スイッチング素子がオンするときに、オン抵抗をより素早く低下させることができる。
【0051】
本明細書が開示する一例の構成では、半導体基板が、炭化シリコンによって構成されている。トレンチの下部に位置する第1底部領域内の実効キャリア密度を前記半導体基板の厚み方向に積分した実効キャリア面密度が、1.4×10
13(cm
−2)より小さい。
【0052】
この構成によれば、スイッチング素子がオフしているときの印加電圧を調節することで、トレンチの下部に位置する第1底部領域を厚み方向全体にわたって空乏化させることができる。第1底部領域が厚み方向全体にわたって空乏化すると、第1底部領域からその上部のゲート絶縁層にも等電位線が伸びるようになる。このため、トレンチの長手方向の端部周辺における電界をさらに緩和することができる。
【0053】
本明細書が開示する一例の構成では、半導体基板が、シリコンによって構成されている。トレンチの下部に位置する第2底部領域内の実効キャリア密度を半導体基板の厚み方向に積分した実効キャリア面密度が、2.0×10
12(cm
−2)より大きい。
【0054】
この構成によれば、トレンチの下部に位置する第2底部領域が厚み方向全体にわたって空乏化することがない。したがって、スイッチング素子がオンするときに、オン抵抗を素早く低下させることができる。
【0055】
本明細書が開示する一例の構成では、半導体基板が、シリコンによって構成されている。トレンチの下部に位置する第1底部領域内の実効キャリア密度を半導体基板の厚み方向に積分した実効キャリア面密度が、2.0×10
12(cm
−2)より小さい。
【0056】
この構成によれば、スイッチング素子がオフしているときの印加電圧を調節することで、トレンチの下部に位置する第1底部領域を厚み方向全体にわたって空乏化させることができる。このため、トレンチの長手方向の端部周辺における電界をさらに緩和することができる。
【0057】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。