(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
弾発部材によってパイロット室に指向して弾発付勢されたスプールを有するスプール弁と、前記スプール弁の入力ポートと前記パイロット室とを連通状態又は連通遮断状態に切り換える電磁弁と、前記スプール弁及び前記電磁弁が設けられた弁本体とを有する圧力流体制御装置であって、
前記弁本体に、前記入力ポートと、前記スプールを収納する第1弁収納孔と、前記電磁弁の弁部を収容する第2弁収納孔と、前記入力ポートから前記第2弁収納孔に圧力流体を供給するための圧力流体供給流路とが形成され、
前記弁部に、前記圧力流体供給流路に連通し、且つ前記パイロット室に圧力流体を入力するためのパイロット圧入力ポートが形成され、
前記圧力流体供給流路は、前記弁本体の端面で開口した通路と、前記入力ポートと前記通路に連通する第1連通路と、前記通路と前記パイロット圧入力ポートに連通する第2連通路とを有することを特徴とする圧力流体制御装置。
請求項1記載の圧力流体制御装置において、前記第1弁収納孔と前記第2弁収納孔とが直線状に連なった1個の孔であり、前記スプール弁と前記電磁弁が直列配置されることを特徴とする圧力流体制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した技術に関連してなされたもので、コストの低廉化を図り得るとともに、構成が簡素化された圧力流体制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するために、本発明は、弾発部材によってパイロット室に指向して弾発付勢されたスプールを有するスプール弁と、前記スプール弁の入力ポートと前記パイロット室とを連通状態又は連通遮断状態に切り換える電磁弁と、前記スプール弁及び前記電磁弁が設けられた弁本体とを有する圧力流体制御装置であって、
前記弁本体に、前記入力ポートと、前記スプールを収納する第1弁収納孔と、前記電磁弁の弁部を収容する第2弁収納孔と、前記入力ポートから前記第2弁収納孔に圧力流体を供給するための圧力流体供給流路とが形成され、
前記弁部に、前記圧力流体供給流路に連通し、且つ前記パイロット室に圧力流体を入力するためのパイロット圧入力ポートが形成され、
前記圧力流体供給流路は、前記弁本体の端面で開口した通路と、前記入力ポートと前記通路に連通する第1連通路と、前記通路と前記パイロット圧入力ポートに連通する第2連通路とを有することを特徴とする。
【0006】
上記したように、本発明においては、入力ポートから電磁弁の弁部に圧力流体を供給することが可能な圧力流体供給流路を弁本体に形成している。このような弁本体を得るには、例えば、鋳造加工によって各ポートや開放通路が形成された鋳造加工品に対し、入力ポートから開放通路、又はその逆方向に向かう穴加工を行うことで第1連通路を形成するとともに、開放通路から連設弁収納孔に向かう穴加工を行うことで第2連通路を形成すればよい。入力ポートや開放通路が弁本体の所定の端面で開口しているので、穴加工のための加工工具を差し込むことが容易である。従って、第1連通路及び第2連通路を容易に形成することができる。
【0007】
このように、前記第1連通路及び前記第2連通路を形成することにより、パイロット室に圧力流体を供給することが可能となる。すなわち、他に穴加工を施す必要が特にないので、圧力流体供給流路を形成するときの加工屑を著しく低減することができる。従って、材料歩留まりが向上する。特に、第1連通路及び第2連通路を水平直線形状とすると、これら連通路が最短距離となるので加工屑を一層低減することができる。
【0008】
しかも、第1連通路及び第2連通路が弁本体の端面で開口していないので、該開口を閉塞するための閉塞部材を用いる必要がない。この分、圧力流体制御装置の構成部品の点数を低減することができる。勿論、部品点数が低減することに伴い、構成が簡素化するとともに小型化を図ることが容易となる。
【0009】
結局、本発明によれば、圧力流体制御装置の小型化を図りながら、完成製品として得るまでのコストの低廉化を図ることが可能となる。その上、圧力流体制御装置を組み立てるまでの作業工数も低減する。
【0010】
第1弁収納孔と第2弁収納孔は、互いが直線状に連なった(換言すれば、互いに連通した)1個の孔であってもよい。この場合、スプール弁と電磁弁が直列配置される。この構成によれば、圧力流体制御装置の幅方向(長手方向に直交する方向)を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、入力ポートから電磁弁の弁部に圧力流体を供給することが可能な圧力流体供給流路を弁本体に形成して圧力流体制御装置を構成するようにしているので、第1連通路及び第2連通路が弁本体の端面で開口していない。従って、第1連通路及び第2連通路の開口を閉塞するための閉塞部材を用いる必要もない。このため、圧力流体制御装置の部品点数を低減することができる。これに伴い、構成が簡素化するとともに小型化を図ることが容易となる。
【0012】
また、第1連通路及び第2連通路を形成するに際しては、これら第1連通路及び第2連通路を形成するための加工工具を、弁本体の端面で開口した入力ポートや開放通路内に差し込めばよい。開放通路が開口しているので、加工工具を容易に差し込むことができる。すなわち、第1連通路及び第2連通路を形成することは容易である。
【0013】
しかも、圧力流体供給流路を形成するに当たり、第1連通路及び第2連通路とは別に穴加工を施す必要は特にない。このため、圧力流体供給流路を形成するときの加工屑を著しく低減することができるので、材料歩留まりが向上する。
【0014】
以上のような理由から、圧力流体制御装置の小型化を図りながら、完成製品として得るまでのコストの低廉化を図ることが可能となる。また、圧力流体制御装置を組み立てるまでの作業工数を低減し得るので、生産効率が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る圧力流体制御装置につき、自動車の走行動力源であるエンジンのエンジン本体に取り付けられるものを好適な実施の形態として挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明における「下方」、「上方」、「左方」及び「右方」は、
図1A、
図2〜
図4における下方、上方、左方及び右方を意味するが、これは理解を容易にするためであり、圧力流体制御装置を実使用する際の姿勢を定義するものではない。
【0017】
図1Aは、本実施の形態に係る圧力流体制御装置10の概略正面図である。この圧力流体制御装置10は、自動車に搭載されるエンジンの動弁装置の作動特性を変更するためのものであり、図示しないエンジン本体に取り付けられる。
【0018】
圧力流体制御装置10は、弁本体12を有する。この弁本体12内には連設弁収納孔14(
図1B及び
図1C参照)が形成されており、該連設弁収納孔14内にスプール弁16及び電磁弁18が収納されている。
【0019】
図1Aに示すように、弁本体12の幅狭な一端面(開口形成面20)の左方では、入力ポート30、出力ポート32、解放ポート34が下方からこの順序で開口している。また、これらポート30、32、34の右方には、開口形成面20で開口した若干幅広の開放通路36が、入力ポート30に対応する位置から解放ポート34に対応する位置にわたって延在するように形成されている。
【0020】
図1B及び
図1Cに示すように、開口形成面20には、ポート30、32、34及び開放通路36の周囲に一体的に連なる凹部38が形成されている。この凹部38には、図示しない第1シール部材が埋め込まれる。開口形成面20と前記エンジン本体との間は、この第1シール部材によって気密ないし液密に保たれる。この際、入力ポート30、出力ポート32及び解放ポート34は、前記エンジン本体に形成された流路に連通する。また、開放通路36の開口は、エンジン本体の壁面で閉塞される。
【0021】
図1Aに示すように、入力ポート30と開放通路36は、弁本体12の下方で略水平直線形状に形成された第1連通路40を介して連通する。ここで、
図1Bから諒解されるように、第1連通路40は連設弁収納孔14の外部に形成されている。
【0022】
一方、開放通路36と連設弁収納孔14は、
図1Cに示すように、弁本体12の上方で略水平直線形状に形成された第2連通路42を介して連通する。従って、入力ポート30から入力されて第1連通路40に流入した圧力流体は、第2連通路42から連設弁収納孔14に供給される。
【0023】
図1A中のII−II線矢視断面図である
図2に示すように、弁本体12内には、その長手方向である上下方向に沿って連設弁収納孔14が形成される。この連設弁収納孔14に、スプール弁16を構成するスプール44と、電磁弁18を構成する弁部46(後述)とが収容される。このことから諒解されるように、本実施の形態では、スプール44を収容する第1弁収納孔と、弁部46を収容する第2弁収納孔とが直線状に連なって1個の連設弁収納孔14を形成している。このため、スプール弁16と電磁弁18が直線状に配置された、いわゆる直列配置となっている。
【0024】
連設弁収納孔14内の底面には、円盤形状に陥没した円盤状凹部50が形成される。一方、スプール44は、その内部にスプリング室52及び圧力流体解放流路54が一体的に連なって形成された略円筒形状をなす中空体からなり、スプリング室52の内径は、圧力流体解放流路54の内径に比して大きく設定されている。従って、スプリング室52と圧力流体解放流路54の間に段部が形成される。
【0025】
スプリング室52には、下端が円盤状凹部50の底面に着座し、且つ上端が段部に着座する第1コイルスプリング56が収容される。この第1コイルスプリング56により、スプール44が電磁弁18側に弾発付勢される。
【0026】
スプール44の側壁には、第1環状凹部58と第2環状凹部60が下方からこの順序で形成される。第2環状凹部60に対応する位置には、スプール44の内部(圧力流体解放流路54)と外部を連通する横孔62が形成される。
【0027】
また、スプール44の上端面には、略円柱形状をなす凸部64が突出形成される。この凸部64が、電磁弁18を構成する筒状部材66(固定コア)の下端面68に当接することにより、スプール44が堰止されてそれ以上の変位が阻止される。また、該凸部64には、絞り70が圧力流体解放流路54に連なるように形成される。
【0028】
スプール44の上端面と筒状部材66の下端面68との間には、パイロット室72が形成される。スプール44は、パイロット室72に供給された圧力流体により、下方に指向して押圧される。
【0029】
スプール44は、入力ポート30とパイロット室72が連通遮断状態であるとき、入力ポート30と出力ポート32の連通を遮断するとともに出力ポート32と解放ポート34を連通する位置となる。一方、入力ポート30とパイロット室72が連通状態であるときには、後述するように、入力ポート30と出力ポート32を連通させ、且つ出力ポート32と解放ポート34との連通を遮断する位置となる(
図2参照)。このとき、パイロット室72は、絞り70を介して圧力流体解放流路54に連通する。
【0030】
電磁弁18は、弁本体12の連設弁収納孔14に収容される前記弁部46と、該弁部46の上方に配設されて弁本体12から露呈するソレノイド部80とを有する。本実施の形態において、電磁弁18は二方弁である。
【0031】
前記筒状部材66は磁性体からなり、弁本体12に対して位置決め固定されている。筒状部材66は、このように位置決め固定された状態で、ソレノイド部80のヨーク、換言すれば、固定コアとして機能する。
【0032】
該筒状部材66には、連設弁収納孔14に挿入される有底筒状の筒部82と、該筒部82の上端部近傍の側壁から直径方向外方に突出した大径のフランジ部84とが一体的に形成されている。そして、筒部82の下端面68により、連設弁収納孔14内が、スプール弁16が構成される部分と、電磁弁18が構成される部分とに区画されている。
【0033】
フランジ部84の下端面は、弁本体12の上端面に当接する。フランジ部84と弁本体12の間には環状の第2シール部材86が介装され、これにより、連設弁収納孔14が封止される。
【0034】
筒部82は、その内部に、該筒部82の長手方向に沿って延在する弁部収納孔88が形成された中空体からなる。該筒部82には、下端面から側壁にかけて平取り加工された平取り部90が形成される。該平取り部90には、弁部収納孔88に連通するパイロット圧出力ポート92が形成される。筒部82の側壁は、平取り部90以外の部位では連設弁収納孔14の内壁に沿った曲面である。これに対し、平取り部90は上記したように平面である。このため、筒部82が連設弁収納孔14に挿入された状態において、平取り部90と連設弁収納孔14の内壁とが接触することはない。
【0035】
すなわち、平取り部90と連設弁収納孔14の内壁との間には所定の間隙が形成される。この間隙は、パイロット圧出力ポート92と前記パイロット室72を連通するパイロット圧供給流路94として機能する。
【0036】
平取り部90に対して略90°の位相差となる位置には、第2連通路42に連通するパイロット圧入力ポート98が形成される。結局、第1連通路40、開放通路36及び第2連通路42は、入力ポート30から入力された圧力流体をパイロット圧入力ポート98に送るための圧力流体供給流路を構成する。パイロット圧入力ポート98は、
図2の紙面手前側から奥側に向かって延在する。
【0037】
前記弁部収納孔88の内径は、下方から順に3段階で拡径されている。すなわち、弁部収納孔88は、小径部100、中径部102、テーパー状拡径部104、大径部106を有する。パイロット圧入力ポート98の一端は、最下方の小径部100に対して略直交するように交差及び開口している。
【0038】
また、中径部102には弁座部材110が圧入される。弁座部材110の下端面は、小径部100と中径部102で形成される環状段差に当接することで位置決め固定されている。この弁座部材110には、上下方向に貫通する弁孔112が形成される。弁孔112の上部開口には弁座114が形成されており、この弁座114に対し、可動コア116の弁体部118が着座又は離間する。弁体部118の先端は、弁座114の形状に対応して略円錐状に加工されている。
【0039】
パイロット圧出力ポート92の一端は、テーパー状拡径部104で開口している。このため、可動コア116の弁体部118が弁座114に着座したとき、パイロット圧入力ポート98とパイロット圧出力ポート92の連通が遮断される。これに対し、可動コア116の弁体部118が弁座114から離間したときには、パイロット圧入力ポート98とパイロット圧出力ポート92が連通する(
図3参照)。
【0040】
大径部106には、非磁性体からなるカラー部材120とともに可動コア116の下端部が挿入される。勿論、カラー部材120の底面には、弁体部118を通すための通過孔が貫通形成される。弁座部材110の上端面とカラー部材120の下端面とによって弁室122が形成される。
【0041】
電磁弁18を構成するソレノイド部80は、中空部130が形成されて略円筒形状をなすボビン132と、ボビン132に巻回される電磁コイル134と、いずれも磁性体からなり、ボビン132の中空部130に収納される可動コア116及び固定コア138とを有する。
【0042】
ボビン132の下端面は、第3シール部材140を介して筒状部材66のフランジ部84に当接する。第3シール部材140により、ボビン132と筒状部材66の間のシールがなされて弁部収納孔88が封止される。また、ボビン132と、筒状部材66の筒部82の上端面との間に、カラー部材120の大径な鍔部が挟まれる。
【0043】
ボビン132は樹脂からなり、電磁コイル134を巻回した状態でハウジング142内に収容される。具体的には、ハウジング142の下端は弁本体12の上端部に加締められ、これにより、該ハウジング142が弁本体12に支持されるとともに、ボビン132がフランジ部84及び弁本体12の上端部とともにハウジング142で覆われる。
【0044】
ボビン132の上端面はハウジング142の天井面に当接するとともに、両者の間に環状の第4シール部材144が設けられる。該第4シール部材144により、ボビン132とハウジング142の間のシールがなされる。ハウジング142の側面の一部には導出口146が形成され、この導出口146からは、ボビン132と一体化されたカプラ148が突出する。カプラ148内には、電磁コイル134に対して電気的に接続された給電端子150が設けられる。
【0045】
ボビン132の中空部130には、可動コア116の上端部及び固定コア138が挿入される。可動コア116の下端面には前記弁体部118が弁座114に指向して突出形成され、一方、上端面には固定コア138に指向する柱状突部154が突出形成される。
【0046】
一方、固定コア138には有底のスプリング収納穴156が形成され、該スプリング収納穴156には、第2コイルスプリング158が収容される。すなわち、第2コイルスプリング158の下端は可動コア116の上端面に着座し、その内部に前記柱状突部154が挿入される。一方、上端面はスプリング収納穴156の天井面に着座する。従って、第2コイルスプリング158は、可動コア116の弁体部118を弁座114側に指向して弾発付勢する。
【0047】
本実施の形態に係る圧力流体制御装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、その動作との関係で説明する。
【0048】
電磁コイル134に対して通電がなされていないとき、該電磁コイル134には磁気が発生していない。このため、可動コア116に対し、磁力に基づく吸引力が作用することはない。その一方で、可動コア116には、第2コイルスプリング158による弾発付勢力が作用している。この弾発付勢により、可動コア116が弁座部材110側に押し下げられる。その結果、弁体部118が弁座114に着座する。すなわち、電磁弁18は閉状態である。
【0049】
電磁弁18が閉状態であるとき、可動コア116は、該可動コア116に対する第2コイルスプリング158の弾発付勢力によって弁座部材110側に弾発付勢される。従って、可動コア116の弁体部118が弁座114に着座し、弁孔112と弁室122との連通が遮断される。
【0050】
一方、パイロット室72は、スプール44の凸部64に形成された絞り70、圧力流体解放流路54及び横孔62で構成される流路を介して、解放ポート34に連通する。このため、パイロット室72は解放ポート34と同圧になる。
【0051】
このとき、第1コイルスプリング56のスプール44に対する弾発付勢力は、パイロット室72内の圧力流体によるスプール44に対する押圧力を上回っている。従って、スプール44は、凸部64の上端面が筒状部材66の下端面68に当接する最上方位置となる。この際、入力ポート30がスプール44の大径な側壁で閉塞されるので、入力ポート30と出力ポート32との連通、及び連設弁収納孔14との連通が遮断される。このため、電磁コイル134に通電しない場合には、入力ポート30から入力された圧力流体が連設弁収納孔14内に導入されることはない。
【0052】
その一方で、入力ポート30と開放通路36は、第1連通路40を介して連通している。従って、入力ポート30に入力された圧力流体は、第1連通路40を通過して開放通路36に一旦貯留される。そして、開放通路36の貯留量を超えた分が、第2連通路42に流入する。すなわち、開放通路36は、圧力流体を貯留するプールとしても機能する。
【0053】
第2連通路42がパイロット圧入力ポート98を介して弁部収納孔88の小径部100に連通しているので、圧力流体は、小径部100に到達する。そして、弁座114に着座した弁体部118に堰止される。すなわち、入力ポート30に入力された圧力流体は、連設弁収納孔14を迂回して弁部収納孔88の途中(小径部100)まで到達するが、弁室122には供給されない。
【0054】
これに対し、給電端子150を介して電磁コイル134に通電がなされると、電磁コイル134、筒状部材66(第2固定コア)、固定コア138、可動コア116によって磁気回路が形成される。この磁気回路による吸引力が第2コイルスプリング158の弾発付勢力を上回るので、可動コア116が吸引されて固定コア138側、すなわち、上方に、筒状部材66に挿入された非磁性のカラー120に案内されながら変位する。従って、弁体部118が、可動コア116と一体的に変位し、弁座114から離間する。すなわち、電磁弁18が開状態となる。
【0055】
一方、第1連通路40に流入した圧力流体は、開放通路36、第2連通路42及びパイロット圧入力ポート98を経て、弁部収納孔88の小径部100に到達する。上記したように弁体部118が弁座114から離間しているため、小径部100が弁孔112を介して弁室122と連通している。従って、圧力流体は、弁室122に供給された後、パイロット圧出力ポート92及びパイロット圧供給流路94を経由してパイロット室72に供給される。
【0056】
パイロット室72に供給された圧力流体の押圧力が、第1コイルスプリング56によるスプール44への弾発付勢力を上回ると、スプール44が押圧されて下方に変位し、下端面が連設弁収納孔14の底面に当接する。すなわち、スプール44が最下方位置となる。このとき、横孔62が解放ポート34の位置に対応する位置となるとともに、第1環状凹部58の位置が入力ポート30に対応する位置となる。
【0057】
これに伴い、第1環状凹部58と連設弁収納孔14の内壁とで構成される流路を介して、入力ポート30と出力ポート32とが連通する。その一方で、出力ポート32と解放ポート34との連通が遮断される。すなわち、開状態においては、入力ポート30から供給された圧力流体がパイロット室72に供給されるとともに、出力ポート32から導出される。パイロット室72に供給される余剰の圧力流体は、絞り70から圧力流体解放流路54、横孔62を経て解放ポート34から導出される。
【0058】
このように、本実施の形態によれば、入力ポート30から弁部46に圧力流体を供給することが可能な圧力流体供給流路、特に第1連通路40及び第2連通路42を弁本体12の内部に形成している。この分、圧力流体制御装置10の構成の簡素化を図ることができる。しかも、圧力流体制御装置10を組み立てるまでの作業工数も低減するという利点がある。
【0059】
加えて、各ポート30、32、34及び開放通路36が形成された弁本体12は鋳造加工によって作製すればよく、その後、入力ポート30から開放通路36、又はその逆方向に向かう穴加工を行うことで第1連通路40を容易に形成することができる。第2連通路42も同様に、開放通路36から連設弁収納孔14に向かう穴加工を行うことで容易に形成される。開放通路36が開口形成面20で開口しているので、穴加工のための加工工具を差し込むことが容易であるからである。
【0060】
このように、本実施の形態によれば、正面視で水平な直線形状であるために比較的短尺な第1連通路40及び第2連通路42を形成することにより、パイロット室72に圧力流体を供給することが可能となる。このために加工屑が著しく低減するので、材料歩留まりが向上する。
【0061】
しかも、第1連通路40及び第2連通路42が弁本体12の端面で開口していないので、該開口を閉塞するための閉塞部材を用いる必要もない。このため、部品点数を低減することができる。
【0062】
以上のような理由から、圧力流体制御装置10の小型化を図りながら、完成製品として得るまでのコストの低廉化を図ることが可能である。
【0063】
スプール弁16が上記のように動作して圧力流体が出力されるポートを切り換えることにより、圧力流体の出力が制御される。その結果として、前記エンジンを構成する動弁装置を所望の動力特性に変更することができる。
【0064】
電磁コイル134への通電が停止されると、磁気が消失するとともに可動コア116に対する吸引力が消失する。このため、第2コイルスプリング158によって可動コア116が弾発付勢され、その結果、該可動コア116と一体的に弁体部118が押し下げられて
図2に示す状態に戻る。すなわち、弁体部118が弁座114に着座して電磁弁18が閉状態となる。
【0065】
また、この際、パイロット室72内の圧力流体が、上昇するスプール44によって押圧される。従って、圧力流体は、絞り70、圧力流体解放流路54、横孔62を経て解放ポート34から導出される。また、第2環状凹部60と連設弁収納孔14とで構成される流路に残留していた圧力流体も、解放ポート34から排出される。
【0066】
スプール44の上端面の凸部64は、筒部82の下端面68に当接する。これによりスプール44が堰止され、該スプール44のそれ以上の変位が阻止される。すなわち、筒状部材66は、スプール44の必要以上の変位を防止するストッパとして機能する。
【0067】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0068】
例えば、上記した実施の形態では、1個の出力ポート32が設けられた二方弁型の圧力流体制御装置10を例示しているが、
図4に示すように、第1出力ポート160及び第2出力ポート162が形成された三方弁型の圧力流体制御装置170であってもよい。なお、理解を容易にするべく、
図1A〜
図3に示す構成要素に対応する構成要素には同一の参照符号を付している。
【0069】
この場合においても、入力ポート30と開放通路36に連通する第1連通路40と、開放通路36と連設弁収納孔14に連通する第2連通路42が形成される。これら第1連通路40及び第2連通路42の周辺の水平方向断面は、
図1B及び
図1Cと同様となる。
【0070】
三方弁型の圧力流体制御装置170では、電磁コイル134への通電停止時、スプール44の第1環状凹部58を介して入力ポート30と第2出力ポート162が連通するとともに、第1出力ポート160が解放ポート34に連通する。一方、電磁コイル134への通電時、スプール44が
図3と同様に下方に変位し、第1環状凹部58を介して入力ポート30と第1出力ポート160が連通するとともに、第2出力ポート162と解放ポート34が連通する。これにより圧力流体の出力が制御されるので、二方弁型の圧力流体制御装置10と同様に、前記エンジンを構成する動弁装置を所望の動力特性に変更することができる。
【0071】
また、スプール弁16と電磁弁18が、互いの長手方向が平行となるように配置された、いわゆる並列型配置の圧力流体制御装置であってもよい。
【0072】
さらに、弁部46の構造は、
図2及び
図4に示すものに特に限定されるものではない。例えば、可動コア116に代替し、弁体部118が設けられていない可動コアを採用するようにしてもよい。すなわち、可動コアと弁体とが別部材であってもよい。この場合には、可動コアと弁体との間に弁棒等の他の部材が介在してもよい。