(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ガスセンサに高圧ガスを噴きかける方法では、実際にガスセンサが排気管に取り付けられている状態におけるリーク量を評価することができないという問題があった。
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、実際にガスセンサが排気管に取り付けられている状態に対応したリーク量を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた第1発明は、内燃機関から排出される排気ガスに含まれる特定ガスの濃度を検出するために内燃機関の排気管に取り付けられるガスセンサを介して排気管の内部から外部へ漏れる排気ガスのリーク量を検出するリーク量検出装置である。
【0006】
そして、第1発明のリーク量検出装置は、ガス生成部と、検出用排気管と、測定部と、パラメータ算出部と、リーク量算出部とを備える。
ガス生成部は、互いに異なる複数の空気過剰率を有する検出用ガスをそれぞれ生成する。検出用排気管は、ガス生成部により生成された検出用ガスを内部に流す。測定部は、ガス生成部により複数の空気過剰率を有する検出用ガスを順次生成させて、複数の空気過剰率のそれぞれについて、検出用排気管に取り付けられたガスセンサのセンサ出力を測定する。パラメータ算出部は、センサ出力が予め設定されたリーク算出用判定値になるときの空気過剰率をリーク算出用パラメータとして算出する。リーク量算出部は、リーク算出用パラメータとリーク量との対応関係が予め設定されたリーク量特性に基づいて、パラメータ算出部で算出されたリーク算出用パラメータからリーク量を算出する。
【0007】
このように構成された第1発明のリーク量検出装置は、検出用排気管にガスセンサを取りつけて、検出用排気管の内部に検出用ガスを流すことにより、ガスセンサのリーク量を算出する。したがって、第1発明のリーク量検出装置は、実際にガスセンサが排気管に取り付けられている状態に対応したリーク量を検出することができる。
【0008】
また第1発明のリーク量検出装置では、検出用ガスは、排気ガスに含まれる各成分の含有量を模したモデルガスであるようにしてもよい。これにより、第1発明のリーク量検出装置は、排気ガスに含まれる特定ガスの濃度をガスセンサが検出するときの環境をより正確に再現することができ、実際にガスセンサが排気管に取り付けられている状態におけるリーク量の検出精度を向上させることができる。
【0009】
また第1発明のリーク量検出装置では、ガス生成部は、排気ガスが内燃機関の排気管の内部を流れるのと同じ流速で、検出用ガスが検出用排気管の内部を流れるように検出用ガスを生成するようにしてもよい。これにより、第1発明のリーク量検出装置は、排気ガスに含まれる特定ガスの濃度をガスセンサが検出するときの環境をより正確に再現することができ、実際にガスセンサが排気管に取り付けられている状態におけるリーク量の検出精度を向上させることができる。
【0010】
上記目的を達成するためになされた第2発明は、内燃機関から排出される排気ガスに含まれる特定ガスの濃度を検出するために内燃機関の排気管に取り付けられるガスセンサを介して排気管の内部から外部へ漏れる排気ガスのリーク量を検出するリーク量検出方法である。
【0011】
そして、第2発明のリーク量検出方法は、測定手順と、パラメータ算出手順と、リーク量算出手順とを備える。測定手順は、複数の空気過剰率を有する検出用ガスを順次生成させて、複数の空気過剰率のそれぞれについて、検出用ガスを内部に流す検出用排気管に取り付けられたガスセンサのセンサ出力を測定する。パラメータ算出手順は、センサ出力が予め設定されたリーク算出用判定値になるときの空気過剰率をリーク算出用パラメータとして算出する。リーク量算出手順は、リーク算出用パラメータとリーク量との対応関係が予め設定されたリーク量特性に基づいて、パラメータ算出部で算出されたリーク算出用パラメータからリーク量を算出する。
【0012】
第2発明のリーク量検出方法は、第1発明のリーク量検出装置にて実行される方法であり、当該方法を実行することで、第1発明のリーク量検出装置と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
本発明が適用された実施形態のガスセンサ評価装置1は、
図1に示すように、ガス生成部2と、ガス供給部3と、評価制御部4を備える。
【0015】
ガス生成部2は、貯蔵部11,12,13,14,15,16,17,18,19と、流量調整部21,22,23,24,25,26,27,28,29とを備える。
貯蔵部11は、窒素(N
2)を貯蔵するタンクである。貯蔵部12は、二酸化炭素(CO
2)を貯蔵するタンクである。貯蔵部13は、酸素(O
2)を貯蔵するタンクである。貯蔵部14は、一酸化炭素(CO)を貯蔵するタンクである。貯蔵部15は、水素(H
2)を貯蔵するタンクである。貯蔵部16は、プロパン(C
3H
8)を貯蔵するタンクである。貯蔵部17は、メタン(CH
4)を貯蔵するタンクである。貯蔵部18は、一酸化窒素(NO)を貯蔵するタンクである。貯蔵部19は、水(H
2O)を貯蔵するタンクである。
【0016】
流量調整部21は、評価制御部4からの指示に従って、貯蔵部11から流出する窒素の量を調整する。流量調整部22は、評価制御部4からの指示に従って、貯蔵部12から流出する二酸化炭素の量を調整する。流量調整部23は、評価制御部4からの指示に従って、貯蔵部13から流出する酸素の量を調整する。流量調整部24は、評価制御部4からの指示に従って、貯蔵部14から流出する一酸化炭素の量を調整する。流量調整部25は、評価制御部4からの指示に従って、貯蔵部15から流出する水素の量を調整する。流量調整部26は、評価制御部4からの指示に従って、貯蔵部16から流出するプロパンの量を調整する。流量調整部27は、評価制御部4からの指示に従って、貯蔵部17から流出するメタンの量を調整する。流量調整部28は、評価制御部4からの指示に従って、貯蔵部18から流出する一酸化窒素の量を調整する。流量調整部29は、評価制御部4からの指示に従って、貯蔵部19から流出する水の量を調整する。
【0017】
ガス生成部2は、流量調整部21,22,23,24,25,26,27,28から流出する気体と、流量調整部29から流出する水とを混合することにより、排気ガスに含まれる各成分の含有量を模したモデルガスを生成する。
【0018】
ガス供給部3は、評価用排気管31と、発熱部32を備える。評価用排気管31は、実車の排気管を模して筒状に形成された金属製の部材である。ガス生成部2により生成されたモデルガスは、評価用排気管31内を流れる。評価用排気管31には、評価対象となる酸素センサ101が取り付けられる。酸素センサ101は、評価用排気管31内を流れるモデルガスに含まれる酸素の濃度に応じた電圧をセンサ出力として出力する。
【0019】
発熱部32は、評価用排気管31の外周に取り付けられ、評価制御部4からの指示に従って、評価用排気管31を加熱することにより、評価用排気管31の温度を調整する。
酸素センサ101は、
図2に示すように、検出素子102、セラミックヒータ103およびケーシング104を備える。なお、
図2では、酸素センサ101の先端側が下方側で、後端側が上方側となるように示している。
【0020】
検出素子102は、ZrO
2を主成分とする固体電解質体により軸線方向(
図2の上下方向)に延びて先端が閉じた有底筒状に形成されている。セラミックヒータ103は、棒状に形成されており、検出素子102内に配置されて検出素子102を加熱する。ケーシング104は、酸素センサ101の内部構造物を収容するとともに酸素センサ101を排気管等の取付部に固定するための部材である。
【0021】
またケーシング104は、検出素子102を保持するとともにその先端側の検出部125を排気管等の内部に突出させる主体金具105と、主体金具105の上部に延びて検出素子102との間で基準ガス空間を形成する外筒106とを備える。
【0022】
主体金具105は、円筒状の本体を有する。そして主体金具105は、検出素子102を下方から支持する支持部材151と、支持部材151の上部に充填される滑石粉末からなる充填部材152と、充填部材152を上方から押圧するスリーブ153等を内部に収容する。
【0023】
すなわち、主体金具105の下端側の内周には、内向きに突出した段部154が設けられており、この段部154にパッキン155を介して支持部材151が支持されることにより、検出素子102が下方から支持されている。そして、支持部材151の上側における主体金具105の内周面と検出素子102の外周面との間に充填部材152が配置され、さらに充填部材152の上側に筒状のスリーブ153およびパッキン156が順次同軸状に挿入された状態で主体金具105の上端部が内方(下方)に加締められる。これにより、充填部材152が加圧充填され、検出素子102が主体金具105に対してしっかりと固定される。
【0024】
また、主体金具105の下端側外周には、検出素子102の突出部分を覆うとともに、複数の孔部を有する金属製の二重のプロテクタ157,158が溶接によって取り付けられている。
【0025】
外筒106は、その下端開口部内に主体金具105の上部を嵌め込んだ状態で溶接が施されることにより、主体金具105に装着される。
外筒106の上端開口部の近傍には、セラミックで筒状に形成された絶縁性のセパレータ107が挿入されている。
【0026】
セパレータ107は、その軸方向中央付近の外周面に、径方向外側に突出したフランジ部171を有している。このセパレータ107は、フランジ部171に係止する金属製の筒状の保持部材108を介して、外筒106の内部に保持されている。
【0027】
またセパレータ107は、後端面172から先端面173に向けて貫通する複数の挿通孔174と、セラミックヒータ103の後端部131を収容可能に先端面173に形成された凹部175とを備えている。そしてセパレータ107は、検出素子102の外周面に配置された外側電極126からリード線121の先端に延びる端子金具109と、検出素子102の内周面に配置された内側電極127からリード線122の先端に延びる端子金具110とをそれぞれ異なる挿通孔174内に収容して、端子金具109と端子金具110との絶縁性と、端子金具109,110と外筒106との絶縁性とを保持している。
【0028】
外筒106の上部開口部は、フッ素系樹脂製のグロメット111により閉塞されており、このグロメット111を貫いてリード線121,122が配置されている。
図1に示す評価制御部4は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、ROMに記憶されたプログラムに基づいて、ガス生成部2とガス供給部3を制御するための各種処理を実行する。
【0029】
評価制御部4は、
図3に示すように、モデルガスの空気過剰率λと、酸素、一酸化炭素、水素、一酸化窒素、プロパン、メタン、窒素、二酸化炭素および水の含有量との対応関係を示すモデルガス組成表41を記憶している。評価制御部4は、モデルガス組成表41を参照することによって、モデルガスの空気過剰率λに対応した酸素、一酸化炭素、水素、一酸化窒素、プロパン、メタン、窒素、二酸化炭素および水の含有量をガス生成部2に指示する。
【0030】
このように構成されたガスセンサ評価装置1において、評価制御部4は、リーク量検出処理を実行する。このリーク量検出処理は、リーク量検出処理の実行を指示する実行指令が評価制御部4に入力されると、その処理を開始する。
【0031】
リーク量検出処理が実行されると、評価制御部4は、
図4に示すように、まずS10にて、予め設定された複数の空気過剰率λとなるモデルガスを、空気過剰率が小さい順から順次生成し、予め設定された検出用流速(本実施形態では7.7m/s)で評価用排気管31に流し、複数の空気過剰率λのそれぞれについて、酸素センサ101のセンサ出力Voを検出する。本実施形態では、例えば、モデルガス組成表41が記憶している21の空気過剰率λ(すなわち、0.9972,0,9982,・・・,1.0011,1.0016)でモデルガスを生成し、21の空気過剰率λのそれぞれにおけるセンサ出力Voを検出する。なお検出用流速は、内燃機関の排気管の内部を排気ガスが流れる流速として設定されている。
【0032】
次にS20にて、S10での検出結果に基づいて、センサ出力Voが予め設定されたリーク算出用判定値(本実施形態では、450mV)になるときの空気過剰率λをリーク算出用パラメータSλとして算出する。
【0033】
そしてS30にて、リーク算出用パラメータSλとリーク量との対応関係が予め設定されたリーク量算出式Fを用いて、S20で算出されたリーク算出用パラメータSλからリーク量を算出し、リーク量検出処理を終了する。
【0034】
リーク量算出式は、以下の手順で設定される。まず、リーク量が既に測定された複数の酸素センサ101(以下、試験サンプル)を用意する。本実施形態では、リーク量がそれぞれ0.21cc,0.13cc,0.42cc,0.41cc,0.67cc,0.5cc,1.31cc,1.42ccである8個の試験サンプルを用意した。そして、8個の試験サンプルについて、ガスセンサ評価装置1を用いて、空気過剰率λとセンサ出力Voとの対応関係を測定する。試験条件として、試験用ガスの温度を450℃、試験用ガスの流速を7.7m/s、ガスセンサの検出素子の温度を600℃とした。
図5は、上記の8個の試験サンプルにおける空気過剰率λとセンサ出力Voとの対応関係を示す。そして、上記の8個の試験サンプルのセンサ出力Voが450mV(
図5の直線Lsを参照)であるときの空気過剰率λをリーク算出用パラメータSλとして算出する。
【0035】
酸素センサ101では、検出素子102の内側と外側とで酸素の濃度が異なり、この濃度勾配により起電力(センサ出力Vo)が発生する。リーク量が多い酸素センサ101では、外部の空気が検出素子102の外側に侵入するため、検出素子102の外側における酸素濃度が高くなる。したがって、リーク量が多い酸素センサ101では、検出素子102の内側と外側との間で濃度勾配が小さくなり、センサ出力Voが450mVであるときの空気過剰率λ(すなわち、リーク算出用パラメータSλ)が小さくなる。
【0036】
これにより、
図6に示すように、8個の試験サンプルについて、リーク量とリーク算出用パラメータSλとの対応関係を算出することができる。そして、本実施形態では、リーク量Qlとリーク算出用パラメータSλとの対応関係を一次関数で表すことで、下式(1)に示すリーク量算出式Fを設定した。
【0037】
Sλ = −0.0005×Ql + 0.9998 ・・・(1)
このように構成されたガスセンサ評価装置1は、内燃機関から排出される排気ガスに含まれる酸素の濃度を検出するために内燃機関の排気管に取り付けられる酸素センサ101を介して排気管の内部から外部へ漏れる排気ガスのリーク量を検出する。
【0038】
ガスセンサ評価装置1は、ガス生成部2と、評価用排気管31とを備える。ガス生成部2は、互いに異なる複数の空気過剰率λを有するモデルガスをそれぞれ生成する。評価用排気管31は、ガス生成部2により生成されたモデルガスを内部に流す。
【0039】
ガスセンサ評価装置1は、ガス生成部2により複数の空気過剰率λを有するモデルガスを順次生成させて、複数の空気過剰率λのそれぞれについて、評価用排気管31に取り付けられた酸素センサ101のセンサ出力Voを測定する(S10)。またガスセンサ評価装置1は、センサ出力Voが予め設定されたリーク算出用判定値になるときの空気過剰率λをリーク算出用パラメータSλとして算出する(S20)。そしてガスセンサ評価装置1は、リーク算出用パラメータSλとリーク量との対応関係が予め設定されたリーク量算出式Fに基づいて、算出されたリーク算出用パラメータSλからリーク量を算出する(S30)。
【0040】
このようにガスセンサ評価装置1は、評価用排気管31に酸素センサ101を取りつけて、評価用排気管31の内部にモデルガスに流すことにより、酸素センサ101のリーク量を算出する。したがって、ガスセンサ評価装置1は、実際に酸素センサ101が排気管に取り付けられている状態に対応したリーク量を検出することができる。
【0041】
またガスセンサ評価装置1では、評価用排気管31の内部を流れるガスは、排気ガスに含まれる各成分の含有量を模したモデルガスである。これにより、ガスセンサ評価装置1は、排気ガスに含まれる酸素の濃度を酸素センサ101が検出するときの環境をより正確に再現することができ、実際に酸素センサ101が排気管に取り付けられている状態におけるリーク量の検出精度を向上させることができる。
【0042】
またガスセンサ評価装置1では、ガス生成部2は、排気ガスが内燃機関の排気管の内部を流れるのと同じ流速で、モデルガスが評価用排気管31の内部を流れるようにモデルガスを生成する。これにより、ガスセンサ評価装置1は、排気ガスに含まれる酸素の濃度を酸素センサ101が検出するときの環境をより正確に再現することができ、実際に酸素センサ101が排気管に取り付けられている状態におけるリーク量の検出精度を向上させることができる。
【0043】
以上説明した実施形態において、ガスセンサ評価装置1は本発明におけるリーク量検出装置、酸素センサ101は本発明におけるガスセンサ、評価用排気管31は本発明における検出用排気管である。
【0044】
また、S10の処理は本発明における測定部および測定手順、S20の処理は本発明におけるパラメータ算出部およびパラメータ算出手順、S30の処理は本発明におけるリーク量算出部およびリーク量算出手順である。
【0045】
また、酸素は本発明における特定ガス、ガス生成部2により生成されるモデルガスは本発明における検出用ガス、リーク量算出式Fは本発明におけるリーク量特性である。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
【0046】
例えば上記実施形態では、酸素センサのリーク量を検出するものを示したが、本発明は酸素センサに限定されるものではなく、内燃機関から排出される排気ガスに含まれる特定ガスの濃度を検出するために内燃機関の排気管に取り付けられるガスセンサであればよい。