特許第6560149号(P6560149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鉄住金環境株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6560149-金属シアノ錯体含有廃水の処理方法 図000005
  • 特許6560149-金属シアノ錯体含有廃水の処理方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560149
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】金属シアノ錯体含有廃水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   C02F1/58 N
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-63445(P2016-63445)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-176909(P2017-176909A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】市川 康平
(72)【発明者】
【氏名】天田 隼人
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−146696(JP,A)
【文献】 特開昭50−011999(JP,A)
【文献】 特開平04−341393(JP,A)
【文献】 特開平07−068166(JP,A)
【文献】 米国特許第05397500(US,A)
【文献】 特開昭48−036963(JP,A)
【文献】 特開2017−104802(JP,A)
【文献】 特開2001−121132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/58−1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性の金属シアノ錯体を含有する廃水に、アルミニウム塩を添加し、マンガン化合物を使用することなく、廃水のpHが8.0以下の条件下で金属シアノ錯体を析出させ、その後に析出物を、固液分離する工程と、固液分離後の処理水に酸化剤を添加してpH6以上10未満でシアンを分解する工程と、を有することを特徴とする金属シアノ錯体含有廃水の処理方法。
【請求項2】
アニオン性の金属シアノ錯体を含有する廃水に酸化剤を添加してpH6以上10未満でシアンを分解する工程と、該工程後に、アルミニウム塩を添加し、マンガン化合物を使用することなく、廃水のpHが8.0以下の条件下で金属シアノ錯体を析出させ、その後に析出物を固液分離する工程と、を有することを特徴とする金属シアノ錯体含有廃水の処理方法。
【請求項3】
前記酸化剤を添加してシアンを分解する工程で、pHを6以上9以下とする請求項1又は2に記載の金属シアノ錯体含有廃水の処理方法。
【請求項4】
前記固液分離する工程で、アニオン性有機高分子凝集剤を用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属シアノ錯体含有廃水の処理方法。
【請求項5】
前記アルミニウム塩が、塩化アルミニウム又は硫酸アルミニウムのいずれかである請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属シアノ錯体含有廃水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン性の金属シアノ錯体含有廃水の処理方法に関し、詳しくは、多種多様なシアン成分の中から選択的に、酸化分解が難しい、金属イオンと大きな結合力をもって錯体化したアニオン性の金属シアノ錯体を固液分離することができる、金属シアノ錯体含有廃水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2000ppm以下の数百ppm程度の濃度のシアン含有廃水の処理では、アルカリ塩素法を用いることが一般的である。ここで、例えば、メッキなどを行う化学工場や、石炭工場、コークス工場、コークスを大量に用いる工場などで生ずるシアン含有廃水を構成するシアン成分は、金属のシアン化合物(シアン化水素の塩)、シアンイオン(遊離シアン)、シアノ錯体(錯イオン及びその塩)等を含む。亜鉛シアノ錯体、ニッケルシアノ錯体、銅シアノ錯体、銀シアノ錯体など、酸性条件下でシアン化水素が容易に遊離するようなシアノ錯体は、WADシアンと呼ばれている。アルカリ塩素法では、処理対象の廃水に、ORP制御で次亜塩素酸ソーダを添加し、pH10以上でシアンをシアン酸にし(1段目)、次に、pHを中性付近にして、シアン酸を窒素と炭酸ガスにまで分解し、シアンを無害化している。シアンが金属と配位結合したシアノ錯体の多くも、この方法で分解処理されている。しかし、この方法では、例えば、鉄シアノ錯体([Fe(CN)6]4-、[Fe(CN)6]3-)等の、金属イオンと大きな結合力をもって錯体化したシアン化合物の酸化分解は難しいことが知られている。そして、この点に対して種々の検討がなされている(例えば、特許文献1、2等参照)。
【0003】
難分解性の金属シアノ錯体を処理する方法としては、鉄塩を使用する方法(紺青法)、銅塩を使用する方法、亜鉛塩を使用する方法が知られている。しかし、紺青法は、pH5〜6の弱酸性で行わなければならないという課題がある(非特許文献1参照)。また、銅塩や亜鉛塩を使用する方法では、これらの金属を除去するための二次処理が必要な場合があるなどの課題があった。
【0004】
また、次亜塩素酸塩とマンガン化合物との併用によって、従来技術の方法における煩雑なpH調整を不要にできるとした提案もある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−157798号公報
【特許文献2】特許第4382556号公報
【特許文献3】特許第4106415号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】一般社団法人産業環境管理協会編「新・公害防止の技術と法規 2014 水質編」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、煩雑なpH調整を不要とした上記した従来技術ではマンガン化合物を使用しているため、処理水中に生成した水不溶性のマンガン塩を除去する必要が生じるという別の課題があり、シアン含有廃水中のシアン成分を、より効率よく簡便に酸化分解処理する方法の開発が切望されている。これに対し、本発明者らは、シアン含有廃水の処理についての検討過程で、酸化分解が難しい、金属イオンと大きな結合力をもって錯体化したシアン化合物に対して選択的に、簡便で効率よく除去できる方法を見出すことができれば、シアン含有廃水中から酸化分解が難しい錯体化したシアン化合物を除いた状態でシアン成分を酸化分解処理することができるようになるので、シアン含有廃水処理にとって極めて有用であるとの認識を持つに至った。
【0008】
したがって、本発明の目的は、特殊な薬剤を使用することなく、シアン含有廃水中の多種多様なシアン成分の中から選択的に、酸化分解が難しい金属イオンと大きな結合力をもって錯体化したシアン化合物を、簡便な処理方法で効率よく除去できる技術を提供することにある。そして、このような技術が提供されれば、これを利用することで、酸化分解が難しいシアン成分の除去処理が容易になり、結果としてシアン含有廃水中のシアン成分の処理がより簡便に効率よく行えるようになることが期待されることから、本発明の別の目的は、従来のシアン含有廃水の処理方法における効果的な前処理方法或いは後処理方法として期待できる、金属シアノ錯体含有廃水の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、アニオン性の金属シアノ錯体を含有する廃水に、アルミニウム塩を添加し、廃水のpHが8.0以下の条件下で金属シアノ錯体を析出させ、その後に析出物を固液分離する工程を有することを特徴とする金属シアノ錯体含有廃水の処理方法を提供する。
【0010】
本発明の金属シアノ錯体含有廃水の処理方法の好ましい形態としては、前記アルミニウム塩が、塩化アルミニウム又は硫酸アルミニウムのいずれかであることが挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特殊な薬剤を使用することなく、固液分離という極めて簡便な処理によって、シアン含有廃水中の多種多様なシアン成分の中から選択的に、金属イオンと大きな結合力をもって錯体化した酸化分解が難しいアニオン性の金属シアノ錯体を、簡便に効率よく除去できる金属シアノ錯体含有廃水の処理方法が提供される。さらに、本発明により提供される金属シアノ錯体含有廃水の処理方法を、シアン含有廃水の処理方法における前処理方法として利用すれば、従来のシアン含有廃水の処理方法における酸化分解処理が容易になり、薬剤の使用量も低減でき、その処理効率を向上させる効果が期待されるので、シアン含有廃水の処理においてもたらされる効果は大きく、その実用価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】アルミニウム塩を使用して固液分離する前処理を行った後、酸化剤で処理する系の一例を示す処理フローである。
図2】酸化剤として次亜塩素酸ソーダを用い、その添加量を変化させた場合の処理結果の傾向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。上記した従来技術における現状に対し、本発明者らは鋭意検討した結果、下記のことを見出して本発明を達成した。シアン含有廃水としては、例えば、メッキなどを行う化学工場や、石炭工場、コークス工場、コークスを大量に用いる工場などで生ずる廃水があるが、これらのシアン含有廃水を構成するシアン成分廃水中には、フェロシアンやフェリシアン等のアニオン性の金属シアノ錯体を含有する場合が多い。先述したように、これらの成分については、従来からシアン成分の処理に用いられているアルカリ塩素法で分解することが難しく、シアン含有廃水中のシアン成分を分解処理する場合における課題となっていた。本発明者らは、この点について鋭意検討した結果、種々のシアン成分を含有するシアン含有廃水中から、汎用の薬剤を用いて、これらの金属シアノ錯体成分を選択的に析出させ、その後に固液分離という極めて簡便な方法で分離除去できる方法を見出した。
【0014】
具体的には、アニオン性の金属シアノ錯体を含むシアン含有廃水に、アルミニウム塩を加えることで、選択的にアニオン性の金属シアノ錯体を固液分離することが可能になることを見出した。また、アルミニウム塩の中でも、塩化アルミニウムや硫酸アルミニウムなどを用いることがより好ましいことがわかった。すなわち、このように構成することで、シアン含有廃水中のアニオン性の金属シアノ錯体を、より容易に選択的に析出させることができ、その結果、アルカリ塩素法で分解することが難しかった金属シアノ錯体を、シアン含有廃水中から簡便に分離して取り除くことができるようになることがわかった。本発明の方法によってシアン含有廃水中から簡便に分離して取り除くことができるアニオン性の金属シアノ錯体としては、例えば、[Zn(CN)4]2-、[Fe(CN)6]4-、[Fe(CN)6]3-、[Ni(CN)4]2-などを構造中に有する成分が挙げられる。本発明者らの検討によれば、特に、亜鉛シアノ錯体や鉄シアノ錯体、中でも[Fe(CN)6]4-を持つ錯体において高い除去率を達成でき、本発明の効果が顕著である。
【0015】
本発明の処理方法で、シアン含有廃水に添加するアルミニウム塩の量は、廃水中に含まれるアニオン性の金属シアノ錯体の量にもよるが、5〜100モル等量程度添加すればよく、容易に金属シアノ錯体を析出させることができる。
【0016】
本発明の金属シアノ錯体含有廃水の処理方法では、アルミニウム塩を添加した廃水のpHを8.0以下に調整することが必要である。本発明者らの検討によれば、廃水にアルミニウム塩を添加して金属シアノ錯体を析出させて処理する際におけるpHによって、アニオン性の金属シアノ錯体の除去処理効率が異なることがわかった。すなわち、後述するように、前記アルミニウム塩を添加した廃水のpHを8.0以下に調整するが、より好ましくはpHを7.0以下、さらには6.5以下に調整するとよい。このように構成することで、効率よく金属シアノ錯体を析出させることができ、また、析出物も固液分離され易いものにできる。なお、その後に処理水を中和することを考慮すると、アルミニウム塩を添加した廃水のpHは、6以上に調整することが好ましい。
【0017】
金属シアノ錯体含有廃水の処理方法では、上記のようにして金属シアノ錯体を析出させた析出物を固液分離する。ここで、固液分離の一般的な方法としては、アニオン性有機高分子凝集剤を用いて固液分離することが知られている。本発明者らの検討によれば、アニオン性の金属シアノ錯体を含有する廃水に対して、本発明で規定するアルミニウム塩を添加して金属シアノ錯体の析出処理を行うことで、従来行われているアニオン性有機高分子凝集剤を用いた固液分離方法では到底得ることができない、アニオン性の金属シアノ錯体についての効果的な固液分離の実現が可能になる。
【0018】
本発明を構成する固液分離工程では、従来と同様にアニオン性有機高分子凝集剤を用いることが好ましい。その場合、本発明では、アルミニウム塩を添加して金属シアノ錯体を析出させており、その析出物は凝集し易いため、固液分離に用いる高分子凝集剤の使用量を低減するといった効果も得られる。さらに、本発明者らの検討によれば、上記固液分離の際に、廃水中に、石炭、コークス、黒鉛、活性炭、酸化鉄粉又は粘土鉱物のいずれかが含まれているか、或いは、これらのいずれかを添加して含有させた場合に、その処理効率をより向上させることができることがわかった。その理由は、これらの微粉末物質が、効率的に析出物を吸着できたためと考えている。
【0019】
本発明の金属シアノ錯体含有廃水の処理方法は、例えば、従来の、シアン含有廃水に次亜塩素酸ソーダを添加し、pH10以上でシアンをシアン酸にし、次に、pHを中性付近にして、シアン酸を窒素と炭酸ガスにまで分解し、シアンを無害化するアルカリ塩素法における前処理方法として或いは後処理方法として適用できる。例えば、シアン含有廃水からのシアン成分の除去処理の際の前処理に適用すれば、処理対象であるシアン含有廃水中から、アルカリ塩素法で分解することが難しかった金属シアノ錯体が予め除去された状態になるので、シアン含有廃水中のシアン成分は、アルカリ塩素法によって容易に分解処理できるものになり、その処理効率を向上させることができる。また、シアン含有廃水からのシアン成分の除去処理における後処理に適用すれば、アルカリ塩素法によって分解処理できなかった金属シアノ錯体を、その後に簡便に分離して取り除くことができるので、シアン含有廃水中に含まれている多種多様なシアン成分を確実に処理することができるようになる。
【0020】
本発明者らは、従来のアルカリ塩素法について鋭意検討した結果、処理の1段目で、次亜塩素酸ソーダを添加し、pH10以上でシアンをシアン酸に分解する、という従来の技術常識に反し、特別の薬剤を用いることなく、pH6以上10未満、より好ましくはpH6以上9以下の中性域で、次亜塩素酸ソーダや過酸化水素等の酸化剤を用いて酸化分解することで、シアンをシアン酸に分解できることを見出した。すなわち、この処理方法は、中性域でシアンを酸化分解するものでありながら、従来技術のように、酸化剤である次亜塩素酸塩に加えてマンガン化合物のような別の薬剤を併用する必要がなく、一貫して中性域での処理を可能にできる画期的なものである。
【0021】
本発明者らは、上記した新たなシアン含有廃水からのシアン成分の酸化分解処理について検討する過程で、処理対象の廃水中にチオシアン酸塩が含有されている場合に、酸化剤として次亜塩素酸ソーダを用い、且つ、その濃度が高く、次亜塩素酸ソーダを過剰に添加すると、図2に示したように、処理水中のT−CN濃度(全シアン濃度、JIS K−0102に規定される方法で測定)が、次亜塩素酸を低い添加濃度で添加した場合の処理水中のT−CN濃度を上回る数値を示すという知見を得た。これは、廃水中のチオシアン酸イオンが、酸化剤として添加した次亜塩素酸と反応し、塩化シアン(シアン化合物として検出される)が生成したためと考えられる。
【0022】
本発明者らの検討によれば、本発明の金属シアノ錯体含有廃水の処理方法は、上記した一貫して中性域で処理を行う新たなシアン含有廃水の処理方法における上記した問題の対応策としても有効である。すなわち、本発明者らが新たに見出した、pH6以上10未満、より好ましくはpH6以上9以下の中性域で、次亜塩素酸ソーダや過酸化水素等の酸化剤を用いてシアン成分を酸化分解するシアン含有廃水の処理方法において、本発明の金属シアノ錯体含有廃水の処理方法を前処理に適用し、予めシアン含有廃水中からチオシアン酸塩を選択的に除去処理すれば、酸化剤である次亜塩素酸ソーダを過剰に添加したとしても、処理水中のT−CN濃度に上記したような傾向はみられず、塩化シアンが生成するといった問題はなくなることを確認した。
【0023】
また、先に述べたように、本発明の金属シアノ錯体含有廃水の処理方法では、アルミニウム塩を添加した廃水のpHを8.0以下に調整して析出処理をすることで、アニオン性の金属シアノ錯体を良好に固液分離することを達成している。したがって、この点でも、本発明の金属シアノ錯体含有廃水の処理方法を、本発明者らが新たに見出した、一貫して中性域で処理を行う新たなシアン含有廃水の処理方法と組み合わせる利点がある。すなわち、本発明者らが新たに見出したシアン含有廃水の処理方法では、pH6以上10未満、より好ましくはpH6以上9以下の中性域で、次亜塩素酸ソーダや過酸化水素等の酸化剤を用いてシアン成分を酸化分解するので、同様のpH域で前処理や後処理ができれば、pH調整が一度で済むので、pH調整にかかる薬剤や労力の点で有利であり、より経済的な処理が可能になる。
【実施例】
【0024】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。%とあるのは、特に断りがない限り、質量基準である。
【0025】
<模擬廃水を用いたシアン処理性能の評価>
表1に示したように、40℃の純水200mLに、Na2[Zn(CN)4]、K4[Fe(CN)6]、Na2[Ni(CN)4]のいずれかが、4mg−CN/Lの濃度で含有された模擬廃水をそれぞれ調製した。そして、調製した各模擬廃水に、表1に示したように各種アルミニウム塩のいずれかをそれぞれの濃度で添加した。具体的には、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムを、12.5mg−Al/L又は25mg−Al/Lの濃度でそれぞれ用いた。
【0026】
そして、模擬廃水に上記物質をそれぞれに添加し、pHを7.5に調整し、40℃で19.5分撹拌した。その後、アニオン性有機高分子凝集剤であるポリマーKEA−520(日鉄住金環境社製)を1mg/Lの濃度となるように添加し、30秒間撹拌した後、5種Aのろ紙で濾過した。そして、得られた処理液(ろ液)について、JIS K−0102に規定される方法で、全シアン濃度(T−CN)を測定した。表1に、その結果を示した。表1に示されているように、鉄シアノ錯体は、アルミニウム塩(PAC、塩化アルミニウム或いは硫酸アルミニウム)を用いることで、効果的に凝集・分離させることができることを確認した。また、特に、対象が[Fe(CN)6]4-の場合において、塩化アルミニウムおよび硫酸アルミニウムを用いて処理する構成とすることで、より良好な処理性を示すことが確認された。
【0027】
【0028】
<模擬廃水を用いたシアン処理性能の評価:pHの影響>
40℃に加温した水道水200mLに、K4[Fe(CN)6]が、4mg−CN/Lの濃度で含有された模擬廃水を調製した。表2に使用した水道水の水質を示した。次に、上記で調製した模擬廃水に、塩化アルミニウムを12.5mg−Al/Lの濃度で添加した。
【0029】
そして、模擬廃水のpHを6.0〜10.0にそれぞれに調整し、40℃で19.5分撹拌した。その後、アニオン性有機高分子凝集剤であるポリマーKEA−520を1mg/Lの濃度となるように添加し、30秒間撹拌した後、5種Aのろ紙で濾過した。そして、得られた処理液(ろ液)について、前記と同様の方法で、全シアン濃度(T−CN)を測定した。表3に、その結果を示した。表3に示されているように、鉄シアノ錯体は、廃水のpHを8以下に調整することで、さらには、pHを7.0以下に低く調整した場合に、特に良好な処理性を達成することができることが確認された。
【0030】

【0031】
図1
図2