特許第6560156号(P6560156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560156
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】異方導電性シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/01 20060101AFI20190805BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20190805BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   H01R11/01 501G
   B32B7/02
   H01R43/00 H
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-89987(P2016-89987)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-213186(P2016-213186A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年2月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-94809(P2015-94809)
(32)【優先日】2015年5月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】荻野 勉
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−056908(JP,A)
【文献】 特開2001−332322(JP,A)
【文献】 特開平11−167945(JP,A)
【文献】 特開2004−335450(JP,A)
【文献】 特開平08−273725(JP,A)
【文献】 特開平11−204178(JP,A)
【文献】 特開平09−007666(JP,A)
【文献】 実開平04−008377(JP,U)
【文献】 特開平11−040227(JP,A)
【文献】 特開昭56−116282(JP,A)
【文献】 特開2007−026922(JP,A)
【文献】 特開平09−213406(JP,A)
【文献】 実開昭54−183686(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R11/00−11/32
B32B 7/02
H01R43/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の金属線と、
当該金属線同士の絶縁を確保するに十分な絶縁性を有する層であって、その層の厚さ方向に前記複数本の金属線を貫通させた絶縁層と、
前記金属線を貫通させた前記絶縁層の外周の一部若しくは全部に固定される外側シート部材と、
前記絶縁層の外周において、回路基板との接触可能な領域を挟んで外側周縁部の一部若しくは全部に備える前記外側シート部材より高硬度のフレーム部材と、
を備える異方導電性シート。
【請求項2】
前記外側シート部材をシリコーンゴムにて構成する請求項1に記載の異方導電性シート。
【請求項3】
前記シリコーンゴムは、JIS K6253 デュロメータ タイプAによる硬度が50度以上90度以下である請求項2に記載の異方導電性シート。
【請求項4】
前記シリコーンゴムは、JIS K6251による切断時の伸び(%)が200%以下である請求項2または請求項3に記載の異方導電性シート。
【請求項5】
前記外側シート部材と前記フレーム部材との積層部位の総厚を、前記絶縁層の厚さ、若しくは前記絶縁層を貫通する前記金属線の両端間の垂直方向の長さに対して同一以下の大きさとする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の異方導電性シート。
【請求項6】
前記金属線を貫通させた前記絶縁層を複数備え、それら前記絶縁層の外周の一部若しくは全部に、前記外側シート部材を備える請求項1から請求項5のいずれか1項に異方導電性シート。
【請求項7】
前記金属線を、前記絶縁層の厚さ方向に対して傾斜させて前記絶縁層中に立設させて成る請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の異方導電性シート。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の異方導電性シートを製造する方法であって、
複数本の金属線を絶縁層の厚さ方向に貫通させた1または2以上の異方導電性コネクタの外周の一部若しくは全部に、外側シート部材を硬化形成可能な液状の硬化性ゴム組成物を供給する硬化性ゴム組成物供給ステップと、
前記硬化性ゴム組成物を硬化させる硬化ステップと、
前記絶縁層の外周において、回路基板との接触可能な領域を挟んで外側周縁部の一部若しくは全部に、前記外側シート部材より高硬度のフレーム部材を形成するフレーム部材形成ステップと、
を含む異方導電性シートの製造方法。
【請求項9】
前記異方導電性コネクタを複数積層して成る多層ブロックを準備する多層ブロック準備ステップと、
少なくとも一方に開口部を有する容器の中に、前記多層ブロックにおける前記金属線の端面を露出させる面側を前記開口部に向けるように前記多層ブロックを入れる多層ブロックセッティングステップと、
を含み、
前記硬化性ゴム組成物供給ステップを、前記容器内であって前記多層ブロックの外周に、前記金属線を貫通させた前記絶縁層の外周の一部若しくは全部に固定される前記外側シート部材を形成可能な液状の硬化性ゴム組成物を供給するステップとし、
前記硬化ステップを、前記容器内の前記硬化性ゴム組成物を硬化させるステップとし、
前記硬化ステップの後に得られた前記多層ブロックの周囲に前記外側シート部材を備える外側シート部材付き多層ブロックから、1または複数の前記異方導電性シートを切り出すカットステップと、
を含む請求項8に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項10】
前記硬化性ゴム組成物供給ステップに先立ち、
前記異方導電性コネクタにおける前記外側シート部材との貼付面に、前記外側シート部材と接着しやすい易接着処理を施す易接着処理ステップを、さらに行う請求項8または請求項9に記載の異方導電性シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定方向に導電性を有する異方導電性シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ICパッケージや高周波部品等の配線の正常な導通を確認するために、コンタクトプローブと称する電気コネクタが使用されている。近年、上記配線の狭ピッチ化および配線自体の細線化に伴い、コンタクトプローブの小型化が図られている。しかし、コンタクトプローブは、バネ、金属細管などを含む精密機械部品であり、その小型化には限界がある。このため、コンタクトプローブに代替可能な電気コネクタとして、異方導電性シートが用いられている。異方導電性シートは、導電性の高い金属線の長さ方向を弾性エラストマーの厚さ方向に貫通させ、高密度に配向させた形態を有し、その金属線の長さ方向にのみ導電性を付与したシートである。
【0003】
図13は、従来から公知の異方導電性シートを、回路基板上に固定した状態の平面図(13A)および該平面図中のI−I線断面図(13B)をそれぞれ示す。
【0004】
図13に示す異方導電性シート100は、シリコーンゴム製の絶縁シート102の平面内において縦方向および横方向にそれぞれ略等間隔で、複数本の金属線101を絶縁シート102の厚さ方向に略垂直に貫通させた構造を有する。ここで、「略垂直」と称するのは、所定の角度で傾斜させて貫通するものもあるためである。金属線101は、絶縁シート102の表裏双方の面から突出している。異方導電性シート100は、回路基板110(絶縁基板111に配線112を形成した構造を有する基板)のコンタクト領域に配置され、上方から異方導電性シート100の外周部分(図中のXで示す領域)を、コネクタ押さえ治具120によって押さえた状態で固定して使用される。コネクタ押さえ治具120は、その厚さ方向に貫通する開口部122を備え、その開口部122の回路基板110と反対側の面を開口部122の内方よりも大きく開口させ、開口部122の厚さ方向内部に向かって漏斗状に傾斜させた傾斜面123を備える。開口部122の回路基板110側のサイズは、異方導電性シート100のサイズより小さい。コネクタ押さえ治具120は、回路基板110に形成されたネジ穴(不図示)にネジ121を挿入させて、回路基板110に固定される。
【0005】
上記のように、異方導電性シート100をコネクタ押さえ治具120と回路基板110との間に挟むように固定し、開口部122の上方から、異方導電性シート100の表側の面に向かって、測定対象となるLGA(Land Grid Array)パッケージ130を押圧する。LGAパッケージ130は、その下面であって異方導電性シート100に接触する面に、ランド状にフラット電極131を複数備える。回路基板110の配線112とLGAパッケージ130のフラット電極131との間に電圧をかけると、LGAパッケージ130が正常であれば、フラット電極131、異方導電性シート100の金属線101、回路基板110上の配線112へと電気が流れる。しかし、LGAパッケージ130に断線等の不具合があれば、電気は流れない。このようなコンタクト試験により、LGAパッケージ130に断線等の不備が無いかどうかを確認することができる(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。
【0006】
また、上記異方導電性シート100は平面視にて略正方形であるが、これに代えて、一方に長い異方導電性シートを製造し、当該シートの長さ方向の一領域にて所定回数の導通試験を終えた後、上述のコネクタ押さえ治具120あるいはチャック治具(以後、「コネクタ押さえ治具120等」という)を外し、当該シートをその長さ方向に移動させ、再びコネクタ押さえ治具120等をセットして、新しい領域で導通試験を行うというように、多回数の使用に対応した異方導電性シートも用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−22805号公報(図7参照)
【特許文献2】特開2012−22828号公報(図14参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のような従来から公知の異方導電性シートにも、さらなる改善が求められている。上記従来から公知の異方導電性シート(以後、従来から公知の異方導電性シートを代表して「異方導電性シート100」とする)は、その面内に高密度で金属線101を備える。異方導電性シート100の一部(例えば、図13(13B)中のXで示す外周部分)は、コンタクト押さえ治具120等により回路基板110に固定するために必要な領域であるため、金属線101を備えていても導通試験に使用できない領域となる。
【0009】
また、コンタクト押さえ治具120をネジ121によって回路基板110に固定するためには、回路基板110にネジ穴を備えている必要があり、ネジ穴の無い、あるいはネジ穴を形成不可の回路基板110に対して、コンタクト押さえ治具120を使用できない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コンタクト領域を有効に使用できデッドスペースを低減可能であって、かつ使用する回路基板の種類を問わず導通試験を行うことのできる異方導電性シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための一実施の形態に係る異方導電性シートは、複数本の金属線と、金属線同士の絶縁を確保するに十分な絶縁性を有する層であって、その層の厚さ方向に複数本の金属線を貫通させた絶縁層と、金属線を貫通させた絶縁層の外周の一部若しくは全部に固定される外側シート部材とを備える。
【0012】
別の実施の形態に係る異方導電性シートは、さらに、外側シート部材をシリコーンゴムにて構成しても良い。
【0013】
別の実施の形態に係る異方導電性シートは、さらに、シリコーンゴムを、JIS K6253 デュロメータ タイプAによる硬度が50度以上90度以下のものとしても良い。
【0014】
別の実施の形態に係る異方導電性シートは、また、シリコーンゴムを、JIS K6251による切断時の伸び(%)が200%以下のものとしても良い。
【0015】
別の実施の形態に係る異方導電性シートは、また、外側シート部材の表側の面および裏側の面の内、少なくともいずれか1つの面に、外側シート部材より高硬度のフィルム部材を積層しても良い。
【0016】
別の実施の形態に係る異方導電性シートは、さらに、外側シート部材とフィルム部材との積層部位の総厚を、絶縁層の厚さ、若しくは絶縁層を貫通する金属線の両端間の垂直方向の長さに対して同一以下の大きさとするものでも良い。
【0017】
別の実施の形態に係る異方導電性シートは、また、外側シート部材において、回路基板との接触可能な領域を挟んで外側周縁部の一部若しくは全部に、外側シート部材より高硬度のフレーム部材を備えても良い。
【0018】
別の実施の形態に係る異方導電性シートは、さらに、外側シート部材とフレーム部材との積層部位の総厚を、絶縁層の厚さ、若しくは絶縁層を貫通する金属線の両端間の垂直方向の長さに対して同一以下の大きさとするものでも良い。
【0019】
別の実施の形態に係る異方導電性シートは、また、金属線を貫通させた絶縁層を複数備え、それら絶縁層の外周の一部若しくは全部に、外側シート部材を備えても良い。
【0020】
別の実施の形態に係る異方導電性シートは、また、金属線を、絶縁層の厚さ方向に対して傾斜させて絶縁層中に立設させて成るようにしても良い。
【0021】
一実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法は、上述のいずれかの異方導電性シートを製造する方法であって、複数本の金属線を絶縁層の厚さ方向に貫通させた1または2以上の異方導電性コネクタの外周の一部若しくは全部に、外側シート部材を硬化形成可能な液状の硬化性ゴム組成物を供給する硬化性ゴム組成物供給ステップと、硬化性ゴム組成物を硬化させる硬化ステップとを含む。
【0022】
別の実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法は、さらに、異方導電性コネクタを複数積層して成る多層ブロックを準備する多層ブロック準備ステップと、少なくとも一方に開口部を有する容器の中に、多層ブロックにおける金属線の端面を露出させる面側を開口部に向けるように多層ブロックを入れる多層ブロックセッティングステップとを含み、硬化性ゴム組成物供給ステップを、容器内であって多層ブロックの外周に、金属線を貫通させた絶縁層の外周の一部若しくは全部に固定される外側シート部材を形成可能な液状の硬化性ゴム組成物を供給するステップとし、硬化ステップを、容器内の硬化性ゴム組成物を硬化させるステップとし、硬化ステップの後に得られた多層ブロックの周囲に外側シート部材を備える外側シート部材付き多層ブロックから、1または複数の異方導電性シートを切り出すカットステップと、を含んでも良い。
【0023】
別の実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法は、また、硬化性ゴム組成物供給ステップに先立ち、異方導電性コネクタにおける外側シート部材との貼付面に、外側シート部材と接着しやすい易接着処理を施す易接着処理ステップを、さらに行っても良い。
【0024】
別の実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法は、また、外側シート部材の表側の面および裏側の面の内、少なくともいずれか1つの面に、外側シート部材より高硬度のフィルム部材を積層するフィルム部材積層ステップを、さらに含んでも良い。
【0025】
別の実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法は、また、外側シート部材において、回路基板との接触可能な領域を挟んで外側周縁部の一部若しくは全部に、外側シート部材より高硬度のフレーム部材を形成するフレーム部材形成ステップを、さらに含んでも良い。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、コンタクト領域を有効に使用できデッドスペースを低減可能であって、かつ使用する回路基板の種類を問わず導通試験を行うことのできる異方導電性シートおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る異方導電性シートの平面図(1A)、および該平面図のA−A線断面図とその一部Bの拡大図(1B)をそれぞれ示す。
図2図2は、図1の異方導電性シートの第一変形例(2A)および第二変形例(2B)の各平面図を示す。
図3図3は、図1の異方導電性シートの第三変形例(3A)および第四変形例(3B)の各断面図を示す。
図4図4は、図1の異方導電性シートを個別に製造するフローとその状況を概略的に示す。
図5図5は、図1の異方導電性シートを複数個製造するフローを示す。
図6図6は、図5のフローの前半部分の状況を図示する。
図7図7は、図5のフローの後半部分の状況を図示する。
図8図8は、図7に続いて、図5のフローの後半部分の状況を図示する。
図9図9は、上述の第2の実施の形態の変形例に係る製造状況を示す。
図10図10は、第3の実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法に特有の2種類のステップ(10A,10B)を示す。
図11図11は、本発明の異方導電性シートの第五変形例(11A)および第六変形例(11B)の各断面図を示す。
図12図12は、本発明の異方導電性シートの第七変形例(12A)および第八変形例(12B)の各断面図を示す。
図13図13は、従来から公知の異方導電性シートを、回路基板上に固定した状態の平面図(13A)および該平面図中のI−I線断面図(13B)をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明に係る異方導電性シートおよびその製造方法の各実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施の形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施の形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0029】
1.異方導電性シートの構成
以下に、本発明の実施の形態に係る異方導電性シートについて説明する。
【0030】
図1は、本発明の実施の形態に係る異方導電性シートの平面図(1A)、および該平面図のA−A線断面図とその一部Bの拡大図(1B)をそれぞれ示す。
【0031】
本発明の実施の形態に係る異方導電性シート1は、複数本の金属線12と、金属線12同士の絶縁を確保するに十分な絶縁性を有する層であって、その層の厚さ方向に複数本の金属線12を貫通させた絶縁層11と、金属線12を貫通させた絶縁層11の外周端14の全周囲に固定される外側シート部材13と、を備える。複数本の金属線12と絶縁層11は、回路基板の表面に配置される異方導電性コネクタ10を構成する。異方導電性コネクタ10は、その外側に外側シート部材13を備えることにより、そのほぼ全面をコンタクト領域として使用できる。なお、この実施の形態では、外側シート部材13は、絶縁層11の外周端14の全周囲に固定されているが、外周端14の一部、例えば、絶縁層11の3つの辺のみ、あるいは4つの辺において所定間隔おきにリブ状に固定されていても良い。
【0032】
ここで、絶縁層11の厚さ方向への金属線12の「貫通」は、金属線12が絶縁層11の一方の面(回路基板に貼り付ける面)15aからその反対側の面15bに到達していれば良く、金属線12の両端が絶縁層11の両面15a,15bから突き出している場合に限定されない。本願でいう上記の「貫通」は、上記の突き出している状態に至っていなくとも、金属線12の両先端面が絶縁層11の両面15a,15bから少なくとも面一に露出している状態をも含むように広義に解釈される。すなわち、金属線12は、絶縁層11の一方の面15aと面一若しくは一方の面15aから突出し、絶縁層11の一方の面15aと反対側の面15bと面一若しくは反対側の面15bから突出する。この実施の形態では、金属線12は、絶縁層11の厚さ方向に貫通し、絶縁層11の一方の面15aおよび反対側の面15bの両方の面から突出している。また、本願では、絶縁層11の厚さ方向への金属線12の貫通は、その厚さ方向と完全に平行である場合に限定されず、所定角度で傾斜している場合も含むように広義に解釈される。
【0033】
本願でいう「絶縁」あるいは「絶縁性」は、金属線12同士の絶縁性を確保するのに十分な電気抵抗を有することを意味しており、好ましくは、その体積抵抗率が1.0×1012Ω・cm以上である性質をいう。絶縁層11は、その略厚さ方向に貫通する金属線12同士の絶縁性を確保しており、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、ポリエステル系ゴム、ポリブタジエンゴム、天然ゴムなどのエラストマーから好適に成る。絶縁層11のより好適な材料としては、シリコーンゴムを挙げることができる。特に、好適な絶縁層11は、JIS K6253 デュロメータ タイプAによる硬度(以後、適宜、ショアA 硬度、あるいはショア硬度Aともいう)が40〜80度のシリコーンゴムである。
【0034】
本願でいう「導電」あるいは「導電性」は、回路基板の配線に接触して、1.5V以上の電圧を加えたときに電流が流れる程度の低電気抵抗を有することを意味しており、例えば、好適には、体積抵抗率が1.0×10−1Ω・cm以下である性質をいう。
【0035】
金属線12は、導電性を有する金属を用いて成る細線である。金属線12同士の間隔は、LGAパッケージに代表される被試験体の電極端子の大きさに応じて適宜変更できる。この実施の形態における異方導電性シート1は、複数の金属線12にて上記電極端子に接続するタイプのものである。また、接続抵抗値を小さくする必要がある場合には、金属線12の間隔をできるだけ狭めて、1つの電極端子になるべく多くの金属線12を接触可能にするのが好ましい。この実施の形態では、金属線12同士の縦横方向の好適な間隔をともに20〜200μmの範囲としている。また、金属線12自体の外径および長さについても、特に制約はない。この実施の形態では、金属線12の好適な外径を10〜50μm、好適な長さを0.1〜3.5mmとしている。絶縁層11の外形寸法などについても特に制約はないが、この実施の形態では、絶縁層11の好適な厚さを、金属線12の長さと同一若しくはそれ以下とすることを前提に、0.1〜3mmとし、好適な縦横の寸法を、それぞれ、横4.5mm×縦5.5mmとしている。
【0036】
金属線12は、この実施の形態では、上述のように、絶縁層11の一方の面15aおよび反対側の面15bの両面から突出している。各面15a,15bからの突出長さは、特に制約されないが、この実施の形態では、ともに10〜40μm、より好ましくは15〜30μmとしている。ただし、回路基板若しくはLGAパッケージのフラット電極の面の面精度が悪く、あるいは反りなどが大きい場合には、上記突出長さは、50〜100μmの範囲まで長くし、金属線12と、それに接続する電極のコンタクト性を向上させるのが好ましい。
【0037】
金属線12は、単一の金属からなるものでも良いが、好ましくは、複数種の金属から成る。この実施の形態における金属線12は、芯材としての銅合金、その外周の中間被覆材としてのニッケル若しくはニッケル基合金、その外周の最表面被覆材としての金(Au)から構成される。金属線12は、好ましくは、製造工程において、切断面が露出するが、その切断面に、中間被覆材、最表面被覆材の順にコートされる。最表面被覆材をコートするのは、被試験体の電極との電気的接続を高める必要からである。中間被覆材をコートするのは、最表面被覆材が芯材の内部に拡散するのを防止する必要からである。金属線12は、金(Au)のみで構成しても良いが、その場合には金属線12の強度が低くなるために異方導電性シート1のライフサイクルが短くなり、かつコストも高くなる。このため、強度に優れる芯材を金属線12に用いている。また、中間被覆材は、最表面被覆材に金(Au)を用いたときに、金(Au)が芯材に拡散するのを防止するためである。
【0038】
外側シート部材13は、回路基板の表面と、コネクタ押さえ治具(不図示)との間に挟まれ、異方導電性シート1を回路基板に対して動かないように固定するための押さえ部位である。外側シート部材13を構成する材料としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、ポリエステル系ゴム、ポリブタジエンゴム、天然ゴムなどのエラストマーから好適に形成できる。その中でも、外側シート部材13のより好適な材料としては、絶縁性などに優れたシリコーンゴムを挙げることができる。特に、異方導電性コネクタ10と接着一体化しやすいシリコーンゴムが好ましい。シリコーンゴムの中でも外側シート部材13の材料としてより好ましいものは、JIS K6253 デュロメータ タイプAによる硬度が50度以上90度以下のシリコーンゴムである。
【0039】
また、外側シート部材13に用いるシリコーンゴムは、硬度の高低に必ずしも左右されることなく、JIS K6251による切断時の伸び(%)が200%以下であるのが好ましい。硬度と伸びとの両面を考慮すると、外側シート部材13に用いる最も好ましいシリコーンゴムは、JIS K6253 デュロメータ タイプAによる硬度が50度以上90度以下で、かつJIS K6251による切断時の伸び(%)が200%以下のシリコーンゴムである。外側シート部材13に用いるシリコーンゴムを構成可能な硬化性ゴム組成物としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKE−26(硬化後のシリコーンゴムのJIS K6253 デュロメータ タイプAによる硬度が約85度で、かつJIS K6251による切断時の伸び(%)が約70%となる)を好適に用いる。
【0040】
外側シート部材13を構成するシリコーンゴムの特性としては、上記硬度および上記伸びの内、硬度の方が重要である。JIS K6253 デュロメータ タイプAによる硬度が50度以上90度以下の比較的高硬度のシリコーンゴムを用いることにより、図5〜8を参照して説明する製造工程において、異方導電性シート1を切り出しやすくなる。また、JIS K6251による切断時の伸び(%)が200%以下のシリコーンゴムを用いることにより、外側シート部材13をコネクタ押さえ治具によって押さえた際に、外側シート部材13はその圧力により歪むのを低減できる。特に、細長い異方導電性シート1をその長さ方向にずらしながら導通試験を行うような場合、例えば、外側シート部材13をコネクタ押さえ治具で押さえてコネクタ部分をずらす、あるいは細長い異方導電性シート1の長さ方向両端の外側シート部材13をローラに巻き付けて特定のコネクタ領域の使用寿命が来たらローラを回転して別のコネクタ領域に使用部位を変更する、いわゆるロール・トゥ・ロール方式を用いる場合には、外側シート部材13はできるだけ伸びない方が好ましい。このように、外側シート部材13を構成するシリコーンゴムの特性としては、製法面では、特に高硬度であることがより重要であり、また使用面では特に伸びの小さいことがより重要である。
【0041】
この実施の形態では、外側シート部材13は、異方導電性コネクタ10の絶縁層11の外周端14に固定され、かつ好ましくは絶縁層11の一方の面15aおよびその反対側の面15bを覆っていない。外側シート部材13の厚さは、異方導電性コネクタ10の絶縁層11の厚さに対して如何なる関係であっても良いが、図5〜8の製法を考慮すると、絶縁層11の厚さと同一であるのが好ましい。ただし、外側シート部材13の厚さは、絶縁層11の厚さと正確に同一であることまでは必要ではなく、好適な許容範囲は、絶縁層11の厚さに対して±20%である。
【0042】
絶縁層11において、外側シート部材13と接着する外周端14を易接着性処理面とするのが好ましい。絶縁層11と外側シート部材13との接着強度をより高めることができるからである。ここで、易接着性処理面を形成するための易接着処理は、絶縁層11の外周端14へのカップリング剤の塗布、火炎処理、プラズマ照射、紫外線照射、シラン化合物を混合した可燃性ガスを用いた火炎処理「イトロ処理(登録商標)ともいう」などの、絶縁層11の外周端14と外側シート部材13との接着性を高めることのできる処理をいう。
【0043】
図2は、図1の異方導電性シートの第一変形例(2A)および第二変形例(2B)の各平面図を示す。
【0044】
第一変形例に係る異方導電性シート1aは、図2(2A)に示すように、4枚の異方導電性コネクタ10を互いに所定間隔をあけて一平面内に配置し、各異方導電性コネクタ10の周囲に外側シート部材13aが存在する形態を有しており、1つの異方導電性コネクタ10のみを備える上述の異方導電性シート1と異なる。また、第二変形例に係る異方導電性シート1bは、図2(2B)に示すように、1つの異方導電性コネクタ10の周りを囲む平面視にて略円形の外側シート部材13bを有しており、平面視にて四角形の外側シート部材13を有する上述の異方導電性シート1とは異なる。
【0045】
図3は、図1の異方導電性シートの第三変形例(3A)および第四変形例(3B)の各断面図を示す。(3A)では一部Cの拡大図も示す。
【0046】
第三変形例に係る異方導電性シート1cは、異方導電性シート1の外側シート部材13の上面に、フィルム部材20を積層した構造を有する。フィルム部材20は、この変形例では、外側シート部材13の上面の全域に積層されているが、外側シート部材13の上面の一部に積層されていても良い。また、フィルム部材20は、外側シート部材13の下面に積層されていても良い。フィルム部材20は、異方導電性シート1が薄すぎる場合に、これを補強してハンドリングしやすいようにする目的で設けられる。フィルム部材20は、外側シート部材13よりも高硬度の層であり、樹脂、ゴムあるいは金属などから形成できる。フィルム部材20は、好ましくは、樹脂から構成され、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂のいずれの樹脂から構成しても良い。フィルム部材20を構成するより好ましい樹脂材料としては、ポリイミドあるいはポリエステルである。フィルム部材20の好ましい厚さは、50〜500μmであり、さらに好ましくは100〜300μmである。フィルム部材20は、その厚さ方向に貫通するアライメントホールを有しても良い。
【0047】
第四変形例に係る異方導電性シート1dは、異方導電性シート1の外側シート部材13であって、回路基板との接触可能な領域を挟んで外側周縁部の全部に、フレーム部材25を備える。フレーム部材25は、この変形例では、上記外側周縁部の全部に備えられるが、上記外側周縁部の一部に備えられても良い。フレーム部材25は、外側シート部材13の両面に突出して形成されているが、いずれか一方の面のみに形成されていても良い。フレーム部材25は、外側シート部材13の上面または下面のいずれに形成されていても良い。フレーム部材25は、フィルム部材20と同様にハンドリング性を高める目的のほか、異方導電性シート1の平坦性を出す目的で設けられる。フレーム部材25は、外側シート部材13より高硬度の部材であり、樹脂、ゴム、金属、ガラスあるいはセラミックスなどから形成できる。フレーム部材25は、好ましくは、樹脂から構成され、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂のいずれの樹脂から構成しても良い。フレーム部材25を構成するより好ましい樹脂材料としては、高い剛性が要求されることから、いわゆるエンジニアリングプラスチックの範疇にあるポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、フッ素樹脂、液晶ポリマーを好適に用いる。
【0048】
図1図3に基づいて説明した異方導電性シート1,1a,1b,1c,1dにおいて、外側シート部材13は、異方導電性コネクタ10の外周端14の一部若しくは全部に固定されている。しかし、外側シート部材13は、異方導電性コネクタ10の外周端14に加えて、異方導電性コネクタ10の絶縁層11の両面15a,15bの内の少なくともいずれか1つの面に接着していても良い。その場合、絶縁層11における金属線12には接触しないように、絶縁層11の縁に接触することを条件とする。また、外側シート部材13は、外周端14には接着せず、異方導電性コネクタ10の絶縁層11の両面15a,15bの内の少なくともいずれか1つの面と接着するようにすることもできる。その場合でも、外側シート部材13は、絶縁層11における金属線12には接触しないように、絶縁層11の縁に接触することを条件とする。
【0049】
また、上述の異方導電性シート1,1a,1b,1c,1dは、絶縁層11の厚さ方向に対して略平行に金属線12を貫通させた構造を有しているが、これらと異なり、金属線12を、絶縁層11の厚さ方向に対して傾斜させて絶縁層11中に立設させて成るものであっても良い。絶縁層11の厚さ方向(絶縁層11の平面に垂直な方向)からの傾斜角度(θ)は、1〜60度の範囲の鋭角であれば制約されないが、好ましくは、10〜50度、さらに好ましくは20〜45度である。金属線12を角度θで傾斜させるのは、異方導電性シート1,1a,1b,1c,1dの上面から加圧したときに、その圧力を金属線12の軸方向に100%付与せず、もって金属線12を座屈しにくくし、その寿命を長くする必要からである。また、金属線12の圧縮抵抗力を弱め、異方導電性シート1,1a,1b,1c,1dの圧縮不足を生じさせないようにするためであり、この結果、コンタクト時の圧縮荷重を小さくできるからである。
【0050】
2.異方導電性シートの製造方法
(1)第1の実施の形態
以下に、本発明の第1の実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法について説明する。
【0051】
図4は、図1の異方導電性シートを個別に製造するフローとその状況を概略的に示す。
【0052】
この実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法の例示的なフローは、
1)コネクタ準備ステップ(ステップS101)、
2)易接着処理ステップ(ステップS102)、
3)硬化性ゴム組成物供給ステップ(ステップS103)、および
4)硬化ステップ(ステップS104)、を含む。
以下、各ステップについて、図4を参照しながら説明する。
【0053】
1)コネクタ準備ステップ(ステップS101)
このステップは、図4の異方導電性コネクタ10を準備するステップである。「準備」は、製造のみならず、市販されているものを購入することも含めるように広義に解釈される。このステップが製造ステップである場合には、異方導電性コネクタ10は、絶縁層11に金属線12を貫通させた構造を実現できれば、どのような手法で製造されても良い。例えば、後述する第2の実施の形態のように、多層ブロックを作製し、そこから異方導電性コネクタ10を1枚ずつ薄くカットしても良い。
【0054】
2)易接着処理ステップ(ステップS102)
このステップは、異方導電性コネクタ10の外周に易接着処理を行うステップである。この実施の形態では、図4中の矢印Dで示すように、当該外周に紫外線を照射しているが、先に述べた他の易接着処理を行っても良い。また、このステップは、必須のステップではなく、外側シート部材13を異方導電性コネクタ10の外周に強固に接着できる場合には、省略しても良い。
【0055】
3)硬化性ゴム組成物供給ステップ(ステップS103)
このステップは、異方導電性コネクタ10の外周に、外側シート部材13を硬化形成可能な硬化性ゴム組成物28aを供給するステップである。硬化性ゴム組成物28aの供給方法は、特に制約は無く、例えば、スクリーン印刷若しくはインクジェット方式の印刷に代表される印刷、スプレー(噴霧)、ディッピング(浸漬)あるいはバーコータを用いた方法を用いることができる。この実施の形態では、印刷を用いている。具体的には、異方導電性コネクタ10よりも大面積の空間を有する矩形の枠体27を用意し、その内側の略中央に、異方導電性コネクタ10を配置する。枠体27および異方導電性コネクタ10は、好ましくは、平滑なシート上に固定される。枠体27の内部であって異方導電性コネクタ10の外側の領域に、硬化性ゴム組成物28aを含むインクを用いて印刷する。
【0056】
4)硬化ステップ(ステップS104)
このステップは、硬化性ゴム組成物28aを硬化させるステップである。硬化に際し、室温(23℃)から加温するか否かは不問であるが、好ましくは、加温して硬化するのが望ましい。一例として、減圧下にて70〜100℃の範囲で加熱硬化するのが好ましい。硬化後に、枠体27を除去すると、異方導電性コネクタ10の外周に外側シート部材13を備えた1枚の異方導電性シート1が得られる。
【0057】
なお、硬化ステップの後、コネクタ準備ステップの中若しくはその後、あるいは易接着処理ステップの後に、絶縁層11の表面をエッチングするステップを行っても良い。このステップは、絶縁層11の厚さとその内部にある金属線12の長さがほぼ同一である状態から、金属線12を絶縁層11の表側の面および裏側の面の内のいずれか1つの面から突出させたい場合に有効な手段である。エッチング処理は、レーザエッチング、プラズマエッチング、化学エッチング(酸等を用いたエッチング)などの如何なる種類のエッチング処理でも良い。さらに、エッチング処理は、必須の工程ではなく、絶縁層11の両面から金属線12を突出させない場合には、不要である。
【0058】
(2)第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法について説明する。
【0059】
図5は、図1の異方導電性シートを複数個製造するフローを示す。図6は、図5のフローの前半部分の状況を図示する。図7および図8は、図5のフローの後半部分の状況を図示する。
【0060】
この実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法の例示的なフローは、
1)硬化性組成物積層ステップ(ステップS201)、
2)金属線配置ステップ(ステップS202)、
3)貼り合わせステップ(ステップS203)、
4)硬化ステップ(ステップS204)、
5)二段積層ステップ(ステップS205)、
6)硬化ステップ(ステップS206)、
7)多積層ステップ(ステップS207)、
8)多層ブロックセッティングステップ(ステップS300)、
9)硬化性ゴム組成物供給ステップ(ステップS400)、
10)硬化ステップ(ステップS500)
11)カットステップ(ステップS600)、および
12)エッチングステップ(ステップS700)を含む。
上記1)〜7)までのステップは、総称して、多層ブロック準備ステップ(ステップS200)と称する。以下、上記1)〜12)の各ステップについて、図5図8を参照しながら説明する。
【0061】
1)硬化性組成物積層ステップ(ステップS201)
四角形の基材フィルム(例えば、ポリエステル製のフィルム)30の一方の面に、硬化後に絶縁層11となる硬化性組成物11aを積層する。積層方法には特に制約は無く、この実施の形態では、硬化性組成物11aにミラブル型のシリコーンゴム材料を用いて、カレンダーロール設備により薄いシート状に成形後、基材フィルム30上にトッピングしている。その他の方法として、例えば、スクリーン印刷若しくはインクジェット方式の印刷に代表される印刷、スプレー(噴霧)、ディッピング(浸漬)あるいはバーコータを用いた方法を挙げることができる。
【0062】
2)金属線配置ステップ(ステップS202)
次に、硬化性組成物11aの表面に、複数本の金属線12が互いに平行になり、かつ基材フィルム30の一辺にも平行になるように、金属線12を配置する。
【0063】
3)貼り合わせステップ(ステップS203)
次に、複数の金属線12の上から、ステップS201と同様の方法で作製した硬化性組成物11a付きの基材フィルム30を、硬化性組成物11aを金属線12側にして貼り合わせる。これによって、両面に基材フィルム30を備えた一層品40aが完成する。
【0064】
4)硬化ステップ(ステップS204)
次に、脱泡してから加熱し、一層品40a中の硬化性組成物11aを硬化させる。
【0065】
5)二段積層ステップ(ステップS205)
上記ステップS201〜S204により作製した硬化済みの一層品40を2つ用意し、硬化済みの一層品40からそれぞれ一枚ずつ基材フィルム30を剥がし、その剥がした2つの面の間に接着剤45を介在させて、2つの硬化済みの一層品40を積層する。接着剤45は、好適には、シリコーン系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系あるいはシアノアクリレート系の各種接着剤である。特に好適な接着剤は、シリコーン系接着剤であり、硬化後に、絶縁層11よりもショア硬度Aの低い層を形成可能なものをより好適に使用する。例えば、絶縁層11をショア硬度Aにて60〜80度とするシリコーンゴム層とする場合には、接着剤45の硬化後のショア硬度Aが40〜55度のシリコーンゴム層となるのが好ましい。
【0066】
6)硬化ステップ(ステップS206)
次に、加熱して、接着剤45を硬化させる。硬化後に、一方の面にある基材フィルム30を剥がし、片面に基材フィルム30を備えた二段積層体50を完成する。
【0067】
7)多積層ステップ(ステップS207)
二段積層体50を所定数(N個)揃えた後、それらの間に接着剤45を介在させて多層に積層する。好ましくは、その多数積層体を切り分けて、それら切り分けた多数積層体をさらに接着剤45を介在させて積層する。このステップにおける積層において、プレス機にて加圧することもできる。かかる加圧は、耐圧容器(金型など)の内部で行うのが好ましい。かかる工程を経て、多層ブロック60を作製する。このようにして作製された多層ブロック60は、上述の異方導電性コネクタ10を複数積層して成る。
【0068】
8)多層ブロックセッティングステップ(ステップS300)
次に、図7に示すように、少なくとも一方に開口部71を有する容器70の中に、上述の多層ブロック60における金属線12の端面を露出させる面60a側を開口部71に向けるように、多層ブロック60を入れる(図中の一部Eの拡大図を参照)。容器70は、多層ブロック60の金属線12の長さ方向に平行な辺よりも深いので、多層ブロック60をその上面まで入れることができる。また、容器の開口部71は、多層ブロック60の面60aよりも十分に大きい。このため、容器70の開口部71略中央であって容器70の内底面に多層ブロック60を置いたときに、多層ブロック60の外周囲に十分な隙間ができる。
【0069】
9)硬化性ゴム組成物供給ステップ(ステップS400)
次に、容器70の内部に、液状の硬化性ゴム組成物28aを供給する。硬化性ゴム組成物28aは、金属線12を貫通させた絶縁層11の外周の全部に固定される外側シート部材13を形成可能な組成物である。硬化性ゴム組成物28aは、好ましくは、多層ブロック60の面60aと同じ高さまで入れる。ただし、硬化性ゴム組成物28aは、該面60aより低くても、あるいは高くても良い。
【0070】
10)硬化ステップ(ステップS500)
次に、容器70内の硬化性ゴム組成物28aを硬化する。硬化に際して、室温(23℃)から加温するか否かは不問であるが、好ましくは、室温にて長時間かけて硬化するのが望ましい。例えば、このステップでは、室温、大気圧下にて硬化する。
【0071】
11)カットステップ(ステップS600)
次に、硬化ステップの後、多層ブロック60の周囲に外側シート部材13を備える外側シート部材付き多層ブロック90を容器70から取り出し、外側シート部材付き多層ブロック90から1または複数の異方導電性シート1を薄く切り出す。
【0072】
12)エッチングステップ(ステップS700)
カットステップ後の異方導電性シート1は、絶縁層11の厚さとその内部にある金属線12の長さがほぼ同一である。金属線12を絶縁層11の表側の面および裏側の面の内のいずれか1つの面から突出させたい場合には、図8中の矢印Fで示すように、突出させたい側の面からエッチング処理を行い、絶縁層11の表面を選択的にエッチングして、金属線12を絶縁層11の表面から突出させる。エッチングステップは、第1の実施の形態で説明した方法と同様である。
【0073】
図9は、上述の第2の実施の形態の変形例に係る製造状況を示す。
【0074】
図9に示す変形例では、容器70に入れる多層ブロック95が図7に示す多層ブロック60と異なる。具体的には、この変形例における多層ブロック95は、基材フィルム30を剥がした硬化済みの一層品40を複数用意し、それらを金属線12の長さ方向に徐々にずらしながら積層したものである。図9中の一部Gの拡大図に示すように、金属線12の先端を露出させた面95aを開口部71に向けて、多層ブロック95を容器70の内底面に置く。その後、図7および図8に基づく説明と同様、硬化性ゴム組成物供給ステップ(ステップS400)、硬化ステップ(ステップS500)、および外側シート部材付き多層ブロック96を薄くカットするカットステップ(ステップS600)を行う。ただし、容器70の内部を直方体形状にした場合、外側シート部材13は、異方導電性コネクタ10の外周において同一幅にて形成されない。このため、外側シート部材13の一部をカットするのが好ましい。このようなステップを経て、金属線12を絶縁層11の厚さ方向に対して傾斜させて絶縁層11中に立設させて成る異方導電性シート1eを製造することができる。なお、カットステップ(ステップS600)の後に、エッチングステップ(ステップS700)を行っても良い。
【0075】
容器70の形状および大きさは、異方導電性シートの形状や大きさに応じて適宜変更可能である。例えば、4枚の異方導電性コネクタ10を有する異方導電性シート1aを形成する場合には、開口部71の大きな容器70を用いると良い。また、外形が円形の異方導電性シート1bを形成する場合には、容器70を円筒形状とすれば良い。
【0076】
(3)第3の実施の形態
次に、本発明の第3の実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法について説明する。
【0077】
図10は、第3の実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法に特有の2種類のステップ(10A,10B)を示す。
【0078】
第3の実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法は、フィルム部材20を備えた異方導電性シート1cおよびフレーム部材25を備えた異方導電性シート1dの各製造方法である。異方導電性シート1cを製造する場合、ステップS103、ステップS104、ステップS600あるいはステップS700に続いて、フィルム部材積層ステップ(ステップS800)を行うことができる。フィルム部材積層ステップ(ステップS800)は、外側シート部材13の表側の面および裏側の面の内、少なくともいずれか1つの面に、外側シート部材13より高硬度のフィルム部材20を積層するステップである。このステップでは、フィルム部材20と外側シート部材13との間に接着剤を介在させて両者を接着するのが好ましい。
【0079】
また、異方導電性シート1dを製造する場合、ステップS103、ステップS104、ステップS600あるいはステップS700に続いて、フレーム部材形成ステップ(ステップS900)を行うことができる。フレーム部材形成ステップ(ステップS900)は、外側シート部材13において、回路基板との接触可能な領域を挟んで外側周縁部の一部若しくは全部に、外側シート部材13より高硬度のフレーム部材25を形成するステップである。このステップでは、フレーム部材25と外側シート部材13との間に接着剤を介在させて両者を接着するのが好ましい。なお、フィルム部材積層ステップ(ステップS800)の前あるいは後に、フレーム部材形成ステップ(ステップS900)を行うこともできる。その場合には、フィルム部材20とフレーム部材25とが重ならないように外側シート部材13に接着するのが好ましい。
【0080】
3.その他の実施の形態
上述のように、本発明の異方導電性シートおよびその製造方法の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、上記形態に限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0081】
図11は、本発明の異方導電性シートの第五変形例(11A)および第六変形例(11B)の各断面図を示す。図12は、本発明の異方導電性シートの第七変形例(12A)および第八変形例(12B)の各断面図を示す。
【0082】
第五変形例(11A)の異方導電性シート1fは、図3(3A)に示す第三変形例に係る異方導電性シート1cのさらなる変形例である。異方導電性シート1fの一部Hの拡大図からも明らかなように、異方導電性シート1fでは、外側シート部材13とフィルム部材20との積層部位の総厚(T1)を、絶縁層11の厚さ(T2)よりも小さくしている(T1<T2)。また、総厚(T1)は、絶縁層11の厚さ(T2)の範囲内にあって、当該範囲外に飛び出していない。以後の変形例でも同様である。ここで、フィルム部材20は、外側シート部材13の表裏両面に積層されている。このため、外側シート部材13とフィルム部材20との積層部位の総厚とは、外側シート部材13を表裏両面から挟んだ一方のフィルム部材20の表面から他方のフィルム部材20の裏面までの厚さをいう。ただし、当該総厚(T1)を、絶縁層11の厚さ(T2)と等しくしても良い。さらには、絶縁層11の表面から突出する金属線12の両端間の垂直方向の長さをT2とした場合に、上記総厚(T1)を、金属線12の両端間の垂直方向の長さ(T2)よりも小さくし若しくは金属線12の両端間の垂直方向の長さ(T2)と等しくしても良い。この場合でも、総厚(T1)は、金属線12の両端間の垂直方向の長さ(T2)の範囲内にあって、当該範囲外に飛び出していない。以後の変形例でも同様である。
【0083】
第六変形例(11B)の異方導電性シート1gは、上記(11A)に示す第五変形例に係る異方導電性シート1fの変形例である。異方導電性シート1gの一部Iの拡大図からも明らかなように、異方導電性シート1gでは、総厚(T1)を、絶縁層11の厚さ(T2)よりも小さくしている(T1<T2)。ここで、フィルム部材20は、外側シート部材13の表面のみに積層されている。このため、外側シート部材13とフィルム部材20との積層部位の総厚とは、外側シート部材13の裏面からフィルム部材20の表面までの厚さをいう。ただし、当該総厚(T1)を、絶縁層11の厚さ(T2)と等しくしても良い。さらには、絶縁層11の表面から突出する金属線12の両端間の垂直方向の長さをT2とした場合に、上記総厚(T1)を、金属線12の両端間の垂直方向の長さ(T2)よりも小さくし若しくは金属線12の両端間の垂直方向の長さ(T2)と等しくしても良い。
【0084】
第七変形例(12A)の異方導電性シート1hは、図3(3B)に示す第四変形例に係る異方導電性シート1dのさらなる変形例である。異方導電性シート1hの一部Jの拡大図からも明らかなように、異方導電性シート1hでは、外側シート部材13とフレーム部材25との積層部位の総厚(T1)を、絶縁層11の厚さ(T2)よりも小さくしている(T1<T2)。ここで、フレーム部材25は、外側シート部材13の表裏両面に積層されている。このため、外側シート部材13とフレーム部材25との積層部位の総厚とは、外側シート部材13を表裏両面から挟んだ一方のフレーム部材25の表面から他方のフレーム部材25の裏面までの厚さをいう。ただし、当該総厚(T1)を、絶縁層11の厚さ(T2)と等しくしても良い。さらには、絶縁層11の表面から突出する金属線12の両端間の垂直方向の長さをT2とした場合に、上記総厚(T1)を、金属線12の両端間の垂直方向の長さ(T2)よりも小さくし若しくは金属線12の両端間の垂直方向の長さ(T2)と等しくしても良い。
【0085】
第八変形例(12B)の異方導電性シート1iは、上記(12A)に示す第七変形例に係る異方導電性シート1hの変形例である。異方導電性シート1iの一部Kの拡大図からも明らかなように、異方導電性シート1iでは、総厚(T1)を、絶縁層11の厚さ(T2)よりも小さくしている(T1<T2)。ここで、フレーム部材25は、外側シート部材13の表面のみに積層されている。このため、外側シート部材13とフレーム部材25との積層部位の総厚とは、外側シート部材13の裏面からフレーム部材25の表面までの厚さをいう。ただし、当該総厚(T1)を、絶縁層11の厚さ(T2)と等しくしても良い。さらには、絶縁層11の表面から突出する金属線12の両端間の垂直方向の長さをT2とした場合に、上記総厚(T1)を、金属線12の両端間の垂直方向の長さ(T2)よりも小さくし若しくは金属線12の両端間の垂直方向の長さ(T2)と等しくしても良い。
【0086】
上記の異方導電性シート1f,1g,1h,1iは、前述の各製造工程において、外側シート部材13をレーザエッチング等により薄く削り、フィルム部材20あるいはフレーム部材25を外側シート部材13の片面若しくは両面に貼った場合でも上記総厚(T1)が絶縁層11若しくは金属線12の両端間の垂直方向の長さ(T2)と同一以下になるように厚さ調整を行うことで容易に製造可能である。
【0087】
異方導電性シート1f,1g,1h,1iは、金属線12の両端の位置よりもフィルム部材20若しくはフレーム部材25の表面の位置を凹ませた形態を有する。金属線12の両端の位置に対するフィルム部材20若しくはフレーム部材25の表面の凹み量は、金属線12の垂直方向の長さに対して、好ましくは0〜50%、より好ましくは10〜40%である。この結果、被検査物(LGAパッケージ)の外形が異方導電性コネクタ10の面積よりも広い場合であっても、異方導電性シート1f,1g,1h,1iと、被接続物や回路基板との電気的接続を妨げにくくすることができる。また、圧縮接続の際に、異方導電性シート1f,1g,1h,1iの外周部分を被接続物や回路基板と接触させないで済むので、押し込み荷重を小さくすることができる。なお、フィルム部材20あるいはフレーム部材25は、外側シート部材13の片面に形成する場合において、図11(11B)または図12(12B)の上面あるいは下面のいずれに形成されていても良い。
【0088】
フィルム部材20は、異方導電性コネクタ10の外周を囲んで配置されている場合に限定されず、異方導電性コネクタ10の外周の一部に配置されていても良い。例えば、異方導電性コネクタ10が平面視にて四角形の場合には、対向する2辺のみに形成されていても良い。かかる形態は、フレーム部材25の場合にも同様である。
【0089】
異方導電性シート1aは、4つの異方導電性コネクタ10を備えるが、2、3または5個以上の異方導電性コネクタ10を備えるものでも良い。また、異方導電性コネクタ10の外周囲は、隙間なく外側シート部材13を備えるが、当該外周囲に沿うように、外側シート部材13に、その厚さ方向に貫通する貫通孔を備えていても良い。
【0090】
図6を参照して説明した多層ブロック60の製造方法は、好適な製造方法に過ぎず、他の製造方法であっても良い。例えば、金型内にて一層品40を形成し、その上に金属線12、さらにその上に硬化性組成物11aの薄い層を配置し、それを繰り返すことによって、二段積層体50同士を接着せずに、一層品40を順次積層させて、多層ブロック60を作製することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る異方導電性シートは、例えば、電子回路、電子部品などの配線を有する部材の導通試験に利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h,1i 異方導電性シート
10 異方導電性コネクタ
11 絶縁層
12 金属線
13,13a,13b 外側シート部材
20 フィルム部材
25 フレーム部材
28a 硬化性ゴム組成物
60 多層ブロック
70 容器
71 開口部
90 外側シート部材付き多層ブロック
95 多層ブロック
96 外側シート部材付き多層ブロック
図1
図2
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図6
図7
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図13