(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560163
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】駐車装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/42 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
E04H6/42 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-131347(P2016-131347)
(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公開番号】特開2018-3428(P2018-3428A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227043
【氏名又は名称】日精株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094352
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 孝
(72)【発明者】
【氏名】赤石 仁
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−324379(JP,A)
【文献】
特開2003−253950(JP,A)
【文献】
特開平04−191288(JP,A)
【文献】
特開平04−330180(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0018704(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00−6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と連通し、乗員が駐車車両から乗り降りする乗降室と、少なくとも1枚のドアパネルを有し、前記乗降室の出入口に配置される出入口ドアと、前記駐車車両を格納可能な複数の格納部を有する格納室と、前記乗降室と前記格納部間で前記駐車車両を移動する移動装置と、前記乗降室内の複数箇所に配置される緊急停止釦と、これらの緊急停止釦の投入に応じて前記移動装置を停止する制御装置とを備えた駐車装置において、
前記緊急停止釦は、前記出入口ドアの室内側にあって、前記ドアパネル縁部に少なくとも1つ取り付けられ、前記ドアパネルの投影面内に配置されるドア緊急停止釦を備えたことを特徴とする駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗降室と格納室間で駐車車両を移動する移動装置を備えた駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車装置として、乗降室と格納室間で駐車車両を移動する移動装置、例えば駐車車両の入出庫階と格納階を結ぶリフト装置を構成し、このリフト装置を使用して駐車車両を異なる階床間で移動するものとして、特開2009−185515号公報(特許文献1)には、駐車車両の入出庫部への乗入れ方向を昇降ステージの前後方向と異なる方向に設定し、昇降ステージの前後幅寸法に対応した間隔を介して対向するように配置されると共に、昇降ステージと係合可能な養生ステージを備え、昇降ステージの上昇に応じ、所定高さ位置にて昇降ステージと係合し同期して上昇すると共に、昇降ステージの下降に応じ、所定の高さ位置で昇降ステージとの係合が解除されて位置決めされ、旋回ステージを駐車車両の乗入れ方向に旋回させたときにその周囲に露出する昇降ステージの昇降口を被覆するようにしたものが示されている。
【0003】
このような構成とすることにより、昇降ステージの昇降のために旋回ステージを駐車車両の乗入れ方向と直交する方向に旋回させたときには、養生ステージを移動して昇降口を開放すると共に、駐車車両の入出庫のため旋回ステージを駐車車両の乗入方向に旋回させたときには、養生ステージにより旋回ステージの周囲に露出する昇降口を塞ぎ、乗員が安心して乗り降りできるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−185515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、駐車場装置にあっては、一般に、乗降室と外部とは出入口ドアにより仕切り可能となっているが、何らかの要因、例えば第三者による操作盤の誤操作により、乗員が乗降室にいる状態で出入口ドアが閉扉し、乗降室に閉じ込められる事態が想定される。前述した特許文献に記載のものは、乗員の乗降時に養生ステージにより機械的に昇降ステージの昇降口を塞いで乗降室の床をフラットにするものであるが、万一、乗員が乗降室に閉じ込められた状態で、養生ステージや昇降ステージが稼働すると、重量物が旋回すると共に、昇降口が露出することになり乗員は極めて危険な状態となる。そこで、乗降室内には養生ステージおよび昇降ステージを非常停止するための緊急停止釦が複数設けられているが、近時、安全性の向上を図るために、出入口ドアの室内側に、ドア緊急停止釦を配置することが求められるようになった。これに応じ、既存の緊急停止釦を、ドア緊急停止釦としてドアパネルの側面に配置することが考えられる。
【0006】
しかしながら、既存の緊急停止釦を、ドア緊急停止釦としてドアパネルの側面に配置すると、ドアパネルの幅寸法を超え、ドアパネルの垂直投影面から出張ることになるため、出入口ドアと共に移動するドア緊急停止釦と他の機器とが確実に接触することがない配置としなければならない。例えば、出入口ドアが閉じた状態で、出入口上縁に設けられる上部フレームと、ドアパネル側面のドア緊急停止釦とが当接することがないような配置とする必要があった。このため、各機器の配置や意匠に制約が生じるという課題があった。また、ドア緊急停止釦が室内側に出張ることで障害物となり、入出庫時に乗員が通るために必要な通路幅を確保することが難しくなるという課題もあった。
【0007】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、ドア緊急停止釦の配置を、出入口ドアの開閉に支障をきたすことなく、他の機器との接触を確実に回避し、かつ、乗員の通行を妨げる障害物となることを防ぐことのできる駐車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、外部と連通し、乗員が駐車車両から乗り降りする乗降室と、少なくとも1枚のドアパネルを有し、前記乗降室の出入口に配置される出入口ドアと、前記駐車車両を格納可能な複数の格納部を有する格納室と、前記乗降室と前記格納部間で前記駐車車両を移動する移動装置と、前記乗降室内の複数箇所に配置される緊急停止釦と、これらの緊急停止釦の投入に応じて前記移動装置を停止する制御装置とを備えた駐車装置において、前記緊急停止釦は、前記出入口ドアの室内側にあって、前記ドアパネル縁部に少なくとも1つ取り付けられ、前記ドアパネルの投影面内に配置されるドア緊急停止釦を備えたことを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、乗員が乗降室にいる状態で出入口ドアが閉扉し、乗降室に閉じ込められた際、ドアパネル縁部に配置されるドア緊急停止釦を投入すると、制御装置は移動装置を停止する。そして、ドア緊急停止釦は、ドアパネル上縁部にあって、ドアパネルの投影面内に配置されるものであることから、出入口ドアの開閉に支障をきたすことなく、他の機器との接触を確実に回避し、かつ、乗員の通行を妨げる障害物となることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ドア緊急停止釦の配置を、出入口ドアの開閉に支障をきたすことなく、他の機器との接触を確実に回避し、かつ、乗員の通行を妨げる障害物となることを防ぐことができる。なお、前述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の駐車装置の一実施形態を示す乗降室の上面図である。
【
図2】本実施形態における出入口ドアの縦断面図図である。
【
図3】本実施形態におけるドア緊急停止釦が取り付けられたドアパネルを示す
図2のA部の正面図である。
【
図4】本実施形態におけるドア緊急停止釦部分を示す
図3のB部の拡大正面図である。
【
図5】本実施形態におけるドア緊急停止釦部分を示す
図3のB部の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の駐車装置の一実施形態を示す乗降室の上面図である。
【0014】
本実施形態の駐車装置は、外部と出入口ドア1を介して連通し、乗員が駐車車両から乗り降りする乗降室2と、駐車車両を格納可能な複数の格納部を有する図示しない格納室と、乗降室2と格納部間で駐車車両を移動する移動装置、すなわち駐車車両を搭載可能なトレー3を異なる階床間で移動するリフト装置4と、外部と連通し、非常時に用いられる非常口5と、出入口ドア1近傍に配置され、駐車装置を操作する操作盤6とを備えている。なお、ここでは移動装置としてリフト装置4のみを挙げているが、移動装置には、リフト装置4と格納部間で駐車車両を移動する図示しない送り装置も含まれる。
【0015】
出入口ドア1は、乗降室2の出入口2aに配置され、例えば、上下開閉式のものである。また、トレー3との対向位置に配置され、駐車車両が通過可能な幅寸法を有していると共に、通常時、駐車車両の入出庫を行う乗員はここから出入りするようになっている。
【0016】
トレー3の上面には、搭載された駐車車両の前輪および後輪が所定位置にあることを検出する車輪センサー7が備えられている。
【0017】
リフト装置4は、図示しない制御装置により駐車車両を搭載可能なトレー3を昇降させるものであり、このリフト装置4がトレー3を乗降室2の昇降口8に位置させると、トレー3上面と乗降室2の床2aが略同一レベルとなり、駐車車両の乗り入れ、乗り出しが可能となると共に、乗員は安全に乗降することができる。
【0018】
乗降口8の周縁から出入口ドア1および非常口5にかけて色付けが施された通路9が設定され、通常時において、乗員は乗降口8の周縁から出入口ドア1に亘る通路9を通り、入庫時に乗り入れた駐車車両から降りて退室すると共に、出庫時に入室して駐車車両に乗り込むようになっている。
【0019】
乗降室2の床2bには、閉じ込め事故発生時に乗員が待避する待避箇所10a、10bを示すマーキング11a、11bが施される。これらの待避箇所10a、10bは、万一、乗員が閉じ込められた状態でリフト装置4が稼働しても、乗員がそこに待避することで確実に安全を確保することのできる位置に設定されている。
【0020】
乗降室2のリフト装置4前方の壁面2cには、駐車状況を案内する案内装置12が設けられている。
【0021】
乗降室2には、複数の緊急停止釦13が設置され、緊急停止釦13のいずれかが投入されると、図示しない制御装置はリフト装置4を含む移動装置全体を停止するようになっている。
【0022】
ここで、出入口ドアの構成について
図2に基づいて説明する。
図2は、本実施形態における出入口ドアの縦断面図である。
【0023】
出入口ドア1は、例えば、下ドアパネル1aと、この下ドアパネル1aに隣り合うように配置される中ドアパネル1bと、中ドアパネル1bに隣り合うように配置される上ドアパネル1cを組み合わせて構成されるものであり、これらのドアパネル1a〜1cは、図示しないドア駆動装置により、互いに連結された状態で上下方向に開閉動作を行うようになっている。
【0024】
そして、本実施形態では、後述するドア緊急停止釦13aの配置を、出入口ドア1の開閉に支障をきたすことなく、かつ、他の機器との接触を確実に回避するうえで有利なものとするために工夫が施されている。その具体的な説明を
図3乃至
図5に基づいて説明する。
図3は、本実施形態におけるドア緊急停止釦が取り付けられたドアパネルを示す
図2のA部の正面図、
図4は、本実施形態におけるドア緊急停止釦部分を示す
図3のB部の拡大正面図、
図5は、本実施形態におけるドア緊急停止釦部分を示す
図3のB部の拡大縦断面図である。
【0025】
出入口ドア1の室内側にあって、下ドアパネル1aの、例えば、上縁部にドア緊急停止釦13aが取り付けられている。ドア緊急停止釦13aは、乗降室2に複数設置される緊急停止釦13の1つであり、他の緊急停止釦13と同様、投入されることに応じて、図示しない制御装置がリフト装置4を含む移動装置全体を停止するようになっている。
【0026】
ドア緊急停止釦13aは、下ドアパネル1aの幅寸法W1より小さい幅寸法W2を有しており、下ドアパネル1aの上縁部に取り付けられた状態で、下ドアパネル1aの垂直投影面内に配置される。また、ドア緊急停止釦13aの近傍、例えば、中ドアパネル1bの下部には、ドア緊急停止釦13aの用途を簡明に説明するサイン14が貼り付けられている。なお、下ドアパネル1aの長手方向には複数の補強材15が延在している。
【0027】
本実施形態にあっては、何らかの要因、例えば第三者による操作盤6の誤操作により、乗員が乗降室2にいる状態で出入口ドア1が閉扉し、乗降室2に閉じ込められた際、出入口ドア1の室内側、つまり、下ドアパネル1aの上縁部に取り付けられるドア緊急停止釦13aを投入すると、図示しない制御装置は、緊急停止釦13が投入された場合と同様、リフト装置4を停止する。次いで、制御装置は、図示しない報知装置を介して外部に閉じ込め事故発生を報知し、係員による救出や安全確認が速やかに行われる。
【0028】
また、閉じ込められた際に、乗員が即座に緊急停止釦13やドア緊急停止釦13aの投入ができないとしても、乗員は待避箇所10a、10bに退避することで、安全を確保することができる。この位置に退避した後、近傍にある緊急停止釦13を投入し、救出を待つこともできる。待避箇所10a、10bはリフト装置4から十分離れた位置に設けられており、リフト装置4が稼働したとしても乗員は安全を確保することができる。なお、閉じ込められた際に、非常口5近傍に乗員がいた場合、非常口5から避難することができることは言うまでもない。しかし乗員がパニックになったり、閉じ込められた時に非常口5から離れた位置にいた場合、非常口5までたどり着けないことも考えられ、このようなときに待避箇所10a、10bに待避し、救出を待つことができる。
【0029】
本実施形態によれば、出入口ドア1の室内側に配置されるドア緊急停止釦13aを、下ドアパネル1aの上縁部に取り付け、下ドアパネル1aの垂直投影面内に収めることにより、ドア緊急停止釦13aが、出入口ドア1の開閉に支障をきたすことがない。また、基本的に下ドアパネル1aの軌道上には他の機器を配置しない構造となっていることから、他の機器との接触を確実に回避するうえで有利な配置とすることができる。特に、既存の駐車装置に、ドア緊急停止釦13aを追設する場合でも、他の機器の配置換え等の工事を必要としない。さらに、ドア緊急停止釦13aは下ドアパネル1aから室内側に出張ることがないので、乗員の通行を妨げる障害物となることを防ぐことができる。
【0030】
なお、前述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、前述した実施形態では、ドア緊急停止釦13aを下ドアパネル1aの上縁部に1つ取り付けたが、複数のドア緊急停止釦13aを下ドアパネル1aの上縁部に取り付けてもよい。また、出入口ドア1は、3枚のドアパネル1a〜1cで構成されるものとしたが、ドアパネルの数は3枚に限定されるものではないとともに、いずれか1枚のドアパネルの上縁部に、または複数枚のドアパネルの上縁部に、ドア緊急停止釦を配置することもできる。
【0031】
また、前述した実施形態では、出入口ドア1は上下開閉式のものとしたが、本発明はこれに限らず、横開閉式の出入口ドアにも適用することができ、その場合、ドア緊急停止釦を、ドアパネルの横縁部に取り付け、ドアパネルの投影面内に配置することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 出入口ドア
2 乗降室
3 トレー
4 リフト装置(移動装置)
6 操作盤
9 通路
10a、10b 待避箇所
11a、11b マーキング
12 案内装置
13 緊急停止釦
13a ドア緊急停止釦
14 サイン
15 補強材