(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1又は2に記載のコポリマーの製造方法であって、エチレンとプロピレンのモノマー混合物を、重合条件下で、ハフニウム又はジルコニウム遷移金属を含むジアルキルシリル架橋ビス-インデニルメタロセン錯体を含む触媒組成物と接触させる工程を含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(詳細な説明)
本明細書では、低レベルの結晶化度を示しながら、予想外に、広範なエチレン濃度にわたって、著しく高い融点を有する一連のエチレン含有コポリマーについて記載する。これらのコポリマーをメタロセンベース触媒系を用いて製造する方法及び該コポリマーの潤滑油用粘度調整剤としての使用についても記載する。
【0012】
(エチレンコポリマー)
本明細書で使用する場合、用語「コポリマー」は、2種以上の異なるモノマーから製造されるいずれのポリマーでもある。本コポリマーでは、利用するモノマーは、エチレンと、3〜20個の炭素原子を有する1種以上のα-オレフィンとを含む。適切なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン;1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;1つ以上のメチル、エチル又はプロピル置換基を有する1-ペンテン;1つ以上のメチル、エチル又はプロピル置換基を有する1-ヘキセ;1つ以上のメチル、エチル又はプロピル置換基を有する1-ヘプテン;1つ以上のメチル、エチル又はプロピル置換基を有する1-オクテン;1つ以上のメチル、エチル又はプロピル置換基を有する1-ノネン;エチル、メチル又はジメチル置換された1-デセン及び1-ドデセンが挙げられる。一般的に、α-オレフィンコモノマーは、プロピレン、ブテン、ヘキセン及びオクテンから選択され、プロピレンが好ましい。
【0013】
本コポリマーは、以下の特性の少なくとも1つを示す:
(i)約25,000〜約500,000、又は約40,000〜約300,000又は約50,000〜約200,000g/モルの範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw);
(ii)約1.5〜約4.0、又は約1.5〜約3.5、又は約1.5〜約3.0、又は約1.8〜約3.0、又は約1.8〜約2.8、又は約1.8〜約2.5の、重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比として定義される分子量分布(MWD);
(iii)本コポリマーは、チーグラー・ナッタではなく、メタロセンをベースとする触媒系を用いて製造されるので、非常に少量の第4族金属を含有する。好ましくは、本コポリマーは、0.5wt.%未満の第4族金属を含む。さらに好ましくは、本コポリマーは、実質的に第4族金属を含まない。1以上の実施形態では、本コポリマーは約100ppm以下又は約50ppm以下又は約25ppm以下又は約15ppm以下又は約10ppm以下又は約5ppm以下の第4族金属を含む;
(iv)少なくとも1、又は少なくとも2、又は少なくとも3、又は少なくとも4の第4族金属(wt ppm)/第5族金属(wt ppm)の比;
(v)本コポリマーは、米国特許出願公開第2007/0167315号で開示されているような連鎖シャトル重合(chain shuttling polymerization)法を利用せずに製造できるので、本コポリマーは典型的に100ppm以下、又は50ppm以下、又は25ppm以下、又は10ppm以下、又は5ppm以下のZnを含有する;及び
(vi)上記特性(i)〜(v)の組合せ。
【0014】
ポリマー中の第4族金属及び第5族金属及び/又は亜鉛の存在は、誘導結合プラズマ原子発光分析(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy)(ICP-AES)を利用して測定可能であり;これは当技術分野で一般的に知られている技法である。ICP-AES測定では、測定すべきサンプルをまず灰化してから適切な酸性溶液に溶かした後、標準較正曲線の範囲に入るように適宜希釈する。適切な機器は、Thermo Electron Corporation(現在はThermo Fisher Scientific Inc., 81 Wyman Street Waltham, MA 02454)製のIRIS ADVANTAGE DUAL VIEW機器である。
1以上の実施形態では、本コポリマーは、40wt.%〜70wt.%、さらに典型的には40wt.%〜55wt.%のエチレン由来の単位と、少なくとも30wt.%、さらに典型的には60wt.%〜45wt.%の、3〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種のα-オレフィン由来の単位とを含む。このような比較的低いエチレン含量であってさえ、本コポリマーは、下記関係:
Tm>3.4×E−180
(Eは、コポリマー中のエチレン由来の単位の重量%である)
を満たす、示差走査熱量分析(DSC)で測定した融点(Tm)(℃)を有するので、例えば、55wt.%のエチレンを含有するコポリマーでは、Tmが7℃より高い。場合によっては、第1の実施形態のコポリマーは、関係:Tm>3.4×E−170、又は関係:Tm>3.4×E−160、又は関係:Tm>3.4×E−90(Eは、上記定義どおりである)を満たす、DSCで測定した融点(Tm)(℃)を有する。
別の実施形態では、本コポリマーは、70〜85wt.%のエチレン由来の単位と、少なくとも12wt.%の、3〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種のα-オレフィン由来の単位とを含む。この場合、本コポリマーは、少なくとも100℃、さらに典型的には少なくとも110℃の、DSCで測定した融点(Tm)を有する。
【0015】
(メタロセン触媒系)
本エチレンコポリマーを製造するために利用するメタロセン触媒系は、下記:(i)多くの場合メタロセン、メタロセン触媒前駆体、又は触媒前駆体と呼ばれる、遷移金属の錯体;及び(ii)活性剤を含む。
(メタロセン)
ここで有用なメタロセン化合物は、当技術分野で一般的に知られており、好ましくはチタン、ジルコニウム及びハフニウムのシクロペンタジエニル誘導体である。有用なメタロセン(例えばチタノセン、ジルコノセン及びハフノセン)は、下記式で表される。
【0017】
ここで、Mは金属中心であり、第4族金属、好ましくはチタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、L
1及びL
2が存在するときは好ましくはジルコニウム又はハフニウムであり、Zが存在するときは好ましくはチタンであり;nは0又は1であり;
Tは、任意の架橋基であり、存在する場合、好ましい実施形態では、ジアルキルシリル、ジアリールシリル、ジアルキルメチル、エチレニル(-CH
2-CH
2-)又はヒドロカルビルエチレニルから選択され、ここで、エチレニル中の1、2、3又は4個の水素原子はヒドロカルビルで置換されており、ヒドロカルビルは独立にC
1〜C
16アルキル又はフェニル、トリル、キシリル等であってよく、かつTが存在する場合、提示触媒はラセミ形又はメソ形であってよく;
L
1及びL
2は、同一又は異なるシクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル又はフルオレニル環であり、任意に置換されていてもよく、それぞれMに結合しているか、或いはL
1及びL
2は、任意に置換されていてもよい同一又は異なるシクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル又はフルオレニル環であり、これらの環上のいずれの2つの隣接R基も任意に結び付いて置換又は無置換の飽和、部分的に不飽和、又は芳香族の環式若しくは多環式置換基を形成してもよく;
Zは、窒素、酸素又はリン(好ましくは窒素)であり;
R'は、環式直鎖若しくは分岐C
1〜C
40アルキル又は置換アルキル基であり(好ましくはZ-R'はシクロドデシルアミド基を形成する);及び
X
1及びX
2は、独立に、水素、ハロゲン、ヒドリド基、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、置換ハロカルビル基、シリルカルビル基、置換シリルカルビル基、ゲルミルカルビル基、又は置換ゲルミルカルビル基であり;或いは両Xが結び付いて金属原子に結合して、約3〜約20個の炭素原子を含むメタラサイクル(metallacycle)環を形成し;或いは両方ともオレフィン、ジオレフィン又はアリーン配位子であり得る。
【0018】
用語ハフノセンを用いて、直前に定義したとおりの少なくとも2つの脱離基X
1及びX
2を有する架橋又は非架橋ビス-若しくはモノ-シクロペンタジエニル(Cp)ハフニウム錯体を意味し、Cp基は置換又は無置換シクロペンタジエン、インデン又はフルオレンであってよい。用語ジルコノセンを用いて、直前に定義したとおりの少なくとも2つの脱離基X
1及びX
2を有する架橋又は非架橋ビス-若しくはモノ-(Cp)ジルコニウム錯体を意味し、Cp基は置換又は無置換シクロペンタジエン、インデン又はフルオレンであってよい。用語チタノセンを用いて、直前に定義したとおりの少なくとも2つの脱離基X
1及びX
2を有する架橋又は非架橋ビス-若しくはモノ-(Cp)チタン錯体を意味し、Cp基は置換又は無置換シクロペンタジエン、インデン又はフルオレンであってよい。
この発明で使用可能なメタロセン化合物の中には、立体剛性(stereorigid)、キラル又は不斉性の架橋又は非架橋、或いはいわゆる「束縛構造(constrained geometry)」のメタロセンがある。例えば、米国特許第4,892,851号;米国特許第5,017,714号;米国特許第5,132,281号;米国特許第5,155,080号;米国特許第5,296,434号;米国特許第5,278,264号;米国特許第5,318,935号;米国特許第5,969,070号;米国特許第6,376,409号;米国特許第6,380,120号;米国特許第6,376,412号;WO-A-(PCT/US92/10066);WO 99/07788;WO-A-93/19103;WO 01/48034;EP-A2-0 577 581;EP-A1-0 578 838;WO 99/29743を参照されたい。学術文献、例えば、"The Influence of Aromatic Substituents on the Polymerization Behavior of Bridged Zirconocene Catalysts," Spaleck, W. et al, Organometallics 1994, Vol. 13, pp. 954-963, and "ansa-Zirconocene Polymerization Catalysts with Annelated Ring Ligands-Effects on Catalytic Activity and Polymer Chain Lengths," Brintzinger, H. et al, Organometallics 1994, Vol. 13, pp. 964-970,、及びその中で言及された文書をも参照されたい。WO 99/07788に開示された架橋メタロセン及び米国特許第5,969,070号に開示された非架橋メタロセンは、本発明に特に適している。
【0019】
好ましくは、遷移金属化合物はジメチルシリルビス(インデニル)メタロセンであり、ここで、金属は第4族金属、特にチタン、ジルコニウム、又はハフニウムであり、インデニルは、ハロゲン原子、C
1〜C
10アルキル、C
5〜C
15アリール、C
6〜C
25アリールアルキル、及びC
6〜C
25アルキルアリールから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換され得る。さらに好ましくは、金属はジルコニウム又はハフニウムであり、L
1及びL
2は、無置換又は置換インデニル基であり、Tはジアルキルシラジルであり、かつX
1及びX
2は両方ともハロゲン又はC
1〜C
3アルキルである。好ましくは、これらの化合物はラセミ形である。
好ましい立体特異性メタロセン化合物の説明に役立つが限定でない例は、ジメチルシリルビス(インデニル)金属ジクロリド、ジメチルシリルビス(インデニル)金属ジエチル又はジメチルシリルビス(インデニル)金属ジメチルのラセミ異性体であり、ここで、金属はチタン、ジルコニウム又はハフニウム、好ましくはハフニウム又はジルコニウムである。インデニル基がいずれのさらなる置換基によっても置換されないことが特に好ましい。しかしながら、特定の実施形態では、2つのインデニル基が相互独立に、2-メチル-4-フェニルインデニル;2-メチルインデニル;2-メチル-4-[3',5'-ジ-t-ブチルフェニル]インデニル;2-エチル-4-[3',5'-ジ-t-ブチルフェニル]インデニル;2-n-プロピル-4-[3',5'-ジ-t-ブチルフェニル]インデニル;2-イソ-プロピル-4-[3',5'-ジ-t-ブチルフェニル]インデニル;2-イソ-ブチル-4-[3',5'-ジ-t-ブチルフェニル]インデニル;2-n-ブチル-4-[3',5'-ジ-t-ブチルフェニル]インデニル;2-sec-ブチル-4-[3',5'-ジ-t-ブチルフェニル]インデニル;2-メチル-4-[3',5'-ジ-フェニルフェニル]インデニル;2-エチル-4-[3',5'-ジ-フェニルフェニル]インデニル;2-n-プロピル-4-[3',5'-ジ-フェニルフェニル]インデニル;2-イソ-プロピル-4-[3',5'-ジ-フェニルフェニル]インデニル;2-n-ブチル-4-[3',5'-ジ-フェニルフェニル]インデニル;2-sec-ブチル-4-[3',5'-ジ-フェニルフェニル]インデニル;2-tert-ブチル-4-[3',5'-ジ-フェニルフェニル]インデニル等で置き換わってもよい。さらなる好ましい立体特異性メタロセン化合物の説明に役立つが限定でない例は、9-シラフルオレニルビス(インデニル)金属ジクロリド、9-シラフルオレニルビス(インデニル)金属ジエチル又は9-シラフルオレニルビス(インデニル)金属ジメチルのラセミ異性体であり、ここで、金属はチタン、ジルコニウム又はハフニウムである。この場合もやはり、無置換インデニル基が特に好ましい。しかし、いくつかの実施形態では、2つのインデニル基が相互独立に、いずれの上記置換インデニル基と置き変わってもよい。
【0020】
オレフィンの重合で用いる上記式(1)及び(2)の活性剤と共に本発明の触媒系で使う遷移金属化合物として特に好ましいメタロセンは、rac-ジメチルシリルビス(インデニル)ハフノセン又はrac-ジメチルシリルビス(インデニル)ジルコノセン、rac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ハフノセン又はrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコノセン、rac-ジメチルシリルビス(2-メチル-インデニル)ハフノセン又はrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-インデニル)ジルコノセン、及びrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-ナフチルインデニル)ハフノセン又はrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-ナフチルインデニル)ジルコノセンであり、ここで、ハフニウム及びジルコニウム金属は、架橋ビス(インデニル)置換基に加えて、ハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素原子、又はアルキル基、好ましくはメチル及び/若しくはエチル基である2つのさらなる置換基で置換されている。好ましくは、これらの追加の置換基は両方とも塩素原子又は両方ともメチル基である。特に好ましい遷移金属化合物は、ジメチルシリルビス(インデニル)ハフニウムジメチル、rac-ジメチルシリルビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、rac-エチレニルビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、及びrac-エチレニルビス(インデニル)ハフニウムジメチルである。
【0021】
好ましい非立体特異性メタロセン化合物の説明に役立つが限定でない例は、[ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)-(シクロドデシルアミド)]金属ジハライド、[ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(t-ブチルアミド)]金属ジハライド、[ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(exo-2-ノルボルニル)]金属ジハライドであり、ここで、金属は、Zr、Hf、又はTi、好ましくはTiであり、ハライドは、好ましくは塩素又は臭素である。
好ましい実施形態では、遷移金属化合物は、架橋又は非架橋ビス(置換又は無置換インデニル)ハフニウムジアルキル或いは架橋又は非架橋ビス(置換又は無置換インデニル)ハフニウムジハライドである。
最後に、オレフィン重合反応を触媒する活性がある非メタロセン化合物も本発明の触媒系及び方法で遷移金属化合物として適している。非メタロセン触媒の特に好ましい化学種は、例えば、WO 03/040201に開示されているピリジルアミンである。
【0022】
(触媒化合物の活性剤及び活性化方法)
遷移金属化合物を活性化して、空の配位サイトを有する触媒として活性なカチオン遷移金属化合物を生成する。この空の配位サイトにモノマーが配位してから、成長するポリマー鎖に挿入される。本発明のオレフィン重合方法では、以下の一般式(1)又は(2)の活性剤を用いて遷移金属化合物を活性化する。
式(1)は以下のとおりである:[R
1R
2R
3AH]
+[Y]
- (1)
式中、[Y]
-は、さらに以下に説明するように、非配位性アニオン(NCA)であり、
Aは、窒素又はリンであり、
R
1及びR
2は、ヒドロカルビル基又はヘテロ原子含有ヒドロカルビル基であり、一緒にAと第1の3員〜10員非芳香族環を形成し、ここで、いずれの数の隣接環員も任意に少なくとも1つの第2の芳香族若しくは脂肪族環又は2つ以上の環の脂肪族及び/若しくは芳香族環系の環員であってよく、ここで、前記少なくとも1つの第2の環又は環系は前記第1の環に縮合しており、かつ第1及び/又は少なくとも1つの第2の環若しくは環系のいずれの原子も炭素原子又はヘテロ原子であり、独立に、水素原子、ハロゲン原子、C
1〜C
10アルキル、C
5〜C
15アリール、C
6〜C
25アリールアルキル、及びC
6〜C
25アルキルアリールから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、かつ
R
3は、水素原子又はC
1〜C
10アルキルであり、或いはR
3は、前記第1の環及び/又は前記少なくとも1つの第2の環若しくは環系に連結するC
1〜C
10アルキレン基である。
式(2)は以下のとおりである:[R
nAH]
+[Y]
- (2)
式中、[Y]
-は、さらに以下に説明するように、非配位性アニオン(NCA)であり、
Aは、窒素、リン又は酸素であり、
nは、Aが窒素又はリンの場合は3であり、nは、Aが酸素の場合は2であり、
かつ基Rは、同一又は異なり、C
1〜C
3アルキル基である。
【0023】
従って、本発明は詳細には、遷移金属化合物及び上記式(1)の活性剤を含む新規触媒系自体、オレフィン重合用触媒系中の遷移金属化合物を活性化するための前記式(1)の活性剤の使用、並びにオレフィンの重合方法であって、重合条件下で1種以上のオレフィンを、遷移金属化合物及び式(1)の活性剤を含む触媒系と接触させる工程を含む方法に関する。
本発明は、オレフィンの重合方法であって、重合条件下で、1種以上のオレフィンを、遷移金属化合物及び上記式(2)の活性剤を含む触媒系と接触させる工程を含む方法にも関する。この方法では、所定反応温度でのモノマー転化率を高めるにつれて、形成されるポリマーのMwが増加する。
式(1)及び(2)のカチオン部分のみならず、NCAであるそのアニオン部分についてもさらに以下に説明する。本明細書で開示するカチオンとNCAのいずれの組合せも本発明の方法で使用するのに適しているので、本明細書に組み込まれる。
【0024】
(活性剤−カチオン)
上式(1)又は(2)の活性剤のカチオン成分は一般的に、遷移金属化合物からのアルキル又はアリール等の部分をプロトン化することができるプロトン化ルイス酸である。従って、中性脱離基(例えば、活性剤のカチオン成分から供与されたプロトンと遷移金属化合物のアルキル置換基との組合せから生じるアルカン)が遊離されると、触媒活性種である遷移金属カチオンが生じる。
本発明の重合方法では、カチオン成分が式[R
nAH]
+を有する上記式(2)の活性剤を使用し得る。
式中、
Aは、窒素、リン又は酸素であり、
nは、Aが窒素又はリンの場合は3であり、nは、Aが酸素の場合は2であり、
かつ基Rは同一又は異なり、C
1〜C
3アルキル基である。このようにAは窒素、リン又は酸素であり得るので、[R
nAH]
+はアンモニウム、ホスホニウム又はオキソニウム成分であり得る。
式[R
nAH]
+の好ましい一実施形態では、Aが窒素又はリンであり、従ってnが3であり、基Rが同一である。さらに好ましくは、nが3であり、基Rが全て等しくメチル、エチル又はプロピル基であり、さらに好ましくは[R
nAH]
+がトリメチルアンモニウム又はトリメチルホスホニウム、トリエチルアンモニウム又はトリエチルホスホニウム、トリ(イソ-プロピル)アンモニウム又はトリ(イソ-プロピル)ホスホニウム、トリ(n-プロピル)アンモニウム又はトリ(n-プロピル)ホスホニウムである。トリメチルアンモニウムが特に好ましい。[R
nAH]
+がオキソニウム化合物(従ってnは2である)の場合、それは、好ましくはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサンのオキソニウム誘導体である。
【0025】
別の実施形態では、本発明の重合方法において、カチオン成分が式[R
1R
2R
3AH]
+を有する上記式(1)の活性剤を使用する。式中、Aは窒素又はリンであり、R
1及びR
2はヒドロカルビル基又はヘテロ原子含有ヒドロカルビル基であり、一緒にAと第1の3員〜10員非芳香族環を形成し、いずれかの数、好ましくは2、3、4又は5、さらに好ましくは2つの隣接環員は、任意に少なくとも1つの第2の芳香族環若しくは脂肪族環又は2以上の環の脂肪族環系及び/若しくは芳香族環系の環員であってよく、前記少なくとも1つの第2の環又は環系が前記第1の環に縮合しており、第1及び/又は少なくとも1つの第2の環若しくは環系のいずれの原子も炭素原子又はヘテロ原子であり、独立に、水素原子、ハロゲン原子、C
1〜C
10アルキル、好ましくはC
1〜C
5アルキル、C
5〜C
15アリール、好ましくはC
5〜C
10アリール、C
6〜C
25アリールアルキル、及びC
6〜C
25アルキルアリールから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、かつR
3は、水素原子若しくはC
1〜C
10アルキルであるか又は前記第1の環及び/又は前記少なくとも1つの第2の環若しくは環系に連結するC
1〜C
10アルキレン基である。R
1及びR
2は、ヘテロ原子(例えば窒素、リン又は酸素)含有ヒドロカルビル基でもあり得るので、それらがAと形成する3員〜10員環及び/又は少なくとも1つの第2の環若しくは環系は、1つ以上の追加のヘテロ原子(Aに加えて)、例えば窒素及び/又は酸素を含有し得る。窒素が好ましい追加のヘテロ原子であり、前記第1の環及び/又は少なくとも1つの第2の環若しくは環系に1回又は数回含有され得る。いずれの追加のヘテロ原子も、好ましくは窒素は、好ましくは独立に水素原子、又はC
1〜C
5アルキルで置換されている。
式(1)のカチオンの好ましい一実施形態を下記式(1)'に示す。
【0027】
式(1)'中、R
1とR
2は一緒に-(CH
2)
a-(すなわち、アルキレン)基であり、aは3、4、5又は6であり、Aは好ましくは窒素であり、R
3は水素原子又はC
1〜C
10アルキルであり、或いはR
3は、A、R
1、及びR
2によって形成された環に連結するC
1〜C
10アルキレン基である。特定の実施形態では、R
3は、1、2又は3個の炭素原子を有するアルキレン基であり、R
1、R
2及びAによって形成された環に連結する。R
1、R
2及び/又はR
3は、アザアルキレン基又はオキサアルキレン基であってもよい。R
1とR
2は、好ましくは窒素原子Aと4員、5員、6員又は7員の非芳香族環を形成する。
好ましくは、式(1)又は式(1)'中のAは窒素であり、かつR
1とR
2は一緒に(CH
2)
a-基(「アルキレン」基とも呼ばれる)であり、aは3、4、5又は6であり、或いはR
1及びR
2は、上述したようにアザアルキレン基又はオキサアルキレン基であってもよい。R
1及びR
2は、好ましくは窒素原子Aと4員、5員、6員又は7員非芳香族環を形成する。該環の非限定例は、ピペリジニウム、ピロリジニウム、ピペラジニウム、インドリニウム、イソインドリニウム、イミダゾリジニウム、モルフォニウム、ピラゾリニウム等である。A、R
3における追加の置換基は、これらのいずれの場合も好ましくはC
1〜C
5アルキル、さらに好ましくはC
1〜C
4アルキル、なおさらに好ましくはC
1〜C
3アルキル、なお好ましくはメチル又はエチルである。R
3は、R
1、R
2及びAを含む第1の環及び/又は第1の環に縮合した少なくとも1つの第2の環若しくは環系に連結するC
1〜C
5アルキレン基、好ましくはC
1〜C
4アルキレン基、さらに好ましくはC
1〜C
3アルキレン基、さらに好ましくは(CH
2)
3-、-(CH
2)
2又は-CH
2-基であってもよい。このように、[R
1R
2R
3AH]
+は、三環式構造、例えば、限定するものではないが、下記構造(さらに1以上の位置で上記いずれの置換基によって置換されていてもよく、かつ不飽和を含んでもよいが、好ましくは芳香族でない)を形成することもある。
【0029】
追加のヘテロ原子が第1の環及び/又は少なくとも1つの第2の環若しくは環系に存在する場合、非限定例である以下のような構造(この場合もやはり、さらに1つ以上の上記置換基で置換されていてもよく、かつ不飽和を含んでもよいが、好ましくは芳香族でない)をカチオンとして使用し得る。
【0031】
別の好ましい実施形態では、R
1、R
2及びAによって形成された環は、少なくとも1つの他の脂肪族環若しくは芳香族環又は脂肪族環系若しくは芳香族環系に縮合している。例えば、R
1、R
2及びAが、リン又は窒素であるヘテロ原子と5員若しくは6員の第1の脂肪族環を形成する場合、1以上の5員若しくは6員芳香族環若しくは芳香族環系は、前記第1の環の隣接炭素原子を介して第1の環に縮合し得る。
好ましい実施形態では、[R
1R
2R
3AH]
+がN-メチルピロリジニウム、N-メチルピペリジニウム、N-メチルジヒドロインドリニウム又はN-メチルジヒドロイソインドリニウムである。
別の好ましい実施形態では、式(1)中のカチオンが以下の4つの式の1つのように表される(式(1)に基づいており、本明細書では式(1)に言及するときに含められる)。
【0033】
式中、各xは0、1又は2であり、yは3、4、5、6、7、8、9、又は10(好ましくは3、4、5、又は6)であり、vは1、2、3、4、5、6、又は7(好ましくは0、1、2又は3)であり、zは1、2、3、4、5、6、又は7(好ましくは0、1、2又は3)であり、かつv+y+z=3、4、5、6、7、8、9、又は10(好ましくはv+y+z=3、4、5又は6)、mは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10(好ましくは1、2、3、又は4)であり、Aは窒素又はリン(好ましくは窒素)であり、R
3は水素原子又はC
1〜C
10アルキルであり、R
*はC
1〜C
10アルキルであり、いずれの(CH
x)基も独立に、ハロゲン原子、C
1〜C
10アルキル、C
5〜C
15アリール、C
6〜C
25アリールアルキル、及びC
6〜C
25アルキルアリールから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。別の実施形態では、(CH
x)基の少なくとも1つがヘテロ原子、好ましくは窒素と置き変わっている。好ましい実施形態では、上式で示される環は飽和又は部分的に不飽和であるが、好ましくは芳香族でない。或いは、(CH
x)
v、(CH
x)
y、及び(CH
x)
zを含む環は芳香族でないが、(CH
x)
mを含む環は芳香族であってもなくてもよい。
【0034】
本方法における活性剤は、式(1)及び/又は(2)の少なくとも2つの異なる活性剤の組合せであってもよい。例えば2つの異なるアンモニウム成分を同一又は異なるNCAと同時に使用してよい。式(1)及び/又は(2)の活性剤において2つの異なるカチオン化合物を使用すると、MWDを広くすることができ、かつ結果として生じるポリオレフィンのより広範な融点をもたらすことができるので、ポリマー特性を調整するために使用することができる。例えば、N-メチルピロリジニウム及びトリメチルアンモニウムを、以下に定義するのと同じNCA、特にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート及びテトラキス(ヘプタフルオロナフチル)ボラートのようなNCAと共に組み合わせて使用することができる。さらに、カチオン成分の混合物と同じ効果を得るために、1つのカチオン成分を含む活性剤を使用し、同時に遊離塩基として第2のルイス塩基を加えてよい。
【0035】
(非配位性アニオン(NCA))
上式(1)及び(2)の活性剤中、[Y]
-は非配位性アニオン(NCA)である。用語「非配位性アニオン」は、触媒の金属カチオンに配位しないか、又は金属カチオンに配位するが弱くしか配位しないアニオンを意味する。NCAは通常、比較的大きく(かさ高く)、化合物と活性剤を合わせると形成される活性触媒種を安定化することがでる。それでも前記アニオンは、不飽和モノマーと置き換わるために十分に不安定でなければならない。さらに、アニオンは、アニオンから中性遷移金属化合物及び中性副生物を生じさせるようには、アニオン置換基又はフラグメントを遷移金属化合物のカチオンに移動させないであろう。従って、適切なNCAは、最初に形成された錯体が分解するときに中性にならない当該NCAである。ここで有用な2つの分類の適合性NCAが例えばEP-A-0 277 003及びEP-A-0277 004に開示されている。それらは、1)中心の電荷保有金属又はメタロイドコアに共有結合的に配位してそれを遮蔽する複数の親油性基を含むアニオン配位錯体、及び2)カルボラン、メタラカルボラン及びボラン等の複数のホウ素原子を含むアニオンを包含する。
アニオン成分[Y]
-には、式[M
k+Q
n]
d-を有する当該成分が含まれる。式中、kは1〜3の整数であり;nは2〜6の整数であり;n-k=d;Mは、元素周期表第13族から選択される元素、好ましくはホウ素又はアルミニウムであり、Qは独立にヒドリド、架橋若しくは非架橋ジアルキルアミド、ハライド、アルコキシド、アリールオキシド、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、及びハロ置換ヒドロカルビル基であり、前記Qは20個までの炭素原子を有する。但しQがハライドであるのは最高1までの存在である(しかし、1より多くのqがハライド含有基であってもよい)。好ましくは、各Qは、1〜20個の炭素原子を有するフッ素化ヒドロカルビルであり、さらに好ましくは各Qはフッ素化アリール基であり、さらに好ましくは各Qは全フッ素化アリール基である。適切な[Y]
-の例には、米国特許第5,447,895号に開示されているジボロン化合物も含まれる。
【0036】
[Y]
-は、好ましくは[B(R
4)
4]
-であり、R
4はアリール基又は置換アリール基であり、置換基のうち、1つ以上の置換基は同一又は異なり、アルキル、アリール、ハロゲン原子、ハロゲン化アリール、及びハロアルキルアリール基から成る群より選択される。本発明で用いる[Y]
-の好ましい例は、テトラフェニルボラート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、テトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、テトラキス-(ペルフルオロナフチル)ボラート(テトラキス(ヘプタフルオロナフチル)ボラートとも呼ばれる)、テトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、及びテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラートである。特に好ましい[Y]
-はテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート及びテトラキス(ヘプタフルオロナフチル)ボラートである。
本明細書に示すいずれのNCAの[Y]
-も上述した式(1)又は(2)の活性剤のいずれのカチオン成分とも組み合わせて使用することができる。従って、好ましい成分[Y]
-と好ましい成分[R
1R
2R
3AH]
+又は[R
nAH]
+のいずれの組合せも開示され、かつ本発明の方法に適していると考えられる。
【0037】
(好ましい活性剤)
本発明の触媒系中の、また本発明の重合方法で使用する式(1)の好ましい活性剤は、式中、Aが窒素であり、R
1とR
2が一緒に-(CH
2)
a-基であり、aが3、4、5、又は6であり、R
3がC
1、C
2、C
3、C
4又はC
5アルキルであり、[Y]
-が[B(R
4)
4]
-であり、R
4がアリール基又は置換アリール基であり、その1つ以上の置換基が同一又は異なり、アルキル、アリール、ハロゲン原子、ハロゲン化アリール、及びハロアルキルアリール基から成る群より選択され、好ましくはR
4が全ハロゲン化アリール基、さらに好ましくは全フッ素化アリール基、さらに好ましくはペンタフルオロフェニル、ヘプタフルオロナフチル又はペルフルオロビフェニルである当該活性剤である。好ましくは、これらの活性剤を遷移金属化合物(メタロセン等)と組み合わせて本発明の触媒系を形成する。
本発明の重合方法で使用する触媒系における式(2)の触媒系中の好ましい活性剤は、式中、Aが窒素であり、nが3であり、全ての基Rが同一であって、メチル、エチル又はイソプロピルであり、[Y]
-が[B(R
4)
4]
-であり、R
4がアリール基又は置換アリール基であり、その1つ以上の置換基は同一又は異なり、アルキル、アリール、ハロゲン原子、ハロゲン化アリール、及びハロアルキルアリール基から成る群より選択され、好ましくはR
4が全ハロゲン化アリール基、さらに好ましくは全フッ素化アリール基、さらに好ましくはペンタフルオロフェニル、ヘプタフルオロナフチル又はペルフルオロビフェニルである当該活性剤である。好ましくは、これらの活性剤を遷移金属化合物(メタロセン等)と組み合わせて本発明の触媒系を形成する。
本発明の重合方法では、先行パラグラフで述べた式(1)の好ましい活性剤に加えて、式(2)の活性剤(式中、Aは窒素であり、全ての基Rは等しくメチル又はエチルであり、かつ[Y]
-は先行パラグラフの定義どおりである)をも使用すると好ましい。この場合もやはり、これらの活性剤をメタロセンと組み合わせて(例えば本明細書で以下に説明するように)、本発明の重合方法で使用する触媒系を形成するのが好ましい。
【0038】
(好ましい触媒系)
本発明のオレフィン重合用の触媒系における遷移金属化合物と活性剤の好ましい組合せは、以下の成分を含む。
−メタロセン化合物、好ましくはジアルキルシリル-架橋ビス(インデニル)メタロセン(ここで、金属は第4族金属であり、インデニルは無置換であるか、又は置換されている場合はC
1〜C
10アルキル、C
5〜C
15アリール、C
6〜C
25アリールアルキル、及びC
6〜C
25アルキルアリールから成る群より選択される1つ以上の置換基で置換されている);さらに好ましくはジメチルシリルビス(インデニル)金属ジクロリド又はジメチルシリルビス(インデニル)金属ジメチル、エチレニルビス(インデニル)金属ジクロリド又はエチレニルビス(インデニル)金属ジメチル、ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)金属ジクロリド又はジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)金属ジメチル、ジメチルシリルビス(2-メチル-インデニル)金属ジクロリド又はジメチルシリルビス(2-メチル-インデニル)金属ジメチル、及びジメチルシリルビス(2-メチル-4-ナフチルインデニル)金属ジクロリド又はジメチルシリルビス(2-メチル-4-ナフチルインデニル)金属ジメチル(ここで、全ての場合に金属はジルコニウム又はハフニウムであってよい);
−カチオン成分[R
1R
2R
3AH]
+(ここで、好ましくはAは窒素であり、R
1とR
2が一緒に-(CH
2)
a-基(aは3、4、5又は6である)であって、窒素原子と一緒に4員、5員、6員又は7員非芳香族環を形成し、この環には、任意に、隣接環炭素原子を介して、1つ以上の芳香族環又はヘテロ芳香族環が縮合していてよく、かつR
3はC
1、C
2、C
3、C
4又はC
5アルキル、さらに好ましくはN-メチルピロリジニウム又はN-メチルピペリジニウムである);又はカチオン成分[R
nAH]
+(ここで、好ましくはAは窒素であり、nは3であり、全てのRが同一であって、C
1〜C
3アルキル基、さらに好ましくはトリメチルアンモニウム又はトリエチルアンモニウムである);及び
−好ましくは式[B(R
4)
4]
-のNCAであるアニオン成分[Y]
-(R
4はアリール基又は置換アリール基であり、その1つ以上の置換基は同一又は異なり、アルキル、アリール、ハロゲン原子、ハロゲン化アリール、及びハロアルキルアリール基から成る群より選択され、好ましくは全ハロゲン化アリール基、さらに好ましくは全フッ素化アリール基、さらに好ましくはペンタフルオロフェニル、ヘプタフルオロナフチル又はペルフルオロビフェニルである)。
【0039】
さらに好ましくは、本発明のいずれかの重合方法で用いる活性剤はトリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N-メチルピロリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ヘプタフルオロナフチル)ボラート、又はN-メチルピロリジニウムテトラキス(ヘプタフルオロナフチル)ボラートである。メタロセンは、好ましくはrac-ジメチルシリルビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド若しくはrac-ジメチルシリルビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、rac-ジメチルシリルビス(インデニル)ハフニウムジクロリド若しくはrac-ジメチルシリルビス(インデニル)ハフニウムジメチル、rac-エチレニルビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド若しくはrac-エチレニルビス(インデニル)ジルコニウムジメチル又はrac-エチレニルビス(インデニル)ハフニウムジクロリド若しくはrac-エチレニルビス(インデニル)ハフニウムジメチルである。
別の実施形態では、好ましい遷移金属化合物は下記式によって表されるビスインデニル化合物を含む。
【0041】
式中、Mは第4族金属、好ましくはハフニウムであり、Tは架橋基(アルキレン(メチレン、エチレン)又は二置換シリル基若しくはゲルミル基(ジメチルシリル等))であり、nは0又は1であり、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、水素、ヘテロ原子、置換ヘテロ原子基、置換若しくは無置換アルキル基、及び置換若しくは無置換アリール基(好ましくは置換若しくは無置換アルキル基又は置換若しくは無置換アリール基)である。好ましい実施形態では、R
2が水素である。別の好ましい実施形態では、R
2及びR
4が水素である。別の好ましい実施形態では、R
2が水素であり、かつR
4がC
1〜C
20アルキル(好ましくはメチル)又はアリール基(置換若しくは無置換フェニル等)である。別の好ましい実施形態では、R
2及びR
4がメチルである。別の実施形態では、R
2及びR
4がメチルでない。別の実施形態では、R
2がメチルでない。別の好ましい実施形態では、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7が水素であり、かつR
2が置換若しくは無置換アルキル又は置換若しくは無置換アリール(好ましくはメチル)である。別の好ましい実施形態では、R
2、R
3、R
5、R
6、及びR
7が水素であり、R
4が置換若しくは無置換アルキル又は置換若しくは無置換アリール(好ましくはメチル又はフェニル)である。
先行パラグラフで述べた好ましいメタロセン化合物、活性剤の好ましいカチオン成分及び活性剤の好ましいアニオン成分のいずれの組合せからも生じるいずれの触媒系も明示的に開示されるものとし、1種以上のオレフィンモノマーの重合で本発明に従って使用し得る。また、2つの異なる活性剤の組合せを同一又は異なるメタロセンと共に使用することができる。
【0042】
(捕捉剤又は追加の活性剤)
本発明の全ての態様に好適な触媒系は、上記遷移金属化合物及び活性剤に加えて、以下に説明するように、追加の(追加の活性剤又は捕捉剤)を含有し得る。
補助活性剤(co-activator)は、活性剤と併用すると、活性触媒が形成されるように、遷移金属錯体をアルキル化することができる化合物である。補助活性剤としては、後述するアルモキサン及びアルミニウムアルキルが挙げら、さらに以下に列挙する。アルモキサンは、好ましくは、環状化合物である一般式(R
x-Al-O)
n、又は直鎖状化合物である一般式R
x(R
x-Al-O)
nAlR
x2で表されるオリゴマーアルミニウム化合物である。最も一般的なアルモキサンは、環状化合物と直鎖状化合物の混合物である。アルモキサンの一般式中、R
xは、独立にC
1-C
20アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、その異性体などであり、「n」は1〜50の整数である。さらに好ましくは、R
xはメチルであり、「n」は少なくとも4である。本明細書では、メチルアルモキサン(MAO)並びに溶解性を改善するためいくつかのより高次のアルキル基を含有する改変MAO(本明細書ではMMAOと称する)、エチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン等が有用である。特に有用なMAOは、トルエン中10wt.%溶液でAlbemarleから購入可能である。補助活性剤は、典型的に、プレ触媒がジヒドロカルビル錯体又はジヒドリド錯体でないときはルイス酸活性剤及びイオン活性剤と併用してのみ使用される。
本発明のいくつかの実施形態では、捕捉剤を用いて、そうでなければ触媒と反応して触媒を不活化するであろういずれの毒物の反応をも「浄化」し得る。捕捉剤として有用な典型的なアルミニウムアルキル成分又はホウ素アルキル成分は、一般式R
xJZ
2で表される。式中、Jはアルミニウム又はホウ素であり、R
xはC
1-C
20アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びその異性体であり、各Zは、独立にR
x又は異なる一価アニオン配位子、例えばハロゲン(Cl、Br、I)、アルコキシド(OR
x)等である。さらに好ましいアルミニウムアルキルとしては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、トリ-イソ-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム及びその組合せが挙げられる。好ましいホウ素アルキルにはトリエチルホウ素がある。捕捉化合物はアルモキサン及び改変アルモキサン(メチルアルモキサンなど)及び改変メチルアルモキサンであってもよい。
【0043】
(触媒系の調製方法)
本発明の触媒系は技術上周知の方法により調製可能である。上記定義どおりの式(1)又は(2)の活性剤のカチオンを得るため、例えばアンモニウムカチオンを、アミンと酸の反応(この反応では、酸の共役塩基が対アニオンとして残るか又は他のアニオンと交換される)によって合成できる塩として供給することができる。“Organic Chemistry,” Pine et al.、4
th edition、McGraw-Hill、1980を参照されたい。有用な合成は、例えばわずかに過剰のHCl(Et
2O溶液として)とヘキサン中のアミンとの反応の結果、中間体としてアミン塩酸塩が沈殿する。この塩酸塩をアニオン交換によって本発明の適切なNCAに置き換えることができる。参考文献(Chemische Berichte, 1955, Vol. 88, p. 962)、又は米国特許第5,153,157号及びその中の参考文献を参照されたい。ホスフィン及びエーテルは同様に酸でプロトン化され、所望のホスホニウム塩へのアニオン交換反応を受け得る。例えば、独国特許DE 2116439を参照されたい。
触媒系は、支持体材料又は担体を含んでもよい。一般的に支持体は多孔性材料、例えば、タルク、又は無機酸化物である。他の適切な支持体材料としては、ゼオライト、粘土、及び有機粘土が挙げられる。
好ましい支持体材料は無機酸化物であり、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族又は第14族の金属酸化物が挙げられる。好ましい支持体としては、脱水されていてもいなくてもよいシリカ、ヒュームドシリカ、アルミナ(WO 99/60033)、シリカ-アルミナ及びその混合物が挙げられる。他の有用な支持体としては、マグネシア、チタニア、ジルコニア、モンモリロナイト(欧州特許EP-B1 0 511 665)、フィロシリケート、ゼオライト、タルク、粘土(米国特許第6,034,187号)などが挙げられる。また、これらの支持体材料の組合せ、例えば、シリカ-クロム、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア等を使用し得る。
支持体材料は、約10〜約700m
2/gの範囲の表面積、約0.1〜約4.0cc/gの範囲の細孔容積及び約5〜約500μmの範囲の平均粒径を有するのが好ましい。さらに好ましくは、支持体材料の表面積は約50〜約500m
2/gの範囲であり、細孔容積は約0.5〜約3.5cc/gであり、平均粒径は約10〜約200μmである。さらに好ましくは、支持体材料の表面積は約100〜約400m
2/gの範囲であり、細孔容積は約0.8〜約3.0cc/gであり、平均粒径は約5〜約100μmである。本発明で有用な担体の平均細孔サイズは典型的に10〜1000Å、好ましくは50〜約500Å、さらに好ましくは75〜約350Åの範囲の細孔サイズを有する。
【0044】
(重合方法)
いずれの既知の重合方法を用いて本発明のコポリマーを製造してもよい。重合方法には、高圧法、スラリー法、ガス法、バルク法、懸濁液法、超臨界法、液相法、及びその組合せがある。触媒は、均一溶液の形態、担持された形態、又はその組合せの形態であってよい。重合は連続、半連続又はバッチ法で行ってよく、連鎖移動剤、捕捉剤、又は適用可能と考えられる他の添加剤の使用を含み得る。連続法とは、反応器系に連続的に反応物質を添加し、反応器系から連続的に反応物質及び生成物を回収する方法を意味する。連続法は、定常状態で操作することができる。すなわち、流速、温度/圧力及び供給組成が不変のままであれば、流出物の組成は経時的に固定されたままである。例えばポリマーを製造するための連続法は、反応物質を連続的に1つ以上の反応器に導入し、ポリマー生成物を連続的に回収する方法である。
本明細書に記載の触媒系は、均一溶液法で有利に使用可能である。一般的にこの方法は連続反応器内での重合を含み、反応器内では、形成されたポリマーと、供給された出発モノマー及び触媒材料を撹拌して濃度勾配を低減又は回避する。高圧でポリマーの曇点以上で作動する有用な方法もある。反応環境には、モノマーが希釈剤又は溶媒として作用する場合並びに液体炭化水素を希釈剤又は溶媒として使用する場合がある。好ましい炭化水素液体としては、脂肪族と芳香族の両流体、例えば、脱硫軽質バージンナフサ及びアルカン、例えばプロパン、イソブテン、混合ブタン、ヘキサン、ペンタン、イソペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、及びオクタンが挙げられる。
【0045】
反応器内の温度コントロールは、典型的に反応器の中身を冷却するための反応器ジャケット又は冷却コイルによる反応器冷却、自動冷蔵、予冷供給原料、液体媒体(希釈剤、モノマー又は溶媒)の気化又は3つ全ての組合せを用いて重合熱のバランスを取ることによって得られる。予冷供給原料を含む断熱性反応器を使用してもよい。反応器温度は、使用する触媒によっても左右される。一般に、反応器温度は約30℃〜約250℃、好ましくは約60℃〜約200℃の範囲である。圧力は一般的に大気圧から約300MPa、約200MPa又は約100MPa等の高圧までの範囲である。約50、約40、約30、約20又は約15MPaまでのより低い圧力も適している。可能な圧力範囲の下端は、約0.1MPaから何でも、例えば0.5MPa、約1MPa又は約2.0MPa等のあってよい。少なくとも1つの具体的実施形態では、反応器圧が600ポンド/平方インチ(psi)(4.14MPa)未満、500psi(3.45MPa)未満又は400psi(2.76MPa)未満、又は300psi(2.1MPa)未満、例えばほぼ大気圧〜約400psi(2.76MPa)である。別の実施形態では、反応器圧が約400psi(2.76MPa)〜約4000psi(27.6MPa)、又は約1000psi(6.9MPa)〜2000psi(13.8MPa)、又は約1200psi(8.27MPa)〜1800psi(12.4MPa)である。
反応器内のモノマー濃度(全反応混合物に基づいた)は、非常に希薄から約2モル/Lまで、約5モル/Lまで、約10モル/Lまで、又は約15モル/Lのようなさらに高い範囲であってよい。
【0046】
(コポリマーの使用)
本明細書に記載のエチレンベースコポリマーは、単独でも他の材料と組み合わせてもフィルム、繊維及び不織布のような物品、押出品及び成形品で用いるのに適している。フィルムの例としては、食品と接触する用途及び食品と接触しない用途においてシュリンクフィルム、クリング(cling)フィルム、ストレッチフィルム、シーリングフィルム、配向フィルム、スナック包装材料、頑丈なバッグ、買い物袋、焼いた食品及び冷凍食品の包装材料、医薬品包装材料、工業用ライナー、膜などとして有用な共押出又はラミネーションによって形成されるインフレーションフィルム又はキャストフィルムが挙げられる。繊維の例としては、限定するものではないが、フィルター、布製おむつ、衛生用品、医療用衣類、ジオテキスタイル等を製造するための織った形又は不織形で用いるスパンボンド繊維及びメルトブローン繊維が挙げられる。押出品及び成形品の例としては、管類、医療用管類、又はワイヤー及びケーブルのコーティングが挙げられる。
本コポリマーから製造可能及び/又は本コポリマーを組み込める他の望ましい物品には、自動車部品及びスポーツ用品がある。さらに詳細には、自動車部品として、例えばバンパー、グリル、装備品、ダッシュボード及び機器パネル、外側ドア及びボンネット部品、スポイラー、フロントガラス、ハブキャップ、ミラーハウジング、車体パネル、保護サイドモールディング、並びに自動車、トラック、船、及び他の乗り物に関連する他の内装及び外装部品が挙げられる。
いずれの押出又は成形技術によっても形成可能な他の物品は、医療用の液体貯蔵容器、例えば血液若しくは溶液の貯蔵及びIV注入用のバッグ、パウチ、及びボトル;照射によって保存される食品のラッピング又は容器、他の医療用デバイス、例えば注入キット、カテーテル、呼吸療法用デバイス、並びにγ線又は紫外線によって照射され得る医療用デバイス及び食品用の包装材料、例えばトレー、並びに貯蔵液体、特に水、牛乳、又はジュースの単位分量を含む容器及び大量貯蔵容器を包含又は組み入れる。
【0047】
本明細書に記載の特に低エチレン含量のエチレンベースコポリマーは、レオロジー改質剤、特に、潤滑油組成物の増粘剤としても有用である。本コポリマーと共に使用可能な潤滑基油の例としては、鉱物油及び合成油、例えばポリ-α-オレフィン、ポリオールエステル、及びポリアルキレングリコールが挙げられる。好ましくは鉱物油又は鉱物油と合成油のブレンドを利用する。鉱物油は一般的に脱ろう等の精製後に用いられる。鉱物油は精製方法に応じていくつかの分類に分けられるが、適切な鉱物油は通常約0.5wt.%〜約10wt.%のろう含量を有する。さらに、10〜200cStの動粘性率を有する鉱物油が一般的に使用される。
適切な基油には、自動車及びトラックのエンジン、船舶及び鉄道のディーゼルエンジン等のような火花点火内燃機関及び圧縮点火内燃機関用のクランクケース潤滑油として従来利用されているものがある。動力伝達流体、例えばオートマチック・トランスミッション液、トラクター液、ユニバーサルトラクター液及び油圧油、大型車両用油圧油、パワー・ステアリング液などで従来利用され及び/又はこれらとして使うために適合した基油中でエチレンベースコポリマーを利用することによっても有利な結果が達成される。ギア潤滑油、工業潤滑油、ポンプ油及び他の潤滑油組成物も本エチレンベースコポリマーの組み込みから利益を得ることができる。
適切な基油は、石油由来の炭化水素油のみならず、二塩基酸のエステル、一塩基酸、ポリグリコール、二塩基酸及びアルコールのエステル化によって作られる複合エスエル、ポリオレフィン油などの合成潤滑油をも包含する。従って、エチレンベースコポリマーは、ジカルボン酸、ポリグリコール及びアルコールのアルキルエステル、ポリα-オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、ポリシリコーン油などの合成基油に適切に組み込まれる。
上記油組成物は、任意に他の通常の添加剤、例えば、流動点降下剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、他の粘度指数向上剤、分散剤、腐食防止剤、消泡剤、洗浄剤、さび止め剤、摩擦調整剤などを含有し得る。
【0048】
一般に、潤滑油組成物にその粘度を高めるために添加される本発明のエチレンベースコポリマーの量は、前記潤滑油組成物の約0.01wt.%〜約10wt.%、例えば約0.2wt.%〜約5wt.%である。
本エチレンベースコポリマーは、通常のポリマー成分、例えば、エチレンホモポリマー若しくはコポリマー、又はプロピレンホモポリマー若しくはコポリマー用のブレンディング成分として、また熱可塑性加硫物(「TPV」)においても有用である。さらに、該エチレンベースコポリマーは、成形品、押出品、フィルム、例えばインフレーションフィルム等、織布、不織布、接着剤、及び通常のエラストマー用途で添加剤又は主成分として役に立ち得る。
特に溶液重合で製造すると、本コポリマーは、約0.5〜約10g/10分(230℃及び2.16kgで測定した)の範囲のメルトフローレート(MFR)を有する自由流動性ペレットを与えるであろう。当然のことながら、該ペレットは、結晶化度を持たないか又は仕上げ装置の作動温度(約30℃)未満の融点を有するポリマーに比べて、ダスターへの経路の加工装置に、またダスター自体の中、及びダスターからベーラーへの搬送装置内で一緒に結合及び凝集する傾向が少ないであろう。さらに、非晶質であるか又は仕上げ装置の作動温度(約30℃)未満の融点を有する2g/10分以上のMFRを有する通常のポリマーは、構造的完全性を持たず、典型的にベール(bale)に梱包される。本コポリマーはバッグに梱包することができ、より効率的かつ経済的である。
【0049】
ここで、実施例及び添付図面を参照してさらに詳細に本発明を説明する。
実施例では、溶媒の屈折率と分留ポリマーを含有する溶媒の屈折率との差を測定するWaters示差屈折計を備えたWaters Alliance 2000ゲル浸透クロマトグラフを利用してGPCによって重量平均分子量及び数平均分子量を測定した。移動相として約250ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)で安定化した1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)を用いて145℃でシステムを用いた。用いた流速は1.0 mL/分であった。3つの(Polymer Laboratories) PLgel Mixed-Bカラムを使用した。この技術は、"Macromolecules,” Vol. 34, No. 19, pp. 6812-6820、及び“Macromolecules,” Vol. 37, No. 11, pp. 4304-4312で論じられており、両内容を参照によってここに援用する。
カラムセットの分離効率を、サンプルの予想分子量範囲及びカラムセットの排除限界を反映する一連の狭分子量分布のポリスチレン標準物質を用いて較正した。Mpが約580〜10,000,000の範囲の少なくとも10種の個々のポリスチレン標準物質を用いて較正曲線を作成した。Polymer Laboratories(Amherst, MA)又は同等の供給源からポリスチレン標準物質を得た。内部一貫性を保証するため、各較正物実験について、各ポリスチレン標準物質の保持容量を決定する前に、流速を補正して、流速マーカー(ポジティブインジェクトピークであると解釈される)に合った一般的ピーク位置を与えた。このようにして割り当てた流速マーカーピーク位置を用いて、サンプルを分析するときにも流速を補正したので、それは較正手順の不可欠な部分である。各PS標準物質について、DRIシグナルのピークにおける保持容量を記録し、このデータセットを二次多項式に当てはめることによって較正曲線(log Mp対保持容量)を作成した。Viscotec 3.0ソフトウェアを用いてポリスチレン標準物質についてグラフを描いた。WaveMetrics, Inc. IGOR Pro及びViscotec 3.0ソフトウェアを利用し、最新の較正定数を用いてサンプルを解析した。
【0050】
ASTM D3418-03に準拠する以下の手順を用いてピーク融点(Tm)及びピーク結晶化温度(Tc)、ガラス転移温度(Tg)、並びに融解熱(ΔH)を決定した。Perkin Elmer Pyris 1機械を用いて示差走査熱量分析(DSC)データを得た。アルミニウムの気密性サンプルパン内で約5〜10mgの重さのサンプルを密封した。最初に10℃/分の速度でサンプルを徐々に200℃に加熱することによってDSCデータを記録した。サンプルを200℃で5分間維持してから10℃/分の速度で-100℃に冷却した後、2回目の冷却-加熱サイクルを適用した。1回目と2回目の両サイクル熱事象を記録した。2回目の融解曲線の吸熱ピーク下の面積を測定し、これを用いて融解熱を決定した。ここに報告してある融解温度及び結晶化温度は、2回目の加熱/冷却サイクル中に得られた。
下記技術に従うFTIRを利用してエチレン/プロピレンコポリマーのエチレン含量を決定した。約150℃の温度でプレスした、ポリマーの薄い均一フィルムをPerkin Elmer Spectrum 2000赤外線分光光度計にマウントした。サンプルの600cm
-1〜4000cm
-1のフルスペクトルを記録し、スペクトルの約1165cm
-1におけるプロピレンバンド下の面積及び約732cm
-1におけるエチレンバンド下の面積を計算した。メチレン揺れバンドのベースライン積分範囲は、名目上695cm
-1から745と775cm
-1の間の最小値までである。ポリプロピレンバンドでは、ベースライン及び積分範囲は名目上1195〜1126cm
-1である。下記方程式に従ってエチレン含量(wt.%)を計算した。
エチレン含量(wt.%)=72.698−86.495X+13.696X
2
式中、X=AR/(AR+1)かつARは約1165cm
-1のピークの面積対約732cm
-1のピークの面積の比である。
【0051】
(追加の具体的実施形態)
以下の追加の実施形態をも提供する。
A. 40wt.%〜70wt.%のエチレン由来の単位と、少なくとも30wt.%の、3〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種のα-オレフィン由来の単位とを含むエチレンコポリマーであって、以下の特性:
(a)50,000〜200,000g/モルの範囲の、GPCで測定した重量平均分子量(Mw);
(b)下記関係を満たす、DSCで測定した融点(Tm)(℃):
Tm>3.4×E−180
(Eは、コポリマー中のエチレン由来の単位の重量%である);
(c)1.8〜2.5のMw/Mnの比;
(d)5ppm以下の第4族金属含量;及び
(e)少なくとも3の第4族金属(wt ppm)/第5族金属(wt ppm)の比
を有するコポリマー。
B. 40wt.%〜55wt.%のエチレン由来の単位を含む、実施形態Aのコポリマー。
C. 60wt.%〜45wt.%の、3〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種のα-オレフィン由来の単位を含む、実施形態Bのコポリマー。
D. 下記関係:
Tm>3.4×E−170、
好ましくはTm>3.4×E−160、
さらに好ましくはTm>3.4×E−90
(Eは、コポリマー中のエチレン由来の単位の重量%である)
を満たす、DSCで測定した融点(Tm)(℃)を有する、いずれかの先行する実施形態のコポリマー。
【0052】
E. 70wt.%〜85wt.%のエチレン由来の単位と、少なくとも12wt.%の、3〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種のα-オレフィン由来の単位とを含むエチレンコポリマーであって、以下の特性:
(a)50,000〜200,000g/モルの範囲の、GPCで測定した重量平均分子量(Mw);
(b)少なくとも100℃の、DSCで測定した融点(Tm)(℃):
(c)1.8〜2.5のMw/Mnの比;
(d)5ppm以下の第4族金属含量;及び
(e)少なくとも3の第4族金属(wt ppm)/第5族金属(wt ppm)の比
を有するコポリマー。
F. 少なくとも110℃の、DSCで測定した融点(Tm)を有する、実施形態Eのコポリマー。
G. 前記少なくとも1種のα-オレフィンが、プロピレン、ブテン、ヘキセン及びオクテンから選択され、好ましくはプロピレンを含む、いずれかの先行する実施形態のコポリマー。
H. 25ppm以下のZnを含有する、いずれかの先行する実施形態のコポリマー。
I. 実施形態A〜D、G及びHのいずれか1つのコポリマーの製造方法であって、40wt.%〜70wt.%のエチレンと、少なくとも30wt.%の、3〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種のα-オレフィンとを含むモノマー混合物を、重合条件下で、遷移金属の架橋ビス-インデニル錯体を含む触媒組成物と接触させる工程を含む方法。
J. E〜Hのいずれか1つのコポリマーの製造方法であって、70wt.%〜85wt.%のエチレンと、少なくとも12wt.%の、3〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種のα-オレフィンとを含むモノマー混合物を、重合条件下で、遷移金属の架橋ビス-インデニル錯体を含む触媒組成物と接触させる工程を含む方法。
K. 遷移金属がハフニウム及び/又はジルコニウムを含む、実施形態I又は実施形態Jの方法。
L. 架橋ビス-インデニル錯体がジアルキルシリル架橋基を含み、好ましくはジメチルシリルビスインデニルハフニウムジメチルを含む、実施形態I〜Kのいずれか1つの方法。
M. 触媒組成物がフルオロアリールボラート活性剤を含み、好ましくはペルフルオロフェニルボラート活性剤を含む、実施形態I〜Lのいずれか1つの方法。
N. 触媒組成物がrac-ジメチルシリルビスインデニルハフニウムジメチル及びトリメチルアンモニウムテトラキス-ペンタフルオロフェニルボラート活性剤を含む、実施形態I〜Mのいずれか1つの方法。
O. (a)潤滑油ベース及び(b)実施形態A〜Dのいずれか1つのエチレンコポリマーを含む潤滑油組成物。
【実施例】
【0053】
(実施例1〜3)
1つの連続撹拌タンク反応器内で実施例1及び2のポリマー組成物を合成した。溶媒としてイソヘキサンを用いて溶液中で重合を行った。反応器内で、全圧290psi(2MPa)にて重合を行った。エチレンとプロピレンの供給速度、及び反応器温度を下表1に示す。
触媒は、反応器に供給したトルエン溶液中のトリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(活性剤)で予め活性化されたrac-ジメチルシリルビス(インデニル)ハフニウムジメチル(メタロセン)であった。メタロセン対活性剤のモル比は、約1:1.03であった。トルエン中のメタロセンの濃度は1.74*10
-4モル/リットルであり、活性剤濃度は1.68*10
-4モル/リットルであった。触媒溶液の供給速度は下表1に示してある。トリn-オクチルアルミニウム(TNOA)をイソヘキサンに25wt%で溶かし、捕捉剤として反応器に供給した。捕捉剤溶液の供給速度は下表1に示してある。
この方法では、温度コントロールを利用して所望の分子量を達成した。反応器から出てくるコポリマー溶液に水を添加してさらなる重合を停止させてから、フラッシング又は液相分離などの従来既知の揮発分除去法を利用して、まずイソヘキサンの大半を除去して濃縮溶液としてから、揮発分除去装置又は二軸揮発分除去押出機を用いて、溶融ポリマー組成物が含有する溶媒と他の揮発分が0.5wt.%未満になるように、無水条件で残りの溶媒を放散させることによって揮発分を除去した。溶融ポリマーが固体になるまで冷却した。
【0054】
表1
【0055】
結果としてのコポリマーの特性を下表2及び
図1に要約する。表2及び
図1は、米国特許第6,589,920号(‘920特許’)の実施例6〜8に従って作製されたコポリマーの特性をも示す。
【0056】
表2
【0057】
本発明の実施例1〜3のコポリマーは、‘920特許に従って作製されたポリマーより実質的に高い、約60℃高い融点を有することが分かり、本ポリマーが‘920特許のポリマーと構造的に異なることを示唆している。
(実施例4〜6)
実施例4〜6で用いた重合手順は、下表3に要約する反応パラメーターを除き、実施例1に記載の手順と同一であった。
【0058】
表3
【0059】
結果としてのコポリマーの特性を下表4及び
図1に要約する。
表4
*2回目の測定は14.5g/10分であった
【0060】
(実施例7〜11)
実施例7〜11で用いた重合手順は、下表5に要約する反応パラメーターを除き、実施例1に記載の手順と同一であった。結果としてのコポリマーの特性を下表6及び
図1に要約する。
【0061】
表5
【0062】
表6
【0063】
本発明を特定の実施形態を参照して記載かつ説明したが、当業者は、必ずも本明細書で説明しなかった変形に本発明が役立つことを認めるであろう。従って、こういう訳で、本発明の真の範囲を決定するという目的のためには、添付の特許請求の範囲をもっぱら参照すべきである。