特許第6560187号(P6560187)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6560187携帯型薬剤混合及び送達システム並びに方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560187
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】携帯型薬剤混合及び送達システム並びに方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   A61M5/20 560
   A61M5/20 570
【請求項の数】15
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-502592(P2016-502592)
(86)(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公表番号】特表2016-512148(P2016-512148A)
(43)【公表日】2016年4月25日
(86)【国際出願番号】US2014030938
(87)【国際公開番号】WO2014146060
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年3月17日
(31)【優先権主張番号】61/800,014
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/917,943
(32)【優先日】2013年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515255803
【氏名又は名称】ウインドギャップ メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102185
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 繁範
(72)【発明者】
【氏名】ブチン ブレント
(72)【発明者】
【氏名】ステパニアン クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】スタンドレー アダム
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表昭62−502876(JP,A)
【文献】 特表2012−502758(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/177948(WO,A2)
【文献】 国際公開第2012/090168(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0265171(US,A1)
【文献】 特表2012−502764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
第1チャンバと、
第2チャンバであって、前記第1チャンバ及び第2チャンバは前記ハウジング内に位置して、前記第1チャンバは前記第2チャンバから構造的に独立しており、前記第1チャンバが湿潤コンポーネントを保管するように構成されている、第2チャンバと、
前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に配置される移動体であって、前記移動体は、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に配置される流体チャネルを含む、移動体と、
前記移動体に機械的に連結されている第1作動装置であって、前記第1作動装置は、前記第1チャンバ及び前記第2チャンバのそれぞれの有効な容積部を選択的に増減させるように前記移動体の一部を機械的に移動させるように構成され、前記第1作動装置はまた、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に流体チャネルを通る流体連通をもたらし、前記第1作動装置は、前記流体チャネルを通って前記第1チャンバから前記第2チャンバへと前記湿潤コンポーネントの一部を押し込むように構成されている、第1作動装置と、を備え、
前記第1チャンバおよび前記第2チャンバは分離した異なる側壁を有する、
薬剤混合システム。
【請求項2】
前記第2チャンバが第2湿潤コンポーネントを保管するように構成されている、請求項1に記載の薬剤混合システム。
【請求項3】
前記流体チャネルが前記移動体内に配置される、請求項1に記載の薬剤混合システム。
【請求項4】
前記流体チャネルと接触する乾燥薬剤を更に備え、
前記第1作動装置によって生じた前記流体連通が、前記第1の構造的に独立したチャンバ内に最初に含まれる湿潤コンポーネント及び乾燥薬剤コンポーネントを混合させる、請求項1に記載の薬剤混合システム。
【請求項5】
前記第2チャンバと流体連通する針アセンブリを更に備える、請求項1に記載の薬剤混合システム。
【請求項6】
第2作動装置は、混合された湿潤及び乾燥薬剤コンポーネントに前記第2チャンバから針アセンブリを通過させるように構成される、請求項4に記載の薬剤混合システム。
【請求項7】
前記第1チャンバの外側で前記ハウジング内に設けられる乾燥薬剤を更に備え、前記湿潤コンポーネントは、前記乾燥薬剤を溶解させるように前記第1作動装置の作動にあたり前記乾燥薬剤と混合するように構成される、請求項1に記載の薬剤混合システム。
【請求項8】
第1チャンバ及び第2チャンバを備えるハウジングであって、前記第1チャンバおよび第2チャンバは互いから構造的に独立しており、前記第1チャンバが湿潤コンポーネントを保管するように構成されている、ハウジングと、
前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に配置される移動体であって、前記移動体は、
前記第1チャンバと第2チャンバとの間の流体連通を可能にするように構成される流体チャネルであって、当初は乾燥薬剤が前記流体チャネルと直接接触している、流体チャネルと、
前記移動体の一部により前記第1チャンバの有効な容積部を減少させるように構成されている第1作動装置であって、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に流体チャネルを通る流体連通をもたらし、したがって、前記流体チャネルを通って前記第1チャンバから前記第2チャンバへと前記湿潤コンポーネントの一部を押し込むように構成されている、第1作動装置と、
を更に備える移動体と、
少なくとも部分的に前記ハウジング内に配置される送達アセンブリと、
第2作動装置であって、起動時に前記移動体を前記第2チャンバの一部に入らせ、前記第2チャンバと前記送達アセンブリとの間に流体連通をもたらし、混合された湿潤コンポーネント及び乾燥薬剤に前記送達アセンブリを通過させる、第2作動装置と、
を備える、薬剤混合及び送達システム。
【請求項9】
安全装置が準備完了位置にあるとき、前記第2作動装置を作動できるように構成されている前記安全装置を更に備える、請求項8に記載の薬剤混合及び送達システム。
【請求項10】
前記第1作動装置が予荷重バネからなる、請求項8に記載の薬剤混合及び送達システム。
【請求項11】
前記流体チャネルが前記流体チャネルの側壁の一部に形成される複数の溝を更に備える、請求項1に記載の薬剤混合システム。
【請求項12】
ハウジングと、
第1チャンバと、
第2チャンバであって、前記第1チャンバ及び第2チャンバは前記ハウジング内に設けられて、前記第1チャンバが湿潤コンポーネントを保管するように構成されている、第2チャンバと、
前記第1チャンバと第2チャンバとの間に配置される移動体であって、2つの対向する方向に移動するように構成されている、移動体と、
前記移動体に機械的に連結されている作動装置であって、前記移動体の一部を前記第1チャンバの一部に入らせるように当初は機械的に移動し、それによって前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に流体チャネルを通る流体連通をもたらし、したがって、前記湿潤コンポーネントの一部を前記第1チャンバから前記第2チャンバへと押し込むように構成されている、作動装置と、を備え、
前記第1チャンバおよび前記第2チャンバは分離した異なる側壁を有し、
前記移動体は、前記第2チャンバの一部を入らせるように、そして前記第2チャンバの有効な容積部を減少させるように、前記移動体の一部を移動させるように構成されている、
薬剤混合システム。
【請求項13】
ハウジングと、
第1チャンバと、
第2チャンバであって、前記第1チャンバ及び前記第2チャンバは前記ハウジング内に設けられて、前記第1チャンバが湿潤コンポーネントを保管するように構成されている、第2チャンバと、
前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に配置される移動体であって、前記移動体は2つの対向する方向に移動するように構成され、前記第1チャンバ及び第2チャンバのそれぞれの側壁を半径方向に超えて延びる円周リップ部を備える、移動体と、
前記移動体の一部を前記第1チャンバの一部に入らせるように当初は機械的に移動し、それによって前記第1チャンバと第2チャンバとの間に流体チャネルを通る流体連通をもたらし、したがって、前記湿潤コンポーネントの一部を前記第1チャンバから前記第2チャンバへと押し込むように構成されている、作動装置と、
前記第2チャンバから下流に配置される針アセンブリであって、前記作動装置の第2作動が、前記移動体を対向方向に移動させ、前記第2チャンバ内に配置される流体を前記針アセンブリに押し込む、針アセンブリと、を備え、
前記第1チャンバおよび前記第2チャンバは分離した異なる側壁を有する、
薬剤混合及び注入システム。
【請求項14】
前記移動体は、前記第1チャンバを前記第2チャンバから分離する、請求項1に記載の薬剤混合システム。
【請求項15】
前記移動体は、第1の方向及び第2の方向に移動するように構成されている、請求項1に記載の薬剤混合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、参照することにより本明細書に組み込まれる、2013年3月15日出願の米国特許出願第61/800,014号及び2013年12月19日出願の同第61/917,943号の利益を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概してオートインジェクタ及びプレフィルド注射器に関し、より具体的には、収縮状態で保管され、薬剤の生成又は再構成を可能にする、オートインジェクタに関する。
【背景技術】
【0003】
特定の病状に苦しむ個人は、多くの場合、医学的必要性に対応するために、オートインジェクタ又はプレフィルド注射器を手元に置く必要がある。このような数例としては、糖尿病患者用のインシュリンペン、食品及び虫刺されアレルギー患者用のエピペン、及び戦場で化学的及び/又は生物学的毒素に曝される恐れがある兵士用の解毒剤が挙げられる。例えば、最寄りの病院又は医療施設から物理的に離れた場所でアレルギー反応が生じる場合がある。例えば、ハチ刺されは、屋内よりも屋外で生じる可能性が高い。ピーナッツ含有食品は、野球場など、管理された自宅環境から離れた場所で個人に提供される可能性が高い。携帯型エピネフリンオートインジェクタを手元に有することにより、アレルゲンへの曝露後の緊急介入が可能になる。
【0004】
オートインジェクタについては、サイズが問題となる。多数の装置所有者はこれらを持ち運ばない。小型装置は、持ち運ばれる可能性が高くなるであろう。一般的なエピネフリンオートインジェクタケースのサイズは約15cm×3.8cm×2.5cm(約6インチ×1.5インチ×1インチ)であり、財布、及び/又はバックパック、及び/又は他の入れ物など第2の運搬装置なしで持ち運ぶことは困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
薬剤を液相から遠ざけ、乾燥薬剤として保管できれば、保存期間、感温性が増加して、薬剤の有効性及び効力を増加させて、より長く、より過酷な環境に耐え得るようになってよいことが認識されている。
【0006】
キーホルダーに取り付けることができる、及び/又は個人のポケットにすっぽり入ることができる、従来のエピネフリンオートインジェクタよりも小型の薬剤送達装置は、持ち運びやすく、必要時にユーザが身に付けている可能性が高くなることが認識されている。純粋に比較のために挙げられるかかる装置パッケージの例は、極めて日常的にユーザに持ち運ばれるように設計される、USB「サムドライブ」と同様のサイズであってよい。例えば、オートインジェクタ装置の実施形態は、8cm×2.5cm×1.3cm(3インチ×1インチ×0.5インチ)の寸法を有する。しかしながら、オートインジェクタ装置の寸法はさまざまであってよい。
【0007】
携帯型オートインジェクタは、オートインジェクタが伸長している、及び/又はより大きくなっている、及び/又はより長くなっている、及び/又は何らかの方法で取り扱い易くなっている起動状態のときよりも、オートインジェクタが持ち運びやすい形状にある収縮状態から移動できる。いくつかの実施形態では、安全装置が針アセンブリの動きを制限し、時期尚早の針刺しを防止する。薬剤は、必要となるまで1つ以上の乾燥及び/又は湿潤薬剤状態で保管される。
【0008】
薬剤混合システムの実施形態では、システムは、第1及び第2チャンバと流体連通する移動体を有する。第1チャンバは、湿潤コンポーネントを保管するように構成される。このシステムは、第1作動プロセス中に移動体を第1チャンバの一部に入れ、第2作動プロセス中に第2チャンバの一部に入れるように構成されている作動装置を有する。移動体が第1チャンバに入ると、湿潤コンポーネントに流体チャネルを通過させて、第2チャンバに押し込む。第1チャンバと流体チャネルとの流体連通は、一方向弁、破裂膜、オリフィス、又は他の機構及び開口部によって可能になってよい。
【0009】
例えば、第1チャンバの一部に入る移動体の力は、流体連通を生じさせる(一方向弁を開放するなど)のに十分であり、第1チャンバに保管されている湿潤コンポーネントを、乾燥薬剤が保管されている流体チャネルに流れ込ませ、乾燥薬剤を湿潤コンポーネントと混合させ、第2チャンバに流れ込ませることができる。第2動作では、移動体は第2チャンバ内へと移動し、混合された湿潤コンポーネント及び乾燥薬剤(湿潤薬剤となっている)を針又はノズル(無針システム)など送達アセンブリに、及び患者の体内に押し込む。(別の一方向弁の結果としての)流体チャネルと第2チャンバとの間での一方向の流体連通は、移動体が第2チャンバへと移動したときに、流体チャネルを通って湿潤薬剤が逆流しないようにしてよい。
【0010】
システムのある実施形態では、針アセンブリ及び第2チャンバは、ハウジングに対して一体的に可動である。ある実施形態では、第2作動装置は、針アセンブリの一部をハウジングから患者の体内へと押し出すことができ、湿潤薬剤は、針アセンブリを通って患者の組織、血管、及び/又は筋肉へと送達されてよい。
【0011】
薬剤混合システムのある実施形態では、移動体は、乾燥薬剤コンポーネントを保持するための混合容積部を有する。ある実施形態では、移動体は、第1チャンバから混合容積部へと流体を一方向に流れさせる弁を有する。ある実施形態では、移動体は、混合容積部から第2チャンバへと流体を一方向に流れさせる弁を有する。
【0012】
ある実施形態では、移動体は、必要に応じて、混合容積部と、第1チャンバ及び第2チャンバとの間での流体連通を可能にする、破裂弁を有する。
【0013】
薬剤混合システムのある実施形態では、移動体の容積部は、流体チャネルを含む。ある実施形態では、流体チャネルは混合を促進するように設計される。ある実施形態では、流体チャネルはマイクロ流体チャネルである。
【0014】
ある実施形態では、流体チャネルは、乾燥薬剤コンポーネントを運搬する及び/又は保管するための蛇行経路(tortious path)である。ある実施形態では、流体チャネルは、湿潤コンポーネントを乾燥薬剤と混合するための容積部を画定する。ある実施形態では、蛇行経路は、湿潤コンポーネントを乾燥薬剤と混合するためのカオス流を生じさせる。ある実施形態では、ミキサ本体及び/又はチャネルの一連の構造、壁、又は壁内の溝は、乾燥薬剤の混合を促進し、湿潤コンポーネントを乾燥薬剤と混合するための容積部を画定する。
【0015】
ある実施形態では、チャネルの寸法の少なくとも1つは、2mm未満である。ある実施形態では、流体チャネルのレイノルズ数は2300未満であり、層流を生じさせる。ある実施形態では、流体チャネル内の層流のレイノルズ数は100未満である。ある実施形態では、流体チャネルのレイノルズ数は10未満であり、場合によっては、乱流、つまりカオス流を生じさせる。ある実施形態では、流体チャネルのレイノルズ数は2300超である。ある実施形態では、混合アセンブリは、その内部に形成された複数の溝を更に含み、これらの溝は、湿潤コンポーネントが溝の付近で及び/又はそれに近接して流れるときに混合を促進する。ある実施形態では、混合アセンブリは、チャネル内に屈曲部を更に含み、これらの屈曲部は、湿潤コンポーネントが屈曲部の付近を流れるときに混合を促進する。ある実施形態では、混合アセンブリは、流路内に障害物を含み、該障害物は、湿潤コンポーネントが障害物付近を流れるときに混合を促進する。
【0016】
ある実施形態では、移動体は、湿潤コンポーネントと混合して湿潤薬剤を形成するのに先立って、乾燥薬剤コンポーネントを保持するための混合容積部を有する。ある実施形態では、移動体は、乾燥薬剤コンポーネントを受容するサイズの中空容積部を画定するサイズである。
【0017】
ある実施形態では、第2チャンバは、第2湿潤コンポーネントを有する。第1チャンバは、第2チャンバ内の第2湿潤コンポーネントと混合するのに先立って、移動体に配置された流体チャネルで乾燥薬剤と混合する第1湿潤コンポーネントを有する。
【0018】
ある実施形態では、第2作動装置は、予荷重力である。ある実施形態では、予荷重力は圧縮バネである。ある実施形態では、第2作動装置は、ユーザによって起動される。ある実施形態では、第2作動装置は、捩りバネである。ある実施形態では、第2作動装置は、捩りバネである。別の実施形態では、弾性装置は、作動装置として使用される。別の実施形態では、CO2カートリッジが使用される。別の実施形態では、電子的に制御される弁、及び化学的に駆動される作動装置、ガスボンベ、ソレノイド、電磁石、リニアモーターが使用される。
【0019】
薬剤送達システムのある実施形態では、このシステムは、ハウジングに対して可動である伸長コンポーネントを有し、ハウジングの有効長により大きい寸法を持たせる、ハウジングを有する。この伸長コンポーネントは、入れ子式コンポーネント、折り畳み式コンポーネント、又は再取り付け可能コンポーネントであってよい。ある実施形態では、伸長コンポーネントが起動される、及び/又は延伸されると、第1作動装置によって移動体を第1チャンバへと移動させることができる。
【0020】
ある実施形態では、入れ子式コンポーネントが、第1ハウジングに対して横方向に移動して、より大きい寸法を有するハウジングを形成する。ある実施形態では、折り畳み式コンポーネントが、ハウジングに対して旋回軸の周りを回転して、より大きい寸法を有するハウジングを形成する。ある実施形態では、入れ子式コンポーネントが、ハウジングの第1及び第2端部に対して針アセンブリ全体に延在する長手方向軸の周りを回転して、ハウジングにより大きい寸法を有させる。ある実施形態では、再取り付け可能な部分が取り外され、次いで、ハウジングの異なる位置に再度取り付けられ、したがって、ハウジングにより大きい寸法を有させる。
【0021】
ある実施形態では、このシステムは、第2チャンバと流体連通する針アセンブリと、安全装置と、を含む。針アセンブリ及び第2チャンバは、ハウジングに対して一体的に可動である。このシステムは、針アセンブリを露出させるか、ハウジングから突き出させ、流体チャネル内で形成された湿潤薬剤を注入できる、第2作動装置を有する。安全装置は、作動装置の起動に先立って、第1安全位置から第2位置へと移動できる。
【0022】
薬剤送達システムのある実施形態では、システムは、針アセンブリを有する。針アセンブリ及び第2チャンバは、ハウジングに対して一体的に可動である。第2作動装置は、針アセンブリを露出させるか、ハウジングから突き出させ、移動体に配置される流体チャネル内で形成された薬剤を注入できる。第1ハウジングに対する第2ハウジングの移動により、第2作動装置の作動可能にする。ある実施形態では、このシステムは、作動させるまで第2作動装置の移動を制限する停止部を有する。
【0023】
ある実施形態では、第1チャンバは折り畳み式である。ある実施形態では、移動体の移動により、第1チャンバの容積が減少する。
【0024】
本発明のこれらの態様は排他的であることを意味するものではなく、本発明の他の特徴、態様、及び利点は、当業者が以下の説明、添付の請求項、及び添付の図面と共に読むと、容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
前記の、及び他の本発明の目的、特徴、及び利点は、添付の図面に示されるように本発明の特定の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。これらの図面において、同様の参照文字は、さまざまな図を通じて同一の部分を指す。これらの図面の縮尺は必ずしも正しいものではなく、本発明の原則が強調されている。
図1A】本発明による携帯型オートインジェクタの使用方法の概略図である。
図1B】本発明による携帯型オートインジェクタの使用の別の実施形態及び方法の概略図である。
図2A】収縮/保管位置22にある携帯型オートインジェクタ30の正面断面図である。
図2B図2Aの収縮/保管位置22にある携帯型オートインジェクタ30の側断面図である。
図2C】収縮/保管位置にある携帯型オートインジェクタ30の平面図である。
図2D】一部が切り欠けている、収縮/保管位置にある携帯型オートインジェクタの斜視図である。
図3A】伸長位置にある携帯型オートインジェクタ30の正面断面図である。
図3B】伸長位置にある携帯型オートインジェクタ30の側断面図である。
図4A】安全装置が引き出されている携帯型オートインジェクタ30の正面断面図である。
図4B】安全装置が引き出されている携帯型オートインジェクタ30の側断面図である。
図5A】トリガが押し下げられた、注射位置にある携帯型オートインジェクタ30の正面断面図である。
図5B】トリガが押し下げられた、注射位置にある携帯型オートインジェクタ30の側断面図である。
図6A】注射位置にある携帯型オートインジェクタ30の正面断面図である。
図6B】注射位置にある携帯型オートインジェクタ30の側断面図である。
図7A】薬剤送達位置にある携帯型オートインジェクタ30の正面断面図である。
図7B図7Aの薬剤送達位置にある携帯型オートインジェクタ30の側断面図である。
図8A】携帯型オートインジェクタの薬剤送達部の拡大図である。
図8B】プランジャ膜界面の拡大図である。
図9A】さまざまな位置にある、別の携帯型オートインジェクタの図である。
図9B】さまざまな位置にある、別の携帯型オートインジェクタの図である。
図9C】さまざまな位置にある、別の携帯型オートインジェクタの図である。
図9D】さまざまな位置にある、別の携帯型オートインジェクタの図である。
図9E】さまざまな位置にある、別の携帯型オートインジェクタの図である。
図9F】さまざまな位置にある、別の携帯型オートインジェクタの図である。
図10A】収縮位置にある、別の旋回式携帯型オートインジェクタの正面断面図である。
図10B】伸長位置にある、図10Aの別の旋回式携帯型オートインジェクタの正面断面図である。
図10C】収縮位置にある更に別の旋回式携帯型オートインジェクタの正面断面図である。
図10D】伸長位置にある、図10Cの別の旋回式携帯型オートインジェクタの正面断面図である。
図11A】収縮位置にある、別の捩り式携帯型オートインジェクタの正面断面図である。
図11B】伸長位置にある、別の捩り式携帯型オートインジェクタの正面断面図である。
図12】2つの別のマイクロチャネルの断面図である。
図13】2つの別のマイクロチャネルの断面図である。
図14A】折り畳み式インジェクタ装置を示す。
図14B】折り畳み式インジェクタ装置を示す。
図14C】折り畳み式インジェクタ装置を示す。
図14D】折り畳み式インジェクタ装置を示す。
図15A】混合して、流体チャネルでの乾燥薬剤の溶解に役立つ2種類の湿潤コンポーネントを保持するように構成されている、デュアル湿潤チャンバインジェクタ(dual wet chamber injection)を示す。
図15B】混合して、流体チャネルでの乾燥薬剤の溶解に役立つ2種類の湿潤コンポーネントを保持するように構成されている、デュアル湿潤チャンバインジェクタ(dual wet chamber injection)を示す。
図16A】2つのチャンバ間に配置される移動体に隣接する流体チャネルを示す。
図16B】2つのチャンバ間に配置される移動体に隣接する流体チャネルを示す。
図16C】2つのチャンバ間に配置される移動体に隣接する流体チャネルを示す。
図16D】2つのチャンバ間に配置される移動体に隣接する流体チャネルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
乾燥薬剤コンポーネントを保管し、ユーザに送達するためにこれを湿潤コンポーネントと混合するシステム及び方法。オートインジェクタは収縮状態で保管され、薬剤コンポーネントは、保管の自由度を拡大できる2種類以上の状態で保管される。
【0027】
小型装置を手に持つこと、及び/又は操作することは時として困難であるため、オートインジェクタの使いやすさは重要になる。例えば、子供用に設計された歯ブラシは、小さい手で持ちやすくするために大人用歯ブラシよりも大きい。救命を必要とし得る装置のユーザが子供である可能性が高いため、小型オートインジェクタを提案する場合には、このことを考慮する必要がある。これに対応する1つの方法は、不使用時には小型かつ超軽量であるが、使用時には大きくなる装置を製造することであろう。
【0028】
図1を参照すると、携帯型オートインジェクタ30の使用法の概略図が示されている。携帯型オートインジェクタ30は、ブロック32で示されるように、収縮状態でユーザに持ち運ばれる。収縮状態32では、(湿潤薬剤として)ユーザ36に送達されるであろう乾燥薬剤は、図8Aに示されるように、乾燥薬剤38及び湿潤コンポーネント40など湿潤コンポーネントから分離して保管される。加えて、収縮状態32では、携帯型オートインジェクタ30は安全位置にあり、図6A〜7B及び9Fに示されるように、必要になるまでは、オートインジェクタ30は、うっかりして針46でユーザ36を刺すことができない。
【0029】
オートインジェクタ30は、平行四辺形48によって示されるように、伸長プロセスによって、収縮状態32から移動する。伸長プロセス48は、以下で更に詳述するように、互いに対してコンポーネントを引き寄せること、互いに対してコンポーネントを回転させること、又は互いに対してコンポーネントを捩ることによるなど、いくつかの形態を取ることができる。伸長プロセス48が完了すると、オートインジェクタ30は、ユーザが操作しやすいサイズである、操作サイズ状態50となる。
【0030】
ハウジングは、操作サイズ50においてより大きい寸法を有する。ある実施形態では、携帯型オートインジェクタ30は、収縮状態32において8cm×2.5cm×1.3cm(3インチ×1インチ×0.5インチ)であり、操作サイズ状態50において11cm×2.5cm×1.3cm(4.5インチ×1インチ×0.5インチ)である。
【0031】
いくつかの実施形態では、乾燥薬剤と湿潤コンポーネントとの混合は、伸長プロセス48の一環として生じてよいか、平行四辺形52によって示されるように別の混合工程で生じてよい。混合工程52は、湿潤コンポーネント40に乾燥薬剤38を通過させ、そのときにこれと混合して、ユーザ36に送達される湿潤薬剤34を形成する。湿潤薬剤準備完了状態は、ブロック54で示されている。
【0032】
特定の実施形態では、伸長プロセス48は、オートインジェクタ30を使用状態にする。図1Aに示されるように別の実施形態では、携帯型オートインジェクタは、平行四辺形58によって示されるように、安全装置の取り外し工程/起動前工程という別個の異なる工程を必要として、ブロック60で示されるようにオートインジェクタ30を起動準備完了状態にする。
【0033】
更に図1Aを参照すると、オートインジェクタ30が起動準備完了状態60にあるとき、オートインジェクタ30は、ユーザ36に近接して配置できる。平行四辺形62によって示される注射プロセス工程は、薬剤をユーザ36に送達するために開始され得る。
【0034】
携帯型オートインジェクタ30の操作者及び薬剤34を受容する個人は、2人の異なる個人であることが認められる。例えば、湿潤薬剤34を受容する個人は、オートインジェクタ30を操作できない状態にある子供又は個人であり得る。
【0035】
図1Bを参照すると、携帯型オートインジェクタ30の使用の別の実施形態及び方法の概略図が示されている。伸長プロセス48、混合工程52、及び安全装置の取り外し58が別個の、異なる工程で生じる、図1Aに示される実施形態とは対照的に、コンポーネントを操作サイズ状態50に伸長するプロセスは、他の工程を遂行する。例えば、伸長プロセス48はまた、混合工程52を生じさせる。混合工程52は、湿潤コンポーネント40に乾燥薬剤38を通過させ、そのときにこれと混合して、ユーザ36に送達される湿潤薬剤34を形成する。
【0036】
加えて、伸長プロセス48はまた、そのときに安全装置の取り外し58を生じさせ、ブロック60で示されるように、オートインジェクタ30を起動準備完了状態にする。
【0037】
図1Bでは、操作サイズ状態(ブロック50)及び薬剤準備完了状態(ブロック54)は、所望の状態である起動準備完了状態60に隣接して示される。特定の実施形態では、薬剤は、収縮状態32で準備完了状態である(すなわち、湿潤薬剤34が混合済みである携帯型オートインジェクタ30がユーザに出荷された後で、湿潤コンポーネント40を乾燥薬剤38と混合して湿潤薬剤34を形成することはない)。特定の実施形態では、オートインジェクタ30は、安全装置に関連する別個のコンポーネントを有さない。
【0038】
更に図1Bを参照すると、オートインジェクタ30が起動準備完了状態60にあるとき、オートインジェクタ30は、ユーザ36に近接して配置できる。平行四辺形62によって示される注射プロセス工程は、薬剤をユーザ36に送達するために開始され得る。
【0039】
図2Aを参照すると、収縮/保管位置32にある携帯型オートインジェクタ30の正面断面図が示されている。オートインジェクタ30は、収縮/保管位置32にある携帯型オートインジェクタ30の正面図を示す図2C及び収縮/保管位置32にある携帯型オートインジェクタ30の側断面図を示す図2Bに最も明確に示されるように、上部シェル72と、下部シェル74と、を有するハウジング70を含む、一連のコンポーネントを有する。
【0040】
ハウジング70は、図2A及び2Cに示されるように収縮状態32において、及び図3A及び3Bに示されるように操作状態50において、エクステンダスライド部90を保持するためにエクステンダスライド部90のコンポーネントと係合する、複数の溝をそれぞれ有する一対の側壁(標識なし)を有する。加えて、ハウジング70は、収縮状態及び操作状態に維持し、インジェクタ100のコンポーネントと相互作用する、複数の戻り止め及び止め具を有する。エクステンダスライダ90は、作動ラッチ部材が分裂指部(split fingers)を通って引かれ、ラッチ部材が分裂指部上で支持されつつ、分裂指部がその位置に留まると、分裂指部によって所定の位置に保持される。
【0041】
携帯型オートインジェクタ30は、湿潤/乾燥コンポーネント混合システム110を有する。湿潤/乾燥コンポーネント混合システム110は、一対のバイアル112及び114を有する。第1バイアル112は、オートインジェクタ30が収縮状態32のときに湿潤コンポーネント40を保持する。第2バイアル114は、注射針46を含む針アセンブリ116に連結されており、以下に詳述するように、送達に先立って、湿潤薬剤34を保管する。湿潤/乾燥コンポーネント混合システム110は、流体チャネルが内部に配置される移動体118と、一対のプランジャ120及び122と、を有する。第1プランジャ120は、第1バイアル、つまりチャンバ112と相互作用し、第2プランジャ122は、第2バイアル、つまりチャンバ114と相互作用する。別の実施形態では、第1プランジャ120及び第2プランジャ122、並びに流体チャネルを備える移動体118は、すべて1片の材料で作製されている。別の実施形態では、これらは別個のアセンブリである。別の実施形態では、118は、バイアル112からバイアル114への流路を単純に形成する。
【0042】
流体チャネル140を備える移動体118は、2つのバイアル112及び114並びに2つのプランジャ120及び122の間に置かれる。流体チャネル140を備える移動体118は、円筒体126と、一対の平行端部128と、を有する。流体チャネル140を備える移動体118は、一対の支柱130及び132を有する。支柱130及び132は、平行端部128のそれぞれから延在する。各支柱130及び132は、図8Bにおいて最も明確に示されるように、プランジャ120及び122のうちの1つにある空隙138の壁136と係合するための拡大先端部134を有する。流体チャネルを備える移動体118は、第1支柱130から第2支柱132へと延在する、単一の流体チャネル140を含んでよい。移動体118は、縁部148を備える環状輪146を有する。縁部148は、圧縮バネ160の第1端部162と相互作用する。
【0043】
圧縮バネ160は、基部172と、圧縮バネ160を取り囲む環状輪174と、を有する内側ハウジング170と相互作用する第2端部164を有する。内側ハウジング170の基部172は、圧縮バネ160の第2端部164と係合する環状縁部178を有する。基部172は、孔180を有する。内側ハウジング170は、一対のタブ182を有する。各タブ182は、図2Dにおいて最も明確に示されるように、インジェクタ100の分裂指部の間に置かれる。
【0044】
内側ハウジング170は、エクステンダスライド部90に連結される。この2つのコンポーネントは、収縮状態32から操作サイズ状態50へと横方向に共に移動する。エクステンダスライド部90は、ユーザが把持して、オートインジェクタ30を操作サイズ状態50に移動させることができるコンポーネントである。
【0045】
更に図2A及び2Bを参照すると、携帯型オートインジェクタ30は、薬剤送達動作リング190を有する。薬剤送達動作リング190は、内側ハウジング170にある孔180を通って突き出るスタブ194を備える基部192を有する。スタブ194は、以下に記載するように屈曲できる一対の脚部をもたらす、スタブ194全体に延在するスロット196を有する。スタブは、スロット196全体に延在する孔198を有する。スタブ194は、薬剤送達動作リング190が内側ハウジング170と共に移動するように、内側ハウジング170の基部の外側表面と係合する縁部200を有する。
【0046】
携帯型オートインジェクタは、安全装置210を有する。安全装置210は、一対の脚部212を備えるU字形を有する。各脚部212は、ユーザが、図2A〜3Bに示される安全位置から図4A〜6Dに示され、以下に記載される起動位置へと安全装置210を移動させやすくする一連の刻み214を有する。加えて、各脚部212は、エクステンダスライド部90の開口部218を通って延在して、安全装置210を安全位置に保持する、戻り止め216を有する。U字形の安全装置210の基部220は、ピン222を有する。安全装置210のピン222は、薬剤送達動作リング190のスタブ194の孔198内へと延在する。
【0047】
図2Dを参照すると、一部が切り欠けている、収縮/保管位置32にある携帯型オートインジェクタ30の斜視図が示されている。安全装置210は、エクステンダスライド部90内の溝に受容される。安全装置210の戻り止め216は、エクステンダスライド部90の開口部218を通って延在し、安全装置210を安全位置に保持していることがわかる。一連の刻み214は、隣接するエクステンダスライド部90の表面を超えて突き出て、ユーザが、図2Dに示される安全位置から図4A〜4Bに示される起動位置へと安全装置210を移動させやすくする。安全装置210のピン222は、薬剤送達動作リング190のスタブ194の孔198を通って延在するように示されている。
【0048】
圧縮バネ160は、移動体118の環状輪146の縁部148と係合する第1端部162から、内側ハウジング170の基部172の環状縁部174と係合する第2端部164まで延在するように示されている。内側ハウジング170のタブ182のうちの1つはインジェクタ100の一対の分裂指部186のうちの1つの間に示されている。加えて、駆動ブロック226は、インジェクタ100の分裂指部186上に示されている。
【0049】
エクステンダスライド部90の基部は、ハウジング70上のリブを受容して位置合わせを維持するスロットを有する。
【0050】
図3Aを参照すると、操作サイズ状態50にある携帯型オートインジェクタ30の正面断面図が示されている。図3Bには、操作サイズ状態50にある携帯型オートインジェクタ30の側断面図が示されている。エクステンダスライド部90が伸長プロセス48で操作サイズ状態50へと移動すると、内側ハウジング170、安全装置210、及び薬剤送達動作リング190も移動する。薬剤送達動作リング190の移動により、薬剤混合システム110のミキサ118が上方に移動する。この上方移動により、第1プランジャ120が第1バイアル112内で上方に移動し、第1バイアル112内の容積部を減少させる(この容積部は、第1チャンバ232と呼ばれる)。第1バイアル112の容積部のこの減少により、湿潤コンポーネント40に中空容積部、乾燥薬剤を含み得る移動体118のマイクロチャネル、つまり流体チャネル140を通過させる。第1プランジャ120が第1バイアル112内に移動すると、第2プランジャ122は第2バイアル114から出て、そのときに容積部、つまり第2チャンバ234を形成して、流体チャネル140での湿潤コンポーネント40と乾燥薬剤38との混合により生成された湿潤薬剤34を受容する。
【0051】
この実施形態では、伸長プロセス48及び混合工程52は同時に生じる。これは、図1Aに関して記載された2つの異なる工程とは対照的である。湿潤コンポーネント40の乾燥薬剤38との混合は、図8A及び8Bに関して記載されている。
【0052】
図4Aを参照すると、安全装置210が引き出された、携帯型オートインジェクタ30の正面断面図が示されている。図4Bには、安全装置210が引き出された、携帯型オートインジェクタ30の側断面図が示されている。上述したように、内側ハウジング170及び薬剤送達動作リング190は、エクステンダスライド部90と共に移動する。ユーザは、安全装置210上の刻み214を係合させて、安全装置210を起動準備完了状態60に移動させる。エクステンダスライド部90の開口部218で保持された一対の戻り止め216は、安全装置210の上方移動によって開口部218から押し出され、内側に向けて屈曲する。
【0053】
バンプトリガが共にスタブ194をバンプ溝に押し込んだ後(安全装置(及び安全装置のピン部分)が取り外された後で可能)、安全装置210の移動によってインジェクタ100は下方に移動する。このようにスタブ194を共に押し込むことにより、スタブ194は開口部を通って後退でき、圧縮バネに蓄積されていたエネルギーを放出できる。したがって、インジェクタをハウジングからユーザ又は患者の体内へと押し込むことができる。バンプ溝は、対象物の外側に圧力をかけ、対象物が溝へと押し込まれるときにこれを内側に押す角度を有する、円錐形又は類似の形状に成形されてよい。通常、対象物は、スタブの突起部又は側部を押し付けて開口部を何とか通過できるようにせずには開口部又は孔を通過しない、スタブである。
【0054】
このプロセスは安全装置58の取り外しと呼ばれるが、安全装置210は、いまだにオートインジェクタの残りの部分に連結されている。安全装置210の移動により、スタブ194の孔196からピン222が引き出される。スタブ194からピン222が取り外されると、スタブ194は、スロット198によって占められていた空間へと内側に屈曲できる。スタブ194の縁部200は、もはや薬剤送達動作リング190の基部192とは係合しておらず、したがって、図6A及び6Bに示されているように、スタブ194の全体が内側ハウジング170の基部にある孔180を押して通過できる。しかしながら、内側ハウジングに対する薬剤送達動作リング190の移動に先立って、上記のように下方に移動させられたインジェクタ100は、図5A及び5Bに関して以下に記載されるように、ハウジング70に対して上方に移動して戻る必要がある。
【0055】
図5Aを参照すると、トリガが押し下げられた、注射位置にある携帯型オートインジェクタ30の正面断面図が示されている。図5Bには、トリガが押し下げられた、注射位置にある携帯型オートインジェクタ30の側断面図が示されている。
【0056】
図6Aを参照すると、注射位置にある携帯型オートインジェクタ30の正面断面図が示されている。図6Bには、注射位置にある携帯型オートインジェクタ30の側断面図が示されている。インジェクタ100が上方に移動してハウジング70内に戻ることにより、内側ハウジング170が、薬剤送達動作リング190に対して情報に移動する。
【0057】
安全装置240のピン222がもはやスタブ194の孔198内にないため、スタブ194は屈曲できる。スタブ194は屈曲し、そのときスロット196の空間を埋め、内側ハウジング170の基部172にある孔180を通過できるようにする。圧縮バネ160の第2端部164によって係合される移動体118の環状輪146の縁部148は、押し下げられる。この力により、移動体118及び薬剤送達動作リング190が下方に移動する。
【0058】
圧縮バネ160は、流体チャネル140を備える移動体118の環状輪146の縁部148を引き続き押し下げる。針46は、インジェクタ100の開口部を通って下方に移動させられる。針46は、第2バイアル114がインジェクタ100と係合するまで移動させられる。
【0059】
図7Aを参照すると、薬剤送達位置にある携帯型オートインジェクタ30の正面断面図が示されている。図7Bには、薬剤送達位置にある携帯型オートインジェクタ30の側断面図が示されている。圧縮バネ160は、流体チャネル140を備える移動体118の環状輪146の縁部148を引き続き押し下げ、ミキサ118並びにプランジャ120及び122をバイアル112及び114に対して移動させる。具体的には、第2バイアル114は、針46を通して薬剤34を第2バイアル114内の第2チャンバ234からユーザ36の体内へと押し出す。
【0060】
図8Aを参照すると、携帯型オートインジェクタ30の薬剤混合システムの拡大図が示されている。上記のように、バイアル112及び114に対する、流体チャネルを備える移動体118並びに2つのプランジャ120及び122の移動は、操作の異なる時点で生じる。図1Aに関して記載された実施形態では、ミキサ118並びに2つのプランジャ120及び122は、携帯型オートインジェクタ30の伸長プロセス48とは異なるときに移動する。図2A〜7Bに関して記載された実施形態では、湿潤薬剤34を混合させる移動体118並びに2つのプランジャ120及び122の移動は、操作サイズ状態50への伸長プロセス48と共に生じる。いずれの場合でも、移動体118並びに2つのプランジャ120及び122は、バイアル112及び114に対して再移動して、第2チャンバ234を減少させることによって第2バイアル114から湿潤薬剤34を出させる。流体チャネル140を備える移動体(movable)118並びに2つのプランジャ120及び122がバイアル112及び114に対して再移動するのに先立って、湿潤薬剤34は、圧縮バネ160によって駆動される針46を通過させられる。
【0061】
更に図8Aを参照すると、ある実施形態の湿潤/乾燥混合システム110は、ガラス、及び/又は生体適合性プラスチック、及び/又は金属、及び/又は任意の他の使用され得る物質、及び/又は規制機関(FDA)若しくは他の承認機関による基準を満たした他の物質で作製される第1バイアル112及び第2バイアル114を有する。第1バイアル112の第1チャンバ232は、乾燥薬剤を溶解する(再構成する、溶液中に保持する)溶液、湿潤コンポーネント40を保管する場所である。ある実施形態では、この溶液は、注射用蒸留水を含んでよい。ある実施形態では、この溶液は、溶解を可能にするために緩衝液を使用してpHを最適化できる。ある実施形態では、この緩衝液は、酸性又は塩基性であり得る。ある実施形態では、この緩衝液は、HClであり得る。ある実施形態では、この溶液は、他の添加剤及び防腐剤、例えば、NaCl、メタ重亜硫酸塩など、又はその他を含有し得る。第1プランジャ120は、第1バイアル112に挿入される。第1プランジャ120の移動は、第1チャンバ232のサイズ、容積を定める。
【0062】
上記の実施形態では、第2バイアル114は、空の状態で始まり、図2A〜2Dに示されるように、オートインジェクタが収縮状態32のとき、第2チャンバ234は本質的に容積を有さない。第2バイアル114は、第2チャンバ234がpH調整液など(ある実施形態では、注射用蒸留水であり得る)を含むのに十分な容積を有するように設計され、そのようなサイズであってよい。別の実施形態では、pH調製液は緩衝液を含有し得る。別の実施形態では、中和剤は酸性であってよい。別の実施形態では、中和剤は塩基性であってよい。別の実施形態では、中和剤は水酸化ナトリウムであり得る。第2プランジャ122は、第2バイアル114に挿入される。したがって、後に第2チャンバの第2溶液でpHが調整され、個人の体内に注入するのに好適な緩衝液に乾燥薬剤を素早く溶解させる方法は、迅速かつ場所を取らない薬剤混合及びより長い保存可能期間を有することができ、環境要因に左右されない送達溶液を可能にする。中和剤が使用されてよい。緩衝液は、酸性及び塩基性からなってよい。
【0063】
上記の実施形態では、流体チャネル140を備える移動体118は、乾燥薬剤38を保管する。ある実施形態では、乾燥薬剤保管アセンブリ(マイクロ流体アセンブリとも呼ばれる)は、マイクロ流体チャネルを有さないが、乾燥薬剤38を含む。別の実施形態では、これは、少なくとも流体チャネル、及び/又は1つのマイクロ流体チャネルを有する。別の実施形態では、これは、複数の流体チャネル又はマイクロ流体チャネルを有する。別の実施形態では、乾燥薬剤38は、少なくとも1つの流体チャネル及び/又はマイクロ流体チャネル内に保管される。別の実施形態では、乾燥粉末薬剤は、流体チャネル及び/又はマイクロ流体チャネル外に保管されるが、それでもなお乾燥薬剤保管アセンブリ内に保管される。別の実施形態では、液体はマイクロ流体チャネル又は流体チャネル内に保管され、別の液体によって押し出される。別の実施形態では、異なる液体薬剤及び/又は乾燥薬剤がマイクロ流体アセンブリ内の複数のマイクロ流体チャネルに保管される。別の実施形態では、いくつかのマイクロ流体チャネルは、互いに流体連通している。別の実施形態では、少なくとも2つのマイクロ流体チャネルは、互いに流体連通している。別の実施形態では、共有バイアル又はチャンバにすべて流入し得ることを除いて、マイクロ流体チャネルは互いに流体連通していない。
【0064】
図8Bを参照すると、ある実施形態では、プランジャ120及び122のうちの1つ又は両方は、破断してよい、並びに/又は移動してよい、及び/若しくは開放してよい、並びに/又は装置の伸長動作時に第1バイアル112と、移動体118、マイクロ流体アセンブリとを流体連通させる、及び/若しくは第2バイアル114と、マイクロ流体アセンブリとを流体連通させてよい、オリフィス及び/若しくは破裂膜244、又は密封構造体及び/若しくは弁を含む。オリフィス及び/又は破裂膜244の配置は実施形態、並びに特定の薬剤によって異なる。
【0065】
携帯型オートインジェクタ30では、針アセンブリ116は、第2バイアル114から延在する。示される実施形態では、インジェクタ100は、針46によって時期尚早の針刺しが行われないようにする。しかしながら、インジェクタ100の端部は、針46の無菌性を維持するために覆われ得る。特定の実施形態では、針アセンブリ116が無針薬剤送達メカニズムを含むことが認められる。ある実施形態では、針は、インジェクタが収容され、使用されていないときに、針に汚染物が入らないように使用されてよい、ゴム製保護バリアで覆われてよい。
【0066】
図9A〜9Fを参照すると、さまざまな位置にある、別の携帯型オートインジェクタの図が示されている。このオートインジェクタ30の実施形態では、第1バイアル112は、第2バイアル114よりも狭く、かつ長く、そのときに、収容された収縮状態において携帯型オートインジェクタをやや長くし、また、第1バイアル112から第2バイアル114への流体流に液圧助勢を加え、インジェクタの伸長動作をより簡単に達成できるようにする。液圧助勢は、バイアルを狭くし、長くする、したがって、バイアル管で液量を交換するために更なる距離をもたらすことによって生じる。
【0067】
図9Aでは、携帯型オートインジェクタ30は、収縮/保管位置で示されている。この状態で注射することはできない。これは、持ち運ばれ、使用準備が完了するまで保管される状態である。
【0068】
図9Bを参照すると、伸長済み/薬剤準備完了位置にある携帯型オートインジェクタが示されている。エクステンダ、エクステンダスライド部90を上方に移動させると、外側ピン及び内側ピンが共に伸長する。図2A〜7Bに関して記載された実施形態では、外側ピンは内側ハウジング170に類似しており、内側ピンは、薬剤送達動作リング190に類似している。この動作により、第1プランジャ120は上方に移動して、第1バイアルに圧力の蓄積を生じさせるように第1バイアル112内に入り、図8Bにおいて最も明確に示されるように、第1バイアル112と乾燥薬剤保管アセンブリを備える移動体118との間に流体連通をもたらすために、オリフィス、及び/又は封止部、及び/又は膜、及び/又は弁など密封装置を移動させる、及び/又は何らかの方法で変更させる。移動体118並びにプランジャ120及び122がバイアル112及び114に対して移動するとき、第2バイアル114、第2チャンバ234の容積部のサイズが増加する。移動体118、つまり乾燥薬剤保管アセンブリは、第2バイアル114と流体連通する。第1バイアル112内の溶液、つまり湿潤コンポーネント40は、乾燥薬剤保管アセンブリ、つまり移動体118への流入を開始し、乾燥粉末を溶解させて液体又は湿潤薬剤、乾燥薬剤38にしてから、第2バイアル114へと流入する。
【0069】
この状態では、伸長済みのオートインジェクタは長くなり、オートインジェクタを把持しやすくなる。溶解した液体薬剤及び/又は部分的に溶解した薬剤は、第2バイアル114へと移され、次工程の開始まで保管される。
【0070】
図9Cを参照すると、起動準備完了状態にあり、安全装置が取り外されている携帯型オートインジェクタ30が示されている。図9Bに示されるように内側ピンが移動を停止した後、針アセンブリハウジングは、分裂指部及び針アセンブリハウジングの止め具の上にある。安全装置210は、更に外方に伸長できる、及び/又は、図9Cに示されるように完全に取り外すことができる。安全装置210の外方移動によって、これまで圧縮バネの発射又は取り出しを阻止していたスタブから安全装置ピンが取り外される。バンプスイッチを使用すると、ユーザ又は管理者はインジェクタの針注入側を押すことができる。これによって、スタブがバンプ溝に押し込まれ、スタブが孔を通ってスライドし、圧縮バネに蓄積されたエネルギーを解放する。解放されたエネルギーによって針アセンブリが個人の体内に、及び移動体が第2バイアルに押し込まれ、したがって、針アセンブリを通って湿潤薬剤が個人の体内に送り込まれる。安全装置210は、上方に滑動するように示されているが、いくつかの実施形態では、安全装置210は、携帯型オートインジェクタ30から完全に取り外すことができる。同一工程では、トリガが装置の注入側から出て伸長し、インジェクタを注射準備完了にする。
【0071】
図9Dを参照すると、プリトリガ位置にある携帯型オートインジェクタ30が示されている。この位置では、バンプトリガ100を押して針アセンブリを上昇させ、バンプスイッチに共に挟ませることができる。バンプスイッチは小さくなり、孔を通過できるようにする。次いで、針アセンブリは、図9Eに示されるように、針をヒト及び/又は非ヒトの体内へと押し込むバネの力を受けて押し出される。バネは、力を加え続け、次いで、図9Fに示されるように体内に液体を押し込む。
【0072】
図10Aを参照すると、収縮位置にある、別の旋回式携帯型オートインジェクタ1000の正面断面図が示されている。これまでの実施形態と同様に、携帯型オートインジェクタ100は、湿潤/乾燥混合システム110と、インジェクタ100と、を有する。これまでの実施形態とは対照的に、オートインジェクタ1000は、エクステンダを長手方向に引くことによって収縮状態から伸長済み状態に移動しない。この実施形態では、オートインジェクタ1000は、下側ハウジング1020に対してヒンジ点1030の周りを回転する上側ハウジング1010を有するというフリップ設計を有する。この実施形態では、上側ハウジング1010は、下側ハウジング(hosing)に配置される湿潤/乾燥混合システム110のコンポーネントを移動させる駆動メカニズムを含む。図10Dは、伸長済み状態にあるオートインジェクタ1000を示している。
【0073】
図10Cを参照すると、収縮位置にある、別の旋回式携帯型オートインジェクタ1005の正面断面図が示されている。これまでの実施形態と同様に、携帯型オートインジェクタ100は、湿潤/乾燥混合システム110と、インジェクタ100と、を有する。この実施形態では、オートインジェクタ1005は、内側ハウジング1050に対して旋回点1060の周りを回転する外側ハウジング1040を有する。図10Dは、伸長済み状態にあるオートインジェクタ1005を示している。
【0074】
図11Aを参照すると、収縮位置にある、別の捩り式携帯型オートインジェクタ1100の正面断面図が示されている。この実施形態では、オートインジェクタ1100は、上側ハウジング1110と、下側ハウジング1120と、を有する。2つのハウジング1110及び1120は互いに対して回転して、中央伸縮式シャフト1140によってハウジング1110及び1120を離すことができる。図11Bは、伸長済み状態にある捩り式携帯型オートインジェクタ1100を示している。図2A〜7Bに関して記載された実施形態では、湿潤/乾燥コンポーネント混合システム110内の移動体118は、1つのマイクロチャネル140を備えるように示されている。湿潤/乾燥コンポーネント混合システム110は、複数の導管又はチャネル、及び封止部を有し得ることが認められる。混合アセンブリでは、異なる2種類の薬剤(又は2回量の同一薬剤)を混合し、単針又は他の送達システムを使用して個人の体内に挿入できる。封止部は、混合装置内に含まれる異なるチャネルとそれぞれ流体連通している、各保管用空洞のオリフィス上に広がることができる。
【0075】
これらのチャネルは、さまざまな長さ及びサイズであってよく、各薬剤を適宜混合できる/放出できる。例えば、第1湿潤コンポーネントは、第2湿潤コンポーネントが保管され、流体連通している固有チャネルよりも短い経路を有する固有チャネルに保管されている。第1湿潤コンポーネントは第1乾燥コンポーネントと混合され、均質化され(この実施形態の場合は均質化されるが、すべての実施形態で均質化されるわけではない)、針アセンブリに入り、個人の体内に注入される。第2湿潤コンポーネントは、第2乾燥コンポーネントとの混合により長い時間がかかり、第1混合薬剤が針アセンブリに入って、個人の体内に注入された後でそれに続く。これは、混合不能であるために混合アセンブリの同一部分に保管できない、及び/又は同一チャネル内で再構成性できないか、混合できない2種類の薬剤で有用である。
【0076】
マイクロ流体装置又はシステムを使用すると、極めて少量で流体を制御し、操作できる。サブセンチメートル及び/又はサブミリメートルの寸法において、境界面の役割は、表面張力、流動抵抗の支配を開始することであり、したがって、流体流のマクロ的特性とは異なって反応し得る、挙動の制御を開始する。例えば、主流路は、一連の「ヘリンボーン」又は他の種類の溝を備えるガラス又はポリマーに機械加工され、これによって、材料流にチャネルを通過させて、混合を誘導する環境がもたらされる。これらの構造及び機構は、乾燥薬剤を攪拌するか混合し、湿潤コンポーネントに溶解させ、したがって溶液を形成するように機能する、一連の渦(eddies)、渦(vortices)、又はしわをチャネル内部に形成する。
【0077】
実施形態は、主チャンネル及び溝が交互するパターンを有し(これらの溝はまた、ランダム化されてよい)、すべて内部に形成される、機械加工部分など、2つの部分からなってよい。平面ガラス又はポリマーである基部は、次いで、機械加工部分に取り付けられて、主チャネルを包囲する。
【0078】
あるいは、流路は、片側若しくは両側に沿って、又はチャネルの断面全体の周囲で幅を増減する、又は膨らむ/膨張するように構成されてよい。広くなったり、狭くなったりするマイクロチャネルは、流路内の混合を誘導するのに有用であり得る。例えば、主チャネルは、当初、幅が狭く、次いで、幅が伸長して突起部となる。他の構成の突起部は、リザーバ、つまり貯蔵器として作用してよく、より量の多い乾燥コンポーネントをその中に保管する。ここにおいても、突起部は、より小さい構造物をその中に配置し得る、より大きいくぼみ、又は開放領域であってよく、突起部及び任意のその中に容まれる構造物は、流れの途絶に役立ってよい。突起部又は貯蔵器は、マイクロチャネルシステム全体に戦略的に配置されて、混合を促進してよい。
【0079】
混合を促進する別の方法は、直線チャネル、可変幅、又はヘリンボーン設計ではなく、図12及び13に示されるように蛇行チャネルの使用など、混合装置のチャネル及び/又はマイクロチャネルに屈曲部又は湾曲部を導入することである。これらの蛇行部は、2つの機能を有する。第1に、チャネルの折り返しが可能になるように流量方向を屈曲させることによって管を小型化でき、したがって、より長いチャネルがより小さい領域をより有効に使用できる。第2に、自然流は、チャネル内の屈曲部、つまり肘部が存在するたびに途絶され、混合が生じる。これらの蛇行形態は、(実施形態1200eに示されるように)前後に蛇行する緩やかな湾曲部1220が存在するように設計され得るか、1300fに示されるように、鋭い90度の屈曲部1300を有するように設計され得る。これらは、のこぎり鋸状歯パターンにより近いものを形成する、屈曲が90度を超える(図示なし)ように設計することさえできる。各実施形態は、混合の量及び質を制御できる、異なる混合特性をもたらす。これは、激しく混合し過ぎると特定の薬剤化合物が損傷し得るが、他の化合物にはより強力な混合装置を必要とし得る場合に重要である。混合条件の調整におけるこの可変性によって、小型自動混合インジェクタ装置でさまざまな湿潤/乾燥コンポーネントを使用できる。これは、制御が、本願の1つの重要な性能属性であるためである。これらのマイクロ流体の実施形態1200e及び1300fのそれぞれでは、それぞれが、封止部が起動されて開放又は混合状態になり、出口1226、1336が針アセンブリと、又は中間均質化領域と流体連通するように構成された後で湿潤コンポーネントを受容する、開口部1224、1334を有する単一チャネルからなる。
【0080】
別の構成では、平行壁を使用して構成されている、直線的マイクロ流体チャネルは、湿潤コンポーネント及び乾燥コンポーネントを混合するのに十分であってよい。マイクロ流体チャネルの一部の内部に保管される乾燥コンポーネントは、チャネル内での混合を促進するように作用してよい。液体がチャネルを通過し、その一部の内部に含まれる乾燥コンポーネントに入り込み始めると、流頭は、流れをチャネル中心部に向かって集め、次いでチャネル壁付近で液体を逆方向に押し返す自然の乱流又はカオス流を生じさせる。これを生じさせるために、ある実施形態では正方形の断面で定められ得るチャネル寸法を特定のサイズ未満にする必要がある。この実施形態及び本明細書に記載の多数の実施形態では、チャネル断面の片側又は両側は、2mm未満、又は1mm〜2mm、又は1mm未満、又は500μm〜1mm、又は500μm未満、又は250μm〜500μm、又は250μm未満、又は100μm〜250μm、又は100μm未満、又は50μm〜100μm、又は50μm未満、又は10μm〜50μm、又は10μm未満、又は1μm〜10μm、又は1μm未満の寸法を有してよい。この用途のために、1μm未満の断面寸法を有するチャネルは、ナノ流体チャネルであると見なされ、薬剤を混合するためにそれぞれの特性セットを有する。
【0081】
2012年6月21日出願の米国特許出願第13/529,757号及び2013年7月11日出願の米国特許出願公開第2013/0178823号は、マイクロチャネルの更なる設計について記載しており、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0082】
ある実施形態では、乾燥コンポーネント24を湿潤コンポーネント26に混合するチャネルの少なくとも1つの寸法は2mm未満であり、カオス混合に応じて、希釈剤のレイノルズ数は100未満である。この例は、一連の構造体であり得、乾燥薬剤を希釈剤に混合するチャネルの少なくとも1つの寸法は2mm未満であり、希釈剤のレイノルズ数は10未満であり、混合を可能にする。いくつかの実施形態では、乾燥薬剤は、湿潤コンポーネントに完全に溶解する。しかしながら、他の実施形態では、乾燥薬剤は、湿潤コンポーネント中に懸濁している。
【0083】
注射器40では、別の流体源及び流体ポンプなど駆動力を代わりに使用できることが認められる。
【0084】
上記の実施形態では、オートインジェクタの作動力は、圧縮バネ160など蓄積エネルギー源によって供給される。このエネルギーは、ユーザ入力からも生じ得ることが認められる。例えば、ユーザが装置を順にはめ込む、及び/又はヒンジで動くようにすると、この機械的動作によって、オートインジェクタにエネルギー源を同時に供給でき、装置を準備完了モードにする。次いで、トリガを使用してエネルギー源を解放して、針を体内に押し込んで1回量の液体薬剤を送達できる、及び/又は粉末薬剤を1回量の液体に水和させ、この薬剤を患者の体内に送達できる。
【0085】
これは、起動前はコイル状態に留まる引張バネによって可能になってよいことが認められる。注射装置を順にはめ込む動作によって、引張バネは、装置を作動させ、患者に注入し、薬剤を送達するために必要とされる十分な位置エネルギーを生じさせるように引っ張られてよい。
【0086】
別の実施形態では、起動前は伸長済み状態にある圧縮バネが使用される。注射装置を順にはめ込む動作によって、バネは、装置を作動させ、患者に注入し、薬剤を送達するために必要とされる十分な位置エネルギーを生じさせるように圧縮されてよい。
【0087】
大部分のオートインジェクタは、例えば、バネ又は圧縮ガスのカートリッジなど予め蓄積されたエネルギー源を有する。安全装置機構が故障した場合、インジェクタが意図しない方法で誤って発射されることがあり得る。この装置の作動力は予め蓄積されていないため、誤って放出される危険性は低く、更なる安全度が存在する。
【0088】
上記の実施形態では、湿潤コンポーネントと乾燥コンポーネントとを分離する1つの方法として、ブリスタ、つまり破裂膜について記載されている。この装置では、起動される、及び/又は順にはめ込まれると、別の封止方法によって、封止部が取り外されることが認められる。例えば、ワイン瓶からコルクを取り外すのと同様に、インジェクタを順にはめ込むか、フリップを開くと、封止構造が取り払われて、湿潤コンポーネントと乾燥コンポーネントとの間に流体連通をもたらし得る。
【0089】
また、装置を順にはめ込む、フィリップを開く間に封止部が取り外されるか、取り払われると、乾燥粉末薬剤に流体を同時に引き込む、又は入れる力が存在し得、これにより、薬剤が再構成されるか、1回量の液体に水和する。これは、液体を乾燥粉末薬剤に押し込む/これを通過させることはやや異なる。
【0090】
ある実施形態では、乾燥薬剤はエピネフリンである。ある実施形態では、乾燥薬剤はグルカゴンである。ある実施形態では、乾燥薬剤は凝固因子である。ある実施形態では、乾燥薬剤はジアゼパムである。ある実施形態では、乾燥薬剤はEmbrelである。ある実施形態では、乾燥薬剤はXolairである。ある実施形態では、乾燥薬剤は、ブチリルコリンエステラーゼなど神経ガスの解毒剤である。ある実施形態では、乾燥薬剤はスマトリプタンである。ある実施形態では、乾燥薬剤は医薬品である。ある実施形態では、乾燥薬剤は生物製剤である。これはまた、低分子医薬品であってよい。
【0091】
図14A〜Dを参照すると、折り畳み式インジェクタ装置が示されている。折り畳み式混合及び送達装置1400の断面が示されている。安全装置1402は、1400の一端に位置付けられており、広がらないようにしている。安全装置1402を取り外すと、中に配置された、予荷重バネ1406は、図14Dに示されるように、装置1400を旋回させ、伸長させるように構成されている。次いで、バネ1406は、内部に保管された、少なくとも1つの湿潤コンポーネントを有する混合体1408と係合し、これを乾燥薬剤と混合させる。次いで、混合された湿潤薬剤は、針アセンブリ1410を横断してよく、これによって、第2作動工程時に、針に開口部1412を通って突き出させ、湿潤薬剤を送達させる。他の部分に記載したように、折り畳み式装置は、湿潤コンポーネント及び乾燥コンポーネントを混合し、これを患者の体内などに送達する単工程プロセス又は複数工程プロセスを可能にする、さまざまな安全装置及び解放機構からなってよい。
【0092】
図15A〜Bを参照すると、乾燥薬剤コンポーネントとの混合に先立って混合される第1湿潤コンポーネント1508a及び第2湿潤コンポーネント1508bを含む、一対の湿潤コンポーネント容器1516a及び1516bを有する別の実施形態のシステム1500の概略図が示されている。システム1500の注射器は、対応の湿潤コンポーネント容積部に対してプランジャ1506をそれぞれ駆動する、一対のシャフト1504を備えるプランジャ1502を有する。対応の湿潤コンポーネント1508a及び1508bが押されて対応の弁1510a及び1510bを通過すると、湿潤コンポーネントは、混合された湿潤コンポーネントが形成される湿潤混合容積1512で混合される。
【0093】
プランジャ1502が押し続けられると、混合された湿潤コンポーネントが、乾燥薬剤コンポーネントの入っている、ミキサ1520の流体チャネル1530を通って流れる。混合された湿潤コンポーネント内の乾燥薬剤を含有する混合された薬剤は、針1540を通って流れる。
【0094】
2つの湿潤コンポーネント容器1516a及び1516bは、同一サイズとして示されているが、断面積を調整して、2種類の湿潤コンポーネントの混合を調整できることが認められる。特定の実施形態では、ミキサ1520及び針1540のコンポーネントは、注射器出力部1514において、注射器から分離できる。
【0095】
図16A〜Dを参照すると、混合装置1600内で2つのチャンバ1604と1606との間に配置される移動体1608に隣接する流体チャネル1610が示されている。示されるように、当初チャンバ1604に保管されている湿潤コンポーネントは、力が加えられて移動体1608がチャンバ1604の空洞部に移動させられる(これは、湿潤コンポーネントに、チャンバ1604と1606との間の固定位置にあり、移動体1608に隣接する流体チャネル1610を通過させることから始まる)まで留まる。前述したように、力、つまりチャンバ1604に入る移動体1608から生じる圧力は、力を加えたときに一方向開口部を生じさせ、湿潤コンポーネントに流体チャネルを通って流れせるものである。乾燥薬剤は、入り口付近、流体チャネル1610の全体、又はそのくぼみ内に配置されてよく、湿潤コンポーネントと混合して湿潤薬剤を形成する。
【0096】
図16Bは、1610を通って1604から1606に入る流れを示している。湿潤コンポーネントの大部分が1604から押し出され、チャンバ1606に入れられると、移動体1608は再び作動して、針アセンブリ1612を通ってユーザ又は患者の体内に湿潤薬剤を送達してよい。ここにおいても、流体チャネルと1604との間の一方向開口部、及び場合によっては、1606と1610との間の第2一方向チャネルは、湿潤薬剤が1604に再流入しないようにし、したがって、図16Dに示されるように、針アセンブリ1612を通過させる。
【0097】
本明細書において本発明の原則を説明してきたが、当業者は、この説明が例示のみを目的としており、本発明の範囲を限定するものではないことを理解するであろう。本明細書に示され、説明された例示的実施形態に加えて、本発明の範囲内において他の実施形態が想到される。当業者による変更及び代替は、本発明の範囲内であると見なされる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図16D