特許第6560191号(P6560191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560191
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】遮音材
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20190805BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   G10K11/16 120
   G10K11/162
【請求項の数】13
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-510275(P2016-510275)
(86)(22)【出願日】2015年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2015058049
(87)【国際公開番号】WO2015146743
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2017年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-66497(P2014-66497)
(32)【優先日】2014年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】竹内 文人
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄二
(72)【発明者】
【氏名】有野 恭巨
(72)【発明者】
【氏名】中辻 亮
(72)【発明者】
【氏名】猪股 清秀
(72)【発明者】
【氏名】坂井 達弥
【審査官】 冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/042657(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/055803(WO,A1)
【文献】 特開2012−082388(JP,A)
【文献】 特開平11−314296(JP,A)
【文献】 高分子大辞典 MARUZEN,日本,丸善株式会社,1994年 9月20日,p.101
【文献】 高分子化学,日本,共立出版株式会社,1987年 3月 5日,第3版,p.301
【文献】 プラスチック・データブック,日本,株式会社工業調査会,1999年12月 1日,第1版,p.70
【文献】 エポキシ樹脂ハンドブック,日本,日刊工業新聞社,1987年12月25日,第1版,p.38
【文献】 アドバンスシミュレーション Vol.5,日本,アドバンスソフト株式会社,2010年11月15日,第5巻,pp.51-52
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16−11/162
C08L 21/00
C08L 23/04
E04B 1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδのピークが−60℃以上0℃未満の温度範囲に存在する軟質材(A)と、動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδのピークが0℃以上60℃以下の温度範囲に存在する樹脂(B)とを、軟質材(A)100質量部当たり樹脂(B)1〜50質量部の割合で含み、
樹脂(B)が、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)16〜95モル%、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα−オレフィンから導かれる構成単位(ii)5〜84モル%および非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)0〜10モル%(ただし、構成単位(i)、(ii)および(iii)の合計を100モル%とする)を有する4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(b−1)を含む遮音材。
【請求項2】
軟質材(A)がエチレン系ゴム、天然ゴムおよびジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の遮音材。
【請求項3】
軟質材(A)がエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(a)を含む、請求項1に記載の遮音材。
【請求項4】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(a)は、エチレンから導かれる構成単位の含有量が40〜72質量%であり、かつ非共役ポリエンから導かれる構成単位の含有量が2〜15質量%である、請求項3に記載の遮音材。
【請求項5】
樹脂(B)が、プロピレンから導かれる構成単位の含有比率が15〜39モル%である4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の遮音材。
【請求項6】
樹脂(B)は、動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδのピークが0℃以上28℃以下の温度範囲に存在する、請求項1〜のいずれかに記載の遮音材。
【請求項7】
軟質材(A)および樹脂(B)を含む組成物を、加硫剤を用いて架橋して得られる、請求項1〜のいずれかに記載の遮音材。
【請求項8】
前記遮音材は、少なくともその一部が発泡体であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の遮音材。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載の遮音材を含む自動車用シール材。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載の遮音材を含む建築用シール材。
【請求項11】
請求項1〜のいずれかに記載の遮音材を含む鉄道車両用シール材。
【請求項12】
請求項1〜のいずれかに記載の遮音材を含む船舶用シール材。
【請求項13】
請求項1〜のいずれかに記載の遮音材を含む航空機用シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮音材に関し、詳しくは、軽量かつ遮音特性に優れた遮音材に関する。
【背景技術】
【0002】
建材、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話などの電気・電子機器、光学機器、精密機器、玩具、家庭・事務電気製品などの部品やハウジング、さらには特に鉄道車両、自動車、船舶、航空機、等の交通および移動産業分野で利用される部品および成形材料には、耐衝撃性、耐熱性、強度、寸法安定性等の一般的な材料特性の他に、制振性や遮音性が要求される。
【0003】
従来、高い制振性を発揮する材料は知られているが、制振性の高い材料が必ずしも遮音性に優れているとは限らなかった。例えば、低周波数領域に代表される振動伝達音を遮断することはできても、人間の耳が敏感に感知する1〜6kHzの高周波数領域の音を有効に遮断することはできなかった。
【0004】
例えば風切り音の周波数は、おおよそ2〜10kHzと言われている。このような風切り音の他、さらにタイヤパターンノイズやモーター由来の騒音も含めて遮音できる技術が要望されている。このため、人間の耳が敏感に感知する1〜6kHzの高周波数領域の音をバランスよく遮音することができる遮音材の開発が必要である。
【0005】
特許文献4および5は、動的粘弾性で測定されるtanδの温度領域が異なる2種以上の高分子素材を組み合わせることを特徴とする衝撃吸収材を開示するが、遮音性については充分な検証をしていない。
【0006】
また近年、低環境負荷、低燃費、省エネの観点から、鉄道車両、自動車、船舶、航空機、等の交通および移動産業分野で利用される部品および成形材料には、軽量化が強く要求されている。
【0007】
特許文献1に、遮音特性を向上させる手法として、高比重の金属、金属酸化物などの無機物を混合することで、遮音性を向上させる技術が開示されている。この技術に係る遮音材は優れた遮音性能を有しているが、比重4.0以上の無機物を使用しているので必然的に重くなり、軽量化という要求は満足していない。そのほか、特許文献2および3にも、比重の大きいフィラーを用いて遮音性を高めた技術が開示されている。
【0008】
また、軽量化を達成しつつ、遮音特性を向上させる手段として、複数の部材を組み合わせたり、構造に特徴を持たせたりした遮音材が検討されているが、これらの遮音材は構造が複雑なため、歩留まり低下、生産速度の低下など、生産性が向上しないという課題を有していた。
【0009】
すなわち、軽量化と遮音特性の向上を、複雑な構造に依存することなく、両立させうる技術ならびに材料の開発が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭58−90700号公報
【特許文献2】特開2001−146534号公報
【特許文献3】特開2001−002866号公報
【特許文献4】WO2013/191222
【特許文献5】特開2012−162668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、複雑な構造に依存することなく、軽量化と遮音特性の向上とが両立した遮音材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決することを目的とし鋭意検討を重ねた結果、動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδのピークを特定の温度域に有する材料を組み合わせて使用することにより、軽量でありかつ遮音特性の優れた遮音材を得ることができることを見出した。さらに遮音性に関して鋭意検討した結果、動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδのピークが0℃以上60℃以下の温度範囲に存在する高分子材料は1〜4kHzの遮音性に優れ、動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδのピークが−60℃以上0℃未満の温度範囲に存在する高分子材料は4〜6kHzの遮音性に優れること見出した。これらを最適な比率で配合し、場合によってはさらに架橋することにより、1〜6kHzの領域にわたりバランスよく遮音することが可能なゴム組成物およびその架橋体を得ることが可能となった。
【0013】
すなわち本発明は、動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδのピークが−60℃以上0℃未満の温度範囲に存在する軟質材(A)と、動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδのピークが0℃以上60℃以下の温度範囲に存在する樹脂(B)とを、軟質材(A)100質量部当たり樹脂(B)1〜50質量部の割合で含む遮音材である。
【0014】
前記遮音材において、軟質材(A)がエチレン系ゴム、天然ゴムおよびジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0015】
前記遮音材において、軟質材(A)がエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(a)を含むことが好ましい。
【0016】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(a)は、エチレンから導かれる構成単位の含有量が40〜72質量%であり、かつ非共役ポリエンから導かれる構成単位の含有量が2〜15質量%であることが好ましい。
【0017】
前記遮音材において、樹脂(B)が芳香族系重合体、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(b)、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂およびポリアミドから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0018】
前記遮音材において、樹脂(B)が、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)16〜95モル%、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα−オレフィンから導かれる構成単位(ii)5〜84モル%および非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)0〜10モル%(ただし、構成単位(i)、(ii)および(iii)の合計を100モル%とする)を有する4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(b−1)を含むことが好ましい。
【0019】
前記遮音材として、軟質材(A)および樹脂(B)を含む組成物を、加硫剤を用いて架橋して得られる遮音材を好適に挙げることができる。
【0020】
前記遮音材は、少なくともその一部が発泡体であることが好ましい。
【0021】
さらに、前記遮音材を含む自動車用シール材、建築用シール材、鉄道車両用シール材、船舶用シール材および航空機用シール材等を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の遮音材は、複雑な形状に依存せず、かつ、重量を増すことなく、優れた遮音特性を実現した材料である。
【0023】
本発明の遮音材は、建材(床裏打ち、壁、天井材など)、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話などの電気および電子機器、光学機器、精密機器、玩具、家庭および事務電気製品などの部品やハウジングに有効であり、特に鉄道車両、自動車、船舶、航空機等の交通および移動産業分野での部品、成形材料としての利用価値が極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1(A)は、実施例1および比較例1〜6の遮音材において、周波数1〜4kHzにおける、試験片重量と平均透過損失との関係を示す図である。図1(B)は、実施例1および比較例1〜6の遮音材において、周波数4〜6kHzにおける、試験片重量と平均透過損失との関係を示す図である。
図2図2(A)は、実施例11〜16および比較例16〜20の遮音材において、周波数1〜4kHzにおける、試験片重量と平均透過損失との関係を示す図である。図2(B)は、実施例11〜16および比較例16〜20の遮音材において、周波数4〜6kHzにおける、試験片重量と平均透過損失との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδのピークが−60℃以上0℃未満の温度範囲に存在する軟質材(A)と、動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδのピークが0℃以上60℃以下の温度範囲に存在する樹脂(B)とを、前記軟質材(A)100質量部に対し樹脂(B)1〜50質量部の割合で含む遮音材である。
【0026】
まず、動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδについて説明する。材料に対し、雰囲気温度を連続的に変化させながら動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率G'(Pa)、損失弾性率G"(Pa)を測定し、G"/ G'で与えられる損失正接tanδを求める。温度と損失正接tanδとの関係をみると、損失正接tanδは一般に特定の温度においてピークを有する。そのピークが現れる温度は一般にガラス転移温度(以下、tanδ―Tgとも記す)と呼ばれる。損失正接tanδのピークが現れる温度は、実施例において記した動的粘弾性測定に基づき求めることができる。
【0027】
本発明の遮音材に含まれる軟質材(A)は、損失正接tanδのピークを−60℃以上0℃未満の温度範囲に有する。本発明の遮音材に含まれる樹脂(B)は、損失正接tanδのピークを0℃以上60℃以下の温度範囲に有する。本発明の遮音材は、この軟質材(A)および樹脂(B)を、軟質材(A)100質量部当たり樹脂(B)1〜50質量部の割合で含む。これらの条件を満たす本発明の遮音材は、優れた遮音特性を有する。本発明の遮音材は、比重の大きいフィラーを含有する必要がないので、軽量化を実現できる。また、本発明の遮音材は、複数の部材を組み合わせたり、構造に特徴を持たせたりする必要がないので、複雑な構造に加工する必要もない。本発明の遮音材が前記条件を満たすことにより優れた遮音特性を実現できるのは、−60℃以上0℃未満および0℃以上60℃以下という異なる温度範囲に損失正接tanδのピークを有する複数の材料を所定の割合で含むことにより、人間の耳が敏感に感知する1〜6kHzの高周波数の全領域の音を有効に遮断することができるためであると考えられる。
【0028】
遮音特性を向上させるという観点から、軟質材(A)は、損失正接tanδのピークを好ましくは−55〜−5℃、より好ましくは−50〜−10℃の温度範囲に有し、樹脂(B)は、損失正接tanδのピークを好ましくは5〜55℃、より好ましくは10〜50℃の温度範囲に有する。また、遮音特性を向上させるという観点から、本発明の遮音材は、軟質材(A)100質量部当たり樹脂(B)を好ましくは5〜45質量部、より好ましくは10〜40質量部の割合で含む。
【0029】
軟質材(A)は、損失正接tanδのピークを−60℃以上0℃未満の温度範囲に有する材料でありさえすれば前述のとおり優れた遮音特性が得られるので、その種類に特に制限はない。軟質材(A)としては、たとえばエチレン系ゴム、天然ゴムおよびジエン系ゴム等を含む材料を挙げることができる。軟質材(A)は、これらを混合して使用することもできる。
【0030】
ジエン系ゴムとしては、たとえばイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルジエンゴム(NBR)およびブチルゴム(IIR)等を挙げることができる。
【0031】
エチレン系ゴムとしては、エチレン・α−オレフィン共重合体(EPM)およびエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(EPDM)等を挙げることができる。
【0032】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。α−オレフィンとしては、たとえば、プロピレン、ブテン−1,4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1、トリデセン−1、テトラデセン−1、ペンタデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、ノナデセン−1、エイコセン−1、9−メチル−デセン−1、11−メチル−ドデセン−1、12−エチル−テトラデセン−1などが挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体におけるα−オレフィンについては、前記エチレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンと同様である。
【0034】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体における非共役ポリエンとしては、たとえば、炭素原子数が5〜20、好ましくは5〜10である非共役ポリエンが挙げられ、具体的には、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等を挙げることができる。
【0035】
軟質材(A)は、耐熱老化性、耐候性、耐オゾン性の点で、特にエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(a)を含むことが好ましい。軟質材(A)におけるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(a)の含有量は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。
【0036】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(a)において、柔軟性の観点から、エチレンから導かれる構成単位の含有量は好ましくは40〜72質量%、より好ましくは42〜66質量%、さらに好ましくは44〜62質量%であり、非共役ポリエンから導かれる構成単位の含有量は好ましくは2〜15質量%、より好ましくは5〜14質量%、さらに好ましくは7〜12質量%である。
【0037】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(a)においては、前述のα−オレフィンのうち炭素数3〜10のα−オレフィンが好ましく、特にプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が特に好ましい。
【0038】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(a)においては、前述の非共役ポリエンのうち好ましい非共役ポリエンとしては、ジシクロペンタジエン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等が挙げられる。
【0039】
また、軟質材(A)中の結晶化ポリオレフィン含量は10質量%未満であることが好ましい。
【0040】
樹脂(B)は、損失正接tanδのピークを0℃以上60℃以下の温度範囲に有する材料でありさえすれば前述のとおり優れた遮音特性が得られるので、その種類に特に制限はない。樹脂(B)としては、たとえば芳香族系重合体、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(b)、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂およびポリアミド等を挙げることができる。樹脂(B)としては、これらを混合して使用することもできる。樹脂(B)は、耐候性、耐オゾン性の点で、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(b)を含むことが好ましい。
【0041】
前記芳香族系重合体としては、たとえばスチレン、アルキルスチレン等の芳香族ビニルモノマーの重合体および芳香族ビニルモノマーとオレフィン系モノマーとの共重合体等を挙げることができる。
【0042】
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(b)におけるα−オレフィンは、たとえば炭素原子数2〜20のα−オレフィンであり、4−メチル−1−ペンテンを除き、直鎖状および分岐状のα−オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、官能基化ビニル化合物等を挙げることができる。4-メチル-1-ペンテン・α−オレフィン共重合体には、α−オレフィンに非共役ポリエンは含まれないものとする。
【0043】
直鎖状α−オレフィンとしては、炭素原子数が2〜20、好ましくは2〜15、より好ましくは2〜10の直鎖状α−オレフィンが挙げられ、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらの中で好ましいのは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0044】
分岐状のα−オレフィンとしては、好ましくは炭素原子数5〜20、より好ましくは5〜15の分岐状のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセンなどが挙げられる。
【0045】
環状オレフィンとしては、炭素原子数3〜20、好ましくは5〜15の環状オレフィンが挙げられ、具体的には、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロへプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0046】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等のモノまたはポリアルキルスチレンなどが挙げられる。
【0047】
共役ジエンとしては、炭素原子数4〜20、好ましくは4〜10の共役ジエンが挙げられ、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエンなどが挙げられる。
【0048】
官能基化ビニル化合物としては、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィン、(メタ)アクリル酸、プロピオン酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸などの不飽和カルボン酸、アリルアミン、5−ヘキセンアミン、6−ヘプテンアミンなどの不飽和アミン、(2,7−オクタジエニル) コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物、上記不飽和カルボン酸から得られた無水物などの不飽和カルボン酸無水物、上記不飽和カルボン酸から得られたハロゲン化物などの不飽和カルボン酸ハライド、4−エポキシ−1−ブテン、5−エポキシ−1−ペンテン、6−エポキシ−1−ヘキセン、7−エポキシ−1−ヘプテン、8−エポキシ−1−オクテン、9−エポキシ−1−ノネン、10−エポキシ−1−デセン、11−エポキシ−1−ウンデセン等の不飽和エポキシ化合物、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−アクロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのエチレン性不飽和シラン化合物等が挙げられる。
【0049】
上記水酸基含有オレフィンとしては、水酸基含有のオレフィン系化合物であれば特に制限されないが、例えば末端水酸基化オレフィン系化合物が挙げられる。末端水酸基化オレフィン系化合物としては、ビニルアルコール、アリルアルコール、水酸化−1−ブテン、水酸化−1−ペンテン、水酸化−1−ヘキセン、水酸化−1−オクテン、水酸化−1−デセン、水酸化−1−ウンデセン、水酸化−1−ドデセン、水酸化−1−テトラデセン、水酸化−1−ヘキサデセン、水酸化−1−オクタデセン、水酸化−1−エイコセン等の炭素原子数2〜20、好ましくは2〜15の直鎖状の水酸化−α−オレフィン;水酸化−3−メチル−1−ブテン、水酸化−3−メチル−1−ペンテン、水酸化−4−メチル−1−ペンテン、水酸化−3−エチル−1−ペンテン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、水酸化−4−メチル−1−ヘキセン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、水酸化−4−エチル−1−ヘキセン、水酸化−3−エチル−1−ヘキセンなどの好ましくは炭素数5〜20、より好ましくは炭素数5〜15の分岐状の水酸化−α−オレフィンが挙げられる。
【0050】
上記ハロゲン化オレフィンとしては、塩素、臭素、ヨウ素等の周期表第17族原子を有するハロゲン化−α−オレフィンが挙げられ、具体的には、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化−1−ブテン、ハロゲン化−1−ペンテン、ハロゲン化−1−ヘキセン、ハロゲン化−1−オクテン、ハロゲン化−1−デセン、ハロゲン化−1−ドデセン、ハロゲン化−1−ウンデセン、ハロゲン化−1−テトラデセン、ハロゲン化−1−ヘキサデセン、ハロゲン化−1−オクタデセン、ハロゲン化−1−エイコセン等の炭素原子数が2〜20、好ましくは2−15の直鎖状のハロゲン化−α−オレフィン;ハロゲン化−3−メチル−1−ブテン、ハロゲン化−4−メチル−1−ペンテン、ハロゲン化−3−メチル−1−ペンテン、ハロゲン化−3−エチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4−メチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4−エチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−3−エチル−1−ヘキセンなどの好ましくは炭素数5〜20、より好ましくは炭素数5〜15の分岐状のハロゲン化−α−オレフィンが挙げられる。
【0051】
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(b)におけるα−オレフィンは1種類単独であってもよく、2種以上の組み合せであってもよい。
【0052】
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(b)におけるα−オレフィンとしては、特に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、水酸化−1−ウンデセンが好適である。さらに、柔軟性、応力吸収性、応力緩和性などの点から、炭素原子数が2〜10の直鎖状のα−オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンがより好ましい。これらの中でも、高い応力吸収性、ポリオレフィン改質性も得られる点で、エチレンおよびプロピレンが好ましく、プロピレンが特に好ましい。
【0053】
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(b)は、必要に応じて、非共役ポリエンから導かれる構成単位を有していてもよい。 非共役ポリエンについては、前述のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(a)における非共役ポリエンと同様である。
【0054】
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(b)は、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の共重合成分を含んでいてもよい。
【0055】
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(b)としては、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα−オレフィンから導かれる構成単位(ii)および任意に非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)の含有比率が以下のような4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(b−1)が好ましい。すなわち、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(b−1)における構成単位(i)、構成単位(ii)および構成単位(iii)の含有比率としては、構成単位(i)、(ii)および(iii)の合計を100モル%として、構成単位(i)16〜95モル%、構成単位(ii)5〜84モル%、構成単位(iii)0〜10モル%であり、好ましくは構成単位(i)26〜90モル%、構成単位(ii)10〜74モル%、構成単位(iii)0〜7モル%であり、さらに好ましくは構成単位(i)61〜85モル%、構成単位(ii)15〜39モル%、構成単位(iii)0〜5モル%である。
【0056】
本発明の遮音材は、軟質材(A)および樹脂(B)以外に、本発明の目的を阻害しない範囲内で、軟化材、補強材、充填材、加工助剤、活性剤、吸湿剤等を含有してもよい。
【0057】
軟化材は、その用途により適宜選択でき、単独でも2種以上混合しても用いることができる。軟化材の具体例としては、パラフィンオイル等のプロセスオイル(例えば、「ダイアナプロセスオイル PS−430」(商品名:出光興産株式会社製)など)、潤滑油、流動パラフィン、石油アスファルト、およびワセリン等の石油系軟化材;コールタール、およびコールタールピッチ等のコールタール系軟化材;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、およびヤシ油等の脂肪油系軟化材;蜜ロウ、カルナウバロウ、およびラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、およびラウリン酸亜鉛等の脂肪酸またはその塩;ナフテン酸、パイン油、およびロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、およびクマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、およびジオクチルセバケート等のエステル系軟化材;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油、トール油、およびサブ(ファクチス)などが挙げられる。なかでも、石油系軟化材が好ましく、特にプロセスオイル、その中でもパラフィンオイルが好ましい。
【0058】
軟化材の配合量は、軟質材(A)100質量部に対して通常5〜150質量部、好ましくは10〜120質量部、より好ましくは20〜100質量部である。
【0059】
補強材としては、具体的には、市販されている「旭#55G」および「旭#50HG」(商品名:旭カーボン株式会社製)、「シースト(商品名)」シリーズ:SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラック(東海カーボン株式会社製)、これらカーボンブラックをシランカップリング剤等で表面処理したもの、シリカ、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸等を用いることができる。これらのうち、「旭#55G」、「旭#50HG」、「シーストHAF」のカーボンブラックが好ましい。
【0060】
充填材としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等を用いることができる。これらのうち、重質炭酸カルシウムが好ましい。重質炭酸カルシウムとして、市販されている「ホワイトンSB」(商品名:白石カルシウム株式会社)等を用いることができる。
【0061】
補強材および充填材の配合量はそれぞれ、軟質材(A)100質量部に対し、通常30〜300質量部、好ましくは50〜250質量部、さらに好ましくは70〜230質量部である。
【0062】
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムおよびエステル類等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。加工助剤は、軟質材(A)100質量部に対して、通常10質量部以下、好ましくは8.0質量部以下、さらに好ましくは5.0質量部以下の量で適宜配合される。
【0063】
活性剤は、用途により適宜選択でき、単独でも2種以上混合しても用いることができる。活性剤の具体的な例としては、ジ−n−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン、「アクチングB」(商品名:吉冨製薬株式会社製)、「アクチングSL」(商品名:吉冨製薬株式会社製)などのアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、「PEG#4000」(ライオン株式会社製))、レシチン、トリアリレートメリテート、脂肪族および芳香族カルボン酸の亜鉛化合物(例えば、「Struktol activator 73」、「Struktol IB 531」および「Struktol FA541」(商品名:Schill & Seilacher社製))などの活性剤;「ZEONET ZP」(商品名:日本ゼオン株式会社製)などの過酸化亜鉛調整物;オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物(例えば、「アーカード2HF」(商品名:ライオン・アクゾ株式会社製))などが挙げられる。これらのうち、ポリエチレングリコール(例えば、「PEG#4000」(ライオン株式会社製))、「アーカード2HF」が好ましい。活性剤の配合量は、軟質材(A)100質量部に対して、通常0.2〜10質量部、好ましくは0.3〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜4質量部である。
【0064】
吸湿剤は、用途により適宜選択でき、単独でも2種以上混合しても用いることができる。吸湿剤の具体的な例としては、酸化カルシウム、シリカゲル、硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、ホワイトカーボン等が挙げられる。これらのうち、酸化カルシウムが好ましい。吸湿剤の配合量は、軟質材(A)100質量部に対して、通常0.5〜15質量部、好ましくは1.0〜12質量部、さらに好ましくは1.0〜10質量部である。
【0065】
本発明の遮音材は、上記成分を混練することにより得ることができる。本発明の遮音材は、形状に特に制限はない。たとえば、本発明の遮音材は、カレンダーロール法やTダイ押出し法などのシート成形法でシート状に成形される。本発明の遮音材は、シートの形状にすることで遮音シートとして使用することができる。また、得られたシートを、所定の形状の成形体とする金型を用いて圧縮成形することにより、所望の形状の遮音材とすることができる。
【0066】
本発明の遮音材は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体など架橋可能な成分を含む場合には、これらの成分が架橋されていてもよい。架橋する場合には、架橋可能な前記成分に加硫剤を加え、混練する。つまり、本発明の遮音材は、軟質材(A)および樹脂(B)を含む組成物を、加硫剤を用いて架橋して得ることもできる。
【0067】
加硫剤(架橋剤)としては、イオウ系化合物、有機過酸化物、フェノール樹脂、オキシム化合物等を用いることができる。
【0068】
イオウ系化合物としては、イオウ、塩化イオウ、二塩化イオウ、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレン等を例示できる。イオウ系化合物としては、イオウ、テトラメチルチウラムジスルフィドが好ましい。イオウ系化合物は、軟質材(A)100質量部に対して、通常0.3〜10質量部、好ましくは0.5〜5.0質量部、さらに好ましくは0.7〜4.0質量部配合する。
【0069】
上記有機過酸化物としては、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジエチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ジブチルヒドロペルオキシド等を例示できる。これらのうち、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが好ましい。 有機過酸化物の配合量は、軟質材(A)100gに対して、通常0.001〜0.05モル、好ましくは0.002〜0.02モル、さらに好ましくは0.005〜0.015モルである。
【0070】
加硫剤としてイオウ系化合物を使用する場合には、加硫促進剤の併用が好ましい。加硫促進剤としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール(例えば、「サンセラーM」(商品名:三新化学工業株式会社製)など)、2−(4−モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール(例えば、「ノクセラーMDB−P」(商品名:三新化学工業株式会社製)など)、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルフォリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン等のグアニジン系;アセトアルデヒド−アニリン縮合物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、アルデヒドアミン系;2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系;ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア等のチオウレア系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(例えば、「サンセラーPZ」(商品名:三新化学工業株式会社製)、「サンセラーBZ」(商品名:三新化学工業株式会社製)など)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系;エチレンチオ尿素(例えば、「サンセラーBUR」(商品名:三新化学工業株式会社製)、「サンセラー22−C」(商品名:三新化学工業株式会社製)など)、N,N'−ジエチルチオ尿素等のチオウレア系;ジブチルキサトゲン酸亜鉛等のザンテート系;その他亜鉛華(例えば、「META−Z102」(商品名:井上石灰工業株式会社製)などの酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0071】
これらの加硫促進剤の配合量は、軟質材(A)100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜15質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。
【0072】
加硫を行う場合、さらに加硫助剤を用いることができる。加硫助剤は、用途により適宜選択でき、単独でも2種以上混合しても用いることができる。加硫助剤の具体的例としては、酸化マグネシウム、亜鉛華(例えば、「META−Z102」(商品名:井上石灰工業株式会社製)などの酸化亜鉛)などが挙げられる。その配合量は、通常、軟質材(A)100質量部に対して、1〜20質量部である。加硫助剤としては、p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム系;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系;その他マレイミド系;ジビニルベンゼン等も挙げられる。
【0073】
本発明の遮音材は、全体または一部が発泡体であってもよい。前記発泡体は加硫発泡体であってもよい。本発明の遮音材は、少なくともその一部を発泡体にすることにより、例えば、自動車のスポンジ状シール製品、特にウエザーストリップとして有効に使用することができる。
【0074】
本発明の遮音材を発泡体にする場合には、前記成分に発泡剤を加えて発泡させる。発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機系発泡剤;N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N'−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等のヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'−ジフェニルジスルホニルアジド等のアジド化合物などの有機発泡剤が挙げられる。
【0075】
発泡剤の配合量は、軟質材(A)100質量部に対して通常3〜30質量部、好ましくは4〜20質量部である。発泡剤としては、例えば市販されている、ビニホールAC#3M(商品名:永和化成工業株式会社 アゾジカルボンアミド(略号ADCA))、ビニホールAC#3C−K2(商品名:永和化成工業株式会社 アゾジカルボンアミド(略号ADCA))、セルマイクC−2(商品名:三協化成株式会社 アゾジカルボンアミド(略号ADCA))、ネオセルボンN#1000M(商品名:永和化成工業株式会社 4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(略号OBSH))等を用いることができる。
【0076】
また、発泡剤とともに発泡助剤を使用してもよい。発泡助剤としては、例えば、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、シュウ酸、クエン酸などの有機酸およびその塩、尿素まおよびその誘導体等が挙げられる。 発泡助剤の配合量は、軟質材(A)100質量部に対して通常0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜4質量部である。発泡助剤としては、例えば市販されている、セルペーストK5(商品名:永和化成工業株式会社 尿素)、FE−507(商品名:永和化成工業株式会社 重曹)等を用いることができる。
【0077】
本発明の遮音材が加硫発泡体である場合、前記成分、加硫剤および発泡剤等を含む組成物を加硫発泡させる。加硫発泡の一例としては、前記組成物を、チューブ状ダイスに装着した押出機を用いて押出し、チューブ状に成形する方法が挙げられる。得られた成形体を成形と同時に加硫槽内に導入し、たとえば230℃で5分間加熱することで、架橋および発泡を行い、チューブ状発泡体(スポンジ)を得ることができる。
【0078】
本発明の遮音材は、前述のとおり、複雑な形状にすることなく、軽量でありながら、優れた遮音特性を実現した材料であるので、様々な用途に使用することができる。たとえば、本発明の遮音材を含む自動車用シール材、建築用シール材、鉄道車両用シール材、船舶用シール材および航空機用シール材等は優れた遮音製品となる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。下記表中の成分に関する数値は質量部を示す。
(配合材料)
実施例及び比較例に用いた配合材料は下記の通りである。
A)軟質材
A−1)EPDM(商品名:三井EPT 1045(三井化学(株)製)、エチレン含有量:58wt%、ジシクロペンタジエン含有量:5.0wt%、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]:38)
A−2)EPDM(商品名:三井EPT 8030M(三井化学(株)製)、EPDM、エチレンから導かれる構造単位含有量:47質量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)から導かれる構造単位含有量:9.5質量%、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]:32)
A−3)下記重合例1により得られたEPDM
[重合例1]
攪拌翼を備えた容積300Lの重合器を用いて連続的に、エチレン、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)からなる四元共重合反応を80℃にて行った。重合溶媒としてヘキサン(最終濃度:90.8重量%)を用いて、エチレン濃度を3.1重量%、プロピレン濃度を4.6重量%、ENB濃度を1.4重量%およびVNB濃度を0.11重量%として、これらを連続供給した。重合圧力を0.8MPaに保ちながら、主触媒としてメタロセン系触媒である[N−(1,1−ジメチルエチル)−1,1−ジメチル−1−[(1,2,3,3A,8A−η)−1,5,6,7−テトラヒドロ−2−メチル−S−インダセン−1−yl]シランアミネート(2−)−κN][(1,2,3,4−η)−1,3−ペンタジエン]−チタニウムを、その濃度が0.0013mmol/Lとなるよう連続的に供給した。また、共触媒として(C65)3CB(C65)4を、その濃度が0.0066mmol/Lとなるように、有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウム(TIBA)を、その濃度が0.0154mmol/Lとなるように、それぞれ連続的に供給した。なお、上記メタロセン系触媒は、国際公開第98/49212号パンフレットに記載されている方法に準じて合成して得た。
【0080】
このようにして、エチレン、プロピレン、ENBおよびVNBから合成された共重合体ゴムを10.8重量%含む重合反応液が得られた。重合器下部から抜き出した重合反応液中に少量のメタノールを添加して重合反応を停止させ、スチームストリッピング処理にて共重合体ゴムを溶媒から分離した後、80℃で一昼夜減圧乾燥し、エチレン・プロピレン・非共役ジエンランダム共重合体を得た。この共重合体におけるチレンから導かれる構造単位含有量は46質量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)から導かれる合計の構造単位含有量は11.6質量%であり、この共重合体のムーニー粘度[ML1+4(160℃)]は74であった。
【0081】
A−4)ブチルゴム(IIR)(商品名:JSR Butyl 268(JSR社(株)製)、不飽和度(モル%):1.5%、ムーニー粘度[ML1+8(125℃)]:51)
A−5)スチレンブタジエンゴム(SBR)(商品名:SBR 1502(日本ゼオン(株)製)、結合スチレン量:23.5%、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]:52)
A−6)アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)(商品名:Nipol 1042(日本ゼオン(株)製)、結合アクリロニトリル量:33.5%、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]:77.5)
B)樹脂
B−1)下記重合例2により得られた重合体
[重合例2]
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4−メチル−1−ペンテン450mlを入れた。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml入れ、攪拌機を回した。
【0082】
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.40MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液を攪拌しながら、反応溶液にアセトンを注ぎ、ポリマーを析出させた。
【0083】
反応溶液を濾過して得られた、溶媒を含むポリマー塊を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られた重合体は36.9gであり、重合体中の4−メチル−1−ペンテンから導かれる構造単位含量は72mol%、プロピレンから導かれる構造単位含量は28mol%であった。ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)は337,000、tanδ―Tgは28℃、tanδ最大値は2.4であった。
【0084】
B−2)水素添加スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(商品名:ハイブラー5127(クラレ(株)製)、tanδ―Tg:18℃、tanδ最大値:0.8)
B−3)水素添加スチレン系熱可塑エラストマー(商品名:S.O.E. L605(旭化成(株)製)、tanδ―Tg:16℃、tanδ最大値:1.5)
C)加硫助剤
C−1)酸化亜鉛2種(三井金属鉱業(株)製)
C−2)活性亜鉛華(商品名:META−Z102(井上石灰工業(株)製))
D)加工助剤
ステアリン酸(商品名:粉末ステアリン酸さくら(日油(株)製))
E)補強材
カーボンブラック(商品名:旭#55G(旭カーボン(株)製))
F)充填材
炭酸カルシウム(商品名:ホワイトンSB(白石カルシウム(株)製))
G)活性剤
ポリエチレングリコール(商品名:PEG#4000(ライオン(株)製))
H)軟化材
パラフィンオイル(商品名:ダイアナプロセスオイル PS−430(出光興産(株)製))
I)加硫剤
硫黄(商品名:アルファグランS-50EN(東知(株)製))
J)加硫促進剤
J−1)チウラム系加硫促進剤:テトラメチルチウラムジスルフィド(商品名:サンセラーTT(三新化学工業(株)製))
J−2)チアゾール系加硫促進剤:2−メルカプトベンゾチアゾール(商品名:サンセラーM(三新化学工業(株)製))
J−3)スルフェンアミド系加硫促進剤:N-(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(商品名:サンセラーNS-G(三新化学工業(株)製))
J−4)チアゾール系加硫促進剤:ジベンゾチアジルジスルフィド(商品名:サンセラーDM(三新化学工業(株)製))
J−5)ジチオカルバメート系加硫促進剤:ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(商品名:サンセラーBZ(三新化学工業(株)製))
J−6)チオウレア系加硫促進剤:2-イミダゾリン-2-チオール(商品名:サンセラー22−C(三新化学工業(株)製))
J−7)ジチオカルバメート系加硫促進剤:ジエチルジチオカルバミン酸テルル(商品名:サンセラーTE−G(三新化学工業(株)製))
K)発泡剤
4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)(商品名:ネオセルボンN#1000M(永和化成工業(株)製))
L)吸湿剤
酸化カルシウム(商品名:VESTA−18(井上石灰工業(株)製))
(測定方法および評価方法)
以下の実施例および比較例において、各物性は以下の方法により測定または評価した。
a)動的粘弾性測定
粘弾性測定装置ARES(TA Instrumens JAPAN Inc.社製)を用いて、下記測定条件で各材料の粘度の温度依存性を測定した。当該測定で得られた、貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G")との比(G"/G':損失正接)をtanδとした。tanδを温度に対してプロットすると、上に凸の曲線すなわちピークが得られ、そのピークの頂点の温度をガラス転移温度、すなわちtanδ―Tgとし、その温度における極大値を測定した。tanδにつき2つのピークが観測された場合には、第1および第2のピークとして双方のtanδ―Tgおよび極大値を記録した。
【0085】
(測定条件)
Frequency :1.0Hz
Temperature :−70〜80℃
Ramp Rate :4.0℃/分
Strain :0.5%
b)遮音特性試験
プレスシートおよびチューブ状スポンジ成形品から試験片を打ち抜き、内径29mmφの4206−T型音響管(Bruel&Kjaer製)および測定用ソフト(PULSE Material Testing Type7758、Bruel&Kjaer製)を用いて垂直入射透過損失を測定し、1〜4kHzおよび4〜6kHzにおける平均透過損失を求めた。
c)比重、試験片重量
遮音特性試験に使用した試験片に対し、25℃雰囲気下で自動比重計(東洋精機製作所製:M−1型)を用いて質量測定および、空気中と純水中との質量の差から比重測定を行った。
[実施例1]
MIXTRON BB MIXER((株)神戸製鋼所社製、BB−4型、容積2.95L、ローター4WH)を用いて、軟質材A−1(EPDM)100質量部、樹脂B−1 40質量部、加硫助剤C−1(酸化亜鉛)5質量部、加工助剤(ステアリン酸)1質量部を混練した。混練は、ローター回転数50rpm、フローティングウェイト圧力3kg/cm2、混練時間5分間で行い、混練排出温度は148℃であった。
【0086】
次いで、上記混練後の配合物が温度40℃以下となったことを確認した後、上記配合物に加硫促進剤J−1(テトラメチルチウラムジスルフィド)1質量部、加硫促進剤J−2(2−メルカプトベンゾチアゾール)0.5質量部、加硫剤(硫黄)1.5質量部を添加し、8インチ二本ロール混練機を用いて混練した。混練条件としては、ロール温度を前ロール/後ロール:50℃/50℃、前ロールの回転数を12.5rpm、後ロールの回転数を10.4rpmとした。混練物をシート状に分出した後、加熱プレスを用いて160℃で20分間加熱加硫することで、厚さ2mmの加硫シート(プレスシート)を得た。この加硫シートを用いて上記測定および評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1〜6]
比較例1〜6について、配合組成を表1に示すとおりの配合組成に変更した以外は実施例1と同条件で加硫シート(プレスシート)を作製し、上記測定および評価を行った。ただし、比較例2では、樹脂(B)の替りにエチレン−α−オレフィン共重合体(商品名:タフマーDF605(三井化学(株)製)、tanδ―Tg:−46℃、tanδ最大値:0.5)を用いた。結果を表1に示す。
【0087】
また実施例1、比較例1〜6の遮音特性につき、試験片質量と平均透過損失との関係結果を図1に示した。図1(A)は1〜4kHz、図1(B)は4〜6kHzについての結果である。
【0088】
【表1】







【0089】
表1および図1に示すように、人間の耳に感度よく音が聞こえる1〜4kHzおよび4〜6kHzという周波数領域において、比較例1〜6では、測定に用いた試験片の質量が増すごとに透過損失が向上している。実施例1では、試験片の質量が比較例1〜6と同等か、またはそれより軽い場合であっても、遮音特性が比較例1〜6より高いことが確認される。この結果から、本発明の遮音材は、従来の遮音材の遮音特性を維持しながら軽量化が可能であること、または、従来の遮音材の軽量性を維持したまま遮音特性の向上が可能であることがわかる。
[実施例2]
8インチ二本ロール混練機を用いて、前ロール温度/後ロール温度:70℃/70℃、前ロールの回転数12.5rpm、後ロールの回転数10.4rpmという混練条件にて、軟質材A−4(ブチルゴム)100質量部、樹脂B−1 40質量部、加硫助剤C−1(酸化亜鉛)3質量部、加工助剤(ステアリン酸)1質量部を均一になるまで混練した後、加硫促進剤J−1(テトラメチルチウラムジスルフィド)1質量部、加硫剤(硫黄)1.75質量部を添加して、さらに均一になるまで混練した。その後、混練物をシート状に分出し、加熱プレスを用いて160℃で30分間加熱加硫することで、厚さ2mmの加硫シート(プレスシート)を得た。この加硫シートを用いて上記測定および評価を行った。結果を表2に示す。
[比較例7、8]
比較例7、8について、配合組成を表2に示すとおりの配合組成に変更した以外は実施例2と同条件で加硫シート(プレスシート)を作製し、上記測定および評価を行った。ただし、比較例8では、樹脂(B)の替りにエチレン−α−オレフィン共重合体(商品名:タフマーDF605(三井化学(株)製)、tanδ―Tg:−46℃、tanδ最大値:0.5)を用いた。結果を表2に示す。
【0090】
【表2】







【0091】
遮音特性試験の結果から、表2に示す通り、1〜4kHzおよび4〜6kHzの領域ともに、実施例2は、試験片の質量が比較例7、8より軽いにもかかわらず、遮音特性が比較例7、8より優れていることがわかる。
[実施例3]
8インチ二本ロール混練機を用いて、前ロール温度/後ロール温度:70℃/70℃、前ロールの回転数12.5rpm、後ロールの回転数10.4rpmという混練条件にて、軟質材A−5(スチレンブタジエンゴム)100質量部、樹脂B−1 40質量部、加硫助剤C−1(酸化亜鉛)3質量部、加工助剤(ステアリン酸)1質量部を均一になるまで混練した後、加硫促進剤J−3(N-(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)1質量部、加硫剤(硫黄)1.75質量部を添加して、さらに均一になるまで混練した。その後、混練物をシート状に分出し、加熱プレスを用い160℃で30分間加熱加硫することで、厚さ2mmの加硫シート(プレスシート)を得た。この加硫シートを用いて上記測定および評価を行った。結果を表3に示す。
[比較例9、10]
比較例9、10について、配合組成を表3に示すとおりの配合組成に変更した以外は実施例3と同条件で加硫シート(プレスシート)を作製し、上記測定および評価を行った。ただし、比較例10では、樹脂(B)替りにエチレン−α−オレフィン共重合体(商品名:タフマーDF605(三井化学(株)製)、tanδ―Tg:−46℃、tanδ最大値:0.5)を用いた。結果を表3に示す。
【0092】
【表3】









【0093】
遮音特性試験の結果から、表3に示す通り、1〜4kHzおよび4〜6kHzの領域ともに、実施例3は、試験片の質量が比較例9、10より軽いにもかかわらず、遮音特性が比較例9、10より優れていることがわかる。
[実施例4]
8インチ二本ロール混練機を用いて、前ロール温度/後ロール温度:70℃/70℃、前ロールの回転数12.5rpm、後ロールの回転数10.4rpmという混練条件にて、軟質材A−6(アクリロニトリルブタジエンゴム)100質量部、樹脂B−1 40質量部、加硫助剤C−1(酸化亜鉛)3質量部、加工助剤(ステアリン酸)1質量部を均一になるまで混練した後、加硫促進剤J−3(N-(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)0.7質量部、加硫剤(硫黄)1.55質量部を添加して、さらに均一になるまで混練した。その後、混練物をシート状に分出し、加熱プレスを用い160℃で30分間加熱加硫することで、厚さ2mmの加硫シート(プレスシート)を得た。この加硫シートを用いて上記測定および評価を行った。結果を表4に示す。
[比較例11、12]
比較例11、12について、配合組成を表4に示すとおりの配合組成に変更した以外は実施例4と同条件で加硫シート(プレスシート)を作製し、上記測定および評価を行った。ただし、比較例12では、樹脂(B)の替りにエチレン−α−オレフィン共重合体(商品名:タフマーDF605(三井化学(株)製)、tanδ―Tg:−46℃、tanδ最大値:0.5)を用いた。結果を表4に示す。
【0094】
【表4】









【0095】
遮音特性試験の結果から、表4に示す通り、1〜4kHzおよび4〜6kHzの領域ともに、実施例4は、試験片の質量が比較例11、12より軽いにもかかわらず、遮音特性が比較例11、12より優れていることがわかる。
[実施例5]
MIXTRON BB MIXER((株)神戸製鋼所社製、BB−4型、容積2.95L、ローター4WH)を用いて、軟質材A−3(EPDM)100質量部、樹脂B−1 40質量部、加硫助剤C−2(活性亜鉛華)8質量部、加工助剤(ステアリン酸)2質量部、補強材(カーボンブラック)88質量部、充填材(炭酸カルシウム)50質量部、活性剤(ポリエチレングリコール)1質量部、軟化材(パラフィンオイル)71質量部を混練した。混練は、ローター回転数50rpm、フローティングウェイト圧力3kg/cm2、混練時間5分間で行い、混練排出温度は152℃であった。
【0096】
上記混練後の配合物が温度40℃以下となったことを確認した後、上記配合物に加硫促進剤J−4(ジベンゾチアジルジスルフィド)1.5質量部、加硫促進剤J−5(ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛)2質量部、加硫促進剤J−6(2-イミダゾリン-2-チオール)1質量部、加硫促進剤J−7(ジエチルジチオカルバミン酸テルル)0.1質量部、加硫剤(硫黄)1.5質量部を添加し、14インチ二本ロール混練機を用いて混練した。混練条件としては、ロール温度を前ロール/後ロール:60℃/55℃、前ロールの回転数を13rpm、後ロールの回転数を11.5rpmとした。混練物をシート状に分出した後、加熱プレスを用いて180℃で10分間加熱加硫することで、厚さ2mmの加硫シート(プレスシート)を得た。この加硫シートを用いて上記測定および評価を行った。結果を表5に示す。
[実施例6〜10]
実施例6〜10について、配合組成を表5に示すとおりの配合組成に変更した以外は実施例5と同条件で加硫シート(プレスシート)を作製し、上記測定および評価を行った。結果を表5に示す。
[比較例13〜15]
比較例13〜15について、配合組成を表5に示すとおりの配合組成に変更した以外は実施例5と同条件で加硫シート(プレスシート)を作製し、上記測定および評価を行った。ただし、比較例14では、樹脂(B)の替りにエチレン−α−オレフィン共重合体(タフマーDF605(三井化学(株)製)、tanδ―Tg:−46℃、tanδ最大値:0.5)を用い、比較例15では、樹脂(B)の替りにポリオレフィン系共重合体(商品名:ノティオSN0285(三井化学(株)製)、tanδ―Tg:−10℃、tanδ最大値:1.2)を用いた。結果を表5に示す。
【0097】
【表5】






【0098】
遮音特性試験の結果から、表5に示す通り、1〜4kHzおよび4〜6kHzの領域ともに、実施例5〜10は、試験片の質量が比較例13〜15より軽い場合であっても、遮音特性が比較例13〜15より優れていることがわかる。
[実施例11]
MIXTRON BB MIXER((株)神戸製鋼所社製、BB−4型、容積2.95L、ローター4WH)を用いて、軟質材A−3(EPDM)100質量部、樹脂B−1 40質量部、加硫助剤C−2(活性亜鉛華)8質量部、加工助剤(ステアリン酸)2質量部、補強材(カーボンブラック)88質量部、充填材(炭酸カルシウム)50質量部、活性剤(ポリエチレングリコール)1質量部、軟化材(パラフィンオイル)71質量部、吸湿剤(酸化カルシウム)5質量部を混練した。混練は、ローター回転数50rpm、フローティングウェイト圧力3kg/cm2、混練時間5分間で行い、混練排出温度は152℃であった。
【0099】
上記混練後の配合物が温度40℃以下となったことを確認した後、上記配合物に、発泡剤(4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド))2.6質量部、加硫促進剤J−4(ジベンゾチアジルジスルフィド)1.5質量部、加硫促進剤J−5(ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛)2質量部、加硫促進剤J−6(2-イミダゾリン-2-チオール)1質量部、加硫促進剤J−7(ジエチルジチオカルバミン酸テルル)0.1質量部、加硫剤(硫黄)1.5質量部を添加し、14インチ二本ロール混練機を用いて混練した。混練条件としては、ロール温度を前ロール/後ロール:60℃/55℃、前ロールの回転数を13rpm、後ロールの回転数を11.5rpmとし、混練物をリボン状に分出した。
【0100】
次に、得られたリボン状の組成物を、チューブ状ダイス(内径12mm、肉厚1.5mm)を装着した60mmφ押出機を用いて、ダイス温度80℃、シリンダー温度60℃の条件で押出し、チューブ状に成形した。この成形体を成形と同時に230℃、1kHzのマイクロ波加硫槽、続いて、250℃に設定した直線式熱風加硫装置(HAV)に導入し、5分間加熱することで架橋ならびに発泡を行い、チューブ状スポンジ成形体を得た。このスポンジ成形体を切り出し、試験片を打ち抜き、この試験片を用いて上記測定および評価を行った。結果を表6に示す。
[実施例12〜16]
実施例12〜16について、配合組成および加硫条件を、表6に示すとおりの配合組成および加硫条件に変更した以外は実施例11と同条件でチューブ状スポンジ成形体を作製し、試験片を得た。この試験片を用いて上記測定および評価を行った。結果を表6に示す。
[比較例16〜20]
比較例16〜20について、配合組成および加硫条件を、表6に示すとおりの配合組成および加硫条件に変更した以外は実施例11と同条件でチューブ状スポンジ成形体を作製し、試験片を得た。この試験片を用いて上記測定および評価を行った。結果を表6に示す。
【0101】
また実施例11〜16、比較例16〜20の遮音特性につき、試験片質量と平均透過損失との関係結果を図12示した。図2(A)は1〜4kHz、図2(B)は4〜6kHzについての結果である。
【0102】
【表6】








【0103】
表6および図2に示すように、人間の耳に感度よく音が聞こえる1〜4kHzおよび4〜6kHzという周波数領域において、比較例16〜20では、測定に用いた試験片の重量が増すごとに透過損失が向上している。実施例11〜16では、試験片の質量が同等な比較例と比較して遮音特性が高いことが確認される。この結果から、本発明の遮音材は、従来の遮音材の遮音特性を維持しながら軽量化が可能であること、または、従来の遮音材の軽量性を維持したまま遮音特性の向上が可能であることがわかる。
図1
図2