(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光波長変換部材は、前記複数の発光素子と対向する側に溝が設けられている保持部材と、前記保持部材の溝に充填されている蛍光体含有樹脂層と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
前記発光素子から出射する素子光のうち、前記蛍光体含有樹脂層に向かわない素子光がそのまま外部へ透過しないようにする遮光部または光波長変換部を更に備えることを特徴とする請求項3または4に記載の車両用灯具。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。以下の各実施の形態では、灯具として車両用のターンシグナルランプに好適な一例について説明するが、もちろん車両以外の他の用途に用いることもできる。
【0020】
車両用のターンシグナルランプは、車両が曲がる方向が周囲から認識されやすいように横長ランプ形状で発光させるものが考案されている。また、車両が曲がる方向へランプの点灯部が移動するように発光させるシーケンシャル制御についても種々検討が行われている。このような点灯状態は、複数の光源(主にLED等の半導体発光素子)を間隔を空けてライン状に並べたランプにおいて、複数の光源を車両が曲がる方向に連続的に遅延発光させることで実現される。
【0021】
しかしながら、このようなランプは、複数の光源が塔載されている部分のみが発光し、光源同士の間の領域は発光しないため、極端に言えば点線又は破線状のライン発光になる。そのため、発光部の切れ目や明暗が目立たない連続ライン発光を実現するためには更なる改良の余地があった。そこで、各実施の形態では、この点を考慮した新たな構成について説明する。
【0022】
[第1の実施の形態]
(発光モジュール)
図1は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子を備えた発光モジュールを説明するための図である。
図1に示す発光モジュール10は、アルミナ基板12と、半導体発光素子14と、半導体発光素子14を封止する樹脂層16と、を備える。アルミナ基板12は、2mm×2mmの正方形の上面の中央にφ0.8mm、深さ0.1mmの凹部12aが形成されている。凹部12aには、Ti系のバッファー層を介し、銅めっきで給電パターンが形成されている。
【0023】
また、アルミナ基板12には、貫通ビア12bが形成されており、貫通ビア12bの内部には銅18が充填されている。銅18は、アルミナ基板12の裏面側の電極パターンと導通している。そして、アルミナ基板12の電極パターンの一部とアルミ基板22とを半田20で接続することで、発光モジュール10がアルミ基板22に実装される。なお、アルミ基板22の代わりにフレキシブルプリント基板、ガラス含有エポキシ樹脂基板、セラミックス基板等を用いてもよい。
【0024】
(半導体発光素子)
半導体発光素子14は、発光層としてInGaN系の材料を用いた0.5mm□のフリップチップ型の素子であり、380〜470nmに範囲にピーク波長を有している。半導体発光素子14は、アルミナ基板12の凹部12aに、FC(フリップチップ)実装される。また、ダイボンド剤としての透明シリコーンでダイボンドされた後、金ワイヤー等でワイヤーボンディングする方法を用いてもよい。
【0025】
(樹脂層)
樹脂層16は、透明又は半透明なジメチルシリコーン樹脂(平均粒径150nmのシリカチクソ剤を0.5体積%含有してもよい。)に蛍光体が0.5%体積%分散されたものであり、所定の硬化条件(150℃×1hr)により硬化し、半導体発光素子14を封止する。なお、樹脂層16は、含有する蛍光体の濃度が0.1〜30体積%であることが好ましい。蛍光体の濃度が0.1体積%未満だと、蛍光体を含有する樹脂層16の厚みを大きくする必要があり、結果的に発光部が大きくなりすぎる。そのため、車両用灯具として搭載する場合に制約がある。一方、蛍光体の濃度が30体積%より高いと、蛍光体を含有する樹脂層16の厚みが小さくなるため、半導体発光素子14の直上付近しか発光せず、連続したライン状の発光が困難となる。
【0026】
(蛍光体)
蛍光体は、例えば、一般式Me
x,Si
12−(m+n)Al
(m+n)O
nN
16−n:Eu
2+y(MeはCaを主とする2価のアルカリ土類金属イオンであり、x,y,m及びnは、それぞれ正の数であって、0.6≦x≦1.2、1.2≦m≦2.4、0.1≦n≦2.4、0.0001≦y≦0.1を満たす)で表されている蛍光体である。
【0027】
また、蛍光体は、一般式Ca
3−a−bM
aSiO
4Cl
2(MはSrあるいはMgであり、MがSrの場合、0≦a≦0.15、MがMgの場合0≦a≦0.10、及び、0<b≦0.10を満たす)で表される蛍光体であってもよい。
【0028】
これら蛍光体のドミナント波長は、585〜610nmの範囲にある。また、蛍光体の粒子平均サイズは、1〜40μmであるとよい。蛍光体の粒子平均サイズが1μmより小さいと、量子効率が低下する。また、蛍光体の粒子平均サイズが40μmより大きいと、透明樹脂に分散したときに沈降し易くなり、半導体発光素子の直上と素子間との輝度均一性が低下する。本実施の形態に係る蛍光体は、組成がCa
0.810Si
9.345Al
2.655O
0.875N
15.125:Eu
0.080、平均粒径が18μm、ドミナント波長が594nmである。
【0029】
(灯具)
図2は、第1の実施の形態に係る灯具の概略構成を示す模式図である。
図3は、
図2のA方向から見た模式図である。
図2に示すアルミ基板22は、長さ200mm、幅25mm、厚さ0.5mmの板状の部材であり、前述の発光モジュール10がライン状に複数(5個〜50個程度)実装されている。隣接する半導体発光素子14の間隔は、1〜20mm程度であればよく、本実施の形態で8mm(5〜10mm)程度である。また、アルミ基板22の実装面側には、反射層24が形成されている。反射層24は、例えば、可視光反射率88%の白色レジストが塗布されている。
【0030】
第1の実施の形態に係る灯具100は、ライン状に配列された複数の半導体発光素子14と、複数の半導体発光素子14を搭載するアルミ基板22と、複数の半導体発光素子14の発光面14aから離間して配置されているライン状の光波長変換部材26と、を備える。アルミ基板22は、複数のグループに分けられた複数の半導体発光素子14を1個または複数の半導体発光素子14からなるグループ毎に点消灯できるように形成された回路を有する。なお、回路は、半導体発光素子14を個別に点消灯できるように形成されていてもよい。
【0031】
(光波長変換部材)
光波長変換部材26は、複数の半導体発光素子14と対向する側にU字の溝が設けられている保持部材28と、保持部材28の溝に充填されている蛍光体含有樹脂層30と、を有している。加えて、光波長変換部材26は、複数の半導体発光素子14の直上にも実装することができる。保持部材28は、アクリル樹脂からなる、幅6mm、深さ6mm、長さ200mmのシリンドリカル状の成形品である。アクリル樹脂は、クリアーなもの、又は、グレーやブラウンでスモーク状に着色したものでもよい。保持部材28は、透明な樹脂(ポリカーボネート、ポリエステル、シクロポリオレフィン、ポリスチレン等)を使用することもできる。
【0032】
(蛍光体含有樹脂層)
蛍光体含有樹脂層30は以下の手順で形成される。はじめに、上述の蛍光体を透明シリコーン樹脂中に1体積%の割合で分散するように、真空自公転かくはん機で分散脱泡し、蛍光体ペーストを作製する。次に、この蛍光体ペーストを、保持部材28のU字溝の中に深さが3mmになるまで注入し、80℃で1時間加熱することで硬化し、蛍光体含有樹脂層30が形成される。これにより、U字の保持部材28の開口部近傍に空間が形成された光波長変換部材26が作製される。そして、保持部材28のU字の開口部近傍に形成された溝28aにより、アルミ基板22の端部を挟み込むことで、光波長変換部材26とアルミ基板22とが互いに固定される。なお、固定の際に溝28aに接着剤を塗布しておいてもよい。
【0033】
このように、灯具100は、半導体発光素子14の発光面14aから離間した位置に光波長変換部材26(蛍光体含有樹脂層30)が配置されている。そのため、発光素子から出射した素子光は、ある程度広がって蛍光体含有樹脂層30へ入射する。その結果、光波長変換部材の発光面の明るさ(輝度)の濃淡を抑制できる。
【0034】
また、光波長変換部材26は、保持部材28を介してアルミ基板22と位置決めされるため、半導体発光素子14の発光面14aから離間して光波長変換部材26(蛍光体含有樹脂層30)を配置することが容易となる。
【0035】
また、第1の実施の形態に係る灯具100および発光モジュール10においては、蛍光体含有樹脂層30と半導体発光素子14の発光面14aとが離間している。そのため、半導体発光素子14から出射する素子光のうち、蛍光体含有樹脂層30に向かわない素子光(
図3に示す点線の矢印)がそのまま外部へ透過することが考えられる。特に、半導体発光素子14の素子光が、蛍光体の励起光としては作用するが、灯具の発光色の形成には余り寄与しない紫外線又は短波長可視光であった場合、蛍光体で波長変換されずに外部へそのまま出射させないようにすることが望ましい。
【0036】
そこで、第1の実施の形態に係る灯具100は、半導体発光素子14から出射する素子光のうち、蛍光体含有樹脂層30に向かわない素子光がそのまま外部へ透過しないようにする樹脂層16を備えている。発光面14aを覆う樹脂層16は、前述のように蛍光体を含有しており、紫外線や短波長可視光を含む素子光を確実に波長変換することができる。蛍光体を含有した樹脂層16は、半導体発光素子14の側面のみを囲むように実装してもよい。なお、樹脂層16の代わりに、素子光がそのまま外部へ透過しないように遮光部や反射層を設けてもよい。
【0037】
図4は、第1の実施の形態に係る灯具の発光スペクトルの一例を示す図である。
図4に示すように、灯具100の光波長変換部材26は、585〜610nmの範囲にドミナント波長を有する蛍光体を含有していることがわかる。
図5は、ターンシグナルランプに要求される色度を満たす範囲と、本実施の形態に係る灯具が発する光の色度とを示す図である。また、灯具100は、色度座標(cx、cy)上で、(y≧0.39、y≧0.79−0.67x、y≦x−0.12)で囲まれる範囲の色で発光する。
図4、
図5に示すように、本実施の形態に係る灯具100は、ターンシグナルランプに適した色の光を発していることがわかる。具体的な結果については、表1に示す。
【0039】
[比較例]
図6は、比較例に係る灯具の概略構成を示す模式図である。
図6に示す灯具200は、色度(cx、cy=0.570,0.420)のアンバー色発光の市販の表面実装タイプのLEDパッケージ202を、アルミ基板22の上に8mm間隔で半田により実装したものである。なお、灯具100と比較するために、アルミ基板22の搭載面側には反射層24が形成されている。
【0040】
図7は、第1の実施の形態に係る灯具100と比較例に係る灯具200の中心ライン(長手方向)の輝度分布を模式的に示した図である。ここで、表1に示す輝度均斉度Sとは、発光面の長手方向全体の平均輝度をL1、灯具の長手方向の最高輝度をL2とすると、以下の式で表せる。
S=(L1/L2)×100
つまり、Sが100に近いほど発光面での輝度のばらつきが少なく、均一発光していることになる。
【0041】
表1や
図7に示すように、第1の実施の形態に係る灯具100は、比較例に係る灯具200に対して、輝度均斉度Sが非常に大きく、発光面の明るさの濃淡が少なくなっている。また、灯具100は、比較例に係る灯具200に対して発光効率も高い。このように、第1の実施の形態に係る灯具100は、長手方向の輝度にムラが少なく連続ライン発光に見える。一方、比較例に係る灯具200は、LEDパッケージ202直上と、LEDパッケージ202間の輝度差が大きく、不連続の点光源にしかみえない。
【0042】
灯具100は、一端の半導体発光素子に電流を印加させてから、0.1〜3秒の遅延時間を取りながら、隣接する半導体発光素子に順次電流印加する。その結果、灯具100は、グラデーション状に発光部が広がるライン光源として機能できる。
【0043】
以下では、上述の第1の実施の形態を含む他の態様について詳述する。
【0044】
灯具100の長手方向の長さは50〜800mmが好ましい。また、灯具100は、必ずしも直線である必要はなく、R15以下の湾曲部を有してもよく、また曲線や曲面を有していてもよい。
【0045】
また、反射層24は、アルミ基板22の表面をアルミや銀等の金属鏡面反射処理したものであってもよい。
【0046】
また、実装される半導体発光素子14は、フリップチップタイプ以外に、フェイスアップ、垂直チップといったタイプであってもよい。また、半導体発光素子14の発光が鉛直方向だけではなく側方へも広がるように、アルミナ基板12の凹部はなるべく浅い方がよく、深さ0.5mm以下が好ましい。
【0047】
また、樹脂層16や蛍光体含有樹脂層30には、形状を維持、蛍光体の沈降防止、半導体発光素子の光拡散のためにチクソ性を付与することができる。チクソ剤は、粒径が10nm〜1μmのシリカ、酸化チタン、酸化タンタル、ジルコニア、合成雲母等を用いることができる。
【0048】
また、灯具100が点灯した際に十分な放熱性能を得るために、放熱部材であるヒートシンクを取り付けてもよい。取付け方法は、灯具の基板に、ヒートシンクをネジやカシメ等で直接取り付けてもよいし、柔軟で熱伝導率が高い接合部材を介して取り付けてもよい。接合部材としては、例えば、熱伝導性接着剤、グラファイトシート、チッ化ボロンシート、カーボンナノチューブ含有シート等が挙げられる。
【0049】
なお、上述の第1の実施の形態では、一つの半導体発光素子14を有する発光モジュール10を複数備えたものを灯具100として説明したが、複数の半導体発光素子14とライン状の光波長変換部材26を備えたものを発光モジュールとして捉えてもよい。同様の構成を灯具と称するか発光モジュールと称するかは本願発明の本質ではなく、説明の便宜のために適宜使い分けることとする。
【0050】
具体的には、複数の半導体発光素子14とライン状の光波長変換部材26を備えたものを発光モジュールとし、この発光モジュールと光学部材(例えば、レンズやカバー、リフレクタ等)とを組み合わせたものを灯具と捉えてもよい。また、灯具は、複数の発光モジュールを備えてもよい。以下、他の実施の形態について説明する。
【0051】
[第2の実施の形態]
図8は、第2の実施の形態に係る灯具300の概略構成を示す断面図である。
図8に示す灯具300は、ランプボディ32と、エクステンション34と、ランプボディ32にネジ36で固定された複数の発光モジュール38,40,42と、透光性のインナーレンズとして機能するカバー44と、カバー44の内面に沿った弧状の光波長変換部材46と、を備える。また、灯具300は、ターンシグナルランプとして機能する。
【0052】
発光モジュール38,40,42は、それぞれ複数の半導体発光素子14を備えている。また、各発光モジュール38,40,42の発光面から離間した位置に光波長変換部材46が配置されている。光波長変換部材46は、585〜610nmの範囲にドミナント波長を有するアンバー色の蛍光体を含有している。これにより、半導体発光素子14から出射した素子光は、ある程度広がって光波長変換部材46へ入射する。その結果、光波長変換部材46の発光面の明るさ(輝度)の濃淡を抑制できる。
【0053】
各発光モジュールが備える基板は、複数のグループに分けられた複数の発光素子を1個または複数の発光素子からなるグループ毎に点消灯できるように形成された回路を有する。そして、複数の半導体発光素子14を車両が曲がる方向に連続的に遅延発光させることで、灯具300は、グラデーション状に発光部が広がるターンシグナルとして機能する。
【0054】
しかしながら、光波長変換部材46が発する光は、含有する蛍光体のランバーシアンな光が主であるため、指向性が低い拡散光となる。そのため、複数の半導体発光素子14がアーチ状のカバー44や光波長変換部材46の形状に応じて放射状に配置されていると、灯具300を見る方向による輝度の差は少なくなるものの、車両正面から見た場合の輝度が不足しがちである。
【0055】
そこで、灯具300における発光モジュール38は、5つの半導体発光素子14(第1のグループの発光素子38aに相当)と、5つの半導体発光素子14をライン状に搭載する基板38bと、を有する。また、発光モジュール40は、5つの半導体発光素子14(他のグループの発光素子40aに相当)と、5つの半導体発光素子14をライン状に搭載する基板40bと、を有する。また、発光モジュール42は、5つの半導体発光素子14(第2のグループの発光素子42aに相当)と、5つの半導体発光素子14をライン状に搭載する基板42bと、を有する。なお、基板38b,40b,42bは、途中が屈曲しながら一つの部品として互いに連なっていてもよく、他の部材を介して連結されていてもよく、また、別々であってもよい。
【0056】
灯具300における基板38b,40b(第1基板に相当)は、複数の発光素子38aおよび複数の発光素子40aの発光面が車両の前方Fまたは後方Rを向くように配置されている。また、基板42bは、複数の発光素子42aの発光面が、複数の発光素子38aおよび複数の発光素子40aの発光面よりも車両の側方Sを向くように配置されている。これにより、車両の前方正面または後方正面から灯具300を見た際の輝度を向上できる。換言すると、灯具300の車両前方正面(後方正面)方向への光度が向上する。このように、灯具300は、所定の正面輝度を実現できる。
【0057】
[第3の実施の形態]
図9は、第3の実施の形態に係る灯具310を車両正面から見た模式図である。灯具310は、ランプボディ48と、ロービーム用灯具ユニット50と、ハイビーム用灯具ユニット52と、ターンシグナルランプユニット54と、カバー44と、を備える。
【0058】
ターンシグナルランプユニット54は、ライン状の光波長変換部材46と、ライン状に配列された複数の半導体発光素子14と、を備える。ターンシグナルランプユニット54においては、第1基板56に搭載されている複数の発光素子38aの実装密度は、第2基板58に搭載されている複数の発光素子42aの実装密度よりも高い。また、複数の発光素子38aは、車幅方向Wに延びる列が上下に複数配置されるように第1基板56の上に搭載されている。これにより、車両の前方正面または後方正面から灯具を見た際の輝度を更に向上できる。
【0059】
[第4の実施の形態]
図10は、第4の実施の形態に係る灯具320の概略構成を示す断面図である。以下の説明では、前述の灯具300と同様の構成については同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0060】
複数の半導体発光素子14を搭載する基板60は、車幅方向Wに階段状に延びる複数の搭載部60aを有している。複数の搭載部60aは、車両の前方Fまた後方Rを向くように形成されており、複数の搭載部60aのそれぞれに半導体発光素子14が搭載されている。このように、基板60を階段状にすることで、半導体発光素子14の発光面と、カバー44や光波長変換部材46との距離をある程度一定にし易くなり、輝度均斉度が更に高まる。また、半導体発光素子14の発光面が全て車両前方正面または後方正面に向くため、車両の前方正面または後方正面から灯具320を見た際の輝度を向上できる。
【0061】
次に、
図8乃至
図10に記載の各灯具において、カバー44を正面から見た際の輝度均斉度を更に向上する構成について説明する。
図11(a)は、蛍光体を含有するカバーの断面図、
図11(b)は、カバー表面に蛍光層を設けた状態を示す断面図である。
【0062】
図11(a)に示すカバー44は、カバーの樹脂材料に蛍光体を練り込んで分散させたものを成形したものである。
図11(b)に示すカバー44は、その入射面44a側に、光波長変換層62が設けられている。光波長変換層62は、光波長変換部材46と同様の蛍光体を含有した材料をカバー44の表面に塗布して作成することができる。あるいは、シート状の光波長変換層62を予め作成しておき、それをカバー44の入射面44aに貼り付けてもよい。あるいは、カバー44と光波長変換層62とを一体成形で製造してもよい。なお、光波長変換層62をカバー44の出射面44b側に設けてもよい。
【0063】
[第5の実施の形態]
近年の車両用灯具は、意匠性の観点から曲面を多用したアウターカバー(レンズ)が多く考案されている。
図12は、透光性部材であるレンズ(カバー)等の曲面を有する部材と、ライン状のLEDモジュールとを組み合わせた灯具の概略断面図である。
【0064】
図12に示す灯具330は、曲面を有するカバー64と、
図2に示す基板が平坦な灯具100と同様の構成の発光モジュール66と、を備える。この場合、発光モジュール66とカバー64との距離Lは一定ではない。そのため、カバー64と発光モジュール66との距離Lが大きい(L=L1)場合には、対応するカバー64の出射面64aは暗くなる(低輝度)となる。一方、カバー64と発光モジュール66との距離Lが小さい(L=L2<L1)場合には、対応するカバー64の出射面64bは明るくなる(高輝度)となる。そのため、発光面の明るさに濃淡が発生してしまう。
【0065】
図13は、複数の発光モジュールとカバーとの距離を略均一化した灯具の概略断面図である。上述の灯具330の課題を改善するために、
図13に示す灯具340は、基板が平坦な
図2に示す灯具100と同様の構成であるが、長さが短い発光モジュール68を複数備えている。複数の発光モジュール68は、互いに向きを変えて、カバー64の内面形状に沿うように配置されている。これにより、各発光モジュール68とカバー64との距離Lをほぼ一定(L1≒L2≒L3)にできる。その結果、カバー64の発光面の明るさの濃淡は低減される。
【0066】
しかしながら、灯具340においては、隣接する発光モジュール68間に光波長変換部材26がない領域R1が生じるため、カバー64の発光面の一部に筋状の暗部が発生し、カバー64の発光面の明るさ(輝度)の均一性が低下する。加えて、各発光モジュール68に対して給電や制御のための配線を接続する必要があり、製造工程の増加によるコスト上昇の一因となる。
【0067】
そこで、発光モジュール間の領域R1に対する筋状の暗部の低減を改善する構成について考案した。
図14(a)〜
図14(d)は、第5の実施の形態に係る発光モジュールの形態を模式的に示した図である。なお、各図の発光モジュールの基本構成は、
図2に示す灯具100とほぼ同様であるが、光波長変換部材の形状がそれぞれ異なっている。
【0068】
図14(a)に示す発光モジュール70は、ライン状の光波長変換部材72の一端から長手方向に突出した凸部72aを有する。また、光波長変換部材72の他端には、隣接する発光モジュール70の凸部72aが嵌るような形状の凹部72bが形成されている。これにより、隣接する発光モジュール70の境界領域R2においても、光波長変換部材72が存在するため、並んで配置された複数の発光モジュールの発光面の明るさの均一性が増す。
【0069】
図14(b)に示す発光モジュール74は、ライン状の光波長変換部材76の一端が階段状の突起76aを有する。また、光波長変換部材76の他端には、隣接する光波長変換部材76の突起76aが合わさるような段差部76bが形成されている。これにより、隣接する発光モジュール74の境界領域においても、光波長変換部材76が存在するため、並んで配置された複数の発光モジュールの発光面の明るさの均一性が増す。
【0070】
図14(c)に示す発光モジュール78は、ライン状の光波長変換部材80の両端が側方から見て斜辺80a,80bとなっている。また、
図14(d)に示す発光モジュール82は、ライン状の光波長変換部材84の一端に形成された半円柱状の凸部84aを有する。また、光波長変換部材84の他端には、隣接する発光モジュール82の凸部84aが嵌るような半円柱状の凹溝84bが形成されている。このように、光波長変換部材の両端部の形状を工夫することで、光波長変換部材の一部を重ね合わせることができる。そのため、これら発光モジュール78や発光モジュール82の境界領域においても、光波長変換部材が存在するため、並んで配置された複数の発光モジュールの発光面の明るさの均一性が増す。
【0071】
[第6の実施の形態]
図15は、第6の実施の形態に係る灯具の要部を示す模式図である。灯具350は、
図13に示す灯具340と類似の構造であるが、複数の発光モジュール86は一つの基板88を共有している。そのため、曲面形状のカバーに対応して、複数の発光モジュール86の向きを変えてカバーの内面形状に沿うように配置しようとすると、基板を折り曲げる必要がある。しかしながら、基板が硬い材料の場合、基板を折り曲げることは困難である。
【0072】
そこで、灯具350の各発光モジュール86が共有する基板88において、隣接する光波長変換部材90の間の領域において、上面または下面の少なくとも一方に切り込み88aを形成する。これにより、基板88が比較的硬い材料の場合であっても、基板88を折り曲げやすくできる。
【0073】
一方で、基板に切り込みを形成すると、表層にある配線が切断される可能性がある。
図16(a)〜
図16(c)は、第6の実施の形態に係る発光モジュールに適用できる基板の一例について説明するための断面図である。
【0074】
図16(a)に示す基板92は、両面および層間にパターン配線92b,92c,92dが形成されている。そのため、切り込み92aが両面にある場合であっても、少なくとも層間のパターン配線92cにより、隣接する発光モジュール間の導通が可能となる。
【0075】
また、
図16(b)に示す基板94は、両面にのみパターン配線94b,94cが形成されている。そのため、切り込み94aは、基板94の一方の主面にのみ形成し、他方の主面には形成しない。これにより、少なくとも他方の主面にあるパターン配線94cにより、隣接する発光モジュール間の導通が可能となる。
【0076】
また、
図16(c)に示す基板96は、片面にのみパターン配線96bが形成されている。そのため、切り込み96aを形成すると、パターン配線96bが途中で切断されることになる。したがって、このような場合は、切り込み96aをまたぐようにコード98をパターン配線96bに接続する。
【0077】
[第7の実施の形態]
図17は、第7の実施の形態に係る灯具360の概略断面図である。灯具360は、
図17の紙面に垂直な方向に並んで配置されている複数の半導体発光素子14と、複数の半導体発光素子14を搭載したアルミ基板22と、複数の半導体発光素子14を封止する半円柱状の透光部材102と、透光部材102の表面から離間し、透光部材102を覆うように配置された半円筒状の光波長変換部材104と、を備える。
【0078】
透光部材102は、半導体発光素子14から出射した光が表面102aから出射する際に屈折するようなレンズ形状である。また、光波長変換部材104は、入射した素子光が屈折して集光されるような形状であってもよい。これにより、灯具360の正面方向(半導体発光素子14の上方)の光度を向上できる。
【0079】
[第8の実施の形態]
図18は、第8の実施の形態に係る灯具370の概略断面図である。灯具370は、
図18の紙面に垂直な方向に並んで配置されている複数の半導体発光素子14と、複数の半導体発光素子14を搭載した基板を兼ねたリフレクタ106と、複数の半導体発光素子14を封止する半円柱状の透光部材102と、透光部材102の表面から離間し、リフレクタ106の開口部を閉塞するように配置された板状の光波長変換部材108と、を備える。
【0080】
透光部材102は、半導体発光素子14から出射した光が表面102aから出射する際に屈折するようなレンズ形状であってもよい。また、リフレクタ106は、断面が凹状であり、内面が反射部として処理された部材である。リフレクタ106は、透光部材102から側方に向かって出射した光を反射して、灯具正面方向へ反射(集光)するように反射面が形成されている。これにより、灯具370の正面方向(半導体発光素子14の上方)の光度を向上できる。
【0081】
図19は、第8の実施の形態の変形例に係る灯具380の概略断面図である。灯具380は、灯具370の板状の光波長変換部材108の代わりに、アウターレンズ110の半導体発光素子14側の凹凸面110a(散乱面)に光波長変換層112を形成してある。光波長変換層112は、蛍光体を含有した樹脂を凹凸面110aに塗布したり、蛍光体を含有した樹脂シートをアウターレンズ110と一体に成形したりしてもよい。
【0082】
以上、本発明を各実施の形態や実施例をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。