特許第6560219号(P6560219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6560219ピストンピン及びピンに焼き付き防止コーティングを適用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560219
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】ピストンピン及びピンに焼き付き防止コーティングを適用する方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 1/16 20060101AFI20190805BHJP
   C23C 16/27 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   F16J1/16
   C23C16/27
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-537208(P2016-537208)
(86)(22)【出願日】2014年8月12日
(65)【公表番号】特表2016-536537(P2016-536537A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2014067274
(87)【国際公開番号】WO2015028305
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年4月24日
(31)【優先権主張番号】102013014385.3
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】1359324
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506126266
【氏名又は名称】アッシュ・ウー・エフ
(73)【特許権者】
【識別番号】513116966
【氏名又は名称】マーレ インターナツィオナール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サンドリーヌ・アンリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・オー
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス・プロスト
(72)【発明者】
【氏名】ローラント・ロホマン
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・マウリツィ
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−097759(JP,A)
【文献】 特開2004−138128(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0091980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 1/16
C23C 16/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンピンであって、選択的な方向に沿って接触圧力を受ける摩擦領域に少なくとも対応した角度セクタ(S)に限定された焼き付き防止コーティング(4)を有しており、前記焼き付き防止コーティング(4)の前記角度セクタ(S)が、15°から240°の範囲であることを特徴とする、ピストンピン(1)。
【請求項2】
前記焼き付き防止コーティングがDLCであることを特徴とする、請求項1に記載のピストンピン。
【請求項3】
前記焼き付き防止コーティングがCrNであることを特徴とする、請求項1に記載のピストンピン。
【請求項4】
前記焼き付き防止コーティングがTiAlNであることを特徴とする、請求項1に記載のピストンピン。
【請求項5】
前記角度セクタが、15°から220°の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のピストンピン。
【請求項6】
機能領域における前記焼き付き防止コーティングの厚さが、±20%の範囲内で均一であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のピストンピン。
【請求項7】
前記焼き付き防止コーティングの厚さが、1μmから10μmの間であることを特徴とする、請求項6に記載のピストンピン。
【請求項8】
前記摩擦領域の外側では、前記ピストンピン(1)は、考慮された前記角度セクタの焼き付き防止コーティングの特性よりも低い厚さ及び/又は硬度及び/又は摩擦係数の特性を有する減摩コーティングされた領域を有している、請求項1に記載のピストンピン。
【請求項9】
ピストン(10)を有する燃焼機関のための構造ユニット(100、100’)の場合におけるピストンピンであって、前記ピストン(10)には、ピストン頂面(11)、減摩コーティング(21、21’)が適用されたピストンピン(20、20’)、及び、連接棒(30)が設けられており、前記連接棒(30)には、小端部(31)が設けられており、前記ピストン(10)には、その中に取り付けられた前記ピストンピン(20、20’)を有するボスボア(16)が設けられているピストンピンにおいて、
前記ピストンピン(20、20’)が、前記連接棒(30)の前記小端部内に堅固に固定されていること、及び、前記コーティング(20、20’)が、エンジンの運転中に最も高い負荷を受ける前記ピストンピン(20)の周縁領域に、少なくとも前記ピストン(10)の前記ボスボア(16)の領域に延在していること、を特徴とする、ピストンピン。
【請求項10】
前記減摩コーティング(21、21’)が、前記ピストン(10)の頂面(11)に向かって方向付けられた前記ピストンピン(20、20’)の周縁領域にわたって、180°から240°の角度領域(α)において延在していることを特徴とする、請求項9に記載のピストンピン。
【請求項11】
前記角度領域(α)が220°であることを特徴とする、請求項10に記載のピストンピン。
【請求項12】
前記減摩コーティング(21’)が、前記ピストンピン(20’)の軸方向の長さ全体にわたって延在していることを特徴とする、請求項9に記載のピストンピン。
【請求項13】
ピストンピン(1)にDLCタイプの焼き付き防止コーティングを適用する方法において、
‐ピストンピンが支持体の上に環状に、少なくとも1つの列に沿って、接触位置において配置され、
‐前記支持体に対する前記ピストンピンの回転がロックされ、
‐前記ピストンピンが取り付けられた前記支持体が、真空エンクロージャ内に配置され、
‐前記ピストンピンが取り付けられた前記支持体が回転し、
‐前記焼き付き防止コーティングが、前記ピストンピンの接線方向の位置決めによって区切られた角度セクタにわたって、前記ピストンピンに選択的に蒸着されることを特徴とする、方法。
【請求項14】
ピストンピン(1)にDLCタイプの焼き付き防止コーティングを適用する方法において、
‐ピストンピン(1)が支持体の上に環状に、少なくとも1つの列に沿って、接触位置又は準接触位置において配置され、
‐各ピストンピン(1)の間に、前記ピストンピンそれぞれに関して角度セクタを区切ることができる保護要素(8)が配置され、
‐前記支持体に対する前記ピストンピンの回転がロックされ、
‐前記ピストンピンが取り付けられた前記支持体が、真空エンクロージャ内に配置され、
‐前記ピストンピンが取り付けられた前記支持体が回転し、
‐前記焼き付き防止コーティングが、付加された前記保護要素(8)によって区切られた角度セクタに、選択的に蒸着されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トライボロジー的接触の分野、より一般的には、ピンが固定的に取り付けられ、選択的な方向に沿って応力を受け、部分的な角度セクタに従って当該ピンの応力を導入するような、任意のシステムに関する。本発明は、有利にはピストンピンに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、ピストンピンと連接棒との接続には、2種類の方法が用いられている:
a)浮動接続
b)固定接続
【0003】
浮動接続は、ピンを、連接棒内及びピストン内で自由に回転できるように取り付けることを可能にする。ある場合には、連接棒及びピストンに、収縮した真鍮片を用いてブッシュを取り付けても良い。移動中のピンは、止め輪(サークリップ)によって停止する。止め輪は、ピストンピン開口部の端部に機械加工された溝内の位置で保持される。浮動式の取り付けは、接触している物体の間の相対速度を大幅に低下させ、接触摩擦が減少する一方で焼き付き限界を押し戻すことを可能にする。従って、この取り付けは、比較的高い性能を有する。しかしながら、この取り付けには、連接棒(又は輪)の正確な機械加工と、止め輪をブロックするための凹部の機械加工とが必要になる。止め輪を、組み立てられたピストンピン‐連接棒アセンブリ上に取り付けなければならず、そのためには、特殊な手段及び道具を用いることが必要になる。ピストン圧縮の高さは、このような取り付けに制約され、ピストンの質量を最適化することはできない。従って、この取り付けは、好ましくは、高負荷の用途(ディーゼルエンジン又はターボガソリンエンジン)において用いられる。コーティングされたピン(例えばDLCコーティング等で)は、摩擦が減少する一方で焼き付き限界を押し戻すことを可能にする(図11を参照)。用途によって、CO2の増加は、NEDCサイクルで0.2%から0.5%に達し得る(用途による)。
【0004】
固定接続は、止め輪の使用を必要としない。ピンは、連接棒を加熱するプロセスによって、連接棒内に固定的に取り付けられる。組立ラインでは、一般的に、高速加熱手段(誘導)が用いられる。このように緊締されたピンは、連接棒の振り子運動に従い、連接棒はさらに、ピストンピンホール内での交互の回転運動を強制する。このような相対運動は、アセンブリを、ピストン内のピンの焼き付き現象に対してより敏感にする。従って、その良好な潤滑を提供する(たとえば凹部及び/又は溝によって)こと、及び、摩擦が減少する一方で焼き付きへの抵抗力を増大させることが可能であるコーティング(例えばDLC)を用いることが必要である。連接棒の機械加工は極めて単純化されており、ブッシュが存在しないことによって、外径に関しても、幅に関しても、連接棒の小端部の横断面を減少させ、そのバルクを最小化することが可能である。この技術は、ピストン圧縮の高さを最適化し、特定の用途のために質量の増加を提供することを可能にする。これは、実質的に、エンジンの高さを減少させることに寄与する。小型車両の場合、この解決法は、ボンネット下側の高さを減少させ、従って、空力係数と、結果として空力的損失とを制限することができる。このような技術は、低負荷の用途のためのものではあるが、都市用又は中型車両の殆どを代表している。質量の増加は、特に2気筒、又は、3気筒の場合に、ハンマー効果を制限し、バランスシャフトを抑制することも可能であろう。従って、増加の可能性については、用途の文脈において表現されなければならない。
【0005】
出願人は、これまでに製造されたエンジンの30%から40%が固定接続を用いていると考えている。固定式ピンにDLCコーティングを用いることは、摩擦、質量、及び、焼き付き耐性に関して大きな利点を提供する。図12は、この利点を完全に図示している。同じ用途であれば、DLCを用いることによって、ピンの質量を20%減少させ、面圧を10%増大させることが可能である。
【0006】
減摩コーティングを施したピストンピンは、例えば、特許文献1、特許文献2、及び、特許文献3の特許から知られている。この連続生産技術をすでに用いている製造者もいる。しかしながら、このような摩擦を減少させるコーティングを用いることは、蒸着法が原因で蒸着速度が低い場合、経済的に行うことが不可能である。固定式ピンの場合、この解決法を普及させることは、その費用ゆえに、しかしまた、用いられるコーティングの組み込まれた摩耗ゆえに難しい。
【0007】
出願人は、これらの使用を研究し、浮動式のコーティングされたピンに対する、固定式のコーティングされたピンの変則的な挙動を観察した。固定式ピンの場合、摩耗はピンの上側領域に集中しており、下側領域は非常に滑らかであった。耐久試験の後には、DLCコーティングが上側接触領域から完全に消失した可能性があるが、コーティングの厚さはほぼ損なわれていないことを観察できる。図12は、自動車の300,000kmの走行に相当する耐久試験の後に得られた結果を示している。これらの結果は、この現象を完全に説明している。現象の説明は、ピンに加えられる力を研究することによって提供され得る(図14及び図15を参照)。
【0008】
この観察に基づいて、出願人は、方向性によって異なる特性を有するピンを形成するための解決法を考案した。
【0009】
本発明に従って、所望される目的は:
1)ピンにDLCコーティングを用いることによって、ピン/ハウジング接触における摩擦を減少させること、
2)DLCコーティングの種類を、固定式ピンの使用に適応させ、拮抗作用を損なうことなく耐摩耗性を増大させること、
3)固定式ピンの使用の選択的な負荷領域に対応して、コーティングの可変的な分配を形成すること、
4)DLCコーティングの処理時間を減少させること、
5)コーティングエンクロージャの負荷容量を増大させること、
6)現在まで用いられてきたピンのコーティングに用いられるピンの位置決め手段を、例えば回転の抑制等によって単純化すること、
7)コーティング機械の負荷容量を増大させること、
8)加えられた力の極線図に対応する非対称な形状を用いることによって、ピンの抵抗力を増大させること、
9)既存の取り付け手段との固定式ピンの取り付けを可能にし、ピンはアセンブリ上で適切に方向づけられなければならないこと、にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006008910号明細書
【特許文献2】米国特許第6886521号明細書
【特許文献3】米国特許第7228786号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、コーティングされたピストンピンが、比較的単純な技術を用いて形成され得るような、包括的構造ユニットを供給することを目的としている。
【0012】
より一般的には、本発明が解決しようとする課題は、固定的に取り付けられた、選択的な方向に応じて応力を受け、特にピストンピンに関する部分角度セクタに従ってピン上に応力を導入するピンの場合、エンジンの運転者が、回転しているアセンブリの負荷を増大できるように、DLCタイプのコーティングを用いることによって何らかの焼き付きのリスクを抑制できるように、特に特別な条件においては、実施費用を大幅に減少できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような問題を解決するために、ピストンピンは、選択的な方向に沿って接触圧力を受ける摩擦領域に少なくとも対応する角度セクタに限定された、DLCタイプの焼き付き防止コーティングを有しており、当該摩擦領域の外側では、当該ピンは、考慮された角度セクタの焼き付き防止コーティングの特性よりも低い、厚さ及び/又は硬度及び/又は摩擦係数の特性を有するコーティングされた領域を有しているか、又は、有していない。
【0014】
これらの特性ゆえに、焼き付き防止コーティングは、応力を受けた角度セクタにのみ適用され、それによって、処理すべき表面領域が減少し、従って実施費用が減少する。
【0015】
ピンを部分的にコーティングするという事実は、逆に、摩擦領域がコーティングされる領域に対応するように、アセンブリ上のピンの角度に関する正確な位置決めを必要とするこのような技術を用いることを断念した当業者には明白ではない。
【0016】
ピンを部分的にコーティングするという事実は、先行技術よりも厚さの大きい、従ってピンの寿命を延長する焼き付き防止コーティングの使用を構想することを可能にするということも観察され得る。
【0017】
他の特徴によると、焼き付き防止コーティングはDLCである。コーティングされた角度セクタは、15°(−7.5°から+7.5°)から240°(−120°から+120°)の範囲であり、好ましくは15°(−7.5°から+7.5°)から220°(−110°から+110°)の範囲である。摩擦領域におけるコーティングの厚さは、±20%の範囲内で均一である。コーティングの厚さは、1μmから10μmの範囲内である。
【0018】
本発明は、解決法に関するものでもあり、当該解決法によると、ピストンピンが連接棒の小端部に固定的に配置され、周縁領域に延在するコーティングは、エンジンの運転中、少なくともピストンボスボアの領域において、最も高い負荷を受ける。
【0019】
本発明は、減摩コーティングを、ピストンピンの領域のうち、エンジンの運転中に最も高い負荷を受ける領域にのみ、少なくとも連接棒で覆われたピストンピンの領域の外側に適用することを規定している。本発明はさらに、いわゆる緊密な連接棒、すなわち、その小端部に固定的かつ不動に取り付けられたピストンピンを有する連接棒、を用いることを規定している。これはすなわち、エンジンの運転中に、ピストンピンはボスボア内で、一般に知られた振り子運動を有するので、ピストンピンの明確に定義された周縁領域のみが、高い応力を受けるということを意味している。
【0020】
ピンの一部にのみDLCタイプの焼き付き防止コーティングを適用するという問題を解決するために、本発明は、このコーティングを適用するための方法にも関する。
【0021】
一態様によると、
‐ピンが支持体の上に環状に、少なくとも1つの列に沿って、接触位置において配置され、
‐支持体に対するピンの回転がロックされ、
‐ピンが取り付けられた支持体が、真空エンクロージャ内に配置され、
‐ピンが取り付けられた支持体が回転し、
‐焼き付き防止コーティングが、ピンの接線方向の位置決めによって区切られた角度セクタにわたって、ピンに選択的に蒸着される。
【0022】
別の態様によると、
‐ピンが支持体の上に環状に、少なくとも1つの列に沿って、接触位置又は準接触位置において配置され、
‐各ピンの間に、ピンそれぞれに関して角度セクタを区切ることができる保護要素が配置され、
‐支持体に対するピンの回転がロックされ、
‐ピンが取り付けられた支持体が、真空エンクロージャ内に配置され、
‐ピンが取り付けられた支持体が回転し、
‐焼き付き防止コーティングが、付加された保護要素によって区切られた角度セクタにわたって、選択的に蒸着される。
【0023】
良好な結果を得るためには、ピンの角度に関する方向付けと指標付けとが不可欠であると思われる。複数の解決法が考えられる。最も一般的に用いられる方法は、ピンに粗形状を与えるための、材料スラグの押出成形を含んでいる。最終的な形状は、旋削作業及び調整作業によって与えられる。
【0024】
押出成形は、対称的又は非対称的に行われ得る。最終的な粗形状を得るためには、いくつかのパスが必要である。最後の押出成形作業の間に、比較的正確にピンを方向付けることができるような特別な形状を用いることが可能である。図16及び図17は、形状の方向付けを例示している。
【0025】
この形状は、コーティングエンクロージャ内でのピンの位置決めに用いられる。当該形状は、連接棒内でピンの正確な位置決めを行うために、アセンブリ上でも用いられる。
【0026】
さらに、ピン内に非対称の応力が与えられた場合、形状は、最適化された横断面を獲得し、ピンの横断面における負荷のピックアップを最適化するために調整され得る。
【0027】
以下において、添付された図面を用いて、本発明をより詳細に説明する。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る構造ユニットの第1の態様の横断面図である。
図2】本発明に係る構造ユニットの別の態様の横断面図である。
図3図1に係る、取り付けられたピストンピンを有する連接棒の小端部の前面図である。
図4図1に係る、取り付けられたピストンピンを有する連接棒の小端部の側面図である。
図5】ピストンピンへの本発明の適用を示す図である。
図6】ピストンピンが連接棒内で固定的に取り付けられており、ピンが部分的に本発明の特徴に基づくDLCタイプの焼き付き防止コーティングでコーティングされていることを示す、単純化された横断面図である。
図7】ピンに対して、DLC層を限定された角度セクタにわたって適用して焼き付き防止処理を行うために、PVDエンクロージャ内に取り付けられた支持体上のピンのアセンブリの例の斜視図である。
図8図7に対応する、より大きな縮尺での部分的な横断面図である。
図9図7及び図8と同様に、DLCコーティングの限定された角度セクタへの適用に関する別の態様を示す図である。
図10図7及び図8と同様に、DLCコーティングの限定された角度セクタへの適用に関する別の態様を示す図である。
図11】ピンにDLCコーティングを適用することによる摩擦の減少を示す図である。
図12】ピンにDLCコーティングを適用することによる焼き付きリスクの防止を示す図である。
図13】固定式ピンの負荷領域を示す図であり、ピンの負荷領域はピンの上側に集中しており、コーティング層の強い研磨及び著しい摩耗は、上側の接触面に集中しており、DLCコーティング層は局所的に100%磨滅しており、下側の接触面には、コーティング層の弱い研磨のみが存在し、DLC層の厚さは、当初のコーティング層の90%よりも大きいことを示す図である。
図14】全負荷の場合に作用する力(ピーク時シリンダ圧力)を示す図である。
図15】エンジン速度が最大の場合に作用する力(慣性力)を示す図である。
図16】ピンの方向付けの例の一態様の長手軸方向における横断面図である。
図17図16の線A−Aに沿った横断面を、より大きな縮尺で示す図である。
図18】ピンの別の態様の長手軸方向における横断面図である。
図19図18の線A−Aに沿った横断面を、より大きな縮尺で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1図3及び図4は、本発明に係る構造ユニット(100)の一態様を示している。構造ユニット(100)には、ピストン(10)が設けられており、当該ピストンは、その構成及び材料に関して、自由に形成され得る。当該態様のピストン(10)は、ピストン頂面(11)、燃焼空洞(12)、周縁ピストンカバー(13)及び周縁ピストンリング(14)を有する、箱形の一体型ピストンである。ピストン(10)にはさらに、ピストンピン(20)を受容するためのボスボア(16)を有する従来のピストンボス(15)が設けられている。ピストンボス(15)は、従来通り、軸受表面によって接続されている(図示されていない)。
【0030】
構造ユニット(100)には、ピストン(10)及びピストンピン(20)に隣接して、連接棒(30)が設けられている。連接棒(30)には、従来の小端部(31)が設けられている。ピストンピン(20)は、連接棒の小端部(31)内に固定的かつ不動に、例えば結合によって取り付けられている。この種類の連接棒は、「固定式連接棒」としても知られている。
【0031】
上述したように、連接棒(30)で覆われた領域の外側では、ピストンピン(20)には、具体的な事例の制約に応じて選択される材料から形成された減摩コーティング(21)が設けられている。材料は、DLC、PVD、PECVDコーティング、窒化クロム、炭化クロム、窒化タングステン又は炭化タングステンのような、クロム及び/又は窒化クロム及び/又はタングステンを含むコーティングから選択して良い。これらは全て一般に知られたものである。
【0032】
本発明によると、及び、以前に開発されたように、減摩コーティング(21)は、エンジンの運転中に最も高い負荷を受けるピストンピン(20)の領域にのみ適用される。エンジンの運転中、ピストンピン(20)は、ボスボア(16)内で一般に知られた振り子運動を有することを考慮すると、ピストンピン(20)の明確に定義された周縁領域のみが、高い応力を受ける。本発明によると、この周縁領域には、減摩コーティングが設けられている。本態様では、減摩コーティング(21)は、ピストン頂面(20)の周縁領域に、ピストン(10)の頂面(11)に向かって、220°の角度領域(α)において延在している。十分なトライボロジー挙動を得るためには、減摩コーティングを、180°から240°の角度領域(α)において、ピストンピン(20)に適用することが一般的に勧められる。
【0033】
図2は、本発明に係る構造ユニット(100’)の別の態様を示しており、当該態様では、図1aに係る構造ユニット(100)と同じ構造要素には、同じ符号が付されている。図1に係る構造ユニット(100)と図2に係る構造ユニット(100’)との間における唯一の違いは、図2に係る構造ユニット(100’)のためのコーティング(21’)が、ピストンピン(20’)の軸方向の長さ全体にわたって延在していることにある。このことは、製造技術に関して利点をもたらす。減摩コーティングはまた、ピストンピンの周縁領域に、ピストンの頂面に向かって、180°から240°の角度領域において、特に220°の角度領域において延在している。
【0034】
上述したように、本発明は、より具体的にはピストンピンに適用される。
【0035】
図5は、連接棒(3)内に固定的に取り付けられたピストン(2)のピン(1)を図示している。爆発の際、ピン(1)は、選択的な方向(F)に沿って応力を受け、部分的な角度セクタにわたって当該ピン上に負荷を導入している。
【0036】
本発明の基本的な特徴によると、DLCタイプの焼き付き防止コーティング(4)は、選択的な方向(F)に沿って接触圧力を受ける摩擦領域に少なくとも対応する、限定された角度セクタ(S)にわたって、ピン(1)に適用される。本発明の枠組みを離れることなく、窒化クロム、炭化クロム、及び、窒化タングステン又は炭化タングステン、又は、TiAlN等の、クロム及び/又は窒化クロム及び/又はタングステンを含むコーティングのような、DLCとは異なるPVD、PECVD焼き付き防止コーティングを用いても良く、これらは全て一般に知られている。
【0037】
DLCタイプのコーティングを、ピン(1)の周縁部分の一部のみに適用するための2つの解決法を示している、図7及び図8と、図9及び図10とに言及すべきであろう。ピン(1)は、支持体(5)の周縁部分に、少なくとも1つの列に沿って環状に配置されている。ピン(1)は、回転方向に関してロックされ、接触位置に配置されている。
【0038】
図7及び図8に示された態様では、ピン(1)は、中央ウェブ(6)の周囲に配置されており、中央ウェブ(6)は、上述したように、当該ピンの回転ロックのために、当該ピンの回転を防止する。当該態様でも依然として、多数のピンを扱うためには、案内ロッド(7)と協働する当該ピンの内部ボアを用いることによって、当該ピンは互いに積層される。
【0039】
ピン(1)を洗浄した後、当該ピンは、上述したように、すでに決定された取り付けに従って配置され、完全に良く知られているように、真空蒸着エンクロージャ(図示せず)に導入される。ポンプ運転の間、真空蒸着エンクロージャー及びピン(1)は、放射加熱によって、ピンの焼き戻し温度に関する基準温度で脱気される。真空が2×10−5mbarの値に達すると、ほぼ10−3mbar程度の圧力に達するために、アルゴンがエンクロージャに導入される。エッチングパラメータが、密閉領域、ピン(1)の接線方向の位置決めによって生じるピン(1)の接点を含むピン(1)上に自然に存在する酸化物層の除去を可能にするために適応させられる。当該パラメータは、電流が増大する一方でピン上の電圧を減少させるために、カソードグローを減少させるために適応させられる。
【0040】
エッチングの後、マグネトロンスパッタリング法に従って、窒化クロムの蒸着が行われる。PVDの最後に、非晶質炭素タイプの被覆がPECVDによって蒸着される。このa‐C:H非晶質炭素層に、例えばa‐C:H‐Siタイプのシリコンを含む転移層が先行する。このDLCコーティングの適用は、当業者に広く完全に知られており、限定されない指示としてのみ提供される。
【0041】
本発明の本質は、DLCの実際の適用ではなく、むしろピンの周縁部の一部にのみ、このDLCコーティングをコーティングすることを可能にする方法にある。
【0042】
この構成において、試験は、計200°(−100°から+100°)の角度セクタにわたるコーティングが得られることを示した。このコーティングは、−85°から+80°の範囲の角度セクタ、すなわち計155°の角度セクタで付着力を有している。DLCコーティングの厚さは、−70°から+65°の範囲のセクタ、すなわち135°の角度セクタにわたって、±20%の範囲内で均一である(注:当該コーティングは、この角度セクタにおいて機能すると考えられている)。反対側の、+100°から−100°のセクタには、DLCコーティングが完全に欠落していることが観察できる。
【0043】
図9及び図10に示された態様では、コーティングされる領域の停止は、隣接するピンとの接触によってではなく、ピンそれぞれに関して、角度セクタを区切ることが可能である付加された保護要素(8)によって導入される。
【0044】
本態様では、ピン(1)は、すでに図7及び図8に示された態様の場合に関して説明したように、2つの隣接するピン(1)の間に保護要素(8)を取り付けることを考えて、回転方向に関してロックされ、接線方向に配置されるか、又は、この場合、ほぼ接線方向に配置されている。試験は、直径20mm及び直径28mmの鋼製ピン(1)を用いて行われた。このようなピンは、DLCコーティングの実際の適用に関してすでに述べた手順と同じ手順(洗浄、真空下への配置、脱気、エッチング、蒸着)に従った。
【0045】
この構成では、付着力のあるコーティングが、コーティングされた角度セクタ(S)全体にわたって、すなわち、直径20mmのピンに関しては、約−50°から+50°、直径28mmのピンに関しては、約−62.5°から+62.5°の角度セクタにわたって得られる。DLCコーティングの厚さは、この同じ角度セクタ(S)にわたって、±20%の範囲内で均一である。20mmのピン、及び、反対側の+50°から−50°の範囲のセクタに関しては、コーティングの完全な欠落が観察できる。同じことは、反対側の+62.5°から−62.5°のセクタにおける、直径28mmのピンにも該当する。
【0046】
この構成において、DLCでコーティングされるべき領域を定義かつ限定するために、付加された保護要素(8)を用いることは、DLCコーティングが関係し、当該保護要素(8)によって区切られた角度セクタ全体にわたって、均一の厚さを有する、付着力のあるコーティングを有することを可能にする。この保護要素(8)の慎重な位置決めは、十分な形態を240°(−120°から+120°)に達し得る角度セクタにわたって有する、付着力のあるコーティングを供給する。
【0047】
上述したように、DLCを決められたセクタにのみ適用するためには、ピンを正確に方向付けることが不可欠である。例示的な図16から図19の例について言及すべきであろう。
【0048】
DLCコーティングを、先行技術に係るピンの周縁部分全体にわたって適用する場合と、本発明の特徴に係る周縁部分の一部のみに沿って適用する場合との比較試験が行われた。
【0049】
試験は、直径16mmで長さ45mmのピンで行われた。360°にわたるDLCコーティング(先行技術)の場合、いわゆるトリプルローテーション構成を用いる必要がある。この場合、HEFデュフリット社が販売するTSD850機に導入することによって、4,356個のピンを処理することが可能である。ピンが本発明の特徴に従って処理される場合、すなわち、DLCコーティングが、限定された角度セクタにわたって、及び、図7及び図8に示された構成において適用される場合は、いわゆるダブルローテーション構成で十分である。この場合、同タイプのTSD850機に導入することによって、5,544個のピンを処理することが可能である。これによって、25%程度の機械充填の増大が得られる。
【0050】
本発明によると、トリプルローテーション構成からダブルローテーション構成に移行することによって、DLCコーティングのサイクル時間に利点が得られる。先行技術に係る(360°にわたるコーティング)厚さ3μmのDLCコーティングの場合、トリプルローテーション構成のサイクル時間は、TSD850機内で15.5時間であるが、本発明によると(限定された角度セクタにわたるコーティング)、ダブルローテーション構成におけるサイクル時間は、やはりTSD850機内で11.2時間であり、これはすなわち、ほぼ35%の程度の時間的利得である。
【0051】
これらの利点に加えて、DLCコーティングをピンの部分的な角度セクタに適用するという事実は、経済的な利点を維持しながら、コーティングの厚さを増大させることができる。このような厚さの増大は、ピンの寿命を延長し得るものであり、高負荷での使用の場合に特に有利である。DLCコーティングの厚さは、1μmから10μmの範囲であり得る。
【0052】
本発明の枠組みから離れることなく、摩擦領域の外側にもコーティングされるべきピン(又はその他)が排除されることはない。この場合、このコーティングの特性(厚さ及び/又は硬度及び/又は摩擦係数)は、摩擦領域に対応する角度セクタの焼き付き防止コーティングの特性よりも低い。
【符号の説明】
【0053】
1 ピン
2 ピストン
3 連接棒
4 焼き付き防止コーティング
5 支持体
6 中央ウェブ
7 案内ロッド
8 保護要素
10 ピストン
11 ピストン頂面
12 燃焼空洞
13 周縁ピストンカバー
14 周縁ピストンリング
15 ピストンボス
16 ボスボア
20、20’ ピストンピン
21、21’ 減摩コーティング
30 連接棒
31 小端部
100、100’ 構造ユニット
F 選択的な方向
S 角度セクタ
α 角度領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図19