(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560324
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】分光器及びフィルタ配列を調整するための方法
(51)【国際特許分類】
G01J 3/26 20060101AFI20190805BHJP
G01J 3/36 20060101ALI20190805BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20190805BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
G01J3/26
G01J3/36
G02B5/20 101
G02B5/28
【請求項の数】25
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-221806(P2017-221806)
(22)【出願日】2017年11月17日
(65)【公開番号】特開2018-116045(P2018-116045A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2018年8月10日
(31)【優先権主張番号】16199476.9
(32)【優先日】2016年11月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515321108
【氏名又は名称】エスプロス フォトニックス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ビート デ コイ
【審査官】
小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−194504(JP,A)
【文献】
特開平04−213403(JP,A)
【文献】
特開2013−051544(JP,A)
【文献】
米国特許第07242478(US,B1)
【文献】
特開2013−242179(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0080026(US,A1)
【文献】
特開2013−175433(JP,A)
【文献】
米国特許第5159199(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 − G01J 4/04
G01J 7/00 − G01J 9/04
G02B 5/20 − G02B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長帯において、スペクトルを記録するための分光器(1)であって、
当該分光器(1)の前側に配置される半導体チップ(2)であって、
センサ配列(4,20,30)であって、
前記半導体チップ(2)の後側に配置され、
少なくとも2つのセンサ画素(21,22)のマトリクス配列を含み、
前記センサ画素(21,22)は、電磁放射線を検出するために構成され、
前記センサ配列(4,20,30)は、後側の照射のために設計される、
前記センサ配列を備える前記半導体チップと、
波長に応じて放射をフィルタリングするためのフィルタ配列(5,31)であって、
前記フィルタ配列(5,31)は、少なくとも2つのフィルタ画素(7,23,32)のマトリクス配列を含み、
それぞれのフィルタ画素(7,23,32)は、フィルタリングの目的のために、ファブリ・ペロー干渉計(6)を形成し、
前記フィルタ配列(5,31)は、前記センサ配列(4,20,30)の後側に向かって配置される、
前記フィルタ配列と、
不揮発性メモリ(14)を備え、前記フィルタ配列(5,31)により覆われたセンサ画素(21,22)を識別するための装置(13)であって、前記センサ配列(4,20,30)に関連する前記フィルタ配列(5,31)の座標、及び/または、前記センサ配列(4,20,30)に関連する前記フィルタ配列(5,31)の座標変換則が、保存された前記座標及び/または前記座標変換則に基づいて、前記センサ画素(21,22)を、個々の前記フィルタ画素(7,23,32)に割り当てるために、及び/または、何れの前記センサ画素(21,22)が、対応する前記フィルタ画素(7,23,32)により覆われているかに応じて、個々の前記フィルタ画素(7,23,32)をアクティブ化するために、前記不揮発性メモリに保存される装置と、
を備える分光器であって、
前記フィルタ配列(5,31)により覆われた前記センサ画素(21,22)を識別するための前記装置(13)は、前記保存された座標及び/または座標変換則に基づいて、個々の前記フィルタ画素(7,23,32)のエッジにて、各場合の受信範囲内に位置する前記センサ画素(22)を非アクティブ化するように、及び、異なるフィルタ画素(7,23,32)にて前記フィルタリングがなされた光が前記センサ画素(21,22)のうちの1つに共同して影響を与えないよう有孔格子状隔壁(25)を形成するように設計される、
ことを特徴とする分光器。
【請求項2】
前記波長帯とは、250nmから1150nmである
ことを特徴とする請求項1に記載された分光器(1)。
【請求項3】
前記フィルタ配列(5,31)は、前記センサ配列(4,20,30)の後側に配置される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載された分光器(1)。
【請求項4】
前記フィルタ配列(5,31)は、透明搬送体(8)に取り付けられ、
前記透明搬送体(8)は、前記センサ配列(4,20,30)の後側に配置される、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載された分光器(1)。
【請求項5】
前記透明搬送体(8)は、平板として形成される、
ことを特徴とする請求項4に記載された分光器(1)。
【請求項6】
前記透明搬送体(8)は、ガラス板として形成される、
ことを特徴とする請求項5に記載された分光器(1)。
【請求項7】
前記フィルタ配列(5,31)により覆われた前記センサ画素(21,22)を識別するための前記装置(13)は、前記保存された座標及び/または座標変換則に基づいて、対応する前記フィルタ画素(7,23,32)により覆われた前記センサ画素(21)のうちの少なくとも1つをアクティブ化するように設計される、
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載された分光器(1)。
【請求項8】
前記フィルタ配列(5,31)により覆われた前記センサ画素(21,22)を識別するための前記装置(13)は、前記保存された座標及び/または座標変換則に基づいて、異なるフィルタ画素(7,23,32)にて前記フィルタリングされた光が前記センサ画素(21,22)のうちの1つに共同して影響を与えないよう有孔格子状隔壁(25)を形成するために、前記フィルタ画素(7,23、32)のエッジにて、各場合の受信範囲内に位置する前記センサ画素(21,22)を非アクティブ化するように設計された電子回路(3)を備える、
ことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載された分光器(1)。
【請求項9】
前記電子回路(3)は、非アクティブ化された前記センサ画素(22)のエッジ(24)を備える有孔格子状隔壁(25)を形成するように設計され、前記エッジの幅は、対応する前記フィルタ画素(7,23,32)の下方に位置する非アクティブ化されていない前記センサ画素の領域の、幅及び/または直径より小さく、前記非アクティブ化されたセンサ画素(22)のエッジは、所定の幅を備える、
ことを特徴とする請求項8に記載された分光器(1)。
【請求項10】
前記非アクティブ化されたセンサ画素(22)のエッジは、前記センサ画素(21,22)の幅を備える
ことを特徴とする請求項9に記載された分光器(1)。
【請求項11】
前記電子回路(3)は、前記半導体チップ(2)の一部である、
ことを特徴とする請求項8〜10の何れかに記載された分光器(1)。
【請求項12】
前記電子回路(3)は、前記半導体チップ(2)の前側に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項8〜11の何れかに記載された分光器(1)。
【請求項13】
前記電子回路(3)は、非アクティブ化された前記センサ画素(22)を読み取らないように設計される、
ことを特徴とする請求項8〜12の何れかに記載された分光器(1)。
【請求項14】
前記フィルタ画素(7,23,32)は、前記センサ画素(21,22)よりも大きい領域を覆う、
ことを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載された分光器(1)。
【請求項15】
前記フィルタ画素(7,23,32)は、前記センサ画素(21,22)よりも3倍から100,000倍大きい領域を覆う、
ことを特徴とする請求項14に記載された分光器(1)。
【請求項16】
前記フィルタ画素(7,23,32)は、前記センサ画素(21,22)よりも16倍大きい領域を覆う、
ことを特徴とする請求項14又は15に記載された分光器(1)。
【請求項17】
前記フィルタ配列(5,31)は、前記センサ配列(4,20,30)よりも小さい領域を覆う、
ことを特徴とする請求項1〜16の何れかに記載された分光器(1)。
【請求項18】
前記フィルタ画素(7,23,32)は、互いに平行に配置され、且つ、透明層(12)により互いから分離される、部分透過型ミラー(11)の配置を備える、
ことを特徴とする請求項1〜17の何れかに記載された分光器(1)。
【請求項19】
前記フィルタ画素(7,23,32)が少なくとも2つの場合は、前記部分透過型ミラー(11)は、その厚さに従い異なる波長伝送を実現するために、それぞれ異なる厚さを備える透明層(12)により、互いに異なる距離にある、
ことを特徴とする請求項18に記載された分光器(1)。
【請求項20】
透明保護層(9)、及び/または、反射防止層(10)は、前記フィルタ配列(5,31)の少なくとも後側に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1〜19の何れかに記載された分光器(1)。
【請求項21】
前記透明保護層(9)は、窒化ケイ素からなる
ことを特徴とする請求項19に記載された分光器(1)。
【請求項22】
波長帯において、分光器(1)のため、及び/または、スペクトルを記録するための分光器(1)の製造のために、センサ配列(4,20,30)に関連するフィルタ配列(5,31)を調整するための方法であって、
前記分光器(1)の前側に、センサ配列(4,20,30)を備える半導体チップ(2)を配置することであって、用いられる前記センサ配列(4,20,30)は、
前記半導体チップ(2)の後側に配置される、
少なくとも2つのセンサ画素のマトリクス配列を含む、
後側の照射用に設計される、
前記センサ画素(21,22)は、電磁放射線を検出するために設計される、
もののうちの1つである前記半導体チップを配置することと、
波長に応じて放射をフィルタリングするための前記フィルタ配列(5,31)を、前記センサ配列(4,20,30)に、前記センサ配列(4,20,30)の後側に向けて配置することであって、用いられる前記フィルタ配列(5,31)は、
少なくとも2つのフィルタ画素(7,23,32)のマトリクス配列を含む、
それぞれの前記フィルタ画素(7,23,32)は、フィルタリングの目的のためにファブリ・ペロー干渉計(6)を形成する、
もののうちの1つである、前記フィルタ配列を配置することと、
前記センサ配列(4,20,30)に関連する前記フィルタ配列(5,31)の座標、及び/または、前記センサ配列(4,20,30)に関連する前記フィルタ配列(5,31)の座標変換則を確定することと、
不揮発性メモリ(14)を設けること、且つ、前記メモリ(14)に前記座標及び/または前記座標変換則を保存することと、
前記センサ画素(21,22)を、個々の前記フィルタ画素(7,23,32)に割り当てること、及び/または、何れの前記センサ画素(21,22)が、対応する前記フィルタ画素(7,23,32)により覆われているかに応じて、個々の前記フィルタ画素(7,23,32)をアクティブ化することと、
を備える方法であって、
異なるフィルタ画素(7,23,32)にて前記フィルタリングがなされた光が前記センサ画素(21)のうちの1つに共同して影響を与えないよう有孔格子状隔壁(25)を形成するために、前記フィルタ画素(7,23,32)に覆われ、各場合にそのエッジ(24)に位置する前記センサ画素(22)は、非アクティブ化される
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記波長帯とは、250nmから1150nmである
ことを特徴とする請求項21に記載された方法。
【請求項24】
非アクティブ化された前記センサ画素(22)のエッジ(24)を備える前記有孔格子状隔壁(25)が形成され、前記エッジの幅は、対応する前記フィルタ画素(7,23,32)の下方に位置する非アクティブ化されていないセンサ画素(22)の領域の幅、及び/または、直径よりも小さく、前記非アクティブ化されたセンサ画素(22)のエッジ(24)は、所定の幅を備えるように設計される、
ことを特徴とする請求項22または23に記載された方法。
【請求項25】
前記非アクティブ化されたセンサ画素(22)のエッジは、前記センサ画素(21,22)の幅を備える
ことを特徴とする請求項24に記載された分光器(1)。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特に、250nmから1150nmの波長帯におけるスペクトルを記録するための分光器、さらに、分光器のため、及び/または、分光器の製造のための、センサ配列に関連するフィルタ配列の調整のための方法に関する。
【0002】
センサ画素配列及び割り当てられたフィルタを備える分光器が、従来技術から周知である。使用されるフィルタは、個別のフィルタ画素から構成され、例えば、バンドパスフィルタを形成するために、ファブリ・ペロー干渉計が用いられる。
【0003】
本発明の目的は、製造コストが大幅に削減される分光器を提供することである。
この目的は、導入部にて言及される型の分光器及び調整方法に由来し、請求項1及び16の特徴のそれぞれにより実現される。
【0004】
本発明の有利な実施形態及び展開は、従属請求項にて言及される手段により可能となる。
本発明による分光器の場合には、上記の目的は、特に、センサ配列とフィルタ配列との間の調整が大幅に単純化され、且つ、製造中のコスト低減を引き起こす、というそれぞれの事実により実現され得る。同時に、原則として、本発明による分光器、及び、本発明による調整方法のそれぞれの場合において、正確さが失われることはない。半導体チップは、分光器の前側に位置し、ここで、半導体チップ、特に、電子回路は、センサ配列により供給された検出信号の捕捉及び/または処理に用いられる。次に、これにより受信される光信号が検出され得るセンサ配列は、後側の照射用に設計され、この点において、有利に半導体チップの後側に配置される。その結果、半導体チップの電子回路は、検出側から離れる方向を向き、且つ、検出側を遮らない。上記のセンサ配列は、少なくとも2つのセンサ画素のマトリクス配列を含む。しかしながら、概して2つより大幅に多いセンサ画素が存在する。一般的に、センサ画素は、電磁放射線、つまり、特に、上述した、250nm(略語:ナノメートル)と、1150nmとの間の波長帯の光の検出に用いられる。センサ配列が後側の照射用に設計されるという事実により、既に上で説明したように、考えられる評価用電子回路は検出領域を遮らないので、より広い検出領域を、通常、有利に利用することができる。
【0005】
さらに、後側の照射は、概して(僅かではあるが)変更された屈折率を有し、それゆえに反射を引き起こし得る絶縁層を用いる必要が無いという有利な点も加えて備える。バルク材全体、それゆえに、比較的厚い吸収層を実質的に使用できるので、検出される入射光は良好に吸収され得る。異なる波長は、バルク材への異なる進入深さを有するので、このこともまた、特に有利である。センサの後側の露出は、非常に幅広い波長帯にわたり、非常に高い感度を可能にする。加えて、上記の波長帯、特に250nmから1150nm、における感度プロファイルは、非常に均一であり、そして、実質的に変動は無い。
【0006】
さらに、波長に応じて放射をフィルタリングするためのフィルタ配列が設けられ、このフィルタ配列は、少なくとも2つのフィルタ画素のマトリクス配列を含む。それぞれのフィルタ画素は、センサ配列の特定の領域に割り当てられ得る。その結果、対応するフィルタ画素を通過する光は、上述した割り当てられたセンサ配列の領域に入射し、そこで、対応するセンサ画素により検出される。上記のフィルタ画素のそれぞれは、フィルタリングの目的のために、いわゆる、ファブリ・ペロー干渉計を形成する。ファブリ・ペロー干渉計は、可能な限り平行な形で配置される、例えば、2つの半透明ミラー、または、透明板の端部を備える。光は、それゆえに、干渉計をそのまま通過し得るか、あるいは、2つの半透明ミラー、または、対応するガラス板の境界面の間で反射され、つまり、何れの場合も、光は再度、ミラー間の距離の2倍、または、ガラス板の厚さの2倍、または、それらの複数倍、進む。干渉ビームの場合には、このことは、それゆえに、半透明ミラー間の間隔またはガラス板の厚さに応じて、対応する干渉効果を引き起こし、且つ、波長に依存する形で光を伝達する経路差をもたらす。後側の照射がもたらされるので、フィルタ配列は、センサ配列の後側に向かって配置される。
【0007】
フィルタ配列とセンサ配列との間の調整を単純化できるようにするために、本発明は、フィルタ配列により覆われたセンサ画素を識別するための、不揮発性メモリを含む装置を提供する。センサ配列に関連するフィルタ配列の座標はこのメモリに保存され、直接の座標の代わりに、センサ配列に関連するフィルタ配列の座標変換則もまた、上記のメモリに保存され得る。上記の座標及び/または上記の座標変換則に基づいて、センサ画素は個々のフィルタ画素に割り当てられ得る。センサ画素がフィルタ画素により覆われていない場合、これに従い、割り当ては起こらない。センサ配列とフィルタ配列との相対的な位置についての情報は、互いに対する2つの位置調整において、対応するフィルタ画素が、これらのために提供されたセンサ画素上に正確に位置することを確実にするために正確に取り扱う必要性を無くす。フィルタ配列のセンサ配列への取り付けにおいて、センサ画素が特にそのとき実際に覆われているセンサに対して、フィルタ配列がどれくらい正確に位置合わせされているか、及び、フィルタ配列が、センサ配列に対して、ずれるか、または、回転される形で配置されているかどうかが本質的に重要でない場合には、むしろ、より単純である。フィルタ画素は、センサ配列に対して、非常に正確に、且つ、技術的に非常に大きな複雑さを伴って調整されると共に移動されなければならないので、特に、このような分光器の製造中の、それ自体の調整は、特に高価な工程を実際に構成する。本発明は、加えて、センサ配列が、それぞれのフィルタに対して改めて調整される必要がないことを可能にする。
【0008】
本発明の1つの展開において、次に、フィルタ配列のセンサ配列の後側への配置の可能性がある。さらなる他の可能性として、フィルタ配列は、透明搬送体上に取り付けられ得る。透明搬送体は、センサ配列の後側に順に配置され得る。透明搬送体が省略された場合には、製造中に、フィルタ配列がセンサ配列に関連して直接配置されるので、特に、正確、且つ、コスト効率の良い製造が可能となる。
【0009】
このフィルタ配列はまた、透明搬送体に取り付けられ得、この透明搬送体は、センサ配列の後側に順に配置される。このような例示的な実施形態は、センサ配列及びフィルタ配列の両方が個別に製造され得るという有利な点を備える。さらに、後側から照射されるセンサ配列は、フィルタ層への直接的な固定接続がストレスを引き起こす恐れがあり、それゆえに、場合により破壊をもたらす恐れがあるので、概して、慎重な方法で取り扱われるべきである。議論中の本発明の例示的な実施形態の場合には、このことは、そのような透明搬送体に製造されたフィルタ配列により、回避され得る。
【0010】
本発明の1つの展開において、好適な透明搬送体はガラス板である。特に、このような材料は、好ましい光学特性、特に高透明度だけでなく、フィルタに必要不可欠な安定性もまた備え得るからである。センサ配列及びフィルタ配列のような光学部品が互いに別々に製造される場合には、それらは、分光器の組立の間に、後から互いに対して調整されなければならない。透明搬送体は、それゆえに、フィルタ配列の扱いのための有利な手段として用いられ得る。
【0011】
原則として、本発明によれば、フィルタ配列により覆われたセンサ画素を識別するための装置は、何れのフィルタ画素が何れのセンサ画素を覆うかの割り当てを可能にする。その結果、フィルタ除去された波長もまた、対応するセンサ画素に割り当てられ得る。本発明によれば、たとえ、フィルタ配列及びセンサ配列が互いに対して回転されても、つまり、それぞれの配列の行及び/または列が、互いに対して平行でない場合でも、しかしながら、概して、このことは可能である。さらに、フィルタリングされた光の受信範囲は、個々のフィルタ画素のエッジ領域において生じ得ることが考慮されなければならない。このことは、ここで、個々のフィルタ画素のエッジ領域で、検出を同様の精度で実行することはできない、という結論を場合により導く。なぜならば、特定の波長に対する強度の明確な指定は、もはや率直に不可能であるからである。このことを回避するために、特に、有孔格子状隔壁を用いることが可能である。このような隔壁は、隣接するフィルタ画素の光の重なりが何れにしても起こり得る、個々のフィルタ画素のエッジ領域における検出を防止する。しかしながら、有孔格子状隔壁は、全体として、それぞれが少なくとも1つのセンサ画素を含み、且つ、特定のフィルタ画素に割り当てられ得る、つまり、特定の波長帯の検出に関与する、個々の検出領域を同時に規定する。本発明の1つの実施形態において、測定の精度は、このような有孔格子状隔壁の設計により有利に向上され得る。
【0012】
可能な限りコスト効率が良く、且つ、比較的高い材料費、及び/または、製造上の複雑さを伴うことなく、有孔格子状隔壁を作ることを可能とするために、フィルタ画素のエッジ領域における個々のセンサ画素は、非アクティブ化されることが可能である、つまり、それらは最初からスイッチが切られているか、または、それらの測定信号は、それ以上考慮されない。それゆえに、センサ配列、または、フィルタ配列上及び/または内への、有孔格子状隔壁の取り付けまたは組み込みは、回避されることができ、それにもかかわらず、隣接するフィルタ画素の配置の結果としての重なりは考慮される。
【0013】
逆に、本発明の変形の実施形態においては、フィルタ配列により覆われたセンサ画素を識別するための装置により、これらの(または、これらのうちのいくつかの)センサ画素は、それらが、それぞれのフィルタ画素と重ね合わさって位置し、且つ、場合によっては、さらに、非アクティブな画素を構成することを意図しない有孔格子状隔壁の領域内に入る場合に、正確に、初めてアクティブ化されることもまた考えられる。後者は、個々のフィルタ画素のエッジ領域に過度に位置することがあり得、それゆえに、不正確さを引き起こすからである。このようにして、フィルタ配列の配置に従いセンサ画素が割り当てられ得るまで、対応するセンサ画素を非アクティブのままにし、それから、それらを初めてアクティブ化することも可能である。その結果として、誤検出及び/または不正確さが回避され得る。適切な場合、対象を絞った形で特定のセンサ画素のみがアクティブ化されるので、分光器のエネルギ需要はまた、この方法により削減され得る。
【0014】
フィルタ配列の位置に従って、センサ画素のアクティブ化または非アクティブ化を可能にするこの目的のために、本発明の1つの例示的な実施形態に従って、フィルタ配列により覆われたセンサ画素を識別するための装置は、対応する電子回路を備える。これは、センサ画素のフィルタ配列への割り当てが、分光器の作動中に自動的に実行されることを可能にする。適切な場合、これはまた、データ処理レベルにて単独で実行され得る。データ処理レベルにて個々のセンサ画素により供給されるデータを純粋に選択することは、原則として、より多くの測定データを取得できるという有利な点を備える。上記の測定データは、それから、後に評価されるだけでよい。例えば、フィルタ画素のエッジ領域にある測定データに興味がある場合には、そのとき、これらはまだ使用することができる。一例として、上記のデータに基づいて、有孔格子状隔壁の何れのエッジ幅を選択すべきかを決定することも可能である。電子回路は、本発明の1つの実施形態においては、それぞれのフィルタ画素のエッジ領域において、センサ画素を非アクティブ化するという旨の有孔格子状隔壁を導入することにもまた関与し得る。
【0015】
本発明の展開においては、電子回路は、特に、半導体チップの一部であり得る。このようにして、上記の電子回路は、分光器内にコンパクトに組み入れられ得、分光器の不可欠な部品となり得る。
【0016】
特に、電子回路は、半導体チップの前側に有利に取り付けられ得、その結果、後側の照射の間、検出領域の遮光の原因となることもない。
既に上述したように、電子回路は、最初は非アクティブ化されたセンサ画素を読み取らないように設計され得る。なぜなら、後者は、起こり得る重なりのために、破損した測定データを生じ得ることが推測されるからである。製造上の理由からも、作動中にセンサ画素全体をアクティブ化すること、つまり、それらが検出されるようにすることは、より単純かもしれない。なぜならば、フィルタ配列の正確な位置は、一般的に最初は不明であり、電子回路、及び/または、ソフトウェアのみにより関連する割り当てが順に実行される間に、フィルタ配列の相対的な座標、及び/または、センサ配列とフィルタ配列との間の座標変換則が確定することにより、後に決定されるのみであるからである。
【0017】
本発明の特に有利な1つの実施形態において、フィルタ画素は、センサ画素よりも大きい領域を備える。このようにして、複数または多数のセンサ画素が、1つのフィルタ画素に割り当てられてもよく、つまり、フィルタ除去された波長のために、1つのセンサ画素は検出に有効でない。センサの感度及び正確さは、それにより改善される。好ましくは、フィルタ画素の領域は、センサ画素の領域の16倍大きい。しかしながら、特に、およそ3倍の大きさの領域と、およそ100,000倍の大きさの領域との間の範囲が、ここでは考えられる。一方では、より小さいセンサ画素は、概して、大きいセンサ画素よりも速く動作し得る。他方では、少なくともセンサ配列及びフィルタ配列が1つのウエハ上に製造されることが意図される場合には、組み入れられるフィルタ配列のために、この製造工程は概して非常に高価となることが考慮されるべきである。この理由から、多くの場合、フィルタ配列は別に製造することが好ましい。しかしながら、この場合には、センサ配列に関連してフィルタ配列を正確に調整することが必要であり、この調整は、本発明による特に効果的な方法で、特にこの例示的な実施形態に従って、相応に可能となる。
【0018】
しかしながら、有利な形においては、フィルタ配列は、全体として、センサ配列よりも小さな領域を順に覆い得る。このようにして確実にされ得ることは、フィルタ配列の全体の領域が、センサ画素またはセンサ配列によって捕捉されることであり、特に、調整の目的のために、フィルタ配列が、センサ配列上で、正確にどこに取り付けられるのかについて、まだ自由度がある。特に、センサ配列へのフィルタ配列の取り付けに関して、フィルタ配列の外側のエッジにおいて、この領域もまたセンサ配列のエッジに直接載らないように、ある程度の間隔がまだ残され得る。その結果、対応する電磁放射線の十分に信頼性のある検出が、実行され得る。
【0019】
原則として、用いられるフィルタは、様々な方法で設計され得る。ファブリ・ペロー干渉計の設計として、それぞれのフィルタ画素は、例えば、互いに平行となり、且つ、透明層により互いから分離される部分透過型ミラーの構成を備え得る。このようにして、同様に可能となることは、フィルタ配列が、互いに真っ直ぐに並んで位置する画素を備え得ることである。この場合には、フィルタ配列は、階段状の形で構成され得、例えば、それぞれのステップは、1つ以上のフィルタ画素と対応し得る。つまり、異なるステップの高さは、光が光学媒体内を部分透過型ミラー間の反射で伝わるべき追加の経路を示し、これは、互いに対して、部分的に干渉するビームの異なる位相のずれを引き起こし、その結果、対応するステップもまた異なる波長を伝送する。
【0020】
フィルタ配列の後側、または、フィルタ配列の側面に沿って、透明保護層が取り付けられ得、例えば、透明保護層は、第一に、フィルタ配列を機械的な影響から保護する。上記の保護層は、特に、窒化ケイ素から製造され得、または、窒化ケイ素を含み得る。
【0021】
本発明の好ましい展開においては、分光器の検出を阻害する恐れのある光の妨害反射を避けることを可能にするために、反射防止層もまた設けられ得る。概して、反射防止層は、弱め合う干渉をもたらし、その結果、妨害反射の部分波は、互いに相互に打ち消し合う。
【0022】
次に、透明搬送体として、ガラス板がもたらされ得る。特に、この材料は、対応する250nmと1150nmとの間の波長帯において必要な透明性を有利に備え得るだけでなく、ある程度の硬さを備え、それゆえに安定性を与え、加えて、屈折率は、分光器内で用いられる他の部品に対して十分に適応できるからである。
【0023】
同様に、分光器のため、または、対応する分光器の製造のために、センサ配列に関連してフィルタ配列を調整するための本発明による方法は、特に、センサ配列に関連するフィルタ配列の座標、または、センサ配列に関連するフィルタ配列の対応する座標変換則が、確定され、且つ、不揮発性メモリに保存され、その結果、個々のフィルタ画素に対するセンサ画素の割り当てが可能になるという事実により特徴づけられる。既に上述した有利な点は、この方法により実現可能となる。特に、このような調整方法は、分光器の製造中に用いられ得る。詳細には、フィルタ配列及びセンサ配列が、後の製造プロセスにおいて、互いに関連して共に結合されるか、または、配置される個別の部品として製造される場合に、比較的単純な手段を用いて、正確な配置を実現することが必要である。そうでなければ、センサの精度に悪影響を及ぼし得るか、または、分光器が製造上の理由で非常に高価となり得るからである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による分光器の概略的な断面図を具体的に示す。
【
図2】センサ配列及びフィルタ配列の重ね合わせの概略図を具体的に示す。
【
図3】センサ配列及びフィルタ配列の重ね合わせのさらなる概略図を具体的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の1つの例示的な実施形態が、図面にて示されると共に、さらなる詳細と有利な点を示すことで、以下に、より具体的に説明される。
図1は、半導体チップ2を備える分光器1を示し、半導体チップ2は、電子回路3とセンサ配列4とに分離される。次に、電子回路3は、特に、センサ配列4により得られる信号の評価に用いられる。センサ配列4は後側で照射され、この理由から、電子回路3を前側に配置することは、センサ配列4の検出領域の遮光がそこで生じるために、有利である。センサ配列4の後側に配置されるフィルタ配列5は、必須の構成要素として、バンドパスフィルタの機能を実行する、1つ以上のファブリ・ペロー干渉計6(略語:FPI)を備え、このバンドパスフィルタ6は、階段状の形に配置され、それぞれのステップ7は、光学バンドパスフィルタを実現するための分離したFPI構造に対応する。特定の波長において、FPIにおける最大の透過が生じ、それらの波長の間隔は、自由スペクトル領域と称される。
【0026】
加えて、ガラス板8が、センサ配列4と、ファブリ・ペロー干渉計6と、の間に配置され、上記のガラス板は、ファブリ・ペロー干渉計6のための搬送体材料として用いられる。これが、干渉計の構造を機械的に安定させる。
【0027】
センサ配列4として、特に、それぞれ短時間または長時間露光用の2つのメモリを備えるToF(Time of flight)チップを用いることが可能である。その結果、平均化を、特に背景光を抑制するためにも、この測定器を用いて実行することも可能である。
【0028】
窒化ケイ素からなる保護層9は、フィルタ配列5の外側の領域に位置し、フィルタ配列5の中核の構成要素、具体的には、FPI6及びガラス板8は、いわば、上記の保護層に埋め込まれる。反射防止層10は、個々のフィルタステップ7に同様に取り付けられる。この個々のステップ7は、透明層12により形成され、後者は、同様に、半透明層11の間にはめ込まれる。半透明層11は、各場合にて、干渉計の、ミラーまたは部分透過型のミラーを形成する。
【0029】
図2は、さらに、センサ画素のマトリクス配列20、つまり、センサ配列20を示し、アクティブなセンサ画素21及び非アクティブなセンサ画素22が図示されている。5×5のセンサ画素21,22の領域をそれぞれ取り囲む太く描かれた線は、何れもフィルタ画素23に対応する。それぞれのフィルタ画素23内に、エッジ領域24(1つのセンサ画素の幅)が、非アクティブなセンサ画素22により形成される。非アクティブなセンサ画素22からなるエッジ24の全体は、順に、有孔格子状隔壁25を形成する。
図2による例示は、フィルタ画素23及びセンサ画素21,22の正確な配列に基づいており、配列のフィルタ画素23及びセンサ画素21,22の対応する行及び/または列の並びは、何れの場合にも、平行である。
【0030】
図3は、センサ配列30、及び、個々のフィルタ画素32を備えるフィルタ配列31の概略図を示すと共に、概して、センサ配列30の原点33が、フィルタ配列31の原点34に対してオフセット量35だけオフセットされ得ることを明確にする。加えて、フィルタ配列31は、センサ配列30に対して、角度αだけ回転されている。対応する座標変換則は、電子回路3の一部として、フィルタ配列により覆われたセンサ画素を識別するための装置13の一部であるメモリ内に保存され得、このメモリは、不揮発性メモリ14として具体化される。
【0031】
本発明の全ての例示的な実施形態において、分光器は、その前側に半導体チップ、そして、半導体チップの後側にセンサ配列を備え、上記のセンサ配列は、後側の照射用に設計されている。さらに、フィルタ配列と、不揮発性メモリを備え、フィルタ配列により覆われたセンサ画素を識別するための装置とが設けられ、センサ配列に対するフィルタ配列の座標は、このメモリに保存され得る。これに対する代替として、センサ配列に対するフィルタ配列の位置を確定するための座標変換則もまた用いられ得、このメモリに保存され得る。この方法は、これらの2つの部品、つまり、フィルタ配列及びセンサ配列、の互いに対する調整を行うための特に効果的な方法を構成する。概して、大きいセンサ画素は、一般的に動作がより遅いので、センサ画素は、可能な限り小さく構成されると有利である。さらに、1つのウエハ上で他の部品と共にされるフィルタ配列の製造は、比較的高価となることが考慮されるべきである。それゆえに、製造において、多くの場合、フィルタ配列は個別に製造することが好ましい。しかしながら、この場合において、センサ配列とフィルタ配列との間の調整は、概して必要である。非常に小さいセンサ画素を、調整のように正確に用いることは、しかしながら、非常に複雑で高価となり得る。さらに、フィルタ配列は、概して、センサ配列に対して、単なるオフセット、または、単純な移動によってではなく、むしろ両方の部品が互いに対して規則的に回転もされて位置が変えられることが考慮されなければならない。
【符号の説明】
【0032】
1…分光器、2…半導体チップ、3…電子回路、4…センサ配列、5…フィルタ配列、6…ファブリ・ペロー干渉計、7…フィルタ画素/フィルタステップ、8…ガラス板、9…保護層、10…反射防止層、11…半透明層、12…透明層、13…フィルタ配列により覆われたセンサ画素を識別するための装置、14…不揮発性メモリ、20…センサ配列、21…アクティブなセンサ画素、22…非アクティブなセンサ画素、23…フィルタ画素、24…エッジ、25…有孔格子状隔壁、30…センサ配列、31…フィルタ配列、32…フィルタ画素、33…センサ配列の原点、34…フィルタ配列の原点、35…オフセット量、α…回転角