(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(前記混合物中の前記ポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(前記混合物中の前記ポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数)=100/22超100/99以下である、請求項1乃至3いずれか一項に記載のガスバリア性積層体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、文中の数字の間にある「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0015】
<ガスバリア性積層体>
図1および2は、本発明に係る実施形態のガスバリア性積層体100の構造の一例を模式的に示した断面図である。
ガスバリア性積層体100は、基材層101と、基材層101の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物(以下、ガスバリア用塗材とも呼ぶ。)を加熱することにより形成された、厚さ0.01μm以上0.45μm以下のガスバリア性重合体層103と、を備える。ここで、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱することにより形成された層とは、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物のアミド架橋体により構成された層を意味する。
以下、ガスバリア性積層体100を構成する各層について説明する。
【0016】
[ガスバリア性重合体層]
本実施形態に係るガスバリア性重合体層103は、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱して硬化させることにより形成されたものである。ガスバリア性重合体層103はガスバリア性および基材層101との安定的な接着の観点から、厚さが0.01μm以上0.45μm以下である。ガスバリア性重合体層103の厚さが0.01μm未満となるとガスバリア性が不十分になることがあり、0.45μmを超えると外的な変形力に対する追従性が不十分となり、基材層との安定的した接着性が得られないことがある。すなわち、ガスバリア性重合体層103の厚さを上記範囲内とすることにより、ガスバリア性重合体層103に追従性を付与することができ、結果としてガスバリア性積層体100に外的な変形を加えてもガスバリア性重合体層103と基材層101との層間で剥離しにくくなる。
【0017】
また、本実施形態に係るガスバリア性重合体層103の赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収帯1493cm
−1以上1780cm
−1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、吸収帯1598cm
−1以上1690cm
−1以下の範囲における全ピーク面積をBとしたとき、B/Aで示されるアミド結合の面積比率がガスバリア性の観点から好ましくは0.370以上、より好ましくは0.400以上、さらに好ましくは0.420以上、特に好ましくは0.430以上である。また、B/Aで示されるアミド結合の面積比率の上限は、外観、寸法安定性、生産性のバランスをより向上させる観点から、好ましくは0.700以下、より好ましくは0.680以下、特に好ましくは0.650以下である。
【0018】
ここで、上記B/Aが上記下限値以上であるガスバリア性重合体層103は、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を特定の割合で含む混合物(以下、ガスバリア用塗材とも呼ぶ。)を特定の加熱条件で加熱することにより得ることができる。
本実施形態に係るガスバリア性重合体層103は赤外線吸収スペクトルにおける未反応のカルボン酸のνC=Oに基づく吸収が1700cm
−1付近にみられ、架橋構造であるアミド結合のνC=Oに基づく吸収が1630〜1685cm
−1付近にみられ、カルボン酸塩のνC=Oに基づく吸収が1540〜1560cm
−1付近にみられる。
すなわち、本実施形態において、赤外線吸収スペクトルにおける吸収帯1493cm
−1以上1780cm
−1以下の範囲における全ピーク面積Aは、カルボン酸とアミド結合とカルボン酸塩の合計量の指標を表し、吸収帯1598cm
−1以上1690cm
−1以下の範囲における全ピーク面積Bはアミド結合の存在量の指標を表し、後述する吸収帯1690cm
−1以上1780cm
−1以下の範囲における全ピーク面積Cは未反応のカルボン酸の存在量の指標を表し、後述する吸収帯1493cm
−1以上1598cm
−1以下の範囲における全ピーク面積Dはカルボン酸塩、すなわちカルボキシル基とアミノ基のイオン架橋の存在量の指標を表していると考えられる。
【0019】
なお、本実施形態において、上記全ピーク面積A〜Dは、以下の手順で測定できる。
まず、本実施形態のガスバリア性重合体層103から1cm×3cmの測定用サンプルを切り出す。次いで、そのガスバリア性重合体層103の表面の赤外線吸収スペクトルを赤外線全反射測定(ATR法)により得る。得られた赤外線吸収スペクトルから、以下の手順(1)〜(4)で上記全ピーク面積A〜Dを算出する。
(1)1780cm
−1と1493cm
−1の吸光度を直線(N)で結び、吸収帯1493cm
−1以上1780cm
−1以下の範囲の吸光スペクトルとNで囲まれる面積を全ピーク面積Aとする。
(2)1690cm
−1の吸光度(Q)から垂直に直線(O)を下ろし、NとOの交差点をPとし、1598cm
−1の吸光度(R)から垂直に直線(S)を下ろし、NとSの交差点をTとし、吸収帯1598cm
−1以上1690cm
−1以下の範囲の吸収スペクトルと直線S、点T、直線N、点P、直線O、吸光度Q、吸光度Rで囲まれる面積を全ピーク面積Bとする。
(3)吸収帯1690cm
−1以上1780cm
−1以下の範囲の吸収スペクトルと吸光度Q、直線O,点P、直線Nで囲まれる面積を全ピーク面積Cとする。
(4)吸収帯1493cm
−1以上1598cm
−1以下の範囲の吸収スペクトルと吸光度R、直線S、点T、直線Nで囲まれる面積を全ピーク面積Dとする。
次いで、上記の方法で求めた面積から面積比B/A、C/A、D/Aを求める。
なお、本実施形態の赤外線吸収スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は、例えば、日本分光社製IRT−5200装置を用い、PKM−GE−S(Germanium)結晶を装着して入射角度45度、室温、分解能4cm
−1、積算回数100回の条件で行うことができる。
【0020】
ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物により形成されたガスバリア性重合体層103にはイオン架橋とアミド架橋という2種類の架橋構造が存在し、これらの架橋構造の存在比率がガスバリア性能を向上させる観点において重要である。なお、上記イオン架橋とは、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基とが酸塩基反応を起こすことによって生成するものであり、上記アミド架橋とは、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基とが脱水縮合反応を起こすことによって生成するものである。
そこで、高湿度下およびボイル・レトルト処理後での双方の条件下での酸素バリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性能を向上させつつ、外観、寸法安定性、生産性の性能バランスを向上させるための設計指針として、上記B/Aで示されるアミド結合の面積比率という尺度を適用できる。製造条件を制御することにより、ガスバリア性重合体層103の上記B/Aで示されるアミド結合の面積比率を特定値以上に調整することが可能となり、このような特性を有するガスバリア性重合体層103は高湿度下およびボイル・レトルト処理後での双方の条件下でのガスバリア性がより効果的に発現し、さらに外観、寸法安定性、生産性のバランスにも優れている。
すなわち、B/Aで示されるアミド結合の面積比率が上記下限値以上であるガスバリア性重合体層103を用いることにより、高湿度下およびボイル・レトルト処理後での双方の条件下での酸素バリア性、水蒸気バリア性により一層優れながら、外観、寸法安定性、生産性のバランスにも優れるガスバリア性積層体100を得ることができる。
【0021】
このようなガスバリア性重合体層103が上記の性能バランスに優れる理由は必ずしも明らかではないが、B/Aで示されるアミド結合の面積比率が上記範囲内であるガスバリア性重合体層は、前述したイオン架橋とアミド架橋という2種類の架橋構造がバランス良く緻密な構造を形成しているためであると考えられる。
すなわち、上記B/Aで示されるアミド結合の面積比率が上記範囲内であることは、イオン架橋とアミド架橋という2種類の架橋構造がバランス良く形成していることを意味していると考えられる。
【0022】
本実施形態に係るガスバリア性重合体層103は、赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収帯1690cm
−1以上1780cm
−1以下の範囲における全ピーク面積をCとしたとき、C/Aで示されるカルボン酸の面積比率が、外観、寸法安定性、生産性のバランスをより向上させる観点から、好ましくは0.040以上、より好ましくは0.060以上、特に好ましくは0.080以上である。
また、上記C/Aで示されるカルボン酸の面積比率の上限は、高湿度下およびボイル・レトルト処理後での双方の条件下での酸素バリア性、水蒸気バリア性をより一層向上させる観点から、好ましくは0.500以下、より好ましくは0.450以下、特に好ましくは0.400以下である。
【0023】
本実施形態に係るガスバリア性重合体層103は、赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収帯1493cm
−1以上1598cm
−1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率が、高湿度下およびボイル・レトルト処理後での双方の条件下での酸素バリア性、水蒸気バリア性をより一層向上させる観点から、好ましくは0.100以上、より好ましくは0.150以上である。
また、上記D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率の上限は、外観、寸法安定性、生産性のバランスをより向上させる観点から、好ましくは0.450以下、より好ましくは0.420以下、特に好ましくは0.400以下である。
【0024】
本実施形態に係るガスバリア性重合体層103のB/Aで示されるアミド結合の面積比率、C/Aで示されるカルボン酸の面積比率およびD/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率は、ガスバリア性重合体層103の製造条件を適切に調節することにより制御することが可能である。本実施形態においては、とくにポリカルボン酸およびポリアミン化合物の配合比率、ガスバリア用塗材の調製方法、上記ガスバリア用塗材の加熱処理の方法・温度・時間等が、上記B/Aで示されるアミド結合の面積比率、上記C/Aで示されるカルボン酸の面積比率および上記D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率を制御するための因子として挙げられる。
【0025】
上記B/Aが上記下限値以上であるガスバリア性重合体層103を得るためには、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物の配合比率、ガスバリア用塗材の調製方法、上記ガスバリア用塗材の加熱処理の方法・温度・時間等の製造条件を高度に制御することが重要である。すなわち、以下の3つの条件に係る各種因子を高度に制御する製造方法によって初めて上記B/Aが上記下限値以上であるガスバリア性重合体層103を得ることができる。
(1)ポリカルボン酸およびポリアミン化合物の配合比率
(2)ガスバリア用塗材の調製方法
(3)ガスバリア用塗材の加熱処理の方法・温度・時間
【0026】
以下、本実施形態に係るガスバリア性重合体層103の製造方法の一例について説明する。
まず、(1)ポリカルボン酸およびポリアミン化合物の配合比率について説明する。
【0027】
(ポリカルボン酸およびポリアミン化合物の配合比率)
本実施形態において、(ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数)は、好ましくは100/22超、より好ましくは100/25以上、特に好ましくは100/29以上である。
一方、本実施形態において、(ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数)は、好ましくは100/99以下、より好ましくは100/86以下、特に好ましくは100/75以下である。本実施形態に係るガスバリア性重合体層103を得るためには、(ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数)が上記範囲内になるように、ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸およびポリアミン化合物の配合比率を調整することが好ましい。
【0028】
(ポリカルボン酸)
本実施形態に係るポリカルボン酸は、分子内に2個以上のカルボキシ基を有するものである。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸、3−ヘキセン酸、3−ヘキセン二酸等のα,β−不飽和カルボン酸の単独重合体またはこれらの共重合体が挙げられる。また、上記α,β−不飽和カルボン酸と、エチルエステル等のエステル類、エチレン等のオレフィン類等との共重合体であってもよい。
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸の単独重合体またはこれらの共重合体が好ましく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体から選択される一種または二種以上の重合体であることがより好ましく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸から選択される少なくとも一種の重合体であることがさらに好ましく、アクリル酸の単独重合体、メタクリル酸の単独重合体から選択される少なくとも一種の重合体であることが特に好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の単独重合体、アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の両方を含む。アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の場合、ポリアクリル酸は、重合体100質量%中に、アクリル酸由来の構成単位を、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
また、本実施形態において、ポリメタクリル酸とは、メタクリル酸の単独重合体、メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体の両方を含む。メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体の場合、ポリメタクリル酸は、重合体100質量%中に、メタクリル酸由来の構成単位を、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
【0029】
本実施形態に係るポリカルボン酸はカルボン酸モノマーが重合した重合体であり、ポリカルボン酸の分子量としては、ガスバリア性および取扱い性のバランスに優れる観点から500〜2,000,000が好ましく、1,500〜1,000,000がより好ましい。さらに5,000〜500,000が好ましく、10,000〜100,000が特に好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリカルボン酸の分子量はポリエチレンオキサイド換算の重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0030】
(ポリアミン化合物)
本実施形態に係るポリアミン化合物は、主鎖あるいは側鎖あるいは末端にアミノ基を2つ以上有するポリマーである。具体的には、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ(トリメチレンイミン)等の脂肪族系ポリアミン類;ポリリジン、ポリアルギニンのように側鎖にアミノ基を有するポリアミド類;等が挙げられる。また、アミノ基の一部を変性したポリアミンでもよい。良好なガスバリア性を得る観点から、ポリエチレンイミンがより好ましい。
【0031】
本実施形態に係るポリアミン化合物の重量平均分子量は、ガスバリア性および取扱い性のバランスに優れる観点から、50〜5,000,000が好ましく、100〜2,000,000がより好ましく、1,500〜1,000,000がさらに好ましく、1,500〜500,000がよりさらに好ましく、1,500〜100,000が特に好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリアミン化合物の分子量は沸点上昇法や粘度法を用いて測定することができる。
【0032】
つぎに、(2)ガスバリア用塗材の調製方法について説明する。例えば、ガスバリア用塗材は以下のようにして製造することができる。
【0033】
まず、ポリカルボン酸に、塩基を加えることによりポリカルボン酸のカルボキシ基を完全にまたは部分的に中和する。次いで、カルボキシ基を完全にまたは部分的に中和したポリカルボン酸にポリアミン化合物を添加する。このような手順でポリカルボン酸およびポリアミン化合物を混合することにより、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物の凝集物の生成を抑制でき、均一なガスバリア用塗材を得ることができる。これにより、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応をより効果的に進めることが可能となる。
【0034】
本実施形態に係る塩基で、ポリカルボン酸を中和することにより、ポリアミン化合物とポリカルボン酸とを混合する際に、ゲル化が起こることを抑制することができる。したがって、ポリカルボン酸において、ゲル化防止の観点から塩基によってカルボキシ基の部分中和物または完全中和物とすることが好ましい。中和物は、ポリカルボン酸のカルボキシ基を塩基で部分的にまたは完全に中和する(すなわち、ポリカルボン酸のカルボキシ基を部分的または完全にカルボン酸塩とする)ことにより得ることができる。これにより、ポリアミン化合物を添加する際、ゲル化を防止できる。
部分中和物は、ポリカルボン酸の水溶液に塩基を添加することにより調製するが、ポリカルボン酸と塩基の量比を調節することにより、所望の中和度とすることができる。本実施形態においてはポリカルボン酸の塩基による中和度は、ポリアミン化合物のアミノ基との中和反応に起因するゲル化を十分に抑制する観点から、30〜100当量%が好ましく、40〜100当量%、さらには50〜100当量%がより好ましい。
【0035】
塩基としては、任意の水溶性塩基を用いることができる。水溶性塩基として、揮発性塩基と不揮発性塩基のいずれかまたは双方を使用することができるが、残存した遊離塩基によるガスバリア性低下を抑制する観点から乾燥・硬化の際に除去が容易な揮発性塩基であることが好ましい。
揮発性塩基としては、例えば、アンモニア、モルホリン、アルキルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、N−メチルモノホリン、エチレンジアミン、トリエチルアミン等の三級アミンまたはこれらの水溶液、あるいはこれらの混合物が挙げられる。良好なガスバリア性を得る観点から、アンモニア水溶液が好ましい。
不揮発性塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムまたはこれらの水溶液、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
また、ガスバリア用塗材の固形分濃度は、塗工性を向上させる観点から、0.5〜15質量%に設定することが好ましく、1〜10質量%に設定することがさらに好ましい。
【0037】
また、ガスバリア用塗材には、塗布の際にはじきが発生するのを防止する観点から、界面活性剤をさらに添加することが好ましい。界面活性剤の添加量は、ガスバリア用塗材の固形分全体を100質量%としたとき、0.01〜3質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
【0038】
本実施形態に係る界面活性剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、良好な塗工性を得る観点から、非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類がより好ましい。
【0039】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、シリコーン系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0040】
ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル類としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等を挙げることができる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類を挙げることができる。
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル等を挙げることができる。
ソルビタン脂肪酸エステル類としては、例えば、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等を挙げることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。
アセチレンアルコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール等を挙げることができる。
含フッ素系界面活性剤としては、例えば、フッ素アルキルエステル等を挙げることができる。
【0041】
本実施形態に係るガスバリア用塗材は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の添加剤を含んでもよい。例えば、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤、多価金属化合物等の各種添加剤を添加してよい。
【0042】
次に、(3)ガスバリア用塗材の加熱処理の方法・温度・時間について説明する。
本実施形態に係るガスバリア性重合体層103を得るためには、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応を効果的に進めることが可能な、ガスバリア用塗材の加熱処理の方法・温度・時間を採用することが好ましい。具体的には、ガスバリア用塗材の塗工量、加熱処理に使用する装置の種類、加熱処理温度、加熱処理時間等の各因子を高度に制御して組み合わせることが重要となる。本実施形態に係るガスバリア性重合体層103を製造するためには、例えば、本実施形態に係るガスバリア用塗材を基材層101にウエット厚みが0.05〜30μmになるように塗布し、公知の加熱処理に使用する装置により、加熱して乾燥する。
乾燥、加熱処理する方法は、本発明の目的を達することができる限り特に限定されないが、ガスバリア用塗材を硬化させられるもの、硬化したガスバリア用塗材を加熱できる方法であればよい。例えば、オーブン、ドライヤー等の対流伝熱によるもの、加熱ロール等の伝導伝熱によるもの、赤外線、遠赤外線・近赤外線のヒーター等の電磁波を用いる輻射伝熱によるもの、マイクロ波等内部発熱によるものが挙げられる。乾燥、加熱処理に使用する装置としては製造効率の観点から乾燥と加熱処理の双方を行える装置が好ましい。その中でも具体的には乾燥、加熱、アニーリング等の種々の目的に利用できるという観点から熱風オーブンを用いることが好ましく、また、フィルムへの熱伝導効率に優れているという観点から加熱ロールを用いることが好ましい。
また、乾燥、加熱処理に使用する方法を適宜組み合わせてもよい。熱風オーブンと加熱ロールを併用してもよく例えば、熱風オ―ブンでガスバリア用塗材を乾燥後、加熱ロールで加熱処理を行えば加熱処理工程が短時間となり製造効率の観点から好ましい。また、熱風オーブンのみで乾燥と加熱処理を行うことが好ましい。熱風オーブンを用いて、ガスバリア用塗材を乾燥させる場合、加熱処理温度は160〜250℃、加熱処理時間は1秒〜30分、好ましくは加熱処理温度が180〜240℃、加熱処理時間が5秒〜20分、より好ましく加熱処理温度が200℃〜230℃、加熱処理時間が10秒〜15分、さらに好ましくは加熱処理温度が200℃〜220℃、加熱処理時間が15秒〜10分の条件で加熱処理をおこなうことが望ましい。
さらに上述したように加熱ロールを併用することで短時間での加熱処理が可能となる。なお、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応を効果的に進める観点から、加熱処理温度および加熱処理時間はガスバリア用塗材のウエット厚みに応じて調整することが重要である。
【0043】
本実施形態に係るガスバリア用塗材を基材に塗布する方法は、特に限定されず、通常の方法を用いることができる。例えば、メイヤーバーコーター、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター、アプリケーター等種々公知の塗工機を用いて塗工する方法が挙げられる。
【0044】
塗工量(ウエット厚み)は、0.05〜30μmが好ましく、1〜20μmがより好ましく、1〜10μmとなることがさらに好ましい。
塗工量が上記上限値以下であると、得られるガスバリア性積層体100がカールすることを抑制できる。また、塗工量が上記上限値以下であると、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応をより効果的に進めることが可能となる。
また、塗工量が上記下限値以上であると、得られるガスバリア性積層体100のバリア性能をより良好なものとすることができる。
乾燥・硬化後のガスバリア性重合体層103の厚みは0.01μm以上0.45μm以下であり、0.05μm以上0.30μm以下が好ましく、0.10μm以上0.25μm以下がより好ましく、0.15μm以上0.25μm以下が最も好ましい。
【0045】
乾燥および熱処理は、乾燥後、熱処理を行ってもよいし、乾燥と熱処理を同時におこなってもよい。乾燥、熱処理する方法は、本発明の目的を達成することができる方法であれば特に制限はされないが、乾燥、加熱、アニーリング等種々の目的に利用できるという観点からオーブンによる方法が好ましく、また、加熱目的ではフィルムへの熱伝導効率に優れているという観点から加熱ロールによる方法が特に好ましい。
【0046】
本実施形態に係るガスバリア性重合体層103は、上記のガスバリア用塗材により形成されたものであり、ガスバリア用塗材を、基材層101や、後述する無機物層102に塗布した後、乾燥、熱処理を行い、ガスバリア用塗材を硬化させることによって得られるものである。
【0047】
本実施形態に係るガスバリア性重合体層103の厚み1μmにおける20℃、90%RHでの酸素透過度は、30ml/(m
2・day・MPa)以下であることが好ましく、20ml/(m
2・day・MPa)以下であることがより好ましい。これにより、良好なガスバリア性が得られる。
なお、酸素透過度は、JISK7126に準じ、温度20℃、湿度90%RHの条件で測定する。
【0048】
[無機物層]
図2に示すように、ガスバリア性積層体100において、無機物層102が基材層101とガスバリア性重合体層103との間にさらに積層されていてもよい。これにより、酸素バリア性や水蒸気バリア性等のバリア性能をさらに向上させることができる。
【0049】
本発明者らの検討によると、さらなるガスバリア性向上を目的として、基材層上に形成した酸化アルミニウム等の無機物層上にアミド架橋構造を有するガスバリア層を設けた積層フィルムは、無機物層とアミド架橋構造を有するガスバリア層とが強固に接着する一方で、アミド架橋構造を有するガスバリア層の外的な変形に対する追従性が十分でないため、外的な変形が積層フィルムに加えられたとき、無機物層と基材層との層間で剥離しやすい傾向にあることが明らかになった。
これに対し、本実施形態のガスバリア性積層体100は、基材層101とガスバリア性重合体層103との間に無機物層102をさらに設けたとしても、優れたガスバリア性能に加え、無機物層102とアミド架橋を有するガスバリア性重合体層103との層間の接着性にも優れている。すなわち、本実施形態のガスバリア性積層体100は、ガスバリア性向上のため酸化アルミニウム層等の無機物層102を設けた場合であってもガスバリア性積層体100への外的な変形に対してガスバリア性重合体層103は安定した接着状態を保つことができる。
【0050】
本実施形態の無機物層102を構成する無機物は、例えば、バリア性を有する薄膜を形成できる金属、金属酸化物、金属窒化物、金属弗化物、金属酸窒化物等が挙げられる。
無機物層102を構成する無機物としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2A族元素;チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタル等の周期表遷移元素;亜鉛等の周期表2B族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の周期表3A族元素;ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表4A族元素;セレン、テルル等の周期表6A族元素等の単体、酸化物、窒化物、弗化物、または酸窒化物等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
なお、本実施形態では、周期表の族名は旧CAS式で示している。
【0051】
さらに、上記無機物の中でも、バリア性、コスト等のバランスに優れていることから、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物が好ましい。
なお、酸化ケイ素には、二酸化ケイ素の他、一酸化ケイ素、亜酸化ケイ素が含有されていてもよい。
【0052】
無機物層102は上記無機物により構成されている。無機物層102は単層の無機物層から構成されていてもよいし、複数の無機物層から構成されていてもよい。また、無機物層102が複数の無機物層から構成されている場合には同一種類の無機物層から構成されていてもよいし、異なった種類の無機物層から構成されていてもよい。
【0053】
また、無機物層102が酸化アルミニウムにより構成された酸化アルミニウム層である場合は、酸化アルミニウム層の安定的な接着の観点から、酸化アルミニウム層を蛍光X線分析することにより得られる、アルミニウムのKα線強度をA(kcps)とし、アルミニウムからなり、かつ、酸素を導入しない以外は上記酸化アルミニウム層と同じ製造条件で得られるアルミニウム層を蛍光X線分析することにより得られる、上記アルミニウムのKα線強度をB(kcps)としたとき、A/Bで定義される付着率が好ましくは0.50以上0.75以下、より好ましくは0.52以上0.70以下、さらに好ましくは0.53以上0.65以下、最も好ましくは0.55以上0.60以下である。付着率を上記範囲にすることによりガスバリア性重合体層103が外的な変形に対してより安定した接着状態を保つことができるガスバリア性積層体100を得ることができる。
【0054】
上記Kα線強度Aは、例えば、以下の方法により得られる。
蛍光X線分析装置ZSXPrimusII(リガク社製)を用いて、本実施形態のガスバリア性積層体100の酸化アルミニウム層に対し、上記酸化アルミニウム層を構成するアルミニウムのKα線を測定し、得られた蛍光X線強度をKα線強度A(kcps)とすることができる。
上記Kα線強度Bは、例えば、以下の方法により得られる。
まず、酸素の導入はおこなわずに、本実施形態のガスバリア性積層体100における酸化アルミニウム層と同じ製造条件で、基材層上にアルミニウムにより構成されたアルミニウム層を形成する。次いで、蛍光X線分析装置ZSXPrimusII(リガク社製)を用いて、得られたアルミニウム層に対し、上記アルミニウム層を構成するアルミニウムのKα線を測定し、得られた蛍光X線強度をB(kcps)とすることができる。
【0055】
ここで、得られる酸化アルミニウム層のKα線強度Aは、酸素の導入量に依存し、酸素の導入量(酸化度)が大きくなるとアルミニウムとしての蒸着量が減少するので、Kα線強度Aは小さくなり、酸素の導入量が少ないとアルミニウムとしての蒸着量が増すのでKα線強度Aは大きくなる。
【0056】
また、本実施形態のガスバリア性積層体100において、無機物層102が金属酸化物により構成された金属酸化物層である場合は、金属酸化物層を蛍光X線分析することにより得られる、上記金属酸化物を構成する金属のKα線強度をC(kcps)とし、金属酸化物を構成する金属からなり、かつ、酸素を導入しない以外は上記金属酸化物層と同じ製造条件で得られる金属層を蛍光X線分析することにより得られる、上記金属のKα線強度をD(kcps)としたとき、C/Dで定義される付着率が好ましくは0.50以上0.90以下、より好ましくは0.55以上0.80以下である。付着率が上記範囲内であると、ガスバリア性と透明性のバランスが優れたガスバリア性積層体100が得られる。
ここで、上記Kα線強度CおよびDは、上記Kα線強度AおよびBと同様の方法により測定することができる。
【0057】
無機物層102の厚さは、バリア性、密着性、取扱い性等のバランスの観点から、通常1nm以上1000nm以下、好ましくは1nm以上500nm以下、より好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは1nm以上50nm以下、特に好ましくは1nm以上20nm以下である。
本実施形態において、無機物層102の厚さは、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡による観察画像により求めることができる。
【0058】
無機物層102の形成方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学気相成長法、物理気相蒸着法、化学気相蒸着法(CVD法)、プラズマCVD法、ゾルゲル法等により基材層101の片面または両面に無機物層102を形成することができる。中でも、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法(CVD)、物理気相蒸着法(PVD)、プラズマCVD法等の減圧下での製膜が望ましい。これにより、窒化珪素や酸化窒化珪素等の珪素を含有する化学的に活性な分子種が速やかに反応することにより、無機物層102の表面の平滑性が改良され、孔を少なくすることができるものと予想される。
これらの結合反応を迅速に行うには、その無機原子や化合物が化学的に活性な分子種もしくは原子種であることが望ましい。
【0059】
[基材層]
本実施形態の基材層101は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または紙等の有機質材料により形成されており、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂から選択される少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0060】
熱硬化性樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
【0061】
熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(1−ブテン)等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、フッ素樹脂あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
これらの中でも、透明性を良好にする観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選択される一種または二種以上がより好ましい。
また、熱可塑性樹脂により形成された基材層101は、ガスバリア性積層体100の用途に応じて、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
【0062】
また、上記熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂により形成されたフィルムを少なくとも一方向、好ましくは二軸方向に延伸して基材層としてもよい。
【0063】
本実施形態の基材層101としては、透明性、剛性、耐熱性に優れる観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドから選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂により形成された二軸延伸フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂により形成された二軸延伸フィルムがより好ましい。
【0064】
また、基材層101の表面に、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニアルコール共重合体、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂等がコーティングされていてもよい。
さらに、基材層101はガスバリア性重合体層103との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、プライマーコート処理等の表面活性化処理を行ってもよい。
【0065】
基材層101の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、1〜1000μmが好ましく、1〜500μmがより好ましく、1〜300μmがさらに好ましい。
【0066】
基材層101の形状は、特に限定されないが、例えば、シートまたはフィルム形状、トレー、カップ、中空体等の形状が挙げられる。
【0067】
[アンダーコート層]
ガスバリア性積層体100において、基材層101と、ガスバリア性重合体層103または無機物層102との接着性を向上させる観点から、基材層101上にアンダーコート層がさらに積層されていてもよい。基材層101と、ガスバリア性重合体層103または無機物層102との間にアンダーコート層を設けることによりガスバリア性重合体層103の追従性がさらに向上し外的な変形が加えられてもガスバリア性積層体100においてガスバリア性重合体層103はより安定的な接着状態を保つことができる。
上記アンダーコート層としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オキサゾリン系樹脂、アクリル系樹脂から選択される一種または二種以上により構成されていることが好ましい。
また、オキサゾリン系樹脂を使用する場合、上記アンダーコート層は、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性アクリル系樹脂(B)および水性ポリエステル系樹脂(C)を含むオキサゾリン系樹脂組成物により構成されていることが好ましい。
【0068】
オキサゾリン系樹脂組成物は、例えば、オキサゾリン基含有量が6.0〜9.0mmol/gであるオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、カルボキシル基含有量が0.5〜3.5mmol/gである水性アクリル系樹脂(B)、およびカルボキシル基含有量が0.5〜2.0mmol/gである水性ポリエステル系樹脂(C)により構成されている。
また、上記オキサゾリン系樹脂組成物は、例えば、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)を10〜55質量%、水性アクリル系樹脂(B)を10〜80質量%、水性ポリエステル系樹脂(C)を10〜80質量%含有する(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性アクリル系樹脂(B)および水性ポリエステル系樹脂(C)の合計量を100質量%とする)。
また、上記オキサゾリン系樹脂組成物は、例えば、オキサゾリン基のモル数とカルボキシル基のモル数の比率〔オキサゾリン基のモル数(xmmol)とカルボキシル基のモル数(ymmol)の比(x/y)×100[mol%]で示される。〕が150〜420mol%である。
【0069】
上記オキサゾリン系樹脂組成物においては、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性アクリル系樹脂(B)、および水性ポリエステル系樹脂(C)を含むことが好ましく、必要に応じてそれ以外の他のポリマー成分も併用される。
また、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)のオキサゾリン基含有量は、好ましくは6.0〜9.0mmol/g、より好ましくは6.5〜8.5mmol/g、さらに好ましくは7.0〜8.0mmol/gである。
【0070】
また、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の配合割合は、好ましくは10〜55質量%、より好ましくは15〜50質量%、さらに好ましくは18〜50質量%、特に好ましくは20〜45質量%である(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性アクリル系樹脂(B)および水性ポリエステル系樹脂(C)の合計量を100質量%とする)。
オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)のオキサゾリン基含有量が上記下限値以上である場合やオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の配合割合が上記下限値以上である場合はオキサゾリン基による架橋がより良好となる。一方、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)のオキサゾリン基含有量が上記上限値以下である場合やオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の配合割合が上記上限値以下である場合は、未反応のオキサゾリン基が減り、耐熱水性および耐溶剤性がより良好なものとなる。このような範囲に調節することにより、ガスバリア性積層体100の熱水処理後のガスバリア性の安定性を向上させることができる。
【0071】
水性アクリル系樹脂(B)については、カルボキシル基含有量が好ましくは0.5〜3.5mmol/gであり、より好ましくは0.8〜3.5mmol/gであり、さらに好ましくは1.0〜3.0mmol/gであり、特に好ましくは1.5〜3.0mmol/gであり、最も好ましくは2.0〜3.0mmol/gである。
このような範囲に調節することにより、ガスバリア性積層体100の接着安定性を確保でき優れたガスバリア性を維持することができる。
【0072】
また、水性アクリル系樹脂(B)の配合割合は好ましくは10〜80質量%であり、より好ましくは20〜80質量%であり、さらに好ましくは10〜70質量%であり、特に好ましくは10〜65質量%であり、最も好ましくは15〜65質量%である(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性アクリル系樹脂(B)および水性ポリエステル系樹脂(C)の合計量を100質量%とする)。
【0073】
水性アクリル系樹脂(B)の配合割合が上記下限値以上である場合は、耐水性、耐溶剤性の効果が十分に発揮される傾向にあり、水性アクリル系樹脂(B)の配合割合が上記上限値以下である場合は、ガスバリア性積層体100の接着安定性がより良好なものとなる。
さらに、水性ポリエステル系樹脂(C)のカルボキシル基含有量は、好ましくは0.5〜2.0mmol/gであり、より好ましくは0.7〜1.8mmol/gであり、さらに好ましくは0.8〜1.6mmol/gであり、特に好ましくは1.0〜1.5mol/gであり、最も好ましくは1.0〜1.4mmol/gである。
このような範囲に調節することにより、ガスバリア性積層体100の接着安定性を確保でき優れたガスバリア性を維持することができる。
【0074】
また、水性ポリエステル系樹脂(C)の配合割合は、好ましくは10〜80質量%であり、より好ましくは10〜70質量%であり、さらに好ましくは15〜70質量%であり、特に好ましくは15〜65質量%である(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性アクリル系樹脂(B)および水性ポリエステル系樹脂(C)の合計量を100質量%とする)。
【0075】
水性ポリエステル系樹脂(C)の配合割合が上記下限値以上である場合は、ガスバリア性積層体100の接着安定性がより良好なものとなり、水性ポリエステル系樹脂(C)の配合割合が上記上限値以下である場合は、ガスバリア性積層体100の耐水性がより良好なものとなる。
このような範囲に調節することにより、ガスバリア性積層体100の接着安定性を確保でき優れたガスバリア性を維持することができる。
【0076】
オキサゾリン系樹脂組成物のオキサゾリン基のモル数とカルボキシル基のモル数の比率〔オキサゾリン基のモル数(xmmol)とカルボキシル基のモル数(ymmol)の比(x/y)×100[mol%]で示している。〕は、好ましくは100〜420mol%であり、より好ましくは150〜420mol%であり、さらに好ましくは130〜420mol%であり、特に好ましくは165〜420mol%である。
【0077】
(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A))
オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)としては、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって得られるポリマー等が挙げられる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーとしては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中では2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好適である。
【0078】
また、他のモノマーとしては、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであればよく、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等)等のアクリレートあるいはメタクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたもの等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα、β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン等のα、β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
【0079】
(水性アクリル系樹脂(B))
水性アクリル系樹脂(B)としては、アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレートを主要な成分とする樹脂であり、具体的には、アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレート成分の含有割合が通常40〜95mol%、共重合可能で且つ官能基を有するビニル単量体成分の含有割合が通常5〜60mol%の水溶性または水分散性樹脂である。
上記のビニル単量体における官能基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基またはその塩、アミド基またはアルキロール化されたアミド基、アミノ基(置換アミノ基を含む)、アルキロール化されたアミノ基またはそれらの塩、水酸基、エポキシ基等が挙げられ、特に、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基等が好ましい。これらの基は、樹脂中に2種類以上含有されていてもよい。
【0080】
水性アクリル系樹脂(B)において、アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレートの含有量を40mol%以上にすることにより、塗布性、塗膜の強度、耐ブロッキング性が特に良好になる。そして、アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレートを95mol%以下とし、共重合成分として特定の官能基を有する化合物を水性アクリル系樹脂に5mol%以上導入することにより、水溶化ないし水分散化を容易にすると共にその状態を長期にわたり安定化することができる。その結果、硬化物の層と基材層、とりわけポリエステルフイルム層との接着性の改善、硬化物の層内での反応による硬化物の層の強度、耐水性、耐薬品性の改善等を図ることができる。
【0081】
上記のアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートのアルキル基としては、例えば、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。カルボキシル基や酸無水物等を有する化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等や、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられ、さらに、無水マレイン酸等の無水物等が挙げられる。スルホン酸基またはその塩を有する化合物としては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸や、これらスルホン酸のナトリウム等の金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0082】
上記のアミド基またはアルキロール化されたアミド基を有する化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド等が挙げられる。
【0083】
上記のアミノ基やアルキロール化されたアミノ基またはそれらの塩を有する化合物としては、例えば、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0084】
上記の水酸基を有する化合物としては、例えば、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルメタクリレート、β−ヒドロキシビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。エポキシ基を有する化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0085】
さらに、併用し得る化合物としては、例えば、アクリロニトリル、スチレン類、ブチルビニルエーテル、マレイン酸モノまたはジアルキルエステル、フマル酸モノまたはジアルキルエステル、イタコン酸モノまたはジアルキルエステル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0086】
上記の水性アクリル系樹脂(B)としては、いずれのタイプのアクリル系樹脂であってもよいが、乳化剤を含まないタイプのアクリル系樹脂が好適に使用される。その理由は、上記のオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の耐水性が乳化剤によって阻害されないからである。
【0087】
したがって、水性アクリル系樹脂(B)は、反応性乳化剤を使用して合成された自己分散タイプの水性アクリル系樹脂や高分子量の界面活性剤を使用して合成された水性アクリル系樹脂であってもよい。その理由は、上記のオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の耐水性が反応した乳化剤や高分子量の界面活性剤によって阻害されないからである。
【0088】
水性アクリル系樹脂(B)は、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の耐水性や耐溶剤性の低下を防止する。上記の低下防止効果は、次の理由によると考えられる。アクリル系樹脂の被膜には、ポリエチレンテレフタレート表面にオリゴマーが析出するのを防止する効果がある。このオリゴマー析出の防止効果により、オリゴマー塊によって形成された欠陥バリア層に浸入した水分の被塗布層、すなわち基材層への攻撃が阻止される。したがって、水性アクリル系樹脂は、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の耐水性および耐溶剤性を十分に発揮させると考えられる。
【0089】
(水性ポリエステル系樹脂(C))
水性ポリエステル系樹脂(C)は、特に制限されないが、好ましくは低分子の親水性分散剤等を含有しない水性または水分散性の飽和または不飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0090】
上記の飽和ポリエステルのジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、p−キシレンジオール等の芳香族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリ(オキシアルキレン)グリコール等が挙げられる。
【0091】
上記の飽和ポリエステルは線状構造であるが、3価以上のエステル形成成分を使用して分岐状ポリエステルとすることもできる。一方、上記の不飽和ポリエステルとしては、例えば、次の(1)および(2)で示されるものが挙げられる。
(1)特公昭45−2201号公報、特公昭44−7134号公報、特開昭48−78233号公報、特開昭50−58123号公報等で知られている様に、共重合性不飽和基を含有する原料成分と他の原料成分とを反応させて得られる樹脂骨格中に共重合性不飽和基を有する不飽和ポリエステル。
(2)特公昭49−47916号公報、特公昭50−6223号公報等で知られている様に、共重合性不飽和基を持たない飽和ポリエステルを得た後、その飽和ポリエステル中に存在する水酸基またはカルボキシル基等の官能基と反応性を有する官能基とビニル基を有するビニル系モノマーを飽和ポリエステルに付加して得られる不飽和ポリエステル。
【0092】
上記のビニル系モノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基とビニル基を有する化合物、ビニルメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン等のアルコキシシラノール基とビニル基を有する化合物、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水基とビニル基を有する化合物、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート−ヘキサメチレンジイソシアネート付加物等のイソシアネート基とビニル基を有する化合物等が挙げられる。
【0093】
水性ポリエステル系樹脂(C)は、水媒体との親和性を高めるため、カルボキシル基を含有するものが好ましい。飽和または不飽和ポリエステルの側鎖へのカルボキシル基の導入は、カルボン酸を有するジオキサン化合物をポリエステルと反応させる方法(特開昭61−228030号公報)、不飽和カルボン酸をポリエステルにラジカル的にグラフトする方法(特開昭62−225510号公報)、ポリエステルとハロゲノ酢酸を反応させて芳香族環に置換基を導入する方法(特開昭62−225527号公報)、ポリエステルと多価無水カルボン酸化合物とを反応させる方法(特開昭62−240318号公報)等により容易に行うことができる。
【0094】
水性ポリエステル系樹脂(C)のカルボキシル基は対イオンを有していてもよく、このような対イオンとしては、通常一価イオン、好ましくは水素イオンまたはアンモニウムイオンを含むアミン系オニウムイオンが挙げられる。
【0095】
上記アンダーコート層に用いられるポリウレタン系樹脂としては、各種ポリウレタン樹脂、ポリウレタンポリ尿素樹脂およびそれらのプレポリマー等が例示できる。このようなウレタン樹脂の具体例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート等のジイソシアネート成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエチレングリコール等のジオール成分との反応物;末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、アミノ化合物、アミノスルホン酸塩、ポリヒドロキシカルボン酸、重亜硫酸等との反応物;等を挙げることができる。
【0096】
上記アンダーコート層に用いられるポリエステル系樹脂としては、各種ポリエステル樹脂およびそれらの変性物が例示できる。このようなポリエステル樹脂の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、ドデカン二酸等の多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール等のジオール成分との反応物が挙げられ、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等による変性物も含まれる。
【0097】
また、アンダーコート層として、ポリウレタン系樹脂を用いることがガスバリア性および層間接着性、特に酸化アルミニウム層を有している場合には、当該酸化アルミニウム層と基材層101との層間接着性の観点から好ましい。ガスバリア性積層体100のアンダーコート層を構成する好適なポリウレタン系樹脂としてPTJC12(12μmの酸化アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、ユニチカ社製)に使用されている樹脂が挙げられる。
【0098】
アンダーコート層の厚さは、良好な接着性を得る観点から、0.001μm以上であることが好ましく、経済的であるという観点から0.5μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.005〜0.1μmであり、最も好ましくは0.01〜0.05μmである。
【0099】
また、基材層101とガスバリア性重合体層103との間に接着剤層を設けてもよい。なお、下記接着剤層から上記アンダーコート層は除かれる。
接着剤層は、公知の接着剤を含むものであればよい。接着剤としては、有機チタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性シリコーン樹脂およびアルキルチタネート、ポリエステル系ポリブタジエン等から組成されているラミネート接着剤、または一液型、二液型のポリオールと多価イソシアネート、水系ウレタン、アイオノマー等が挙げられる。または、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂等を主原料とした水性接着剤を用いてもよい。
また、ガスバリア性積層体の用途に応じて、接着剤に硬化剤、シランカップリング剤等の他の添加物を添加してもよい。ガスバリア性積層体の用途が、レトルト等の熱水処理に用いられるものである場合、耐熱性や耐水性の観点から、ポリウレタン系接着剤に代表されるドライラミネート用接着剤が好ましく、溶剤系の二液硬化タイプのポリウレタン系接着剤がより好ましい。
【0100】
ガスバリア性積層体100の23℃における反り量は、好ましくは5mm以下であり、より好ましくは3mm以下である。ここで、ガスバリア性積層体100の反り量は、ガスバリア性積層体100を5cm角で切り出したものを定盤上に載置した際に、ガスバリア性積層体100と定盤との間に生じる最大の隙間を反り量としたとき、隙間ゲージで測定される。
このような反り量が小さいガスバリア性積層体100は取り扱い性に優れている。また、ガスバリア性積層体100を他の層に積層させる際に、他の層との位置ずれを抑制できる。
【0101】
本実施形態のガスバリア性積層体100は、ガスバリア性能に優れており、包装材料、特に高いガスバリア性が要求される内容物の食品包装材料を始め、医療用途、工業用途、日常雑貨用途等さまざまな包装材料としても好適に使用し得る。
また、本実施形態のガスバリア性積層体100は、例えば、高いバリア性能が要求される、真空断熱用フィルム;エレクトロルミネセンス素子、太陽電池等を封止するための封止用フィルム;等として好適に使用することができる。
【0102】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0103】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0104】
<酸化アルミニウム層の付着率>
蛍光X線分析装置(リガク社製:ZSX PrimusII)を用いてフィルム基材上に得られる酸化アルミニウム膜におけるAlのKα線について測定し、酸化アルミニウム膜の蛍光X線強度(A)kcpsを測定した。また、アルミニウムからなり、かつ、酸素を導入しない以外は上記酸化アルミニウム膜と同じ製造条件でフィルム基材上に得られるアルミニウム膜の蛍光X線強度(B)kcpsを測定した。得られた値から、付着率(A/B)を算出した。
【0105】
<溶液(Z)の作製>
ポリアクリル酸アンモニウム(東亜合成株式会社製、製品名:アロンA−30、30質量%水溶液、分子量:100,000)の混合物に精製水を添加して10質量%溶液にしたポリアクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
<溶液(Y)の作製>
ポリエチレンイミン(和光純薬工業株式会社製、製品名:ポリエチレンイミン、平均分子量:約10,000)に精製水を添加して10質量%溶液にしたポリエチレンイミン水溶液を得た。
【0106】
〔比較例1〕
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、PET12)を基材とし、そのコロナ処理された面に、高周波誘導加熱方式により、アルミニウムを加熱蒸発させ、酸素を導入しながら蒸着することで、A/B(付着率)が0.71の酸化アルミニウム膜を形成させた。これにより酸化アルミニウム蒸着PETフィルムを得た。
【0107】
〔比較例2〕
A/B(付着率)が0.57の酸化アルミニウム膜を形成させた以外は比較例1と同様にして酸化アルミニウム蒸着PETフィルムを得た。
【0108】
〔比較例3〕
表面がコロナ処理されたアンダーコート層が設けられた厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、品番:PTJC12)のコロナ処理されたアンダーコート層の表面に、A/B(付着率)が0.65の酸化アルミニウム膜を形成させた。これにより酸化アルミニウム蒸着PETフィルムを得た。
【0109】
〔比較例4〕
A/B(付着率)が0.55の酸化アルミニウム膜を形成させた以外は比較例3と同様にして酸化アルミニウム蒸着PETフィルムを得た。
【0110】
〔比較例5〕
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム製膜時に易接着層としてアクリル成分を主とするコーティング剤をインラインコートした易接着PETを得た。コーティング剤は、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)として、日本触媒(株)社製「エポクロスWS−300」(固形分濃度10質量%)、水性アクリル系樹脂(B)として、東亜合成(株)社製「ジュリマーET−410」(固形分濃度30質量%)、水性ポリエステル系樹脂(C)として、日本合成化学工業(株)社製「ポリエスターWR−961」(固形分濃度30質量%)を使用し、固形分比(質量比)で(A)/(B)/(C)=23.7/57.2/19.1となるように調製し、乾燥後厚みが0.06μmになるように塗工した。
得られた易接着PETの易接着面に、高周波誘導加熱方式により、アルミニウムを加熱蒸発させ、酸素を導入しながら蒸着することで、A/B(付着率)が0.70の酸化アルミニウム膜を形成させた。これにより酸化アルミニウム蒸着PETフィルムを得た。
【0111】
〔比較例6〕
A/B(付着率)が0.55の酸化アルミニウム膜を形成させた以外は比較例5と同様にして酸化アルミニウム蒸着PETフィルムを得た。
【0112】
〔実施例1〕
上記ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(Z)79gと上記ポリエチレンイミン水溶液(Y)21gを混合・撹拌して混合液を調製した。
さらに上記混合液の固形分濃度が1.0質量%になるように精製水を添加し、均一溶液になるまで撹拌したのちに、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王社製、商品名:エマルゲン120)を混合液の固形分に対して0.3質量%となるように混合し、溶液(V)を調製した。
得られた溶液(V)を比較例1で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムの蒸着面に、アプリケーターで乾燥後の厚みが0.10μmになるように塗布し、熱風乾燥器を使用して温度;100℃、時間;30秒の条件で乾燥し、さらに温度;200℃、時間;15分熱処理をして、アミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0113】
〔実施例2〕
アプリケーターで乾燥後の厚みが0.25μmになるように溶液(V)を塗布した以外は実施例1と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0114】
〔実施例3〕
比較例2で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムに溶液(V)を塗布した以外は実施例2と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0115】
〔実施例4〕
比較例3で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムに溶液(V)を塗布した以外は実施例2と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0116】
〔実施例5〕
表面がコロナ処理されたアンダーコート層が設けられた厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レフィルム加工社製、品番:PX−53 12)のコロナ処理されたアンダーコート層の表面に、A/B(付着率)が0.70の酸化アルミニウム膜を形成させて得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムに溶液(V)を塗布した以外は実施例2と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0117】
〔実施例6〕
比較例2で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムに溶液(V)を塗布した以外は実施例1と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0118】
〔実施例7〕
比較例4で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムに溶液(V)を塗布した以外は実施例2と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0119】
〔実施例8〕
比較例6で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムに溶液(V)を塗布した以外は実施例2と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0120】
〔実施例9〕
比較例3で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムに溶液(V)を塗布した以外は実施例1と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0121】
〔実施例10〕
比較例5で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムに溶液(V)を塗布した以外は実施例1と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0122】
〔実施例11〕
比較例4で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムに溶液(V)を塗布した以外は実施例1と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0123】
〔実施例12〕
比較例6で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムに溶液(V)を塗布した以外は実施例1と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0124】
〔実施例13〕
A/B(付着率)が0.62の酸化アルミニウム膜を形成させた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムを使用し、アプリケーターで乾燥後の厚みが0.42μmになるように溶液(V)を塗布した以外は実施例1と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0125】
〔実施例14〕
アプリケーターで乾燥後の厚みが0.41μmになるように溶液(V)を塗布した以外は比較例4と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0126】
〔実施例15〕
アプリケーターで乾燥後の厚みが0.40μmになるように溶液(V)を塗布した以外は実施例12と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0127】
〔比較例7〕
アプリケーターで乾燥後の厚みが0.60μmになるように溶液(V)を塗布した以外は実施例1と同様にしてアミド架橋膜積層フィルムを得た。
【0128】
実施例および比較例で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムまたはアミド架橋膜積層フィルムについて、以下の評価をおこなった。得られた結果を表1および2に示す。
【0129】
<物性評価用多層フィルムの作製>
(1)厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、商品名:T.U.X. FCS)の片面に、エステル系接着剤(ポリエステル系接着剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケラックA310):12質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケネートA3):1質量部および酢酸エチル:7質量部)を塗布した。乾燥後、比較例で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムにおいては蒸着面、実施例および比較例で得られたアミド架橋膜積層フィルムにおいてはアミド架橋膜面と貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルム(レトルト前の物性測定用試料)を得た。
【0130】
(2)厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製 商品名:RXC−22)の片面に、エステル系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井化学社製 商品名:タケラックA525S):9質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学社製 商品名:タケネートA50):1質量部および酢酸エチル:7.5質量部)を塗布した。乾燥後、比較例で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムにおいては蒸着面、実施例および比較例で得られたアミド架橋膜積層フィルムにおいてはアミド架橋膜面と貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルム(レトルト後の物性測定用試料)を得た。
【0131】
(3)レトルト処理
上記(2)で得られた多層フィルムを無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるように折り返し、2方をヒートシールして袋状にした後、内容物として水を70cc入れ、もう1方をヒートシールにより袋を作成し、これを高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理を行った。レトルト処理後、内容物の水を抜き、レトルト処理後の多層フィルムを得た。
【0132】
(4)剥離強度の測定
上記方法で得られたレトルト処理前後の多層フィルムを15mm幅に採取した後、酸化アルミニウム蒸着フィルムおよびアミド架橋膜積層フィルムの剥離のきっかけを作るために試料の角をラミネート面と無延伸ポリプロピレンフィルムの間を部分的に剥離し、その後300(mm/分)の剥離速度で、180度および90度ラミネート剥離強度を測定した。レトルト処理後の試料は濡れた状態で測定した。
ここで、表において、「切断」とは剥離強度が大きいため、フィルムが破断してしまうことを意味する。
【0133】
(5)酸素透過度[ml/(m
2・day・MPa)]
上記方法で得られた多層フィルムを、モコン社製OX−TRAN2/21を用いて、JIS K 7126に準じ、温度20℃、湿度90%RHの条件で測定した。
【0134】
(6)水蒸気透過度[g/m
2・day]
厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製 商品名:T.U.X. FCS)の片面に、エステル系接着剤(ポリエステル系接着剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケラックA310):12質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケネートA3):1質量部および酢酸エチル:7質量部)を塗布し乾燥後、比較例、実施例で得られたガスバリアフィルム、ガスバリア性積層フィルムのバリア面と貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムを無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるように重ねてガスバリア性積層フィルムを折り返し、3方をヒートシールし、袋状にした後、内容物として塩化カルシウムを入れ、もう1方をヒートシールにより、表面積が0.01m
2になるように袋を作成し、40℃、90%RHの条件で300時間放置し、その重量差で水蒸気透過度を測定した。
【0135】
(7)IR面積比
赤外線吸収スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は日本分光社製IRT−5200装置を用い、PKM−GE−S(Germanium)結晶を装着して入射角度45度、室温、分解能4cm
−1、積算回数100回の条件で測定した。得られた吸収スペクトを前述した方法で解析し、全ピーク面積A〜Dを算出した。そして、全ピーク面積A〜Dから面積比B/A、C/A、D/Aを求めた。
【0136】
(8)反り量
比較例で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムと、実施例および比較例で得られたアミド架橋膜積層フィルムの23℃における反り量は、酸化アルミニウム蒸着PETフィルムまたはアミド架橋膜積層フィルムを5cm角で切り出し、基材層側を下にし、四方抑えて定盤上に載置した際に、フィルムと定盤との間に生じる最大の隙間を隙間ゲージで測定することにより求めた。反り量が5mm以下のものを〇、反り量が5mmを超えるものを×とした。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
実施例で得られたアミド架橋膜積層フィルムは高湿度下およびボイル・レトルト処理後での双方の条件下でのガスバリア性能に優れながら、接着性、寸法安定性のバランスにも優れていた。
【0140】
この出願は、2015年5月18日に出願された日本出願特願2015−101341号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。