特許第6560416号(P6560416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560416
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】タイヤ着脱方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 25/132 20060101AFI20190805BHJP
   B60C 25/138 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   B60C25/132 B
   B60C25/138
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-143041(P2018-143041)
(22)【出願日】2018年7月31日
(62)【分割の表示】特願2015-106225(P2015-106225)の分割
【原出願日】2015年5月26日
(65)【公開番号】特開2018-162066(P2018-162066A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2018年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185916
【氏名又は名称】小野谷機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】三村 義雄
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−053281(JP,A)
【文献】 特開2012−020659(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0036507(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 25/132
B60C 25/138
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動するアームをガイドレールに沿って移動する移動体に取付け、該アームの先端部にはホイールを装着して回転する為のチャック等の取付け部を設け、そして回転するタイヤに直接係合するツールをガイドレールに沿って移動する移動台から延びるツールアームの先端に取付け、上記ホイールを取付けるチャックなどの取付け部の移動及び上記ツールの移動が、それぞれ独立して別々に動くことが出来、また互いに連動して反対方向に同じ距離だけ動くことが出来るように制御したタイヤ着脱装置を用いてタイヤの着脱を行う方法において、チューブレスタイヤの場合には、チャック及びツールを連動して動かすことによって短時間でタイヤの着脱を行い、また、サイドリングを備えたホイールの場合であれば、ホイールからサイドリングを取外したり、ホイールにサイドリングを取付けたりする作業の必要性から操作盤の近くで作業が出来るように、チャック及びツールを独立して別々に移動してタイヤの着脱を行うことが出来るようにしたことを特徴とするタイヤ着脱方法。







【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤに直接係合するツールの位置、及びホイールに装着しているタイヤの位置を、作業性を考慮して自由に移動することが出来るように構成したタイヤ着脱装置を用いたタイヤの着脱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤの着脱装置にも色々な型式が知られているが、基本的にはホイールを主軸に取付けて回転しながらビードローラをタイヤ側面並びにビード面に押圧することが出来るように構成している。図9は従来のタイヤ着脱装置を表わしている具体例であり、ベース(イ)に移動体(ロ)を取付け、該移動体(ロ)にはホイールを取着するチャック(ハ)が上下方向に揺動するアーム(ニ)の先端部に装着されている。
【0003】
また上記ベース(イ)の上には2本のガイドレール(ホ)、(ホ)を平行に設け、該ガイドレール(ホ)、(ホ)には移動台(ヘ)を送り装置(例えば、シリンダー)を介して摺動自在に取着し、移動台上にはアーム先端にツール(ト)を備えている。
上記チャック(ハ)にはホイールが固定され、ホイールに装着されているタイヤに上記ツール(ト)を構成している皿形ディスク(チ)を側面から押圧してタイヤを回転しながら該ホイールから取外すことが出来る。また、ツール(ト)には皿形ディスク(チ)と対を成してタイヤツメ(ヌ)を有している。
【0004】
皿形ディスク(チ)はホイールのフランジに近接した位置に配置されて該タイヤの側面を押圧する。すなわち、タイヤビードはホイールのビード部に固着している為に、フランジに接しない程度の隙間を残して、タイヤを回転しながら側面を押圧することでホイールから外れる。また、タイヤツメ(ヌ)はタイヤビードに係止してタイヤが回転するならば、該タイヤビードはホイールから外される。
【0005】
ところが、タイヤのサイズは色々あって、所定のタイヤに適合するように皿形ディスク(チ)を設定した上で作業が行われるが、ホイールを固定するチャック(ハ)を位置決めする為に移動体(ロ)はガイドレール(リ)、(リ)に沿って移動することが出来、同時にツール(ト)を取付けている移動台(ヘ)もガイドレール(ホ)、(ホ)に沿って移動出来る。
【0006】
従来のタイヤ着脱装置の場合、タイヤの着脱作業を行うに当たって、上記チャック(ハ)を移動体(ロ)と共にガイドレール(リ)、(リ)に沿って移動させる場合、またツール(ト)と共に移動台(ヘ)をガイドレール(ホ)、(ホ)に沿って移動させる場合、さらには移動体(ロ)及び移動台(ヘ)を共に連動して移動させるように構成している場合がある。
【0007】
それぞれに長所と短所があり、タイヤの着脱作業を行う際にサイドリングの着脱を行う必要があるリング式ホイールでは、作業者は操作盤の近くで作業する方が便利である。その為に、上記移動体(ロ)及び移動台(ヘ)をそれぞれ独立して移動する方が便利である。
これに対して、チューブレスタイヤではホイールにサイドリングを備えた構造ではない為に、上記移動体(ロ)と移動台(ヘ)は連動して動く方が作業効率を高めることが出来て便利である。
【0008】
ところで、特開2005−53281号に係る「タイヤ着脱装置」、特開平9−123717号に係る「タイヤ着脱装置」は従来の装置であり、色々なタイヤ着脱装置が知られている。そして、これらの各装置はツール及びホイールを固定するチャックはガイドレールに沿って移動できるように構成している。
【特許文献1】特開2005−53281号に係る「タイヤ着脱装置」
【特許文献2】特開平9−123717号に係る「タイヤ着脱装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来のタイヤ着脱装置はホイールを固定するチャックを取付けている移動体とツールを取付けている移動台が、夫々別々に移動するように成っている場合、又は移動体と移動台が互いに連動して移動する場合があり、このような動作では上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、上記移動体と移動体の単独移動と連動して移動する場合をスイッチ操作で簡単に切り替えることが出来るようにし、効率よくタイヤの着脱を行うことが出来るタイヤ着脱方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るタイヤ着脱方法は、タイヤの型式に応じて効率よく作業を行うことが出来るように構成している。
そこで、タイヤ着脱装置は、ホイールを固定するチャックを移動体に取付けたアーム先端部に装着し、そしてツールアーム先端にツールを取付けた移動台を備えている。ベースにはガイドレールを有して上記移動体はガイドレールに載って移動することが出来、同じく移動台もベースに設けたガイドレールに載って移動することが出来るようにしている。 したがって、基本的な構造は従来のタイヤ着脱装置と共通している。また、ホイールを固定する為のチャックの形態及び構造は限定しない。
【0011】
そして、チャックを取付けた移動体及びツールを取付けた移動台はそれぞれのガイドレールに沿って単独で移動することが出来、またチャックを取付けた移動体とツールを取付けた移動台は互いに連動してガイドレールに沿って移動することが出来るように構成している。この単独移動と連動移動はスイッチ操作で切替えることが出来るようにしている。
【0012】
移動台及び移動体をガイドレールに沿って移動する手段としてシリンダーを取付け、両シリンダーを含む油圧回路を構成している。すなわち、両シリンダーは油圧回路にて接続されると共に間には電磁弁を介在している。この電磁弁をON,OFFすることで両シリンダーが連動して作動したり、独立して作動することが出来る。そして、各シリンダーは作動油を送り出すポンプと接続され、しかも各シリンダーから戻される作動油が流入するタンクと接続している。
【発明の効果】
【0013】
本発明のタイヤ着脱方法に用いられるタイヤ着脱装置は、ホイールを固定するチャック及びタイヤ側面を押圧するツールは、ガイドレールに沿ってそれぞれ独立して移動することが出来、また互いに連動して移動することが出来るように成っている。
したがって、タイヤ及びホイールの型式によって、チャック及びツールの移動方式を自由に変更することが出来、その為に、タイヤ着脱作業を効率良く行うことが可能となる。例えば、チューブレスタイヤの場合には、チャック及びツールを連動して動かすことで、短時間でタイヤの着脱を行うことが出来る。
【0014】
また、サイドリングを備えたホイールの場合であれば、ホイールからサイドリングを取外したり、ホイールにサイドリングを取付けたりする作業が必要と成り、その為に、作業者が居る操作盤の近くで作業が出来るように、チャック及びツールを独立して別々に移動させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ツールとチャックが夫々のシリンダーにて互いに独立して移動する場合。
図2】ツールとチャックが独立して単独で移動する場合の長所を示している。
図3】ツールとチャックが独立して単独で移動する場合の短所を示している。
図4】ツールとチャックがスプロケットに巻き掛けたローラチェーンを介して連動して移動する具体例。
図5】ツールとチャックが夫々のシリンダーを介して連動して移動する具体例。
図6】ツールとチャックが互いに連動して移動する場合の長所を示している。
図7】ツールとチャックが互いに連動して移動する場合の短所を示している。
図8】ツールとチャックが独立して別々に移動する場合と、互いに連動して移動することが出来る場合の油圧回路の具体例。
図9】一般的なタイヤ着脱装置で、平面図、正面図、及び側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るタイヤ着脱装置の外観は前記図9に示す場合と共通しており、ホイールを固定するチャック、該チャックを先端に備えて上下に揺動するアームを取付けた移動体、そして皿形ディスク及びタイヤツメを有すツールを先端に取付けたアームを備えた移動台を有している。そして、上記移動体及び移動台が移動するガイドレールをベースに取付けている。
【0017】
図1は本発明に係るタイヤを着脱する際に用いるタイヤ着脱装置であり、該タイヤ着脱装置を構成するツール1とチャック2を示しており、ツール1はアーム3の先端に取付けられ、アーム3は移動台4から延びている。移動台4は前記図9に示しているようにガイドレールに沿って移動することが出来、該移動台4にはベース側に固定したシリンダー5のピストンロッド6の先端が連結している。
【0018】
一方、チャック2を先端部に取付けているチャッキングアーム7の移動体8は、同じくベースに設けているガイドレールに沿って移動することが出来、その為にベース側に固定したシリンダー9のピストンロッド10の先端が移動体8と連結している。
図1の(b)は(a)の状態から上記シリンダー5のピストンロッド6が縮んで移動台4が右方向へ移動した場合で、同時に該移動台4に取付けているツール1も移動する。
図1の(c)はシリンダー9のピストンロッド10が伸び、それに伴って移動体8は左方向へ移動し、同時にチャック2も移動することが出来る。
【0019】
図2はツール1とチャック2とが、それぞれ独立して別々に移動するようにした場合の長所を説明している。
同図の(a)、(b)とではタイヤサイズ及びホイールの形態も違っている。このように、タイヤ11を着脱するに際して色々なケースがあり、如何なるサイズのタイヤ11a,11bであっても作業者の近くでタイヤ11a,11bの交換作業を行う方が便利である。
本発明では、ツール1及びタイヤ11を装着しているホイール12を固定するチャック2の位置を作業し易い所(作業者の近く)に移動可能である。
【0020】
図3はツール1とチャック2とが、それぞれ独立して別々に移動するようにした場合の短所を説明している。
図3(a)は前記図2(a)の場合と同じであり、タイヤサイズ及びホイール形態も共通し、作業者からのタイヤ11までの距離及びツール1までの距離も同じようにしている。
ところで、(a)ではタイヤ11に対してツール1は右側に位置しているが、該ツール1をタイヤ11に対して左側へ移動する場合、ツール1のみを移動するだけでは不可能である。
【0021】
すなわち、作業者とタイヤ11の間にツール1を配置することが出来るスペース13は存在しない。その為に、タイヤ11を右方向へ移動することが必要と成る。
このように、タイヤ11を着脱する作業において、上記ツール1はタイヤ11に対して右側に配置したり、又は左側に配置することが必要であり、ツール1とタイヤ11をそれぞれ独立して別々に移動する構造では時間がかかり、作業効率は低下する。
【0022】
図4はツール1とチャック2を同時に連動して移動するように構成した具体例である。ツール1を取付けている移動台4とチャック2を取付けている移動体8をローラチェーン14で連結し、該ローラチェーン14は両スプロケット15a,15bに巻き掛けしている。
すなわち、両スプロケット15a,15bに巻き掛けしたローラチェーン14の一方側スパン16aに移動台4を連結し、他方側スパン16bに移動体8を連結している。
そこで、シリンダー9のピストンロッド10が伸びて移動体8が左方向へ距離Lだけ移動するならば、ツール1は右方向へ同じ距離Lだけ移動することが出来る。
【0023】
図5はツール1とチャック2を互いに連動した場合の他の具体例である。ツール1を移動するシリンダー5とチャック2を移動することが出来るシリンダー9の油圧回路を連結し、電磁弁17にて切り替えることが出来るように構成している。
図5(a)では、ツール1を取付けている移動台4にはシリンダー5のピストンロッド6が伸びて連結しており、チャック2を取付けている移動体8にはシリンダー9のピストンロッド10が縮んだ状態で連結している。
【0024】
そこで、図5(b)に示すように電磁弁17を切替えてツール側のピストンロッド6が縮むならば、シリンダー内の作動油がタンクへ入ると共に、チャック側のシリンダー9の作動油がツール側のシリンダー5へ流れ込み、同時にタンク内の作動油はポンプによってシリンダー9へ流入する。すなわち、同一大きさの両シリンダー5,9間での作動油の出入りは同じ量であり、その為にツール1の左側への移動距離とチャック2の右側への移動距離は等しくなる。
【0025】
図6はツール1とチャック2が連動して移動するように構成した場合の長所を説明している。例えば、ツール1が右側へ距離Lだけ移動するならば、チャック2も同じ距離Lだけ左側ヘ移動することが出来る。
これは、図6(a)に示すローラチェーン14を用いて移動台4と移動体8を連結した構造とした場合であっても、油圧シリンダー5,9を用い、電磁弁17を介して切替するように構成した場合であっても同じように機能し、連動することで動作速度は2倍と成り作業効率が向上する。
【0026】
図7はツール1とチャック2が連動して移動するように構成した場合の短所を説明している。タイヤ11の着脱を行う場合、一般には作業者の近くにタイヤ11を配置する方が便利である。特に、サイドリングを組み込んだホイール12では、タイヤ11の着脱に際してこのサイドリングを取外すことが必要である。その為に、操作盤の近くに立つ作業者の手が届く範囲にあることが好都合である。
【0027】
図7の(a)では、タイヤ11が作業者の近くに位置しているが、ツール1の位置を定める為に、該ツール1を移動するならば同図(b)に示すようにタイヤ11も同時に移動してしまい、該タイヤ11は作業者から離れる。従って、操作盤を操作しながらサイドリングを取外したり取付ける作業を行うことは面倒であり、結果的に作業効率は低下する。
【0028】
図5に示す油圧回路はツール1とチャック2が互いに連動して移動する場合であり、本発明ではスイッチ操作でツール1とチャック2が独立して別々に移動することが出来る。その為に、本発明では特別な油圧回路を構成してツール1とチャック2を単独でも連動しても移動するように制御している。
タイヤ11の着脱作業を行うに当たって、ツール1とチャック2が独立して移動することが好都合である場合、またツール1とチャック2が連動して移動する方が好都合である場合を選択して使い分けることが出来る。
【0029】
図8はツール1とチャック2が独立して単独で移動したり、またツール1とチャック2が連動して移動することが出来る油圧回路を示す具体例である。ただし、この油圧回路は単なる一具体例に過ぎず、両シリンダー5,9が同じように作動する限り、具体的な構造に関しては限定はしない。
そこで、図8に示す油圧回路において、ツール1とチャック2が独立して別々に移動する場合は、SOL1がON、SOL2がOFF、SOL3がOFFとなる。
そして、ツール1とチャック2が連動して移動する場合は、SOL1がOFF、SOL2がON、SOL3がON、SOL5がOFFとなる。
【0030】
図5に示すように両シリンダー5,9を互いに接続することでツール1とチャック2は連動して動くことが出来る。そこで、ツール1とチャック2が独立して別々に移動するには両シリンダー5,9を接続している回路を電磁弁にて切断し、各々のシリンダー5,9はポンプと接続している。そして、各シリンダー5,9から押し出される作動油はタンクへ戻されるように油圧回路を構成している。
したがって、各シリンダー5,9はポンプから送り出される作動油にて作動すると共に、作動油はタンクへ戻され、両シリンダー5,9を連動させる場合には、間に介在する電磁弁を開くことになる。
【符号の説明】
【0031】
1 ツール
2 チャック
3 アーム
4 移動台
5 シリンダー
6 ピストンロッド
7 チッキングアーム
8 移動体
9 シリンダー
10 ピストンロッド
11 タイヤ
12 ホイール
13 スペース
14 ローラチェーン
15 スプロケット
16 スパン
17 電磁弁

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9