(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明導電層における前記ポリチオフェン系導電性高分子の含有量が、前記ポリチオフェン系導電性高分子と前記有機バインダとの合計質量に対して、10質量%以上50質量%以下である請求項1に記載の透明導電性粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の透明導電性粘着シート)
本発明の透明導電性粘着シートは、透明基材と、上記透明基材の上に配置された透明導電層と、上記透明導電層の上に配置された粘着層とを備え、上記透明導電層は、ポリチオフェン系導電性高分子を含み、上記透明導電層の厚さが、0.3μm以上2.0μm以下であり、上記透明導電層の表面電気抵抗値が、50Ω/スクエア以上500Ω/スクエア以下であり、全光線透過率が、65%以上であることを特徴とする。
【0013】
本発明の透明導電性粘着シートは、上記構成とすることにより、表面電気抵抗値が極めて小さな透明導電層を備え、且つ低い全光線透過率と可撓性とを有する透明導電性粘着シートとすることができる。また、本発明の透明導電性粘着シートをその粘着層を介して他の部材(被着体)に貼り付けた場合、本発明の透明導電性粘着シートの最表面が透明基材となるため、上記透明基材が保護層として機能して、本発明の透明導電性粘着シートの透明導電層を、外部からの物理的な接触による傷、剥離;水や油等の液体の付着による透明導電層の溶解;外気の湿度や外部からの紫外線等による透明導電層の変質;等を防止でき、その結果、上記透明導電層の表面電気抵抗値の変化を防止できる。
【0014】
本発明の透明導電性粘着シートの用途は特に限定されず、前述の粘着機能を有する導電性透明保護フィルム、調光用粘着フィルムに用いることができると共にタッチパネル用透明導電性粘着シート等にも用いることができる。
【0015】
<透明導電層>
本発明の透明導電性粘着シートは、ポリチオフェン系導電性高分子を含む透明導電層を備えているため、透明導電層の表面電気抵抗値を50Ω/スクエア以上500Ω/スクエア以下という低い値に設定できると共に透明性と可撓性の高い透明導電性粘着シートを提供できる。
【0016】
また、上記透明導電層は、有機バインダを更に含むことが好ましい。これにより、ポリチオフェン系導電性高分子のみからなる透明導電層に比べて、硬度が高く透明基材への密着性が高い透明導電層を形成できる。更に、上記透明導電層が有機バインダを含むことにより、透明基材上に厚みのばらつきが小さい透明導電層を形成できるため、透明導電層全体の表面電気抵抗値を均一にできる。加えて、上記透明導電層が有機バインダを含むことにより、透明導電層形成用塗料を形成する際に、上透明導電層形成用塗料において上記ポリチオフェン系導電性高分子の分散性を高めることができ、透明基材に上記透明導電層形成用塗料を塗布することにより、透明性の高い透明導電層を形成できる。
【0017】
[ポリチオフェン系導電性高分子]
上記ポリチオフェン系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成される有機高分子であり、導電性を有すると共に、可視光領域の光をほとんど吸収しないため、高い透明性を有する透明導電層を形成できる。
【0018】
上記ポリチオフェン系導電性高分子としては、例えば、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)等が挙げられる。
【0019】
上記ポリチオフェン系導電性高分子は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記ポリチオフェン系導電性高分子の電気伝導度を高めるために、ドーパントを併用することが好ましい。上記ドーパントとしては、ヨウ素、塩素等のハロゲン類、BF
3、PF
5等のルイス酸類、硝酸、硫酸等のプロトン酸類や、遷移金属、アルカリ金属、アミノ酸、核酸、界面活性剤、色素、クロラニル、テトラシアノエチレン、TCNQ等が使用できる。
【0021】
本発明では上記ポリチオフェン系導電性高分子として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を用い、上記ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸とを用いた混合物(PEDOT/PSSともいう。)を用いることが好ましい。
【0022】
上記ポリチオフェン系導電性高分子と上記ドーパントとの配合割合は、質量比でポリチオフェン系導電性高分子:ドーパント=1:2〜1:4が好ましい。
【0023】
[有機バインダ]
上記有機バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フッ化ビニリデン−アクリル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂を含む有機バインダ;ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂等を含む有機バインダ等が使用できる。上記フッ素系樹脂を含む有機バインダを用いると、透明導電層の耐水性と透明性を向上でき、特にPVDFが好ましい。上記PVDFは、上記ポリチオフェン系導電性高分子との相溶性が高いため、透明導電層の全光線透過率を向上でき、また、透明導電層の強度及び可撓性を向上できるからである。
【0024】
上記PVDFは、上記透明導電層中に均一に分散させて全光線透過率を向上させるため、その分散粒子径は0.3μm以下が好ましい。上記PVDFを乳化重合により形成することにより、その分散粒子径を0.3μm以下にすることができる。上記PVDFの分散粒子径は、動的光散乱法の粒度分布系により測定することができる。例えば、コールター社製の粒度分布測定装置“N4 Plus”を用い、希釈溶媒として蒸留水を使用して測定することができる。
【0025】
[透明導電層の特性]
上記透明導電層の表面電気抵抗値は、50Ω/スクエア以上500Ω/スクエア以下に設定され、70Ω/スクエア以上250Ω/スクエア以下がより好ましく、100Ω/スクエア以上200Ω/スクエア以下が更に好ましい。上記表面電気抵抗値が50Ω/スクエアを下回るようにするには、上記透明導電層の厚さを厚くしなければならず、透明導電層の全光線透過率が低下する。また、上記表面電気抵抗値が500Ω/スクエアを超えると、調光用粘着フィルムやタッチパネル用透明導電性粘着シートにおける透明導電層の電極としの機能が低下する。
【0026】
上記透明導電層の厚さは、0.3μm以上2.0μm以下に設定される。上記透明導電層の厚さが0.3μmを下回ると、上記透明導電層の表面電気抵抗値が上昇し、上記表面電気抵抗値を500Ω/スクエア以下とすることが困難となる。また、上記透明導電層の厚さが2.0μmを超えると、上記表面電気抵抗値を500Ω/スクエア以下とすることはできるが、上記透明導電層の全光線透過率が低下する。上記透明導電層の厚さは、表面電気抵抗値と透明性のバランスから、0.5μm以上1.2μm以下が特に好ましい。
【0027】
また、上記透明導電層における上記ポリチオフェン系導電性高分子の含有量は、上記ポリチオフェン系導電性高分子と上記有機バインダとの合計質量に対して、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、15質量%以上40質量%以下がより好ましい。上記ポリチオフェン系導電性高分子の含有量が10質量%を下回ると、上記有機バインダの量が多くなりすぎて透明導電層の表面電気抵抗値が上昇する傾向にある。また、上記ポリチオフェン系導電性高分子の含有量が50質量%を超えても透明導電層の表面電気抵抗値がそれ以上は低下せず、一方、上記含有量が50質量%を超えると、透明導電層の強度及び密着性が低下する。
【0028】
<粘着層>
本発明の透明導電性粘着シートの粘着層は、粘着剤として酸フリー架橋樹脂を含んでいることが好ましい。これにより、高温高湿下での透明導電層の表面電気抵抗値の経時変化を抑制できると共に、被着体の腐食を防止できる。
【0029】
[酸フリー架橋樹脂]
上記酸フリー架橋樹脂とは、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の酸性基を含まないモノマーを重合して形成した酸フリーポリマーを、更に架橋剤により架橋した架橋ポリマーをいう。上記酸性基を含まないモノマーは、架橋剤との架橋反応を行うため、水酸基、アミノ基等の官能基を含んでいる。但し、上記酸フリー架橋樹脂は酸性基を意識的に有さないものを意味し、酸性基が全く検出されないことを意味するものではなく、また本発明の透明導電性粘着シートの製造過程で不可避的に混入する微量の酸は許容する意味である。
【0030】
上記酸フリー架橋樹脂では、水酸基、アミノ基等の極性基を含む酸フリーポリマーが架橋剤と反応して形成されるため、最終的に上記酸フリー架橋樹脂は、極性基の数が減少して粘着層が疎水性となる。そのため、粘着層を通して透明導電層へ水が浸入することを抑制でき、透明導電層中の耐水性が低いポリチオフェン系導電性高分子への水の影響を小さくできるため、高温高湿下での透明導電層の表面電気抵抗値の経時変化を抑制できる。
【0031】
また、粘着剤として単に酸フリーポリマーのみを用いると、架橋しない極性基を多く含む樹脂により粘着層が形成されるため、粘着層が親水性となる。そのため、粘着層を通して透明導電層へ水が浸入することを抑制できなくなり、透明導電層中の耐水性が低いポリチオフェン系導電性高分子への水の影響が大きくなるため、高温高湿下での透明導電層の電気抵抗値の経時変化が大きくなる。
【0032】
更に、粘着剤として、酸性基を含む架橋樹脂を用いると、架橋反応により粘着剤中の樹脂の酸性基の数は減少しているが、カルボキシル基等の酸性基は、水酸基等の他の極性基より親水性が高いため、残存する酸性基により粘着層が親水性の傾向となる。そのため、上記と同様の理由で、高温高湿下での透明導電層の表面電気抵抗値の経時変化が大きくなる。
【0033】
上記酸フリー架橋樹脂の形成に用いる酸性基以外の官能基を有する酸フリーポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂等の少なくとも1種を用いることができる。
【0034】
上記アクリル系樹脂は、酸性基以外の官能基を有していれば特に限定されるものではなく、例えば、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にある(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、官能基含有モノマーと、必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを、共重合させることにより得られる官能基含有(メタ)アクリル酸系ポリマー等を使用できる。これらの中でも、アルキル基の炭素数が6以上の官能基含有(メタ)アクリル酸系ポリマーが好ましい。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の両者を意味している。
【0035】
上記ウレタン系樹脂としては、例えば、ポリエーテル系ウレタン樹脂、無黄変性ポリエーテル系ウレタン樹脂、芳香族イソシアネート・エーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、無黄変性ポリエステル系ウレタン樹脂、芳香族イソシアネート・エステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル・ポリエステル系ウレタン樹脂、無黄変性ポリエーテル・ポリエステル系ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0036】
上記ゴム系樹脂としては、例えば、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0037】
上記シリコーン樹脂としては、例えば、メチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂、及びエポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂等で変性された有機樹脂変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0038】
上記酸フリーポリマーのモノマー成分としては、水酸基を含む(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。上記水酸基を含む(メタ)アクリル酸エステルを上記酸フリーポリマーのモノマー成分として用いることにより、粘着層の透明性を維持できる。
【0039】
上記酸フリー架橋樹脂を形成するための架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、イミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン系架橋剤等を用いることができる。これらの中でも、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤及び金属キレート系架橋剤を用いることが好ましい。エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤を用いることで、室温等の比較的低温な条件であっても、酸性基以外の官能基を有する酸フリーポリマーの架橋が進行するからである。
【0040】
上記エポキシ系架橋剤としては、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等を用いることができる。
【0041】
上記イソシアネート系架橋剤としては、公知の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等を用いることができる。
【0042】
上記金属キレート系架橋剤として、Alを中心金属とするアルミニウムキレート化合物、Zrを中心金属とするジルコニウムキレート化合物を用いることができる。
【0043】
上記酸フリーポリマーに対する架橋剤の添加量としては、酸フリーポリマーの種類等によっても異なるが、酸フリーポリマー100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上10質量部以下の範囲、好ましくは、0.1質量部以上1質量部以下の範囲とすることができる。
【0044】
[その他の成分]
上記粘着層には、粘着力を制御するため、必要に応じて粘着付与剤を添加してもよい。上記粘着付与剤としては、酸性基を含まなければ特に限定されないが、例えば、酸性基を含まないロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、合成石油系樹脂、及びこれらの水添系樹脂等が挙げられる。
【0045】
[粘着層の特性]
上記粘着層の厚みは、5μm以上200μm以下であることが好ましく、8μm以上100μm以下であることがより好ましい。上記粘着層の厚みが5μm未満である場合、必要な粘着力を得ることができない場合があり、上記粘着層の厚みが200μmより厚い場合、全光線透過率が低くなる傾向にある。
【0046】
<透明基材>
本発明の透明導電性粘着シートに用いる透明基材としては特に限定されないが、透明樹脂フィルム等が使用できる。上記透明樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテルフタレート(PET)フィルム等のポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム等のオレフィン系樹脂フィルム;ポリイミド系樹脂フィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム等を使用できる。中でも、加工性及び可撓性の高いポリエステル系樹脂フィルムが特に好ましい。
【0047】
上記透明基材の厚さは、10μm以上150μm以下が好ましく、15μm以上75μm以下がより好ましい。上記透明基材の厚さが薄すぎると上記透明導電性粘着シートの強度が低下し、上記厚さが厚すぎると上記透明導電性粘着シートの可撓性が低下し、湾曲した被着体への貼り付け加工が困難となる。
【0048】
<透明導電性粘着シート>
本発明の透明導電性粘着シートの全光線透過率は、65%以上に設定され、70%以上がより好ましい。上記全光線透過率を65%以上に設定することにより、本発明の透明導電性粘着シートを被着体に貼り付けた際の被着体の視認性を向上できる。これにより、例えば、本発明の透明導電性粘着シートをタッチパネル用透明導電性粘着シートとして表示装置に貼り付けて使用しても表示装置の視認性を確保でき、また、本発明の透明導電性粘着シートを調光用粘着フィルムとして被着体に貼り付けて使用しても被着体の視認性を確保できる。
【0049】
次に、本発明の透明導電性粘着シートを図面に基づき説明する。
図1は、本発明の透明導電性粘着シートの一例を示す模式断面図である。
図1において、透明導電性粘着シート10は、透明基材11と、透明基材11の上に配置された透明導電層12と、透明導電層12の上に配置された粘着層13とを備えている。
【0050】
(本発明の透明導電性粘着シートの製造方法)
本発明の透明導電性粘着シートの製造方法は、ポリチオフェン系導電性高分子と、必要に応じて有機バインダと、溶媒とを含む透明導電層形成用塗料を作製する工程と、上記透明導電層形成用塗料を透明基材の上に塗布して乾燥することにより、上記透明基材の上に透明導電層を形成する工程と、上記透明導電層の上に粘着層を形成又は配置する工程とを備えることができる。
【0051】
<透明導電層形成用塗料>
上記透明導電層形成用塗料に用いるポリチオフェン系導電性高分子としては、前述のポリチオフェン系化合物としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸とを含む混合物(PEDOT/PSS)等を用いることができる。
【0052】
上記透明導電層形成用塗料における上記ポリチオフェン系導電性高分子の含有量は、上記透明導電層形成用塗料に含まれる全固形成分の質量に対して10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。上記ポリチオフェン系導電性高分子の含有量が、上記透明導電層形成用塗料に含まれる全固形成分の質量に対して10質量%を下回ると透明導電層の導電性が低下し、50質量%を超えると透明導電層の物理特性等が低下する傾向にある。
【0053】
上記透明導電層形成用塗料に用いる有機バインダとしては、前述の各種の有機バインダを用いることができるが、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましい。PVDFを用いることにより、透明導電層と透明基材との密着性を向上できる。PVDFは、上記透明導電層形成用塗料を用いて形成される透明導電層中に均一に分散させて透光性を向上させるため、上記透明導電層形成用塗料中におけるPVDFの分散粒子径は0.3μm以下に設定することが好ましい。
【0054】
上記有機バインダの含有量は、上記透明導電層形成用塗料に含まれる全固形成分の質量に対して50質量%以上90質量%以下が好ましい。上記バインダの含有量が少なすぎると、十分な硬度を有する透明導電層が得られにくく、上記透明基材との密着性が低下する傾向にあり、上記有機バインダの含有量が多すぎると、透明導電層が白濁化し、全光線透過率が低下する傾向にある。
【0055】
上記透明導電層形成用塗料に用いる溶媒は、プロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒とを含んでいることが好ましい。プロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒とを併用することにより、比較的低い乾燥温度で透明性に優れた透明導電性膜を得ることができる。
【0056】
上記プロトン性極性溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール、メチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられ、上記非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0057】
上記非プロトン性極性溶媒の含有量は、上記溶媒の全質量に対して1.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。上記非プロトン性極性溶媒の含有量が、上記溶媒の全質量に対して1.0質量%を下回ると透明導電層の透光性が低下する傾向にあり、50.0質量%を超えると透明導電層の耐湿熱性が低下する傾向にある。
【0058】
上記溶媒の含有量は特に限定されないが、上記透明導電層形成用塗料の全質量に対して、50.0質量%以上99.5質量%以下とすればよい。また、上記溶媒には、無極性溶媒を含んでいてもよい。
【0059】
<透明導電層の形成>
上記透明導電層形成用塗料を透明基材の上に塗布する方法としては、例えば、バーコート法、リバース法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法、ディッピング法、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法等の塗布方法を用いることができる。
【0060】
上記塗布後の乾燥は、上記透明導電層形成用塗料の溶媒成分が蒸発する条件であればよく、100〜150℃で5〜60分間行うことが好ましい。溶媒が透明導電層に残っていると強度が劣る傾向にある。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥法、加熱乾燥法、真空乾燥法、自然乾燥等により行うことができる。また、必要に応じて、塗膜にUV光やEB光を照射して塗膜を硬化させたりして、透明導電性層を形成してもよい。
【0061】
<粘着層の形成>
上記透明導電層の上に粘着層を形成するには、例えば、前述の酸フリーポリマーと、架橋剤と、溶媒とを含む粘着層形成用塗料を塗布して乾燥すればよい。上記透明導電層の上に上記粘着層形成用塗料を塗布して乾燥する方法は特に限定されず、各種の塗工装置、乾燥装置を用いることができる。また、上記溶媒は特に限定されず、上記酸フリーポリマーと上記架橋剤を混合できるものであればよい。
【0062】
また、上記透明導電層の上に粘着層を配置するには、上記粘着層形成用塗料を用いて粘着層を別途セパレータ上に形成し、この別途形成した粘着層を、上記透明導電層の上に貼りつけることなどにより配置すればよい。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に述べる。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。特に指摘がない場合、下記において、「部」は「質量部」を意味する。
【0064】
(実施例1)
<透明導電層形成用塗料の調製>
以下の成分を添加、混合して透明導電層形成用塗料a1を調製した。
(1)ポリチオフェン系導電性高分子分散液(綜研化学社製、商品名“ベラゾールWED−SM”、導電性高分子:PEDOT−PSS、固形分濃度:1.4質量%、溶媒:水):53.6部
(2)有機バインダ分散液(PVDF分散液、アルケマ社製、商品名“Kyner Latex−32”、固形分濃度:16.0質量%、溶媒:水):14.1部
(3)非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド):10.0部
(4)プロトン性極性溶媒(n−プロピルアルコール):20.0部
(5)プロトン性極性溶媒(水):2.3部
【0065】
上記透明導電層形成用塗料a1におけるPEDOT−PSSの含有量は、PEDOT−PSSとPVDFとの合計質量に対して、25.0質量%である。
【0066】
<透明導電性シートの形成>
次に、厚さ23μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名“A4300”)を透明基材として用い、その透明基材の一方の主面に上記透明導電層形成用塗料a1を、バーコータを用いて塗布し、その後110℃で3分間乾燥した。これにより、一方の主面に透明導電層が形成された透明導電性シートを作製した。上記透明導電層の厚さは、0.7μmであった。
【0067】
<粘着層形成用塗料の調製>
以下の成分を添加、混合して粘着層形成用塗料b1を調製した。
(1)酸フリー樹脂粘着剤(大同化学工業社製、商品名“ダイカラック5022”、固形分濃度:30.0質量%、溶媒:酢酸エチル):70.9部
(2)イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名“コロネートHX”、固形分濃度:100.0質量%、溶媒:酢酸エチル):0.1部
(3)溶媒(酢酸エチル):29.0部
【0068】
<透明導電性粘着シートの形成>
PETフィルムの片面に離形処理した厚さ50μmの剥離ライナー(東洋クロス社製、商品名“SP4107”)の離形処理面に、上記粘着層形成用塗料b1を塗布し、100℃で3分間乾燥させて、剥離ライナーの上に厚さ25μmの粘着層を形成した。
【0069】
次に、先に作製した透明導電性シートの透明導電層側に、上記剥離ライナーの粘着層を重ね合わせ、2kgのゴムローラにより圧着し、40℃の雰囲気下で48時間エージングして、上記剥離ライナーが付いた状態で実施例1の透明導電性粘着シートを作製した。
【0070】
(実施例2)
透明導電層の厚さを1.5μmに変更した以外は、実施例1と同様にして透明導電性シートを作製し、この透明導電性シートを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2の透明導電性粘着シートを作製した。
【0071】
(実施例3)
透明導電層の厚さを0.4μmに変更した以外は、実施例1と同様にして透明導電性シートを作製し、この透明導電性シートを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3の透明導電性粘着シートを作製した。
【0072】
(実施例4)
透明導電層の厚さを2.1μmに変更した以外は、実施例1と同様にして透明導電性シートを作製し、この透明導電性シートを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例4の透明導電性粘着シートを作製した。
【0073】
(実施例5)
<粘着層形成用塗料の調製>
以下の成分を添加、混合して粘着層形成用塗料b2を調製した。
(1)酸性基含有アクリル樹脂粘着剤(綜研化学社製、商品名“SKダイン2094”、固形分濃度:26.0質量%、溶媒:酢酸エチル):89.7部
(2)エポキシ系架橋剤(綜研化学社製、商品名“E−AX”、固形分濃度:5.0質量%、溶媒:酢酸エチル):0.3部
(3)溶媒(酢酸エチル):10.0部
【0074】
次に、上記粘着層形成用塗料b2を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例5の透明導電性粘着シートを作製した。
【0075】
(実施例6)
透明導電層の厚さを1.5μmに変更した以外は、実施例1と同様にして透明導電性シートを作製し、この透明導電性シートと、実施例5で作製した粘着層形成用塗料b2とを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例6の透明導電性粘着シートを作製した。
【0076】
(実施例7)
<透明導電層形成用塗料の調製>
以下の成分を添加、混合して導電層形成用塗料a2を調製した。
(1)ポリチオフェン系導電性高分子分散液(ヘレウス社製、商品名“PH−1000”、導電性高分子:PEDOT−PSS、固形分濃度:1.0質量%、溶媒:水):75.0部
(2)有機バインダ分散液(PVDF分散液、アルケマ社製、商品名“Kyner Latex−32”、固形分濃度:16.0質量%、溶媒:水):3.8部
(3)非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド):5.0部
(4)プロトン性極性溶媒(n−プロピルアルコール):16.2部
【0077】
上記透明導電層形成用塗料a2におけるPEDOT−PSSの含有量は、PEDOT−PSSとPVDFとの合計質量に対して、55.2質量%である。
【0078】
次に、上記導電層形成用塗料a2を用い、透明導電層の厚さを0.9μmに変更した以外は、実施例1と同様にして透明導電性シートを作製し、この透明導電性シートを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例7の透明導電性粘着シートを作製した。
【0079】
(実施例8)
<透明導電層形成用塗料の調製>
以下の成分を添加、混合して透明導電層形成用塗料a3を調製した。
(1)ポリチオフェン系導電性高分子分散液(綜研化学社製、商品名“ベラゾールWED−SM”、導電性高分子:PEDOT−PSS、固形分濃度:1.4質量%、溶媒:水):53.6部
(2)有機バインダ分散液(PVDF分散液、アルケマ社製、商品名“Kyner Latex−32”、固形分濃度:23.0質量%、溶媒:水):33.0部
(3)非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド):4.0部
(4)プロトン性極性溶媒(n−プロピルアルコール):9.4部
【0080】
上記透明導電層形成用塗料a3におけるPEDOT−PSSの含有量は、PEDOT−PSSとPVDFとの合計質量に対して、9.0質量%である。
【0081】
次に、上記導電層形成用塗料a3を用いた以外は、実施例1と同様にして透明導電性シートを作製し、この透明導電性シートを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例8の透明導電性粘着シートを作製した。
【0082】
(実施例9)
<透明導電層形成用塗料の調製>
以下の成分を添加、混合して有機バインダを含まない透明導電層形成用塗料a4を調製した。
(1)ポリチオフェン系導電性高分子分散液(綜研化学社製、商品名“ベラゾールWED−SM”、導電性高分子:PEDOT−PSS、固形分濃度:1.4質量%、溶媒:水):53.6部
(2)非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド):10.0部
(3)プロトン性極性溶媒(n−プロピルアルコール):25.0部
(4)プロトン性極性溶媒(水):11.4部
【0083】
上記透明導電層形成用塗料a4におけるPEDOT−PSSの含有量は、全固形成分の合計質量に対して、100.0質量%である。
【0084】
次に、上記導電層形成用塗料a4を用いた以外は、実施例1と同様にして透明導電性シートを作製し、この透明導電性シートを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例9の透明導電性粘着シートを作製した。
【0085】
(比較例1)
透明導電層の厚さを0.2μmに変更した以外は、実施例1と同様にして透明導電性シートを作製し、この透明導電性シートを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1の透明導電性粘着シートを作製した。
【0086】
(比較例2)
透明導電層の厚さを2.3μmに変更した以外は、実施例1と同様にして透明導電性シートを作製し、この透明導電性シートを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例2の透明導電性粘着シートを作製した。
【0087】
(比較例3)
ポリピロールとドーパントとの混合溶液(導電性高分子:ポリピロール(3−メチル−4−ピロールカルボン酸エチルと3−メチル−4−ピロールカルボン酸ブチルとの共重合体)、ドーパント:TCNA(2,3,6,7−テトラシアノ−1,4,5,8−テトラアザナフタレン)、固形分濃度:1.5質量%、溶媒:水/n−プロピルアルコール=7/3混合液)のみを透明導電層形成用塗料として用い、透明導電層の厚さを1.0μmに変更した以外は、実施例1と同様にして透明導電性シートを作製し、この透明導電性シートを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例3の透明導電性粘着シートを作製した。
【0088】
上記透明導電層形成用塗料における上記導電性高分子と上記ドーパントとの含有量は、全固形成分の合計質量に対して、100.0質量%である。
【0089】
以上の実施例1〜9及び比較例1〜3の透明導電性粘着シートについて下記評価を行った。
【0090】
<表面電気抵抗値の測定>
作製した透明導電性粘着シートを40mm四方に切断した後、剥離ライナーを剥がし、上記透明導電性粘着シートの粘着層側を、コーニング社製の無アルカリガラス(商品名“イーグルXG”、厚さ:0.7μm)に圧着して測定用サンプルとした。
【0091】
次に、ナプソン社製の高周波渦電流式非破壊抵抗率測定装置(商品名“EC−80P”)を用いて上記測定用サンプルの表面電気抵抗値を測定した。具体的には、上記測定用サンプルの透明基材側に、上記抵抗率測定装置のプローブを当てて測定した表面電気抵抗値を透明導電性粘着シートの表面電気抵抗値とした。
【0092】
<全光線透過率の測定>
作製した透明導電性粘着シートを40mm四方に切断した後、剥離ライナーを剥がし、上記透明導電性粘着シートの粘着層側を、コーニング社製の無アルカリガラス(商品名“イーグルXG”、厚さ:0.7μm)に圧着して測定用サンプルとした。
【0093】
次に、日本電色社製のヘイズメーター(商品名“NDH2000”)を用いて、JIS K7361に準拠して上記測定サンプルの全光線透過率を測定した。また、上記測定サンプルに用いたガラス単体の全光線透過率も測定した。最後に、上記測定サンプルの全光線透過率から上記ガラス単体の全光線透過率を差し引いた値を透明導電性粘着シートの全光線透過率とした。
【0094】
<被着体の腐食の観察>
作製した透明導電性粘着シートを40mm四方に切断した後、剥離ライナーを剥がし、上記透明導電性粘着シートの粘着層側を、アーテック社製の銅箔(厚さ:60μm)に圧着して観察用サンプルとした。
【0095】
次に、上記観察用サンプルを温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽で250時間保持した。その後、銅箔から透明導電性粘着シートを剥がし、銅箔の腐食の有無を観察し、腐食性を次にように評価した。
評価A:銅箔に腐食による変色が見られなかった場合
評価B:銅箔の一部に腐食による変色が見られた場合
評価C:銅箔の全面に腐食による変色が見られた場合
【0096】
上記の結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1から、本発明の実施例1〜4及び7〜9では、表面電気抵抗値、全光線透過率及び腐食性において良好な結果を得た。粘着層に酸フリー架橋樹脂を使用しなかった実施例5及び6では、腐食性がやや劣ったが、表面電気抵抗値及び全光線透過率は良好な結果を得た。
【0099】
一方、透明導電層の厚さが0.3μmを下回った比較例1では、表面電気抵抗値が上昇し、透明導電層の厚さが2.0μmを上回った比較例2では、全光線透過率が低下し、導電性高分子としてポリチオフェン系導電性高分子を用いなかった比較例3では、表面電気抵抗値が著しく上昇した。