(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記機械室は、前記熱交換装置よりも冷却風の流れ方向の上流側に位置する熱交換装置上流室と、前記熱交換装置よりも冷却風の流れ方向の下流側に位置して前記エンジンが配置されたエンジン室とを有し、
前記尿素水タンクは、前記熱交換装置上流室内に配置され、
前記尿素水供給管路は、前記熱交換装置上流室から前記エンジン室を通って前記尿素水噴射弁に接続され、
前記サポート部材と前記遮熱カバーとの間に形成される前記管路収容空間は、前記尿素水供給管路のうち前記エンジン室内に配置される部位を収容する構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回装置の中心を旋回中心として旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレームの後側に設けられ前記作業装置との重量バランスをとるカウンタウエイトと、該カウンタウエイトの前側に位置して前記旋回フレームの後側に左,右方向に延在する横置き状態で搭載されたエンジンと、エンジンを動力源として回転し外部の空気を冷却風として吸込む冷却ファンと、冷却ファンよりも冷却風の流れ方向の上流側に配置された熱交換装置と、旋回フレーム上にエンジンおよび熱交換装置等の搭載機器を収容する機械室を形成した外装カバーとを含んで構成されている。
【0004】
油圧ショベルのエンジンにはディーゼルエンジンが用いられ、このディーゼルエンジンは、排気ガスと共に窒素酸化物(以下、NOxという)を排出する。このため、排気ガス中に含まれるNOxを浄化するための排気ガス浄化装置が知られており、この排気ガス浄化装置は、例えばエンジンの排気管に設けられ、排気ガス中の窒素酸化物を除去する尿素選択還元触媒と、還元剤としての尿素水溶液を該尿素選択還元触媒に噴射する尿素水噴射弁とにより構成され、NOxを無害な窒素ガスと水とに分解するものである。このため、油圧ショベルには、還元剤である尿素水を貯えるための尿素水タンクと、尿素水を尿素水噴射弁に供給する尿素水供給管路とが設けられている。
【0005】
ここで、NOxを浄化するために用いられる尿素水(例えば、32.5%尿素水)は、60℃程度の高温下で保持された場合には、1週間程度で品質が劣化して使用できなくなり、高温になるほど品質の劣化が早まる。劣化した尿素水は腐食性が高いため、尿素水噴射弁のような金属性の部品を腐食させてしまうという不具合がある。このため、尿素水を蓄える尿素水タンク、尿素水が流通する尿素水供給管路は、機械室内においてエンジンからの熱の影響を受けにくく、温度が低く保たれる場所に配置する必要がある。
【0006】
これに対し、尿素水タンクを、冷却風の流れ方向において熱交換装置よりも上流側に配置することにより、熱交換装置を通過する前の温度の低い冷却風によって尿素水タンク内の尿素水を冷却する技術が開示されている(特許文献1)。
【0007】
また、上部旋回体に箱状または枠状の固定部材を固定し、この固定部材の内部に断熱材を介して尿素水タンクを配置することにより、エンジン等が発生した熱によって機械室内の温度が上昇した場合でも、尿素水タンクに貯えられた尿素水の温度上昇を抑える技術が開示されている(特許文献2)。
【0008】
一方、尿素水供給管路についても、エンジン、油圧ポンプ等の熱源となる搭載機器から離間した位置にレイアウトしたり、尿素水供給管路を断熱材で覆うことにより、尿素水供給管路を流れる尿素水の温度が上昇するのを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態について、油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0019】
図1において、建設機械の代表例である油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを有している。上部旋回体3の前側には、作業装置4が俯仰動可能に設けられ、この作業装置4を用いて土砂の掘削作業等を行う。
【0020】
旋回フレーム5は、上部旋回体3のベースとなる支持構造体を形成している。旋回フレーム5は、
図4ないし
図6に示すように、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、底板5A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板5B,右縦板5Cと、左縦板5Bの左側に間隔をもって配置され前,後方向に延びた左サイドフレーム5Dと、右縦板5Cの右側に間隔をもって配置され前,後方向に延びた右サイドフレーム5Eと、底板5Aおよび左縦板5Bから左方向に張出し先端部に左サイドフレーム5Dを支持する左張出しビーム5Fと、底板5Aおよび右縦板5Cから右方向に張出し先端部に右サイドフレーム5Eを支持する右張出しビーム5Gと、左,右のサイドフレーム5D,5Eの後端部間を左,右方向に延びた後板5Hとを含んで構成されている。
【0021】
一方、旋回フレーム5の後側には、左,右の縦板5B,5C間に位置して、例えば4個のエンジンブラケット5Jが設けられ、これら各エンジンブラケット5Jには、後述するエンジン7が取付けられる。左,右の縦板5B,5Cの前端側には、作業装置4のフート部が俯仰動可能に取付けられ、左,右の縦板5B,5Cの後端部には後述のカウンタウエイト6が取付けられている。
【0022】
カウンタウエイト6は、旋回フレーム5の後側に設けられ、作業装置4との重量バランスをとるものである。カウンタウエイト6の後面6Aは、上部旋回体3の旋回中心を中心とした円弧状に形成され、上部旋回体3の旋回動作時に下部走行体2の車幅内にほぼ収まるように構成されている。カウンタウエイト6の左端側には、後面6Aと前面6Bとを貫通するメンテナンス開口6Cと、このメンテナンス開口6Cを開,閉可能に覆うメンテナンスカバー6Dとが設けられている。
【0023】
エンジン7は、カウンタウエイト6の前側に位置して旋回フレーム5の後側に設けられている。エンジン7は、旋回フレーム5の各エンジンブラケット5Jに対応する4個の取付脚7Aを有し、各取付脚7Aが防振マウントを介して各エンジンブラケット5Jに取付けられることにより、クランク軸(図示せず)が左,右方向に延在する横置き状態で旋回フレーム5に取付けられている。エンジン7の右側にはポンプ取付部7Bが設けられ、このポンプ取付部7Bには、油圧ポンプ8が取付けられると共に、後述する排気ガス浄化装置16の取付ベース17が取付けられている。また、エンジン7の排気管7Cには、排気ガス浄化装置16の第1の排気ガス後処理装置18が接続されている。
【0024】
冷却ファン9は、エンジン7の左側に取付けられている。冷却ファン9は、エンジン7を動力源として回転することにより、外部の空気を冷却風として吸込み、後述の熱交換装置10に供給するものである。冷却ファン9による冷却風は、熱交換装置10を通過してエンジン7側へと流れる。
【0025】
熱交換装置10は、冷却ファン9よりも冷却風の流れ方向の上流側に配置され、冷却ファン9と対面した状態で旋回フレーム5の左後側に設けられている。熱交換装置10は、旋回フレーム5に立設された支持枠体10Aと、この支持枠体10Aに支持されたラジエータ10B、オイルクーラ10C、インタクーラ10D等により構成されている。熱交換装置10は、冷却ファン9によって供給された冷却風により、温度上昇した各種の流体を冷却するものである。また、熱交換装置10の支持枠体10Aは、後述する横サポート部材34の左端側を支持している。
【0026】
油圧ポンプ8の前側には、左,右方向に並んで作動油タンク11と燃料タンク12が設けられている。作動油タンク11は、上,下方向に延びる直方体状の容器として形成され、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータを駆動するための作動油を貯えている。燃料タンク12は、作動油タンク11の右側に隣接して配置されている。燃料タンク12は、上,下方向に延びる直方体状の容器として形成され、エンジン7に供給される燃料を貯えている。
【0027】
旋回フレーム5の左前側にはキャブ13が搭載されている。キャブ13は、オペレータが搭乗する運転室を画成するもので、キャブ13の内部には、オペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。
【0028】
外装カバー14は、カウンタウエイト6とキャブ13との間に配置され、左,右方向に延在した状態で旋回フレーム5上に設けられている。
図3に示すように、外装カバー14は、熱交換装置10等を左側方から覆う左側面板14A、油圧ポンプ8等を右側方から覆う右側面板14B、熱交換装置10、油圧ポンプ8等を上方から覆う上面板14C、上面板14Cから上方に突出しエンジン7等を上方から覆うエンジンカバー14D、エンジンカバー14Dの右側に隣接して配置され、後述する排気ガス浄化装置16を覆う浄化装置カバー14Eを含んで構成されている。浄化装置カバー14Eには、排気ガスを外部に排出するための尾管14Fが上向きに突出して設けられている。
【0029】
機械室15は、外装カバー14によって旋回フレーム5上に画成され、その内部にエンジン7、油圧ポンプ8、冷却ファン9、熱交換装置10、排気ガス浄化装置16、尿素水タンク27等を収容している。ここで、機械室15は、熱交換装置10よりも冷却風の流れ方向の上流側に位置する熱交換装置上流室15Aと、熱交換装置10よりも冷却風の流れ方向の下流側に位置するエンジン室15Bとに大別されている。
【0030】
熱交換装置上流室15Aは、熱交換装置10、カウンタウエイト6、外装カバー14の左側面板14Aおよび上面板14Cによって囲まれ、その内部には尿素水タンク27等が配置されている。一方、エンジン室15Bは、熱交換装置10、カウンタウエイト6、外装カバー14の右側面板14Bおよび上面板14Cによって囲まれ、その内部にはエンジン7、油圧ポンプ8、排気ガス浄化装置16等が配置されている。冷却ファン9による冷却風は、熱交換装置上流室15Aから熱交換装置10を通ってエンジン室15Bへと流れるので、熱交換装置上流室15A内の温度は、エンジン室15B内の温度よりも低く保たれている。
【0031】
排気ガス浄化装置16は、エンジン7の排気側に接続して設けられている。この排気ガス浄化装置16は、エンジン7から排出される排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化して除去し、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化し、さらに排気音を低減するものである。
図3および
図6に示すように、排気ガス浄化装置16は取付ベース17を有し、この取付ベース17を油圧ポンプ8と一緒にエンジン7のポンプ取付部7Bに取付けることにより、排気ガス浄化装置16は、油圧ポンプ8の上方に配置されている。排気ガス浄化装置16は、
図7に示すように、後述する第1の排気ガス後処理装置18、接続管21、第2の排気ガス後処理装置22等を含んで構成されている。
【0032】
第1の排気ガス後処理装置18は、エンジン7の排気管7Cの出口側に接続されている。第1の排気ガス後処理装置18は、前,後方向に延設された筒状ケース19と、筒状ケース19内に配置された酸化触媒20とを含んで構成されている。筒状ケース19は、円筒状の密閉容器として形成され、その上流側(前側部位)には、管体からなる給気口19Aが径方向に突出して設けられている。筒状ケース19の外部に突出した給気口19Aの突出端側には、排気管7Cの出口側が接続されている。筒状ケース19の下流側(後側部位)には、径方向に開口する排気口19Bが設けられている。
【0033】
酸化触媒20は、筒状ケース19内に配置されている。酸化触媒20は、例えばセラミックス製のセル状筒体からなり、その軸方向には多数個の貫通孔が形成され、内面に貴金属等がコーティングされている。酸化触媒20は、所定の温度下で各貫通孔に排気ガスを流通させることにより、この排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化して除去するものである。
【0034】
接続管21は、第1の排気ガス後処理装置18と第2の排気ガス後処理装置22との間を接続している。接続管21は、第1の排気ガス後処理装置18の外周側に配置され、第1の排気ガス後処理装置18とほぼ平行に前,後方向に延びている。接続管21は、筒状ケース19の排気口19Bと、第2の排気ガス後処理装置22を構成する後述の筒状ケース23の給気口23Aとの間を接続し、第1の排気ガス後処理装置18から排出された排気ガスを第2の排気ガス後処理装置22に導くものである。
【0035】
第2の排気ガス後処理装置22は、接続管21を介して第1の排気ガス後処理装置18に接続されている。第2の排気ガス後処理装置22は、接続管21を挟んで第1の排気ガス後処理装置18の上側に重なる位置に配置され、第1の排気ガス後処理装置18とほぼ平行に前,後方向に延びている。第2の排気ガス後処理装置22は、円筒状の筒状ケース23と、筒状ケース23内に配置された尿素選択還元触媒24と、尿素選択還元触媒24の下流側に配置された酸化触媒25とを含んで構成されている。
【0036】
筒状ケース23は、円筒体の両端を閉塞することにより密閉容器として形成されている。筒状ケース23の上流側となる前側部位には、径方向に開口する給気口23Aが設けられ、この給気口23Aには、接続管21の出口側が接続されている。一方、筒状ケース23の下流側となる後側部位には、管体からなる排気口23Bが、筒状ケース23の内部から外部へと径方向上向きに突出して設けられている。筒状ケース23の外部に突出した排気口23Bの突出端側は、浄化装置カバー14Eの尾管14Fに接続されている。筒状ケース23内に配置された排気口23Bの下側には、多数個の貫通孔が設けられ、この各貫通孔を排気ガスが通過することにより、排気音が低減(消音)される。
【0037】
尿素選択還元触媒24は、筒状ケース23の上流側に配置されている。尿素選択還元触媒24は、例えばセラミックス製のセル状筒体からなり、その軸方向には多数の貫通孔が形成され、内面に貴金属がコーティングされている。この尿素選択還元触媒24は、通常、エンジン7から排出される排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を、尿素水溶液から生成されたアンモニアによって選択的に還元反応させ、無害な窒素ガスと水とに分解するものである。
【0038】
酸化触媒25は、筒状ケース23の下流側に配置されている。酸化触媒25は、上述した酸化触媒20とほぼ同様に、セラミックス製のセル状筒体からなり、その軸方向には多数の貫通孔が形成され、内面に貴金属がコーティングされている。これにより、酸化触媒25は、尿素選択還元触媒24によって窒素酸化物を還元した後に残った残留アンモニアを酸化し、窒素ガスと水とに分離するものである。
【0039】
尿素水噴射弁26は、排気ガス浄化装置16の接続管21に設けられている。尿素水噴射弁26は、後述する尿素水供給管路28を介して尿素水タンク27に接続されている。尿素水噴射弁26は、尿素選択還元触媒24よりも上流側に配置され、接続管21内を流通する排気ガスに向けて還元剤である尿素水(尿素水溶液)を噴射するものである。
【0040】
尿素水タンク27は、旋回フレーム5の左後側に設けられ、キャブ13よりも後側に位置して熱交換装置上流室15A内に配置されている。尿素水タンク27は、尿素水噴射弁26に供給される還元剤としての尿素水を貯えるものである。この場合、尿素水タンク27は、冷却ファン9によって機械室15内に供給される冷却風の流れ方向において、熱交換装置10の上流側となる熱交換装置上流室15A内に配置されている。これにより、尿素水タンク27内の尿素水が、エンジン7等が発生する熱によって温度上昇するのを抑えることができる。
【0041】
尿素水タンク27の後側には、カウンタウエイト6のメンテナンス開口6Cに対応する位置に給水口27Aが設けられ、この給水口27Aを通じて尿素水タンク27内に尿素水が補給される。また、尿素水タンク27の上側には蓋体27Bが設けられ、この蓋体27Bには、後述する尿素水供給管路28の一端側が取付けられている。
【0042】
尿素水供給管路28は、機械室15内を通って配置され、尿素水タンク27と尿素水噴射弁26との間を接続している。尿素水供給管路28の途中には、後述の尿素水ポンプ31が設けられ、尿素水供給管路28は、尿素水タンク27と尿素水ポンプ31との間を接続するタンク側供給管路28Aと、尿素水ポンプ31と尿素水噴射弁26との間を接続する噴射弁側供給管路28Bとにより構成されている。尿素水供給管路28は、例えば可撓性を有する耐圧ホースを用いて形成され、その全長に亘って管状断熱材29によって覆われている。管状断熱材29は、例えば発泡性の樹脂材料を用いて円筒状に成形され、その内部に尿素水供給管路28が挿通されることにより、尿素水供給管路28を熱から遮るものである。
【0043】
ここで、
図3ないし
図5に示すように、タンク側供給管路28Aは、尿素水タンク27から旋回フレーム5の底板5Aへと下向きに延びたタンク側下向き管路28A1と、タンク側下向き管路28A1の下端から熱交換装置10の下側を通って尿素水ポンプ31へと横向きに延びたタンク側横向き管路28A2とを有している。ここで、タンク側横向き管路28A2のうちエンジン室15B内に配置される部位は、管状断熱材29よりも厚い樹脂材料を用いて大径な円筒状に成形された大径管状断熱材30によって覆われている。即ち、タンク側横向き管路28A2のうちエンジン室15B内に配置される部位は、管状断熱材29と大径管状断熱材30とによって二重に覆われ、タンク側供給管路28A内を流通する尿素水が、エンジン7等が発生する熱によって温度上昇しないように遮熱されている。
【0044】
一方、噴射弁側供給管路28Bは、尿素水ポンプ31から旋回フレーム5の左縦板5Bに沿って後板5Hへと後向きに延びた噴射弁側後向き管路28B1と、噴射弁側後向き管路28B1の後端からカウンタウエイト6の前面6Bに沿って上向きに延びた噴射弁側上向き管路28B2と、噴射弁側上向き管路28B2の上端からカウンタウエイト6の上端に沿って尿素水噴射弁26へと右横向きに延びた噴射弁側横向き管路28B3とを有している。噴射弁側後向き管路28B1と噴射弁側上向き管路28B2とは、管状断熱材29の外周側に配置された大径管状断熱材30によってさらに覆われている。即ち、エンジン室15B内に配置された噴射弁側後向き管路28B1と噴射弁側上向き管路28B2とは、管状断熱材29と大径管状断熱材30とにより二重に覆われ、噴射弁側供給管路28B内を流通する尿素水が、エンジン7等が発生する熱によって温度上昇しないように遮熱されている。
【0045】
ここで、本実施の形態では、通常、デッドスペースとなるエンジン室15Bの上側領域に、尿素水供給管路28の噴射弁側横向き管路28B3を配置することにより、このデッドスペースを有効に利用することができる。しかし、エンジン7、油圧ポンプ8等が発生する熱は、エンジン室15Bの上側領域に滞留するため、カウンタウエイト6の上端に沿って左,右方向に延びる噴射弁側横向き管路28B3は、エンジン7等からの熱の影響を受け易い。このため、本実施の形態では、噴射弁側供給管路28Bの噴射弁側横向き管路28B3を、後述する横サポート部材34と遮熱カバー38とによって形成された管路収容空間41内に収容する構成としている。
【0046】
尿素水ポンプ31は、旋回フレーム5の左縦板5Bよりも左側に位置して底板5A上に配置されている。この尿素水ポンプ31は、尿素水タンク27に貯えられた尿素水を尿素水噴射弁26に向けて圧送するものである。尿素水ポンプ31の吸込側には、タンク側供給管路28A(タンク側横向き管路28A2)が接続され、尿素水ポンプ31の吐出側には、噴射弁側供給管路28B(噴射弁側後向き管路28B1)が接続されている。
【0047】
サポート部材32は、カウンタウエイト6の前側に配置され、外装カバー14を支持している。サポート部材32は、
図3および
図6に示すように、旋回フレーム5の後板5Hに下端が固定され上,下方向に延びた複数の縦サポート部材33(2本のみ図示)と、熱交換装置10の支持枠体10Aと縦サポート部材33とに接続され、カウンタウエイト6の上端に沿って左,右方向に延びた横サポート部材34とを含んで構成されている。
【0048】
ここで、横サポート部材34は、
図8ないし
図11に示すように、逆L字型に折曲げられた鋼板材等を用いて形成され、カウンタウエイト6の前面6Bと隙間をもって前,後方向で対面しつつ左,右方向に延びた前面板34Aと、前面板34Aの上端から前方に折曲げられた上面板34Bとを有している。上面板34Bの長さ方向(左,右方向)の両側には、上面板34Bの前端縁から前面板34Aに向けて矩形状に切欠かれた切欠き部34Cがそれぞれ形成され、これら各切欠き部34Cには、前面板34Aから前方に向けて斜め下向きに傾斜するカバー取付板34Dが固着されている。各カバー取付板34Dには、ヒンジ部材(図示せず)を介してエンジンカバー14Dが取付けられる構成となっている。
【0049】
ここで、前面板34Aの左端側には、左側に突出するブラケット34Eが一体形成され、このブラケット34Eには、2個のボルト挿通部34Fが設けられている。一方、上面板34Bの右端側にはボルト挿通孔34Gが設けられている。そして、横サポート部材34は、ブラケット34Eのボルト挿通部34Fに挿通したボルト35を熱交換装置10の支持枠体10Aに螺着すると共に、上面板34Bのボルト挿通孔34Gに挿通したボルト(図示せず)を縦サポート部材33に螺着することにより、熱交換装置10の支持枠体10Aと縦サポート部材33との間に固定されている(
図3参照)。また、上面板34Bのうち各切欠き部34C間には、後述の遮熱カバー38を取付けるための2個のボルト挿通孔34Hが設けられている。
【0050】
開口部36は、カウンタウエイト6の前面6Bと対面する前面板34Aに設けられている。この開口部36は、左,右方向に延びる矩形状の角孔によって形成され、後述する管路収容空間41を外気に開放するものである。また、横サポート部材34のうちカウンタウエイト6の前面6Bと対面する面には、例えば発泡性の樹脂材料を用いて四角柱状に形成された複数の柱状断熱材37が、開口部36の周囲を取囲むように取付けられている。
図11に示すように、各柱状断熱材37は、カウンタウエイト6の前面6Bに当接することにより、エンジン室15Bと開口部36との間を仕切り、エンジン室15B内の熱気が、開口部36を通じて管路収容空間41内に流込むのを阻止している。
【0051】
次に、本実施の形態に用いられる遮熱カバー38、および管路収容空間41について説明する。
【0052】
遮熱カバー38は、横サポート部材34に取付けられ、当該横サポート部材34との間に後述の管路収容空間41を形成するものである。ここで、遮熱カバー38は、
図9および
図11に示すように、U字型に折曲げられた鋼板材等を用いて形成され、横サポート部材34に沿って左,右方向に延びている。
【0053】
遮熱カバー38は、横サポート部材34の上面板34Bと上,下方向で対面する上面板38Aと、上面板38Aの前端から下向きに延び横サポート部材34の前面板34Aと間隔をもって前,後方向で対面する前面板38Bと、前面板38Bの下端から後向きに延び上面板38Aと間隔をもって上,下方向で対面する下面板38Cとを有している。上面板38Aのうち、横サポート部材34の各ボルト挿通孔34Hに対応する2箇所には、雌ねじ孔を有するねじ座38Dが、溶接等の手段を用いて固着されている。また、遮熱カバー38のうち管路収容空間41側となる内側面には、例えば発泡性の樹脂材料を用いて薄肉な板状に形成された板状断熱材39が取付けられている。
【0054】
そして、横サポート部材34の各ボルト挿通孔34Hに挿通したボルト40を、遮熱カバー38の各ねじ座38Dに螺着することにより、遮熱カバー38は、横サポート部材34に固定される。この状態で、
図11に示すように、横サポート部材34と遮熱カバー38との間には、断面四角形状の管路収容空間41が形成される。
【0055】
管路収容空間41内には、尿素水供給管路28のうちエンジン7等からの熱の影響を受ける部位、即ち、エンジン室15B内に配置された噴射弁側供給管路28Bの噴射弁側横向き管路28B3が収容されている。管路収容空間41内に収容された噴射弁側横向き管路28B3は管状断熱材29によって覆われ、管状断熱材29の外周側は、遮熱カバー38の内側面に取付けられた各板状断熱材39によってさらに覆われている。従って、管路収容空間41内に収容された噴射弁側供給管路28Bの噴射弁側横向き管路28B3は、管状断熱材29と板状断熱材39とによって二重に覆われている。
【0056】
これにより、エンジン7等から噴射弁側供給管路28Bに向けて放射された熱気Bを、遮熱カバー38によって遮ることができ、管路収容空間41内に収容された噴射弁側横向き管路28B3を流れる尿素水の温度上昇を抑えることができる。しかも、管路収容空間41は、横サポート部材34に設けられた開口部36を通じて常に外気に開放されているので、管路収容空間41が閉断面空間となることがない。これにより、管路収容空間41内に熱気が生じたとしても、この熱気Aを開口部36を通じて外気中に放出することにより、管路収容空間41内に熱気が籠るのを抑えることができる。
【0057】
なお、噴射弁側横向き管路28B3を覆う管状断熱材29内には、エンジン冷却水の一部が流通する冷却水管路42が配置されている。これにより、例えば寒冷地等において、冷却水管路42を流れるエンジン冷却水を利用して噴射弁側横向き管路28B3を必要に応じて暖めることができ、噴射弁側横向き管路28B3内を流れる尿素水が凍結するのを防止することができる構成となっている。
【0058】
本実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、以下、その動作について説明する。
【0059】
キャブ13に搭乗したオペレータが、エンジン7を始動することにより、油圧ポンプ8が駆動され、油圧ポンプ8からの圧油は、油圧ショベル1に搭載された各種油圧アクチュエータに供給される。この状態で、オペレータが走行用の操作レバーを操作することにより、下部走行体2を前進または後退させることができる。また、オペレータが作業用の操作レバーを操作することにより、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を用いて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0060】
ここで、油圧ショベル1の稼動時には、第1の排気ガス後処理装置18に設けられた酸化触媒20は、エンジン7から排出される排気ガス中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化して除去する。一方、第2の排気ガス後処理装置22に設けられた尿素選択還元触媒24は、尿素水噴射弁26から尿素水が噴射されることにより、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を無害な窒素ガスと水に分解する。さらに、第2の排気ガス後処理装置22に設けられた酸化触媒25は、残留アンモニアを酸化して除去する。このようにして、エンジン7からの排気ガスは、排気ガス浄化装置16によって浄化され、この浄化された排気ガスは、浄化装置カバー14Eの尾管14Fを通じて大気中に排出される。
【0061】
ここで、本実施の形態では、尿素水を貯える尿素水タンク27を、冷却風の流れ方向において熱交換装置10よりも上流側となる熱交換装置上流室15A内に配置している。これにより、尿素水タンク27は、エンジン7等からの熱、熱交換装置10を通過して暖められた冷却風に晒されることがないので、尿素水タンク27に貯えられた尿素水の温度上昇を抑えることができ、尿素水の性状を適正に保つことができる。
【0062】
一方、尿素水タンク27と尿素水噴射弁26との間を接続する尿素水供給管路28のうち、噴射弁側供給管路28Bを構成する噴射弁側横向き管路28B3は、カウンタウエイト6の上端に沿って左,右方向に延びる状態で、エンジン室15Bの上側領域に配置される。これにより、通常、デッドスペースとなるエンジン室15Bの上側領域を有効に利用することができる。
【0063】
この場合、エンジン室15Bの上側領域は、エンジン7等からの熱が滞留するため、エンジン室15Bの上側領域に配置された噴射弁側横向き管路28B3は、エンジン7等からの熱の影響を受け易い。これに対し、本実施の形態では、外装カバー14を支持するサポート部材32のうち、エンジン室15Bの上側領域に設けられた既存の横サポート部材34に遮熱カバー38を取付けることにより、横サポート部材34と遮熱カバー38との間に管路収容空間41を形成し、この管路収容空間41内に噴射弁側横向き管路28B3を収容している。
【0064】
これにより、機械室15のエンジン室15Bを通って尿素水噴射弁26に接続される尿素水供給管路28のうち、エンジン7等からの熱の影響を受け易い噴射弁側横向き管路28B3を、横サポート部座34と遮熱カバー38とによって熱気から遮蔽することができる。この結果、尿素水タンク27内の尿素水が、尿素水供給管路28を通じて尿素水噴射弁26に供給されるまでの間にエンジン7等からの熱によって加熱されるのを抑え、熱による尿素水の劣化を防止することができるので、尿素選択還元触媒24を備えた排気ガス浄化装置16の信頼性を高めることができる。
【0065】
しかも、横サポート部材34に開口部36を設けることにより、管路収容空間41を開口部36を介して常に外気中に開放することができる。従って、管路収容空間41が閉断面空間となって内部に熱気が籠るのを抑えることができ、管路収容空間41内に熱気が生じたとしても、この熱気を開口部36を通じて外気中に放出することができる。この結果、管路収容空間41内に熱気が籠ることがなく、噴射弁側横向き管路28B3を流れる尿素水の温度上昇を確実に抑えることができる。この場合、横サポート部材34の開口部36を、カウンタウエイト6の前面6Bと対面する部位に開口させることにより、雨水や土砂等が開口部36を通じて管路収容空間41内に侵入するのを抑えることができる。
【0066】
また、管路収容空間41内に収容される噴射弁側横向き管路28B3を、管状断熱材29で覆うことにより、噴射弁側横向き管路28B3をエンジン7の熱から更に遮ることができ、尿素水の温度上昇を効率良く抑制することができる。
【0067】
なお、実施の形態では、第1の排気ガス後処理装置18の筒状ケース19内に酸化触媒20だけを設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば第1の排気ガス後処理装置18の筒状ケース19内に、酸化触媒20の下流側に位置して粒子状物質除去フィルタ(Diesel Particulate Filter、略してDPFとも呼ばれている)を設ける構成としてもよい。
【0068】
また、実施の形態では、建設機械として、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよく、また、油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用することができる。